説明

配線基板およびその製造方法

【課題】接続パッドを形成する配線導体とソルダーレジスト層との間に半田が滲入して潜り込むことを有効に防止することが可能であるとともに、半導体素子接続パッドや外部接続パッドに鉛フリー半田を溶着させたとしても半導体素子接続パッドや外部接続パッドに鉛フリー半田が良好に濡れ、それにより半導体素子接続パッドや外部接続パッドの全面が十分な厚み半田で覆われ、配線基板に対する半導体素子の実装信頼性や外部電気回路基板に対する配線基板の実装信頼性に優れる配線基板を提供すること。
【解決手段】配線導体2は、ソルダーレジスト層5で覆われた面が算術平均粗さRaで0.5μm以上であり、かつソルダーレジスト層5の開口部5a,5bから露出する面が算術平均粗さRaで0.4μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を搭載するための配線基板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路素子等の半導体素子を搭載するために用いられる配線基板には、ガラス基材および熱硬化性樹脂から成る絶縁板と銅箔等から成る配線導体とを交互に複数積層して成るプリント配線基板や、ガラス基材および熱硬化性樹脂から成る絶縁板上に熱硬化性樹脂およびフィラーから成る絶縁層と銅めっき層から成る配線導体とを複数積層して成るビルドアップ配線基板が用いられている。このような配線基板の上面には半導体素子の電極と接続するための配線導体から成る半導体素子接続パッドが格子状の並びに配列されているとともに、これらの半導体素子接続パッドの中央部を露出させる開口部を有する紫外線硬化型の感光性樹脂の硬化物から成るソルダーレジスト層が被着されている。また、このような配線基板の下面には外部の電気回路基板に接続するための配線導体から成る外部接続パッドが格子状の並びに配列されているとともに、これらの外部接続パッドの中央部を露出させる開口部を有する紫外線硬化型の感光性樹脂の硬化物から成るソルダーレジスト層が被着されている。さらに、ソルダーレジスト層の開口部から露出した半導体素子接続パッド上には半導体素子の電極と半導体素子接続パッドとを接合するための半田バンプが溶着されており、ソルダーレジスト層の開口部から露出した外部接続パッド上には、外部電気回路基板と接続するための半田層が溶着されている。
【0003】
そして、このような配線基板においては、半導体素子をその各電極がそれぞれ対応する半田バンプに当接するようにして配線基板の上面に載置するとともに、これらを例えば電気炉等の加熱装置で約260℃程度に加熱して半田バンプを溶融させて半田バンプと半導体素子の電極とを接合させることによって、半導体素子が配線基板上に実装される。また、半導体素子が実装された配線基板は、外部接続パッドに溶着された半田層に半田ボールを溶着させるとともに、その半田ボールと外部電気回路基板の配線導体とを当接させた状態で半田ボールを溶融させることにより外部電気回路基板上に実装される。
【0004】
しかしながら、半導体素子を配線基板上に実装する際や配線基板を外部電気回路基板に実装する際に、溶融した半田の一部がソルダーレジスト層の開口部の縁から半導体素子接続パッドや外部接続パッドを形成する配線導体とソルダーレジスト層との間に滲入して潜り込んでしまうという現象が発生することがある。このような半田の潜り込みは、半田を溶融させる際の260℃の高温時におけるソルダーレジスト層の弾性率の低下が原因のひとつとして考えられており、そのためソルダーレジスト層の形成時に紫外線硬化と熱硬化とを併用してソルダーレジスト層の架橋密度を上げて高温時の弾性率を高めることがなされている。さらに、半導体素子接続パッドや外部接続パッドを形成する配線導体の表面の算術平均粗さRaをエッチングにより0.5μm以上とすることにより、配線導体とソルダーレジスト層との密着を強固なものとして半田の潜り込みを抑制することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−244000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、半導体素子接続パッドや外部接続パッドを形成する配線導体表面の算術平均粗さRaをエッチングにより0.5μm以上と粗いものにすると、この半導体素子接続パッドや外部接続パッドの表面に半田バンプや半田層を溶着させる際に、その半田が鉛フリー半田である場合、鉛フリー半田は銅に対する濡れ性が劣るため半導体素子接続パッドや外部接続パッドと半田とが良好に濡れずに十分な厚みの半田で覆われない箇所が部分的に発生してしまうという現象が起きやすい。このような箇所が発生すると、半導体素子接続パッドと半導体素子や外部接続パッドと外部電気回路基板とを強固に接合することができずに、これらの間に半田の破断等が発生し、配線基板に対する半導体素子の実装信頼性や外部電気回路基板に対する配線基板の実装信頼性が低いものとなってしまう。
【0007】
本願発明者は、鋭意研究の結果、半導体素子接続パッドや外部接続パッドを形成する配線導体表面の算術平均粗さRaをエッチングにより0.5μm以上の粗いものとした場合、配線導体表面のエッチングされた粗化面における微小な凸部の高さが高くなるとともに凸部が細くなり、この粗化面に鉛フリー半田を溶着させると、高さが高くかつ細くなった凸部が鉛フリー半田中に大きく溶け込んで所謂半田食われが部分的に発生し、その場所にボイドが形成され、そのボイド部分において半導体素子接続パッドや外部接続パッドに半田が良好に濡れずに十分な厚みの半田で覆われない箇所が発生することをつきとめ本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、かかる知見に基づき案出されたものであり、その課題は、半導体素子接続パッドや外部接続パッドを形成する配線導体の表面の算術平均粗さRaを0.5μm以上と粗いものとすることによりソルダーレジスト層と配線導体との密着を強固なものとして、溶融した半田の一部がソルダーレジスト層の開口部の縁から半導体素子接続パッドや外部接続パッドを形成する配線導体とソルダーレジスト層との間に滲入して潜り込むのを有効に防止するとともに、半導体素子接続パッドや外部接続パッドに鉛フリー半田を溶着させたとしても半導体素子接続パッドや外部接続パッドに鉛フリー半田が良好に濡れ、それにより半導体素子接続パッドや外部接続パッドの全面が十分な厚みの半田で覆われ、配線基板に対する半導体素子の実装信頼性や外部電気回路基板に対する配線基板の実装信頼性に優れる配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の配線基板は、絶縁基板の上面に複数の接続パッド有する銅から成る配線導体と、前記接続パッドの外周部を覆い、且つ該接続パッドの中央部を露出させる開口部を有するソルダーレジスト層とが順次被着されて成るとともに、前記開口部から露出する前記接続パッドに鉛フリー半田を溶着させて成る配線基板であって、前記配線導体は、前記ソルダーレジスト層で覆われた面が算術平均粗さRaで0.5μm以上であり、かつ前記開口部から露出する面が算術平均粗さRaで0.4μm以下であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の配線基板の製造方法は、絶縁基板の上面に複数の接続パッドを有する銅から成る配線導体を形成する工程と、前記配線導体の露出する表面を化学的にエッチングして算術平均粗さRaが0.5μm以上の粗化面とする工程と、前記絶縁基板および前記配線導体の上に前記接続パッドの外周部を覆い、且つ該接続パッドの中央部を露出させる開口部を有するソルダーレジスト層を形成する工程と、前記開口部から露出する前記接続パッドの表面をウエットブラストおよび該ウエットブラストの後の化学的エッチングにより算術平均粗さRaが0.4μm以下となるように平滑化する工程と、前記開口部から露出する前記接続パッドに鉛フリー半田を溶着する工程と、有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の配線基板によれば、接続パッドを形成する配線導体は、ソルダーレジスト層で覆われた面が算術平均粗さRaで0.5μmであることから、この粗化面を介して配線導体とソルダーレジスト層とが強固に密着するとともに配線導体の粗化面が半田の滲入を防止するための障壁として作用する。また、ソルダーレジスト層の開口部から露出する接続パッドの面が算術平均粗さRaで0.4μm以下であることから、この露出面の凸部が半田中に大きく溶け込むことがなく、したがってボイドの発生もなく接続パッドと半田とが良好に濡れるので、接続パッドの全面が十分な厚み半田で覆われ、配線基板に対する半導体素子の実装信頼性や外部電気回路基板に対する配線基板の実装信頼性に優れる配線基板となる。
【0012】
また、本発明の配線基板の製造方法によれば、接続パッドを形成する配線導体の露出する表面を化学的にエッチングして算術平均粗さRaが0.5μmの粗化面とした後、ソルダーレジスト層を形成することから、配線導体とソルダーレジスト層とが粗化面を介して強固に密着するとともに配線導体の粗化面を半田の滲入を防止するための障壁とすることができる。また、ソルダーレジスト層の開口部から露出する接続パッドの表面をウエットブラストおよび該ウエットブラストの後の化学的エッチングにより算術平均粗さRaが0.4μm以下となるように平滑化することから、この露出面の凸部が半田中に大きく溶け込むことがなく、したがってボイドの発生もなく接続パッドと半田とが良好に濡れるので、接続パッドの全面が十分な厚み半田で覆われ、配線基板に対する半導体素子の実装信頼性や外部電気回路基板に対する配線基板の実装信頼性に優れる配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の配線基板の実施形態の一例を示す断面模式図である。
【図2】図2は、図1に示す配線基板の要部拡大断面模式図である。
【図3】図3(a)〜(d)は、本発明の配線基板の製造方法を説明するための工程毎の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の配線基板の実施形態の一例を図1および図2を基にして詳細に説明する。図1は本発明の配線基板10の実施形態の一例を示す断面模式図であり、図2は図1に示す配線基板10の要部拡大断面模式図である。これらの図中、1は絶縁基板、2は配線導体、3は半導体素子接続パッド、4は外部接続パッド、5はソルダーレジスト層、6は半田バンプ、7は半田層であり、主としてこれらにより本発明の配線基板10が構成される。
【0015】
なお、本例の配線基板10では、ガラス織物に熱硬化性樹脂を含浸させて成る絶縁板1aの上下面に熱硬化性樹脂から成る絶縁層1bを2層ずつ積層して絶縁基板1を形成しており、最表層の絶縁層1b上にソルダーレジスト層5が積層されている。また絶縁基板1の上面中央部には半導体素子Sが搭載される搭載部Aが形成されており、この搭載部Aにはそれぞれ半導体素子Sの電極Tが電気的に接続される半導体素子接続パッド3が形成されている。また、絶縁基板1の下面には外部電気回路基板に電気的に接続される外部接続パッド4が形成されており、絶縁基板1の上面から下面にかけてはそれぞれ対応する半導体素子パッド3と外部接続パッド4とを互いに電気的に接続する配線導体2が配設されている。さらに、半導体素子接続パッド3には半田バンプ6が溶着されている。また、外部接続パッド4には半田層7が溶着されている。
【0016】
そして、この配線基板10においては、半導体素子Sをその各電極Tがそれぞれ対応する半田バンプ6に当接するようにして配線基板10の上面に載置するとともに、これらを例えば電気炉等の加熱装置で約260℃程度に加熱して半田バンプ6を溶融させて半田バンプ6と半導体素子Sの電極Tとを接合させることによって、半導体素子Sが配線基板10上に実装される。また、半導体素子Sが実装された配線基板10は、外部接続パッド4に溶着された半田層7に半田ボールBを溶着させるととともに、その半田ボールBと外部電気回路基板の配線導体とを当接させた状態で半田ボールBを溶融させることにより外部電気回路基板上に実装される。
【0017】
絶縁板1aは、本例の配線基板10におけるコア部材であり、例えばガラス繊維束を縦横に織り込んだガラス織物にエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させて成る。この絶縁板1aは、例えば厚みが0.3〜1.5mm程度であり、その上面から下面にかけて直径が0.1〜1mm程度の複数のスルーホール8を有している。そして、その上下面および各スルーホール8の内面には配線導体2の一部が被着されており、上下面の配線導体2がスルーホール8を介して電気的に接続されている。
【0018】
このような絶縁板1aは、ガラス織物に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させた絶縁シートを熱硬化させた後、これに上面から下面にかけてドリル加工を施すことにより製作される。なお、絶縁板1a上下面の配線導体2は、絶縁板1a用の絶縁シートの上下全面に厚みが3〜50μm程度の銅箔を貼着しておくとともにこの銅箔をシートの硬化後にエッチング加工することにより所定のパターンに形成される。また、スルーホール8内面の配線導体2は、絶縁板1aにスルーホール8を設けた後に、このスルーホール8内面に無電解めっき法および電解めっき法により厚みが3〜50μm程度の銅めっき膜を析出させることにより形成される。
【0019】
さらに、絶縁板1aは、そのスルーホール8の内部にエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂から成る孔埋め樹脂9が充填されている。孔埋め樹脂9は、スルーホール8を塞ぐことによりスルーホール8の直上および直下に配線導体2および各絶縁層1bを形成可能とするためのものであり、未硬化のペースト状の熱硬化性樹脂をスルーホール8内にスクリーン印刷法により充填し、それを熱硬化させた後、その上下面を略平坦に研磨することにより形成される。そして、この孔埋め樹脂9を含む絶縁板1aの上下面に絶縁層1bがそれぞれ2層ずつ積層されている。
【0020】
絶縁板1aの上下面に積層された各絶縁層1bは、エポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂から成り、それぞれの厚みが20〜60μm程度であり、各層の上面から下面にかけて直径が30〜100μm程度の複数のビアホール11を有している。これらの各絶縁層1bは、配線導体2を高密度に配線するための絶縁間隔を提供するためのものである。そして、上層の配線導体2と下層の配線導体2とをビアホール11を介して電気的に接続することにより高密度配線が立体的に形成可能となっている。このような各絶縁層1bは、厚みが20〜60μm程度の未硬化の熱硬化性樹脂から成る絶縁フィルムを絶縁板1aの上下面に貼着し、これを熱硬化させるとともにレーザ加工によりビアホール11を穿孔し、さらにその上に同様にして次の絶縁層1bを順次積み重ねることによって形成される。なお、各絶縁層1bの表面およびビアホール11内に被着された配線導体2は、各絶縁層1bを形成する毎に各絶縁層1bの表面およびビアホール11内に5〜50μm程度の厚みの銅めっき膜を周知のセミアディティブ法等のパターン形成法により所定のパターンに被着させることによって形成される。
【0021】
絶縁基板1の上面の搭載部Aに形成された半導体素子接続パッド3は、ソルダーレジスト層5から露出する直径が50〜150μm程度の円形であり、搭載部A内の領域にピッチが100〜250μm程度の格子状の並びに多数配列形成されている。このような半導体素子接続パッド3は、半導体素子Sの電極Tを配線導体2に電気的に接続するための端子部として機能し、最上層の絶縁層1b上に形成された配線導体2の一部を、ソルダーレジスト層5に設けた直径が50〜150μm程度の円形の開口部5a内に露出させることにより形成されている。
【0022】
また、絶縁基板1の下面に形成された外部接続パッド4は、ソルダーレジスト層5から露出する直径が300〜500μm程度の円形であり、絶縁基板1下面の略全領域にピッチが600〜1000μm程度の格子状の並びに多数配列形成されている。外部接続パッド4は、配線導体2を外部電気回路基板に電気的に接続するための端子部として機能し、最下層の絶縁層1b上に形成された配線導体2の一部を、ソルダーレジスト層5に設けた直径が300〜500μmの円形の開口部5b内に露出させることにより形成されている。
【0023】
ソルダーレジスト層5は、アクリル変性エポキシ樹脂等の感光性を有する熱硬化性の樹脂から成り、その厚みが10〜30μm程度であり、上述したように半導体素子接続パッド3を露出させる開口部5aや外部接続パッド4を露出させる開口部5bを有している。それにより最表層における配線導体2を保護するとともに、開口部5aや5bを介して半導体素子接続パッド3や外部接続パッド4と半導体素子Sや外部電気回路基板との接続を可能としている。このようなソルダーレジスト層5は、感光性を有する樹脂ペーストまたは樹脂フィルムを最上層および最下層の絶縁層1bの表面に塗布または貼着するとともにフォトリソグラフィー技術を採用して開口部5aや5bを有するパターンに露光および現像した後、紫外線硬化および熱硬化させることにより形成される。
【0024】
半導体素子接続パッド3に溶着された半田バンプ6は、例えば錫−銀合金や錫−銀−銅合金等の鉛フリー半田から成り、半導体素子接続パッド3と半導体素子Sの電極Tとを電気的に接続するための接続部材として機能する。そして、半導体素子Sの電極Tを半田バンプ6に接触させた状態で半田バンプ6を加熱溶融させることにより半導体素子接続パッド3と半導体素子Sの電極Tとが半田バンプ6を介して電気的に接続されることとなる。このように半田バンプ6を半導体素子接続パッド3に予め溶着させておくことにより半導体素子接続パッド3への電極Tの接続の作業性が極めて良好なものとなる。なお、半導体素子Sの電極Tを半田バンプ6に接触させるのに先立って、半田バンプ6の上端部をプレスして平坦にしておくと、半導体素子Sの電極Tと半田バンプ6とを接触させることが容易かつ確実なものとなる。従って、半導体素子Sの電極Tを半田バンプ6に接触させるのに先立って、半田バンプ5の上端部をプレスして平坦にしておくことが好ましい。
【0025】
また、外部接続パッド4に溶着された半田層7は、半田バンプ6と同様に、例えば錫−銀合金や錫−銀−銅合金等の鉛フリー半田から成り、外部接続パッド4に半田ボールBを溶着させるための予備半田として機能する。そして、半田ボールBを半田層7に接触させた状態で半田層7および半田ボールBを加熱溶融させることより半田ボールBが外部接続パッド4に溶着されることとなる。
【0026】
なお、半田バンプ6は、各半導体素子接続パッド3に対応する位置に格子状の並びに配列形成された開口部を有する印刷マスクを用いて半田バンプ6用の半田ペーストを各半導体素子接続パッド3上に印刷塗布するとともに印刷された半田ペースト中の半田を加熱溶融させることにより各半導体素子接続パッド3上に溶着される。また、半田層7は、各外部接続パッド4に対応する位置に格子状の並びに配列形成された開口部を有する印刷マスクを用いて半田層7用の半田ペーストを各外部接続パッド7上に印刷塗布するとともに印刷された半田ペースト中の半田を加熱溶融させることにより各外部接続パッド4上に溶着される。
【0027】
なお、本例の配線基板10においては、図2に(a),(b)示すように、最表層の絶縁層1b上に被着された配線導体2は、ソルダーレジスト層5で覆われた面が、算術平均粗さRaで0.5μm以上であるとともに、ソルダーレジスト層5の開口部5a,5bから露出する面が算術平均粗さRaで0.4μm以下となっている。このように、半導体素子接続パッド3および外部接続パッド4を形成する配線導体2は、ソルダーレジスト層5で覆われた面が算術平均粗さRaで0.5μm以上の粗化面であることから、この粗化面を介して配線導体2とソルダーレジスト層5とが強固に密着するとともに配線導体2の粗化面が半田の滲入を防止するための障壁として機能する。したがって、本例の配線基板10によれば、配線導体2とソルダーレジスト層5との間に半田が滲入して潜り込むことを有効に防止することができる。
【0028】
また、ソルダーレジスト層5の開口部5a,5bから露出する半導体素子接続パッド3および外部接続パッド4の露出面が算術平均粗さRaで0.4μm以下の面となっていることから、この露出面における微小な凸部の高さが高くなることはなくかつ凸部が細くなることがない。したがって、本例の配線基板10によれば、半導体素子接続パッド3および外部接続パッド4の露出面に鉛フリー半田から成る半田バンプ6や半田層7を溶融させた際に、この露出面の凸部が半田中に大きく溶け込むことがなく、ボイドの発生もなく半導体素子接続パッド3および外部接続パッド4と半田とが良好に濡れるので半導体素子接続パッド3および外部接続パッド4の全面が十分な厚み半田で覆われ、半導体素子Sの実装信頼性や外部電気回路基板に対する実装信頼性に優れる配線基板10となる。
【0029】
なお、最表層の絶縁層1b上に被着された配線導体2におけるソルダーレジスト層5で覆われた粗化面の算術平均粗さRaが0.5μm未満であると、配線導体2とソルダーレジスト層5との密着が弱いとともに粗化面の凹凸が半田の滲入を防止するための障壁としての機能が低いものとなる傾向にあり、逆に0.8μmを超えると、粗化が過剰となり、そのような過剰な粗化を行なうため配線導体2を所定の形状や寸法に形成することが困難となる。したがって、最表層の絶縁層1b上に被着された配線導体2におけるソルダーレジスト層5で覆われた粗化面の算術平均粗さRaは、0.5〜0.8μmの範囲が好ましい。
【0030】
また、ソルダーレジスト層5の開口部5a,5bから露出する半導体素子接続パッド3および外部接続パッド4の露出面が算術平均粗さRaで0.4μmを超えると、この露出面における微小な凸部の高さが高くなるとともに凸部が細くなり、この露出面の凸部が半田中に大きく溶け込んでその場所にボイドが発生し、その結果、半導体素子接続パッド3および外部接続パッド4の全面が十分な厚み半田で覆われずに、配線基板10に対する半導体素子Sの実装信頼性や外部電気回路基板に対する配線基板10の実装信頼性が低下してしまう危険が大きくなる。したがって、ソルダーレジスト層5の開口部5a,5bから露出する半導体素子接続パッド3および外部接続パッド4の露出面が算術平均粗さRaで0.4μm以下であることが好ましい。
【0031】
次に、本発明の配線基板の製造方法における実施形態の一例を図3(a)〜(d)を基に説明する。なお、図3(a)〜(d)において、前述した配線基板10と同様の部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0032】
先ず、図3(a)に示すように、最表層の絶縁層1b上に配線導体2により半導体素子接続パッド3および外部接続パッド4を形成する。この配線導体2は上述した配線基板の実施形態の一例において説明したように、周知のセミアディティブ法等のパターン形成法を用いることにより形成される。なお、図3(a)〜(d)においては、図が煩雑に成るのを避けるため、半導体素子接続パッド3と外部接続パッド4とを同一のパターンにて代表して示している。
【0033】
次に、図3(b)に示すように、半導体素子接続パッド3および外部接続パッド4を形成する配線導体2の表面を例えば蟻酸を含む粗化液でエッチングすることにより算術平均粗さRaが0.5μm以上となるように粗化する。なお、配線導体2の表面における算術平均粗さRaの大きさは、粗化液で配線導体2の表面をエッチングする際のエッチング時間により調整すればよい。すなわち、配線導体2の表面を粗化液でエッチングする時間が短ければ、配線導体2の表面における算術平均粗さRaの値は小さくなり、逆にエッチングする時間が長ければ、Raの値が大きくなる。
【0034】
次に、図3(c)に示すように、最表層の絶縁層1b上および配線導体2の上に半導体素子接続パッド3,外部接続パッド4の外周部を覆うとともに半導体素子接続パッド3,外部接続パッド4の中央部を露出させる開口部5a,5bを有するソルダーレジスト層5を形成する。このようなソルダーレジスト層5は、上述した配線基板の実施形態の一例において説明したように、感光性を有する樹脂ペーストまたは樹脂フィルムを最表層の絶縁層1bの表面に塗布または貼着するとともにフォトリソグラフィー技術を採用して開口部5a,5bを有するパターンに露光および現像した後、紫外線硬化および熱硬化させることにより形成される。このとき、配線導体2は、ソルダーレジスト層5で覆われた面が算術平均粗さRaで0.5μm以上の粗化面となっていることから、この粗化面を介して配線導体2とソルダーレジスト層5とが強固に密着するとともに、配線導体2の粗化面が半田の侵入を防止するための障壁として機能する。この場合、最表層の絶縁層1b上に被着された配線導体2におけるソルダーレジスト層5で覆われた粗化面の算術平均粗さRaが0.5μm未満であると、配線導体2とソルダーレジスト層5との密着が弱いとともに粗化面の凹凸が半田の滲入を防止するための障壁としての機能が低いものとなる傾向にあり、逆に0.8μmを超えると、粗化が過剰となり、そのような過剰な粗化を行なうため配線導体2を所定の形状や寸法に形成することが困難となる。したがって、最表層の絶縁層1b上に被着された配線導体2におけるソルダーレジスト層5で覆われた粗化面の算術平均粗さRaは、0.5〜0.8μmの範囲とすることが好ましい。
【0035】
次に、図3(d)に示すように、ソルダーレジスト層5の開口部5a,5bから露出する半導体素子接続パッド3,外部接続パッド4の表面を、機械的および化学的に研磨して
算術平均粗さRaで0.4μm以下となるように平坦化する。このような平坦化は、先ず開口部5aから露出する半導体素子接続パッド3,外部接続パッド4の表面をウエットブラスト法を採用して研磨することにより粗化面を潰して滑らかにし、次にこの潰れて滑らかになった面を過酸化水素水および硫酸を含むソフトエッチング液により0.5〜2μm程度エッチングすることにより平坦化する方法が採用される。
【0036】
そして、最後に開口部5a,5bから露出する半導体素子接続パッド3,外部接続パッド4上に半田バンプ6,半田層7を溶着することにより図1および図2に示した本発明による配線基板10が完成する。このとき、ソルダーレジスト層5の開口部5a,5bから露出する半導体素子接続パッド3および外部接続パッド4の露出面が算術平均粗さRaで0.4μm以下の面となっていることから、この露出面における微小な凸部の高さが高くなることはなくかつ凸部が細くなることがない。したがって、本例の配線基板の製造方法によれば、半導体素子接続パッド3および外部接続パッド4の露出面に鉛フリー半田から成る半田バンプ6や半田層7を溶融させた際に、この露出面の凸部が半田中に大きく溶け込むことがなく、ボイドの発生もなく半導体素子接続パッド3および外部接続パッド4と半田とが良好に濡れるので半導体素子接続パッド3および外部接続パッド4の全面が十分な厚みの半田で覆われ、半導体素子Sの実装信頼性や外部電気回路基板に対する実装信頼性に優れる配線基板10を提供することができる。なお、半導体素子接続パッド3,外部接続パッド4上に半田バンプ6,半田層7を溶着するには、上述した配線基板10の実施形態の一例において説明したように、各半導体素子接続パッド3,外部接続パッド4に対応する位置に格子状の並びに配列形成された開口部を有する印刷マスクを用いて半田ペーストを各半導体素子接続パッド3上,外部接続パッド4上に印刷塗布するとともに印刷された半田ペースト中の半田を加熱溶融させればよい。
【実施例1】
【0037】
次に、本発明の実施例を説明する。先ず、ガラス織物にビスマレイミドトリアジン樹脂を含浸させて成る厚みが0.4mmの絶縁板に厚みが5μmの銅箔が張着されて成る両面銅張り板に直径が200μmのスルーホールを500μmピッチで穿孔した。次に、スルーホール内を過マンガン酸カリウム溶液でデスミア処理した後、スルーホール内および銅箔の表面に厚みが1μmの無電解銅めっきを被着し、次いで無電解銅めっき層上に厚みが10μmの電解めっき層を被着させた。次に、スルーホール内にエポキシ樹脂およびシリカフィラーを含有するペーストを充填するとともに熱硬化させてスルーホール内を孔埋め樹脂で埋めた後、この両面銅張り板の上下面をロール研磨機により研磨して平坦とした。次に孔埋め樹脂上を含む両面銅張り板の上下面に無電解銅めっきを1μmの厚みに被着させた後、次いで電解銅めっき層を10μmの厚みに被着させた。次にサブトラクティブ法を用いて両面銅張り板上の銅箔および銅めっき層をエッチングして絶縁板の両面に配線導体を形成してコア基板を作製した。
【0038】
次に、コア基板の両面に厚みが35μmのエポキシ樹脂およびシリカフィラーを含有す未硬化の樹脂フィルムを貼着するとともに熱硬化させて絶縁層を形成した後、この絶縁層にレーザ加工により直径が70μmのビアホールを穿孔した。次に樹脂層の表面およびビアホール内を過マンガン酸カリウム水溶液でデスミア処理した後、絶縁層の表面およびビアホール内に厚みが1μmの無電解銅めっきを被着させた。次に、上面側の無電解めっき層上に直径が190μmの半導体素子接続パッド形成用の開口を含む配線導体形成用の開口パターンを有する厚みが25μmのめっきレジスト層を被着させるとともに、下面側の無電解銅めっき層上に直径が700μmの外部接続パッド形成用の開口を含む配線導体形成用の開口パターンを有する厚みが25μmのめっきレジスト層を被着させ、開口パターンから露出する無電解めっき層上に厚みが15μmの電解銅めっき層を被着させた。次に無電解銅めっき層上からめっきレジスト層を剥離して除去するとともに、めっきレジスト層の剥離により露出した無電解銅めっき層を過酸化水素水と硫酸を含有するエッチング液で除去することにより上面側に直径が190μmの半導体素子接続パッドを250μmのピッチで有し、下面側に直径が700μmの外部接続パッドを1000μmのピッチで有する最表層の配線導体を形成した。
【0039】
次に、最表層の配線導体の表面を蟻酸を含有するエッチング液によりその算術平均粗さRaが0.5μm以上となるようエッチングして粗化した。次に最表層の絶縁層および配線導体の上にアクリル変性エポキシ樹脂とシリカフィラーとを含有するソルダーレジスト用の感光性樹脂ペーストを配線導体上での厚みが20μmとなるようにスクリーン印刷により塗布するとともに半導体素子接続パッドの中央部に直径が130μmの開口部を有するとともに外部接続パッドの中央部に500μmの開口部を有するように露光および現像した後、紫外線硬化および熱硬化を行いソルダーレジスト層を形成した。
【0040】
次に、ソルダーレジスト層から露出する半導体素子接続パッドおよび外部接続パッドの表面をウエットブラスト法により物理的に研磨した。この研磨により半導体素子接続パッドおよび外部接続パッドの露出面の凹凸が潰れてその算術平均粗さRaが0.4〜0.5μm程度となった。さらに、このウエットブラストにより凹凸が潰れた半導体素子接続パッドおよび外部接続パッドの表面を過酸化水素水と硫酸を含むエッチング液でエッチングすることによりその算術平均粗さを0.3〜0.4μmとした。
【0041】
次に、半導体素子接続パッドおよび外部接続パッドの上にスクリーン印刷法により鉛フリー半田の半田ペーストを印刷塗布した後、半田ペースト中の半田を約260℃の温度で加熱溶融して半導体素子接続パッドに半田バンプを溶着させるとともに外部接続パッドに半田層を溶着させて本発明の試料(試料No.2,3,4)を得た。
【0042】
また、比較のためにソルダーレジスト層で覆われた配線導体の算術平均粗さRaを0.4μmとした試料(試料No.1)および半導体素子接続パッドおよび外部接続パッドの露出面の算術平均粗さRaを0.45μmとした試料(試料No.5)を準備し、同様にして半田バンプおよび半田層を溶着した。
【0043】
次に、この時点で、40倍の光学式顕微鏡で検査して半導体素子接続パッドにおける半田潜りの有無および外部接続パッドにおける半田の濡れ不良の有無を確認し、さらに半田バンプおよび半田層が溶着された試料を250℃で5分間加熱して1回目の熱負荷を与えた後、再度250℃で4分間加熱して2回目の熱負荷を与え、更に再度250℃で4分間加熱して3回目の熱負荷を与えた後、40倍の光学式顕微鏡で検査して半田潜りの有無を確認した後、クロスセクションした断面を1000倍のSEM写真により観察し、パッドと半田との界面におけるボイドの有無を確認した。その結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示すように、本発明の範囲内である試料(試料No.2,3,4)では半田溶着直後にも3回目の熱負荷後にも半田潜りは見られなかった。それに対し、比較のための試料(試料No.1)では、半田バンプ形成直後には半田潜りは見られないものの、熱負荷後に半田もぐりが確認された。また、比較のための試料(試料No.5)では熱負荷後にも半田潜りは見られなかったものの、半田の濡れ不良およびボイドが確認された。
【符号の説明】
【0046】
1 絶縁基板
2 配線導体
3 半導体素子接続パッド
4 外部接続パッド
5 ソルダーレジスト層
5a,5b ソルダーレジスト層の開口部
6 半田バンプ
7 半田層
10 配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板の上面に、複数の接続パッド有する銅から成る配線導体と、前記接続パッドの外周部を覆い、且つ該接続パッドの中央部を露出させる開口部を有するソルダーレジスト層とが順次被着されて成るとともに、前記開口部から露出する前記接続パッドに鉛フリー半田を溶着させて成る配線基板であって、前記配線導体は、前記ソルダーレジスト層で覆われた面が算術平均粗さRaで0.5μm以上であり、かつ前記開口部から露出する面が算術平均粗さRaで0.4μm以下であることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
絶縁基板の上面に、複数の接続パッドを有する銅から成る配線導体を形成する工程と、前記配線導体の露出する表面を化学的にエッチングして算術平均粗さRaが0.5μm以上の粗化面とする工程と、前記絶縁基板および前記配線導体の上に前記接続パッドの外周部を覆い、且つ該接続パッドの中央部を露出させる開口部を有するソルダーレジスト層を形成する工程と、前記開口部から露出する前記接続パッドの表面をウエットブラストおよび該ウエットブラストの後の化学的エッチングにより算術平均粗さRaが0.4μm以下となるように平滑化する工程と、前記開口部から露出する前記接続パッドに鉛フリー半田を溶着する工程と、有することを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−209418(P2012−209418A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73834(P2011−73834)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)
【Fターム(参考)】