説明

配線基板およびその製造方法

【課題】 セラミック層とAg接続層の双方に十分な密着性を保ったCuメッキ層を形成することが可能な配線基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 セラミック層12の表面の一部と、Ag接続層14の上面は、Ag薄膜層15で覆われている。Cu配線層11は、このAg薄膜層15を介してセラミック層12やAg接続層14上に形成されている。こうしたAg薄膜層15は、無電解メッキによるCu配線層11形成時において、Cu配線層11とAg接続層14との接続強度を高め、またセラミック層12上に十分な厚みのCu配線層11を形成することに寄与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック層に導電体からなる回路パターンを形成した配線基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層された複数のセラミック層のそれぞれに回路を形成し、これら各層の回路をコンタクトホールと称される貫通穴に充填した導電性の接続層で相互に導通させた積層形態の配線基板が知られている。このような非導電性のセラミック層にCu配線を形成する際には、無電解めっき法を利用することが多い。
【0003】
セラミック層にCu配線を形成する工程で無電解めっきを行なう場合、めっき反応を開始させるための触媒を被めっき物(セラミック層)に付与する必要がある。従来、こうした無電解めっき用の触媒としては、パラジウムが多く用いられている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−342979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のように、パラジウム触媒を用いた無電解めっき法によって、コンタクトホールにAg接続層を形成したセラミック層上にCu配線となるCu金属膜を形成すると、Ag接続層の表面とCu金属膜との密着強度を強く保てないという課題があった。
【0005】
これは、パラジウム触媒を用いた無電解めっきを行う過程で、Ag(銀)とPd(パラジウム)との間でイオン化傾向の違いによる置換反応が進み、Agが腐食されてしまうことに起因する。このため、Ag接続層の表面とCu金属膜との間に腐食層が形成されてしまい、Ag接続層の表面とCu金属膜との間で十分な密着強度が得られない。パラジウム触媒の濃度を低くすればAgの腐食も抑えられるが、セラミック層上へのCuめっき膜の析出性が低下し、Ag接続層の表面とセラミック層の双方に十分な厚みのCuめっき膜を得ることができない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、セラミック層とAg接続層の双方に十分な密着性を保ったCuメッキ層を形成することが可能な配線基板およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、セラミック層と、前記セラミック層に形成されたコンタクトホールと、前記コンタクトホールを埋めるように形成されたAg接続層と、前記Ag接続層の表面および前記セラミック層の表面の少なくとも一部を覆うように形成されるAg薄膜層と、前記Ag薄膜層上に形成され、少なくともその一部が前記Ag接続層と導通しているCu配線層とを備えたことを特徴とする配線基板が提供される。
【0008】
前記Cu配線層は前記Ag薄膜層を触媒として、無電解めっきにより形成されれば良い。前記セラミック層は、低温焼成セラミックから形成されればよい。
【0009】
また、本発明によれば、セラミック層にコンタクトホールを形成する工程と、前記コンタクトホールを埋めるようにAg接続層を形成する工程と、銀触媒を含む処理液を用いて、前記セラミック層の表面の少なくとも一部および前記Ag接続層の表面を覆うようにAg薄膜層を形成する工程と、無電解めっき法によって前記Ag薄膜の表面を覆うようにCu層を形成する工程と、前記Cu層および前記Ag薄膜層の一部を除去して、回路パターンを成すCu配線層を形成する工程とを備えたことを特徴とする配線基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層配線基板によれば、Ag触媒を含む処理液を用いてCu配線層を析出させることによって、Ag接続層とイオン化傾向が同じであるAg薄膜層が形成されるので、Ag触媒を十分に含ませてもCu層はAg薄膜層15と強固に接続され、かつ、セラミック層の上面にも十分な厚みのCu配線層を形成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を交えて説明する。図1は、本発明の一実施形態である積層型の配線基板の断面構成図である。積層型の配線基板10は、セラミック層12を複数層重ね合わせて形成されたもので、この表面に所定の配線パターンを形成するCu配線層11が形成される。セラミック層12は、例えば、低温焼成セラミック(LTCC)で構成されていれば良い。
【0012】
セラミック層12には所定箇所に厚み方向に貫通するコンタクトホール13が形成される。そして、このコンタクトホール13を埋めるようにAg接続層14が形成される。このAg接続層14によって、第1のセラミック層12aに形成されたCu配線層11と、第2のセラミック層12bに形成されたAg配線層16とが電気的に接続される。
【0013】
また、当然ながら、Cu配線層11には、各種電子部品(図示せず)が接続されていればよい。
【0014】
図2は、図1に示す配線基板10の表面に近い部分の要部拡大断面図である。セラミック層12の表面の一部と、Ag接続層14の上面は、Ag薄膜層15で覆われている。Cu配線層11は、このAg薄膜層15を介してセラミック層12やAg接続層14上に形成されている。こうしたAg薄膜層15は、無電解めっきによるCu配線層11形成時において、Cu配線層11とAg接続層14との接続強度を高め、またセラミック層12上に十分な厚みのCu配線層11を形成することに寄与する。
【0015】
次に、本発明の配線基板の製造方法について図3を参照しつつ説明する。本発明の配線基板の製造にあたっては、まず、セラミック層12が形成される(図3a)。セラミック層12は、例えば、低温焼成セラミック(LTCC)であればよい。次に、このセラミック層12の所定位置に、例えば、エッチングによってセラミック層12を貫通するコンタクトホール13を形成する(図3b)。
【0016】
こうして形成したコンタクトホール13以外の部分にマスク層を形成するなどして、コンタクトホール13を埋めるAg接続層14を形成する(図3c)。こうしたAg接続層14の形成は、例えばAg接続層となるAgペーストをスクリーン印刷で埋め込めばよい。
【0017】
そして、Ag接続層14を形成したセラミック層12の表面全体に、Cu配線層11の元となるCu層21を形成するが、このCu層21の形成にあたっては、Ag触媒を利用したCu無電解めっきによって、セラミック層12およびAg接続層14にCu層21を無電解析出させる。これにより、Ag接続層14とセラミック層12の上面には、Ag触媒によるAg薄膜層15を介して、強固なCu層21が形成される(図3d)。
【0018】
従来、こうしたセラミック層およびAg接続層の上にCu層を析出させるにあたっては、パラジウム触媒を利用したCu無電解めっき法を用いていた。しかしながら、こうした従来のパラジウム触媒を利用したCu無電解めっき法では、Ag接続層がパラジウムとのイオン化傾向の違いにより、析出させたCu層とAg接続層との間に腐食層が形成されてしまい、この腐食層がCu層とAg接続層との接合強度を弱めてしまうという問題が生じている。
【0019】
また、腐食層の形成を少なくするために、パラジウム触媒の含有量を減らすと、今度はセラミック層の上に必要な厚みのCu層を析出させることが難しいという問題が生じる。
【0020】
本発明のように、Ag触媒を利用したCu無電解めっき法を用いてCu層21を析出させることによって、Ag接続層14とイオン化傾向が同じであるAg薄膜層15が形成されるので、Ag触媒を十分に含ませてもCu層21はAg薄膜層15と強固に接続され、かつ、セラミック層12の上面にも十分な厚みのCu層21を形成することが可能になる。
【0021】
こうして形成されたCu層21の上に所定のパターンのマスク層を形成してエッチングを行うことによって、Ag接続層14とセラミック層12の上面に、Ag薄膜層15を介して所定のパターンのCu配線層11が形成される(図3e)。
【0022】
なお、両面配線基板の形成では、上述した工程を両面に施せばよい。また、必要に応じてCu配線層11にニッケル金めっき層を形成してもよい。さらに、セラミック層12とCu層21のとの接続強度を高めるために、セラミック表面へ凹凸を付与する方法や、Ag薄膜層15を触媒としてニッケルめっき膜を施し、その上に無電解CuめっきにてCu層21を形成するという方法もある。
【実施例】
【0023】
本出願人は、本発明の配線基板の効果を検証した。検証にあたっては、セラミック層にアルミナ基板を使用し、表1に示す本発明の配線基板の製造方法によって、本発明例の配線基板を形成した。
【0024】
【表1】

【0025】
一方、従来の比較例として、セラミック層にアルミナ基板を使用し、表2に示す従来の配線基板の製造方法によって、従来例(比較例)の配線基板を形成した。
【0026】
【表2】

【0027】
上述した本発明例(Ag系触媒)と、比較例(Pd系触媒)のそれぞれの配線基板について、Cu層とAg層(Ag接続層)との接続強度を測定した。接続強度測定は、セバスチャン法によって行った。こうしたセバスチャン法によるCu層とAg層(Ag接続層)との接続強度測定の結果を表3に示す。
【0028】
【表3】

【0029】
表3によれば、本発明例(Ag系触媒)では、基材破壊、すなわち基板が破壊される強度(38.061MPa)においても、Cu層とAg層(Ag接続層)との剥離が生じなかった。これは、通常考えうる各種振動、衝撃では、Cu層とAg層(Ag接続層)との剥離の懸念が無いことを示している。
【0030】
一方、従来のプロセスによる比較例(Pd系触媒)では、平均値で3.673MPaという比較的低い強度でCu層とAg層(Ag接続層)との剥離が生じており、通常使用による各種振動、衝撃によって、Cu層とAg層(Ag接続層)との剥離による接続不良の発生が懸念される。
【0031】
次に、上述した本発明例(Ag系触媒)と、比較例(Pd系触媒)のそれぞれの配線基板について、Cu層とAg層(Ag接続層)との界面付近の顕微鏡拡大写真を図4、図5にそれぞれ示す。
【0032】
図4に示す本発明例(Ag系触媒)では、Cu層とAg層(Ag接続層)との界面付近(F1)にAg層の腐蝕が見られず、Cu層とAg層(Ag接続層)とがしっかりと密着していることがわかる。一方、図5に示す比較例(Pd系触媒)では、Cu層とAg層(Ag接続層)との界面付近(F2)にPd触媒によるAg層の腐蝕が生じており、Cu層とAg層(Ag接続層)とが密着せずに剥離しやすい状態にあることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である積層型の配線基板の断面構成図である。
【図2】図1に示す配線基板10の要部拡大断面図である。。
【図3】図3は、本発明の配線基板の製造方法を示す説明図である。
【図4】図4は、本発明の配線基板の実施例を示す顕微鏡拡大写真である。
【図5】図5は、従来の配線基板の比較例を示す顕微鏡拡大写真である。
【符号の説明】
【0034】
10 配線基板
11 Cu配線層
12 セラミック層
13 コンタクトホール
14 Ag接続層
15 Ag薄膜層
16 Ag配線層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック層と、前記セラミック層に形成されたコンタクトホールと、前記コンタクトホールを埋めるように形成されたAg接続層と、前記Ag接続層の表面および前記セラミック層の表面の少なくとも一部を覆うように形成されるAg薄膜層と、前記Ag薄膜層上に形成され、少なくともその一部が前記Ag接続層と導通しているCu配線層とを備えたことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記Cu配線層は前記Ag薄膜層を触媒として、無電解めっきにより形成されていることを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項3】
前記セラミック層は、低温焼成セラミックから形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項4】
セラミック層にコンタクトホールを形成する工程と、前記コンタクトホールを埋めるようにAg接続層を形成する工程と、銀触媒を含む処理液を用いて、前記セラミック層の表面の少なくとも一部および前記Ag接続層の表面を覆うようにAg薄膜層を形成する工程と、無電解めっき法によって前記Ag薄膜の表面を覆うようにCu層を形成する工程と、前記Cu層および前記Ag薄膜層の一部を除去して、回路パターンを成すCu配線層を形成する工程とを備えたことを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−302972(P2006−302972A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118799(P2005−118799)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】