説明

酢酸アリルの製造プロセス

【課題】触媒の存在下、酸素と酢酸とプロピレンの反応により酢酸アリルを製造するに際して、未反応の酢酸、さらには酢酸アリルを加水分解してアリルアルコールを得る際に副生する酢酸を回収し、酢酸アリル製造の原料として再利用する場合において、触媒の活性および選択性の低下を防止し、触媒寿命を向上させる。
【解決手段】触媒の存在下、酢酸3と酸素1とプロピレン2とを酸化反応器5で反応させ、酢酸アリルと水を生成させる工程と、未反応の酢酸を蒸留塔9で分離する工程と、酢酸を含む酢酸含有液を回収して、酢酸水蒸発器4を経由させて酸化反応器5に戻す工程とを備えた酢酸アリルの製造方法であって、酢酸含有液を含むプロセス液を加熱装置10で80〜250℃の温度に加熱する加熱工程をさらに有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は触媒の存在下、酸素と酢酸とプロピレンとを反応させて酢酸アリルを製造する製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸アリルは、溶剤、医農薬品、アリルアルコールの製造に用いられる重要な工業原料である。また、アリルアルコールは、1,4−ブタンジオール、テトラヒドロフラン、エピクロロヒドリンといった多種多様な有機化学製品の原料として、近年需要が益々伸びている。そのため、酢酸アリルおよびアリルアルコールの効率的な製造技術の開発が進められている。
【0003】
酢酸アリルの製造方法として、触媒の存在下、酸素と酢酸とプロピレンとを反応させる方法が広く一般的に知られている。また、こうして得られた酢酸アリルをさらに加水分解して、アリルアルコールを製造する方法についても多くの報告がある。
例えば、特許文献1には、金属パラジウム及びアルカリ金属酢酸塩をシリカに沈着してなる触媒の存在下に、酸素、酢酸、プロピレンを気相において反応させて酢酸アリルを製造し、次いで、酸性イオン交換樹脂の存在下、酢酸アリルの加水分解反応を行い、アリルアルコールを製造する方法が開示されている。特許文献2には、酢酸アリルおよびアリルアルコールの製造方法が開示されており、該文献には、酢酸アリルを製造する際、反応原料ガス中のアリルアルコール濃度を100ppm以下にすることにより、酢酸アリル製造時の原料使用率が向上されると記載されている。
【0004】
このように酢酸アリルおよびアリルアルコールの製造方法として、いくつもの提案がなされてはいる。しかしながら、これらの方法は、工業的に充分な生産性を持つまでには至っておらず、特に、酸素、酢酸、プロピレンの反応により酢酸アリルを製造する際に使用される触媒の活性、選択性、寿命が問題となることが多い。
【0005】
このような事情を背景とし、近年、このような酢酸アリル製造触媒や酢酸アリル製造方法の問題点を解決するために、いくつかの提案がなされている。
例えば、特許文献3には、主触媒として金属パラジウム、副触媒として錫とアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物を担持した触媒が活性を有し、かつ高い触媒活性と触媒選択性を保持することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−238759号公報
【特許文献2】特開平1−199924号公報
【特許文献3】特開2001−79400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献3に開示された触媒には活性低下が認められ、特に、未反応の酢酸を回収して反応に再利用する際において触媒の劣化が顕著であり、工業的な利用には限界があることが明らかとなった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、触媒の存在下、酸素と酢酸とプロピレンの反応により酢酸アリルを製造するに際して、未反応の酢酸、さらには酢酸アリルを加水分解してアリルアルコールを得る際に副生する酢酸を回収し、酢酸アリル製造の原料として再利用する場合において、触媒の活性および選択性の低下を防止し、触媒寿命を向上させる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、未反応の酢酸、さらには酢酸アリルを加水分解してアリルアルコールを得る際に副生する酢酸を含む酢酸含有液を回収して、反応に再利用するにあたって、酢酸含有液を加熱装置において特定の温度で処理する加熱工程により、酢酸含有液に不純物として存在し、触媒毒として作用するアクリル酸アリルやアクリル酸などの不飽和化合物を反応(重合)させ、高沸点成分に転化できることに想到した。このような高沸点成分は、酢酸とは沸点が大きく異なるため、加熱装置や酢酸水蒸発器での単純な蒸留により酢酸から容易に分離できる。そのため、加熱工程を行うことによって、不飽和化合物が除去された酢酸含有液を反応に戻すことができ、触媒の劣化を防止することができる。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[8]に示される酢酸アリルの製造方法に関する。
【0010】
[1]触媒の存在下、酢酸と酸素とプロピレンとを反応器で反応させ、酢酸アリルと水を生成させる工程と、未反応の酢酸を蒸留塔で分離する工程と、酢酸を含む酢酸含有液を回収して、酢酸水蒸発器を経由させて前記反応器に戻す工程とを備えた酢酸アリルの製造方法であって、前記酢酸含有液を含むプロセス液を加熱装置で80〜250℃の温度に加熱する加熱工程をさらに有することを特徴とする酢酸アリルの製造プロセス。
[2]前記プロセス液は、前記酢酸水蒸発器の塔底液である[1]に記載の酢酸アリルの製造プロセス。
[3]前記加熱装置には蒸発器が用いられる[1]または[2]に記載の酢酸アリルの製造プロセス。
[4]前記加熱工程後の前記プロセス液を前記蒸留塔に返送する[1]〜[3]のいずれか一項に記載の酢酸アリルの製造プロセス。
[5]前記酢酸アリルを加水分解させる工程を有し、前記酢酸含有液は、前記加水分解により生成した酢酸を含む[1]〜[4]のいずれか一項に記載の酢酸アリルの製造プロセス。
[6]前記蒸留塔は、前記加水分解により生成した酢酸を分離する[5]に記載の酢酸アリルの製造プロセス。
[7]前記加熱装置での加熱温度が100℃〜150℃である[1]〜[6]のいずれか一項に記載の酢酸アリルの製造プロセス。
[8]前記加熱装置での滞留時間が5.0分間以上である[1]〜[7]のいずれか一項に記載の酢酸アリルの製造プロセス。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、触媒の存在下、酸素と酢酸とプロピレンの反応により酢酸アリルを製造するに際して、未反応の酢酸、さらには酢酸アリルを加水分解してアリルアルコールを得る際に副生する酢酸を回収し、酢酸アリル製造の原料として再利用する場合において、触媒の活性および選択性の低下を防止し、触媒寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の製造プロセスの一例を示すプロセス図である。
【図2】本発明の製造プロセスの他の一例を示すプロセス図である。
【図3】実施例1と比較例1における反応時間と酢酸アリルのSTYとの関係を示すグラフである。
【図4】実施例1と比較例1における反応時間と酢酸アリルの選択率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態の酢酸アリルの製造プロセスでは、触媒の存在下、酸素と酢酸とプロピレンとを反応させて、酢酸アリルと水を生成させる。この反応の反応式を以下に示す。
CH=CH−CH+1/2O+CHCOOH→
CH=CH−CH−OCOCH+H
【0014】
(原料)
ここで原料として使用されるプロピレン、酸素には特に制限はない。プロピレンには、プロパン、エタン等の低級飽和炭化水素が混入していても差し支えないが、高純度のプロピレンを用いるのが好ましい。また、酸素は、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈されていてもよく、例えば空気であってもよい。ただし、反応ガスを循環、再使用する場合には、高純度の酸素、特に99%以上の純度の酸素を用いるのが好ましい。
【0015】
(触媒)
触媒としては、プロピレンと酢酸と酸素とを反応させて酢酸アリルを生成する能力を有するものであれば、如何なるものでも構わない。好ましくは、下記(a)〜(c)成分が(d)担体に担持された担持型固体触媒である。
【0016】
(a)パラジウム。
(b)金、銅、鉛、ルテニウムおよびレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物。
(c)アルカリ金属酢酸塩およびアルカリ土類金属酢酸塩から選ばれる少なくとも一種以上の化合物。
【0017】
(a)パラジウム
(a)成分のパラジウムとしては、いずれの価数を持つパラジウムでも構わないが、好ましくは金属パラジウムである。ここで言う「金属パラジウム」とは、0価の価数を持つパラジウムである。金属パラジウムは、還元剤であるヒドラジン、水素等を用いて、2価および/または4価のパラジウムイオンを還元することで得られる。この際、全てのパラジウムが金属状態でなくても構わない。
【0018】
また、(a)成分の具体的な原料には特に制限はなく、金属パラジウムの他、金属パラジウムに転化可能なパラジウム塩を用いることも可能である。金属パラジウムに転化可能なパラジウム塩の例としては、塩化パラジウム、塩化ナトリウムパラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウムなどがあるが、これらに限定されるものではない。
触媒における(a)パラジウムと(d)担体の比率としては、質量比にして、(a):(d)=1:10〜1:1000、より好ましくは(a):(d)=1:20〜1:500の比率である。
【0019】
(b)成分
(b)成分としては、金、銅、鉛、ルテニウムおよびレニウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物などの可溶性塩を使用することができる。上記元素の中で好ましい元素としては、金、および銅が挙げられる。金の前駆体の例としては、塩化金酸、塩化金酸ナトリウム、塩化金酸カリウムなどが挙げられ、銅の前駆体の例としては、塩化第一銅、塩化第二銅、酢酸銅、硝酸銅、アセチルアセトナト銅、硫酸銅等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
(a)成分および(b)成分の比率は、モル比にして(a):(b)=1:0.01〜1:10が好ましく、より好ましくは(a):(b)=1:0.02〜1:5である。(b)成分が複数の元素を含む場合は、これら各元素それぞれと(a)成分の比率として、(a):(b)=1:0.01〜1:10が好ましく、より好ましくは(a):(b)=1:0.02〜1:5である。
【0021】
(c)成分
(c)成分としては、好ましくはアルカリ金属酢酸塩であり、より具体的にはリチウム、ナトリウム、およびカリウムの酢酸塩を挙げることができる。さらに好ましくは酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウムであり、最も好ましくは酢酸カリウムである。
アルカリ金属酢酸塩およびアルカリ土類金属酢酸塩の担持量については特に制限はないが、好ましくは担体100質量部に対し、1〜30質量部である。また、希望する担持量とするために、アルカリ金属酢酸塩を例えば水溶液または酢酸の溶液として、供給ガスに添加する等の方法によって反応器中に加えてもよい。
【0022】
(d)担体
上記各触媒成分を担持する担体は特に制限されず、一般に担体として用いられている多孔質物質であればよい。好ましくはシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、珪藻土、モンモリロナイト、チタニア等が挙げられ、より好ましくはシリカである。また担体の形状には特に制限はない。具体的には、粉末状、球状、ペレット状等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
上記担体の粒子直径としては特に制限はないが、好ましくは1〜10mmであり、より好ましくは3〜8mmである。酢酸アリルを製造する反応器として管状反応器を用い、これに触媒を充填して反応を行う場合、粒子直径が1mmより小さいと、ガスを流通させるときに大きな圧力損失が生じ、有効にガス循環ができなくなる恐れがある。また粒子直径が10mmより大きいと、触媒内部まで原料ガスが拡散できなくなり、有効に触媒反応が進まなくなる恐れがある。
上記担体の細孔構造は、その細孔直径が1〜1000nmにあることが好ましく、2〜800nmの間がより好ましい。
【0024】
(a)成分、(b)成分、および(c)成分の(d)担体への担持の方法としては特に制限はなく、如何なる方法で担持してもよい。
具体的には、例えばパラジウム塩などの(a)成分と、(b)成分との水溶液を担体に含浸させた後、アルカリ金属塩の水溶液で処理する方法が挙げられる。この際、触媒液が含浸された担体を乾燥することなくアルカリ金属塩水溶液で処理するのが好ましい。アルカリ金属塩水溶液による処理時間は、担体に含浸させた触媒成分の塩が、水に不溶な化合物に完全に変換されるのに必要な時間であり、通常20時間で充分である。
次に、触媒担体の表面層に沈殿された触媒成分の金属塩を還元剤で処理し、0価の金属とする。該還元は、例えばヒドラジンまたはホルマリンのような還元剤の添加により、液相において行われる。その後、触媒担体を塩素イオン等が検出されなくなるまで水洗し、乾燥後、アルカリ金属酢酸塩を担持させて、さらに乾燥する。
【0025】
(反応)
触媒の存在下で、酢酸とプロピレンと酸素との反応を行う際の反応形式には特に制限はなく、従来公知の反応形式を選ぶことができる。一般には、用いる触媒に応じて最適な方法があるため、触媒に応じた形式で行うことが好ましい。担持型固体触媒を用いる場合は、当該触媒を反応器に充填した固定床流通反応を採用することが実用上有利である。
また、酢酸アリルを製造する反応器(以下、酸化反応器という場合もある。)の材質については特に制限はないが、耐食性を有する材料で構成された反応器が好ましい。
【0026】
酢酸アリルを製造する際の反応温度には特に制限はないが、好ましくは100〜300℃であり、さらに好ましくは120〜250℃である。
反応圧力としては特に制限はないが、設備の点から0.0〜3.0MPaGであることが実用上有利であり、より好ましくは0.1〜1.5MPaGである。なお、「G」はゲージ圧を示す。
【0027】
酸化反応器に供給される原料ガスは、少なくとも酢酸、プロピレンおよび酸素を含み、さらに必要に応じて窒素、二酸化炭素、希ガスなどを希釈剤として含むことができる。原料ガス全量に対して、酢酸は気化させて4〜20vol%、好ましくは6〜15vol%の割合となる量で、プロピレンは5〜50vol%、好ましくは10〜40vol%の割合となる量で、酸化反応器に供給する。
酢酸、プロピレン、酸素の比率(モル比)としては、酢酸:プロピレン:酸素=1:0.25〜13:0.15〜4が好ましく、より好ましくは、酢酸:プロピレン:酸素=1:1〜7:0.5〜2である。
原料ガスの空間速度は、標準状態において、空間速度10〜15000hr−1、特に300〜8000hr−1として触媒に通すことが好ましい。
【0028】
(酢酸アリルの製造プロセス)
図1に本実施形態の酢酸アリルの製造プロセスを示す。
なお、本発明において、「酢酸を含む酢酸含有液」とは酢酸の他にアクリル酸などの不純物を含有する。単に「酢酸含有液」と呼ぶ場合もある。
図中符号5が酸化反応器であり、この酸化反応器5には上述の触媒が充填されるとともに、酸素1、プロピレン2、酢酸3を含む原料ガス12が供給されて、上述の反応条件により酢酸アリルが製造される。酸化反応器5を出た酢酸アリルを含有する反応器出口ガス13は、気液分離器6に送られ、反応器出口ガス13に含まれる凝縮成分(酢酸アリル、酢酸、水を主成分とする。)が気液分離器塔底液14として得られる。気液分離器塔底液14は、中間タンク7に送給後、供給液16として、第一の蒸留塔9へと供給される。
第一の蒸留塔9では、生成した酢酸アリルと未反応の酢酸に分離される。具体的には、酢酸アリルと水を主な成分とする第一の蒸留塔塔頂液19と、未反応の酢酸と水を主な成分とする第一の蒸留塔塔底液に分離される。第一の蒸留塔塔頂液19は、図示略の酢酸アリル精製工程にて、必要に応じた純度まで精製される。
【0029】
第一の蒸留塔塔底液の一部である第一の蒸留塔塔底液(回収用)18は、未反応の酢酸を含有する酢酸含有液として回収され、酸化反応器5の前段側に配置されて原料ガスを加熱、気化するための酢酸水蒸発器4へ供給される。なお、第一の蒸留塔塔底液のうちの一部は、必要に応じて、第一の蒸留塔塔底液(吸収用)17として気液分離器6に吸収水として供給される。
酢酸水蒸発器4には、気液分離器6からのガス成分(希釈剤を含む。)とプロピレン2を含む循環ガス15がコンプレッサ8で所定の圧力とされて導入され、また、酢酸3も導入される。そして、酢酸水蒸発器4からは、その塔底液の一部が酢酸水蒸発器塔底液抜出し液20として抜き出され、加熱工程が行われる加熱装置10へと供給される。
【0030】
加熱装置10では、酢酸水蒸発器塔底液抜出し液20、すなわち、酢酸含有液を含むプロセス液が80〜250℃の温度範囲で加熱されることによって、該液20に不純物として含まれ、触媒毒として作用するアクリル酸アリルやアクリル酸などの不飽和化合物が反応(重合)し、高沸点成分を生成する(加熱工程)。このような不飽和化合物の重合物などからなる高沸点成分と、触媒から留出した酢酸塩類などを含む加熱装置塔底液22は、この例では、廃液として、加熱装置10の塔底から反応プロセス系外へ排出される。一方、高沸点成分などが分離された加熱装置10からの塔頂液21は、酢酸、水を含み、反応へ再利用されるため、第一の蒸留塔への供給液16と混合されて、第一の蒸留塔9へ返送され、その後、酢酸水蒸発器4を経て、酸化反応器5へと供給される。
その際、酢酸水蒸発器4で加熱されて気化した酢酸水蒸発器4の塔頂からの出口ガス11には、酸素1が加えられて、原料ガス12として酸化反応器5に供給される。
【0031】
このような酢酸アリルの製造プロセスは、酢酸含有液の一部を含むプロセス液を80〜250℃で加熱する加熱工程を有するものであるため、未反応の酢酸を反応に再利用するプロセスにおいても、酸化反応器5に充填された触媒の活性および選択性の低下を抑制し、触媒寿命の低下を防止することができる。
酢酸含有液(この例では第一の蒸留塔塔底液18。)には、未反応の酢酸や、反応の生成物である水、微量の酢酸アリルの他に、酸化反応器5での反応で副生した不純物(アクリル酸アリル、アクリル酸などの不飽和化合物。)や原料などの成分などが含まれる。これらの成分の標準沸点は、酢酸の118℃に対して、水100℃、酢酸アリル103℃、アクリル酸アリル122℃、アクリル酸139℃であり、互いに近く、酢酸含有液から、これらを単純な蒸留で分離することは困難である。一方、酸素、酢酸、プロピレンから酢酸アリルを製造する場合には、原料の有効利用、省エネルギー、コストの観点から、未反応の酢酸は酢酸アリルの製造に再利用されるのが望ましいという事情がある。そこで従来は、酢酸含有液は、不飽和化合物などの不純物の除去が十分でないまま酢酸水蒸発器4にリサイクルされ、その他の原料と混合されて、酸化反応器5へ供給されていた。このような従来の方法では、酢酸含有液に含まれる水、酢酸アリル、アクリル酸アリル、アクリル酸といった酢酸以外の成分も、酢酸水蒸発器4において気化し、酸化反応器5へ供給されてしまう。本発明者は、アクリル酸アリル、アクリル酸といった不飽和化合物は、酢酸アリル製造用触媒の触媒毒となり、その活性などを低下させ、寿命を短くすることを見出し、これらの不飽和化合物はできるだけ酸化反応器5にリサイクルされないようにする方法について検討した。
【0032】
そして、鋭意検討した結果、この例では、第1の蒸留塔9の塔底から回収された酢酸含有液を酢酸水蒸発器4に供給し、酢酸水蒸発器4の塔底から一部の液を抜出し、これを酢酸含有液を含むプロセス液として加熱装置10で加熱処理することによって、酢酸含有液に含まれるアクリル酸アリルやアクリル酸同士を反応(重合)させ、オリゴマーなどの高分子量化合物すなわち、高沸点化合物へと転化することで、この加熱装置10や酢酸水蒸発器4における単純な蒸留であっても、酢酸とこれら高沸点化合物とを容易に分離できることに想到した。これにより、酢酸水蒸発器4の能力低下や酢酸のロスを伴うことなく、酸化反応器5への不飽和化合物の供給濃度を下げることができ、その結果、触媒性能を改善することができるのである。
なお、酢酸含有液の回収は、この例では第1の蒸留塔9の塔底から行っているが、例えば、酸化反応器5の出口などから回収してもよく、回収液が反応により副生した不純物(アクリル酸アリル、アクリル酸などの不飽和化合物。)を含むものであればよい。
【0033】
また、加熱装置10は、酢酸アリル製造プロセスで一般に使用される酢酸水蒸発器4に比べて、循環ガスの影響により発生するリフトアップ(ミスト(非蒸発状態)のまま反応器に供給される現象)が無く、また、棚段が不要など構造が簡単で、運転操作が容易であるため、液体成分の加熱をより効率的に行うことができる。よって、酢酸含有液中の不飽和化合物の濃度をより効果的に下げることが可能である。
さらに、酸化反応器5の前工程にある酢酸水蒸発器4は、酸化反応器5の運転条件に大きく影響を受ける。例えば、酢酸水蒸発器4に循環ガス15が流入し塔頂から反応器入口ガス12が得られることから、酢酸水蒸発器4における操作圧力は、差圧を考慮すると少なくとも酸化反応器5の運転圧力よりも高くすることが必要となり、酢酸水蒸発器4の操作条件が制約される。これに対して、加熱装置10は、反応系の運転条件に制約を受けずに、酢酸含有液を加熱処理することができる。
なお、酢酸水蒸発器4の運転条件は、具体的には、圧力:0.3MPaG〜1.0MPaG、温度:80℃〜140℃、酢酸水蒸発器を通過する循環ガスの量は、3t/hr〜40t/hrが好ましい。このようにすると、仮に、加熱装置の塔底液22を系外に排出しない場合でも、酢酸とこれら高沸点化合物とを酢酸水蒸発器4にて容易に分離できる。
【0034】
酢酸水蒸発器4から加熱装置10への抜出し量に制限はないが、酢酸含有液の酢酸水蒸発器4への供給量と酢酸含有液の加熱装置10への抜き出し量の質量比は、好ましくは供給量:抜き出し量=40:1〜1:1、より好ましくは10:1〜2:1である。抜出し量がこの範囲を超えると、酢酸水蒸発器4における加熱エネルギー(スチームの使用量)が多くなりすぎる。また、抜き出し量がこの範囲未満では、アクリル酸、アクリル酸アリルの酢酸水蒸発器4における濃度が上昇し、酸化反応器5の触媒の劣化を充分に抑制できなくなる可能性がある。
【0035】
加熱装置10の形式については、液体を加熱することができる装置であれば、特に制限されないが、酢酸含有液を加熱し、そのうちの一部を蒸発させることで、供給液を凝縮可能であることが好ましい。
具体的には、蒸発器が用いられることが好適であり、具体的な形式としては、直火式、液中燃焼方式、ジャケット型、自然循環型、自然循環式水平型、自然循環式垂直短管型、垂直長管上昇膜型、水平管下降膜型、垂直長管下降膜型、強制循環式水平管型、強制循環式垂直管型、コイル型、プレート型、攪拌膜型、遠心式、フラッシュ蒸発法を挙げることができる(これらの詳細については、例えば「化学工学便覧」丸善株式会社、昭和63年3月18日発行、改訂五版第395頁以降の「7 蒸発」の項を参照することができる)。さらに、加熱装置10の形式としては、熱交換器を採用でき、また、熱交換器と蒸留塔を組み合わせた形式も可能である。熱交換器としては、例えば、多管円筒式、渦巻管式、渦巻板式、プレート式、二重管式、液膜式、泡沫接触式、多重円筒式、掻面式、掻面式液膜、遠心薄膜式、タンクコイル式、タンクジャケット式の熱交換器を挙げることができる(これらの熱交換器については、「熱交換器設計ハンドブック(増訂版)」、工学図書株式会社、昭和49年1月25日発行、第2版5刷を参照することができる)。
【0036】
また、加熱装置10を2系列以上とし、直列、並列、直列と並列の組み合わせのいずれかで設置し、それぞれの系を様々な運転条件で稼動させることも可能である。2系列以上の加熱装置10の場合、熱交換器を同時にではなく、交互に使用することが望ましい。また、その場合、一つの加熱装置10を一定期間使用後、他の系列の運転に切り替える際に、一定期間使用した加熱装置10にpHが10以上のアルカリ性の水、または、スチームを通すと、加熱装置10の運転を停止することなく、連続運転することが可能となる。加熱装置10の運転切り替え時間に制限はないが、好ましくは1000時間〜5000時間ごとである。
【0037】
加熱装置10の操作圧力に制限はなく、減圧から加圧の条件で操作することが可能である。好ましい運転の圧力範囲は、−0.1〜10.0MPaGであり、より好ましくは、−0.02〜1.0MPaGである。この範囲未満では、加熱装置10の塔頂成分の凝縮にエネルギーを要する傾向がある。また、この範囲を超えると、低沸成分と高沸成分との分離が困難となり、また、装置仕様、材質の面からコストがかかる。
酢酸加熱装置10の材質は特に制限されないが、好ましくは耐食性を有する材料で構成されていることが望ましい。
【0038】
図1の例では、加熱装置10の塔頂液21は、再利用のために、第一の蒸留塔9へ供給されているが、それに含まれる酢酸が、酢酸水蒸発器4を経て酸化反応器5に供給される限り、供給先はこれに限定されず、酢酸アリル製造プロセスのどの工程に供給されてもよい。一般に、酢酸アリルの製造プロセスでは、中間タンク7までの反応工程の圧力が高く、また、中間タンク7以降における酢酸、水濃度が比較的高い。そのため、酢酸アリルやこれを用いたアリルアルコール製品の品質の観点からは、塔頂液21の供給先としては、図1の例のように、第一の蒸留塔9、具体的には、第一の蒸留塔9への供給液16のラインへ供給することが望ましい。
また、加熱装置10の塔底液22には、酢酸、水、高沸点成分および酢酸塩などが含まれ、特に高沸点成分および酢酸塩は、酢酸アリル製造プロセスにリサイクルされると、プロセス配管の詰まりなどを生じる恐れがある。よって、この例のように、塔底液22は、製造工程外へ排出、廃棄されるのが望ましい。この際、加熱装置10の塔底液22の流量に制限はないが、酢酸水蒸発器塔底液抜出し液20と塔底液22の質量比として、塔底液抜出し液:加熱装置10の塔底液=2:1〜1000:1の範囲が好ましく、より好ましくは20:1〜500:1である。塔底液22の流量がこの範囲を超えると、排出、廃棄される塔底液の量が増え、酢酸のロスとなる。塔底液22の流量がこの範囲未満では、塔底液22の粘度上昇が起こり、場合によっては、加熱装置10の効率が低下する恐れがある。
なお、加熱装置10の塔底液22は、上述のように、加熱装置10から直接系外に排出されることが好ましいが、これに含まれる高沸点化合物は、酢酸とは沸点が大きく異なるため、塔底液22を必ずしも加熱装置10から直接系外に排出せず、他の蒸留装置などへ供給してもよい。加熱装置10の塔底液22では、不純物が高沸点化されているため、加熱装置10や酢酸水蒸発器4における単純な蒸留により残存し、酢酸水蒸発器4の塔頂からの出口ガス11には実施的には含まれない。ただし、これらの不純物はプロセスのいずれかの工程にて系外へ排出される必要がある。
【0039】
加熱装置10におけるプロセス液の滞留時間は、特に制限されないが、5分間以上が好ましい。より好ましくは5.0〜90分間、より好ましくは5.0〜45分間である。滞留時間がこの範囲未満では、プロセス液に含まれる酢酸含有液中の不飽和化合物を充分に反応させることができず、その結果、これらが充分に分離されずに、酸化反応器5へとリサイクルされてしまう可能性が大きくなる。滞留時間がこの範囲を超えると、加熱装置10の容積を大きくする必要が生じ、装置の設置や装置材料コストの面で問題となる。
ここで滞留時間とは、ある有限の空間に流入し流出する物質がその空間内にとどまっている時間を意味する。空間の容積をV(m)、流入物質の体積流量をθ(m/hr)とすると、滞留時間(τ)は次式で表される。
τ(hr)=V/θ
この詳細については、例えば「新版 化学工学辞典 化学工学協会編」、丸善株式会社、昭和49年5月30日発行、第259頁を参照することができる。
【0040】
加熱装置10の操作温度(加熱温度)は、加熱装置10の塔底部液温度で、80〜250℃が好ましく、より好ましくは100〜150℃である。この範囲よりも低温では、不飽和化合物を充分に反応させることができなくなるおそれがあり、この範囲よりも高温では、装置の耐熱性や熱源の確保が難しくなる。加熱装置10の熱源に制限はなく、スチーム、電気等、あらゆる熱源が使用可能であり、加熱方法についても特に制限はない。
【0041】
次に、他の例の酢酸アリル製造プロセスについて、図2を用いて説明する。
図2は、製造した酢酸アリルを加水分解反応器24で加水分解して、70質量%アリルアルコール水溶液を製造する工程をさらに備えたプロセスを示すものである。酸素と酢酸とプロピレンとを反応させて製造した酢酸アリルを引き続き加水分解して、アリルアルコールを製造する場合は、図1に示された第一の蒸留塔9で分離、蒸留された酢酸アリルを加水分解反応器へ供給してもよいが、図2の例では、中間タンク7に供給された反応混合液(気液分離器塔底液14)から酢酸アリルを分離精製せずに、そのまま加水分解反応器24へ供給している。図2中、符号26は、第二の蒸留塔であり、加水分解反応器24からの反応液25は、ここで酢酸(未反応の酢酸および加水分解により生成した酢酸をともに含む。)、その他の高沸点成分を含む第二の蒸留塔塔底液と、低沸点成分であるアリルアルコール、酢酸アリルおよび水の混合物である第二の蒸留塔塔頂液27とに蒸留分離される。
図2に示すプロセスでは、第二の蒸留塔塔底液(回収用)32を酢酸含有液として、酢酸水蒸発器4に回収している。なお、第二の蒸留塔塔底液のうちの一部は、第二の蒸留塔塔底液(吸収用)31として、気液分離器6に吸収水として供給している。
【0042】
酢酸アリルからアリルアルコールを加水分解して製造する際の反応式を以下に示す。
CH=CH−CH−OCOCH+H
→CH=CH−CHOH+CHCOOH
【0043】
加水分解反応の圧力は何ら制限されるものではないが、例えば0.0〜1.0MPaGで行うことが可能である。また、反応温度にも制限はないが、充分な反応速度を得るためには、好ましくは20〜300℃、より好ましくは50〜250℃で行う。
加水分解反応の反応形式は特に限定されず、気相反応、液相反応、液固反応などあらゆる反応形式で行うことが可能である。好ましい反応形式としては、気相反応または液相反応である。
【0044】
加水分解反応における原料化合物である酢酸アリルおよび水と、加水分解反応の生成物であるアリルアルコールおよび酢酸との間には反応平衡があり、充分な酢酸アリル転化率を得る為には、水を添加して加水分解反応を行うことが好ましい。添加する水の量は特に制限されないが、好ましい原料中の水の濃度は1.0〜60質量%、より好ましくは5〜40質量%である。また、一般に知られている方法を用いて、反応の平衡が生成物側へ有利になるように、生成物を随時反応系外に除去しながら反応を行うことが好ましい。生成物を反応系外に除去する方法は特に限定されないが、例えば反応蒸留のようにアリルアルコールと共沸混合物を形成する成分を添加し、反応中に蒸留を行いながらアリルアルコールを反応系外に除去する方法を挙げることができる。
【0045】
加水分解反応では、原料化合物である酢酸アリルおよび水と、生成物である酢酸およびアリルアルコールのみで酢酸アリルの加水分解反応を行うことが可能であるが、充分な反応速度を得る為に、エステル加水分解触媒存在下で酢酸アリルの加水分解反応を行うことが好ましい。
【0046】
酢酸アリルの加水分解触媒としては、酸性物質、塩基性物質を例示できるが、これに限定されるものではない。
酸性物質としては、好ましくは、有機酸、無機酸、固体酸、およびそれらの塩を例示することができる。具体的には有機酸として、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、シュウ酸、酪酸、テレフタル酸およびフマル酸等が挙げられ、無機酸として、ヘテロポリ酸、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、臭化水素酸およびフッ化水素酸等が挙げられる。固体酸として、シリカアルミナ、シリカチタニア、シリカマグネシア、酸性陽イオン交換樹脂等が挙げられ、また、それらの塩として、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、およびアルミニウム塩を挙げることができる。
【0047】
塩基性物質としては特に限定されないが、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、およびアルカリ性陰イオン交換樹脂等を例示することができる。
酸性物質や塩基性物質は、それぞれ単独で使用しても、少なくとも2種類以上を混合して用いてもよい。
【0048】
酢酸アリルの加水分解反応後には、触媒とアリルアルコールおよび酢酸を分離することが必要となる。
加水分解触媒として硫酸のような均一系触媒を用いた場合、均一反応混合物からアリルアルコールおよび酢酸と硫酸を分離する必要があり、大きなエネルギーが必要である。一方、酸性陽イオン交換樹脂に代表される固体触媒を用いた場合には、濾過などの簡便な方法により、反応混合物から触媒とアリルアルコールおよび酢酸を分離することが可能である。よって、酢酸アリル加水分解触媒としては固体触媒を用い、不均一触媒反応により加水分解することがより好ましい。また、酸性陽イオン交換樹脂のような固体触媒は、酸性度が大きく、酢酸アリル加水分解速度が良好であるとともに触媒寿命が長く、加水分解触媒として最も好ましい。
酸性陽イオン交換樹脂としては、例えばスチレンとジビニルベンゼンのスルフォン化した共重合体を挙げることができる。
【0049】
加水分解反応器24は特に制限されないが、固定床流通型反応器が好ましい。固定床流通型反応器であれば、酸性陽イオン交換樹脂は反応器に保持されたまま、反応器出口から酸性陽イオン交換樹脂を含まない反応混合物を容易に得ることができる。
【0050】
酸性陽イオン交換樹脂を加水分解触媒とした固定床流通型反応器を反応器24として用い、アリルアルコールを製造する場合、酢酸アリルおよび水を含んだ反応原料液、すなわち、図2中符号23で示される加水分解反応器供給液を通過させる方向には制限はなく、固定床流通型反応器の上部から下降流で通過させてもよいし、下部から上昇流で通過させてもよい。
なお、加水分解反応器供給液23を反応器24の上部から下降流で通過させる方法であれば、加水分解反応器供給液23が自重で反応器24内を通過でき、ポンプなどの動力を必要としない点で好適である。しかし、この方法の場合、その条件によっては、イオン交換樹脂の凝集、加水分解反応器供給液23の偏流などによる反応速度の低下、あるいは反応器24内の圧力損失の増加などの現象が起こる可能性がある。これらの現象を抑制、解消する簡便な方法としては、一時的に加水分解反応器供給液23を反応器24の下部からの上昇流により、反応器24内に通過させることが有効である。
また、2基以上の反応器24を並列して使用することは、連続的に一定量のアリルアルコールを得ることができる点からより好ましい。
【0051】
図2中、加水分解反応器24から出たアリルアルコール、酢酸アリル、酢酸、水を主成分とする反応液25は、上述のとおり、第二の蒸留塔26において、酢酸、その他の高沸点成分と、低沸点成分であるアリルアルコール、酢酸アリルおよび水の混合物とに蒸留分離される。酢酸および高沸点成分は、酢酸含有液として回収され、酢酸水蒸発器4へ再循環される。なお、酢酸および高沸点成分の一部は、気液分離器6に供給される。
酢酸水蒸発器4では、塔底液の一部が抜出し液20として抜き出され、図1の例の場合と同様に、酢酸含有液を含むプロセス液として加熱装置10へ供給され、該液20に含まれ、触媒毒として作用するアクリル酸アリルやアクリル酸などの不飽和化合物が反応(重合)して高沸点成分を生成する(加熱工程)。そして、このような不飽和化合物の重合物などからなる高沸点成分と、触媒から留出した酢酸塩類などを含む加熱装置塔底液22は、この例では、廃液として、加熱装置10の塔底から反応プロセス系外へ排出される。一方、高沸点成分などが分離された加熱装置10からの塔頂液21は、酢酸、水を含み、反応液25と混合されて、第二の蒸留塔26へ返送され、その後、酢酸水蒸発器4を経て、酸化反応器5へと供給される。
その際、酢酸水蒸発器4の塔頂からの出口ガス11には、酸素1が加えられて、原料ガス12として酸化反応器5に供給される。なお、符号42は圧力調整弁であり、これにより加熱装置10の圧力を調整できる。
【0052】
一方、第二の蒸留塔の塔頂液27はデカンタ28に送られ、ここで油層、水層の二層に分離される。酢酸アリル含有量の多い油層30は抽出塔33に導かれる。抽出塔33の塔底液37は、第三の蒸留塔34に導かれて蒸留され、第三の蒸留塔34の塔底から第三の蒸留塔塔底液39(水およびアリルアルコール混合液)が抜出される。抽出塔33の塔頂より得られる酢酸アリルを主体とし、アリルアルコール濃度の低減された抽出塔塔頂液36は、その一部が加水分解反応器24に循環される。第三の蒸留塔34の塔底より抜出された第三の蒸留塔塔底液39は、第四の蒸留塔35に導かれて蒸留され、第四の蒸留塔35の塔頂より水、アリルアルコールの共沸物として濃縮された70質量%アリルアルコール製品、すなわち、第四の蒸留塔塔頂液40を得る。第四の蒸留塔35の塔底から抜出される第四の蒸留塔塔底液41(水)は、抽出塔33の抽出水として循環使用される。図2中符号38は、第三の蒸留塔塔頂液であり、酢酸アリル、水及び低沸点成分を含むものである。
【0053】
図2のプロセスによれば、このように酢酸アリルを加水分解してアリルアルコールを製造するプロセスにおいて副生した酢酸が、酸化反応器5からの未反応の酢酸とともに再利用される。
そして、この際、酢酸含有液である第二の蒸留塔塔底液(回収用)32には、酢酸アリルの加水分解反応により副生した不純物(アクリル酸アリル、アクリル酸などの不飽和化合物)や原料などの酢酸以外の成分が含まれるが、加熱装置10による加熱工程を経て再利用に供されるため、図1の例の場合と同様に、これらの不飽和化合物の酸化反応器5へのリサイクルを抑制して、触媒寿命の低下を防止することができる。
なお、図2の例の場合、加熱装置10の塔頂液21は、再利用のために、第二の蒸留塔26へ返送されているが、これに限定されず、それに含まれる酢酸が、酢酸水蒸発器4を経て酸化反応器5に供給される限り、図2に記載の酢酸アリル製造プロセスのどの工程に供給されてもよい。ただし、酢酸アリルやこれを用いたアリルアルコール製品の品質の観点からは、塔頂液21の供給先としては、図2の例のように、第二の蒸留塔26、具体的には反応液25を第二の蒸留塔26へ供給するラインへ供給することが望ましい。
【0054】
また、図1の例では、酢酸含有液として、酸素と酢酸とプロピレンとの反応において未反応の酢酸を含有する液を回収し、一方、図2の例では、酢酸含有液として、酢酸アリルを加水分解させるプロセスで副生した酢酸および未反応の酢酸を含有する液を回収した。しかしながら、酢酸含有液は、酢酸アリルを加水分解させるプロセスで副生した酢酸のみを含むものであってもよい。
【0055】
以上、詳細に説明した本発明の製造プロセスによれば、触媒の存在下、酸素と酢酸とプロピレンとを反応させて、酢酸アリルと水を生成させる際に、酢酸含有液を回収し、酢酸水蒸発器を経由させて反応に再利用するにあたって、回収された酢酸含有液を含むプロセス液を加熱装置で加熱する加熱工程を行っている。そのため、酢酸アリルの製造に用いる触媒の活性、選択性を高め、さらには、触媒の長寿命化が達成される。また、酢酸アリル、ひいては酢酸アリルの加水分解反応によるアリルアルコールをより高効率に生産することができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明について、実施例および比較例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
[実施例1]
テトラクロロパラジウム酸ナトリウム(NaPdCl)11.1kgと塩化銅2水和物(CuCl・2HO)1.5kgを含有する水溶液346Lに、粒径5mmのシリカ球状担体(球体直径5mm、比表面積155m/g、上海海源化工科技有限公司製HSV−I)1000Lを加え、溶液を完全に含浸させた。次に、これをメタ珪酸ナトリウム9水和物(NaSiO・9HO)39.1kgを含有する水溶液730Lに添加し、室温で20時間、アルカリ処理した。
その後、ヒドラジンヒドラートを加えて還元処理した。還元後、塩素イオンが認められなくなるまで水洗した。次に、110℃で4時間乾燥した。さらに、酢酸カリウム(KOAc)45kgを含有する水溶液328L中に投入し、全溶液を吸収させた後、再び110℃で20時間乾燥した。
この方法を繰り返すことにより、あわせて数mの酢酸アリル製造用触媒(触媒A)を得た。
【0058】
図2に示した製造プロセスにおいて、上記方法にて製造した酢酸アリル製造用触媒(触媒A)を酸化反応器5に充填し、原料ガス(酸化反応器供給ガス)12として、酢酸、水を主成分とする凝縮性成分23,000kg/hr、プロピレン36,000kg/hr、酸素5,000kg/hr、不活性ガスとして窒素ガスを、空間速度が2000hr−1になるように流量を調整して供給した。また、酸素1の供給量3,000kg/hrが酸化反応器5で消費されるように、反応温度を調整し、反応圧力0.75MPaGの条件で酸化反応を行った。
次いで、酸化反応器5の出口ガス13を気液分離器(気液分離塔)6へ供給し、酢酸、水を主成分とする第二の蒸留塔塔底液(吸収用)31を吸収液として用いた。そして、プロピレン、酸素、炭酸ガスを主成分とする非凝縮性成分を塔頂より分離し、酢酸水蒸発器4を経由して、酸化反応器5へ循環させた。一方、凝縮性成分である酢酸、水、酢酸アリルおよびその他を含む気液分離器塔底液14を得た。
【0059】
そして、アリルアルコール製造用触媒であるイオン交換樹脂(強酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ社製、品名:AMBERLYST31WET))を充填した加水分解反応器24に、気液分離器塔底液14と、抽出塔塔頂液36との混合液(加水分解反応器供給液23)を反応温度85℃の条件下で加水分解反応器24へ流通させて、酢酸アリルの加水分解反応を行った。
次に、アリルアルコール、酢酸アリル、酢酸、水を主な含有成分とする加水分解反応器24の反応液(出口液)25から酢酸を分離することを目的として、第二の蒸留塔26にて蒸留操作を行った。蒸留操作は、第二の蒸留塔26の塔底液中の水濃度が40質量%になるように運転条件を調整した。また、第二の蒸留塔塔頂液27はデカンテーションにより、酢酸アリルに富む油層30と水層29とに分離した。
【0060】
抽出塔33においては水を主成分とする第四の蒸留塔塔底液41を抽出水として用い、油層30中のアリルアルコールを抽出した。塔頂から得られた酢酸アリルを主成分とする油層(抽出塔塔頂液36)は再度上記加水分解反応器24へと循環使用した。
抽出塔33の抽出塔塔底液37は第三の蒸留塔34へと供給され、含有する低沸点成分を塔頂より分離除去し、塔底からアリルアルコールと水を主成分とする液(第三の蒸留塔塔底液39)を得た。
【0061】
第四の蒸留塔35では第三の蒸留塔塔底液39を蒸留し、塔頂から70質量%のアリルアルコール水溶液(アリルアルコール製品;第四の蒸留塔塔頂液40)を得た。また第四の蒸留塔塔底液41は、一部を抽出塔33へ再循環し、抽出水として利用し、残りをアリルアルコール製造用反応器へと循環使用した。
【0062】
第二の蒸留塔塔底液のうち、第二の蒸留塔塔底液(回収用)32を酢酸含有液として酢酸水蒸発器4へ29,000kg/hrの量でリサイクルした。
酢酸水蒸発器4では、圧力:0.85MPaG、塔底温度:118℃で操作し、塔底から酢酸蒸発器塔底液抜出し液20を6,000kg/hrの流量で抜出し、加熱装置10へ供給した。加熱装置10では、滞留時間20分、塔底温度が120℃になるように加熱工程を行い、加熱装置10の塔底から加熱装置塔底液23を30kg/hrで系外へ排出した。残りを加熱装置塔頂液21として、第二の蒸留塔26へ供給した。なお、本実施例での加熱装置10は単純蒸発器である。
そして、原料ガス(反応器入口ガス)12の一部を、冷却装置、凝縮器を備えたサンプリング装置に導き、反応器入口ガス凝縮液Aを10Lを捕集した。この反応器入口ガス凝縮液A中のアクリル酸濃度は200wtppmであった。
【0063】
(評価)
次に、前述のサンプリングにより得られた反応器入口ガス凝縮成液Aを用いて、酢酸アリル製造触媒(触媒A)の反応評価を行った。具体的には、酢酸アリル製造触媒A:10.5mlを31.5mlのシリカ担体で均一に希釈した後、反応管(SUS316L製)に充填した。反応温度155℃、反応圧力0.8MPaG(ゲージ圧)の条件下、反応器ガス凝縮液Aを酢酸の原料に用いて、ガス組成;プロピレン:酸素:酢酸:窒素と水の混合物=30:6:7:57の割合で混合したガスを空間速度2100hr−1で導入し酸化反応を行った。
【0064】
反応における分析方法として、触媒充填層を通過した出口ガスの全量を冷却し、凝縮した反応液の全量を回収し、ガスクロマトグラフィーで分析する方法を用いた。未凝縮ガスについては、サンプリング時間内に流出した未凝縮ガスの全量を測定し、その一部を取り出し、ガスクロマトグラフィーで分析を行った。
【0065】
凝縮した反応液の分析は、株式会社島津製作所製GC−14Bを用い、FID検出器、キャピラリーカラムTC−WAX(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)にて内部標準法にて分析を行った。一方、未凝縮ガスの分析は、株式会社島津製作所製GC−14B(島津ガスクロマトグラフ用ガスワンプラーMGS−4:計量管1ml付)を用い、TCD検出器(Heキャリアガス、Current100mA)、パックドカラム(3mmφ×3m)MS−5A IS(60/80メッシュ)を用い、絶対検量線法を用いて分析を行った。
【0066】
触媒の活性度を、時間当たりの触媒体積(リットル)当たりで製造された酢酸アリルの質量(空間時間収率:STY、単位:g/L-cat・hr)として、計算した。
酢酸アリルの選択率は、以下の算出式によって求めた。
酢酸アリル選択率(プロピレン基準)(%)
=[酢酸アリル生成量(mol)/消費プロピレン量(mol)]×100
【0067】
反応開始から数時間おきにサンプリングを行い、分析結果から触媒の活性度を求めた。反応開始後4時間目の酢酸アリルSTYは、274g/L-cat・hr、酢酸アリル選択率は91.9%であり、反応開始後287時間目の酢酸アリルSTYは、163g/L-cat・hr、酢酸アリル選択率は91.0%であった。
【0068】
[実施例2]
(評価)
実施例1の酢酸アリル製造触媒(触媒A)の評価を、反応温度155℃に代えて、反応温度135℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、酸素、酢酸、プロピレンの酸化反応を行った。そして、反応開始から4時間目と166時間目にサンプリングを行い、分析結果から触媒の活性度を求めた。
反応開始後4時間目の酢酸アリルSTYは、97g/L-cat・hr、酢酸アリル選択率は90.3%であり、反応開始後166時間目の酢酸アリルSTYは、75g/L-cat・hr、酢酸アリル選択率は89.0%であった。
【0069】
[比較例1]
第二の蒸留塔塔底液のうち、第二の蒸留塔塔底液(回収用)32を、酢酸水蒸発器4へ26,000kg/hrの量でリサイクルし、酢酸蒸発器4では、塔底から酢酸蒸発器塔底液抜出し液20を3,000kg/hrの流量で抜き出した。更に、加熱装置の圧力設定を圧力調整弁42で絶対圧20kPaにコントロールし、塔底温度が55℃になるように加熱を行い、加熱装置塔底液22を15kg/hrで抜出し、残りを加熱装置塔頂液21として、第二の蒸留塔26へ供給した以外は、実施例1と同様の方法で酢酸アリルの製造を行った。
この際の原料ガス(反応器入口ガス)12の一部を、冷却装置、凝縮器を備えたサンプリング装置に導き、反応器入口ガス凝縮液Bを10Lを捕集した。この反応器入口ガス凝縮成分中のアクリル酸濃度は4150ppmであった。
【0070】
この反応器入口ガス凝縮液Bを用いる以外は、実施例1と同様の方法で、酢酸アリル製造触媒(触媒A)の評価を実施し、反応開始から数時間おきにサンプリングを行い、分析結果から触媒の活性度を求めた。
反応開始後4時間目の酢酸アリルSTYは、238g/L-cat・hr、酢酸アリル選択率は91.0%であり、反応開始後287時間目の酢酸アリルSTYは、82g/L-cat・hr、酢酸アリル選択率は82.6%であった。
【0071】
(比較例2)
第二の蒸留塔塔底液のうち、第二の蒸留塔塔底液(回収用)32を、酢酸水蒸発器4へ24,000kg/hrの量でリサイクルし、酢酸蒸発器4では、塔底から酢酸蒸発器塔底液抜出し20を1,000kg/hrの流量で行った。更に、加熱装置の圧力設定を圧力調整弁42で絶対圧20kPaにコントロールし、塔底温度が55℃になるように加熱を行い、加熱装置塔底液22を10kg/hrで抜出し、残りを加熱装置塔頂液21として、第二の蒸留塔26へ供給した以外は、実施例1と同様の方法で酢酸アリルの製造を行った。
この際の反応器入口ガス12の一部を、冷却装置、凝縮器を備えたサンプリング装置に導き、反応器入口ガス凝縮液Cを10Lを捕集した。この反応器入口ガス凝縮成分中のアクリル酸濃度は9800ppmであった。
【0072】
この反応器入口ガス凝縮液Cを用いる以外は、実施例1と同様の方法で、酢酸アリル製造触媒(触媒A)の評価を実施し、反応開始から4時間目と、166時間目に、サンプリングを行い、分析結果から触媒の活性度を求めた。反応開始後4時間目の酢酸アリルSTYは、74g/L-cat・hr、酢酸アリル選択率は84.1%であり、反応開始後166時間目の酢酸アリルSTYは、30g/L-cat・hr、酢酸アリル選択率は75.2%であった。
【0073】
評価結果を表1に示す。これらの結果から、実施例1、2の酢酸アリル製造方法は、比較例1、2の方法よりも、酢酸アリル製造触媒の活性、選択性が優れていることがわかる。さらに、図3、図4より実施例1の触媒は比較例1の触媒よりも寿命も長いことが明らかである。
【0074】
【表1】

【符号の説明】
【0075】
1 酸素
2 プロピレン
3 酢酸
4 酢酸水蒸発器
5 酸化反応器
6 気液分離器
7 中間タンク
8 循環ガスのコンプレッサ
9 第1の蒸留塔
10 加熱装置
11 酢酸水蒸発器の出口ガス
12 原料ガス
13 反応器出口ガス
14 気液分離器塔底液
15 循環ガス
16 第一の蒸留塔への供給液
17 第一の蒸留塔塔底液(吸収用)
18 第一の蒸留塔塔底液(回収用)
19 第一の蒸留塔塔頂液
20 酢酸水蒸発器塔底液抜出し液
21 加熱装置の塔頂液
22 加熱装置の塔底液
23 加水分解反応器供給液
24 加水分解反応器
25 加水分解反応器からの反応液
26 第二の蒸留塔
27 第二の蒸留塔の塔頂液
28 第二の蒸留塔のデカンタ
29 第二の蒸留塔塔頂液の水層
30 第二の蒸留塔塔頂液の油層
31 第二の蒸留塔塔底液(吸収用)
32 第二の蒸留塔塔底液(回収用)
33 抽出塔
34 第三の蒸留塔
35 第四の蒸留塔
36 抽出塔の塔頂液
37 抽出塔の塔底液
38 第三の蒸留塔の塔頂液
39 第三の蒸留塔の塔底液
40 第四の蒸留塔の塔頂液
41 第四の蒸留塔の塔底液
42 圧力調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の存在下、酢酸と酸素とプロピレンとを反応器で反応させ、酢酸アリルと水を生成させる工程と、未反応の酢酸を蒸留塔で分離する工程と、酢酸を含む酢酸含有液を回収して、酢酸水蒸発器を経由させて前記反応器に戻す工程とを備えた酢酸アリルの製造方法であって、
前記酢酸含有液を含むプロセス液を加熱装置で80〜250℃の温度に加熱する加熱工程をさらに有することを特徴とする酢酸アリルの製造プロセス。
【請求項2】
前記プロセス液は、前記酢酸水蒸発器の塔底液である請求項1に記載の酢酸アリルの製造プロセス。
【請求項3】
前記加熱装置には蒸発器が用いられる請求項1または2に記載の酢酸アリルの製造プロセス。
【請求項4】
前記加熱工程後の前記プロセス液を前記蒸留塔に返送する請求項1〜3のいずれか一項に記載の酢酸アリルの製造プロセス。
【請求項5】
前記酢酸アリルを加水分解させる工程を有し、前記酢酸含有液は、前記加水分解により生成した酢酸を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の酢酸アリルの製造プロセス。
【請求項6】
前記蒸留塔は、前記加水分解により生成した酢酸を分離する請求項5に記載の酢酸アリルの製造プロセス。
【請求項7】
前記加熱装置での加熱温度が100℃〜150℃である請求項1〜6のいずれか一項に記載の酢酸アリルの製造プロセス。
【請求項8】
前記加熱装置での滞留時間が5.0分間以上である請求項1〜7のいずれか一項に記載の酢酸アリルの製造プロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−67016(P2012−67016A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210776(P2010−210776)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】