説明

配線回路基板の搬送機構

【課題】BGA基板等の配線回路基板を製造する際、搬送速度の異なる製造工程間を搬送リングで前記配線回路基板を搬送する搬送機構において、配線回路基板に形成された微細な配線パターンのパターン変形やショート、断線等の不良が発生し難い配線回路基板の搬送機構を提供することを目的とする。
【解決手段】BGA基板等の配線回路基板を製造する際、搬送速度の異なる製造工程間を搬送リングで前記配線回路基板を搬送する搬送機構において、前記搬送リングが回転軸に固定された駆動搬送リング10aと、回転軸からの回転駆動が解除された駆動解除搬送リング10bとで構成されており、前記搬送リングの回転軸への固定、解除は、配線回路基板サイズ、種類に応じて任意に設定できるようになっている配線回路基板の搬送機構である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な配線回路を有するBGA基板等の配線回路基板の製造工程において、配線回路基板を搬送速度の異なる製造工程間を搬送リングで搬送するための配線回路基板の搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、BGA基板等の配線回路基板は、高密度化が進み配線パターンの微細化によって配線幅が20μmを切るほどになってきている。
また、配線ピッチも40μm以下となり、従来のコンベア装置を用いると、図3に示すように搬送による配線パターンのダメージを受けやすくなってきた。
このダメージによる配線パターンのショートや断線によって従来85%以上あった収率が、80%以下に落ちており、生産性の低下とコスト高につながっている。
【0003】
配線回路基板の製造装置において、例えば銅表面を粗化する装置では、投入機、前処理スプレー装置、水洗装置、CZ処理装置、水洗装置、塩酸処理装置、水洗装置、防錆処理装置、水洗装置、エアー乾燥装置、乾燥炉、受取装置が一体となった装置を用いている。各処理装置の条件を変更するには、コンベア速度を変更して処理時間を変える方法が一般的に行われている。
また、搬送速度が変化する場合は、その搬送速度に応じて、工程の処理条件を設定変更することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、コンベア速度を各処理装置間で変更してしまうと配線回路基板は速度の違うコンベアをまたがって搬送されるため、コンベア速度の速い搬送ロールで擦られることになる。これによって配線回路基板に微細な配線パターンが形成されていると配線形状が変形し、図9に示すように、配線パターンの変形やショート、断線が発生してしまうという問題がある。
【特許文献1】特開平5−309294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み考案されたもので、BGA基板等の配線回路基板を製造する際、搬送速度の異なる製造工程間を搬送リングで前記配線回路基板を搬送する搬送機構において、配線回路基板に形成された微細な配線パターンのパターン変形やショート、断線等の不良が発生し難い配線回路基板の搬送機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に於いて上記問題を解決するために、まず請求項1では、BGA基板等の配線回路基板を製造する際、搬送速度の異なる製造工程間を搬送リングで前記配線回路基板を搬送する搬送機構において、前記搬送リングが回転軸に固定された駆動搬送リングと、回転軸からの回転駆動が解除された駆動解除搬送リングとで構成されていることを特徴とする配線回路基板の搬送機構としたものである。
【0007】
また、請求項2では、前記搬送リングの回転軸への固定、解除は、配線回路基板サイズ、種類に応じて任意に設定できるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の配線回路基板の搬送機構としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の配線回路基板の搬送機構を用いてBGA基板等の配線回路基板を搬送することにより、搬送速度が異なる製造工程間を搬送リングで配線回路基板を搬送しても、微細な配線パターンのパターン変形やショート、断線等の不良の発生を防止することができる。また、各工程の処理条件に合わせた最適の搬送速度の設定が可能となり、製造工程の品質安定化に寄与することができ、収率向上とコスト低減につなげることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態につき図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の配線回路基板の搬送機構の一実施例を示す模式構成図である。
本発明の搬送機構は、配線回路基板の製造工程の一部である水洗工程。水切り工程、工程間搬送機構、乾燥工程からなり、工程間搬送機構での搬送リングを用いた搬送機構を示す。水切り工程の搬送速度と乾燥工程の搬送速度が異なっているため、工程間搬送機構では、コンベアの速度が変化する部分である。
【0010】
ここで、水洗工程、水切り工程、工程間搬送機構がそれぞれ速い搬送速度、乾燥工程が遅い搬送速度とすると、配線回路基板の先端が乾燥工程の入り口にさしかかると、配線回路基板は乾燥工程の遅い搬送速度になり、工程間搬送機構上にある配線回路基板は搬送リングで擦られることになる。
そこで、配線回路基板のパターン有効エリア(網掛け部)の搬送リングは、回転軸からの回転駆動が解除された駆動解除搬送リング10bと、配線回路基板のパターン有効エリア(網掛け部)以外の搬送リングは、回転軸に固定された駆動搬送リング10aとで構成することにより、配線回路基板は、パターン有効エリア(網掛け部)以外の駆動搬送リング10aで搬送され、配線回路基板のパターン有効エリア(網掛け部)内は駆動解除搬送リング10bが空回りし、微細な配線パターンのパターンを傷つけるようなことが避けられる。
【0011】
図2は、搬送リングの拡大図であるが、回転軸からの回転駆動が解除された駆動解除搬送リング10bは、駆動系の回転軸が回転していても、駆動解除搬送リング10bには回転駆動は伝達されない。
ここで、搬送リングは、一般に使用されているポリプロピレンやポリエチレン、テフロン(登録商標)などの材料で問題ない。耐薬品性や耐熱性を考慮して選択する。また、搬送リングを回転軸に固定するために、固定用の治具11を駆動解除搬送リング10bの両側に配置する。
【0012】
配線回路基板の搬送と搬送リングの関係について説明する。
図3は、配線回路基板20が搬送速度の速い工程間搬送機構から搬送速度の遅い乾燥工程に移動している状態を示す説明図である。
配線回路基板20が、搬送速度の速い工程間搬送機構から搬送速度の遅い乾燥工程にさしかかると、配線回路基板20は乾燥工程の遅い搬送速度になるため、配線回路基板20は搬送速度の速い搬送リングで擦られることになり、図9に示すように、配線パターン22にダメージを与えてしまう。
図9は、回転軸と同速で回転する駆動搬送リング10aで配線回路基板20が擦られる様子を示した図である。
【0013】
図3及び図5に示すように、搬送速度の速い工程間搬送機構では、配線回路基板20は、配線回路基板20のパターン有効エリア21の外(例えば、配線回路基板20の周辺部)を駆動搬送リング10aによって速い速度で搬送される。
図4及び図6に示すように、搬送速度の遅い乾燥工程に配線回路基板20が搬送された時に、配線回路基板20の速度は低下し、遅い速度に変化する。
【0014】
通常の搬送機構では、上述したように搬送リングによって配線回路基板20は擦られてしまうが、本発明の搬送機構では、搬送速度が異なる領域に配線回路基板20がさしかかると、配線回路基板20のパターン有効エリア21外(例えば、配線回路基板20の周辺部)で駆動搬送リング10aとの擦りが起こり、配線回路基板20のパターン有効エリア21内の駆動解除搬送リング10bは回転軸からの回転駆動が解除されているため、駆動解除搬送リング10bと配線回路基板20との擦りは発生しないで、ただ、駆動解除搬送リング10bは配線回路基板20上を、配線回路基板20の動きに従って回転しているだけで、擦る力はほとんど発生しない。
【0015】
以下実施例にて本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
まず、水洗工程と、水切り工程と、工程間搬送機構と、乾燥工程とからなる配線回路基板の製造工程において(図1〜図6参照)、配線回路基板20は、水洗工程、水切り工程、工程間搬送機構、乾燥工程の方向に進む場合の事例である。
配線回路基板20として、基板厚0.6mm、340mm×510mmのFR4多層基板を使用し、配線回路基板20上には、配線ピッチ40μm、配線幅20μmの配線パターン22が形成されている。
【0017】
水洗工程、水切り工程及び工程間搬送機構の配線回路基板の搬送速度は、1.6m/minで、乾燥工程の配線回路基板の搬送速度は、1.4m/minである。
【0018】
工程間搬送機構と乾燥工程の境界(点線部)から手前の配線回路基板のサイズに相当する領域の工程間搬送機構の搬送リングは、配線回路基板のパターン有効エリア21の外(例えば、配線回路基板20の周辺部)は駆動搬送リング10aが、配線回路基板のパターン有効エリア21の内側は駆動解除搬送リング10bが配置されるようにした(図3及び図5参照)。
【0019】
配線回路基板20が搬送工程にさしかかると(図4及び図6参照)、配線回路基板20の搬送速度は、乾燥工程の搬送速度1.4m/minに低下する。
配線回路基板20の搬送速度が低下すると、工程間搬送機構上の搬送リングは、1.6m/minの搬送速度になるように回転しているため、配線回路基板20上の配線パターンが搬送リングで擦られることになるが、本発明の搬送機構では、上記説明したように、配線回路基板のパターン有効エリア21内の搬送リングは、駆動解除搬送リング10bになっているため、配線回路基板20上の配線パターンが駆動解除搬送リング10bで擦られることはなかった。
【0020】
上記したように、本発明の配線回路基板の搬送機構を用いることにより、搬送速度が異なる工程間を搬送リングで搬送、処理しても、配線回路基板の配線パターンにダメージを与えることなく処理することができた。
また、本発明の配線回路基板の搬送機構を用いることにより、配線回路基板の基板の厚みが薄い場合でも問題なく処理できることが確認できた。
【実施例2】
【0021】
図7に示すように、工程間搬送機構の途中で、搬送速度を変えても、駆動搬送リングと駆動解除搬送リングの設定と、配置を行うことにより、実施例1と同様の結果が得られることが確認できた。
今回の上記実施例では速い速度から遅い速度に変化する例を示したが、逆に遅い速度から速い速度に変化しても配線パターンにダメージを与えることなく搬送することが可能であ
った。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の配線回路基板の搬送機構一実施例を示す模式構成図である。
【図2】本発明の配線回路基板の搬送機構に用いられている駆動搬送リング10aと駆動解除搬送リング10bの取り付け状態をしめす説明図である。
【図3】本発明の配線回路基板の搬送機構を用いて配線回路基板を搬送している状態を示す説明図である。
【図4】本発明の配線回路基板の搬送機構を用いて配線回路基板を搬送している状態を示す説明図である。
【図5】本発明の配線回路基板の搬送機構を用いて配線回路基板を搬送している状態を示す説明図である。
【図6】本発明の配線回路基板の搬送機構を用いて配線回路基板を搬送している状態を示す説明図である。
【図7】本発明の配線回路基板の搬送機構を用いて配線回路基板を搬送している状態を示す説明図である。
【図8】駆動解除搬送リング10bにて配線回路基板上を移動した際の配線パターンの状態を示す説明図である。
【図9】駆動搬送リング10aにて配線回路基板上を移動した際の配線パターンの状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
10a……駆動搬送リング
10b……駆動解除搬送リング
11……固定冶具
20……配線回路基板
21……配線パターンの有効エリア
22……配線パターン
22a……ダメージを受けた配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BGA基板等の配線回路基板を製造する際、搬送速度の異なる製造工程間を搬送リングで前記配線回路基板を搬送する搬送機構において、前記搬送リングが回転軸に固定された駆動搬送リングと、回転軸からの回転駆動が解除された駆動解除搬送リングとで構成されていることを特徴とする配線回路基板の搬送機構。
【請求項2】
前記搬送リングの回転軸への固定、解除は、前記配線回路基板のサイズ、種類に応じて任意に設定できるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の配線回路基板の搬送機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−273686(P2008−273686A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118618(P2007−118618)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】