説明

配線基板の製造方法

【課題】コア用の配線導体の厚みが局所的に不足して配線導体の導通抵抗が大きくなったり断線したりする事を抑制する事で微細配線を有する配線基板を安定して得る製造方法を提供する。
【解決手段】表面に傷や打痕による凹み部11を有する状態で絶縁層1上に被着された導体層10の凹み部11のみをレジスト樹脂12で被覆する第1の工程と、凹み部11をレジスト樹脂12で被覆した状態で凹み部11以外の導体層10を凹み部11との段差が小さくなるようにエッチングして厚みを薄くする第2の工程と、レジスト樹脂12を除去した後、導体層10表面を機械的に研磨して平坦化する第3の工程と、導体層10を所定パターンにエッチングして配線導体4を形成する第4の工程とを行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、微細配線を有する配線基板として、ビルドアップ配線基板が知られている。ビルドアップ配線基板は、例えばガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸させて硬化したコア用の絶縁板にスルーホールを設けるとともにその上下面およびスルーホール内に銅箔や銅めっき等の良導電性金属から成るコア用の配線導体を被着させて成るコア基板の上下面に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂から成るビルドアップ用の絶縁層と銅めっき等の良導電性金属から成るビルドアップ用の配線導体とを交互に多層に積層したものである。
【0003】
このようなビルドアップ配線基板の製造は、例えば以下の方法により行なわれる。まず、コア用の絶縁板の上下面にコア用の配線導体となる銅箔が張着された両面銅張板を準備するとともにその上面から下面にかけてドリル加工により多数のスルーホールを形成する。次に、スルーホール内壁および上下の銅箔表面に無電解銅めっき層および電解銅めっき層を順次被着させる。次に、銅めっき層が被着されたスルーホール内にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂から成る孔埋め樹脂を充填して硬化させる。そして次に、銅めっき層の表面から突出した孔埋め樹脂を除去するために、銅めっき層の表面および突出した孔埋め樹脂をベルト研磨装置やバフ研磨装置により1回目の研磨をして平坦化する。このとき、多数のスルーホールから突出する硬化状の孔埋め樹脂を除去する必要があるため、研磨に用いる砥粒の番手としては400〜800番の比較的粗い番手を用いるとともに、銅めっき層の表面および突出した孔埋め樹脂に対して研磨装置を強く押し当てる。次に、コア用の絶縁板表面に被着した銅箔と銅めっき層とから成る導体層をエッチングにより所定の厚みに薄くする。このとき、孔埋め樹脂の両端は導体層がエッチングで薄くなった分だけ導体層表面から突出した状態となる。次に、エッチングにより薄くなった導体層の表面および突出した孔埋め樹脂をバフ研磨装置やベルト研磨装置により2回目の研磨をして平坦化する。このとき、エッチングで薄くなった導体層分だけスルーホールから突出するわずかな孔埋め樹脂を除去してやればよいので、研磨に用いる砥粒の番手としては800番程度を用いるとともに、導体層の表面および突出した孔埋め樹脂に対して研磨装置を押し当てる強さを上述の1回目の研磨の半分程度に抑えることができる。次に、コア用の絶縁板の上下面の導体層を周知のサブトラクティブ法により所定のパターンにエッチング加工してコア用の配線導体を形成する。これによりコア基板が完成する。そして次に、コア基板の上下面にビルドアップ用の樹脂層と配線導体層とを周知のビルドアップ法により交互に積層することによってビルドアップ配線基板が完成する。
【0004】
しかしながら、このような方法では1回目の研磨の後の導体層表面に、研磨時にバフやベルトから脱落した番手の粗い砥粒塊の巻き込み等により生じた深い研磨傷や打痕による凹み部が生じている場合がある。そのような凹み部が発生している場合、1回目の研磨後の導体層をエッチングしてその厚みを薄くする際に、凹み部における導体層の厚みがエッチングにより局所的に極端に薄くなってしまう。このように、導体層の厚みが局所的に極端に薄くなっている場合、この導体層を2回目の研磨を行なった後にサブトラクティブ法によりエッチングしてコア用の配線導体を形成すると、その局所的に薄くなった部分が配線導体の一部となって導通抵抗が大きくなったり、ひどい場合には断線したりする場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−277690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コア用の配線導体を形成する工程において、導体層を研磨する際に生じる傷や打痕による凹み部があったとしても、その部分が導体層の厚みを薄くするエッチングのときに極端に薄くなってしまうことを防ぎ、形成されたコア用の配線導体の厚みが局所的に不足して配線導体の導通抵抗が大きくなったり断線したりすることを抑制することにより、微細配線を有する配線基板を安定して得る製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の配線基板の製造方法は、表面に傷や打痕による凹み部を有する状態で絶縁層上に被着された導体層の凹み部のみをレジスト樹脂で選択的に被覆する第1の工程と、次に凹み部をレジスト樹脂で被覆したままの状態で凹み部以外の導体層を凹み部との段差が小さくなるように選択的にエッチングして厚みを薄くする第2の工程と、次にレジスト樹脂を除去した後、導体層の表面を機械的に研磨して平坦化する第3の工程と、次に導体層を所定のパターンにエッチングして配線導体を形成する第4の工程とを行なうことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の配線基板の製造方法によれば、絶縁層上の導体層表面に生じた傷や打痕による凹み部のみをレジスト樹脂で被覆した後、凹み部をレジスト樹脂で被覆したままの状態で凹み部以外の導体層を凹み部との段差が小さくなるように選択的にエッチングすることから、このエッチングの際に導体層に形成された凹み部の厚みが局所的に薄くなることを有効に防止することができる。したがって、このエッチングされた導体層の表面からレジスト樹脂を除去した後、導体層の表面を機械的に研磨して平坦化し、さらにこの平坦化された導体層を所定のパターンにエッチングして配線導体を形成すると、導体層の厚みが局所的に極端に薄くなってしまうことを防止でき、形成されたコア用の配線導体の導通抵抗が大きくなったり断線したりすることを抑制して微細配線を有する配線基板を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の製造方法により製造される配線基板の例を示す概略断面図である。
【図2】図2(a)〜(h)は、本発明の配線基板の製造方法における実施形態の一例を説明するための工程毎の要部概略断面図である。
【図3】図3(i)〜(k)は、本発明の配線基板の製造方法における実施形態の一例を説明するための工程毎の要部概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本発明の製造方法により製造される配線基板の例を図1を基に説明する。図1に示すように、本発明の製造方法により製造される配線基板20は、例えばコア用の絶縁層1の上下面にビルドアップ用の絶縁層2が積層されている。コア用の絶縁層1には、複数のスルーホール3が形成されており、このスルーホール3の内部および絶縁層1の上下面にはコア用の配線導体4が被着されている。配線導体4は、スルーホール3内では無電解銅めっき層およびその上の電解銅めっき層から形成されており、絶縁層1の上下面では銅箔およびその上の無電解銅めっき層およびその上の電解銅めっき層から形成されている。そして、配線導体4が被着されたスルーホール3の内部は熱硬化性樹脂から成る孔埋め樹脂5が充填されている。
【0011】
ビルドアップ用の絶縁層2にはコア用の配線導体4を底面とする複数のビアホール6が形成されており、ビアホール6の内部にはめっき金属層から成るビルドアップ用の配線導体7が被着されている。それによりコア用の配線導体4とビルドアップ用の配線導体7とが電気的に接続されている。さらに、絶縁層2および配線導体7の表面には配線導体7の一部を電子部品や回路基板との接続に用いられる接続パッドとして露出させる開口部8aを有するソルダーレジスト層8が被着されている。
【0012】
次に、図2(a)〜(h)および図3(i)〜(k)を基に本発明の製造方法における実施形態の一例を説明する。なお、図2および図3において図1と同様の個所には同様の符号を付して説明する。まず、図2(a)に示すように、上面および下面に銅箔9が張着された絶縁層1を準備する。絶縁層1は、例えばガラスクロスにエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させた電気絶縁材料から成る。絶縁層1の厚みは50〜800μm程度である。このような絶縁層1は、ガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸させて半硬化させたプリプレグの両面に厚みが2〜18μm程度の銅箔9を張り付けたものを熱硬化させることにより得られる。
【0013】
次に、図2(b)に示すように、銅箔9が張着された絶縁層1にスルーホール3を形成するとともに、スルーホール3の内壁および銅箔9の表面に、厚みが0.2〜1.5μm程度の薄い無電解銅めっき層と、厚みが10〜40μm程度の電解銅めっき層とを順次被着させてスルーホール3内が無電解銅めっき層および電解銅めっき層からなり、絶縁層1の上下面が銅箔9および無電解銅めっき層および電解銅めっき層から成る導体層10を形成する。なお、スルーホール3は、例えばドリル加工により形成される。スルーホール3の径は50〜300μm程度である。
【0014】
次に、図2(c)に示すように、導体層10が被着されたスルーホール3内に孔埋め樹脂5を充填して硬化する。孔埋め樹脂5は例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂にシリカ等の無機絶縁フィラーを分散させた絶縁材料から成り、未硬化のペースト状の樹脂組成物を周知のスクリーン印刷法等によりスルーホール3内に充填した後、熱硬化することにより硬化される。なお、このとき、孔埋め樹脂5の一部は、絶縁層1上下面の導体層10の表面から20〜200μm程度突出した状態となる。
【0015】
次に、図2(d)に示すように、孔埋め樹脂5の突出した上下端部を上下面の導体層10とともに研磨して平坦化する。なお、研磨にはベルト研磨装置やバフ研磨装置が用いられ、研磨に用いる砥粒の番手としては400〜800番の比較的粗い番手が用いられる。このとき、研磨時にバフやベルトから脱落した番手の粗い砥粒塊の巻き込み等により生じた深い研磨傷や打痕による凹み部11が導体層10表面に生じている場合がある。
【0016】
次に、図2(e)に示すように、上下の導体層10表面にレジスト樹脂12を被着させる。このとき、先の研磨時に生じた凹み部11にレジスト樹脂12が充填されていることが重要である。レジスト樹脂12は、エポキシアクリレート樹脂などのペースト状の熱硬化性樹脂を導体層10の表面に印刷等の方法で全面に塗布するとともに、熱硬化させることにより形成される。
【0017】
次に、図2(f)に示すように、上下のレジスト樹脂12を研磨で除去していき、レジスト樹脂12が凹み部11のみに充填された状態にする。この研磨の際は、円柱状または円筒状の芯材の外周面に耐水性のあるスポンジチューブを装着して固定し、さらにスポンジチューブの表面に耐水研磨紙を張着させた研磨ロールを使用する。この研磨ロールは、芯材と耐水研磨紙の間に介在させたスポンジチューブによるクッション性を有するため、砥粒塊の巻き込み等による深い研磨傷による凹み部の発生を抑制することができる。本研磨時に用いる耐水研磨紙の番手は400〜800番程度である。
【0018】
次に、図2(g)に示すように、凹み部11をレジスト樹脂12で被覆したままの状態で、凹み部11以外の導体層10を凹み部11との段差が小さくなるように選択的にエッチングして厚みを薄くしていく。エッチング方法としては、例えば塩化第二鉄を含むエッチング液を導体層10および凹み部11を被覆したレジスト樹脂12に吹き付ける態様で行われる。このとき、孔埋め樹脂5の上下端は導体層10の厚みが薄くなった分だけ突出した状態になる。
【0019】
次に、図2(h)に示すように、凹み部11を被覆しているレジスト樹脂12を、例えば苛性ソーダを含む剥離液にて溶融除去する。
【0020】
次に、図3(i)に示すように、上下の導体層10と孔埋め樹脂5とを研磨して平坦化する。この研磨の際も、上述した円柱状または円筒状の芯材の外周面に耐水性のあるスポンジチューブを装着して固定し、さらにスポンジチューブの表面に耐水研磨紙を張着させた研磨ロールを用いる。これにより、導体層10表面に砥粒塊の巻き込み等による深い研磨傷による凹み部の発生を抑制することができる。この研磨時に用いる砥粒の番手としては600〜1000番程度を用いる。このとき、絶縁層1の上下面に導体層10が10〜30μm程度の厚みで残存するようにする。
【0021】
次に、図3(j)に示すように、エッチングレジスト13を配線パターンに対応する位置に形成する。エッチングレジスト13はアクリル樹脂などの紫外線硬化性樹脂を含有する感光性の樹脂フィルムを導体層10および孔埋め樹脂5の上に張着し、配線パターンに対応する位置を露光した後、非露光部を現像することで形成される。
【0022】
最後に、図3(k)に示すように、エッチングレジスト13から露出する導体層10をエッチングにより除去したのち、エッチングレジスト13を剥離除去する。これにより、配線導体4が形成される。その後、周知のビルドアップ技術を用いてビルドアップ用の絶縁層2およびビルドアップ用の配線導体7ならびにソルダーレジスト層8を形成することにより、図1に示した配線基板20が完成する。本例の場合、ベルト研磨時やバフ研磨時に導体層10表面に生じた深い傷や打痕による凹み部11のみをレジスト樹脂12で被覆した後、凹み部11をレジスト樹脂12で被覆したままの状態で凹み部11以外の導体層10を凹み部11との段差が小さくなるように選択的にエッチングして導体層10の厚みを薄くする。これにより、導体層10の厚みを薄くするエッチングのときに、凹み部11における導体層10の厚みが極端に薄くなってしまうことを防止でき、形成されたコア用の配線導体4が厚みの局所的な不足のため導通抵抗が大きくなったり、断線したりすることを抑制し、微細配線を有する配線基板20を安定して製造することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 絶縁層
4 配線導体
10 導体層
11 凹み部
12 レジスト樹脂
20 配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に傷や打痕による凹み部を有する状態で絶縁層上に被着された導体層の前記凹み部のみをレジスト樹脂で選択的に被覆する第1の工程と、次に前記凹み部を前記レジスト樹脂で被覆したままの状態で前記凹み部以外の前記導体層を前記凹み部との段差が小さくなるように選択的にエッチングして厚みを薄くする第2の工程と、次に前記レジスト樹脂を除去した後、前記導体層の表面を機械的に研磨して平坦化する第3の工程と、次に前記導体層を所定のパターンにエッチングして配線導体を形成する第4の工程とを行なうことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記第3の工程において、前記導体層の表面を機械的に研磨して平坦化するときに、円柱状または円筒状の芯材と、前記芯材の外周面に被覆されたスポンジ層と、前記スポンジ層の外周面に被覆された耐水研磨紙とから構成される研磨ロールにより研磨することを特徴とする請求項1記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−209454(P2012−209454A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74606(P2011−74606)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)
【Fターム(参考)】