説明

配線構造

【課題】車両のドア部に設けられた2つの電装負荷を、ドア部と本体部間に配設された2本の接続線路を利用して制御可能な配線構造を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る配線構造30は、接続線路L5a,L5bと、本体部12に設けられた入力制御部40と、ドア部11に設けられた負荷選択部50とを備える。入力制御部40は、第1の動作信号が入力され且つ第2の動作信号が入力されていない場合に接続線路L5a,L5b間に直流電圧を供給し、少なくとも第2の動作信号が入力されている場合には接続線路L5a,L5b間に高周波電圧を供給する。負荷選択部50は、接続線路L5a,L5b間の電圧が直流電圧である場合に電装負荷21のみに電流を供給し、接続線路L5a,L5b間の電圧が高周波電圧である場合には少なくとも電装負荷22に電流を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のドア部に設けられた2つの電装負荷を制御するための配線構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車(車両)においては、ドアミラーにターンランプやデイタイムランプ、ヒータなど様々な電気系統機器が設けられることがある(例えば、特許文献1)。これらの電気系統機器は、動作タイミングがそれぞれ異なるため、特許文献1では、電気系統機器の制御をそれぞれ別系統にしている。
【特許文献1】特開2004−352073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、自動車におけるドア部と本体部との間には、ゴム製で筒状のゴムブーツが設けられており、そのゴムブーツ内に、パワーウインド、パワードアロック、ドアミラーの電動格納のような各電装負荷への給電用の配線が通されている。通常、各電装負荷への給電は2線式である。そのため、既存の電装負荷と動作タイミングの異なる新たな電装負荷を追加する場合、特許文献1に記載されているようにそれらを別系統で制御しようとすると、ゴムブーツ内に新たな配線を通さなければならないが、作業に手間がかかるという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、車両のドア部に設けられた2つの電装負荷を、ドア部と本体部間に配設された2本の接続線路を利用して制御可能な配線構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る配線構造は、車両のドア部に設けられた第1及び第2の電装負荷の動作を制御するための配線構造であって、(1)車両の本体部とドア部との間に配設された第1及び第2の接続線路と、(2)本体部に設けられており、第1及び第2の接続線路に接続されると共に第1の電装負荷を動作させるための第1の動作信号及び第2の電装負荷を動作させるための第2の動作信号を受け、第1及び第2の動作信号に応じて第1及び第2の接続線路間に供給する電圧を制御する入力制御部と、(3)ドア部に設けられており、第1及び第2の接続線路に接続されると共に第1及び第2の電装負荷に接続され、第1及び第2の接続線路間の電圧に応じて第1及び第2の電装負荷へ供給する電流を制御することによって、第1及び第2の電装負荷の動作を制御する負荷選択部とを備える。(4)入力制御部は、第1の動作信号が入力されており且つ第2の動作信号が入力されていない場合に第1及び第2の接続線路間に低周波電圧又は直流電圧を供給し、少なくとも第2の動作信号が入力されている場合には第1及び第2の接続線路間に低周波電圧より高周波数を有する高周波電圧を供給する。(5)負荷選択部は、第1及び第2の接続線路間の電圧が低周波電圧又は直流電圧である場合に第1の電装負荷のみに電流を供給し、第1及び第2の接続線路間の電圧が高周波電圧である場合には少なくとも第2の電装負荷に電流を供給する。
【0006】
この配線構造によれば、第1の動作信号が入力され且つ第2の動作信号が入力されていない場合に、入力制御部によって第1及び第2の接続線路間に低周波電圧又は直流電圧が供給され、負荷選択部によって第1の電装負荷のみに電流が流れるように電流が制御されるので、第1の電装負荷のみを動作させることができる。一方、少なくとも第2の動作信号が入力されている場合には、入力制御部によって第1及び第2の接続線路間に高周波電圧が供給され、負荷選択部によって少なくとも第2の電装負荷に電流が流れるように電流が制御されるので、少なくとも第2の電装負荷を動作させることができる。したがって、この配線構造によれば、ドア部と本体部との間に配設された2本の接続線路(第1及び第2の接続線路)を利用して、ドア部に設けられた2つの電装負荷、すなわち、第1及び第2の電装負荷の動作をそれぞれに制御することができる。
【0007】
上記した負荷選択部は、第1の電装負荷を第1及び第2の接続線路間に直接接続すると共に、第2の電装負荷を第1及び第2の接続線路間にハイパスフィルタを介して接続することが好ましい。この構成によれば、ハイパスフィルタのカットオフ周波数を低周波電圧の周波数と高周波電圧の周波数との間の周波数に設定することによって、第1及び第2の接続線路間の電圧が低周波電圧又は直流電圧である場合に第1の電装負荷のみに低周波電流又は直流電流が供給され、第1の電装負荷のみを動作させることができる。一方、第1及び第2の接続線路間の電圧が高周波電圧である場合には第1及び第2の電装負荷に高周波電流が供給され、第1及び第2の電装負荷を動作させることができる。
【0008】
また、上記した負荷選択部は、第1の電装負荷を第1及び第2の接続線路間に直接接続すると共に、第2の電装負荷を第1及び第2の接続線路間に容量素子を直列に介して接続することが好ましい。この構成によれば、第1及び第2の接続線路間の電圧が直流電圧である場合に第1の電装負荷のみに直流電流が供給され、第1の電装負荷のみを動作させることができる。一方、第1及び第2の接続線路間の電圧が高周波電圧である場合には第1及び第2の電装負荷に高周波電流が供給され、第1及び第2の電装負荷を動作させることができる。
【0009】
上記した入力制御部は、(1)第1の基準電圧を受ける第1の入力端子と、(2)第1の基準電圧より低い電圧値を有する第2の基準電圧を受ける第2の入力端子と、(3)第1の接続線路に接続された第1の出力端子と、(4)第2の接続線路及び第2の入力端子に接続された第2の出力端子と、(5)第1の入力端子と第1の出力端子とにそれぞれ接続された二つの電流端子を有する第1のトランジスタと、(6)第1の動作信号を受ける制御端子と、第1のトランジスタの制御端子及び第2の入力端子にそれぞれ接続された二つの電流端子とを有する第2のトランジスタと、(7)第2の動作信号を受ける制御端子と、第2のトランジスタの制御端子及び第2の入力端子にそれぞれ接続された二つの電流端子とを有する第3のトランジスタと、(8)第2の動作信号が入力されているときに繰り返しパルス電圧を生成するパルス電圧生成回路と、(9)パルス電圧生成回路からの繰り返しパルス電圧を受ける制御端子と、第1のトランジスタの制御端子及び第2の入力端子にそれぞれ接続された二つの電流端子とを有する第4のトランジスタとを有することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、第1の動作信号が入力され且つ第2の動作信号が入力されていない場合に、第3及び第4のトランジスタがオフ状態となると共に第2のトランジスタがオン状態となり、その結果、第1の動作信号に応じて第1のトランジスタがオン状態となるので、第1及び第2の接続線路間に低周波電圧又は直流電圧が発生する。一方、第2の動作信号が入力されている場合には、第1の動作信号によらず、第3のトランジスタがオン状態となると共に第2のトランジスタがオフ状態となり、第4のトランジスタはパルス電圧生成回路からの繰り返しパルス電圧に応じてオン/オフを繰り返す。その結果、第1のトランジスタは第2の動作信号に応じてオン/オフを繰り返すので、第1及び第2の接続線路間に高周波電圧が発生する。したがって、この構成によれば、第1の動作信号が入力されており且つ第2の動作信号が入力されていない場合に第1及び第2の接続線路間に低周波電圧又は直流電圧を供給することができ、少なくとも第2の動作信号が入力されている場合には第1及び第2の接続線路間に高周波電圧を供給することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の配線構造によれば、車両のドア部に設けられた2つの電装負荷を、ドア部と本体部間に配設される2本の接続線路を利用して制御することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付すこととする。
【0013】
図1を利用して本発明に係る配線構造の一実施形態について説明する。図1は、本発明に係る配線構造の一実施形態を含んだ車両の負荷制御システムの模式図である。
【0014】
図1に示す負荷制御システム1は、自動車(車両)10の左右のドア部11に設けられた動作させるタイミングの異なるヒータ(第1の電装負荷)21及びターンランプ(第2の電装負荷)22の動作を制御するためのものである。図1では、左側のドア部11に対して示しているが、右側のドア部11に対する構成も同様である。そのため、以下、特に断らない限り、左側のドア部11について説明する。
【0015】
負荷制御システム1は、上記ヒータ21及びターンランプ22と、自動車10の本体部12に設けられたターンランプスイッチ部(以下、「TLスイッチ部」と称す)23、イグニッションスイッチ部(以下、「IGスイッチ部」と称す)24、バッテリ(直流電圧源)25及びヒータスイッチ29を有しており、TLスイッチ部23、IGスイッチ部24、バッテリ25及びヒータスイッチ29と、ヒータ21及びターンランプ22とは、配線部(配線構造)30を介して接続されている。なお、IGスイッチ部24は、直流電圧源(例えばバッテリ25等)と電気的に接続されており、ON状態で直流電圧を生成する。IGスイッチ部24によって生成された直流電圧は、ヒータスイッチ29がON状態となったときに出力される。また、TLスイッチ部23は、ON状態中、所定の電圧値を有するパルス状のターンパルス信号(第2の動作信号)を周期的に出力する。
【0016】
ヒータ21は、図2に示すようにドア部11に備えられたドアミラー13に配設されており、ターンランプ22は、ドアミラー13のカバー部に配設されている。図2は、ドア部11の模式図であり、図2においては、ターンランプ22の外観を示している。ターンランプ22は、自動車10が左右何れかに曲がるときやハザードを点灯させる際に使用されるいわゆる方向指示器である。ターンランプ22は、TLスイッチ部23がON状態になったとき、ターンパルス信号に応じて動作する。また、ヒータ21は、配線部30に接続されており、IGスイッチ部24及びヒータスイッチ29がON状態になったときに発熱してドアミラー13を加熱する。なお、ヒータスイッチ29がON状態になることで、後述する入力制御部40には、IGスイッチ部24から出力される直流電圧が供給されることになる。よって、以下では、ヒータスイッチ29がON状態のときに、入力制御部40に供給される直流電圧をヒータ信号(第1の動作信号)と称す。
【0017】
TLスイッチ部23、IGスイッチ部24及びヒータスイッチ29、バッテリ25は、配線部30への接続用のコネクタC1に電気配線L1,L2,L3を介して接続されている。これにより、配線部30に、ターンパルス信号、ヒータ信号、及びバッテリ25からの直流電圧が供給されることになる。また、コネクタC1には、一端が接地された基準電位線L4が接続されているため、配線部30に接地電圧(グランド電圧)が供給されることになる。
【0018】
配線部30は、負荷制御システム1の一部を構成しており、TLスイッチ部23、ヒータスイッチ29からのターンパルス信号及びヒータ信号に応じてターンランプ22及びヒータ21の動作を制御するためのものである。配線部30は、本体部12とドア部11との間に配設された電気配線(第1の接続線路)L5a及び電気配線(第2の接続線路)L5bと、本体部12側に設けられた入力制御部40と、ドア部11側に設けられた負荷選択部50とを含んで構成されている。
【0019】
電気配線L5a,L5bは、本体部12及びドア部11の間のドアヒンジ部分に設けられたゴム製の筒状体であるゴムブーツ内に配置されている。電気配線L5a,L5bの両端はコネクタC2及びコネクタC3に接続されており、コネクタC2及びコネクタC3に接続可能なコネクタC4及びコネクタC5を利用して入力制御部40及び負荷選択部50に接続できるようになっている。なお、コネクタC2はコネクタC1とも接続可能なものである。
【0020】
入力制御部40は、コネクタC1に接続されるコネクタC6を介してTLスイッチ部23、IGスイッチ部24及びヒータスイッチ29、バッテリ25、基準電位線L4に電気的に接続されると共に、コネクタC2,C4を介して電気配線L5a,L5bに接続されている。
【0021】
具体的には、入力制御部40の第1の入力端子40aはバッテリ25に接続されており、第2の入力端子40bは基準電位線L4に接続されている。なお、バッテリ25の電圧が第1の基準電圧であり、基準電位線L4の電圧が第2の基準電圧である。また、入力制御部40の第1の制御端子40cにはヒータスイッチ29からのヒータ信号が入力され、第2の制御端子40dにはTLスイッチ部23からのターンパルス信号が入力される。また、入力制御部40の第1の出力端子40eは電気配線L5aに接続されており、第2の出力端子40fは電気配線L5bに接続されている。
【0022】
これにより、入力制御部40には、バッテリ25の電圧、ヒータ信号及びターンパルス信号、並びに接地電圧が供給され、電気配線L5a,L5bに電圧を供給できることになる。具体的には、入力制御部40は、ヒータ信号が入力され且つターンパルス信号が入力されていない場合に、電気配線L5a,L5b間に直流電圧を供給し、少なくともターンパルス信号が入力されている場合には、電気配線L5a,L5b間にパルス電圧(高周波電圧)を供給する。
【0023】
負荷選択部50は、コネクタC3,C5を介して電気配線L5a,L5bに接続されると共に、ヒータ21及びターンランプ22に接続されている。具体的には、負荷選択部50の第1の入力端子50aは電気配線L5aに接続されており、第2の入力端子50bは電気配線L5bに接続されている。また、負荷選択部50の第1及び第2の出力端子50c,50d間にはヒータ21が接続されており、第3及び第4の出力端子50e,50f間にはターンランプ22が接続されている。
【0024】
これにより、負荷選択部50は、電気配線L5a,L5bと、ヒータ21及びターンランプ22とを電気的に接続しており、電気配線L5a,L5b間の電圧が直流電圧である場合に、ヒータ21に電流を流して、ヒータ21を動作させる。逆に、電気配線L5a,L5b間の電圧がパルス電圧である場合には、ヒータ21及びターンランプ22に電流を流してそれらを動作させる。
【0025】
次に、上記した入力制御部40及び負荷選択部50について詳細に説明する。図3は、入力制御部40及び負荷選択部50を示す回路図である。図3には、負荷制御システム1の主な構成要素と配線部30との接続関係も示している。なお、ターンランプ22は複数の発光ダイオードからなるものであるが、図3においてはターンランプ22をダイオードとインピーダンスとして模式的に表しており、同様にヒータ21をインピーダンスとして模式的に表している。
【0026】
図3に示すように、入力制御部40は、第1〜第4のトランジスタ41,42,43,44とワンショットマルチバイブレータ45,46とを有している。本実施形態では、第1のトランジスタ41はpnp型バイポーラトランジスタであり、第2〜第4のトランジスタ42,43,44はnpn型バイポーラトランジスタである。また、ワンショットマルチバイブレータ45,46はフィードバック接続されることによって特許請求の範囲に記載したパルス電圧生成回路として機能する。
【0027】
トランジスタ41のエミッタ(電流端子)は第1の入力端子40aに接続されており、コレクタ(電流端子)は第1の出力端子40eに接続されている。トランジスタ41のエミッタとベース(制御端子)との間には抵抗素子61が接続されており、トランジスタ41のベースは、トランジスタ42のコレクタ(電流端子)及びトランジスタ44のコレクタ(電流端子)に抵抗素子62を介して接続されている。
【0028】
トランジスタ42のエミッタ(電流端子)は第2の入力端子40bに接続されており、ベース(制御端子)は抵抗素子63を介して第1の制御端子40cに接続されている。トランジスタ42のベースは抵抗素子63及び抵抗素子64を介して第2の入力端子40bにも接続されている。また、トランジスタ42のベースは、トランジスタ43のコレクタ(電流端子)に接続されている。
【0029】
トランジスタ43のエミッタ(電流端子)は第2の入力端子40bに接続されており、ベース(制御端子)は抵抗素子65を介して第2の制御端子40dに接続されている。
【0030】
トランジスタ44のエミッタ(電流端子)は第2の入力端子40bに接続されており、ベース(制御端子)は抵抗素子66を介してマルチバイブレータ46の第1の出力端子Qに接続されている。
【0031】
マルチバイブレータ46の第2の出力端子XQはマルチバイブレータ45の第1の入力端子Aにダイオード67を介してフィードバック接続されている。ダイオード67のアノードはマルチバイブレータ45の第1の入力端子Aに接続されており、カソードはマルチバイブレータ46の第2の出力端子XQに接続されている。
【0032】
マルチバイブレータ45の第1の入力端子Aは抵抗素子68を介して第1の入力端子40aに接続されると共に、ダイオード69を介して第2の制御端子40dに接続されている。ダイオード69のアノードはマルチバイブレータ45の第1の入力端子Aに接続されており、カソードは第2の制御端子40dに接続されている。なお、上記構成でダイオード67,69を設けることによって、マルチバイブレータ45の第1の入力端子Aには、TLスイッチ部23の出力信号とマルチバイブレータ46の第2の出力端子XQからの出力信号とのAND信号が入力されることとなり、TLスイッチ部23の出力信号及びマルチバイブレータ46の第2の出力端子XQからの出力信号が共にハイレベルであるときにのみ、マルチバイブレータ45の第1の入力端子Aにハイレベルの信号が入力される。
【0033】
マルチバイブレータ45の第2の入力端子B及びセット端子CDは第1の入力端子40aに接続されており、パルス幅制御端子T1は第2の入力端子40bに接続されている。また、パルス幅制御端子T2は抵抗素子71を介して第1の入力端子40aに接続されており、パルス幅制御端子T1,T2間には容量素子70が接続されている。
【0034】
本実施形態では、マルチバイブレータ45にはTC4528(株式会社東芝製)が用いられる。マルチバイブレータ45の第2の入力端子Bの電圧及びセット端子CDの電圧はハイレベルであるので、第1の入力端子Aの電圧がローレベルからハイレベルに遷移する際に、第1の出力端子Qにハイレベルの単パルス電圧を発生すると共に第2の出力端子XQにローレベルの単パルス電圧を発生する。これらの単パルス電圧のパルス幅は容量素子70と抵抗素子71との時定数で決定され、本実施形態では5mSである。マルチバイブレータ45の第1の出力端子Qはマルチバイブレータ46の第2の入力端子Bに接続されている。
【0035】
マルチバイブレータ46の第1の入力端子Aは第2の入力端子40bに接続されており、セット端子CDは第1の入力端子40aに接続されている。また、パルス幅制御端子T1は第2の入力端子40bに接続されており、パルス幅制御端子T2は抵抗素子73を介して第1の入力端子40aに接続されている。パルス幅制御端子T1,T2間には容量素子72が接続されている。
【0036】
本実施形態では、マルチバイブレータ46にもTC4528(東芝株式会社製)が用いられる。マルチバイブレータ46の第1の入力端子Aの電圧はローレベルであり、セット端子CDの電圧はハイレベルであるので、第2の入力端子Bの電圧がハイレベルからローレベルに遷移する際に、第1の出力端子Qにハイレベルの単パルス電圧を発生すると共に第2の出力端子XQにローレベルの単パルス電圧を発生する。これらの単パルス電圧のパルス幅も容量素子72と抵抗素子73との時定数で決定され、本実施形態では5mSである。
【0037】
このようにして、マルチバイブレータ45,46は、ハイレベルの第2の動作信号が入力されているときに、上記した単パルス電圧を繰り返し出力することによって、繰り返し周波数100Hzの繰り返しパルス電圧を生成する。
【0038】
負荷選択部50は、第1の入力端子50aと第3の出力端子50eとの間に容量素子51を有している。また、負荷選択部50の第1の入力端子50aは第1の出力端子50cに接続されており、負荷選択部50の第2の入力端子50bは第2及び第3の出力端子50d,50fに接続されている。
【0039】
すなわち、負荷選択部50は、ヒータ21を電気配線L5a,L5b間に直接接続すると共に、ターンランプ22を電気配線L5a,L5b間に容量素子51を直列に介して接続する。なお、本実施形態では、負荷選択部50は、ターンランプ22に対して並列に接続されるダイオード52を有している。ダイオード52は、ターンランプ22がオフ状態であるときにターンランプ22の端子間電圧を放電する。
【0040】
次に、図4を参照して、配線部30の動作を説明する。図4は、配線部30における各部信号波形を示すタイミングチャートである。まず、IGスイッチ部24がオン状態で直流電圧を生成しており、ヒータスイッチ29及びTLスイッチ部がオフ状態、すなわちヒータ信号及びターンパルス信号が共にローレベルであるときには、トランジスタ42,43,44がオフ状態であり、その結果トランジスタ41がオフ状態であるので、ヒータ21及びターンランプ22は動作しない。
【0041】
ここで、TLスイッチ部がオン状態となり、パルス状のハイレベルのターンパルス信号が入力されると(時点t1)、マルチバイブレータ45,46によって繰り返し周波数100Hzの繰り返しパルス電圧が生成され、トランジスタ44がオン/オフを繰り返す。すると、トランジスタ41がオン/オフを繰り返し、電気配線L5a,L5b間に周波数100Hzのパスル状の交流電圧が生成される。その結果、ターンランプ22及びヒータ21にパルス状の交流電流が供給され、ターンランプ22が交流駆動されて点灯すると共にヒータ21が動作する。本実施形態では、ヒータ信号がローレベルであっても、ターンパルス信号に応じてヒータ21が断続的に動作することとなるが、実使用上問題ではない。
【0042】
上記したように、TLスイッチ部23がオン状態であるときには、パルス状のターンパルス信号は周期的に生成されるので、ターンランプ22はターンパルス信号に応じて点滅を繰り返す。
【0043】
次に、再びヒータ信号及びターンパルス信号が共にローレベルであるときに戻る。ここで、ヒータスイッチ29がオン状態となり、ハイレベルのヒータ信号が入力されると(時点t2)、トランジスタ42がオン状態となる。すると、トランジスタ41がオン状態となり、電気配線L5a,L5b間に直流電圧を生成する。その結果、ヒータ21に直流電流が供給されてヒータ21が動作するが、容量素子51は直流電流をカットするのでターンランプ22には直流電流が流れずターンランプ22は点灯しない。
【0044】
次に、TLスイッチ部23もオン状態となり、ハイレベルのターンパルス信号も入力されると(時点t3)、トランジスタ43がオン状態となり、トランジスタ42がオフ状態となる。一方、マルチバイブレータ45,46によって繰り返しパルス電圧が生成され、トランジスタ44がオン/オフを繰り返す。すると、トランジスタ41がオン/オフを繰り返し、電気配線L5a,L5b間にパルス電圧が生成される。その結果、ヒータ21及びターンランプ22にパルス電流が供給され、ヒータ21が動作を継続しつつターンランプ22が交流駆動されて点灯する。本実施形態では、ヒータ21が動作中にターンランプ22を点灯させると、ヒータ21が断続的に動作することとなるが、ドアミラー13を過熱する機能を十分に果たすことができる。
【0045】
上記したように、TLスイッチ部23がオン状態であるときには、パルス状のターンパルス信号は周期的に生成されるので、ターンランプ22はターンパルス信号に応じて点滅を繰り返す。
【0046】
このように、本実施形態の配線部30によれば、ヒータ信号が入力されており且つターンパルス信号が入力されていないときには、入力制御部40によって電気配線L5a,L5b間に直流電圧が供給され、負荷選択部50によってヒータ21のみに直流電流が供給される。一方、ターンパルス信号が入力されている場合には、ヒータ信号にかかわらず、入力制御部40によって電気配線L5a,L5b間にパルス電圧が供給され、負荷選択部50によって少なくともターンランプ22にパルス電流が供給される。したがって、本実施形態の配線部30によれば、一対の電気配線L5a,L5bによって動作タイミングが異なるヒータ21及びターンランプ22の動作を独立に制御することができる。
【0047】
そのため、本実施形態の配線部30は、例えば、予めターンランプ22(又はヒータ21)がドアミラー13に配設されており、ヒータ21(又はターンランプ22)を後付けする場合などに特に有効である。本実施形態の配線部30によれば、ヒータ21をドアミラー13に後付けする場合、ドアミラー13のカバー部に設けられたターンランプ22への電圧供給用にドア部11と本体部12との間に予め設けられた一対の電気配線L5a,L5bをヒータ21の電圧供給用電気配線として利用することができるため、新たにドア部11と本体部12間に電気配線を増設せずに、ドアミラー13にヒータ21を取り付けることが可能である。
【0048】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。
【0049】
本実施形態では、入力制御部40は、ヒータ信号(第1の動作信号)が入力されており且つターンパルス信号(第2の動作信号)が入力されていない場合に、電気配線(第1及び第2の接続線路)L5a,L5b間に直流電圧を供給したが、低周波電圧を供給してもよい。この低周波電圧の周波数は、少なくとも前記第2の動作信号が入力されている場合に電気配線L5a,L5b間に供給されるパルス電圧(高周波電圧)の周波数、すなわちマルチバイブレータ(パルス電圧生成回路)45,46からの繰り返しパルス電圧の周波数よりも低周波数である。このとき、負荷選択部50は、容量素子51の代わりにハイパスフィルタを有する。このハイパスフィルタのカットオフ周波数は、入力制御部40によって供給される低周波電圧と高周波電圧との間の周波数である。
【0050】
また、本実施形態では、第1の電装負荷としてヒータ21を例示したが、第1の電装負荷には様々な電気系統機器(例えば、デイタイムアンプ、足下灯など)が適用可能である。
【0051】
また、本実施形態では、トランジスタ41〜44としてバイポーラトランジスタを例示したがトランジスタはFETであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る配線構造の一実施形態を含んだ車両の負荷制御システムの模式図である。
【図2】図1に示すドア部の模式図である。
【図3】図1に示す入力制御部及び負荷選択部を示す回路図である。
【図4】図3に示す配線構造の各部信号波形を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1…負荷制御システム、10…車両、11…ドア部、12…本体部、13…ドアミラー、21…ヒータ、22…ターンランプ、23…ターンランプスイッチ部、24…イグニッションスイッチ部、25…バッテリ(第1の基準電圧)、L4…基準電位線(第2の基準電圧)、29…ヒータスイッチ、30…配線部(配線構造)、L5a…電気配線(第1の接続線路)、L5b…電気配線(第2の接続線路)、40…入力制御部(40a…第1の入力端子、40b…第2の入力端子、40c…第1の制御端子、40d…第2の制御端子、40e…第1の出力端子、40f…第2の出力端子)、41…第1のトランジスタ、42…第2のトランジスタ、43…第3のトランジスタ、44…第4のトランジスタ、45,46…ワンショットマルチバイブレータ(パルス電圧生成回路)、50…負荷選択部、51…容量素子。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドア部に設けられた第1及び第2の電装負荷の動作を制御するための配線構造であって、
前記車両の本体部と前記ドア部との間に配設された第1及び第2の接続線路と、
前記本体部に設けられており、前記第1及び第2の接続線路に接続されると共に前記第1の電装負荷を動作させるための第1の動作信号及び前記第2の電装負荷を動作させるための第2の動作信号を受け、当該第1及び第2の動作信号に応じて前記第1及び第2の接続線路間に供給する電圧を制御する入力制御部と、
前記ドア部に設けられており、前記第1及び第2の接続線路に接続されると共に前記第1及び第2の電装負荷に接続され、前記第1及び第2の接続線路間の電圧に応じて前記第1及び第2の電装負荷に供給する電流を制御することによって、前記第1及び第2の電装負荷の動作を制御する負荷選択部と、
を備え、
前記入力制御部は、
前記第1の動作信号が入力されており、且つ前記第2の動作信号が入力されていない場合に、前記第1及び第2の接続線路間に低周波電圧又は直流電圧を供給し、
少なくとも前記第2の動作信号が入力されている場合には、前記第1及び第2の接続線路間に前記低周波電圧より高周波数を有する高周波電圧を供給し、
前記負荷選択部は、
前記第1及び第2の接続線路間の電圧が前記低周波電圧又は前記直流電圧である場合に、前記第1の電装負荷のみに電流を供給し、
前記第1及び第2の接続線路間の電圧が前記高周波電圧である場合には、少なくとも前記第2の電装負荷に電流を供給する、
ことを特徴とする配線構造。
【請求項2】
前記負荷選択部は、前記第1の電装負荷を前記第1及び第2の接続線路間に直接接続すると共に、前記第2の電装負荷を前記第1及び第2の接続線路間にハイパスフィルタを介して接続することを特徴とする、請求項1に記載の配線構造。
【請求項3】
前記負荷選択部は、前記第1の電装負荷を前記第1及び第2の接続線路間に直接接続すると共に、前記第2の電装負荷を前記第1及び第2の接続線路間に容量素子を直列に介して接続することを特徴とする、請求項1に記載の配線構造。
【請求項4】
前記入力制御部は、
第1の基準電圧を受ける第1の入力端子と、
前記第1の基準電圧より低い電圧値を有する第2の基準電圧を受ける第2の入力端子と、
前記第1の接続線路に接続された第1の出力端子と、
前記第2の接続線路及び前記第2の入力端子に接続された第2の出力端子と、
前記第1の入力端子と前記第1の出力端子とにそれぞれ接続された二つの電流端子を有する第1のトランジスタと、
前記第1の動作信号を受ける制御端子と、前記第1のトランジスタの制御端子及び前記第2の入力端子にそれぞれ接続された二つの電流端子とを有する第2のトランジスタと、
前記第2の動作信号を受ける制御端子と、前記第2のトランジスタの制御端子及び前記第2の入力端子にそれぞれ接続された二つの電流端子とを有する第3のトランジスタと、
前記第2の動作信号が入力されているときに繰り返しパルス電圧を生成するパルス電圧生成回路と、
前記パルス電圧生成回路からの前記繰り返しパルス電圧を受ける制御端子と、前記第1のトランジスタの制御端子及び前記第2の入力端子にそれぞれ接続された二つの電流端子とを有する第4のトランジスタと、
を有することを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の配線構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−126756(P2008−126756A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311826(P2006−311826)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000148689)株式会社村上開明堂 (185)
【Fターム(参考)】