説明

配電線の漏洩電流検査装置

【課題】安全性の向上、ノイズ低減、突入電流の低減及び小型化を図ることができ、且つ最適な漏洩チェック時間及び漏洩チェック電流を最適にすることができるようにした配電線の漏洩電流検査装置を提供する。
【解決手段】漏洩電流検査装置10は、漏洩チェック電流の通電時間(漏洩チェック時間)を設定可能なタイマー回路2、漏洩チェック電流を設定可能な漏洩電流設定回路9、該漏洩電流設定回路9により設定された漏洩チェック電流を配電線に通電させる通電回路5等を備える。タイマー回路2により動作時間の確認が行え、漏洩電流設定回路9によって漏洩チェック電流を過剰に流す可能性を減らすことができる。また、通電回路5は複数のソリッドステートリレー54〜56を有し、タイマー回路2と通電回路5の間には、アイソレーション回路3が設けられ、配電線側との電気的絶縁が図られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設定した漏洩チェック電流に基づいて配電線に接続された保護装置等の動作や配電線の配線チェック等に用いられる漏洩電流検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配電線、例えば、AC100V、AC200V等の商用配線等においては、配線間や対接地間に漏電が発生し、又は配線に接続された電気機器等に漏電が生じると、安全性の確保が困難となり、また、火災や人体等への感電の原因となる。そこで、通常、配電盤に漏電ブレーカを設け、漏電の検出及び保護を行っている。また、漏電ブレーカを用いずに漏電検出を行うことも行われている。例えば、配線の漏洩電流を変流器で検出して基準信号との同期検波により漏洩電流を測定する絶縁異常探査器がある(例えば、特許文献1参照)。また、配線工事を行った時の安全性を確保するためには誤配線の有無のチェック、漏電ブレーカが正常に機能しているか否かのチェック等が重要である。そのための装置として漏洩電流検査装置がある。
【0003】
図8は、従来の漏洩電流検査装置の概略構成を示すブロック図である。以下、その構成と動作について説明する。漏洩電流検査装置100は、漏洩チェック電流の通電開始を指示する押しボタン式のスイッチ101と、スイッチ101の操作に基づいて漏洩チェック電流の通電を開始させる放電スイッチ回路102と、上記漏洩チェック電流を抵抗により設定する漏洩電流設定回路103と、この漏洩電流設定回路103にコード104を介して接続された測定用プラグ105とを備えている。漏洩電流設定回路103は、測定用プラグ105の電極間を流れる電流(=漏洩チェック電流)の値が、110mA等に設定されている。
【0004】
次に、コンセントの電圧極や中性極にアースラインが接続されたことにより誤配線が生じている場合の配線チェックを例にして、漏洩電流検査装置100の使用方法の概要を説明する。まず、作業者は、漏洩電流検査装置100の測定用プラグ105を建屋等に設置されたコンセントに差し込む。ついで、スイッチ101を押し、漏洩電流検査装置100を動作させる。これにより、測定用プラグ105の電極間、即ち商用配線間には漏洩電流設定回路103によって設定された時間、設定された電流が流れる。この電流は、コンセントの電圧極とアース間に流れるため、漏電ブレーカが動作し、この漏電ブレーカの動作によって誤配線の有無をチェックすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−10184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図8に示した従来の漏洩電流検査装置によると、短い通電時間(検査時間)を設定することが困難なため、漏電ブレーカの動作時間を確認することができない。また、漏洩チェック電流の通電時間を短くした場合、AC100VやAC200Vの波形のゼロクロス以外の位置で通電開始がされ易くなり、配線系にノイズや突入電流を発生させることがあった。更に、漏洩チェック電流の値が固定なため、漏洩チェック電流を過剰に流す可能性があり、また、漏洩チェック電流を決定している抵抗は、電流を長時間流せるように大電力型にする必要があり、その結果、漏洩電流検査装置の小型化に限界があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、アイソレーションを図ると共に漏洩チェック電流の通電開始をゼロクロスにし、更に漏洩チェックの時間及び電流を可変できるようにし、これによって、安全性の向上、ノイズ低減、突入電流の低減及び小型化を図ることができ、且つ最適な漏洩チェック時間及び漏洩チェック電流を最適にすることができるようにした配電線の漏洩電流検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、予め設定した漏洩チェック電流を配電線に通電させる通電回路と、前記漏洩チェック電流をゼロクロスで前記通電回路に通電させるゼロクロス放電回路と、前記漏洩チェック電流の通電時間を設定するタイマー回路と、前記ゼロクロス放電回路と前記タイマー回路とを電気的に絶縁するアイソレーション回路と、を備えることを特徴とする配電線の漏洩電流検査装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記目的を達成するため、配電線に対して複数の異なる値の通電時間を設定可能なタイマー回路と、前記配電線に通電する漏洩チェック電流を複数の異なる値により設定可能な漏洩電流設定回路と、前記タイマー回路によって設定された通電時間により前記漏洩電流設定回路によって選択された漏洩チェック電流を前記配電線に通電させる通電回路と、前記漏洩チェック電流をゼロクロスで前記通電回路に通電させるゼロクロス放電回路と、前記通電回路及び前記ゼロクロス放電回路と前記タイマー回路とを電気的に絶縁する絶縁手段と、を備えることを特徴とする配電線の漏洩電流検査装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の配電線の漏洩電流検査装置によれば、安全性の向上、ノイズ低減、突入電流の低減及び小型化を図ることができ、且つ最適な漏洩チェック時間及び漏洩チェック電流を最適にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る漏洩電流検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した漏洩電流検査装置の詳細構成を示す回路図である。
【図3】第1の実施の形態に係る漏洩電流検査装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図4】配電線の接続例及び漏洩電流検査装置の接続例を示し、(a)は屋内配線がコンセントに正しく接続された状態を示す配線図、(b)は屋内配線がコンセントに誤配線された状態を示す配線図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る漏洩電流検査装置による漏電ブレーカの検査を説明する図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る漏洩電流検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示した本発明の第2の実施の形態の漏洩電流検査装置の詳細構成を示す回路図である。
【図8】従来の漏洩電流検査装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施の形態]
(漏洩電流検査装置の概略構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る漏洩電流検査装置の概略構成を示すブロック図である。漏洩電流検査装置10は、この漏洩電流検査装置10を起動させる起動回路1と、起動回路1に接続されると共に漏電チェック時間を設定するタイマー回路2と、起動回路1及びタイマー回路2と配電線側とを電気的に分離(絶縁)するアイソレーション回路3と、アイソレーション回路3に出力が発生しているときにゼロクロスのタイミングで導通状態になるゼロクロス放電回路4と、タイマー回路2の動作に連動して予め定めた漏洩チェック電流を通電(放電)する通電回路5と、タイマー回路2等の直流電源となる電源部6と、コード7を介して通電回路5に接続された測定用プラグ8とを備えている。
【0013】
(漏洩電流検査装置の詳細構成)
図2は、図1に示した漏洩電流検査装置の詳細構成を示す回路図である。起動回路1は、電源部6の出力間に直列にして接続された抵抗11及び押しボタンスイッチ12と、電源部6の出力間に直列にして接続された抵抗13及びコンデンサ14と、抵抗11のコールドエンドと抵抗13のコールドエンドとの間に接続されたコンデンサ15とからなる。
【0014】
タイマー回路2は、電源部6に直列にして接続された抵抗21及びコンデンサ22と、タイマー動作をするタイマーIC23と、タイマーIC23のCONTROL VOLTAGE端子(5番端子)とアースラインGとの間に接続されたコンデンサ24とを備えている。
【0015】
タイマーIC23は、例えば、NE555等の商品名で知られるICである。このタイマーIC23は、1番端子がアースラインGに接続され、2番端子がコンデンサ14とコンデンサ15との接続点に接続され、抵抗21とコンデンサ22の接続点がTHRESHOLD端子(6番端子)及びDISCHARGE端子(7番端子)に接続され、電源部6の正電圧出力がRESET端子(4番端子)及びVcc端子(電源端子:8番端子)に接続されている。
【0016】
アイソレーション回路3は、発光ダイオード(発光素子)311及び双方向半導体スイッチ素子312を内蔵したフォトカプラによる第1のソリッドステートリレー(例えば、フォトトライアック・カプラ(PHOTO TRIAC COUPLER))31と、タイマーIC23のOUTPUT端子(3番端子)と発光ダイオード311との間に接続された抵抗32と、ゼロクロス放電回路4と双方向半導体スイッチ素子312との間に接続された抵抗33とを備えている。双方向半導体スイッチ素子312及び後記するゼロクロス放電回路4及び通電回路5に用いられている双方向半導体スイッチ素子は、例えば、トライアック(TRIAC:登録商標)が用いられている。
【0017】
ゼロクロス放電回路4は、通電回路5に接続された双方向半導体スイッチ素子41と、この双方向半導体スイッチ素子41のゲートに接続されたゲート電圧生成用抵抗42と、双方向半導体スイッチ素子41の両端に接続されたスナバ回路43とを備えている。
【0018】
通電回路5は、コード7の一方に接続されたヒューズ51と、このヒューズ51と双方向半導体スイッチ素子41との間に接続されると共に漏洩チェック電流の値を決定する抵抗52と、漏洩チェック電流が流れているときに点灯する漏洩チェックランプ53とを備えている。抵抗52は、例えば、110mAが流れる抵抗値に設定されている。
【0019】
漏洩チェックランプ53は、抵抗52に並列接続され、詳しくは、抵抗531、ダイオード532及び発光ダイオード533を直列接続した構成である。
【0020】
電源部6は、一次電池、二次電池等による電池61と、この電池61に接続された電源スイッチ62とを備え、その出力端は起動回路1及びタイマー回路2に接続されている。
【0021】
(漏洩電流検査装置の動作)
次に、図2に示す漏洩電流検査装置10の動作について説明する。図3は、漏洩電流検査装置の動作を示すタイミングチャートである。まず、作業者等によって、図1に示す電源部6の電源スイッチ62がオンにされると、図3(a)に示すように、図2に示すタイマーIC23に電源が印加される。同時に、タイマーIC23の2番端子には、図3(b)に示す電圧が抵抗13を介して印加される。更に作業者は、押しボタンスイッチ12を押下する。この操作により、図3(b)に示すように、タイマーIC23のTRIGGER端子(2番端子)に印加されている電圧が変化し、タイマー回路2が動作を開始する。
【0022】
タイマー回路2は、図3(c)に示すように、押しボタンスイッチ12がオンの時点から、抵抗21を介してコンデンサ22の充電が開始され、この電圧がタイマーIC23のTHRESHOLD端子(6番端子)に印加される。また、コンデンサ22への充電開始と共にタイマーIC23のOUTPUT端子(3番端子)には、図3(d)に示す出力電圧が発生する。この電圧は抵抗32を介してアイソレーション回路3の発光ダイオード311の両端に印加される。発光ダイオード311は、タイマーIC23のOUTPUT端子に電圧が印加されると同時に点灯し、双方向半導体スイッチ素子312が導通する。双方向半導体スイッチ素子312の導通により、抵抗42に電流が流れ、抵抗42の両端に電圧が生じる。この電圧によって、ゼロクロス放電回路4の双方向半導体スイッチ素子41のゲートにトリガが印加され、双方向半導体スイッチ素子41が導通状態になる。その通電の開始は、ゼロクロスになる。
【0023】
双方向半導体スイッチ素子41が導通状態になることによって、通電回路5は、抵抗52の抵抗値によって定まる電流(例えば、110mA)が、測定用プラグ8、コード7、温度ヒューズ51、抵抗52、双方向半導体スイッチ素子41、コード7及び測定用プラグ8の経路で流れる。なお、その電流の一部は、抵抗33を介して双方向半導体スイッチ素子312に流れる。抵抗52に電流が流れることにより、抵抗52の両端に電圧が発生し、この電圧がダイオード532で整流されることにより、漏洩チェックランプ53の発光ダイオード533が点灯する。
【0024】
タイマーIC23のTHRESHOLD端子(6番端子)の電圧が、図3(c)に示すように規定の電圧Vrに到達すると、タイマーIC23に内蔵のトランジスタ(図示せず)が非導通になり、コンデンサ22の放電が図3(c)に示すように開始される。同時に、図3(d)に示すように、OUTPUT端子(3番端子)の出力電圧が消失し、発光ダイオード311が消灯する。これにより双方向半導体スイッチ素子312が非導通になり、その結果、非導通によって双方向半導体スイッチ素子41が非導通になる結果、漏電チェック電流は流れなくなる。また、漏洩チェックランプ53の発光ダイオード533が消灯する。
【0025】
(漏洩電流検査装置による配線チェック)
次に、漏洩電流検査装置10による配線チェックについて説明する。図4(a)は、屋内配線がコンセントに正常に接続された状態を示す結線図、図4(b)は、屋内配線がコンセントに誤接続された状態を示す結線図である。
【0026】
図4(a),(b)に示す漏洩電流検査装置10における測定プラグ8の接続対象は、AC100V、AC200V等の商用配線401から屋内配線402に至る配電線であり、商用配線401と屋内配線402との間に漏電ブレーカ400が設けられている。また、屋内配線402には、接地極付きのコンセント403を含む複数のコンセント(図4(a),(b)においては1つのみを示す)が接続されている。
【0027】
図4(a)は、電圧極ライン402a、中性極(N極)ライン402b及び接地ライン402cのそれぞれが、コンセント403の対応する電圧極403a、中性極403b及び接地極403cに正しく接続された状態を示している。これに対し、図4(b)は、中性極ライン402bと接地ライン402cとが入れ替わった状態、即ち、誤配線が生じている状態を示している。図4(a),(b)の配線は、新築工事等において配線工事が行われたものの、配線工事が正しく成されているか否かが未チェックの状態にある。この様な配線に対し、以下のようにして漏洩電流検査装置10による配線チェックが行われる。
【0028】
まず、図4(a)における配線の配線チェックについて説明する。作業者は、テスター等によってコンセント403の電圧をチェックし、活線状態にあることを確認する。ついで、漏洩電流検査装置10の測定用プラグ8をコンセント403に接続する。次に、作業者は、電源部6の電源スイッチ62をオンにすると、漏洩電流検査装置10が動作を開始する。
【0029】
次に、作業者は、図2に示す押しボタンスイッチ12を押下する。これにより、漏洩チェックランプ53の発光ダイオード533が点灯すると共に、タイマー回路2で設定された漏洩チェック時間(例えば、150mS)の間、通電回路5で設定された漏洩チェック電流(例えば、110mA)が測定用プラグ8の電極間に流れる。しかし、屋内配線402は配線工事が正しく行われているため、電圧極403aと中性極403bとの間に110mAの電流が、正常且つ単純に負荷電流として流れるのみで、漏電ブレーカ400は動作しない。
【0030】
次に、図4(b)の配線における配線チェックについて説明する。図4(a)の場合と同様に、作業者は、漏洩電流検査装置10の測定用プラグ8をコンセント403に接続した後、電源スイッチ62をオンにする。次に、作業者は、押しボタンスイッチ12を押下する。これにより、漏洩チェックランプ53の発光ダイオード533が点灯すると共に、タイマー回路2で設定されたチェック時間(例えば、150mS)の間、通電回路5で設定された漏洩チェック電流(110mA)が測定用プラグ8の電極間、即ち、電圧極403aと接地極403cとの間に110mAが流れる。この電流によって漏電ブレーカ400が動作し、漏電ブレーカ400が動作したことによって作業者は、コンセント403に誤配線があることを認識し、再工事を行って正しい配線にすることができる。
【0031】
(漏電ブレーカの検査)
図5は、漏電ブレーカの検査を説明する図である。以下に、図4(a)及び図5を参照して漏電ブレーカ400の検査を説明する。この検査では、図5に示すように、漏洩電流検査装置10のコード7及び測定用プラグ8に代えて、テスターリード80,81とこのテスターリード80,81に接続されたテスター棒82,83を用いる。
【0032】
まず、作業者は、テスター等により、図4(a)に示すコンセント403の電圧をチェックし、屋内配線402が活線状態にあることを確認する。次に、漏洩電流検査装置10の電源スイッチ62をオンにした後、例えば、テスター棒82をコンセント403の電圧極403aに接触させ、テスター棒83をコンセント403の接地極403cに接触させる。或いは、テスター棒82を電圧極403aに代えて中性極403bに接触させてもよい。この状態で、押しボタンスイッチ12を押すと、ゼロクロス放電回路4及び通電回路5に漏洩チェック電流が流れると共に、漏洩チェックランプ53の発光ダイオード533が点灯する。
【0033】
通電回路5が動作することによって、双方向半導体スイッチ素子41が導通状態になり、電圧極403aと接地極403cとを導通させる。双方向半導体スイッチ素子41には漏洩チェック電流(110mA)が流れ、この電流が接地極403cを介して接地ライン401cに流れる。漏電ブレーカ400が正常であれば、漏洩チェック電流によって漏電ブレーカ400が動作する。漏電ブレーカ400が動作したことを確認できれば、漏電ブレーカ400のチェックが完了する。
【0034】
(第1の実施の形態の効果)
第1の実施の形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)漏洩電流検査装置10は、タイマー回路2によって短い漏電チェック時間を設定でき、漏電ブレーカ400の動作時間を確認することができる。従って、漏洩チェック電流が必要とする時間以上に流れることはないので、安全性を向上させることができる。
(2)ゼロクロス放電回路4を設けたことにより、漏電チェック電流をゼロクロスで放電できるため、突入電流は発生せず、漏電ブレーカ400の動作時間が正確に把握することができる。
(3)温度ヒューズ51を設けたことにより、漏洩電流検査装置10内に回路異常が発生し、漏電状態のまま固定化された場合でも、電流を遮断して回路を発火等から守ることができる。
(4)漏洩電流検査装置10は、電池61によって動作可能であると共に大電力対応の抵抗を用いずに済むため、省電力化、小型化及び軽量化が図ることができる。
(5)起動回路1及びタイマー回路2とゼロクロス放電回路4とをアイソレーション回路3によって電気的に分離(絶縁)しているため、起動回路1及びタイマー回路2を直流低電圧で設計でき、安全性を向上させることができる。
(6)双方向半導体スイッチ素子41を用いたゼロクロス放電回路4によって配電線側の通電の制御を行っているため、アークやノイズが発生しない。従って、他の系統へのノイズ混入が抑制されるため、活線状態で漏電チェック等を行うことができる。
【0035】
[第2の実施の形態]
(漏洩電流検査装置の概略構成)
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る漏洩電流検査装置の概略構成を示すブロック図である。漏洩電流検査装置10は、図1に示した第1の実施の形態において、タイマー回路2を複数の漏洩チェック時間を設定できる構成にし、更に、漏洩チェック電流を数段階に設定可能な漏洩電流設定回路9を設け、また、通電回路5を漏洩電流設定回路9に対応した構成にしたものであり、その他の構成は第1の実施の形態と同様である。なお、電源部6は、起動回路1、タイマー回路2、アイソレーション回路3、通電回路5及び漏洩電流設定回路9のそれぞれに電源供給を行っている。
【0036】
(漏洩電流検査装置の詳細構成)
図7は、図6に示した漏洩電流検査装置の詳細構成を示す回路図である。なお、以下においては、第1の実施の形態と同一構成である回路については説明を省略する。タイマー回路2は、図2の構成において、コモン接点250が電源部6の正電圧出力に接続された1回路3接点のスイッチ25と、該スイッチ25の3つの接点の2つに各一端が接続されると共に各他端が共通接続されてコンデンサ22に接続された抵抗26,27とを追加したものである。スイッチ25は、例えば、0.15秒、0.25秒、0.35秒のいずれか1つの漏電チェック時間の選択に対応している。
【0037】
通電回路5は、上記漏洩チェックランプ53と、発光ダイオード(発光素子)541及び双方向半導体スイッチ素子542を内蔵した第2のソリッドステートリレー54と、発光ダイオード(発光素子)551及び双方向半導体スイッチ素子552を内蔵した第3のソリッドステートリレー55と、発光ダイオード(発光素子)561及び双方向半導体スイッチ素子562を内蔵した第4のソリッドステートリレー56と、双方向半導体スイッチ素子542に接続された抵抗57と、双方向半導体スイッチ素子552に接続された抵抗58と、双方向半導体スイッチ素子562に接続された抵抗59と、漏洩チェックランプ53に接続された抵抗60と、抵抗57に接続された温度ヒューズ70と、抵抗58に接続された温度ヒューズ71と、抵抗59に接続された温度ヒューズ72とを備えて構成されている。第2〜第4のソリッドステートリレー54〜56として、ここではフォトトライアック・カプラ(PHOTO TRIAC COUPLER)を用いている。なお、発光ダイオード541,551,561と双方向半導体スイッチ素子542,552,562との組合せは、通電回路5における絶縁手段を形成している。
【0038】
本実施の形態においては、抵抗57は第2のソリッドステートリレー54に0.1mAが流れる抵抗値に設定され、抵抗58は第3のソリッドステートリレー55に50mAが流れる抵抗値に設定され、抵抗59は第4のソリッドステートリレー56に110mAが流れる抵抗値に設定されている。
【0039】
漏洩電流設定回路9は、3つの接点が通電回路5に接続された1回路3接点のスイッチ91と、このスイッチ91のコモン接点910と電源部6の正電圧ラインに接続された抵抗92とを備えている。スイッチ91は、ここでは、0.1mA、50mA、110mAのいずれか1つの漏電チェック電流の選択に対応している。
【0040】
(漏洩電流検査装置の動作)
次に、第2の実施の形態の動作について、図3、図4、図6及び図7を参照して説明する。まず、作業者は、スイッチ25により所望の漏洩チェック時間を選択すると共にスイッチ91により所望の漏電チェック電流を選択する。ここでは、図7に示す様に、0.1秒の漏電チェック時間を選択し、また、0.1mAの漏電チェック電流を選択したとする。
【0041】
次に、作業者が図1に示す電源部6の電源スイッチ62をオンにすると、図3(a)に示すように、タイマーIC23に電源が印加されると同時に、図3(b)に示す電圧がタイマーIC23の2番端子に印加される。次に、作業者は、押しボタンスイッチ12を押下する。この操作により、図3(b)に示すように、タイマーIC23のTRIGGER端子(2番端子)の電圧が変化し、タイマー回路2が動作を開始する。
【0042】
タイマー回路2は、スイッチ25及び抵抗21を介して、押しボタンスイッチ12がオンの時点からコンデンサ22の充電が図3(c)に示すように開始され、この電圧がタイマーIC23のTHRESHOLD端子(6番端子)に印加される。また、コンデンサ22への充電開始と共にタイマーIC23のOUTPUT端子(3番端子)には、図3(d)に示す出力電圧が発生する。この電圧は抵抗32を介してアイソレーション回路3の第1のソリッドステートリレー31の発光ダイオード311に印加される。発光ダイオード311は、タイマーIC23のOUTPUT端子に電圧が印加されると同時に点灯し、第1のソリッドステートリレー31の双方向半導体スイッチ素子312が導通する。双方向半導体スイッチ素子312の導通により抵抗42に電流が流れ、抵抗42の両端に電圧が生じる。この電圧によって、ゼロクロス放電回路4の双方向半導体スイッチ素子41のゲートにトリガが印加され、双方向半導体スイッチ素子41が導通状態になる。その通電の開始は、ゼロクロスになる。
【0043】
一方、通電回路5は、スイッチ91が0.1mAを選択しているため、抵抗92を介して電池61の電圧が第4のソリッドステートリレー56の発光ダイオード561の両端に印加され、発光ダイオード561が発光する。発光ダイオード561の発光により、双方向半導体スイッチ素子562が導通し、0.1mAの電流が測定用プラグ8、コード7、抵抗60、温度ヒューズ72、抵抗59、双方向半導体スイッチ素子562、双方向半導体スイッチ素子41、コード7及び測定用プラグ8の経路で流れる。抵抗60に電流が流れることにより、抵抗60の両端に電圧が発生し、この電圧がダイオード532で整流されることにより、漏洩チェックランプ53の発光ダイオード533が点灯する。なお、双方向半導体スイッチ素子562を流れた電流の一部は、抵抗33を介して双方向半導体スイッチ素子312に流れる。
【0044】
タイマーIC23のTHRESHOLD端子(6番端子)の電圧が、図3(c)に示すように規定の電圧Vrに到達すると、タイマーIC23に内蔵のトランジスタ(図示せず)が非導通になり、コンデンサ22の放電が図3(c)に示すように開始される。同時に、図3(d)に示すように、OUTPUT端子(3番端子)の出力電圧が消失し、発光ダイオード311が消灯する。これにより双方向半導体スイッチ素子312が非導通になり、この非導通によって双方向半導体スイッチ素子41が非導通になる。この結果、双方向半導体スイッチ素子562が非導通になり、漏電チェック電流は流れなくなる。また、抵抗60の電圧降下が0になることで、漏洩チェックランプ53の発光ダイオード533が消灯する。
【0045】
以上により、0.1秒の漏電チェック時間及び0.1mAの漏電チェック電流による放電が終了する。この後、スイッチ25,91を切り換えて押しボタンスイッチ12を押せば、他の漏電チェック時間及び漏電チェック電流による放電が上記したと同様の動作が実行される。
【0046】
なお、第2の実施の形態の漏洩電流検査装置10による配線チェック及び漏電ブレーカの検査は、本実施の形態が漏電チェック時間及び漏電チェック電流を適宜変えて行えることを除けば、第1の実施の形態と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0047】
図7において、スイッチ25により漏電チェック時間を0.1秒、0.25秒、0.35秒と順次切り換えて配線チェックや漏電ブレーカの検査を行えば、漏電ブレーカの動作時間を確認することができる。また、漏電チェック電流を漏電ブレーカの規格に応じて0.1mA、50mA、100mAの1つをスイッチ91により選択すれば、漏洩チェック電流を過剰に流すのを防止することができる。
【0048】
(第2の実施の形態の効果)
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果と共に下記の効果を奏する。
(1)漏洩電流検査装置10は、タイマー回路2にスイッチ25を設けて複数の漏電チェック電流を設定できるようにしたため、各種の漏電ブレーカに対応した動作時間を確認できると共に、必要とする時間以上に漏電チェック電流を流さないので、安全性を向上させることができる。
(2)漏洩電流設定回路9及び第2〜第4のソリッドステートリレー54〜56を設けて漏洩チェック電流の値を複数設定できるようにしたため、漏洩電流のチェックを広範囲に行うことができる。
(3)アイソレーション回路3により電気的に分離した構成に加え、第2〜第4のソリッドステートリレー54〜56によって配電線側と漏洩電流設定回路9とを電気的に分離しているため、起動回路1及びタイマー回路2と共に漏洩電流設定回路9を直流低電圧で設計できるので、安全性を向上させることができる。
【0049】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想を逸脱あるいは変更しない範囲内で種々な変形が可能である。例えば、上記各実施の形態において、タイマーIC23を用いる構成にしたが、所望の動作時間を設定できさえすれば、アナログ、デジタルを問わず、どのような回路構成であってもよい。
【0050】
また、第1の実施の形態において、抵抗21を可変抵抗にすれば、任意の漏洩チェック時間を設定することができる。この場合、標準的なチェック時間を容易に設定できるように、目盛り等を設けるのが望ましい。
【0051】
また、第2の実施の形態において、漏電チェック時間及び漏電チェック電流は、各3点の設定としたが、任意の設定数にすることができると共に、漏電チェックの時間及び電流値は、任意に設定することができる。
【0052】
また、上記各実施の形態は、単相交流への適用について示したが、3相交流に適用できることは言うまでもない。
【0053】
また、上記各実施の形態において、漏洩電流検査装置10は、配電線の電圧を数値で表示するデジタル電圧計を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 起動回路
2 タイマー回路
3 アイソレーション回路
4 ゼロクロス放電回路
5 通電回路
6 電源部
7 コード
8 測定用プラグ
9 漏洩電流設定回路
10 漏洩電流検査装置
11 抵抗
12 押しボタンスイッチ
13 抵抗
14 コンデンサ
15 コンデンサ
21 抵抗
22 コンデンサ
23 タイマーIC
24 コンデンサ
25 スイッチ
26 抵抗
27 抵抗
31 第1のソリッドステートリレー
32 抵抗
33 抵抗
41 双方向半導体スイッチ素子
42 抵抗
43 スナバ回路
51 温度ヒューズ
52 抵抗
53 漏洩チェックランプ
54 第2のソリッドステートリレー
55 第3のソリッドステートリレー
56 第4のソリッドステートリレー
57 抵抗
58 抵抗
59 抵抗
60 抵抗
61 電池
62 電源スイッチ
70 温度ヒューズ
71 温度ヒューズ
72 温度ヒューズ
80 テスターリード
81 テスターリード
82 テスター棒
83 テスター棒
91 スイッチ
92 抵抗
250 コモン接点
311 発光ダイオード
312 双方向半導体スイッチ素子
400 漏電ブレーカ
401 商用配線
401a 電圧極ライン
401b 中性極ライン
401c 接地ライン
402 屋内配線
403 コンセント
403a 電圧極
403b 中性極
403c 接地極
531 抵抗
532 ダイオード
533 発光ダイオード
541 発光ダイオード
542 双方向半導体スイッチ素子
551 発光ダイオード
552 双方向半導体スイッチ素子
561 発光ダイオード
562 双方向半導体スイッチ素子
910 コモン接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定した漏洩チェック電流を配電線に通電させる通電回路と、
前記漏洩チェック電流をゼロクロスで前記通電回路に通電させるゼロクロス放電回路と、
前記漏洩チェック電流の通電時間を設定するタイマー回路と、
前記ゼロクロス放電回路と前記タイマー回路とを電気的に絶縁するアイソレーション回路と、
を備えることを特徴とする配電線の漏洩電流検査装置。
【請求項2】
前記タイマー回路は、その電源が電池であることを特徴とする請求項1に記載の配電線の漏洩電流検査装置。
【請求項3】
前記アイソレーション回路は、フォトカプラによるソリッドステートリレーからなり、前記タイマー回路と前記ゼロクロス放電回路との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の配電線の漏洩電流検査装置。
【請求項4】
配電線に対して複数の異なる値の通電時間を設定可能なタイマー回路と、
前記配電線に通電する漏洩チェック電流を複数の異なる値により設定可能な漏洩電流設定回路と、
前記タイマー回路によって設定された通電時間により前記漏洩電流設定回路によって選択された漏洩チェック電流を前記配電線に通電させる通電回路と、
前記漏洩チェック電流をゼロクロスで前記通電回路に通電させるゼロクロス放電回路と、
前記通電回路及び前記ゼロクロス放電回路と前記タイマー回路とを電気的に絶縁する絶縁手段と、
を備えることを特徴とする配電線の漏洩電流検査装置。
【請求項5】
前記通電回路は、それぞれが発光素子と双方向性半導体スイッチ素子とを備えた複数のフォトカプラによるソリッドステートリレーを備え、この複数のソリッドステートリレーが前記タイマー回路と前記通電回路とを電気的に絶縁する前記絶縁手段を構成していることを特徴とする請求項4に記載の配電線の漏洩電流検査装置。
【請求項6】
前記タイマー回路及び前記漏洩電流設定回路は、その電源が電池であることを特徴とする請求項4に記載の配電線の漏洩電流検査装置。
【請求項7】
前記絶縁手段は、フォトカプラによるソリッドステートリレーからなるアイソレーション回路を含み、該アイソレーション回路は、前記タイマー回路と前記ゼロクロス放電回路との間に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の配電線の漏洩電流検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−210361(P2010−210361A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55847(P2009−55847)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(592119742)アメリカン電機株式会社 (1)
【出願人】(592091529)東光電気工事株式会社 (10)
【Fターム(参考)】