説明

酸化ケイ素水溶液を用いた水性液体静電塗装方法。

【課題】二酸化ケイ素の高分子初期縮合物と電気石とを焼結したセラミックス複合体の水分散液を用いて、アースされた被塗装面に化学的に安定でかつ機械的に強固な酸化ケイ素の透明薄膜を形成する水性液体静電塗装方法の提供。
【解決手段】本発明の水性液体静電塗装方法は、二酸化ケイ素の高分子初期縮合物と電気石とを焼結したセラミックス複合体を水に分散し、機械的刺激を与えて得られた酸化ケイ素水溶液をアースされた塗装面に噴射塗装する。前記噴射塗装する手段として、スプレーガン又は静電塗装スプレーガンを用いられる。前記機械的刺激として複合体に乱流水の供給、複合体分散液の攪拌及び複合体分散液に超音波振動を付与のいずれかを行うことができる。前記酸化ケイ素水溶液タンクを複数個連結し、得られた酸化ケイ素水溶液を最初のタンクへ還流する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミックス複合体を用いた水性液体静電塗装方法に関し、更に詳しくは金属、プラスチック、光学硝子などの材料から作られた製品の被塗装表面に化学的に安定でかつ機械的に強固な酸化ケイ素の透明薄膜を形成することができる二酸化ケイ素の高分子初期縮合物と電気石とを焼結したセラミックス複合体を用いた水性液体静電塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、金属、プラスチック、光学硝子などの表面は、自然環境下においては酸化分解によるサビの発生、劣化などによる強度の低下、キズの生成などの欠陥を生じる。これら欠陥は放置すれば内部へ浸透し、その結果、これら材料全体の品質低下を引き起こす。このため、これら材料の表面のキズを防止し、光沢、色などの美観を保護し、更には内部の品質を保護するために、材料表面を塗装することが行われており、従来、粉体塗料の塗装には静電塗装スプレーガンを用いた静電塗装方法が用いられ、また水性塗料や油性塗料の塗装では、刷毛塗り、ローラー塗装、またハンドガンによって塗料をスプレーガンを用いて噴霧乃至噴射して塗装する噴霧塗装などが一般的である。粉体塗料を用いる静電塗装スプレーガンは、すでに公知であり、通常、粉体塗装用スプレーガン、いわゆる静電塗装スプレーガンは、高電圧静電気を付着させた被塗装物に粉体塗料を噴霧又は噴射して塗装することができ、この際、粉体塗料は、圧縮空気によって流動化された状態で静電スプレーガンに送り込まれ、噴射口から噴噴射され、荷電電極からの放電によるイオン化圏域を通過した際、荷電され、被塗装物に効果的に吸引されて付着することによって塗装される(例えば、特許文献1参照)。一方、本発明者等は、二酸化ケイ素の高分子初期縮合物と電気石とを焼結したセラミックス複合体を開発し、特許第4012930号として特許を取得した(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−237089(段落0004〜段落0005)
【特許文献2】特許第4012930号(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記のように特許文献1に記載の如き静電スプレーガンは、粉体塗料を用いる場合には、効果的に塗装されるが、水性液体塗料には効果がなく、静電スプレーガンを用いて水性液体塗料を塗装する試みはなされていなかった。そこで、そのような中で、本発明者等は、水性液体塗料、特に水性塗布物である二酸化ケイ素の高分子初期縮合物と電気石とを焼結したセラミックス複合体の充填層に水を供給し、かつ機械的刺激を与えると水中に微水溶性の酸化ケイ素が放出され、酸化ケイ素水溶液が得られる。得られた酸化ケイ素水溶液をハンドガンや静電スプレーガンを用いてアースされた被塗装面に向けて噴霧又は噴射したところ、この微水溶性の酸化ケイ素が水と一緒に被塗装面に付着し、水は流れ落ちて酸化ケイ素膜が驚くほど極めて良好に付着することを見出した。この知見に基づいて本発明はなされたものである。
【0004】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、二酸化ケイ素の高分子初期縮合物と電気石とを焼結したセラミックス複合体と接触させて得られた酸化ケイ素水溶液を用いてアースされた被塗装面に噴霧又は噴射することにより、化学的に安定でかつ機械的に強固な酸化ケイ素の透明薄膜を形成することができるセラミックス複合体を用いた水性液体静電塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の本発明の課題は、以下の各発明によってそれぞれ達成される。
(1)二酸化ケイ素の高分子初期縮合物と電気石とを焼結したセラミックス複合体を水に分散し、機械的刺激を与えて得られた酸化ケイ素水溶液をアースされた塗装面に噴射塗装することを特徴とする水性液体静電塗装方法。
(2)セラミックス複合体が平均分子量が200〜300である二酸化ケイ素の高分子初期縮合物に電気石の微粉末を混合し、造粒し、乾燥した後、250℃から650℃までの温度で焼結して得られた複合体であることを特徴とする前記第1項に記載の水性液体静電塗装方法。
(3)前記噴射塗装する手段として、ハンドガン又は静電塗装スプレーガンを用いることを特徴とする前記第1項又は第2項に記載の静電塗装方法。
(4)前記機械的刺激として複合体に乱流水の供給、複合体分散液の攪拌及び複合体分散液に超音波振動を付与のいずれかを行うことを特徴とする前記第1項乃至第3項のいずれかに記載の水性液体静電塗装方法。
(5)前記酸化ケイ素水溶液タンクを複数個連結し、得られた酸化ケイ素水溶液を最初のタンクへ還流することを特徴とする前記第1項乃至第4項のいずれかに記載の水性液体静電塗装方法。
【発明の効果】
【0006】
前記第1項に係る本発明の水性液体静電塗装方法は、二酸化ケイ素の高分子初期縮合物と電気石とを焼結したセラミックス複合体(以下、「二酸化ケイ素の高分子初期縮合物と電気石とを焼結したセラミックス複合体」を「セラミックス複合体」ともいう。)を水に分散し、機械的刺激を与えて得られた酸化ケイ素水溶液をアースされた塗装面に噴射塗装することを特徴とするもので、このようにアースされた塗装面に酸化ケイ素水溶液を噴霧又は噴射することにより、被塗装面には化学的に安定でかつ機械的に強固な酸化ケイ素の透明薄膜を形成することができるという優れた効果を奏するものである。またこのような複合体を用いて得られた被膜は、前記の如き効果を有することにより建材、ビルの壁面、ガラス面、床材、列車、船舶、自動車(乗用車、トラックなど)などの被塗装面に効果的に適用される。ここで、本発明に用いられる「セラミックス複合体を水に分散し」とは、水の中にセラミックス複合体を入れて浸漬すること、セラミックス複合体を布や網などに入れて水の中に浸漬すること、セラミックス複合体を容器(容器の形状はどんなものでもよい。)に充填し、一方の面から水を供給し、複合体層を通過させ、他方から取り出すこと等の手段を意味し、セラミックス複合体の表面やその気泡内部表面などが水と接触し、その結果これらの表面から酸化ケイ素が溶け出し、酸化ケイ素水溶液が形成される。
【0007】
前記第2項に係る本発明の水性液体静電塗装方法において、セラミックス複合体が平均分子量が200〜300である二酸化ケイ素の高分子初期縮合物に電気石の微粉末を混合し、造粒し、乾燥した後、250℃から650℃までの温度で焼結して得られた複合体であることにより、テトラエトキシシランのゾル−ゲル反応により得られた高分子初期縮合物の平均分子量が200〜300であることにより、電気石を包括複合化するための適度の粘性が得られ、高温で焼結してもクラックのない且つ衝撃に対する強度の大きい最終複合体が得られる。このような複合体を用いて被覆を行う時に、電気石に水流などによる機械的エネルギーに十分耐えるという特性を有している。
【0008】
前記第3項に係る本発明の水性液体静電塗装方法は、前記第1項又は第2項に記載の水性液体静電塗装方法において、前記噴射塗装する手段として、ハンドガン又は静電塗装スプレーガンを用いることにより、アースされた被塗装面に静電スプレーガンを用いても液体塗料の被膜は付着しないが、前記の酸化ケイ素水溶液を用いる場合には、極めて効果的に良好な付着が得られると共に、得られた被膜は長期にわたって物体表面の状態を保護することができ、したがって、被覆物の補修管理の手間を軽減することができるという予想外の効果を奏する。
【0009】
前記第4項に係る本発明の水性液体静電塗装方法は、前記第1項乃至第3項のいずれかに記載の水性液体静電塗装方法において、前記機械的刺激として複合体に乱流水の供給、複合体分散液の攪拌及び複合体分散液に超音波振動を付与のいずれかを行うことにより、電気石は10〜20ミクロンの範囲内に10Volt/mの電場を生じ、水媒体中で電気石が活性化されると共に、該電気石に接する酸化ケイ素より生じた微水溶性の酸化ケイ素が放出され、この酸化ケイ素が被塗装面上に強固な被膜を形成することができる。
前記第5項に係る本発明の水性液体静電塗装方法は、前記第1項乃至第4項のいずれかに記載の水性液体静電塗装方法において、前記酸化ケイ素水溶液タンクを複数個連結し、得られた酸化ケイ素水溶液を最初のタンクへ還流することにより、微水溶性の酸化ケイ素の濃度の高い溶液が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の水性液体静電塗装方法は、二酸化ケイ素の高分子初期縮合物と電気石とを焼結したセラミックス複合体を水に分散し、機械的刺激を与えて得られた酸化ケイ素水溶液をアースされた塗装面に噴射塗装することを特徴とするものである。この二酸化ケイ素の高分子初期縮合物と電気石とを焼結したセラミックス複合体は、酸化ケイ素としてテトラエトキシシランを用いる。このテトラエトキシシランを塩基性触媒の存在下で加水分解すると共に、ゾル−ゲル反応により高分子初期縮合物を得、該初期縮合物に電気石の微粉末を混合し、造粒し、乾燥する。得られた造粒物を250℃から650℃までの温度、好ましくは250℃から650℃までの温度、更に好ましくは500℃から650℃までの温度で焼結することにより製造される。前記ゾル−ゲル反応により得られたセラミックスの特色として反応条件を制御することによりセラミックスの内部にミクロな空間を生じ、そのため一方、電気石と酸化ケイ素はセラミックの表面のみでなく、内部表面においても水が接するようになる。
【0011】
一方、機械的な刺激により電気石は10〜20ミクロンの範囲内に10Volt/mの電場を生じるが、この電場が内部表面においても有効に作用し、厚い酸化ケイ素の膜の形成に役立っていると考えられる。本発明に使用した電気石はブラジル産のトルマリン鉱石シェールで黒色をした結晶であるが、これに限定されるものではなく、ブラジル産のトルマリン鉱石シェールと同様な特性を有するものであれば使用することができる。この鉱石を乾式微粉砕機により平均10μmまでに微粉砕して使用したが、本発明で使用しうる好ましい平均粒径は、50μm〜5μmである。更に好ましくは20μm〜10μmである。平均粒径が5μmより小さい場合、電気石の微結晶より生じる電場が隣の微細晶より生じる電場と交絡し、相殺して電場が弱められるケースが生じ、また50μmを超えると造粒物中の電気石の微結晶の量が小となり、その結果、微細晶による電場が小となり、そのため被覆液中の酸化ケイ素の水和分子の濃度も低くなるため、十分な被膜が得られない。テトラエトキシシラン(沸点は16 6℃)は化学1級品を使用することが好ましい。また酸化ケイ素は、好ましくはテトラエトキシシランがよいが、これに限らずアルコキシシランの中から選択することができる。
【0012】
本発明のセラミックス複合体の製造方法において、焼結温度が250℃から650℃までの温度であるが、この際焼結温度は、この範囲の温度で1回以上焼結してもよく、例えば、250℃の温度で焼結し、ついで600℃の温度で焼結してもよく、250℃で焼結した後、650℃で焼結してもよい。また焼結温度300℃で1回の焼結でもよい。焼結温度が250℃より低いと、長時間かかるばかりでなく、本発明の好ましい特性が得られない。また650℃を超えると、複合体中のゲル化した酸化ケイ素の一部は溶融による内部表面の減少、更に高温にすると内部表面は喪失し、活性化された電気石による酸化ケイ素の水溶化反応は微弱となる。ここで、塩基性触媒としては、アンモニア水、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン系化合物が好ましい。
【0013】
本発明に用いられるセラミックス複合体中の電気石と酸化ケイ素の重量比は、4:96ないし76:24であり、好ましくは、8:92ないし50:50である。この重量比が4:96ないし76:24の範囲を外れると、本発明の好ましい効果を得ることができない。またテトラエトキシシランのゾル−ゲル反応により得られた高分子初期縮合物の平均分子量は、200〜300である。この範囲では、電気石を加えた造粒物は、焼成後、複合体の機械物性に優れ、工業的設備に使用した場合にも、激しい機械的な摩擦に対しても破壊しないものが得られるが、平均分子量が200未満である場合は、工業的設備に使用した場合に、激しい機械的な摩擦により破損してしまうので使用できない。また平均分子量が300を超えると、電気石を加えた焼成後の複合体はもろくなり工業的設備には使用することができない。
【0014】
前記で得られたセラミックス複合体の表面積は、BET法表面積測定で29m/g〜460m/gであり、好ましくは30m/g〜460m/gであり、更に好ましくは40m/g〜460m/gである。更にいっそう好ましくは、110m/g〜460m/gである。この複合体の表面積が29m/g未満のときは、酸化ケイ素の被膜を厚くすることが困難であり、また460m/gを越えてもそれ以上の効果を期待することができない。本発明に用いられる複合体は、水媒体中で機械的刺激により先ず電気石が活性化される。ついで該電気石に接することにより酸化ケイ素が活性化され、水分子と集合体を形成し微水溶性の酸化ケイ素となって放出され、これが、物体上に沈積して強固な被膜を形成する。この機械的刺激としては、特に限定されるものではないが、水流による造粒物相互の摩擦、機械的攪拌による造粒物相互の摩擦、超音波放射による衝撃等が挙げられる。
本発明の水性液体静電塗装方法は、前記で得られたセラミックス複合体を水に分散すると、前述の如く電気石と酸化ケイ素はセラミックの表面のみでなく、内部表面においても水が接し、微水溶性の酸化ケイ素を溶出して酸化ケイ素水溶液が形成される。この際、機械的刺激を与えることにより十分の量の酸化ケイ素を比較的早く溶出させることができる。前記の機械的刺激としては、セラミックス複合体に乱流水の供給、セラミックス複合体を攪拌、セラミックス複合体に超音波振動を与える等の手段を用いてセラミックス複合体の分散液に刺激を与える。これにより水分子と集合体を形成し微水溶性の酸化ケイ素となって放出され、酸化ケイ素が水中に十分溶解した酸化ケイ素水溶液が得られる。水溶液中の酸化ケイ素は、微水溶性の酸化ケイ素の微粒子として存在しているので、このような酸化ケイ素水溶液をアースされた被塗装面に噴射塗装すると、被塗装面に酸化ケイ素粒子のみが付着し、水はそのまま流れ落ちる。このようにして被塗装面には酸化ケイ素の被膜だけが形成される。
【0015】
本発明に用いられるハンドガン又は静電塗装スプレーガンは、通常市販されているものでよく、特に、ハンドガンとしては、一般に家庭などで使用している園芸用スプレーガンでよい。また静電塗装スプレーガンは、周知であり、かつ市販されているので、これらを用いることが好ましい。またセラミックス複合体を水に分散し、微水溶性の酸化ケイ素を取り出すためのタンクは、圧力下にハンドガンから噴射させるので、密閉されるタンクが好ましい。更に微水溶性の酸化ケイ素の濃度を高めるためにセラミックス複合体収納部を水が循環するのが好ましく、複数のタンクを使用し、供給した水がこれらの間を循環する(以下、循環して得られた微水溶性の酸化ケイ素を含む酸化ケイ素水溶液を循環水ともいう)。この循環水を用いて被塗装面に噴霧又は噴射する最も簡単なハンドガンは、園芸用スプレーガンでもよい。ダイアフラム式ポンプを備えたタンク(市販されている。)に循環水を入れた後、前述の如き園芸用スプレーガンを接続し、アースされた被塗装面に噴霧状に散水する。これにより酸化ケイ素被膜が形成されるが、必要に応じて複数回噴霧することが好ましい。好ましくは1回又は2回の噴霧が最適である。更にアースとしては、被塗装面に少なくとも一箇所に設けることが好ましく、被塗装面の面積が大きいほどアースを設ける箇所を多くすることが好ましい。またアースは、被塗装層面における噴霧塗装又は噴射塗装後、これらのアースの設置箇所を移動して更にアースの設置箇所跡又は痕を噴霧塗装又は噴射塗装し、被塗装装面に均一の被膜を形成することが好ましい。被塗装面に、酸化ケイ素水溶液を噴霧又は噴射することにより、この被塗装面は親水性の効果で水滴状に付着するのではなく、前記の酸化ケイ素水溶液の膜で覆われ、酸化ケイ素だけが被塗装面に付着し、水は流れ落ちる。したがって、得られた被塗装面には、所望の厚みの酸化ケイ素被膜だけが残る。これにより水は、そのまま下水などに放流することができ、環境上も極めて優れている。またアース複数のアースを設置することにより、効率的に酸化ケイ素被膜が形成されるので、塗装時に少ない量の水で塗装することができる。本発明の静電塗装方法は、通常、公知の方法でよく、この静電塗装方法に使用される機器は、市販のものでよい。また循環水供給器としては、市販の塗料供給器を用いることができ、更に静電塗装に用いられる静電コントローラは市販されているので、このような静電コントローラを用いて適宜、帯電量を制御することができる。
【0016】
更に本発明の水性液体静電塗装方法について、図面を用いて詳述するが、本発明は、これに限定されるものではない。図1は、本発明の水性液体静電塗装方法に用いられるセラミックス複合体内蔵装置と微水溶性の酸化ケイ素を供給器からなる循環水供給装置を示す断面図である。図2は、園芸用スプレーガンを示す略図である。図3は静電塗装スプレーガンの一例を示す断面図である。図1において、タンク11の上部と下部にそれぞれ収納板14を有し、これらの間にセラミックス複合体15が充填されて収納されている(いわゆるセラミックス複合体内蔵装置11又は12)。このセラミックス複合体内蔵装置を2個を用意し、これらの間をパイプ21とパイプ22で接続する。パイプ21の一端はセラミックス複合体内蔵装置11の上面に接続され、また他端はタンク12の底面に接続されている。またパイプ22は、セラミックス複合体内蔵装置11とセラミックス複合体内蔵装置12の上面にそれぞれ接続されている。セラミックス複合体内蔵装置11の底面にはパイプ20が接続され、他端は水道の蛇口に接続されている。水道水は、セラミックス複合体内蔵装置11の底面から導入され、セラミックス複合体内蔵装置11、12を通過し、その間にセラミックス複合体は、微水溶性の酸化ケイ素を放出し、パイプ21を通ってセラミックス複合体内蔵装置12へ導入される。ここで、セラミックス複合体内蔵装置11、12を通過した水道水は、その一部は、パイプ23を通って循環水供給器13に導入され、他の一部は、パイプ22を通ってフィードバックされ、セラミックス複合体内蔵装置11に戻る。これにより循環水供給器13に濃度の高い微水溶性の酸化ケイ素の循環水(酸化ケイ素水溶液)17が得られる。この循環水供給器13には、ダイアフラム式ポンプを有しており、循環水17はこのダイアフラム式ポンプによって園芸用スプレーガン10(図2参照)又は静電塗装スプレーガン1(図3参照)に供給され、塗装に際し、アースされた被塗装面に噴霧又は噴射される。この循環水供給器13に代えて酸化ケイ素水溶液を充填したボトルを用いてもよい。得られた被膜はガラス質のシールド膜が形成される。本発明の静電塗装方法により列車、船舶、自動車(乗用車、トラックなど)などの被塗装面に効果的に適用されるばかりでなく、家屋、ビルの壁面、ガラス窓、床面、特に病院などの埃を嫌う環境下に適用することにより、誇り、塵などが被覆面に吸着されることなく長期間きれいな状態を維持できるという好ましい環境が得られる。
【0017】
〔セラミックス複合体の製造例〕
ガラス製反応器に21gのテトラエトキシシラン、18ミリリットルの蒸留水、7.3gのジメチルホルムアミドの混合溶液を入れ、これにゲル化反応触媒として10%アンモニア水 1ミリリットルを加え、攪拌しながら35℃で6時間反応を行う。反応物を蒸留器に移し、50℃で8時間かけて反応により生成したエタノール水の混合物を溜去する。内容物は白い微結晶を含んだ粘重な液体である。次にこの中から分子量測定用の検体を少量採取した後、電気石の微粉末0.26gとジメチルホルムアミド1gを加え、径5mmの球体に造粒する。造粒物は50℃で4時間乾燥し後、100℃で4時間、150℃で4時間加熱
する。水とジメチルホルムアミドを溜去し、これを高温加熱炉中で250℃4時間、500℃で4時間焼成する。造粒時のゲル(初期縮合物)の分子量は280、複合体の表面積は452m/gであった。
【実施例】
【0018】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何等限定されるものではない。
【0019】
〔実施例1〜4〕
ナノシャインシステム機器(商品名、株式会社システムパートナー製)30(二酸化ケイ素の高分子初期縮合物と電気石とを焼結したセラミックス複合体を内蔵したセラミックス複合体内蔵装置)11、12に循環水供給装置13を接続し、この循環水供給装置13にポンプ9として、ハンディポンプをセットし、静電コントローラーで出力電圧60kv、出力電流140μA、塗装圧0.1MPaに制御した後、静電塗装スプレーガン1として、図3に示されるノズル口径φ1.1mm及びノズル先端部に管状の荷電電極を有する静電スプレーガンを用いてアースされたガラス板(A4サイズ)を90°に立てかけ、吹付け距離20cmにおいて循環水供給装置13中の循環水(酸化ケイ素水溶液)17を噴霧塗装した。吹付け環境は、気温21℃、湿度40%である。比較例は、水ガラス水溶液を用いた。得られた結果を表1に示す。なお、表1の吹付量は、1回に吹き付ける量である。
【0020】
【表1】

【0021】
表1から明らかなように、比較例1,2では、被覆率、膜厚共に0であり、被膜は得られなかったが、本発明では、1回吹付けで膜厚5nm、被覆率8%のものが得られたが、更に2回吹付けでは膜厚5nm、被覆率22%が得られた。
【0022】
〔実施例5〕
実施例1において、アースされたガラス板(A4サイズ)のアースとして、アース放電装置に接続された3個の着脱可能に形成されたアース電極を用い、該電極をガラス板の下方に横方向に等距離にそれぞれ付着配置した以外は、実施例1と同様にして噴霧塗装した。ついで、電極の位置をずらし、その跡又は痕に同様にして噴霧塗装した。このようにして得られた被膜は、実施例2で得られた被膜の形成に使用した酸化ケイ素水溶液の量よりも少ない使用量で得られ、かつむらのない均一な被膜が得られた。
【0023】
〔実施例6〕
実施例1において、ノズル口径φ1.1mmのハンドガンに代えて園芸用スプレーガン10を用い、ナノシャインシステム機器30(二酸化ケイ素の高分子初期縮合物と電気石を焼結したセラミックス複合体を内蔵したセラミックス複合体内蔵装置11、12)に循
環水供給装置13を接続し、この循環水供給装置13に、ハンディポンプをセットした後、実施例1と同様にしてアースされたガラス板(A4サイズ)を90°に立てかけ、吹付け距離20cmにおいて循環水供給装置13中の循環水17を噴霧塗装した。吹付け環境は、気温21℃、湿度40%である。本発明に用いられる循環水供給装置13に園芸用スプレーガン10を使用しても実用可能な被膜が得られた。なおナノシャインシステム機器30のパイプ20に水道の蛇口を直接接続し、更ナノシャインシステム機器30のパイプ23に園芸用スプレーガン10を直接接続して、噴霧塗装しても実用可能な被膜が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0024】
近年、大気汚染の進行に伴い、屋外に暴露している構造物、列車、船舶、車などの輸送媒体は、汚染や腐蝕が著しくなってきている。そのため、塗料による塗装、清掃作業と補修などの経費が増大しているところ、二酸化ケイ素の高分子初期縮合物と電気石とを焼結したセラミックス複合体に水が接触して得られた酸化ケイ素水溶液を用いて、アースされた被塗装面に化学的に安定でかつ機械的に強固な酸化ケイ素の均一な透明薄膜を形成することができるので、化学的に最も安定な且つ硬度の大であるガラス質の薄膜を被覆される物体の美的感覚を損なうことなく従来の方法では得られなかった厚みで簡単な方法で被覆することが可能となり、産業上大きな貢献が期待されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の水性液体静電塗装方法に用いられるセラミックス複合体内蔵装置と微水溶性の酸化ケイ素を供給器からなる循環水供給装置を示す断面図である。
【図2】本発明に用いられる園芸用スプレーガンを示す略図である。
【図3】本発明に用いられる静電塗装ハンドガンの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ガン本体
2 噴出口
3 調整空気口
4 エアー供給路
5 荷電電極
6 液体噴出管
7 ノズル先端部
8 液体導入ホース
9 ポンプ
10 園芸用スプレーガン
11、12 セラミックス複合体内臓装置
13 循環水供給器
14 収納板
15 セラミックス複合体
16 水
17 循環水
20、21、22、23 パイプ
24 接続部
25 ノズル
26 引き金
27 握り手
30 ナノシャインシステム機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化ケイ素の高分子初期縮合物と電気石とを焼結したセラミックス複合体を水に分散し、機械的刺激を与えて得られた酸化ケイ素水溶液をアースされた塗装面に噴射塗装することを特徴とする水性液体静電塗装方法。
【請求項2】
セラミックス複合体が平均分子量が200〜300である二酸化ケイ素の高分子初期縮合物に電気石の微粉末を混合し、造粒し、乾燥した後、250℃から650℃までの温度で焼結して得られた複合体であることを特徴とする請求項1に記載の水性液体静電塗装方法。
【請求項3】
前記噴射塗装する手段として、ハンドガン又は静電塗装スプレーガンを用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水性液体静電塗装方法。
【請求項4】
前記機械的刺激として複合体に乱流水の供給、複合体分散液の攪拌及び複合体分散液に超音波振動を付与のいずれかを行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の水性液体静電塗装方法。
【請求項5】
前記酸化ケイ素水溶液タンクを複数個連結し、得られた酸化ケイ素水溶液を最初のタンクへ還流することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の水性液体静電塗装方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−291696(P2009−291696A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146493(P2008−146493)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(504155053)
【出願人】(508168000)
【Fターム(参考)】