説明

酸化物単結晶

【課題】泡欠陥が著しく低減された酸化物単結晶を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される酸化物単結晶。Al(2−x)Ti(3−y)(1)。式中、0<x<2、かつ、0<y<3である。さらに、xは2×10−6≦x≦2×10−4、yは3×10−6≦y≦3×10−4であることが好ましい。この酸化物単結晶は、引き上げ装置10を用い、酸化アルミニウム、フッ化アルミニウムおよび酸化チタンからなる融液18を満たしたるつぼ17の上方から、種結晶2を下部先端に固定した引き上げ棒12を融液18の表面の中央部から融液18中に入れて種付け後、引き上げ棒12を回転させながら引き上げて、略円柱状の単結晶インゴット1を形成することにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物単結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融した酸化アルミニウムを結晶育成して得られる単結晶は、一般的にサファイア単結晶と呼ばれる。サファイア単結晶は、六方晶で近似される結晶構造を有し、近年、LED(Light Emitting Diode)として用いられるGaN、InGaN及び類似の化合物半導体を製造するためのエピタキシャル成長用基板に使われている(非特許文献1参照)。また、サファイア基板上にSiを成長させたシリコン・オン・サファイア(SOS)として知られるデバイスは、従来のSi半導体デバイスに比べ高周波特性に優れ、高速かつ低消費電力を実現できると期待されている(非特許文献2参照)。
【0003】
通常、エピタキシャル成長用の基板に用いるサファイアウエハの主面は、特定の結晶方位面であることが必要である。例えばGaNの成長にはc軸<0001>に垂直な方位面が用いられる。Siの成長にはR軸<10−12>に垂直な方位面が用いられる。一般に、エピタキシャル成長に用いられる基板ウエハの結晶構造欠陥は可能な限り少ないほどよいことが知られている。サファイア基板のウエハの結晶構造欠陥も少ないことが望ましい。ここで「結晶構造欠陥」(以下、単に「欠陥」という場合がある。)とは、結晶中の泡欠陥(数μmの微小な気泡)や、小角結晶粒界(サブグレイン)を表す。基板ウエハとして使用するサファイア単結晶を製造する際は、これらの欠陥の形成を防止する製造方法及び製造条件を採用することが望まれる。さらに、現在は基板の大型化に伴い、大型で欠陥の少ない良質なサファイア単結晶が求められている。
【0004】
サファイア単結晶の製造方法としては、チョクラルスキ法、Nacken−Kyropoulos法、熱交換法、EFG法などが挙げられる。いずれの方法でも、原料アルミナ(Al)を融点(2040℃)以上に加熱して融解させ、これを徐冷して固化(結晶化)することで比較的欠陥の少ない結晶が得られる。しかし、これらの方法を用いても、サファイア単結晶中に泡欠陥(数μmの微小な気泡)が発生しやすい。泡欠陥は、サファイアウエハ上のピット(数μmの微小な窪み)の原因となる。ピットはその後のエピタキシャル成長に悪影響を与えてしまう。
【0005】
上記製造方法においては、融解した原料(以下融液と記す)中の一部が分解し、融液が過飽和となる程度の量のAlO、AlO、Oが生成する。これらの分解生成物は、融液が結晶化する際に結晶中に泡として取り込まれることが知られている(非特許文献3参照)。
【0006】
この現象が泡欠陥の発生原因だと考えられるため、これらの分解成分の生成を抑制することにより泡欠陥を低減させることが試みられている。例えば、Nacken−Kyropoulos法によるサファイア単結晶の育成では、結晶の育成雰囲気に二酸化炭素ガスや水蒸気を添加する。(下記特許文献1及び2参照)。また、モリブデン坩堝を用いたチョクラルスキ法によるサファイア単結晶の育成では、育成雰囲気に、微量の水素ガスや一酸化炭素ガスを添加し、過飽和酸素(O)を化学反応により除去する。(特許文献3参照)。また、一般的にサファイアの育成時にアルミナ以外の金属を添加すると泡欠陥が少なくなることが知られている。例えば、二酸化チタンを加えることで泡欠陥を低減する方法が知られている(特許文献4及び5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−31019号公報
【特許文献2】特開平5−330973号公報
【特許文献3】特開平4−132695号公報
【特許文献4】特開平6−199597号公報
【特許文献5】特開平6−115931号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Aggarwal etc.、J.Quantum Electronics、1998、24、1003.
【非特許文献2】藤田研、倉持隆、佐藤雅克、佐藤秀二、沖テクニカルレビュー、2005年7月、第203号Vol.72、No3
【非特許文献3】日本化学会編、化学便覧 基礎編II、改定3版、1980年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、単結晶の育成雰囲気の調整や金属元素の添加では泡欠陥を十分に低減できない。例えば結晶径が4インチを超えるような大型のサファイア単結晶を作製するにあたり、十分な泡欠陥の抑制ができないことがある。エピタキシャル成長用ウエハの大型化に伴い、泡欠陥がより一層低減された良質な大型サファイア単結晶が求められている。
【0010】
そこで本発明は、泡欠陥が著しく低減された酸化物単結晶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
サファイア単結晶の製造では、2000℃を超える酸化アルミニウム融液中でAlの分解によりAlO、AlO及びOが生成する反応が起こる。またAlO、AlO及びOの結合によりAlが生成する反応も起こる。本発明者らは、これらの反応を抑制できれば泡欠陥を低減できると考えた。これらの反応を抑制する一つの方法として、TiOを結晶の原料に添加することが考えられる。しかし、サファイア単結晶に多量のTiOを含有すると、TiO自体が欠陥となって泡欠陥が増加したり着色の原因になったりする。つまりTiOの添加量には適正量がある。また本発明者らは、Alの分解により結晶中に形成される酸素の欠損部位にフッ素元素を補うことで、泡欠陥を抑制することを試みた。しかし、一般的にフッ化物の融点や沸点は酸化物の融点より低い。例えば、フッ化物の一種であるフッ化アルミニウムの沸点は1200℃程度である。したがって、2,000℃を超える酸化アルミニウムの融液中に蒸発せずに留まっていられるフッ素元素の量は多くない。そのため、フッ素元素の添加だけでは泡欠陥を充分に低減することはできない。以上の考察の結果、本発明者らは、チタン元素又はフッ素元素のいずれか一方だけを用いた場合であっても泡欠陥を低減する効果が得られるが、その効果は必ずしも充分ではないことを見出した。そして、本発明者らは、サファイア単結晶にチタン元素及びフッ素元素を含ませることで、チタン元素を添加しただけでは抑制しきれない泡欠陥をフッ素元素の添加によって抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明は、下記一般式(1)で表される酸化物単結晶を提供する。
Al(2−x)Ti(3−y) (1)
(式中、0<x<2、かつ、0<y<3である。)
本発明によれば、泡欠陥が著しく低減された酸化物単結晶(サファイア単結晶)を得ることができる。
【0013】
本発明の酸化物単結晶において、xは2×10−6≦x≦2×10−4であることが好ましい。これにより、泡欠陥がより著しく低減された酸化物単結晶を得ることができる。
【0014】
本発明の酸化物単結晶において、yは3×10−6≦y≦3×10−4であることが好ましい。これにより、泡欠陥がより著しく低減された酸化物単結晶を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、泡欠陥が著しく低減された酸化物単結晶を提供することができる。特に、本発明によれば、泡欠陥が著しく低減されたエピタキシャル成長用大型酸化物単結晶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】サファイア単結晶を製造するための製造装置(引き上げ装置)の基本構成の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の酸化物単結晶の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0018】
(酸化物単結晶)
本実施形態の酸化物単結晶は、溶融された酸化アルミニウムをチタン及びフッ素と共に結晶成長させることにより得られるサファイア単結晶である。本実施形態の酸化物単結晶の組成は、一般式Al(2−x)Ti(3−y)で表される。ここで、式中のx及びyはそれぞれ、0<x<2、0<y<3を満たす値である。
【0019】
従来のサファイア単結晶の製造では、成長する結晶内にμm程度の微小な泡欠陥が発生することが問題であった。一方、本実施形態では、サファイア単結晶の製造において原料アルミナにチタン元素及びフッ素元素を添加することで、著しく泡欠陥が抑制されたサファイア単結晶を得ることができる。
【0020】
xは2×10−6≦x≦2×10−4であることが好ましく、1×10−5≦x≦1×10−4であることがより好ましい。x<2×10−6であると泡欠陥抑制の効果が小さく、x<1×10−5であると大きな結晶インゴットを育成するときに泡欠陥抑制効果が十分に得られない可能性がある。また、x>2×10−4であるとチタン元素自体が欠陥として働き逆に泡を増加させてしまう可能性があり、x>1×10−4であると大型結晶を育成する際に泡が増加する可能性がある。
【0021】
yは3×10−6≦y≦3×10−4であることが好ましい。y<3×10であると欠陥抑制の効果が小さくなる。y>3×10−4であると抑制効果が横ばいになり、蒸発したフッ化物が炉内に蓄積して、装置メンテナンス上好ましくない場合がある。
【0022】
(酸化物単結晶の製造装置)
次に、図1を参照しながら、結晶育成に用いる引き上げ装置の一例について説明する。図1の引き上げ装置10は、高周波誘導加熱炉14を有している。この加熱炉14は、筒状の側壁を有する耐火性の有底容器である。有底容器の形状自体は公知のチョクラルスキ法に基づく単結晶育成に使用されるものと同様である。この加熱炉14の底部の該側面には高周波誘導コイル15が巻回されている。そして、加熱炉14の内部の底面上には、るつぼ17(例えば、Ir製のるつぼ)が配置されている。
【0023】
るつぼ17は、高周波誘導加熱ヒータを兼ねている。そして、るつぼ17中に、原料を投入し、高周波誘導コイル15に高周波誘導をかけると、るつぼ17が加熱され、原料の融液18が得られる。
【0024】
また、加熱炉14の底部中央には、加熱炉14の内部から外部へ貫通する開口部(図示せず)が設けられている。そして、この開口部を通じて、加熱炉14の外部からるつぼ支持棒16が挿入されており、るつぼ支持棒16の先端はるつぼ17の底部に接続されている。このるつぼ支持棒16を回転させることにより、加熱炉14中において、るつぼ17を回転させることができる。開口部とるつぼ支持棒16との間は、パッキンなどによりシールされている。
【0025】
(酸化物単結晶の製造方法)
次に、引き上げ装置10を用いた酸化物単結晶(サファイア単結晶)の製造方法について説明する。本方法は、酸化アルミニウムを溶融して融液を得る溶融工程と、融液からサファイア単結晶を引き上げて育成する単結晶育成工程と、得られたサファイア単結晶のインゴットを冷却する冷却工程とを備えている。そして、単結晶育成工程は、インゴットの肩部を形成する肩部形成工程と、肩部の下方に延在する直胴部を形成する直胴部形成工程とからなる。
【0026】
<溶融工程>
まず、るつぼ17中に、原料として酸化アルミニウムと酸化チタンとフッ化アルミニウムを適量投入した後、溶融工程に先立って、加熱炉14の空気を主に不活性ガスで置換する。このとき用いる不活性ガスとしては窒素が好ましい。さらに窒素に微量の二酸化炭素を混合したガスを用いることで、結晶中で欠損する酸素原子が二酸化炭素によって補填され、泡欠陥を抑制する効果が得られる。当該二酸化炭素濃度が0.05体積%未満であると、酸化アルミニウムの融液から酸素が離脱して泡欠陥が生じやすくなり、他方、0.5体積%を超えると、イリジウム製のるつぼを使用する場合、るつぼが酸化してその強度が劣化しやすくなる。るつぼの強度劣化が著しいものになると結晶の育成中にるつぼが損傷してしまう。
【0027】
加熱炉14内の空気を上記混合ガスで十分に置換した後、高周波誘導コイル15に高周波誘導をかけることにより、酸化アルミニウムの融液18を得る。
【0028】
<単結晶育成工程>
次に、るつぼ17の上方から、種結晶2を下部先端に固定した引き上げ棒12を融液18の表面の中央部から融液18中に入れて種付けを行う。融液面に対して垂直な種結晶の面としては、成長させたい結晶面を選ぶべきである。つまり例えば、サファイア単結晶のc軸の方向に結晶を育成させる場合は、種結晶2をそのc軸がるつぼ17の融液面に対して垂直となるように種付けすることが好ましい。種付け後、引き上げ棒12を回転させながら引き上げて、略円柱状の単結晶インゴット1を形成する。
【0029】
単結晶育成工程は肩部形成工程と直胴部形成工程とからなる。肩部形成工程は、ヒータ13の加熱出力を調節し、単結晶インゴット1が所望の直径となるまで結晶を育成させる工程である。肩部形成工程によって単結晶インゴット1の肩部を形成する。なお、単結晶インゴット1の直径は引上げ装置、るつぼ、ワークコイルの大きさなどで制限されるが、25mmから150mmであることが好ましい。
【0030】
<冷却工程>
冷却工程では、単結晶育成工程により得られた単結晶インゴット1を融液18から切り離した後、所定の速度で冷却する。
【0031】
以上で得られたサファイア単結晶の泡欠陥は、たとえばポータブルなグリーンレーザ(波長:532nm)を照射することで観察できる。泡欠陥の観察では、結晶を適切な大きさの切断し、鏡面研磨した後、グリーンレーザを当てながら顕微鏡でレーザ光の散乱箇所を数えて、単位面積あたりの欠陥の数を評価する。また結晶中のチタン元素濃度はICP法などを用いて測定でき、フッ素元素濃度はイオン電極法などを用いて測定できる。
【0032】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
<溶融工程>
直径50mm、深さ50mmのイリジウム製るつぼに、原料として純度99.99質量%以上の酸化アルミニウム208gと、純度99.99%以上のフッ化アルミニウム0.0086gと、純度99.99%以上の酸化チタン0.016gとを充填した。
【0035】
このるつぼを高周波誘導加熱炉内に載置した。るつぼの外周にジルコニア製の円筒を配置して、るつぼ周辺を保温した。高周波誘導によってるつぼを加熱し、るつぼ内の原料を溶融させた。
【0036】
サファイア単結晶のインゴットをチョクラルスキ法に基づいて製造するにあたり、加熱炉内の雰囲気を二酸化炭素含有窒素(二酸化炭素濃度:0.2体積パーセント)とし、圧力は大気圧とした。サファイアの種結晶を引き上げ棒の先端に固定し、この種結晶を原料の融液中に入れて種付けを行った。このとき、種結晶は、そのc軸が融液面に対して垂直となるように種付けをした。
【0037】
<単結晶育成工程>
[肩部形成工程]
種結晶を種付けした後、単結晶インゴットの肩部を形成した。すなわち、引き上げ棒を回転速度3回転/分で回転させるとともに、引上げ速度2mm/時間で引き上げた。融液の温度を調整することにより、単結晶インゴットの直径を25mmまで広げて肩部を形成した。
【0038】
[直胴部形成工程]
次いで、単結晶インゴットの直胴部を形成した。温度を調節しつつ引き上げ棒の回転速度を3回転/分、引上げ速度を2mm/時間にそれぞれ設定し、25mm程度引上げた。
【0039】
<冷却工程>
直胴部形成工程後、単結晶インゴットの下端部の融液に浸っている部分を融液から切り離して、単結晶インゴットを所定の速度で冷却することにより、サファイア単結晶を得た。
【0040】
得られたサファイア単結晶からφ2インチ×10mm程度を切り出し、表面を鏡面研磨して、泡欠陥の評価用サンプルとした。グリーンレーザを用いて顕微鏡で測定された泡欠陥の数は0個/mmであった。
【0041】
得られたサファイア単結晶の組成は、ICP法及びイオン電極法により確認した(下記表1参照)。
【0042】
(実施例2)
実施例2では、直径50mm、深さ50mmのイリジウム製るつぼに、原料として純度99.99質量%以上の酸化アルミニウム208gと、純度99.99%以上のフッ化アルミニウム0.0056gと、純度99.99%以上の酸化チタン0.016gとを充填した。このこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例2のサファイア単結晶を作製し、その組成を確認した(下記表1参照)。実施例2のサンプルの泡欠陥を評価したところ、泡欠陥の数は平均0個/mmであった。
【0043】
(実施例3)
実施例3では、直径50mm、深さ50mmのイリジウム製るつぼに、原料として純度99.99質量%以上の酸化アルミニウム208gと、純度99.99%以上のフッ化アルミニウム0.0346gと、純度99.99%以上の酸化チタン0.0652gとを充填した。このこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例3のサファイア単結晶を作製し、その組成を確認した(下記表1参照)。実施例3のサンプルの泡欠陥を評価したところ、泡欠陥の数は0個/mmであった。
【0044】
(比較例1)
比較例1では、直径50mm、深さ50mmのイリジウム製るつぼに、原料として純度99.99質量%以上の酸化アルミニウム208gを充填した。このこと以外は、実施例1と同様の方法で比較例1の単結晶を作製し、その組成を確認した(下記表1参照)。比較例1のサンプルの泡欠陥を評価したところ、泡欠陥の数は平均256個/mmであった。
【0045】
(比較例2)
比較例2では、直径50mm、深さ50mmのイリジウム製るつぼに、原料として純度99.99質量%以上の酸化アルミニウム208gと、純度99.99%以上の酸化チタン0.016gとを充填した。このこと以外は、実施例1と同様の方法で比較例2のサファイア単結晶を作製し、その組成を確認した(下記表1参照)。比較例2のサンプルの泡欠陥を評価したところ、泡欠陥の数は平均25個/mmであった。
【0046】
(比較例3)
比較例3では、直径50mm、深さ50mmのイリジウム製るつぼに、原料として純度99.99質量%以上の酸化アルミニウム208gと、純度99.99%以上のフッ化アルミニウム0.0346gとを充填した。このこと以外は、実施例1と同様の方法で比較例3のサファイア単結晶を作製し、その組成を確認した(下記表1参照)。比較例3のサンプルの泡欠陥を評価したところ、泡欠陥の数は平均18個/mmであった。
【0047】
(比較例4)
比較例4では、直径50mm、深さ50mmのイリジウム製るつぼに、原料として純度99.99質量%以上の酸化アルミニウム208gと、純度99.99%以上の酸化チタン1.6gとを充填した。このこと以外は、実施例1と同様の方法で比較例4のサファイア単結晶を作製し、その組成を確認した(下記表1参照)。比較例4のサンプルの泡欠陥を評価したところ、泡欠陥の数は平均358個/mmであった。
【0048】
(比較例5)
比較例5では、直径50mm、深さ50mmのイリジウム製るつぼに、原料として純度99.99質量%以上の酸化アルミニウム208gと、純度99.99%以上のフッ化アルミニウム3.460gとを充填した。このこと以外は、実施例1と同様の方法で比較例5のサファイア単結晶を作製し、その組成を確認した(下記表1参照)。比較例5の泡欠陥の数は平均21個/mmであった。
【0049】
以上の結果を表1にまとめた。
【0050】
【表1】

【符号の説明】
【0051】
1・・・単結晶インゴット、2・・・種結晶、10・・・引き上げ装置、12・・・引き上げ棒、13・・・ヒータ、14・・・高周波誘導加熱炉(2ゾーン加熱育成炉)、15・・・高周波誘導コイル、16・・・るつぼ支持棒、17・・・るつぼ、18・・・溶融液(融液)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される酸化物単結晶。
Al(2−x)Ti(3−y) (1)
(式中、0<x<2、かつ、0<y<3である。)
【請求項2】
xが2×10−6≦x≦2×10−4である、請求項1に記載の酸化物単結晶。
【請求項3】
yが3×10−6≦y≦3×10−4である、請求項1又は2に記載の酸化物単結晶。

【図1】
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