説明

配線・配管材支持具

【課題】配線・配管材の支持向きを任意に選択していずれの向きにも支持させることのできる配線・配管材支持具を提供する。
【解決手段】金属製の棒材が屈曲されてケーブルCの支持部3が形成された支持具1であって、一端側に、プレス成形によって棒材の軸と直交する方向を厚み方向として圧潰された第1圧潰部11を設け、同じく一端側に、プレス成形によって棒材の軸と直交し、かつ、第1圧潰部11と直交する方向を厚み方向として圧潰された第2圧潰部21を設け、各圧潰部にはそれぞれ、梁31の被固定面32に固定するためのビス41が挿通される貫通孔を設け、各貫通孔は各圧潰部の厚み方向に貫通形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の梁、桟、壁面等の構造物に沿ってケーブル、電線管等の配線・配管材を布設すべく、構造物に固定されて配線・配管材を支持する配線・配管材支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の支持具は、梁等の被固定面に固定するための固定部と配線・配管材を支持する支持部とを備えており、所定間隔毎にビス等の固定具を介して梁等の被固定面に固定され、フック形状等に形成された支持部にケーブル等を載置支持させることによりケーブル等を構造物に沿って布設している。固定部は一般にはビス等の固定具が挿通される挿通孔を備え、これにビス等を挿通し、構造物に螺着することにより支持具を固定している。この種の支持具として、例えば、特許文献1に記載のケーブル支持具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3059898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の支持具は、固定部を1つしか備えていないため、配線・配管材の支持方向は1方向に限定されていた。このため、布設経路に沿った向きに支持させるには支持方向の異なる複数種類の支持具を用意しなければならなかった。これにより、支持具の取り扱い、運搬、保管が煩雑なものとなり、コスト高ともなっていた。
【0005】
そこで、本発明は、配線・配管材の支持向きを任意に選択していずれの向きにも支持させることのできる配線・配管材支持具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の配線・配管材支持具は、金属製の棒材が屈曲されて配線・配管材の支持部が形成されたものであって、一端側に、プレス成形によって前記棒材の軸と直交する方向を厚み方向として圧潰された第1圧潰部が設けられ、前記一端側または他端側に、プレス成形によって前記棒材の軸と直交し、かつ、前記第1圧潰部と交差する方向を厚み方向として圧潰された第2圧潰部が設けられている。そして、前記各圧潰部はそれぞれ、構造物に固定するための固定具が挿通される貫通孔を有し、前記各貫通孔は前記各圧潰部の厚み方向に貫通形成されている。
【0007】
即ち、貫通孔を有する第1圧潰部と第2圧潰部は、それぞれ固定具を介して構造物に固定するための固定部を形成するものであるから、支持具は複数の固定部を備える。かつ、第1圧潰部と第2圧潰部とは互いに圧潰方向が異なる。したがって、支持具は固定向きの異なる複数の固定部を備えたものである。
【0008】
ここで、第2圧潰部は、プレス成形によって棒材の軸と直交し、かつ、第1圧潰部と交差する方向を厚み方向として圧潰されたものであり、このように形成された第2圧潰部が複数設けられる場合もある。
【0009】
請求項2の配線・配管材支持具は、第1圧潰部及び第2圧潰部の各貫通孔が互いに略直交する方向に貫通するよう、各圧潰部の圧潰方向は互いに略直交するものである。
【0010】
請求項3の配線・配管材支持具は、第1圧潰部が、その貫通孔の貫通方向が棒材の屈曲方向と略直交するよう、前記棒材の屈曲方向と略平行する方向に偏平化され、第2圧潰部が、その貫通孔の貫通方向が前記棒材の屈曲方向と略平行するよう、前記棒材の屈曲方向と略直交する方向に偏平化されている。即ち、第1圧潰部は圧潰により偏平化した面が棒材の屈曲方向と略平行し、第2圧潰部は圧潰により偏平化した面が棒材の屈曲方向と略直交している。
【0011】
請求項4の配線・配管材支持具は、第1圧潰部及び前記第2圧潰部がともに、棒材の一端側に軸方向に沿って設けられている。
【0012】
請求項5の配線・配管材支持具は、請求項3に記載の第1圧潰部が、該第1圧潰部における前記棒材の反屈曲側の端面が、該棒材における反屈曲側の外面と略同一線上に位置するよう圧潰されている。即ち、貫通孔の貫通方向が棒材の屈曲方向と略直交するよう圧潰された第1圧潰部において、その第1圧潰部における棒材の反屈曲側の端面が、棒材の垂下する部分における反屈曲側の外面と略同一線上に位置している。
【0013】
ここで、第1圧潰部における棒材の反屈曲側の端面とは、即ち、第1圧潰部において構造物の被固定面と対向する側の端面のことであり、棒材における反屈曲側の外面とは、即ち、棒材において構造物の被固定面と対向する側の外面のことである。
【0014】
請求項6の配線・配管材支持具は、請求項3に記載の第1圧潰部における棒材の反屈曲側の端面が、請求項3に記載の第2圧潰部における前記棒材の反屈曲側の外面より該棒材の反屈曲側に位置している。即ち、第1圧潰部の端面は、第2圧潰部の外面より構造物の被固定面側に位置しているから、支持具を構造物に固定すると、第2圧潰部の外面と構造物の被固定面との間に隙間が生じる。
【0015】
請求項7の配線・配管材支持具は、請求項3に記載の第1圧潰部における棒材の反屈曲側の端面に、構造物に食い込み可能な突尖部が形成されている。この突尖部は、構造物の材質により、それが木製の場合は、深く食い込ませることが可能である。
【0016】
請求項8の配線・配管材支持具は、請求項3に記載の第2圧潰部が、棒材の外面よりも両側方に膨出するよう圧潰されている。
【0017】
請求項9の配線・配管材支持具は、第2圧潰部の貫通孔が、棒材における第2圧潰部が設けられた端部と反対側の端部と干渉することなく、前記第2圧潰部の貫通孔に挿通される固定具を固定操作可能に設けられている。
【0018】
請求項10の配線・配管材支持具は、支持部の先端側が、第1圧潰部の貫通孔に挿通された固定具を軸にして棒材の屈曲方向と反対側に支持具全体が傾動した状態において、支持具の一端側に向けて延びている。即ち、支持部の先端側は、第1圧潰部の貫通孔に挿通された固定具を軸に支持具全体が傾動した状態において、鉛直方向よりも更に支持具の一端側に戻るように延びる、いわゆるかえりが形成されている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明は、支持具が第1圧潰部と第2圧潰部とを備え、構造物への固定向きの異なる複数の固定部を備えているから、配線・配管材の支持向きを任意に選択して配線・配管材を支持することができる。このため、1種類の支持具で、異なる布設方向に対応して配線・配管材を支持させることができるから、支持具の取り扱い、運搬、保管が容易となり、部材コストも低減できる。
【0020】
請求項2及び請求項3の発明は、第1圧潰部及び第2圧潰部の各貫通孔は互いに略直交する方向に貫通するから、構造物である梁等に対して、その被固定面と平行する方向及び直交する方向のいずれかを任意に選択して配線・配管材を布設することができる。
【0021】
請求項4の発明は、第1圧潰部及び前記第2圧潰部がともに、棒材の一端側に軸方向に沿って設けられているから、請求項5乃至請求項8に記載の効果を得ることが可能となる。
【0022】
請求項5の発明は、第1圧潰部の端面と棒材の外面とがともに、点の当接でなく、構造物の被固定面に沿って所定長さに至って当接するので、支持具を安定して支持できる。
【0023】
請求項6の発明は、第1圧潰部の端面が、第2圧潰部の外面より棒材の反屈曲側に位置していることにより、固定時に第2圧潰部と構造物の被固定面との間に隙間を生ずるから、その隙間が第2圧潰部の貫通孔に固定具を挿入して構造物に固定するときに発生する削り屑やバリ等の逃がし空間として機能する。これにより、固定具を円滑かつ確実に構造物の被固定面に螺着させることができる。
【0024】
請求項7の発明は、第1圧潰部の端面に突尖部が形成されているから、第2圧潰部を使用して固定したとき、木製の構造物等の被固定面に突尖部が食い込むことにより、第2圧潰部への固定具の固定部分を中心軸として支持具が構造物の被固定面に沿って回動するのが規制され、支持具を一定姿勢に保持することができる。
【0025】
請求項8の発明は、第2圧潰部が、棒材の外面よりも両側方に膨出しているから、第1圧潰部を使用して固定したとき、第2圧潰部の端面が構造物の被固定面の角縁と当接し、或いは、被固定面に圧接または一部がめり込むことにより、第1圧潰部への固定具の固定部分を中心軸として支持具が構造物の被固定面に沿って回動するのが規制され、支持具を一定姿勢に安定して保持することができる。
【0026】
請求項9の発明は、棒材における第2圧潰部側の端部と反対側の端部は、この反対側の端部より更に前方からドライバ等の工具を使用して第2圧潰部の貫通孔に挿通される固定具の固定操作を行なうときの妨げとならないから、円滑かつ楽に第2圧潰部を使用して支持具を固定することができる。
【0027】
支持部の先端側が、支持具全体が第1圧潰部の固定具を軸に傾動した状態において、支持具の一端側に向けて延びているから、支持具の傾動状態において、支持部内の配線・配管材は支持部の先端側によって上方への移動が規制される。これにより、支持部からのケーブルの抜出しを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態の配線・配管材支持具の斜視図である。
【図2】図1の支持具を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図3】図1の支持具を梁に固定する状態を示す斜視図である。
【図4】同じく図1の支持具を梁に固定する状態を示す斜視図である。
【図5】図1の支持具を取付けてケーブルを布設する状態を示す斜視図である。
【図6】同じく図1の支持具を取付けてケーブルを布設する状態を示す斜視図である。
【図7】支持具を梁に固定する状態を示す正面図である。
【図8】支持具の作用の説明図である。
【図9】同じく支持具の作用の説明図である。
【図10】同じく支持具の作用の説明図である。
【図11】支持具の傾動状態におけるケーブルの抜け出し規制を説明する正面図である。
【図12】支持具にケーブルを支持させる状態の説明図である。
【図13】変形例の支持具を示す正面図である。
【図14】別の変形例の支持具を示す斜視図である。
【図15】更に別の変形例の支持具を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【図16】更に別の変形例の支持具を示し、(a)は斜視図、(b)は左側面図、(c)は正面図である。
【図17】更に別の変形例の支持具を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態の配線・配管材支持具を図に基づいて説明する。
図1及び図2において、支持具1は、建物の二重天井の梁31等の構造物に沿って配線・配管材としてのケーブルCを布設すべく、布設経路に所定間隔毎に取付けられてケーブルCを支持するものである。支持具1は、金属製の棒材からなり、全体が略J字状に形成されている。支持具1は、具体的には、直線状に垂下する垂直部2が形成されているとともに、その垂直部2の下端からは、円弧状に湾曲するように屈曲されて略C字状をなしケーブルCを載置し支持する支持部3が一体に延設されている。支持部3の上部は開口し、上方からケーブルCを挿入可能な挿入口4が形成されている。支持具1を構成する棒材は通常丸棒材が使用される。但し、これに限られるものではなく、角棒材、断面楕円形状の棒材などを使用してもよい。
【0030】
更に、一端側である垂直部2側の上端部には、プレス成形によって棒材の軸と直交する方向を厚み方向として圧潰された第1圧潰部11が設けられている。また、同じく一端側であって軸方向に沿って第1圧潰部11の下側に隣接する位置には、プレス成形によって棒材の軸と直交し、かつ、第1圧潰部11と直角に交差する方向を厚み方向として圧潰された第2圧潰部21が設けられている。即ち、支持具1の一端側には圧潰方向が互いに直交する第1圧潰部11及び第2圧潰部21が設けられている。
【0031】
第1圧潰部11は、圧潰により棒材の屈曲方向と略平行する方向に偏平化されている。そして、第1圧潰部11は、梁31に固定するための固定具であるビス41が挿通される貫通孔12を有しており、その貫通孔12は第1圧潰部11の厚み方向に貫通形成されている。したがって、貫通孔12の貫通方向は棒材の屈曲方向と略直交する方向となる。
【0032】
一方、第2圧潰部21は、圧潰により棒材の屈曲方向と略直交する方向に偏平化されている。そして、第2圧潰部21は、ビス41が挿通される貫通孔22を有しており、その貫通孔22は第2圧潰部21の厚み方向に貫通形成されている。したがって、貫通孔22の貫通方向は棒材の屈曲方向と略平行する方向となり、第1圧潰部11の貫通孔12の貫通方向と略直交する方向に貫通している。第2圧潰部21の貫通孔22は、略だるま孔形状に形成されており、ビス41の頭部が貫通可能な大径部22aと、大径部22aの上部に連通して形成されビス41の頭部は貫通不能であってビス41の軸部は貫通可能な小径部22bとで形成されている。
【0033】
次に、第1圧潰部11は、第1圧潰部11における棒材の反屈曲側6、即ち図2(b)の垂直部2より右側に位置する棒材の屈曲側5とは反対側の端面13が、図7(a)に示すように、垂直部2の棒材における反屈曲側6の外面7と略同一線上に位置するよう圧潰されていて、垂直姿勢から図2(b)の右側に僅かに回動し傾倒した形状となっている。また、第1圧潰部11における棒材の反屈曲側6の端面13は、第2圧潰部21における棒材の反屈曲側6の外面23より棒材の反屈曲側6に位置している。即ち、第1圧潰部11の端面13は、第2圧潰部21の外面23より梁31の被固定面32側に位置しているから、支持具1を梁31に固定すると、図7(a)に示すように、第2圧潰部21の外面23と梁31の被固定面32との間に隙間Sが生じるようになっている。加えて、第1圧潰部11は、棒材の反屈曲側6の端面13に、梁31の被固定面32に食い込み可能な突尖部14が設けられている。
【0034】
一方、第2圧潰部21は、垂直部2の棒材の外面7よりも両側方に円弧状に膨出する膨出部24が形成されるよう圧潰されている。
【0035】
なお、支持部3における第2圧潰部21と反対側の端部3aは、第2圧潰部21より下方位置まで延出している。したがって、この反対側の端部3aより更に前方からドライバ等の工具を使用して、第2圧潰部21の貫通孔22にビス41を挿通して締付ける作業を行なう際に、前記反対側の端部3aがその作業の妨げになることはない。
【0036】
(支持具の取付け)
次に、このように構成された支持具1の梁31への取付け及びケーブルCの布設について説明する。なお、梁31は木製のものとする。
まず、ケーブルCを梁31の被固定面32に沿って平行に布設すべく、支持具1の支持部3の屈曲方向が被固定面32と直交する方向となるよう支持具1を固定する場合は、図3及び図7に示すように、第2圧潰部21を使用して支持具1を梁31の被固定面32に固定する。具体的には、第2圧潰部21における棒材の反屈曲側6の偏平面からなる外面23を梁31の被固定面32と対向させて配置し、図7(a)に示すように、支持具1の前方から貫通孔22にビス41を挿通し、梁31の被固定面32に螺着する。これにより支持具1は梁31に固定され取付けられるので、その後挿入口4からケーブルCを挿入して支持部3上に載置し支持させる。
【0037】
ここで、前述のビス41による支持具1の固定について付説する。第1圧潰部11における棒材の反屈曲側6の端面13は、垂直部2の棒材における反屈曲側6の外面7と略同一線上に位置するよう圧潰されているから、ビス41を螺着する前に支持具1を梁31の被固定面32上に配置したときには、図7(a)に示すように、第1圧潰部11の端面13及び垂直部2の棒材の外面7は被固定面32に対向する部分の全長に至って被固定面32と当接する。また、第1圧潰部11の端面13は、第2圧潰部21の外面23より梁31の被固定面32側に位置しているから、第2圧潰部21の外面23と梁31の被固定面32との間には隙間Sが生じる。
【0038】
そこで、支持具1が梁31の被固定面32上に配置された状態で、ビス41を第2圧潰部21の貫通孔23に挿通して梁31の被固定面32に螺着させると、ビス41の螺着によって生ずる梁31の削り屑やバリは前記隙間S内に収容される。また、ビス41を強く締付ければ、図7(b)に示すように、第2圧潰部21はビス41の頭部に押付けられて弾性的に僅かに円弧状に撓む。そして、第1圧潰部11の突尖部14は木製の梁31の被固定面32に食い込む。
【0039】
以下は、このようにして梁31に所定間隔毎に複数の支持具1を取付け、各支持具1の支持部3にケーブルCを載置すれば、図5に示すように、ケーブルCは梁31の被固定面32に沿って平行に布設される。
【0040】
なお、支持具1の取付けにおいては、先に、梁31の被固定面32上に所定間隔毎に設定された位置にビス41を仮締め状態で螺着してから、支持具1を取付けることもできる。即ち、被固定面32に仮締めされたビス41の頭部の前方から支持具1の第2圧潰部21の貫通孔22の大径部22a内にビス41の頭部を挿通させるようにして支持具1を被固定面32に当接させる。次に、支持具1を僅かに押下げてビス41の軸部が貫通孔22の小径部22b内に収容されるようにする。その後、ビス41を本締めすれば、支持具1の取付けが完了する。
【0041】
次に、ケーブルCを梁31に直交する状態で布設すべく、支持具1の支持部3の屈曲方向が被固定面32と平行する方向となるよう支持具1を固定する場合、即ち前述の図3の状態と直交する向きで支持具1を固定する場合は、図4に示すように、第1圧潰部11を使用して支持具1を梁31の被固定面32に固定する。具体的には、第1圧潰部11における偏平面からなる外面を梁31の被固定面32と対向させて配置し、貫通孔12にビス41を挿通して被固定面32に螺着する。これにより支持具1は梁31に固定され取付けられるので、その後挿入口4からケーブルCを挿入して支持部3上に載置し支持させる。
【0042】
以下、このようにして梁31毎に支持具1を取付け、各支持具1の支持部3にケーブルCを載置すれば、図6に示すように、ケーブルCは梁31の被固定面32と直交する状態で複数の梁31間に跨って布設される。
【0043】
(作用)
次に、本実施形態の支持具1の作用を説明する。
支持具1は、梁31への固定向きの異なる第1圧潰部11と第2圧潰部21とを備えているから、ケーブルCの支持向きを梁31の被固定面32と平行する方向及び直交する方向のいずれにも任意に選択して支持することができる。
【0044】
ここで、第1圧潰部11における棒材の反屈曲側6の端面13は、図7(a)に示すように、垂直部2の棒材における反屈曲側6の外面7と略同一線上に位置するから、第2圧潰部21の貫通孔22にビス41を挿通して取付けるとき、第1圧潰部11の端面13と垂直部2の棒材の外面7とはともに、梁31の被固定面32に対して、点の当接でなく、被固定面32に沿って対向側の全長に至って当接するので、支持具1は安定して被固定面32に支持される。
【0045】
また、第2圧潰部21の貫通孔22にビス41を挿通して締付ける際に、第1圧潰部11の端面13及び垂直部2の棒材の外面7は梁31の被固定面32と当接することにより、ビス41の締付時の押付力は第2圧潰部21を挟んだ上下2箇所で支持されるため、ビス41の締付作業を安定した状態で確実に行なうことができる。
【0046】
更に、第1圧潰部11の端面13は、第2圧潰部21の外面23より棒材の反屈曲側6に位置していることにより、固定時に第2圧潰部21と梁31の被固定面32との間に僅かな隙間Sを生じ、その隙間Sは第2圧潰部21の貫通孔23にビス41を挿通して梁31に固定するときに発生する削り屑やバリ等の逃がし空間として機能する。これにより、ビス41を固定するときに発生する削り屑等は隙間S内に収容されるので、ビス41は円滑かつ確実に梁31の被固定面32に螺着することができる。
【0047】
加えて、第2圧潰部21と梁31の被固定面32との間に隙間Sを生ずることにより、図7(b)について前述したように、ビス41の締付けによって第2圧潰部21が梁31の被固定面32側に弾性的に円弧状に撓む。このため、第2圧潰部21の上下端部ひいてはその上部の第1圧潰部11の端面13及び下部の垂直部2の棒材の外面7は強く梁31の被固定面32に押付けられる。また、支持具1の固定後においては、第2圧潰部21は円弧状の撓みに対する反撥力によって平面状態に弾性復帰しようとするから、第1圧潰部11の端面13及び垂直部2の棒材における外面7は、同様に、強く被固定面32に圧接される。したがって、被固定面32に対する支持具1の固定は強化される。更に、第2圧潰部21は、弾性的に撓むことにより一種のばね座金のように機能するから、経時的にビス41の締付力が低下するのが抑えられ、ビス41の緩みや脱落が防止されて、支持具1の安定した固定を維持することができる。
【0048】
更に、第1圧潰部11の端面13には突尖部14が形成されているから、第2圧潰部21を使用して支持具1を固定したとき、木製の梁31の被固定面32に突尖部14が食い込んで、図8の×印で示したように、支持具1は、第2圧潰部21におけるビス41の螺着箇所Pと第1圧潰部11の突尖部14の食い込み箇所Qとの計2箇所において梁31の被固定面32に係止することになる。このため、支持具1が第2圧潰部21におけるビス41の螺着箇所Pを中心軸として被固定面32に沿って図8(b)の矢印方向に回動しようとしても、第1圧潰部11の突尖部14の食い込みによってその回動が規制されるので、支持具1は一定の垂直姿勢に保持される。
【0049】
加えて、第2圧潰部21は、棒材の外面よりも両側方に膨出する膨出部24を有するから、第1圧潰部11を使用して固定したとき、図9に示すように、第2圧潰部21の膨出部24の側端面25の上端部が梁31の被固定面32の角縁33と当接する高さにおいて支持具1が固定された場合は、支持具1が、図9(c)に示すように、第1圧潰部11の貫通孔12におけるビス41の螺着箇所を中心軸として矢印方向に回動しようとしても、第2圧潰部21の膨出部24の側端面25が被固定面32の角縁33の下面に当接することによりその回動は阻止される。したがって、支持具1は一定姿勢に保持される。なお、図6における支持具1は、図9の場合と同じ高さ位置において取付けたものを示し、図4の場合とは取付高さが少し異なっている。
【0050】
なお、図9においては、第2圧潰部21の膨出部24の側端面25の上端部が梁31の被固定面32の角縁33と当接する高さにおいて支持具1が固定されたものを示しているが、図10に示すように、膨出部24全体が被固定面32に対向する高さにおいて支持具1が固定される場合は、ビス41が梁31の被固定面32に強く締付けられることにより、支持具1は膨出部24の一部が木製の梁31の被固定面32にめり込む状態で固定される。このため、図9の場合と同様に、第1圧潰部11におけるビス41の螺着箇所を中心軸として支持具1が梁31の被固定面32に沿って回動するのが規制され、支持具1は一定姿勢に保持される。なお、梁31が木製でなく、コンクリート材のような硬い材質で形成されている場合は、第2圧潰部21の膨出部24は梁31の被固定面32にめり込むことはないが、ビス41の締付けによって被固定面32に強く圧接し、摺動抵抗が発生するので、このように梁31が硬い材質で形成されている場合も同様に、第1圧潰部11におけるビス41の螺着箇所を中心軸として支持具1が回動するのが規制される。
【0051】
ところで、図6等に示したように、ケーブルCを梁31と直交して布設すべく、第1圧潰部11を使用してこの貫通孔12にビス41を取付けて支持具1を固定する場合であって、ビス41による回り止めが完全でないときや、ビス41を完全に固定する前にケーブルCを支持させたとき、或いは支持具1の固定後にビス41の締付けが緩んだときなどには次の不具合を生ずる虞がある。即ち、支持具1においてケーブルCの荷重が加わる位置や、略J字状に形成された支持具1自身の形状からくる重量バランスの関係から、支持具1には、ビス41の軸を中心とする図11における時計方向のモーメントが発生し、図11に示すように、支持具1は全体が回動し、所定角度傾斜する。このとき、支持部3の先端までの棒材の延出長さや先端部の形状などによっては、支持部3内のケーブルCが挿入口4から抜出す虞がある。
【0052】
そこで、支持具1は、図11に示すように、支持部3の先端側を、第1圧潰部11及び第2圧潰部21の設けられている一端側に向けて延出させるのが望ましい。具体的には、支持部3の先端側が円弧中心Oの高さより上方に延び、更に鉛直線Vで示す鉛直方向よりも支持具1の一端側に戻るように延びる、いわゆるかえりが形成されているものにすることが考えられる。このように支持部3を形成すれば、ケーブルCはかえりの部分3bで上方への移動が規制され、挿入口4から抜出すのが防止される。
【0053】
なお、ケーブルCの抜出し防止のためには、支持部3を上記のような形状に形成する他、図示しない別体の抜出し規制具を用いて挿入口4を閉塞するようにしてもよい。
【0054】
次に、梁31がコンクリート製などの場合は、支持具1は梁31の被固定面32において比較的高い位置に固定されることがある。このような場合は、図12(a)に示すように、支持具1の支持部3における固定側と反対側の端部3aの先端と梁31の下面との間隔が狭くなるため、挿入口4からケーブルCを挿入できないことがある。この場合は、図12(b)に示すように、第1圧潰部11におけるビス41の螺着部を軸として支持具1を時計方向に所定位相回動して挿入口4を拡げることにより、ケーブルCを支持部3内に挿入することができる。なお、このとき、支持具1の第2圧潰部21の膨出部24は梁31の被固定面32に圧接する状態にあり、支持具1の回動が規制されるので、ビス41の締付けを僅かに緩めて膨出部24が摺動抵抗をほとんど受けない状態にしてから支持具1を時計方向に回動する。そして、支持部3内にケーブルCを収容した後は、支持具1を反時計方向に回動して元の位置に復帰させた後、ビス41を再度強固に締付ける。または、前述のように、支持部3がケーブルCの抜出しを規制する形状に形成されている場合は、ケーブルCの収容後、傾斜している支持具1を敢えて元の位置に復帰させることなく、重量バランスのとれた図12(b)の自然な傾斜状態のままでビス41を増し締めして固定してもよい。
【0055】
(変形例等)
ところで、上記実施形態において、支持具1は、第1圧潰部11における梁31との対向側の端面13が、第2圧潰部21における梁31との対向側の外面23より梁31の被固定面32側に位置しており、支持具1を梁31に固定すると、第2圧潰部21の外面23と梁31の被固定面32との間に隙間Sが生じるものとなっているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、図13に示すように、第1圧潰部11の端面13と第2圧潰部21の外面23と垂直部2の棒材の外面7とが全て略同一直線上に位置するものとしてもよい。この場合は、第2圧潰部21の被固定面32側の外面23全体が梁31の被固定面32と当接し、ビス41の締付時の押付力は被固定面32で直接支持されるため、ビス41を締付け易い。
【0056】
次に、上記実施形態において、第1圧潰部11及び第2圧潰部21は、第1圧潰部11を上側として上下に隣接した配置及び状態に設けられているが、本発明を実施する場合は、これに限られるものではない。例えば、図14(a)に示すように、第1圧潰部11と第2圧潰部21との間を距離Lで離間するものとしてもよい。或いは、図14(b)に示すように、第1圧潰部11を下側に、第2圧潰部21を上側に配置したものとすることもできる。
【0057】
また、上記実施形態において、第1圧潰部11及び第2圧潰部21は、いずれも垂直部2側の一側に設けられているが、これに限られるものではなく、支持部3の両端部に設けることもできる。例えば、図15に示す場合は、支持部3は略U字状に形成されており、支持具1の一側の端部の上端には第2圧潰部21が設けられ、他側の端部の上端には第1圧潰部11が設けられている。
【0058】
なお、図15のように、第1圧潰部11、第2圧潰部21が支持具1の支持部3の両端部において設けられている場合は、第1圧潰部11の手前側よりドライバ等の工具を奥側の第2圧潰部21の貫通孔22に挿入してビス41を締付ける際に、手前側の第1圧潰部11及び棒材が介在し干渉して工具挿入の妨げとなることがあるから、第2圧潰部21へのビス41の固定操作を行ない難いことがある。
【0059】
そこで、このような場合は、第1圧潰部11との干渉を避けるべく、例えば、図16に示すように、第2圧潰部21の貫通孔22を棒材の外面より側方に突出した位置に設けるとよい。このようにすることにより、図16(b)からも分かるように、第1圧潰部11及び棒材と干渉することなくその奥側の第2圧潰部21の貫通孔22に向けて工具を挿入し、固定操作を行なうことができる。
【0060】
また、図1等に示す、支持具1の垂直部2の上端に第1圧潰部11及び第2圧潰部21が設けられているものにおいて、垂直部2と反対側の端部3aの棒材が第2圧潰部21より上方まで延出している場合には、垂直部2と反対側の端部3aの棒材の手前側より第2圧潰部21の貫通孔22にビス41を挿通し締付ける際に、第2圧潰部21の前方の前記棒材が工具と干渉し挿入の妨げとなることから、前記棒材の前方より工具による固定操作を行ない難い。
【0061】
そこで、このような場合は、例えば、図17に示すように、支持具1は、支持部3の棒材の底部近辺を捩って第2圧潰部21の前方に存在する棒材を第2圧潰部21の正面位置から図17の左側或いは右側に寄せてずらしたものに形成するとよい。
【0062】
次に、上記実施形態において、梁31の被固定面32に固定するための圧潰部は、第1圧潰部11及び第2圧潰部21が1個ずつの計2個設けられているが、これに限定されるものではない。例えば、支持部3の一側の端部においては第1圧潰部11及び第2圧潰部21が1個ずつ設けられ、支持部3の他側の端部においては第1圧潰部11及び第2圧潰部21のいずれか一方または双方が設けられ、計3個或いは4個の圧潰部が設けられたものとしてもよい。更に、その3個目、4個目の圧潰部は、第1圧潰部11及び第2圧潰部21とは圧潰方向が異なっていてもよい。なお、3個目、4個目の圧潰部等は、第3圧潰部、第4圧潰部などとなるものであるが、請求項において、第2圧潰部は、プレス成形によって棒材の軸と直交し、かつ、第1圧潰部と交差する方向を厚み方向として圧潰されたものであるから、3個目、4個目の圧潰部等は、第2圧潰部の一として捉えることも可能であり、この場合、請求項の第2圧潰部は複数存在することになる。
【0063】
更に、第1圧潰部11及び第2圧潰部21は、圧潰方向が互いに略直交し、各貫通孔が互いに略直交する方向に貫通しているが、それらの交差角度は略直角に限定されず、45度、60度などの角度で交差するものであってもよい。
【0064】
また、上記各実施形態の第2圧潰部21は、棒材の外面よりも両側方に膨出するよう圧潰され、膨出部24は、棒材の外面から両側方にはみ出しているが、第2圧潰部21の貫通孔22が小さかったり、棒材の外径が大きかったりする場合などでは、膨出部24は、棒材の外面の両側方或いは一側方からはみ出していなくてもよく、棒材の直径より小さい大きさで膨出するものであってもよい。
【0065】
なお、上記実施形態の支持具1は、略J字状に形成され、これを構成する支持部3は、略C字状に形成されているが、これらの形状に限られるものではなく、例えば、支持部3は、図示しないが、L字状、W字状などに形成することもできる。
【0066】
更に、上記実施形態では、構造物として梁31を例示しているが、本発明は、他の桟や壁面などの構造物にも同様に適用され、また、材質も、木製に限らず、コンクリート製などの硬質材にも同様に適用される。
そして、固定具もビス41に限られるものではなく、釘などであってもよい。或いは、固定具は、予め梁31にナットを埋設しておき、圧潰部の貫通孔にボルトを挿通した後、これをナットに螺合させることにより支持具を固定するものとすることもできる。
加えて、配線・配管材としてケーブルCを例示しているが、他の電線、信号線などの配線、流体管、電線管などの配管材にも同様に適用される。
【符号の説明】
【0067】
1 支持具
3 支持部
6 反屈曲側
7、23 外面
11 第1圧潰部
12、22 貫通孔
13 端面
14 突尖部
21 第2圧潰部
24 膨出部
31 梁(構造物)
32 被固定面(構造物)
41 ビス(固定具)
C ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の棒材が屈曲されて配線・配管材の支持部が形成された配線・配管材支持具であって、
一端側に、プレス成形によって前記棒材の軸と直交する方向を厚み方向として圧潰された第1圧潰部が設けられ、
前記一端側または他端側に、プレス成形によって前記棒材の軸と直交し、かつ、前記第1圧潰部と交差する方向を厚み方向として圧潰された第2圧潰部が設けられ、
前記各圧潰部はそれぞれ、構造物に固定するための固定具が挿通される貫通孔を有し、前記各貫通孔は前記各圧潰部の厚み方向に貫通形成されていることを特徴とする配線・配管材支持具。
【請求項2】
前記第1圧潰部及び第2圧潰部の各貫通孔が互いに略直交する方向に貫通するよう、各圧潰部の圧潰方向は互いに略直交していることを特徴とする請求項1に記載の配線・配管材支持具。
【請求項3】
前記第1圧潰部は、その貫通孔の貫通方向が前記棒材の屈曲方向と略直交するよう、前記棒材の屈曲方向と略平行する方向に偏平化され、前記第2圧潰部は、その貫通孔の貫通方向が前記棒材の屈曲方向と略平行するよう、前記棒材の屈曲方向と略直交する方向に偏平化されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配線・配管材支持具。
【請求項4】
前記第1圧潰部及び前記第2圧潰部はともに、前記棒材の一端側に軸方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の配線・配管材支持具。
【請求項5】
請求項3に記載の第1圧潰部は、該第1圧潰部における前記棒材の反屈曲側の端面が、該棒材における反屈曲側の外面と略同一線上に位置するよう圧潰されていることを特徴とする請求項4に記載の配線・配管材支持具。
【請求項6】
請求項3に記載の第1圧潰部における前記棒材の反屈曲側の端面は、請求項3に記載の第2圧潰部における前記棒材の反屈曲側の外面より該棒材の反屈曲側に位置していることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の配線・配管材支持具。
【請求項7】
請求項3に記載の第1圧潰部は、前記棒材の反屈曲側の端面に、前記構造物に食い込み可能な突尖部が形成されていることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の配線・配管材支持具。
【請求項8】
請求項3に記載の第2圧潰部は、前記棒材の外面よりも両側方に膨出するよう圧潰されていることを特徴とする請求項4乃至請求項7のいずれかに記載の配線・配管材支持具。
【請求項9】
前記第2圧潰部の貫通孔は、前記棒材における第2圧潰部が設けられた端部と反対側の端部と干渉することなく、前記第2圧潰部の貫通孔に挿通される前記固定具を固定操作可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の配線・配管材支持具。
【請求項10】
前記支持部の先端側は、前記第1圧潰部の貫通孔に挿通された固定具を軸にして前記棒材の屈曲方向と反対側に前記支持具全体が傾動した状態において、前記支持具の一端側に向けて延びていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の配線・配管材支持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−220438(P2011−220438A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89879(P2010−89879)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】