説明

酸化染毛剤又は脱色剤組成物

【課題】毛髪の処理後、流水でのすすぎから、シャンプー洗浄、乾燥後までのいずれの段階においても優れた感触を有し、また色持ちにも優れる酸化染毛剤又は脱色剤組成物の提供。
【解決手段】次の成分(A)〜(C)を含有する酸化染毛剤又は脱色剤組成物。
(A) 数平均重合度1000以上の高重合シリコーン
(B) 塩化ジメチルジアリルアンモニウム70〜89質量%とアクリル酸11〜30質量%とを共重合させたカチオン性ポリマー
(C) 塩化ジメチルジアリルアンモニウム90〜99質量%とアクリル酸1〜10質量%とを共重合させたカチオン性ポリマー

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化染毛剤又は脱色剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪の脱色及び染色には、第1剤に含有するアルカリ剤と、第2剤に含有する酸化剤等の共存下での酸化反応によって毛髪を脱色ないし染色する酸化染毛剤又は脱色剤組成物が広く使用されている。
【0003】
しかし、このような酸化性の染毛剤又は脱色剤組成物は、毛髪損傷を引き起こし易く、水洗、シャンプー又は乾燥時に、髪の絡まり、硬さ、ごわつき等を生じたり、髪の色、ツヤがなくなったり、まとまりが悪くなったりするという問題を有する。そこで、これらの問題に対処するため、アミノ変性シリコーン、高重合シリコーン、カチオン性ポリマー等のコンディショニング作用を持つ成分を添加することが行われているが、処理後の洗髪、すすぎによって、これらの添加剤の大半が洗い流されてしまい毛髪上への残留量が少なくなってしまうため、それらの効果は十分満足できるものではなかった。
【0004】
そこで、仕上がり後の良好な感触やその持続性をより向上するため、高重合シリコーンとカチオン性ポリマーを併用することが提案されている。例えば、アミノ変性シリコーンと高重合シリコーンとカチオン性ポリマーを併用した脱色用又は染色用組成物が提案されている(特許文献1)。しかし、この脱色用又は染色用組成物は、処理後の毛髪から剤を流水で洗い流す際の感触は良好であるものの、シャンプーによる洗浄時・そのすすぎ時の感触に劣り、また乾燥後の感触、色持ちが十分ではなかった。また、また、特定粒径の高分子シリコーンの水性エマルジョンと、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体を併用した染毛剤組成物が提案されている(特許文献2)。しかし、この染毛剤組成物は、処理後の毛髪から剤を流水で洗い流す際にきしみ感やごわつき感を生ずるという問題を有するものであった。
【0005】
【特許文献1】特開2004-175748号公報
【特許文献2】特開2007-45740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明は、毛髪の処理後、流水でのすすぎから、シャンプー洗浄、乾燥後までのいずれの段階においても優れた感触を有し、また色持ちにも優れる酸化染毛剤又は脱色剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、塩化ジメチルジアリルアンモニウムとアクリル酸とを異なる重合比率で共重合させた2種類のカチオン性ポリマー(INCI名ポリクオタニウム-22)を、高重合シリコーンと共存させることにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
本発明は、次の成分(A)〜(C)を含有する酸化染毛剤又は脱色剤組成物を提供するものである。
(A) 数平均重合度1000以上の高重合シリコーン
(B) 塩化ジメチルジアリルアンモニウム70〜89質量%とアクリル酸11〜30質量%とを共重合させたカチオン性ポリマー
(C) 塩化ジメチルジアリルアンモニウム90〜99質量%とアクリル酸1〜10質量%とを共重合させたカチオン性ポリマー
【発明の効果】
【0009】
本発明の酸化染毛剤又は脱色剤組成物は、毛髪の処理後、流水でのすすぎから、シャンプー洗浄、乾燥後までのいずれの段階においても優れた感触を有し、また色持ちにも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
〔成分(A):高重合シリコーン〕
成分(A)の数平均重合度1000以上の高重合シリコーン類としては、ジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコーン)、メチルフェニルポリシロキサン、ヒドロキシ末端基を有するジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコノール)、WO96/31188に記載されているわずかに架橋されたシリコーンガム等が挙げられる。これらの物質は、毛髪の均一な脱色・染色、剤の濯ぎ易さに寄与し、また毛髪への残留性が良好で、毛髪に対して、湿潤時の柔らかさ、滑らかさ及び指の通り易さ、乾燥時の色の鮮明さや深み、ツヤ、柔らかさ、滑らかさ、ボリューム感(ボディ)、まとまり易さ及び保湿性という効果、並びにこれらの効果の持続性を与える。
【0011】
高重合シリコーンの数平均重合度は、1000以上であり、1500以上が好ましく、特に2000以上20000未満が好ましい。この重合度範囲であれば、一部を置換したシリコーン、すなわちフッ素変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等を用いることもできる。
【0012】
数平均重合度が1000以上である高重合シリコーンの市販品の具体例としては、SH200-1,000,000cs(東レ・ダウコーニング社)、TSF451-100MA(GE東芝シリコーン社)、BY11-026(東レ・ダウコーニング社;高重合シリコーンの低粘度シリコーンによる希釈溶液)、KF9008(信越シリコーン社;高重合シリコーンの環状シリコーンによる希釈溶液)、BY22-050A(東レ・ダウコーニング社;高重合シリコーンのカチオンエマルション)、BY22-060(東レ・ダウコーニング社;高重合シリコーンを低粘度シリコーンで希釈した溶液のカチオンエマルション)、BY22-020(東レ・ダウコーニング社;高重合シリコーンを流動パラフィンで希釈した溶液のカチオンエマルション)、KM904(信越シリコーン社;高重合シリコーンを低粘度シリコーンで希釈した溶液のカチオンエマルション)等が挙げられる。
【0013】
高重合シリコーンは、2種以上を併用することもでき、またその含有量は、全組成物中の0.01〜30質量%が好ましく、更には0.05〜20質量%、特に0.1〜10質量%が好ましい。ここで「全組成物」とは、本発明の組成物がアルカリ剤を含有する第1剤と過酸化水素等の酸化剤を含有する第2剤からなる二剤型の場合、第1剤と第2剤とを混合した使用直前の組成物をいう。三剤型の場合は、更に第3剤を混合した使用直前のものをいう(以下同じ)。
【0014】
〔成分(B):ポリクオタニウム-22(カチオン化密度:中程度)〕
成分(B)は、塩化ジメチルジアリルアンモニウム70〜89質量%とアクリル酸11〜30質量%とを共重合することにより得られるポリクオタニウム-22であり、中程度のカチオン化密度を有するカチオン性ポリマーである。成分(B)のポリマーとしては、塩化ジメチルジアリルアンモニウム75〜85質量%とアクリル酸15〜25質量%とを共重合して得られたものが好ましく、塩化ジメチルジアリルアンモニウム78〜82質量%とアクリル酸18〜82質量%とを共重合して得られたものが好ましい。市販品としては、マーコート280(Nalco社)が挙げられる。
【0015】
成分(B)のカチオン性ポリマーの含有量は、全組成物中の0.01〜3質量%が好ましく、更には0.05〜2質量%、特に0.1〜1質量%が好ましい。
【0016】
〔成分(C):ポリクオタニウム-22(カチオン化密度:高)〕
成分(C)は、塩化ジメチルジアリルアンモニウム90〜99質量%とアクリル酸1〜10質量%とを共重合することにより得られるポリクオタニウム-22であり、高いカチオン化密度を有するカチオン性ポリマーである。成分(C)のポリマーとしては、塩化ジメチルジアリルアンモニウム93〜99質量%とアクリル酸1〜7質量%とを共重合して得られたものが好ましく、塩化ジメチルジアリルアンモニウム96〜99質量%とアクリル酸1〜4質量%とを共重合して得られたものがより好ましい。市販品としては、マーコート295(Nalco社)が挙げられる。
【0017】
上記成分(C)のカチオン化密度の高いカチオン性ポリマーは、毛髪への残留性に優れることが知られているが、毛髪上に過剰に吸着すると、きしみ感やごわつき感を生じる原因となる。一方、成分(B)のカチオン化密度が中程度のカチオン性ポリマーは、毛髪への残留性が十分ではなく、シャンプーすすぎ時の滑らかで柔らかい感触が持続しない。本発明の酸化染毛剤又は脱色剤組成物は、高重合シリコーンと共にこれら2種のカチオン性ポリマーを併用することによって、処理後の流水すすぎ、シャンプー洗浄、シャンプーすすぎ、乾燥後のいずれの段階においても優れた感触を発揮するものである。
【0018】
成分(C)のカチオン性ポリマーの含有量は、全組成物中の0.01〜3質量%が好ましく、更には0.02〜1.5質量%、特に0.03〜0.5質量%が好ましい。
【0019】
ここで、成分(C)の含有量に対する成分(B)の含有量の質量比(B)/(C)は、処理後の流水すすぎ、シャンプー洗浄、シャンプーすすぎ、乾燥後のいずれの段階においても優れた感触を発揮する点から、2.5〜25の範囲内であることが好ましく、更には3〜20の範囲内、特に4〜15の範囲内であることが好ましい。
【0020】
更に、成分(B)と成分(C)の合計含有量に対する成分(A)の含有量の質量比(A)/〔(B)+(C)〕は、処理後の流水すすぎ、シャンプー洗浄、シャンプーすすぎ、乾燥後のいずれの段階においても優れた感触を発揮する点から、0.5〜3の範囲内であることが好ましく、更には0.6〜2.5の範囲内、特に0.7〜2の範囲内であることが好ましい。
【0021】
〔酸化染料中間体又は直接染料〕
本発明の組成物が、脱色剤組成物である場合には、染料は含有せず、染毛剤組成物である場合には、第1剤に酸化染料中間体又は直接染料を含有する。
【0022】
酸化染料中間体としては、通常染毛剤に使用されている公知のプレカーサー及びカプラーを用いることができる。プレカーサーとしては、例えばパラフェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、2-クロロ-パラフェニレンジアミン、N-メトキシエチル-パラフェニレンジアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-パラフェニレンジアミン、2-(2-ヒドロキシエチル)-パラフェニレンジアミン、2,6-ジメチル-パラフェニレンジアミン、4,4′-ジアミノジフェニルアミン、1,3-ビス(N-(2-ヒドロキシエチル)-N-(4-アミノフェニル)アミノ)-2-プロパノール、PEG-3,3,2′-パラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、3-メチル-4-アミノフェノール、2-アミノメチル-4-アミノフェノール、2-(2-ヒドロキシエチルアミノメチル)-4-アミノフェノール、オルトアミノフェノール、2-アミノ-5-メチルフェノール、2-アミノ-6-メチルフェノール、2-アミノ-5-アセタミドフェノール、3,4-ジアミノ安息香酸、5-アミノサリチル酸、2,4,5,6-テトラアミノピリミジン、2,5,6-トリアミノ-4-ヒドロキシピリミジン、4,5-ジアミノ-1-(4′-クロロベンジル)ピラゾール、4,5-ジアミノ-1-ヒドロキシエチルピラゾールとこれらの塩等が挙げられる。
【0023】
また、カプラーとしては、例えばメタフェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、2-アミノ-4-(2-ヒドロキシエチルアミノ)アニソール、2,4-ジアミノ-5-メチルフェネトール、2,4-ジアミノ-5-(2-ヒドロキシエトキシ)トルエン、2,4-ジメトキシ-1,3-ジアミノベンゼン、2,6-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ)トルエン、2,4-ジアミノ-5-フルオロトルエン、1,3-ビス(2,4-ジアミノフェノキシ)プロパン、メタアミノフェノール、2-メチル-5-アミノフェノール、2-メチル-5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、2,4-ジクロロ-3-アミノフェノール、2-クロロ-3-アミノ-6-メチルフェノール、2-メチル-4-クロロ-5-アミノフェノール、N-シクロペンチル-メタアミノフェノール、2-メチル-4-メトキシ-5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、2-メチル-4-フルオロ-5-アミノフェノール、レゾルシン、2-メチルレゾルシン、4-クロロレゾルシン、1-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、4-ヒドロキシインドール、5-ヒドロキシインドール、6-ヒドロキシインドール、7-ヒドロキシインドール、6-ヒドロキシベンゾモルホリン、3,4-メチレンジオキシフェノール、2-ブロモ-4,5-メチレンジオキシフェノール、3,4-メチレンジオキシアニリン、1-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-3,4-メチレンジオキシベンゼン、2,6-ジヒドロキシ-3,4-ジメチルピリジン、2,6-ジメトキシ-3,5-ジアミノピリジン、2,3-ジアミノ-6-メトキシピリジン、2-メチルアミノ-3-アミノ-6-メトキシピリジン、2-アミノ-3-ヒドロキシピリジン、2,6-ジアミノピリジンとこれらの塩等が挙げられる。
【0024】
プレカーサーとカプラーは、それぞれ2種以上を併用してもよく、その含有量は、それぞれ全組成物中の0.01〜8質量%、特に0.1〜5質量%が好ましい。
【0025】
直接染料としては、ニトロ染料、分散染料、塩基性染料等が挙げられる。ニトロ染料としては、2-ニトロ-パラフェニレンジアミン、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、3-ニトロ-パラヒドロキシエチルアミノフェノール、4-ニトロ-オルトフェニレンジアミン、4-アミノ-3-ニトロフェノール、4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノール、HCブルーNo.2、HCオレンジNo.1、HCレッドNo.1、HCイエローNo.2、HCイエローNo.4、HCイエローNo.5、HCレッドNo.3、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-2-ニトロ-パラフェニレンジアミン等が挙げられ、分散染料としては、ディスパーズバイオレット1、ディスパーズブルー1、ディスパーズブラック9等が挙げられ、塩基性染料としては、ベーシックブルー99、ベーシックブラウン16、ベーシックブラウン17、ベーシックレッド76、ベーシックレッド51、ベーシックイエロー57、ベーシックイエロー87、ベーシックオレンジ31等が挙げられる。
【0026】
直接染料は、2種以上を併用してもよく、酸化染料中間体と併用してもよい。またその含有量は、全組成物中の0.001〜5質量%、特に0.01〜3質量%が好ましい。
【0027】
〔アルカリ剤〕
アルカリ剤は、第1剤に含まれる。アルカリ剤としては、アンモニア;モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノブタノール等のアルカノールアミン;1,3-プロパンジアミン等のアルカンジアミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基;炭酸グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩等が挙げられる。これらのアルカリ剤は、2種以上を併用してもよく、またその含有量は、十分な脱色・染毛効果の点、及び毛髪損傷や頭皮刺激の低減の点から、全組成物中の0.05〜15質量%が好ましく、更には0.1〜10質量%、特に0.2〜5質量%が好ましい。
【0028】
上記アルカリ剤のうち、アンモニア及びアルカノールアミンが好ましく、アルカノールアミンとしてはモノエタノールアミンが好ましい。更には、それらの塩を併用することが好ましく、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウムが特に好ましい。更には、これらの含有量が下記範囲であることが最も好ましい。
【0029】
全組成物中の(a)アンモニア及びその塩をアンモニアとして換算した場合の含有量と、(b)モノエタノールアミン及びその塩をモノエタノールアミンとして換算した場合の含有量の合計が、十分な脱色・染毛効果の点、及び毛髪損傷や頭皮刺激、嗅覚刺激の低減の点から、全組成物中の0.05〜15質量%であることが好ましく、更には0.1〜10質量%、特に0.2〜5質量%であることが好ましい。また、(a)/(b)の比が、0.01:1〜2.0:1であることが好ましく、更には0.02:1〜1:1、特に0.05:1〜0.5:1であることが好ましい。
【0030】
〔酸化剤〕
酸化剤は、第2剤に含まれる(ここでいう酸化剤には、第3剤に使用される過硫酸塩は含まない)。酸化剤としては、過酸化水素、及び過酸化水素発生剤である過酸化尿素、過酸化メラミン、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム等が挙げられ、特に過酸化水素が好ましい。酸化剤の含有量は、十分な脱色・染毛効果、及び毛髪損傷や頭皮刺激の低減の点から、過酸化水素換算量として、全組成物中の0.1〜10質量%、特に1〜5質量%が好ましい。
【0031】
〔アミノ変性シリコーン〕
本発明の組成物には、更にアミノ変性シリコーンを含有させることができる。アミノ変性シリコーンとしては、アミノ基又はアンモニウム基を有していればよく、末端水酸基の全て又は一部がメチル基等で封鎖されたアミノ変性シリコーンオイル、末端が封鎖されていないアモジメチコーンのどちらでもよい。例えば、好ましいアミノ変性シリコーンとしては、以下の一般式(1)で表されるものが挙げられる。これらの物質は、毛髪の均一な脱色・染色に寄与し、また毛髪への残留性が良好で、毛髪に対して、湿潤時の柔らかさ及び滑らかさ、乾燥時の色の鮮明さや深み、ツヤ、柔らかさ、滑らかさ、ボリューム感(ボディ)、まとまり易さ及び保湿性という効果、並びにこれらの効果の持続性を与える。
【0032】
【化1】

【0033】
〔式中、R0は水酸基、水素原子又はRを示し、Rは置換又は非置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基を示し、AはR、基−R′−(NHCH2CH2)nNH2、基OR又は水酸基を示し、R′は炭素数1〜8の二価炭化水素基を示し、nは0〜3の数を示し、p及びqはその和が数平均で10以上1000未満、好ましくは30以上1000未満、更に好ましくは40以上800未満となる数を示す。アミノ当量は200g/mol〜3万g/mol、好ましくは400g/mol〜1万g/mol、更に好ましくは600g/mol〜5000g/molである。〕
【0034】
アミノ変性シリコーンの好適な市販品の具体例としては、SF8451C(東レ・ダウコーニング社,粘度600mm2/s,アミノ当量1700g/mol)、SF8452C(東レ・ダウコーニング社,粘度700mm2/s,アミノ当量6400g/mol)、SF8457C(東レ・ダウコーニング社,粘度1200mm2/s,アミノ当量1800g/mol)、KF8003(GE東芝シリコーン社,粘度1850mm2/s,アミノ当量2000g/mol)、KF867(GE東芝シリコーン社,粘度1300mm2/s,アミノ当量1700g/mol)等のアミノ変性シリコーンオイルや、SM8704C(東レ・ダウコーニング社,アミノ当量1800g/mol)等のアモジメチコーンエマルションが挙げられる。また、アミノ変性シリコーンオイルは、エマルションの形で配合してもよい。アミノ変性シリコーンのエマルションは、機械的乳化(アミノ変性シリコーンと水との高剪断機械混合)、化学的乳化(アミノ変性シリコーンを水及び乳化剤で乳化)、若しくはこれらの組み合わせによって、又は乳化重合によっても調製することができる。
【0035】
アミノ変性シリコーンは、2種以上を併用することもでき、またその含有量は、全組成物中の0.01〜30質量%が好ましく、更には0.05〜20質量%、特に0.1〜10質量%が好ましい。
【0036】
また、成分(A)の高重合シリコーン、上記アミノ変性シリコーン以外のシリコーン類(例えば重合度1000未満のジメチルポリシロキサン、環状ポリシロキサン、フェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーンを除く変性シリコーン)を含有させることもできる。
【0037】
高重合シリコーン類、アミノ変性シリコーン及びその他のシリコーン類の総含有量は、十分な効果とベタツキの抑制の点から、本発明の組成物中の0.02〜40質量%が好ましく、更には0.1〜20質量%、特に0.2〜15質量%が好ましい。また、各シリコーン類の含有比率は、次式で表される換算アミノ当量が、500〜10万g/molとなる範囲が好ましく、更には1000〜8万g/mol、特に2000〜5万g/molとなる範囲が好ましい。
【0038】
換算アミノ当量(g/mol)=〔全組成物1g中の全シリコーン類の総質量(g/g)〕/〔全組成物1g中のアミノ変性シリコーンのアミノ基、イミノ基及びアンモニウム基の総モル数(mol/g)〕。
【0039】
〔炭化水素油〕
更に本発明の組成物には、炭化水素油を含有させることができる。ここで、炭化水素油は、本明細書においては室温で液体であるもの、固体であるもの、半固体であるもののいずれをも含む概念である。炭化水素油としては、α-オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、ポリブテン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、ペトロラタム、固形パラフィン等が挙げられ、なかでも、シリコーン類の毛髪への吸着性、乾燥後の感触の点から、流動パラフィン、ペトロラタム、固形パラフィンが好ましい。
【0040】
炭化水素油は、2種以上を併用することもでき、またその含有量は、アンモニアの刺激臭抑制、処理後の毛髪の明色性と感触、組成物の安定性の点から、第1剤組成物中の1.2〜6質量%が好ましく、更には1.4〜5質量%、特に1.6〜4質量%が好ましい。
【0041】
〔高級アルコール〕
本発明の組成物には、感触改善、安定性の観点から、第1剤、第2剤及び第3剤のいずれか1以上に、高級アルコールを含有させることが好ましい。これらは、界面活性剤と構造体を形成して分離を防ぐと共に、すすぎ時の感触を改善する効果がある。
【0042】
高級アルコールとしては、炭素数8〜22、特に16〜22のものが好ましく、具体的には、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等、及びこれらの混合物が挙げられる。特に感触面からベヘニルアルコールが好ましい。
【0043】
高級アルコールは、2種以上を併用してもよく、またその含有量は、全組成物中の0.01〜20質量%、特に0.1〜10質量%が好ましい。
【0044】
〔界面活性剤〕
本発明の酸化染毛剤又は脱色剤組成物は、乳化物であることが好ましく、シリコーン類や高級アルコール類の乳化のため、第1剤及び第2剤のいずれか一方又は両方に、界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤としては、安定性の観点より、非イオン界面活性剤、例えば炭素数12〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアルコキシ化(例えばエトキシ化又はプロポキシ化)高級アルコール、具体的には、ポリオキシエチレン(2〜40)アルキルエーテル等を全組成物中に1〜40質量%程度、好ましくは2〜20質量%程度用いることができる。また、感触面を考慮すれば、更にモノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤を併用することが好ましい。ここで、モノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩としては、感触、乳化性能の面から、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムが好ましい。これらの使用比率は、(カチオン界面活性剤)/(非イオン界面活性剤+カチオン界面活性剤)の質量比が、0.8以下、更に0.6以下、特に0.4以下であるのが好ましい。
【0045】
界面活性剤と高級アルコールの質量比を、10:1〜1:10、好ましくは4:1〜1:8、特に1:1〜1:4とすると、混合前の第1剤又は第2剤をクリーム状にすることができる。
【0046】
〔剤型等〕
本発明の組成物は、現在広く利用されている酸化染毛剤又は脱色剤と同様に、アルカリ剤を含有する第1剤と過酸化水素等の酸化剤を含有する第2剤よりなる二剤型として、又は脱色力向上のため、更に第3剤として過硫酸塩(過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等)等の造粒物からなる粉末状酸化剤を組み合わせてなる三剤型として提供される。第1剤及び第2剤の剤形は、例えば、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、ムース状などとすることができ、エアゾール形態とすることもできる。第1剤と第2剤(三剤型の場合は更に第3剤)を混合し、毛髪に塗布したときに液だれしにくいような粘度になることが望ましく、25℃、ヘリカルスタンド付きB型回転粘度計(B8R型粘度計,TOKIMEC社)で測定した粘度が2000〜10万mPa・sが好ましい。ここで、粘度は、ローターT-Cを用い、10rpm、1分間回転させた後の値とする。
【0047】
〔媒体〕
本発明の組成物には、媒体として、水及び必要により有機溶剤が使用される。有機溶剤としては、エタノール、2-プロパノール等の低級アルカノール類、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール等の芳香族アルコール類、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン等のポリオール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ベンジルセロソルブ等のセロソルブ類、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類が挙げられる。
【0048】
〔pH〕
本発明の組成物のpH(25℃)は、脱色・染毛効果と皮膚刺激性の点から、使用時(混合時)において、8〜12とされるが、8〜10が好ましい。pH調整剤としては、前記のアルカリ剤のほか、塩酸、リン酸等の無機酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸等の有機酸、リン酸二水素一カリウム、リン酸一水素二ナトリウム等のリン酸塩等が挙げられる。
【0049】
〔その他任意成分〕
本発明の組成物には、上記成分のほかに通常化粧品原料として用いられる他の成分を加えることができる。このような任意成分としては、環状ポリシロキサン、動植物油脂、成分(B)及び(C)以外の天然又は合成の高分子、エーテル類、蛋白誘導体、加水分解蛋白、アミノ酸類、防腐剤、キレート剤、安定化剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、香料、紫外線吸収剤が挙げられる。
【0050】
〔処理法〕
本発明の組成物を用いて毛髪を染色又は脱色処理するには、例えば本発明の組成物の第1剤と第2剤(三剤型の場合は更に第3剤)を使用直前に混合した後、毛髪に適用し、所定時間放置後、洗い流し、乾燥すればよい。毛髪への適用温度は15〜45℃、適用時間は3〜45分間、特に5〜30分間が好ましい。この場合、まず酸化染毛剤又は脱色剤組成物を水で軽く洗い流した後、アニオン界面活性剤を含有するシャンプーを用いて洗髪し、次いで水洗すると、カチオン性ポリマーは適度に流出し、シリコーン類は適度に毛髪に残留し、良好なコンディショニング効果を示す。シャンプーとしては、ラウリルエトキシ(1〜3)硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤を5〜20質量%程度含有する一般的な水性シャンプーが好適である。
【実施例】
【0051】
実施例1〜7及び比較例1〜4
表1に示す染毛用第1剤組成物及び表2に示す第2剤組成物(共通)を常法により調製し、パネラー10名により、下記方法及び基準に従って「染毛直後の髪の感触(剤すすぎ時)」、「染毛直後の髪の感触(シャンプー時)」、「染毛直後の髪の感触(乾いた状態)」及び「色持ち」を評価した。その合計点を表1に示す。
【0052】
「染毛直後の髪の感触(剤すすぎ時)」
第1剤及び第2剤をそれぞれ10gずつよく混合し、黒髪トレス(ヘアカラー、パーマ履歴のないモンゴロイドの毛10g)に塗布し、20分間放置した。その後、流水ですすいでいる状態を比較例1を対照として次の5段階で官能評価した。
+2:比較例1に比べ、感触が良い
+1:比較例1に比べ、感触がやや良い
0:比較例1に比べ、感触がほぼ同等
−1:比較例1に比べ、感触がやや悪い
−2:比較例1に比べ、感触が悪い
【0053】
「染毛直後の髪の感触(シャンプ−時)」
第1剤及び第2剤をそれぞれ10gずつよく混合し、黒髪トレス(ヘアカラー、パーマ履歴のないモンゴロイドの毛10g)に塗布し、20分間放置した。流水ですすぎ、シャンプーで洗浄している状態を比較例1を対照として次の5段階で官能評価した。
+2:比較例1に比べ、感触が良い
+1:比較例1に比べ、感触がやや良い
0:比較例1に比べ、感触がほぼ同等
−1:比較例1に比べ、感触がやや悪い
−2:比較例1に比べ、感触が悪い
【0054】
「染毛直後の髪の感触(乾いた状態)」
第1剤及び第2剤をそれぞれ10gずつよく混合し、黒髪トレス(ヘアカラー、パーマ履歴のないモンゴロイドの毛10g)に塗布し、20分間放置した。流水ですすぎ、シャンプーで洗浄、乾燥した後、比較例1を対照として次の5段階で官能評価した。
+2:比較例1に比べ、感触が良い
+1:比較例1に比べ、感触がやや良い
0:比較例1に比べ、感触がほぼ同等
−1:比較例1に比べ、感触がやや悪い
−2:比較例1に比べ、感触が悪い
【0055】
「染色の持続性」
第1剤及び第2剤をそれぞれ1gずつよく混合し人毛白髪トレス(ビューラックス社製 BS-W、10cm、1g)に塗布し、20分間放置した。流水ですすぎ、シャンプーで洗浄、乾燥した。その後ラウリルエトキシ(1〜3)硫酸ナトリウムの1.5質量%水溶液(pH7)10mLに浸し、40℃恒温槽中で30分間左右に振動させた。その後、40℃の流水ですすいでから乾燥した。この毛束の染色の持続性について、比較例1を対照として次の5段階で官能評価した。
+2:比較例1に比べ、染色の持続性が優れる
+1:比較例1に比べ、染色の持続性がやや優れる
0:比較例1に比べ、染色の持続性がほぼ同等
−1:比較例1に比べ、染色の持続性がやや劣る
−2:比較例1に比べ、染色の持続性が劣る
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C)を含有する酸化染毛剤又は脱色剤組成物。
(A) 数平均重合度1000以上の高重合シリコーン
(B) 塩化ジメチルジアリルアンモニウム70〜89質量%とアクリル酸11〜30質量%とを共重合させたカチオン性ポリマー
(C) 塩化ジメチルジアリルアンモニウム90〜99質量%とアクリル酸1〜10質量%とを共重合させたカチオン性ポリマー
【請求項2】
成分(C)の含有量に対する成分(B)の含有量の質量比(B)/(C)が、2.5〜25の範囲内である請求項1記載の酸化染毛剤又は脱色剤組成物。
【請求項3】
成分(B)と成分(C)の合計含有量に対する成分(A)の含有量の質量比(A)/〔(B)+(C)〕が、0.5〜3の範囲内である請求項1又は2記載の酸化染毛剤又は脱色剤組成物。
【請求項4】
更に、アミノ変性シリコーンを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の酸化染毛剤又は脱色剤組成物。
【請求項5】
更に、炭化水素油を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の酸化染毛剤又は脱色剤組成物。

【公開番号】特開2008−290954(P2008−290954A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135712(P2007−135712)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】