配線・配管材支持具連結体、及びその固定方法
【課題】
連結部を介して複数連結されている配線・配管材支持具の一つ又は複数を固定部材により構築面に固定した状態で、非固定の残りの1又は複数の配線・配管材支持具を切離し可能にすることにより、当該切離し作業を容易にし、併せて配線・配管材支持具の固定作業を容易にすることである。
【解決手段】
釘Nが貫通される貫通孔10が形成され、当該釘Nにより建物の壁面Wに固定される固定部F1 と、配線・配管材を支持する支持部A1 とを備えた配線・配管材支持具S1 が連結部C1 を介して複数連結されてなり、前記連結部C1 は、前記釘Nにより壁面Wに固定された配線・配管材支持具S1 に対して他の配線・配管材支持具S1 を引っ張ることにより分離可能な連結強度を有している構成とする。
連結部を介して複数連結されている配線・配管材支持具の一つ又は複数を固定部材により構築面に固定した状態で、非固定の残りの1又は複数の配線・配管材支持具を切離し可能にすることにより、当該切離し作業を容易にし、併せて配線・配管材支持具の固定作業を容易にすることである。
【解決手段】
釘Nが貫通される貫通孔10が形成され、当該釘Nにより建物の壁面Wに固定される固定部F1 と、配線・配管材を支持する支持部A1 とを備えた配線・配管材支持具S1 が連結部C1 を介して複数連結されてなり、前記連結部C1 は、前記釘Nにより壁面Wに固定された配線・配管材支持具S1 に対して他の配線・配管材支持具S1 を引っ張ることにより分離可能な連結強度を有している構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の配線・配管材支持具を一つずつ切離し可能なように連結部を介して連結された配線・配管材支持具連結体、及びその固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の配線・配管材支持具、例えばスラブ床板の下面等に接着剤を介して吊り下げてケーブルを支持するケーブル支持具が特許文献1に開示されている。このようなケーブル支持具は、施工現場において同時に多数使用されることが多いため、これに対応して、複数個の各ケーブル支持具が連結部を介して切り離し可能に連結されている。
【0003】
この場合において、作業者の便宜からすると、必ず一つずつ順次取り外せるようにすることが望ましいが、切り離し時の力の加え具合によって、同時に二つ又は二つ以上が一緒に切り離されたりすることがある。この場合には、再度、二つ又は二つ以上が連なったものを一つに切り離す必要があると共に、次に使用する残りの一つ又は一つ以上の配線・配管材支持具を周辺に保管するか、或いは自身で保持しながら本来の作業を行う必要があって、不便であった。
【0004】
一方、ケーブル支持具には、釘又はビスを介して壁面に固定するものもあり、複数個のケーブル支持具が連結された状態で、端部の一個を切り離して、ケーブル支持具を一個ずつハンマーを使用して叩き付けて固定している。しかし、切り離された一個のケーブル支持具は、人の手(指先)で保持するには小さ過ぎるものがあって、ハンマーによる叩付け作業が難しいと共に、ケーブル支持具を保持している手を打ち損じて怪我をすることもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−289960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、連結部を介して複数連結されている配線・配管材支持具の一つ又は複数を固定部材により構築面に固定した状態で、非固定の残りの1又は複数の配線・配管材支持具を切離し可能にすることにより、当該切離し作業を容易にし、併せて配線・配管材支持具の固定作業を容易にすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための請求項1の発明は、釘又はビスからなる固定部材が貫通される貫通孔が形成され、当該固定部材により建物の構築面に固定される固定部と、配線・配管材を支持する支持部とを備えた配線・配管材支持具が連結部を介して複数連結されてなり、前記連結部は、前記固定部材により構築面に固定された配線・配管材支持具に対して他の配線・配管材支持具を引っ張ることにより分離可能な連結強度を有していることを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明によれば、配線・配管材支持具が複数連結された配線・配管材支持具連結体を構築面に宛てがって、当該配線・配管材支持具連結体の一端から起算して1又は連続した複数の配線・配管材支持具を前記構築面に固定するには、配線・配管材支持具連結体における非固定の配線・配管材支持具の部分を一方の手で掴むことにより、固定対象である一端部の配線・配管材支持具の固定位置を定めて、他方の手により、当該配線・配管材支持具に設けられた固定部材を工具により打ち付けて、当該配線・配管材支持具を構築面に固定する。このように、一つの配線・配管材支持具を固定する場合にも、複数の配線・配管材支持具が連結された状態で行って、非固定に係る配線・配管材支持具を手で掴んで行えるので、配線・配管材支持具連結体から分離された1つの配線・配管材支持具を指先で掴んで当該配線・配管材支持具を固定するのに比較して、配線・配管材支持具の固定作業を安定した姿勢で容易に行える。
【0009】
また、隣接する配線・配管材支持具を連結している連結部は、固定部材により構築面に固定された配線・配管材支持具に対して他の配線・配管材支持具を引っ張ることにより分離可能な連結強度を有しているので、1又は複数の配線・配管材支持具の固定後には、固定された当該配線・配管材支持具に隣接する別の配線・配管材支持具の部分を引っ張ると、連結部が破断される。このように、配線・配管材支持具連結体における非固定の配線・配管材支持具を、固定前における配線・配管材支持具の位置決めのための把持、及び当該配線・配管材支持具の固定後における連結部の破断に使用できるので、配線・配管材支持具の固定、及び分離の各作業が容易となる。
【0010】
また、請求項2の発明は、釘又はビスからなる固定部材と、釘又はビスからなる固定部材が貫通される貫通孔が形成され、当該固定部材により建物の構築面に固定される固定部と、配線・配管材を支持する支持部とを備えた配線・配管材支持具が連結部を介して複数連結されてなり、前記固定部材は、前記固定部の貫通孔に部分挿入されて仮保持され、前記連結部は、前記固定部材により構築面に固定された配線・配管材支持具に対して他の配線・配管材支持具を引っ張ることにより分離可能な連結強度を有していることを特徴としている。
【0011】
請求項1の発明は、固定部材は、配線・配管材支持具の固定部に設けられた貫通孔に仮保持されている場合と、固定部に仮保持されていない場合との双方を含むが、請求項2の発明では、前者の場合であるので、構築面に個々の配線・配管材支持具を固定する都度、固定部材を探す必要がなくなって、請求項1の発明の上記作用効果に加えて、配線・配管材支持具の固定作業を迅速に行えるという利点がある。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、配線・配管材支持具の連結ピッチは、固定部材を構築面に対して打ち付ける工具が隣接する別の固定部材に干渉しない長さであることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明によれば、複数の配線・配管材支持具が連結された配線・配管材支持具連結体の状態で、一端から起算して1又は連続した複数の配線・配管材支持具を工具により構築面に固定する際に、当該工具が隣接する別の固定部材に当たらないので、固定予定のない配線・配管材支持具を構築面に誤って固定してしまう恐れがなくなると共に、工具が隣接する固定部材に当たる恐れがないので、思い切って工具を叩き付けることができて、配線・配管材支持具の固定作業の能率も向上する。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記連結部は、固定部と支持部との間に形成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項4の発明によれば、配線・配管材支持具の連結ピッチを大きくできて、配線・配管材支持具の固定後における連結部の破断時において、固定された配線・配管材支持具に隣接する別の配線・配管材支持具を掴んで引っ張る作業がし易くなると共に、隣接する固定部の間に支持部が存在する構成であるために、請求項3の発明を実現し易くなる。
【0016】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、連結方向に沿って一方の端部に形成された固定部と、他方の端部に形成された固定部又は支持部とには、2本の配線・配管材支持具連結体を嵌合により前記連結方向に連結可能な嵌合部、及び被嵌合部がそれぞれ形成されていることを特徴としている。
【0017】
請求項5の発明によれば、配線・配管材支持具を構築面に固定して順次分断させることにより配線・配管材支持具連結体の長さが短くなった場合に、短くなった当該配線・配管材支持具連結体と、未使用の別の配線・配管材支持具連結体とを互いに連結させられる。これにより、短くなった配線・配管材支持具連結体の配線・配管材支持具を構築面に固定する際に、手で掴む部分を確保できて、配線・配管材支持具連結体が短くなっても、配線・配管材支持具を安定して構築面に固定できる。
【0018】
また、請求項6の発明は、請求項1又は2に記載の配線・配管材支持具連結体を構成する1又は複数の配線・配管材支持具を構築面に固定する方法であって、一端の1つの配線・配管材支持具、又は当該一端から起算して連続した複数の配線・配管材支持具を固定部材を介して構築面に固定した後に、残りの未使用の配線・配管材支持具を引っ張ることにより、連結部を破断させて分離させることを特徴としている。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1又は2に記載の配線・配管材支持具連結体を構成する1又は複数の配線・配管材支持具を構築面に固定する方法であり、その作用効果は、請求項1の発明について記載した通りである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、一つの配線・配管材支持具を固定する場合にも、複数の配線・配管材支持具が連結された状態で行って、非固定に係る配線・配管材支持具を手で掴んで行えるので、配線・配管材支持具連結体から分離された1つの配線・配管材支持具を指先で掴んで当該配線・配管材支持具を固定するのに比較して、配線・配管材支持具の固定作業を安定した姿勢で容易に行える。また、隣接する配線・配管材支持具を連結している連結部は、固定部材により構築面に固定された配線・配管材支持具に対して他の配線・配管材支持具を引っ張ることにより分離可能な連結強度を有しているので、1又は複数の配線・配管材支持具の固定後には、固定された当該配線・配管材支持具に隣接する別の配線・配管材支持具の部分を引っ張ると、連結部が破断される。このように、配線・配管材支持具連結体における非固定の配線・配管材支持具を、固定前におるけ配線・配管材支持具の位置決めのための把持、及び当該配線・配管材支持具の固定後における連結部の破断に使用できるので、配線・配管材支持具の固定、及び分離の各作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】配線・配管材支持具連結体E1 を釘Nの突出側から見た全体斜視図である。
【図2】同じく釘Nの非突出側から見た部分斜視図である。
【図3】(a),(b)は、それぞれ配線・配管材支持具連結体E1 の平面図及び正面図である。
【図4】配線・配管材固定具連結体E1 を構成する配線・配管材支持具S1 の部分の拡大縦断面図である。
【図5】非固定の配線・配管材支持具S1 を一方の手で持って、他方の手で持ったハンマーHにより配線・配管材支持具連結体E1 の一端の配線・配管材支持具S1 を壁面Wに固定している状態の斜視図である。
【図6】壁面Wに固定された配線・配管材支持具S1 の連結部C1 に対して外力を加えて、固定済の配線・配管材支持具S1 と他の配線・配管材支持具S1 とを分離している状態の斜視図である。
【図7】壁面Wに固定された支持具S1 の支持部A1 を90°回して下方に配置させた状態の斜視図である。
【図8】(a),(b)は、それぞれ長手方向の一部を省略図示した配線・配管材支持具連結体E2 の平面図、及び正面図である。
【図9】2本の配線・配管材支持具連結体E2 の接続部Jを主体に示す斜視図である。
【図10】同じく縦断面図である。
【図11】配線・配管材支持具連結体E3 を構成する複数の配線・配管材支持具S3 が分離された状態の斜視図である。
【図12】同じく連結状態の斜視図である。
【図13】ビスBの側から見た配線・配管材支持具連結体E4 の斜視図である。
【図14】配線・配管材支持具連結体E4 の各配線・配管材支持具S4 を連結する各連結部C41〜C44の連結強度が異なることを示す部分正面図である。
【図15】図14のX−X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、複数の実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
最初に、図1ないし図4を参照して、固定部F1 と支持部A1 との間に連結部C1 が形成された実施例1の配線・配管材支持具連結体(以下、単に「支持具連結体」という)E1 について説明する。図1は、支持具連結体E1 を釘Nの突出側から見た全体斜視図であり、図2は、同じく釘Nの非突出側から見た部分斜視図であり、図3(a),(b)は、それぞれ支持具連結体E1 の平面図及び正面図であり、図4は、支持具連結体E1 を構成する配線・配管材支持具S1 の部分の拡大縦断面図である。支持具連結体E1 は、複数の配線・配管材支持具(以下、単に「支持具」という)S1 が連結部C1 を介して連結された構成であり、樹脂の射出成形により一体に形成されている。支持具S1 は、固定面である壁面Wに対して当接して密着される密着面1の側のみが開口された二重円筒状に形成された固定部F1 と、当該固定部F1 の密閉壁部2の中心部に部分挿入により仮保持されて、固定状態において当該固定部F1 を貫通する釘Nと、前記固定部F1 の外周面における複数の支持具S1 の連結方向(二重円筒状の固定部F1 の半径方向)Qに沿って大きく突出して形成されて、結束支持紐51により結束された配線・配管材(図示せず)を吊り下げて支持する支持部A1 とで構成される。
【0024】
固定部F1 は、内側周壁部3と外側周壁部4とが同心状に配置されて、軸心方向の一方が密閉壁部2で閉塞された二重円筒形状をなしていて、当該密閉壁部2の中心に釘Nが貫通されて、前記内側周壁部3の内部空間である貫通孔10を通って、当該釘Nの先端が開口面である密着面1に臨んだ状態となって、固定部F1 に釘Nが仮保持されている。支持部A1 は、結束支持紐51と協働して、壁面Wに対して配線・配管材を吊下げ保持する部分であって、壁面Wに密着する密着部5と、当該密着部5の幅方向の中央部に配置され、しかも当該密着部5に対して固定部F1 の軸心方向に沿って所定距離だけ離れることにより、結束支持紐51を挿入する紐挿通孔6を形成して、当該結束支持紐51を巻き掛けるための紐巻掛け部7と、当該紐巻掛け部7と前記密着部5とを固定部F1 から離れた側の端部で一体に連結する一体接続部8とが構成される。当該一体接続部8は、密着部5から紐巻掛け部7に向けて幅が徐々に狭く形成されていると共に、密着部5から離れるに従って高さが低くなって、隣接する別の固定部F1 の外側周壁部4に連結されることにより、一体接続部8の先端部は連結部C1 を形成している。この連結部C1 は、上記のような形状であるために、当該連結部C1 における固定部F1 と接続される部分が、幅及び高さの双方の寸法が最も小さくなっていて、換言すると最も断面積が小さくなっていて、引張り力、曲げ力、捩り力等の外力を作用させた場合に、当該外力が集中的に作用して応力集中が生じて最も切断され易い最小断面積部C1a(図4及び図6参照)となっている。このため、当該連結部C1 における最小断面積部C1aは、支持具S1 において、引張り力、曲げ力、捩り力等の外力に対して最も弱い部分であって、前記外力が作用した場合には、必ず破断される部分である。
【0025】
前記連結部C1 の最小断面積部C1aは、支持具連結体E1 を構成している複数の支持具S1 を1又は複数の単位で分離する部分であって、その連結強度は、釘Nにより固定部F1 を壁面Wに固定した状態における当該釘Nの固定強度よりも小さく設定されている。従って、複数の支持具S1 が連結部C1 で連結された支持具連結体E1 を、そのままの連結状態において、一端から起算した1又は連続した複数の固定部F1 を釘Nにより壁面Wに固定した状態において、固定済みの固定部F1 に設けられた連結部C1 の最小断面積部C1aに上記外力を加えると、当該最小断面積部C1aで、固定済みの固定部F1 と、未固定の固定部F1 が連結された支持具連結体E1 とに分離される。
【0026】
また、実施例1の支持具連結体E1 は、固定部F1 と支持部A1 との間に連結部C1 が形成された構成である。即ち、支持部A1 は、複数の支持具S1 の連結方向Qに沿って配置されていて、ピッチを大きくするためのみの部分を無駄に設けることなく、本来的に必要な支持具S1 の存在によって、複数の支持具S1 の配置のピッチP1 を大きくできる。この点、後述の実施例4の支持具連結体E4 の場合には、支持部A4 が連結方向Qと直交する方向Rに配置されているため、複数の支持具A4 のピッチP4 を大きくしようとすると、連結部C41〜C44の長さを無駄に長くせざるを得ない構造と異なる。実施例1の支持具S1 のピッチP1 は、(30.8mm)であり、二重円筒状の固定部F1 の外径は、(12mm)である。このため、後述のように、支持具連結体E1 の非固定の支持具S1 を一方の手で持って、他方の手で持ったハンマーHにより支持具S1 の釘Nを叩く場合において、隣接する別の釘Nを叩く恐れが少なくなって、釘Nの固定作業を安定して行える利点がある。なお、図1及び図3において、9は、支持具連結体E1 の長手方向の一端の支持具S1 の固定部F1 に連結方向Qに沿って設けられて、作業者の腰ベルトに取付けられた吊下保持具に支持具連結体E1 を吊下げ保持するための吊環を示す。当該吊環9により、支持具連結体E1 を作業者の腰ベルトに吊り下げた場合には、複数の結束支持紐51は、前記支持具連結体E1 の連結方向Qにほぼ沿って垂れ下げられる。
【0027】
そして、支持具連結体E1 の一端の支持具S1 を壁面Wに固定するには、図5に示されるように、固定対象の支持具S1 を隣接する別の支持具S1 から分離させることなく一体に連結されたままで、支持具連結体E1 の全体を一方の手で持って、固定対象の一端の支持具S1 を固定予定位置に配置する。この状態で、他方の手で持ったハンマーHにより、固定対象の支持具S1 の釘Nの頭部を叩き付けると、当該釘Nは、支持具S1 の二重円筒状の固定部F1 を貫通して、壁面Wに突刺されて、当該釘Nによって、支持具連結体E1 の一端の支持具S1 が壁面Wに固定される。固定対象の支持具S1 の配置、及びハンマーHによる釘Nに対する叩き付けは、いずれも固定対象の支持具S1 が他の複数の支持具S1 に一連に連結された状態で行われて、固定対象の支持具S1 を指先で直接に掴まなくても、安定して行うことができて、ハンマーHによる釘打ちの際に、自身の指先を叩き損じることがない。また、支持具連結体E1 を構成している複数の支持具S1 のピッチP1 は、ハンマーHによる釘打ちの際に、当該ハンマーHが隣接する別の支持具S1 の釘Nに誤って当たらない長さになっているので、固定対象の支持具S1 のみを確実に固定位置に固定できる。
【0028】
固定対象の支持具S1 が壁面Wに固定された状態では、残りの別の支持具S1 は全て固定済の支持具S1 に連結されており、この状態で、図6に示されるように、固定済の支持具S1 に対して隣接する別の支持具S1 の部分に引張り力T、曲げ力M、或いは捩じり力等の外力を加えると、固定済みの支持具S1 と、隣接する別の支持具S1 とは、連結部C1 における最も断面積の小さな最少断面積部C1aに応力集中が発生して、当該最少断面積部C1aで破断されて、互いに分離される。その後に、図7に示されるように、分離されて壁面Wに固定された支持具S1 の支持部A1 が垂直方向に配置されるように、ほぼ90°だけ廻しておく。支持具S1 の支持部A1 における連結部C1 の側には、紐巻掛け部7に接続する傾斜面部12が両面に形成されていて、前記支持部A1 を垂直配置した状態では、結束支持紐51の巻掛け部は、両面の各傾斜面部12に沿って巻き掛けられる(図7参照)。なお、図6及び図7において、11は、支持部A1 の端部に形成された破断部を示す。
【0029】
また、上記固定例では、1つの支持具S1 を壁面Wに固定した後に、他の全ての支持具S1 が連結された状態で、連結部C1 の部分で破断して分離させる例であるが、2以上の複数の支持具S1 をピッチP1 と同一間隔をおいて固定する場合には、当該複数の支持具S1 のそれぞれの釘Nを順次叩き付けて、複数の支持具S1 を壁面Wに固定した後に、壁面Wに固定された複数の支持具S1 と、当該複数の支持具S1 に隣接する別の支持具S1 との連結部C1 を破断すればよい。この場合には、結束支持紐51が巻き掛けられた支持部A1 は、水平に配置されたままにしておく。
【実施例2】
【0030】
次に、図8〜図10を参照して、本発明の第2実施例の支持具連結体E2 について、実施例1の支持具連結体E1 と同一部分には同一符号を付し、重複説明を避けて異なる部分についてのみ説明する。図8(a),(b)は、それぞれ長手方向の一部を省略図示した支持具連結体E2 の平面図、及び正面図であり、図9は、2本の支持具連結体E2 の接続部Jを主体に示す斜視図であり、図10は、同じく縦断面図である。実施例1の支持具連結体E1 において、各支持具S1 を順次壁面Wに固定して、最後の1つの支持具S1 を壁面Wに固定する場合には、指先で直接に掴んだ状態で、ハンマーHによって釘Nを叩き付けざるを得ず、手のサイズに比較して支持具S1 が小さいので、掴みずらく、ハンマーHにより、支持具S1 を掴んでいる手を叩き損じる恐れがある。
【0031】
そこで、図9及び図10に示されるように、実施例2の支持具連結体E2 は、2本の支持具連結体E2 を連結方向Qに沿って接続可能にして、支持具連結体E2 が短くなった場合に、別の支持具連結体E2 を接続することにより、支持具S1 の固定時に、ハンマーHを持たない手によって、当該支持具S1 を安定して支持できるようにした。即ち、支持具連結体E2 の長手方向の一端である支持部A1 の先端部には、延設板部21が接続方向に延設されて、当該延設板部21の先端部に、仮保持された釘Nと平行となって嵌合ピン22が設けられている。支持具S1 の固定時に壁面Wに密着される延設板部21の密着面は、固定部F1 の密着面1及び支持部A1 の密着部5の密着面と同一平面上に形成されていて、前記嵌合ピン22は、延設板部21の密着面と反対の面に形成されている。一方、支持具連結体E2 の長手方向の他端である固定部F1 の外側周壁部4には、当該外側周壁部4と内側周壁部3との間の環状空間部13に、別の支持具連結体E2 の延設板部21を嵌合可能にするための切欠き状の嵌合溝23が開口端面の側に開口して設けられている。嵌合ピン22は、折損を容易にするために、基端部に盗み部22aが全周に形成されて他の部分よりも細くなっている。
【0032】
このため、図9及び図10に示されるように、一方の支持具連結体E2 の一端の固定部F1 の環状空間部13に、他方の支持具連結体E2 の一端の嵌合ピン22を、当該固定部F1 の開口面の側から挿入して嵌合させると、前記他方の支持具連結体E2 の延設板部21が一方の支持具連結体E2 の嵌合溝23に嵌合されて、2本の支持具連結体E2 が、複数の支持具S1 の連結方向Qに沿って接続される。
【0033】
そして、支持具S1 を壁面Wに固定した後に、固定済の支持具S1 を分離させることにより、支持具連結体E2 が短くなった場合には、上記のようにして、短くなった支持具連結体E2 に、別の支持具連結体E2 を接続させて全長を長くすることにより、短くなった支持具連結体E2 を構成する支持具S1 を壁面Wに固定する際に、手で掴む部分を確保できて、支持具連結体E2 が短くなった場合でも、支持具S1 が未使用の元の長さと同等の状態で、支持具S1 の固定作業を行える。嵌合溝23が形成された支持具S1 が壁面Wに固定された後に、2本の支持具連結体E2 の接続部Jを破断して分離させるには、全ての支持具S1 が揃って連結されている支持具連結体E2 を引っ張ったり、曲げたりすると、当該支持具連結体E2 の嵌合ピン22が折損されて、固定済の支持具S1 と当該支持具連結体E2 とが容易に分離される。このため、嵌合ピン22は、その折損に必要な力が、支持具連結体E2 の連結部C1 の最小断面積部C1aの破断に必要な力よりも小さいことが必要となり、この観点から、嵌合ピン22の盗み部22aの深さが定められる。
【実施例3】
【0034】
実施例1,2の支持具連結体E1 ,E2 は、いずれも当該支持具連結体E1 ,E2 を構成する複数の支持具S1 は、連結部C1 で連結されることにより、全長に亘って一連に連結された構成であって、一端の支持具S1 から壁面Wに釘Nにより順次固定して、固定済の支持具S1 に対して残りの1又は複数の支持具S1 を引っ張ったり、曲げたりして、前記連結部C1 を破断して分離させる構成である。これに対して、実施例3の支持具連結体E3 は、図11及び図12に示されるように、個々の支持具S3 は、独立分離していて、前記延設板部21、嵌合ピン22及び嵌合溝23の使用により、独立分離している複数の支持具S3 が連結される構成である。独立分離している複数の支持具S3 が上記のようにして連結された支持具連結体E3 の一端の支持具S3 を固定する際に、ハンマーHを持たない手により別の支持具S3 を掴むことにより、支持具S3 の固定位置、及びハンマーHによる釘Nの叩き付け作業の双方を安定化させられる作用、並びに嵌合ピン22が破断されて、壁面Wに固定された支持具S3 に対して残りの支持具S3 が分離される作用は、実施例1,2の支持具連結体E1 ,E2 と同様である。
【実施例4】
【0035】
次に、図13〜図15を参照して、実施例4の支持具連結体E4 について、前記各支持具連結体E1 〜E3 と異なる部分についてのみ説明する。図13は、ビスBの側から見た支持具連結体E4 の斜視図であり、図14は、同じく支持具連結体E4 の各支持具S4 を連結する各連結部C41〜C44の連結強度が異なることを示す部分正面図であり、図15は、図14のX−X線断面図である。実施例4の支持具連結体E4 は、実施例1〜3の各支持具連結体E1 〜E3 に対して、各連結部C41〜C44は、隣接する支持具S4 の固定部F4 の間に存在していて、配線・配管材を支持する支持部A4 は、支持具S4 の連結方向Qに沿っていなくて、固定部F4 に対して当該連結方向Qと直交する方向Rに配置されている構成が異なる。
【0036】
支持具連結体E4 は、図13〜図15に示されるように、偶数個(実施例では10個)の支持具S4 が連結部C41〜C44を介して一定ピッチP4 で互いに連結されたものである。支持具S4 は、ビスBにより壁面Wに固定される固定部F4 と、当該固定部F4 の外周部における連結方向Qと直交する方向Rに沿って膨出して形成されて、配線・配管材(図示せず)を結束して支持する狭幅帯状の結束支持紐52が挿通される紐挿通孔31が形成された支持部A4 とから成る。紐挿通孔31は、連結方向Qに沿って長孔状となっていて、当該紐挿通孔31に結束支持紐52が挿通されることにより、結束支持紐52は、固定部F4 に二枚重ね状となって垂れ下げられる。固定部F4 は、前記支持具S1 ,S3 の固定部F1 と同様に、二重円筒構造になっていて、当該固定部F4 の密閉壁部2にビスBが螺入されて、その先端部が固定部F4 の密着面1を形成する開口面に臨んだ状態で、当該固定部F4 にビスBが仮保持されている。支持具連結体E4 の固定部F4 の外径は、前記各連結具E1 〜E3 の固定部F1 の外径と同じ(12mm)であり、複数の支持具S4 のピッチP4 は、(14mm)であって、実施例1〜3の各支持具連結体E1 〜E3 を構成する複数の支持具S1 のピッチP1 (=30.8mm)よりも遥かに小さい。
【0037】
各支持具S4 の連結方向Qに沿った中央の2本を除く残りの全ての支持具S4 は、支持部A4 に対して位相が90°異なる部分において断面方形の連結部C41〜C44を介して互いに連結されている。中央の2つの支持具S4 は、固定部F4 における支持部A4 とほぼ対向する部分であって、しかも当該固定部F4 の開口に近い部分が吊下部32を介して連結されている。吊下部32の上端部には、リング状の吊環33が形成されている。このため、支持具連結体E4 は、連結方向の中央に配置された吊環33を、作業者のベルトに挿通された吊下保持具(図示せず)に吊り下げることにより、前記吊下部32の両側がバランスすることにより天秤状に吊り下げられる。なお、図14及び図15において、一点鎖線41は、支持具連結体E4 の左右対称線を示す。
【0038】
各支持具S4 を連結する断面方形の連結部C41〜C44は、図14及び図15に示されるように、両端から中央部に向けた連結方向Qに沿って断面積を徐々に大きくすることにより、同方向に沿って連結強度を徐々に大きくしてある。断面方形の各連結部C41〜C44は、支持具S4 の固定部F4 に連結される一端部の断面積のみを、残りの部分の断面積よりも小さくすることにより、断面積の最も小さな最小断面積部C41a〜C44aで切断されて切り離されるようになっている。なお、図14において、ハッチングで示される部分は、それぞれ各連結部C41〜C44の前記最小断面積部C41a〜C44a以外の部分の横断面である。
【0039】
各連結部C41〜C44の連結方向Qに沿った長さ(d)は全て同一であるが、断面を構成する各辺の長さg1(g2,g3,g4), k1(k2,k3,k4)は、連結方向Qに沿って両端から中央部に向けて徐々に大きくなっている。即ち、各連結部C41〜C44の横断面を構成する各辺の長さg1(g2,g3,g4), k1(k2,k3,k4)の間には、以下の関係が成立している。
g1 <g2 <g3 <g4
k1 <k2 <k3 <k4
各連結部C41〜C44の断面積は、それぞれ(g1 ×k1), (g2 ×k2), (g3 ×k3), (g4 ×k4)で表されるため、当該断面積は、両端から連結方向Qに沿った中央部に向けて徐々に大きくなっている。そして、各連結部C41〜C44の最小断面積部C41a〜C44aの断面積も同様の状態で変化しているので、複数の支持具S4 を連結する各連結部C41〜C44の連結強度は、両端から連結方向Qに沿った中央部に向けて徐々に大きくなる。しかも、各連結部C41〜C44において最も連結強度の大きな連結部C44の連結強度は、ビスBにより支持具S4 を壁面Wに固定した場合の固定強度よりも小さく定めてある。
【0040】
従って、支持具連結体E4 の一端の支持具S4 からビスBを介して順次壁面Wに固定し、この状態で、一体に連結されている残りの支持具S4 に引張り力、曲げ力、或いは捩り力を加えると、固定済の支持具S4 と、当該固定済の支持具S4 に隣接する別の支持具S4 とを連結している連結部C41(C42〜C44)が、最も連結強度の小さな部分であるため、当該連結部C41(C42〜C44)の最小断面積部C41a(C42a〜C44a)が必ず破断されて、当該連結部C41(C42〜C44)の部分で必ず分離される。
【0041】
上記したように、実施例4の支持具連結体E4 を構成する複数の支持具S4 のピッチP4 は(14mm)であって、実施例1〜3の各支持具連結体E1 〜E3 を構成する複数の支持具S1 ,S3 のピッチP1 (=30.8mm)よりも遥かに小さいが、実施例4では、支持具S4 を壁面Wに固定する固定部材はビスBで構成されていて、当該ビスBをドライバー35により廻して螺入する際に、隣接する別のビスが当該ドライバー35を廻す操作の支障にはならない(図14参照)点が、ハンマーの衝撃力により壁面Wに突刺させる釘Nと異なる。
【0042】
また、上記実施例1〜4の各支持具連結体E1 〜E4 においては、連結部C1 ,C41〜C44に最小断面積部C41a(C42a〜C44a)を設けて、この部分に応力集中を発生させて、切断されるように構成してあるが、連結部における切断部(切断を確実に発生させる部分)は、断面積を小さくする他に、薄肉部にしたり、スリット(溝)を設けたりすることも可能である。
【0043】
なお、上記実施例1〜4においては、支持具S1 ,S3 ,S4 に形成された紐挿通孔6,31に結束支持紐51,52を挿通支持させて、当該結束支持紐51,52により配線・配管材を結束して支持する構成であるが、前記結束支持紐51,52に替えて、フックが使用されることもある。
【符号の説明】
【0044】
A1 ,A4 :支持部
B:ビス(固定部材)
C1 ,C41〜C44:連結部
C1a,C41a 〜C44a :最小断面積部
E1 〜E4 :配線・配管材支持具連結体
F1 ,F4 :固定部
J:接続部
N:釘(固定部材)
P1 ,P4 :配線・配管材支持具のピッチ
Q:配線・配管材支持具の連結方向
S1 ,S3 ,S4 :配線・配管材支持具
W:壁面(構築面)
13:固定部の環状空間部(被嵌合孔)
22:嵌合ピン
51,52:結束支持紐
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の配線・配管材支持具を一つずつ切離し可能なように連結部を介して連結された配線・配管材支持具連結体、及びその固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の配線・配管材支持具、例えばスラブ床板の下面等に接着剤を介して吊り下げてケーブルを支持するケーブル支持具が特許文献1に開示されている。このようなケーブル支持具は、施工現場において同時に多数使用されることが多いため、これに対応して、複数個の各ケーブル支持具が連結部を介して切り離し可能に連結されている。
【0003】
この場合において、作業者の便宜からすると、必ず一つずつ順次取り外せるようにすることが望ましいが、切り離し時の力の加え具合によって、同時に二つ又は二つ以上が一緒に切り離されたりすることがある。この場合には、再度、二つ又は二つ以上が連なったものを一つに切り離す必要があると共に、次に使用する残りの一つ又は一つ以上の配線・配管材支持具を周辺に保管するか、或いは自身で保持しながら本来の作業を行う必要があって、不便であった。
【0004】
一方、ケーブル支持具には、釘又はビスを介して壁面に固定するものもあり、複数個のケーブル支持具が連結された状態で、端部の一個を切り離して、ケーブル支持具を一個ずつハンマーを使用して叩き付けて固定している。しかし、切り離された一個のケーブル支持具は、人の手(指先)で保持するには小さ過ぎるものがあって、ハンマーによる叩付け作業が難しいと共に、ケーブル支持具を保持している手を打ち損じて怪我をすることもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−289960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、連結部を介して複数連結されている配線・配管材支持具の一つ又は複数を固定部材により構築面に固定した状態で、非固定の残りの1又は複数の配線・配管材支持具を切離し可能にすることにより、当該切離し作業を容易にし、併せて配線・配管材支持具の固定作業を容易にすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための請求項1の発明は、釘又はビスからなる固定部材が貫通される貫通孔が形成され、当該固定部材により建物の構築面に固定される固定部と、配線・配管材を支持する支持部とを備えた配線・配管材支持具が連結部を介して複数連結されてなり、前記連結部は、前記固定部材により構築面に固定された配線・配管材支持具に対して他の配線・配管材支持具を引っ張ることにより分離可能な連結強度を有していることを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明によれば、配線・配管材支持具が複数連結された配線・配管材支持具連結体を構築面に宛てがって、当該配線・配管材支持具連結体の一端から起算して1又は連続した複数の配線・配管材支持具を前記構築面に固定するには、配線・配管材支持具連結体における非固定の配線・配管材支持具の部分を一方の手で掴むことにより、固定対象である一端部の配線・配管材支持具の固定位置を定めて、他方の手により、当該配線・配管材支持具に設けられた固定部材を工具により打ち付けて、当該配線・配管材支持具を構築面に固定する。このように、一つの配線・配管材支持具を固定する場合にも、複数の配線・配管材支持具が連結された状態で行って、非固定に係る配線・配管材支持具を手で掴んで行えるので、配線・配管材支持具連結体から分離された1つの配線・配管材支持具を指先で掴んで当該配線・配管材支持具を固定するのに比較して、配線・配管材支持具の固定作業を安定した姿勢で容易に行える。
【0009】
また、隣接する配線・配管材支持具を連結している連結部は、固定部材により構築面に固定された配線・配管材支持具に対して他の配線・配管材支持具を引っ張ることにより分離可能な連結強度を有しているので、1又は複数の配線・配管材支持具の固定後には、固定された当該配線・配管材支持具に隣接する別の配線・配管材支持具の部分を引っ張ると、連結部が破断される。このように、配線・配管材支持具連結体における非固定の配線・配管材支持具を、固定前における配線・配管材支持具の位置決めのための把持、及び当該配線・配管材支持具の固定後における連結部の破断に使用できるので、配線・配管材支持具の固定、及び分離の各作業が容易となる。
【0010】
また、請求項2の発明は、釘又はビスからなる固定部材と、釘又はビスからなる固定部材が貫通される貫通孔が形成され、当該固定部材により建物の構築面に固定される固定部と、配線・配管材を支持する支持部とを備えた配線・配管材支持具が連結部を介して複数連結されてなり、前記固定部材は、前記固定部の貫通孔に部分挿入されて仮保持され、前記連結部は、前記固定部材により構築面に固定された配線・配管材支持具に対して他の配線・配管材支持具を引っ張ることにより分離可能な連結強度を有していることを特徴としている。
【0011】
請求項1の発明は、固定部材は、配線・配管材支持具の固定部に設けられた貫通孔に仮保持されている場合と、固定部に仮保持されていない場合との双方を含むが、請求項2の発明では、前者の場合であるので、構築面に個々の配線・配管材支持具を固定する都度、固定部材を探す必要がなくなって、請求項1の発明の上記作用効果に加えて、配線・配管材支持具の固定作業を迅速に行えるという利点がある。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、配線・配管材支持具の連結ピッチは、固定部材を構築面に対して打ち付ける工具が隣接する別の固定部材に干渉しない長さであることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明によれば、複数の配線・配管材支持具が連結された配線・配管材支持具連結体の状態で、一端から起算して1又は連続した複数の配線・配管材支持具を工具により構築面に固定する際に、当該工具が隣接する別の固定部材に当たらないので、固定予定のない配線・配管材支持具を構築面に誤って固定してしまう恐れがなくなると共に、工具が隣接する固定部材に当たる恐れがないので、思い切って工具を叩き付けることができて、配線・配管材支持具の固定作業の能率も向上する。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記連結部は、固定部と支持部との間に形成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項4の発明によれば、配線・配管材支持具の連結ピッチを大きくできて、配線・配管材支持具の固定後における連結部の破断時において、固定された配線・配管材支持具に隣接する別の配線・配管材支持具を掴んで引っ張る作業がし易くなると共に、隣接する固定部の間に支持部が存在する構成であるために、請求項3の発明を実現し易くなる。
【0016】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、連結方向に沿って一方の端部に形成された固定部と、他方の端部に形成された固定部又は支持部とには、2本の配線・配管材支持具連結体を嵌合により前記連結方向に連結可能な嵌合部、及び被嵌合部がそれぞれ形成されていることを特徴としている。
【0017】
請求項5の発明によれば、配線・配管材支持具を構築面に固定して順次分断させることにより配線・配管材支持具連結体の長さが短くなった場合に、短くなった当該配線・配管材支持具連結体と、未使用の別の配線・配管材支持具連結体とを互いに連結させられる。これにより、短くなった配線・配管材支持具連結体の配線・配管材支持具を構築面に固定する際に、手で掴む部分を確保できて、配線・配管材支持具連結体が短くなっても、配線・配管材支持具を安定して構築面に固定できる。
【0018】
また、請求項6の発明は、請求項1又は2に記載の配線・配管材支持具連結体を構成する1又は複数の配線・配管材支持具を構築面に固定する方法であって、一端の1つの配線・配管材支持具、又は当該一端から起算して連続した複数の配線・配管材支持具を固定部材を介して構築面に固定した後に、残りの未使用の配線・配管材支持具を引っ張ることにより、連結部を破断させて分離させることを特徴としている。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1又は2に記載の配線・配管材支持具連結体を構成する1又は複数の配線・配管材支持具を構築面に固定する方法であり、その作用効果は、請求項1の発明について記載した通りである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、一つの配線・配管材支持具を固定する場合にも、複数の配線・配管材支持具が連結された状態で行って、非固定に係る配線・配管材支持具を手で掴んで行えるので、配線・配管材支持具連結体から分離された1つの配線・配管材支持具を指先で掴んで当該配線・配管材支持具を固定するのに比較して、配線・配管材支持具の固定作業を安定した姿勢で容易に行える。また、隣接する配線・配管材支持具を連結している連結部は、固定部材により構築面に固定された配線・配管材支持具に対して他の配線・配管材支持具を引っ張ることにより分離可能な連結強度を有しているので、1又は複数の配線・配管材支持具の固定後には、固定された当該配線・配管材支持具に隣接する別の配線・配管材支持具の部分を引っ張ると、連結部が破断される。このように、配線・配管材支持具連結体における非固定の配線・配管材支持具を、固定前におるけ配線・配管材支持具の位置決めのための把持、及び当該配線・配管材支持具の固定後における連結部の破断に使用できるので、配線・配管材支持具の固定、及び分離の各作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】配線・配管材支持具連結体E1 を釘Nの突出側から見た全体斜視図である。
【図2】同じく釘Nの非突出側から見た部分斜視図である。
【図3】(a),(b)は、それぞれ配線・配管材支持具連結体E1 の平面図及び正面図である。
【図4】配線・配管材固定具連結体E1 を構成する配線・配管材支持具S1 の部分の拡大縦断面図である。
【図5】非固定の配線・配管材支持具S1 を一方の手で持って、他方の手で持ったハンマーHにより配線・配管材支持具連結体E1 の一端の配線・配管材支持具S1 を壁面Wに固定している状態の斜視図である。
【図6】壁面Wに固定された配線・配管材支持具S1 の連結部C1 に対して外力を加えて、固定済の配線・配管材支持具S1 と他の配線・配管材支持具S1 とを分離している状態の斜視図である。
【図7】壁面Wに固定された支持具S1 の支持部A1 を90°回して下方に配置させた状態の斜視図である。
【図8】(a),(b)は、それぞれ長手方向の一部を省略図示した配線・配管材支持具連結体E2 の平面図、及び正面図である。
【図9】2本の配線・配管材支持具連結体E2 の接続部Jを主体に示す斜視図である。
【図10】同じく縦断面図である。
【図11】配線・配管材支持具連結体E3 を構成する複数の配線・配管材支持具S3 が分離された状態の斜視図である。
【図12】同じく連結状態の斜視図である。
【図13】ビスBの側から見た配線・配管材支持具連結体E4 の斜視図である。
【図14】配線・配管材支持具連結体E4 の各配線・配管材支持具S4 を連結する各連結部C41〜C44の連結強度が異なることを示す部分正面図である。
【図15】図14のX−X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、複数の実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
最初に、図1ないし図4を参照して、固定部F1 と支持部A1 との間に連結部C1 が形成された実施例1の配線・配管材支持具連結体(以下、単に「支持具連結体」という)E1 について説明する。図1は、支持具連結体E1 を釘Nの突出側から見た全体斜視図であり、図2は、同じく釘Nの非突出側から見た部分斜視図であり、図3(a),(b)は、それぞれ支持具連結体E1 の平面図及び正面図であり、図4は、支持具連結体E1 を構成する配線・配管材支持具S1 の部分の拡大縦断面図である。支持具連結体E1 は、複数の配線・配管材支持具(以下、単に「支持具」という)S1 が連結部C1 を介して連結された構成であり、樹脂の射出成形により一体に形成されている。支持具S1 は、固定面である壁面Wに対して当接して密着される密着面1の側のみが開口された二重円筒状に形成された固定部F1 と、当該固定部F1 の密閉壁部2の中心部に部分挿入により仮保持されて、固定状態において当該固定部F1 を貫通する釘Nと、前記固定部F1 の外周面における複数の支持具S1 の連結方向(二重円筒状の固定部F1 の半径方向)Qに沿って大きく突出して形成されて、結束支持紐51により結束された配線・配管材(図示せず)を吊り下げて支持する支持部A1 とで構成される。
【0024】
固定部F1 は、内側周壁部3と外側周壁部4とが同心状に配置されて、軸心方向の一方が密閉壁部2で閉塞された二重円筒形状をなしていて、当該密閉壁部2の中心に釘Nが貫通されて、前記内側周壁部3の内部空間である貫通孔10を通って、当該釘Nの先端が開口面である密着面1に臨んだ状態となって、固定部F1 に釘Nが仮保持されている。支持部A1 は、結束支持紐51と協働して、壁面Wに対して配線・配管材を吊下げ保持する部分であって、壁面Wに密着する密着部5と、当該密着部5の幅方向の中央部に配置され、しかも当該密着部5に対して固定部F1 の軸心方向に沿って所定距離だけ離れることにより、結束支持紐51を挿入する紐挿通孔6を形成して、当該結束支持紐51を巻き掛けるための紐巻掛け部7と、当該紐巻掛け部7と前記密着部5とを固定部F1 から離れた側の端部で一体に連結する一体接続部8とが構成される。当該一体接続部8は、密着部5から紐巻掛け部7に向けて幅が徐々に狭く形成されていると共に、密着部5から離れるに従って高さが低くなって、隣接する別の固定部F1 の外側周壁部4に連結されることにより、一体接続部8の先端部は連結部C1 を形成している。この連結部C1 は、上記のような形状であるために、当該連結部C1 における固定部F1 と接続される部分が、幅及び高さの双方の寸法が最も小さくなっていて、換言すると最も断面積が小さくなっていて、引張り力、曲げ力、捩り力等の外力を作用させた場合に、当該外力が集中的に作用して応力集中が生じて最も切断され易い最小断面積部C1a(図4及び図6参照)となっている。このため、当該連結部C1 における最小断面積部C1aは、支持具S1 において、引張り力、曲げ力、捩り力等の外力に対して最も弱い部分であって、前記外力が作用した場合には、必ず破断される部分である。
【0025】
前記連結部C1 の最小断面積部C1aは、支持具連結体E1 を構成している複数の支持具S1 を1又は複数の単位で分離する部分であって、その連結強度は、釘Nにより固定部F1 を壁面Wに固定した状態における当該釘Nの固定強度よりも小さく設定されている。従って、複数の支持具S1 が連結部C1 で連結された支持具連結体E1 を、そのままの連結状態において、一端から起算した1又は連続した複数の固定部F1 を釘Nにより壁面Wに固定した状態において、固定済みの固定部F1 に設けられた連結部C1 の最小断面積部C1aに上記外力を加えると、当該最小断面積部C1aで、固定済みの固定部F1 と、未固定の固定部F1 が連結された支持具連結体E1 とに分離される。
【0026】
また、実施例1の支持具連結体E1 は、固定部F1 と支持部A1 との間に連結部C1 が形成された構成である。即ち、支持部A1 は、複数の支持具S1 の連結方向Qに沿って配置されていて、ピッチを大きくするためのみの部分を無駄に設けることなく、本来的に必要な支持具S1 の存在によって、複数の支持具S1 の配置のピッチP1 を大きくできる。この点、後述の実施例4の支持具連結体E4 の場合には、支持部A4 が連結方向Qと直交する方向Rに配置されているため、複数の支持具A4 のピッチP4 を大きくしようとすると、連結部C41〜C44の長さを無駄に長くせざるを得ない構造と異なる。実施例1の支持具S1 のピッチP1 は、(30.8mm)であり、二重円筒状の固定部F1 の外径は、(12mm)である。このため、後述のように、支持具連結体E1 の非固定の支持具S1 を一方の手で持って、他方の手で持ったハンマーHにより支持具S1 の釘Nを叩く場合において、隣接する別の釘Nを叩く恐れが少なくなって、釘Nの固定作業を安定して行える利点がある。なお、図1及び図3において、9は、支持具連結体E1 の長手方向の一端の支持具S1 の固定部F1 に連結方向Qに沿って設けられて、作業者の腰ベルトに取付けられた吊下保持具に支持具連結体E1 を吊下げ保持するための吊環を示す。当該吊環9により、支持具連結体E1 を作業者の腰ベルトに吊り下げた場合には、複数の結束支持紐51は、前記支持具連結体E1 の連結方向Qにほぼ沿って垂れ下げられる。
【0027】
そして、支持具連結体E1 の一端の支持具S1 を壁面Wに固定するには、図5に示されるように、固定対象の支持具S1 を隣接する別の支持具S1 から分離させることなく一体に連結されたままで、支持具連結体E1 の全体を一方の手で持って、固定対象の一端の支持具S1 を固定予定位置に配置する。この状態で、他方の手で持ったハンマーHにより、固定対象の支持具S1 の釘Nの頭部を叩き付けると、当該釘Nは、支持具S1 の二重円筒状の固定部F1 を貫通して、壁面Wに突刺されて、当該釘Nによって、支持具連結体E1 の一端の支持具S1 が壁面Wに固定される。固定対象の支持具S1 の配置、及びハンマーHによる釘Nに対する叩き付けは、いずれも固定対象の支持具S1 が他の複数の支持具S1 に一連に連結された状態で行われて、固定対象の支持具S1 を指先で直接に掴まなくても、安定して行うことができて、ハンマーHによる釘打ちの際に、自身の指先を叩き損じることがない。また、支持具連結体E1 を構成している複数の支持具S1 のピッチP1 は、ハンマーHによる釘打ちの際に、当該ハンマーHが隣接する別の支持具S1 の釘Nに誤って当たらない長さになっているので、固定対象の支持具S1 のみを確実に固定位置に固定できる。
【0028】
固定対象の支持具S1 が壁面Wに固定された状態では、残りの別の支持具S1 は全て固定済の支持具S1 に連結されており、この状態で、図6に示されるように、固定済の支持具S1 に対して隣接する別の支持具S1 の部分に引張り力T、曲げ力M、或いは捩じり力等の外力を加えると、固定済みの支持具S1 と、隣接する別の支持具S1 とは、連結部C1 における最も断面積の小さな最少断面積部C1aに応力集中が発生して、当該最少断面積部C1aで破断されて、互いに分離される。その後に、図7に示されるように、分離されて壁面Wに固定された支持具S1 の支持部A1 が垂直方向に配置されるように、ほぼ90°だけ廻しておく。支持具S1 の支持部A1 における連結部C1 の側には、紐巻掛け部7に接続する傾斜面部12が両面に形成されていて、前記支持部A1 を垂直配置した状態では、結束支持紐51の巻掛け部は、両面の各傾斜面部12に沿って巻き掛けられる(図7参照)。なお、図6及び図7において、11は、支持部A1 の端部に形成された破断部を示す。
【0029】
また、上記固定例では、1つの支持具S1 を壁面Wに固定した後に、他の全ての支持具S1 が連結された状態で、連結部C1 の部分で破断して分離させる例であるが、2以上の複数の支持具S1 をピッチP1 と同一間隔をおいて固定する場合には、当該複数の支持具S1 のそれぞれの釘Nを順次叩き付けて、複数の支持具S1 を壁面Wに固定した後に、壁面Wに固定された複数の支持具S1 と、当該複数の支持具S1 に隣接する別の支持具S1 との連結部C1 を破断すればよい。この場合には、結束支持紐51が巻き掛けられた支持部A1 は、水平に配置されたままにしておく。
【実施例2】
【0030】
次に、図8〜図10を参照して、本発明の第2実施例の支持具連結体E2 について、実施例1の支持具連結体E1 と同一部分には同一符号を付し、重複説明を避けて異なる部分についてのみ説明する。図8(a),(b)は、それぞれ長手方向の一部を省略図示した支持具連結体E2 の平面図、及び正面図であり、図9は、2本の支持具連結体E2 の接続部Jを主体に示す斜視図であり、図10は、同じく縦断面図である。実施例1の支持具連結体E1 において、各支持具S1 を順次壁面Wに固定して、最後の1つの支持具S1 を壁面Wに固定する場合には、指先で直接に掴んだ状態で、ハンマーHによって釘Nを叩き付けざるを得ず、手のサイズに比較して支持具S1 が小さいので、掴みずらく、ハンマーHにより、支持具S1 を掴んでいる手を叩き損じる恐れがある。
【0031】
そこで、図9及び図10に示されるように、実施例2の支持具連結体E2 は、2本の支持具連結体E2 を連結方向Qに沿って接続可能にして、支持具連結体E2 が短くなった場合に、別の支持具連結体E2 を接続することにより、支持具S1 の固定時に、ハンマーHを持たない手によって、当該支持具S1 を安定して支持できるようにした。即ち、支持具連結体E2 の長手方向の一端である支持部A1 の先端部には、延設板部21が接続方向に延設されて、当該延設板部21の先端部に、仮保持された釘Nと平行となって嵌合ピン22が設けられている。支持具S1 の固定時に壁面Wに密着される延設板部21の密着面は、固定部F1 の密着面1及び支持部A1 の密着部5の密着面と同一平面上に形成されていて、前記嵌合ピン22は、延設板部21の密着面と反対の面に形成されている。一方、支持具連結体E2 の長手方向の他端である固定部F1 の外側周壁部4には、当該外側周壁部4と内側周壁部3との間の環状空間部13に、別の支持具連結体E2 の延設板部21を嵌合可能にするための切欠き状の嵌合溝23が開口端面の側に開口して設けられている。嵌合ピン22は、折損を容易にするために、基端部に盗み部22aが全周に形成されて他の部分よりも細くなっている。
【0032】
このため、図9及び図10に示されるように、一方の支持具連結体E2 の一端の固定部F1 の環状空間部13に、他方の支持具連結体E2 の一端の嵌合ピン22を、当該固定部F1 の開口面の側から挿入して嵌合させると、前記他方の支持具連結体E2 の延設板部21が一方の支持具連結体E2 の嵌合溝23に嵌合されて、2本の支持具連結体E2 が、複数の支持具S1 の連結方向Qに沿って接続される。
【0033】
そして、支持具S1 を壁面Wに固定した後に、固定済の支持具S1 を分離させることにより、支持具連結体E2 が短くなった場合には、上記のようにして、短くなった支持具連結体E2 に、別の支持具連結体E2 を接続させて全長を長くすることにより、短くなった支持具連結体E2 を構成する支持具S1 を壁面Wに固定する際に、手で掴む部分を確保できて、支持具連結体E2 が短くなった場合でも、支持具S1 が未使用の元の長さと同等の状態で、支持具S1 の固定作業を行える。嵌合溝23が形成された支持具S1 が壁面Wに固定された後に、2本の支持具連結体E2 の接続部Jを破断して分離させるには、全ての支持具S1 が揃って連結されている支持具連結体E2 を引っ張ったり、曲げたりすると、当該支持具連結体E2 の嵌合ピン22が折損されて、固定済の支持具S1 と当該支持具連結体E2 とが容易に分離される。このため、嵌合ピン22は、その折損に必要な力が、支持具連結体E2 の連結部C1 の最小断面積部C1aの破断に必要な力よりも小さいことが必要となり、この観点から、嵌合ピン22の盗み部22aの深さが定められる。
【実施例3】
【0034】
実施例1,2の支持具連結体E1 ,E2 は、いずれも当該支持具連結体E1 ,E2 を構成する複数の支持具S1 は、連結部C1 で連結されることにより、全長に亘って一連に連結された構成であって、一端の支持具S1 から壁面Wに釘Nにより順次固定して、固定済の支持具S1 に対して残りの1又は複数の支持具S1 を引っ張ったり、曲げたりして、前記連結部C1 を破断して分離させる構成である。これに対して、実施例3の支持具連結体E3 は、図11及び図12に示されるように、個々の支持具S3 は、独立分離していて、前記延設板部21、嵌合ピン22及び嵌合溝23の使用により、独立分離している複数の支持具S3 が連結される構成である。独立分離している複数の支持具S3 が上記のようにして連結された支持具連結体E3 の一端の支持具S3 を固定する際に、ハンマーHを持たない手により別の支持具S3 を掴むことにより、支持具S3 の固定位置、及びハンマーHによる釘Nの叩き付け作業の双方を安定化させられる作用、並びに嵌合ピン22が破断されて、壁面Wに固定された支持具S3 に対して残りの支持具S3 が分離される作用は、実施例1,2の支持具連結体E1 ,E2 と同様である。
【実施例4】
【0035】
次に、図13〜図15を参照して、実施例4の支持具連結体E4 について、前記各支持具連結体E1 〜E3 と異なる部分についてのみ説明する。図13は、ビスBの側から見た支持具連結体E4 の斜視図であり、図14は、同じく支持具連結体E4 の各支持具S4 を連結する各連結部C41〜C44の連結強度が異なることを示す部分正面図であり、図15は、図14のX−X線断面図である。実施例4の支持具連結体E4 は、実施例1〜3の各支持具連結体E1 〜E3 に対して、各連結部C41〜C44は、隣接する支持具S4 の固定部F4 の間に存在していて、配線・配管材を支持する支持部A4 は、支持具S4 の連結方向Qに沿っていなくて、固定部F4 に対して当該連結方向Qと直交する方向Rに配置されている構成が異なる。
【0036】
支持具連結体E4 は、図13〜図15に示されるように、偶数個(実施例では10個)の支持具S4 が連結部C41〜C44を介して一定ピッチP4 で互いに連結されたものである。支持具S4 は、ビスBにより壁面Wに固定される固定部F4 と、当該固定部F4 の外周部における連結方向Qと直交する方向Rに沿って膨出して形成されて、配線・配管材(図示せず)を結束して支持する狭幅帯状の結束支持紐52が挿通される紐挿通孔31が形成された支持部A4 とから成る。紐挿通孔31は、連結方向Qに沿って長孔状となっていて、当該紐挿通孔31に結束支持紐52が挿通されることにより、結束支持紐52は、固定部F4 に二枚重ね状となって垂れ下げられる。固定部F4 は、前記支持具S1 ,S3 の固定部F1 と同様に、二重円筒構造になっていて、当該固定部F4 の密閉壁部2にビスBが螺入されて、その先端部が固定部F4 の密着面1を形成する開口面に臨んだ状態で、当該固定部F4 にビスBが仮保持されている。支持具連結体E4 の固定部F4 の外径は、前記各連結具E1 〜E3 の固定部F1 の外径と同じ(12mm)であり、複数の支持具S4 のピッチP4 は、(14mm)であって、実施例1〜3の各支持具連結体E1 〜E3 を構成する複数の支持具S1 のピッチP1 (=30.8mm)よりも遥かに小さい。
【0037】
各支持具S4 の連結方向Qに沿った中央の2本を除く残りの全ての支持具S4 は、支持部A4 に対して位相が90°異なる部分において断面方形の連結部C41〜C44を介して互いに連結されている。中央の2つの支持具S4 は、固定部F4 における支持部A4 とほぼ対向する部分であって、しかも当該固定部F4 の開口に近い部分が吊下部32を介して連結されている。吊下部32の上端部には、リング状の吊環33が形成されている。このため、支持具連結体E4 は、連結方向の中央に配置された吊環33を、作業者のベルトに挿通された吊下保持具(図示せず)に吊り下げることにより、前記吊下部32の両側がバランスすることにより天秤状に吊り下げられる。なお、図14及び図15において、一点鎖線41は、支持具連結体E4 の左右対称線を示す。
【0038】
各支持具S4 を連結する断面方形の連結部C41〜C44は、図14及び図15に示されるように、両端から中央部に向けた連結方向Qに沿って断面積を徐々に大きくすることにより、同方向に沿って連結強度を徐々に大きくしてある。断面方形の各連結部C41〜C44は、支持具S4 の固定部F4 に連結される一端部の断面積のみを、残りの部分の断面積よりも小さくすることにより、断面積の最も小さな最小断面積部C41a〜C44aで切断されて切り離されるようになっている。なお、図14において、ハッチングで示される部分は、それぞれ各連結部C41〜C44の前記最小断面積部C41a〜C44a以外の部分の横断面である。
【0039】
各連結部C41〜C44の連結方向Qに沿った長さ(d)は全て同一であるが、断面を構成する各辺の長さg1(g2,g3,g4), k1(k2,k3,k4)は、連結方向Qに沿って両端から中央部に向けて徐々に大きくなっている。即ち、各連結部C41〜C44の横断面を構成する各辺の長さg1(g2,g3,g4), k1(k2,k3,k4)の間には、以下の関係が成立している。
g1 <g2 <g3 <g4
k1 <k2 <k3 <k4
各連結部C41〜C44の断面積は、それぞれ(g1 ×k1), (g2 ×k2), (g3 ×k3), (g4 ×k4)で表されるため、当該断面積は、両端から連結方向Qに沿った中央部に向けて徐々に大きくなっている。そして、各連結部C41〜C44の最小断面積部C41a〜C44aの断面積も同様の状態で変化しているので、複数の支持具S4 を連結する各連結部C41〜C44の連結強度は、両端から連結方向Qに沿った中央部に向けて徐々に大きくなる。しかも、各連結部C41〜C44において最も連結強度の大きな連結部C44の連結強度は、ビスBにより支持具S4 を壁面Wに固定した場合の固定強度よりも小さく定めてある。
【0040】
従って、支持具連結体E4 の一端の支持具S4 からビスBを介して順次壁面Wに固定し、この状態で、一体に連結されている残りの支持具S4 に引張り力、曲げ力、或いは捩り力を加えると、固定済の支持具S4 と、当該固定済の支持具S4 に隣接する別の支持具S4 とを連結している連結部C41(C42〜C44)が、最も連結強度の小さな部分であるため、当該連結部C41(C42〜C44)の最小断面積部C41a(C42a〜C44a)が必ず破断されて、当該連結部C41(C42〜C44)の部分で必ず分離される。
【0041】
上記したように、実施例4の支持具連結体E4 を構成する複数の支持具S4 のピッチP4 は(14mm)であって、実施例1〜3の各支持具連結体E1 〜E3 を構成する複数の支持具S1 ,S3 のピッチP1 (=30.8mm)よりも遥かに小さいが、実施例4では、支持具S4 を壁面Wに固定する固定部材はビスBで構成されていて、当該ビスBをドライバー35により廻して螺入する際に、隣接する別のビスが当該ドライバー35を廻す操作の支障にはならない(図14参照)点が、ハンマーの衝撃力により壁面Wに突刺させる釘Nと異なる。
【0042】
また、上記実施例1〜4の各支持具連結体E1 〜E4 においては、連結部C1 ,C41〜C44に最小断面積部C41a(C42a〜C44a)を設けて、この部分に応力集中を発生させて、切断されるように構成してあるが、連結部における切断部(切断を確実に発生させる部分)は、断面積を小さくする他に、薄肉部にしたり、スリット(溝)を設けたりすることも可能である。
【0043】
なお、上記実施例1〜4においては、支持具S1 ,S3 ,S4 に形成された紐挿通孔6,31に結束支持紐51,52を挿通支持させて、当該結束支持紐51,52により配線・配管材を結束して支持する構成であるが、前記結束支持紐51,52に替えて、フックが使用されることもある。
【符号の説明】
【0044】
A1 ,A4 :支持部
B:ビス(固定部材)
C1 ,C41〜C44:連結部
C1a,C41a 〜C44a :最小断面積部
E1 〜E4 :配線・配管材支持具連結体
F1 ,F4 :固定部
J:接続部
N:釘(固定部材)
P1 ,P4 :配線・配管材支持具のピッチ
Q:配線・配管材支持具の連結方向
S1 ,S3 ,S4 :配線・配管材支持具
W:壁面(構築面)
13:固定部の環状空間部(被嵌合孔)
22:嵌合ピン
51,52:結束支持紐
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釘又はビスからなる固定部材が貫通される貫通孔が形成され、当該固定部材により建物の構築面に固定される固定部と、配線・配管材を支持する支持部とを備えた配線・配管材支持具が連結部を介して複数連結されてなり、
前記連結部は、前記固定部材により構築面に固定された配線・配管材支持具に対して他の配線・配管材支持具を引っ張ることにより分離可能な連結強度を有していることを特徴とする配線・配管材支持具連結体。
【請求項2】
釘又はビスからなる固定部材と、釘又はビスからなる固定部材が貫通される貫通孔が形成され、当該固定部材により建物の構築面に固定される固定部と、配線・配管材を支持する支持部とを備えた配線・配管材支持具が連結部を介して複数連結されてなり、
前記固定部材は、前記固定部の貫通孔に部分挿入されて仮保持され、
前記連結部は、前記固定部材により構築面に固定された配線・配管材支持具に対して他の配線・配管材支持具を引っ張ることにより分離可能な連結強度を有していることを特徴とする配線・配管材支持具連結体。
【請求項3】
配線・配管材支持具の連結ピッチは、固定部材を構築面に対して打ち付ける工具が隣接する別の固定部材に干渉しない長さであることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線・配管材支持具連結体。
【請求項4】
前記連結部は、固定部と支持部との間に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の配線・配管材支持具連結体。
【請求項5】
連結方向に沿って一方の端部に形成された固定部と、他方の端部に形成された固定部又は支持部とには、2本の配線・配管材支持具連結体を嵌合により前記連結方向に連結可能な嵌合部、及び被嵌合部がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の配線・配管材支持具連結体。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の配線・配管材支持具連結体を構成する1又は複数の配線・配管材支持具を構築面に固定する方法であって、
一端の1つの配線・配管材支持具、又は当該一端から起算して連続した複数の配線・配管材支持具を固定部材を介して構築面に固定した後に、残りの未使用の配線・配管材支持具を引っ張ることにより、連結部を破断させて分離させることを特徴とする配線・配管材支持具の固定方法。
【請求項1】
釘又はビスからなる固定部材が貫通される貫通孔が形成され、当該固定部材により建物の構築面に固定される固定部と、配線・配管材を支持する支持部とを備えた配線・配管材支持具が連結部を介して複数連結されてなり、
前記連結部は、前記固定部材により構築面に固定された配線・配管材支持具に対して他の配線・配管材支持具を引っ張ることにより分離可能な連結強度を有していることを特徴とする配線・配管材支持具連結体。
【請求項2】
釘又はビスからなる固定部材と、釘又はビスからなる固定部材が貫通される貫通孔が形成され、当該固定部材により建物の構築面に固定される固定部と、配線・配管材を支持する支持部とを備えた配線・配管材支持具が連結部を介して複数連結されてなり、
前記固定部材は、前記固定部の貫通孔に部分挿入されて仮保持され、
前記連結部は、前記固定部材により構築面に固定された配線・配管材支持具に対して他の配線・配管材支持具を引っ張ることにより分離可能な連結強度を有していることを特徴とする配線・配管材支持具連結体。
【請求項3】
配線・配管材支持具の連結ピッチは、固定部材を構築面に対して打ち付ける工具が隣接する別の固定部材に干渉しない長さであることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線・配管材支持具連結体。
【請求項4】
前記連結部は、固定部と支持部との間に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の配線・配管材支持具連結体。
【請求項5】
連結方向に沿って一方の端部に形成された固定部と、他方の端部に形成された固定部又は支持部とには、2本の配線・配管材支持具連結体を嵌合により前記連結方向に連結可能な嵌合部、及び被嵌合部がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の配線・配管材支持具連結体。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の配線・配管材支持具連結体を構成する1又は複数の配線・配管材支持具を構築面に固定する方法であって、
一端の1つの配線・配管材支持具、又は当該一端から起算して連続した複数の配線・配管材支持具を固定部材を介して構築面に固定した後に、残りの未使用の配線・配管材支持具を引っ張ることにより、連結部を破断させて分離させることを特徴とする配線・配管材支持具の固定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−226555(P2011−226555A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96871(P2010−96871)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】
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