説明

酸化物超伝導体チューブと超伝導接合部との接合方法

本発明は、酸化物超伝導体チューブと超伝導接合部とを接合する方法を提供する。本方法は部分的前駆超伝導物質を用意する工程を含み、その後、部分的前駆超伝導物質をチューブ状に冷間静水圧し、さらに銀層の積層が成されたチューブの両端に溝を設ける。さらに、接合される一組のチューブの両端の一方を合わせ配置する工程を含む。両チューブに共通の銀軸受に対して両チューブの合わせ配置端面に衝撃を与え、有機調合体における、同じ部分的前駆超伝導物質ペーストで被覆する。接合部を形成するために、この被覆端面同士を近接させて加圧する。この接合部及びチューブ端部は、穿孔銀箔にて被覆され、さらに銀層が積層される。最後に、この接合部及び一組のチューブの組立体を大気中にて100〜150時間、830〜850℃にて加熱処理を行う。この方法により形成された接合部は、高温超伝導チューブの輸送電流のうち80%以上を安定して流す事ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物超伝導体チューブと超伝導接合部との接合方法に関する。本発明は特に、酸化物超伝導体(Bi,Pb)SrCaCu10+xチューブと、損失を最小限にして輸送電流を安定して流す超伝導接合部との接合方法に関する。本工程を使用することにより、強力な超伝導接合部が付加された長尺の導電体は、超伝導伝送ケーブル、電流リード、医療MRIシステム、直流超伝導保存システムのような用途に特に応用できる。
【背景技術】
【0002】
酸化物超伝導体チューブを、特に大規模または複雑な系統に幅広く応用することを妨げる主な問題の一つは、例えば、超伝導送電ケーブル、バスバー、核磁気共鳴法(NMR)、医療診断器具(例えば核磁気共鳴画像法(MRI))、超伝導磁気エネルギー貯蔵法(SMES)、磁界における超伝導発電単結晶の成長法、超伝導磁石を冷却する冷却器、核分裂炉マグネット、アクセラレーター、磁気分離装置、大規模装置、電流リード等において、10A以上の電流を送電する必要があるのみならず、導電体全体の長さに沿って安定した超伝導性を有する長尺の導電体とすることが必要である、ということである。また、単一部品で全ての系統を組み立てることは不可能である。従って、安定化されかつ大電流を確保できる状態となる十分な長さの接合超伝導体を形成するために、超伝導体を互いに(端部と端部にて)接合することがしばしば必要となる。したがって、ここで非常に重要なのは、超伝導体間の接合は、ある用途に有用なものにするにはそれ自体が元々短い長さを有していた超伝導体と同じ超伝導特性を有さなければならないことである。
【0003】
また、動作中に熱/機械的衝撃により超伝導体材料の一部が損傷を受けた場合、その部分を除去および交換する技術もまた必要である。交換された新しい部分と、元々の部品の内で損傷を受けていない部分との接触は超伝導でなければならず、さらには元々の部分および交換部分自体とが同じ電流容量を有さねばならない。
【0004】
NbTiおよびNbSnのような金属超伝導体用超伝導接合部を形成する公知技術は、電線形態である。この金属超伝導体に対して酸化物超伝導体においては、不安定な性質、低導電性および低破断耐性等により特に問題がある。
【0005】
酸化物超伝導体同士の接合を形成するために、オーバーラッピングヒュージング、レーザー溶接、はんだ結合、焼結、ろう付け、ラップ接合、バット接合、超音波接合、ラミネート接合等の、金属超伝導体に用いられる類似の方法が開発されている。しかしながら、単一および複数フィラメントのAgクラッド電線/テープにも上記内容は関係する[Japan.J.Appl.Physics,vol.34,p.4770(1995); U.S.Patent,6,133,814; U.S.Patent,6,159,905,U.S.Patent,6,753,748,Appl.Supercond,vol3,p207(1995); Supercond.Sci.Technol.Vol,13,p.237(2000); U.S.Patent,6,194,226]。一方、バー、ディスク、ロッド等のようなバルク形状において、酸素バルク超伝導体を接合する方法は未だ殆ど提案されていない。ただ現在、この点について着目され始めている。
【0006】
日本特許公報平1(1989)−24379および日本特許公報平1(1989)−17384が参考文献としてあげられる。これらの文献には、固体状態反応を通して接合部を形成することが記載されている。これら両方の方法だと、十分な臨界電流密度(J
を確保することが難しい不規則配向および低密度の接合部を生じることになる。
【0007】
別の参考文献:Journal of the Electrochemical Society,volume136,Number2,pp582−583(February 1989),Y.Tzengは改良方法を開示している。この改良方法においては、接合部の廃熱を連続的に回収しながら、前駆超伝導バルクYBaCu7−xの2つの棒状部端面を重ね合わせ、加熱して共に溶融および解け合わす自己溶接技術を用いる溶融を通して、接合部が形成される。元々のコンポーネントバーとほぼ同じJc(臨界電流密度)を有する接合部が、この方法により製造されうることが教示されている。
【0008】
米国特許5,244,876には、前駆銀被覆BiSrCaCu8+X超伝導ロッド/ディスクを接合する類似の自己溶接技術が、先の例と同様に用いられている。重ね合わせのかわりに、互いに近接した2つの超伝導体の端面に対して間隔を設け、そしてこの超伝導ロッドの溶融物質と同じ物質にてその間隔を充填しながら配置し、その後、接合部の廃熱を回収することが開示されている。
【0009】
上記の2つの公知の接合方法は、以下の問題を含んでいる。接合部は前駆超伝導相を溶融させることにより形成され、損傷を受けた超伝導相を十分回復させることは難しいため、この接合は一般的に抵抗を有する。
【0010】
Liらの参考文献:J.Less−Common Met.Vol−164/165,p.660(1990)は、LPG−酸素炎を用いることにより、前駆Biベースの超伝導バーの接合のための溶接方法を開示している。溶接の間、試料の頂部がすぐに融解して隙間が生じ、融解と同時に発生する微細な粒子が隙間を埋めていくことが教示されている。その際、熱処理後の超伝導接合の形成について報告されている。しかしながらこの方法の欠点は、接合部がより大きくなるので、接合部が機械的に弱化してしまう点である。
【0011】
J.Caiらの参考文献:Supercond.Sci.Technol.volume 5,p599(1992)は、軸圧縮負荷の下で、(Bi−Pb)−2223の前駆超伝導バーの端部同士を接合するためのマイクロ波技術を開示している。その際、機械的に強固な接合部について報告されている。しかしながら、この方法の欠点は、接合部の超伝導特性について開示していない点である。
【0012】
米国特許5,116,810と5,321,003はJoshiらによるものであり、類似の方法を使用しているが、前駆超伝導コンポーネント間の接合部形成に対して、この特許における接合部は、金属前駆体希土類の成形品間に設けられている。そして、接合部は超伝導相を形成するために連続的に加熱され、局所的に溶接される。超伝導相の形成に先立って形成される接合部は、実質的には非抵抗の性質となる。しかしながら、超伝導状態のコンポーネントよりもむしろ、基本となる前駆体に対してそのような接合操作を行うという不具合がしばしば生じる。
【0013】
MutohらのJapanese J.Apply.Phys.Vol.29,No.8,pL1432(Aug.1990)は、溶融状態から引き上げられた(Bi−Pb)−2223のタブレットを使用する方法を開示している。非焼鈍、焼鈍、非焼鈍挿入板を用いた焼鈍により、そのような1組のタブレットの間に接合部が形成される。一方のタブレットの先端部にもう一方のタブレットの先端部を並べて、2つのタブレットは一列に配列され、種々の温度および圧力でホットプレスされる。その際、焼鈍開始溶融(すなわち第2のケース)が使用される場合、良好な超伝導接合のみが得られることについて報告されている。しかしながら、この方法の欠点は、接合部と同様にバルクにおいても不純物相の不可避的不純物が存在することにあり、それによって低品質の最終製品を生み出すこと
になる。
【0014】
別の参考文献:Jap.J.Appl.Phys.Vol.29,pL875(1990)では、上記の引例で使用されているものと同じホットプレス法を使用しているが、厚膜接合となると話が違ってくる。つまり、本研究に従えば、許容可能な接合は、ホットプレス工程用前駆物質よりもむしろ完全に反応済みの物質を用いることによりはじめて可能となる。しかしながら、この方法の欠点は、強度の低い超伝導接合部が形成されることである。
【0015】
日本特許公報平3(1991)−242384および日本特許公報平3(1991)−254473に記載されている方法においては、圧縮かつ配向された材料を接合部に設けるようにBi−2212の前駆超伝導体の部分的溶融固化(すなわち溶融状態からの結晶化)が使用され、超伝導接合部を形成している。この溶融状態からの結晶化法を行うために、接合体の融点よりも低い融点を有する介在物を挿入するという方法が用いられる。前者の特許に記載の方法によれば、この介在物は、接合部に充填される粉末状の前駆体または焼成物であり、次に、溶融状態から結晶化するための熱処理を行う。一方この方法においては、上記方法と比較して接合部は大きく配向しかつ圧縮されている。しかしながらこの方法には、超伝導体と介在物との融解温度が異なるため、接合されるべき超伝導体および介在物の熱処理(約10℃まで)における相違に起因する欠点が存在する。そのため、大変な困難を伴ってようやく良好な接合を得ることができる。さらに、介在物のみが融解する場合、液相における結晶成長では、接合すべき超伝導体をほとんど接合できない。
【0016】
後者の特許で開示されている方法においては、介在物はBi−2212相を含む焼成粉末である。この方法の欠点は、加熱処理する際にBi−2212相に対する焼成物を混ぜる比率を変化させる結果、融解温度に変化が生じ、それによって接合部の結晶配向がコンポーネント部の内部における配向と比較して悪くなっている。その結果、接合部のIcが低下することになる。
【0017】
上述の方法を改良したものが、米国特許6,258,754に記載されている。そこには、2つの別々の単体の前駆超伝導YBaCu7−X領域の間に挟まれた接合YbBaCu7−Y粉末および接合部との総組立体が熱処理され、界面でのみ融解が起こり、接合物質がエピタキシャル的に成長することが記載されている。その際、超伝導体バーは強固に連結されることが報告されている。リング(長方形または正方形)はまた、一方の超伝導体をもう一方の超伝導体の上に載せることにより共に接合できる。しかしながら、この方法には欠点がある。それは、接合物質として粉末を使用する場合、接合物質の融解および固化の途中であっても空気が逃げられないため、接合部に細孔のみならず不純物の分晶が形成されてしまうという点である。
【0018】
上述の特許における接合材料としてYbBaCu7−Y粉末を使用する際に閉じこめられる空気に起因する問題を解消するために、米国特許7,001,870においてIidaらは、2つの焼結YbBaCu7−Yブロックの間に挿入したYbBaCu7−Y焼結圧縮材料を使用している。この焼結接合材料は融解され、その後、接合層を形成するように固化され、それによってYbBaCu7−X長方形ブロックを接合する。確かにこの焼結材料は比較的良好な接合部を形成できるが、この方法には以下のような欠点がある。すなわち、YbBaCu7−Xブロックの再結晶化点や、接合材料の結晶構造などがわずかに異なっていたとしても、強固な超伝導接合を形成することができないという点である。
【0019】
独自の利点および限定を有する上述の方法全ては、電線/テープ、Ag被覆ロッド、リボン、シート、バー、ブロックのような固形のバルク体の接合に関し、また、長方形また
は正方形断面を有し、円形断面を有さないリング、容易に接合するため界面角度を10°を下回るようにするために、そしてミリメーター範囲にて小さなサイズの試料を積み重ねるための中空形のバルク体の接合に関する。つまり、チューブ状の超伝導体の自己磁界により固形ロッド伝導体に比べてIc値があまり制限されなくなっていることに起因して現在急速に技術発展しているチューブ状の超伝導体のようには、大きなサイズかつ断面円形の中空体を接合する方法について注目されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の主目的は、中空のチューブ状形状(チューブ)において酸化物超伝導体バルクを超伝導接合部と接合する方法を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、高い臨界温度(Tc)、高い臨界電流密度(Jc)、低い毒性、そして希土類を不要とするという観点から特に好ましく、短縮すると(Bi,Pb)−2223物質と記載される(Bi,Pb)SrCaCu10+xからなる酸化物超伝導体チューブを接合するための超伝導接合部を提供することである。
【0022】
また、本発明の別の目的は、部分的に前駆体である超伝導粉末を使用することにより、(Bi,Pb)−2223を接合する方法を提供することである。
【0023】
また、本発明の別の目的は、噴霧乾燥粉末を加熱することにより、焼成超伝導物質を使用することである。
【0024】
また、本発明の別の目的は、噴霧乾燥法を用いることにより成分原料溶液を噴霧乾燥することにより得られる噴霧乾燥粉末の使用方法を提供することである。
【0025】
また、本発明の別の目的は、チューブ物質の端部を互いに接触させて配置する方法を提供することである。
【0026】
また、本発明の別の目的は、臨界電流(Ic)の低下が10%以下である超伝導接合部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
従って本発明は、
i)Bi,Pb,Sr,CaおよびCuの硝酸塩水溶液を各々用意し、前記溶液をAgと混合して単一の溶液を得る工程と、
ii)工程(i)で得られた生成硝酸塩水溶液混合物を噴霧乾燥し、噴霧乾燥粉末を得る工程と、
iii)工程(ii)で得られた噴霧乾燥粉末を焼成した後、続いての粉砕および攪拌を行
い、
同質の焼成粉末を得る工程と、
iv)工程(iii)で得られた焼成粉末を冷間静水圧して、約500mm以下の長
さ、150mm以下の外径および2〜10mmの範囲の壁厚を有する大サイズチューブとする工程と、
v)工程(iv)で得られた冷間静水圧チューブを焼結し、前記焼結酸化物超伝導体チューブを粉末状に粉砕し、攪拌することにより、同質の、部分的前駆超伝導相粉末を得る工程と、
vi)工程(v)の部分的前駆超伝導酸化粉末を冷間静水圧して種々のサイズのチューブとする工程と、
vii)工程(vi)のチューブの両端に溝を形成し、前記溝に金属銀層を積層させ、一組
の前記チューブの両端面のうちの一つを前記チューブ上に合わせ配置し、一組のチューブの接触用端部の内部に銀軸受を挿入することによって互いを近接させるように一組のチューブを配置し、さらに前記合わせ配置両端面に介在物ペーストを設ける工程と、
viii)前記被覆端面を物理的に接触させ、穿孔銀箔で前記物理的接合部を覆い、さらに金属噴霧銃にて銀層を積層する工程と、
ix)前記接合部と前記一組のチューブとの前記組み合わせを、大気中830℃〜850℃の温度範囲で100〜150時間加熱し、一組のチューブ間の超伝導接合部を得る工程と、
を有する、酸化物超伝導体チューブを超伝導接合部と接合する方法を提供する。
本発明の実施の形態において使用される酸化物超伝導体チューブは、122〜320mmの範囲の長さの一組の中空筒状チューブである。
また、他の実施の形態において使用される酸化物超伝導体チューブの壁厚は、1〜3mmの範囲である。
また、他の実施の形態において使用される酸化物超伝導体チューブの外径は、10〜32mmの範囲である。
また、他の実施の形態においては、Bi,Pb,Sr,Ca,Cuおよびこれらに加えられたAgのモル比は、1.84:0.35:1.9:2.05:3.05:1.2である。
また、他の実施の形態において使用される酸化物超伝導体物質は、Agが加えられた(Bi,Pb)SrCaCu10+xである。
また、他の実施の形態において、超伝導接合部は、酸化物超伝導体チューブ単体の臨界電流の70〜90%の臨界電流を有している。
また、他の実施の形態において、超伝導接合部は、酸化物超伝導体チューブと同じ物質を含む。
また、他の実施の形態において、酸化物超伝導体チューブの接合に用いられる粉末物質は、部分的前駆超伝導粉末である。
また、他の実施の形態において用いられる介在/接合物質は、イソアミラセテートおよび魚油における部分的前駆超伝導粉末ペーストである。
また、他の実施の形態において用いられる接合物質は、ポリビニルブチアール(結合剤)、シクロヘキサノン(溶媒)および魚油(分散剤)における部分的前駆超伝導粉末ペーストである。
また、他の実施の形態において用いられる接合物質は、空気乾燥銀塗料における部分的前駆超伝導粉末ペーストである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、中空のチューブ状形状(チューブ)において酸化物超伝導体バルクを超伝導接合部と接合する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】所望の超伝導相:(Bi,Pb)SrCaCu10+x[(Bi,Pb)−2223]および他の相:BiSrCaCu8+x[Bi−2212] CaPbO そして2次相としてのCuOの存在を表す、部分的前駆超伝導物質の粉末のX線回折パターンを示す図である。
【図2】本発明における、異なる寸法を有する一組のチューブ間の接合部を示す図であり、符号1は酸化物超伝導体チューブ、符号2は溝、符号3は銀層、符号4は合わせ配置端面、符号5は銀軸受、符号6は介在物ペースト、符号7は穿孔銀箔、そして符号8は銀層を示す。
【図3】所望の超伝導相:(Bi,Pb)SrCaCu10+x[(Bi,Pb)−2223]の存在を表す、図2のコンポーネントチューブのX線回折パターンを示す図である。
【図4】一方では超伝導体単体を通じて電圧と電流との関係を、もう一方では本発明の方法による超伝導接合部を通じて電圧と電流との関係を、グラフを用いて示す図である。
【図5】臨界電流(Ic)を得るために図4で表された電圧と電流を測定するための様子を概略的に示す図である。
【図6】一方では超伝導体単体の定抵抗を測定する様子を、もう一方では本発明の方法による超伝導接合部の定抵抗を測定する様子を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明において、特に、(Bi,Pb)SrCaCu10+x[(Bi,Pb)−2223]についての一組の酸化物超伝導体チューブを接合する方法を開示する。ここで前記接合体は、両端を銀金属接触したチューブ状の電流リードである。より長尺の接合リードを形成するために、この接合方法は、Ag添加高温超伝導体(Bi,Pb)SrCaCu10+xの開始粉末を、中間焼成を用いた噴霧乾燥法により用意する工程を含んでいる。連続焼結を伴いながら焼成粉末を冷間静水圧してチューブ状にした後、粉砕および攪拌が行われ、それにより同質の部分的前駆超伝導粉末が得られた。その後、部分的前駆超伝導粉末物質を冷間静水圧する。その一組のチューブの両端面のうちの一方を合わせ配置した。合わせ配置端面が互いに接触するように銀軸受端部に向けてチューブ長手方向端部各々に衝撃を加えた。これらの端部は、接合部が形成される部分である。前記部分的前駆超伝導粉末と同じ物質のペーストを前記合わせ配置面に設けた。この被覆端面は互いに接触するように配置され、穿孔銀箔で連続的に被覆され、噴霧銃により金属銀層が積層された。その後、この接触部と一組のチューブの組立体全体を大気中で共焼結させる最終工程が行われた。種々の寸法のチューブに対してこの接合が行われた。形成された接合は、各々のチューブの臨界電流に比べて、少なくとも90%以上の臨界電流(Ic)を有していた。また、この接合によって、自己磁界中において77Kで、500Ampより大きな連続電流を流すことができた。接合の接触抵抗は、77Kで少なくとも10−6〜10−7μΩ以上である。
【0031】
本発明の特徴において、開始噴霧乾燥の焼成は、大気中800℃±10℃、1時間オーダーのときに効果があり、焼結用前駆粉末が得られる。
【0032】
本発明の別の特徴において、焼成粉末を冷間静水圧して大きなサイズのチューブにすることは、圧力300MPaにて効果がある。
【0033】
また、本発明の別の特徴において、冷間静水圧焼成粉末から得られるチューブのサイズは、430mmオーダーの長さ、50mmオーダーの外径、2〜3mmの範囲の壁厚である。
【0034】
また、本発明の別の特徴において、第1の焼結酸化物超伝導体チューブを粉砕して粉末にし、攪拌することは、公知の方法を用いることにより効果を発揮する。
【0035】
また、本発明の別の特徴において、第1の焼結チューブ粉末(以降、部分的前駆超伝導粉末物質という)を冷間静水圧してチューブにすることは、圧力400MPaにて効果がある。
【0036】
また、本発明の別の特徴において、有機調合体は、ポリビニルブチアール(結合剤)、シクロヘキサノン(溶媒)および魚油(分散剤)からなる。
【0037】
また、本発明の別の特徴において、ペーストにおける前駆超伝導粉末物質の重量は4gmsから8gmsである。
【0038】
また、本発明の別の特徴において、ペーストにおけるポリビニルブチアールの量は0.4gmsから1.2gmsである。
【0039】
また、本発明の別の特徴において、ペーストにおけるシクロヘキサノンの量は2C.C.から5C.C.である。
【0040】
また、本発明の別の特徴において、部分的前駆超伝導粉末物質のペーストは、質量比10:1の銀ペーストにおいて形成されてもよい。
【0041】
また、本発明の別の特徴において、有機調合体は、部分的前駆粉末物質における、3C.C.から7C.C.、5gmsから7gmsの量の範囲のイソアミラセテートであってもよい。
【0042】
本発明は、磁気シールド、限流器、電流リード等のような種々の用途に望まれる高い電送容量を有する、強固に接合された、種々のサイズのチューブを開発するのに利用可能な技術を提示する。この接合により、自己磁界における77Kにて500Aを超えた連続伝送電流を流すことが可能となる。本願発明は、超伝導性を引き出すことが可能となりかつ中空の超伝導体間の接合部を提供するため、上記の方法は酸化物超伝導体コンポーネントを接合する新規の方法である。
【0043】
本願発明の新規性は、500Aを超える容量を有する中空酸化物超伝導体を製造する工程にある。この部分的前駆超伝導体を使用すること、および、本明細書において上述にて詳述した単純な工程によって、同じ物質に対して有機調合体を加えたペーストをこれらの超伝導体の端面に設けることは、非自明な進歩性を有する。
【0044】
この接合技術は、例えば超伝導伝送ケーブル、バスバー、長尺導体、永久電流スイッチ装置、核磁気共鳴システム、医療MRIシステム、超伝導力保存システム、直流超伝導保存システム、磁気分離装置、単結晶引き上げシステム、冷却超伝導磁気システムの冷却装置等の超伝導機器に広く応用可能であろう。また、例えば電源またはアクセラレーターなど他の従来の装置を超伝導コンポーネントと接続するのに長尺電流リードが必要になる高磁場システムにも広く応用可能であろう。
【0045】
図1は、接合体としてのチューブ形成用、および結合物質用部分的前駆粉末物質における、2次相:Bi−2212,CaPbOおよびCuO、に沿って設けられている所望の超伝導(Bi,Pb)−2223相の存在を示すX線回折グラフを示している。
【0046】
本発明に係る一組のチューブの間に接合部を設ける工程は、本願明細書添付図面における図2に示されている。ここでは、符号1が(Bi,Pb)SrCaCu10+xチューブであり、符号2は溝を示しており、符号3は銀層であり、符号4は合わせ配置面であり、符号5は銀軸受であり、符号6はペーストであり、符号7は穿孔銀箔であり、符号8は銀層である。
【0047】
図3は、本発明の方法に係る、図2のチューブ伝導体単体における所望の(Bi,Pb)−2223相の存在を示すX線回折グラフを示す。
【0048】
本発明の工程によって形成された前記部分的前駆粉末物質および図2のチューブ単体を各々の相に対して、CuKα線にてBruckerD−8粉末X線回折計を用いて測定した。
【0049】
図4(a)および(b)は、電圧と電流との間の関係を示し、(a)では超伝導体単体、(b)では本発明の方法によって形成された超伝導接合部についての関係を示している。臨界電流(Ic)は、1μV/cm基準を用いて決定した。
【0050】
超伝導チューブ単体(a)、および本願明細書にて上述のように記載された本発明の工程により形成される接合チューブ(b)の臨界電流(Ic)および電圧は、本願明細書添付図面の図5に記載されている4端子法により測定した。
チューブ超伝導体単体(a)および接合部(c)の接触抵抗は、本願明細書添付図面の図6に記載されている4端子法により測定した。これに対し、符号2で示された8端子が符号1で示される超伝導部に形成された。これらの端末全てを銀とした。2つの外部端末および2つの中間端末(電極部)を電流端末とした。中間電流端末の両側にある2つの内部端末を電圧端末とした。4プローブ法では、空気乾燥銀ペーストを使用して電流接触子に隣接した超伝導体に接続銅鉛が直接はんだ付けされた。測定精度は約±10%であった。測定は試料温度77K、ゼロ磁界(0T)で行われた。
図示によって以下の試料が挙げられるが、本発明の範囲を限定するために構成されるものではない。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
Bi,Pb,Sr,Ca,CuおよびAgのモル比が、1.84:0.35:1.91:2.05:3.05および1.2である各々の原料硝酸化粉末の重量を測定することにより、銀が添加された噴霧乾燥開始粉末を用意した。これらを再蒸留水に溶解した。この硝酸溶液を噴霧乾燥し、Agが一定量加えられた同質な開始粉末を得た。この噴霧乾燥粉末はすぐに、800℃に設定された電気炉にて大気中で1時間、焼成した。この焼成体は粉砕機にて粉砕・攪拌され、続いて圧力300MPaにて冷間静水圧によりすりつぶしてチューブ状とした。このチューブは430mmの長さ、50mmの外径、47mmの内径を有していた。その際、このチューブを830℃で80時間、大気中にて焼結した。その後、粉砕・攪拌し、部分的前駆超伝導粉末物質を得た。この粉末は主として超伝導Bi−2212/Bi−2223相および非超伝導:CaPbO、CuO相(すなわち、図1に示されるX線回折パターンによって表されるような所望のBi−2223超伝導相へと部分的に前駆形成されている)により形成されており、図2に示すように、この粉末は冷間静水圧により長さ122mm、外径12.4mmおよび壁厚1.2mmのチューブ(1)へと形成された。
【0052】
これらの部分的前駆超伝導チューブの両端に、長さ15mm(2)の溝が形成された。その後、銀金属層(3)を積層した。図2に示されるように新生面同士を向かい合わせるように、この部分的前駆超伝導チューブ(1)の端面を合わせ配置した。L=15mm、O.D.=9.9mmおよびI.D.=7.9mmの大きさの銀軸受(5)を、チューブ端部の内部に挿入することによって、この一組のチューブに衝撃が加えられた。これによって、図2に示されるように、隙間を設けつつも超伝導体(1)の合わせ配置表面(4)を近接させた。上述と同じ部分的前駆超伝導粉末5gmsに対してポリビニルブチアール(結合剤)0.6gms、シクロヘキサン(溶媒)3C.C.および魚油(分散剤)1滴を加えたペースト(6)が、上述の合わせ配置表面に設けられた。これらの一組のチューブを接触させ、被覆端面を互いに接触させた。
【0053】
続いて、穿孔銀箔(7)でこの物理的接合部を被覆し、続いて図2に示されるように金属銀噴霧積層(8)を形成した。
【0054】
最後に、一組の部分的前駆超伝導チューブと接合部との組立体を電気マッフル炉にて835℃で100時間、大気中にて焼結し、所望のBi−2223相を有する一組の接合体
を得た。Bi−2223相が形成されていることを、図3のX線回折パターンにて確認した。ゼロ磁界(0T)下での液体窒素温度(77K)にて、本チューブの接合部は接触抵抗(ρc)0.42μΩ・cmとなった。この値は、0T・77Kの下でのチューブ単体の接触抵抗(0.035μΩ・cm)よりも高い値であった。その際、一組のチューブの接合により、215Aの臨界電流が発現した。この電流は、0T・77Kの下でのコンポーネントチューブの臨界電流(300A)よりもはるかに小さかった。そして、接合チューブの臨界電流保持率は71%であった。表1に示される結果が得られた。
【0055】
(実施例2)
部分的前駆超伝導相粉末物質を、実施例1と同様に用意した。
【0056】
この粉末は主として超伝導Bi−2212/Bi−2223相および非超伝導:CaPbO、CuO相(すなわち、図1に示されるX線回折パターンによって表されるような所望のBi−2223超伝導相へと部分的に前駆形成されている)により形成されており、図2に示すように、この粉末は400MPaの冷間静水圧により長さ122mm、外径12.4mmおよび壁厚1.2mmの4つのチューブ(1)へと形成された。
【0057】
これらの部分的前駆超伝導チューブの両端に、長さ15mm(2)の溝が形成された。その後、銀金属層(3)を積層した。図2に示されるように新生面同士を向かい合わせるように、この部分的前駆超伝導チューブ(1)の端面を合わせ配置した。L=15mm、O.D.=9.9mmおよびI.D.=7.9mmの大きさの銀軸受(5)を、チューブ端部の内部に挿入することによって、この一組のチューブに衝撃が加えられた。これによって、図2に示されるように、隙間を設けつつも超伝導体(1)の合わせ配置表面(4)を近接させた。上述と同じ部分的前駆超伝導粉末5gmsに対してポリビニルブチアール(結合剤)0.8gms、シクロヘキサン(溶媒)4C.C.および魚油(分散剤)2滴を加えたペースト(6)が、上述の合わせ配置表面に設けられた。すなわち被覆端面を互いに接触させるように、これらの一組のチューブを接触させた。
【0058】
続いて、穿孔銀箔(7)でこの物理的接合部を被覆し、続いて図2に示されるように金属銀噴霧積層(8)を形成した。
【0059】
最後に、一組の部分的変形超伝導チューブと接合部との組立体を電気マッフル炉にて835℃で100時間、大気中にて焼結し、所望のBi−2223相を有する一組の接合体を得た。Bi−2223相が形成されていることを、図3のX線回折パターンにて確認した。0Tでの77Kにて、本チューブの接合部は接触抵抗(ρc)0.31μΩ・cmとなった。この値は、0T・77Kの下でのチューブ単体の接触抵抗(0.035μΩ・cm)よりも高い値であった。その際、一組のチューブの接合により、237Aの臨界電流が発現した。この電流は、0T・77Kの下でのコンポーネントチューブの臨界電流(300A)よりもはるかに小さかった。そして、接合チューブの臨界電流保持率は79%であった。表1に示される結果が得られた。
【0060】
(実施例3)
部分的前駆超伝導相粉末物質を、実施例1と同様に用意した。
【0061】
この粉末は主として超伝導Bi−2212/Bi−2223相および非超伝導:CaPbO、CuO相(すなわち、図1に示されるX線回折パターンによって表されるような所望のBi−2223超伝導相へと部分的に前駆形成されている)により形成されており、図2に示すように、この粉末は400MPaの冷間静水圧により長さ122mm、外径12.4mmおよび壁厚1.3mmの4つのチューブ(1)へと形成された。
【0062】
これらの部分的前駆超伝導チューブの両端に、長さ15mm(2)の溝が形成された。その後、銀金属層(3)を積層した。図2に示されるように新生面同士を向かい合わせるように、この部分的前駆超伝導チューブ(1)の端面を合わせ配置した。L=15mm、O.D.=9.9mmおよびI.D.=7.9mmの大きさの銀軸受(5)を、チューブ端部の内部に挿入することによって、この一組のチューブに衝撃が加えられた。これによって、図2に示されるように、隙間を設けつつも超伝導体(1)の合わせ配置表面(4)を近接させた。上述と同じ部分的前駆超伝導粉末5gmsに対してポリビニルブチアール(結合剤)1.0gms、シクロヘキサノン(溶媒)5C.C.および魚油(分散剤)3滴を加えたペースト(6)が、上述の合わせ配置表面に設けられた。すなわち被覆端面を互いに接触させるように、これらの一組のチューブを接触させた。
【0063】
続いて、穿孔銀箔(7)でこの物理的接合部を被覆し、続いて図2に示されるように金属銀噴霧積層(8)を形成した。
【0064】
最後に、一組の部分的変形超伝導チューブと接合部との組立体を電気マッフル炉にて835℃で100時間、大気中にて焼結し、所望のBi−2223相を有する一組の接合体を得た。Bi−2223相が形成されていることを、図3のX線回折パターンにて確認した。0Tでの77Kにて、本チューブの接合部は接触抵抗0.32μΩ・cmとなった。この値は、0T・77Kの下でのチューブ単体の接触抵抗(0.035μΩ・cm)よりも高い値であった。その際、一組のチューブの接合により、227Aの臨界電流が発現した。この電流は、0T・77Kの下でのコンポーネントチューブの臨界電流(300A)よりもはるかに小さかった。そして、接合チューブの臨界電流保持率は75%であった。表1に示される結果が得られた。
【0065】
(実施例4)
部分的前駆超伝導相粉末物質を、実施例1と同様に用意した。
【0066】
この粉末は主として超伝導Bi−2212/Bi−2223相および非超伝導:CaPbO、CuO相(すなわち、図1に示されるX線回折パターンによって表されるような所望のBi−2223超伝導相へと部分的に前駆形成されている)により形成されており、図2に示すように、この粉末は400MPaの冷間静水圧により長さ122mm、外径12.4mmおよび壁厚1.2mmの4つのチューブ(1)へと形成された。
【0067】
これらの部分的前駆超伝導チューブの両端に、長さ15mm(2)の溝が形成された。その後、銀金属層(3)を積層した。図2に示されるように新生面同士を向かい合わせるように、この部分的前駆超伝導チューブ(1)の端面を合わせ配置した。L=15mm、O.D.=9.9mmおよびI.D.=7.9mmの大きさの銀軸受(5)を、チューブ端部の内部に挿入することによって、この一組のチューブに衝撃が加えられた。これによって、図2に示されるように、隙間を設けつつも超伝導体(1)の合わせ配置表面(4)を近接させた。上述と同じ部分的前駆超伝導粉末5gmsに対してイソアミラセテート4C.C.を加えたペースト(6)が、上述の合わせ配置表面に設けられた。すなわち被覆端面を互いに接触させるように、これらの一組のチューブを接触させた。
【0068】
続いて、穿孔銀箔(7)でこの物理的接合部を被覆し、続いて図2に示されるように金属銀噴霧積層(8)を形成した。
【0069】
最後に、一組の部分的変形超伝導チューブと接合部との組立体を電気マッフル炉にて835℃で100時間、大気中にて焼結し、所望のBi−2223相を有する一組の接合体を得た。Bi−2223相が形成されていることを、図3のX線回折パターンにて確認した。0Tでの77Kにて、本チューブの接合部は接触抵抗0.30μΩ・cmとなった
。この値は、0T・77Kの下でのチューブ単体の接触抵抗(0.035μΩ・cm)よりも高い値であった。その際、一組のチューブの接合により、258Aの臨界電流が発現した。この電流は、0T・77Kの下でのコンポーネントチューブの臨界電流(300A)よりもはるかに小さかった。そして、接合チューブの臨界電流保持率は86%であった。表1に示される結果が得られた。
【0070】
(実施例5)
部分的前駆超伝導相粉末物質を、実施例1と同様に用意した。
【0071】
この粉末は主として超伝導Bi−2212/Bi−2223相および非超伝導:CaPbO、CuO相(すなわち、図1に示されるX線回折パターンによって表されるような所望のBi−2223超伝導相へと部分的に前駆形成されている)により形成されており、図2に示すように、この粉末は400MPaの冷間静水圧により長さ122mm、外径12.4mmおよび壁厚1.2mmの4つのチューブ(1)へと形成された。
【0072】
これらの部分的前駆超伝導チューブの両端に、長さ15mm(2)の溝が形成された。その後、銀金属層(3)を積層した。図2に示されるように新生面同士を向かい合わせるように、この部分的前駆超伝導チューブ(1)の端面を合わせ配置した。L=15mm、O.D.=9.9mmおよびI.D.=7.9mmの大きさの銀軸受(5)を、チューブ端部の内部に挿入することによって、この一組のチューブに衝撃が加えられた。これによって、図2に示されるように、隙間を設けつつも超伝導体(1)の合わせ配置表面(4)を近接させた。上述と同じ部分的前駆超伝導粉末5gmsに対してイソアミラセテート5C.C.を加えたペースト(6)が、上述の合わせ配置表面に設けられた。すなわち被覆端面を互いに接触させるように、これらの一組のチューブを接触させた。
【0073】
続いて、穿孔銀箔(7)でこの物理的接合部を被覆し、続いて図2に示されるように金属銀噴霧積層(8)を形成した。
【0074】
最後に、一組の部分的変形超伝導チューブと接合部との組立体を電気マッフル炉にて835℃で100時間、大気中にて焼結し、所望のBi−2223相を有する一組の接合体を得た。Bi−2223相が形成されていることを、図3のX線回折パターンにて確認した。0Tでの77Kにて、本チューブの接合部は接触抵抗0.26μΩ・cmとなった。この値は、0T・77Kの下でのチューブ単体の接触抵抗(0.035μΩ・cm)よりも高い値であった。その際、一組のチューブの接合により、276Aの臨界電流が発現した。この電流は、0T・77Kの下でのコンポーネントチューブの臨界電流(300A)よりもはるかに小さかった。そして、接合チューブの臨界電流保持率は90%であった。表1に示される結果が得られた。
【0075】
(実施例6)
部分的前駆超伝導相粉末物質を、実施例1と同様に用意した。
【0076】
この粉末は主として超伝導Bi−2212/Bi−2223相および非超伝導:CaPbO、CuO相(すなわち、図1に示されるX線回折パターンによって表されるような所望のBi−2223超伝導相へと部分的に前駆形成されている)により形成されており、図2に示すように、この粉末は400MPaの冷間静水圧により長さ122mm、外径12.4mmおよび壁厚1.2mmの4つのチューブ(1)へと形成された。
【0077】
これらの部分的前駆超伝導チューブの両端に、長さ15mm(2)の溝が形成された。その後、銀金属層(3)を積層した。図2に示されるように新生面同士を向かい合わせるように、この部分的前駆超伝導チューブ(1)の端面を合わせ配置した。L=15mm、
O.D.=9.5mmおよびI.D.=7.5mmの大きさの銀軸受(5)を、チューブ端部の内部に挿入することによって、この一組のチューブに衝撃が加えられた。これによって、図2に示されるように、隙間を設けつつも超伝導体(1)の合わせ配置表面(4)を近接させた。上述と同じ部分的前駆超伝導粉末5gmsに対してイソアミラセテート6C.C.を加えたペースト(6)が、上述の合わせ配置表面に設けられた。すなわち被覆端面を互いに接触させるように、これらの一組のチューブを接触させた。
【0078】
続いて、穿孔銀箔(7)でこの物理的接合部を被覆し、続いて図2に示されるように金属銀噴霧積層(8)を形成した。
【0079】
最後に、一組の部分的変形超伝導チューブと接合部との組立体を電気マッフル炉にて835℃で100時間、大気中にて焼結し、所望のBi−2223相を有する一組の接合体を得た。Bi−2223相が形成されていることを、図3のX線回折パターンにて確認した。0Tでの77Kにて、本チューブの接合部は接触抵抗0.27μΩ・cmとなった。この値は、0T・77Kの下でのチューブ単体の接触抵抗(0.035μΩ・cm)よりも高い値であった。その際、一組のチューブの接合により、261Aの臨界電流が発現した。この電流は、0T・77Kの下でのコンポーネントチューブの臨界電流(300A)よりも小さかった。そして、接合チューブの臨界電流保持率は87%であった。表1に示される結果が得られた。
【0080】
(実施例7)
部分的前駆超伝導相粉末物質を、実施例1と同様に用意した。
【0081】
この粉末は主として超伝導Bi−2212/Bi−2223相および非超伝導:CaPbO、CuO相(すなわち、図1に示されるX線回折パターンによって表されるような所望のBi−2223超伝導相へと部分的に前駆形成されている)により形成されており、図2に示すように、この粉末は400MPaの冷間静水圧により長さ122mm、外径12.4mmおよび壁厚1.2mmの4つのチューブ(1)へと形成された。
【0082】
これらの部分的前駆超伝導チューブの両端に、長さ15mm(2)の溝が形成された。その後、銀金属層(3)を積層した。図2に示されるように新生面同士を向かい合わせるように、この部分的前駆超伝導チューブ(1)の端面を合わせ配置した。L=15mm、O.D.=9.5mmおよびI.D.=7.5mmの大きさの銀軸受(5)を、チューブ端部の内部に挿入することによって、この一組のチューブに衝撃が加えられた。これによって、図2に示されるように、隙間を設けつつも超伝導体(1)の合わせ配置表面(4)を近接させた。大気乾燥銀ペーストにおける、上述と同じ部分的前駆超伝導粉末5gmsを含むペースト(6)が、上述の合わせ配置表面(4)に設けられた。すなわち被覆端面を互いに接触させるように、これらの一組のチューブを接触させた。
【0083】
続いて、穿孔銀箔(7)でこの物理的接合部を被覆し、続いて図2に示されるように金属銀噴霧積層(8)を形成した。
【0084】
最後に、一組の部分的変形超伝導チューブと接合部との組立体を電気マッフル炉にて835℃で100時間、大気中にて焼結し、所望のBi−2223相を有する一組の接合体を得た。Bi−2223相が形成されていることを、図3のX線回折パターンにて確認した。0Tでの77Kにて、本チューブの接合部は接触抵抗(ρc)0.33μΩ・cmとなった。この値は、0T・77Kの下でのチューブ単体の接触抵抗(0.035μΩ・cm)よりも高い値であった。その際、一組のチューブの接合により、240Aの臨界電流が発現した。この電流は、0T・77Kの下でのコンポーネントチューブの臨界電流(300A)よりも小さかった。そして、接合チューブの臨界電流保持率は80%であっ
た。表1に示される結果が得られた。
【0085】
(実施例8)
部分的前駆超伝導相粉末物質を、実施例1と同様に用意した。
【0086】
この粉末は主として超伝導Bi−2212/Bi−2223相および非超伝導:CaPbO、CuO相(すなわち、図1に示されるX線回折パターンによって表されるような所望のBi−2223超伝導相へと部分的に前駆形成されている)により形成されており、図2に示すように、この粉末は400MPaの冷間静水圧により長さ320mm、外径12.4mmおよび壁厚1.2mmの複数のチューブ(1)へと形成された。
【0087】
これらの部分的前駆超伝導チューブの両端に、長さ20mm(2)の溝が形成された。その後、銀金属層(3)を積層した。図2に示されるように新生面同士を向かい合わせるように、この部分的前駆超伝導チューブ(1)の端面を合わせ配置した。L=20mm、O.D.=9.9mmおよびI.D.=7.9mmの大きさの銀軸受(5)を、チューブ端部の内部に挿入することによって、この一組のチューブに衝撃が加えられた。これによって、図2に示されるように、隙間を設けつつも超伝導体(1)の合わせ配置表面(4)を近接させた。5C.C.イソアミラセテートにおける、上述と同じ部分的前駆超伝導粉末5gmsを含むペースト(6)が、上述の合わせ配置表面(4)に設けられた。すなわち被覆端面を互いに接触させるように、これらの一組のチューブを接触させた。
【0088】
続いて、穿孔銀箔(7)でこの物理的接合部を被覆し、続いて図2に示されるように金属銀噴霧積層(8)を形成した。
【0089】
最後に、一組の部分的変形超伝導チューブと接合部との組立体を電気マッフル炉にて835℃で100時間、大気中にて焼結し、所望のBi−2223相を有する一組の接合体を得た。Bi−2223相が形成されていることを、図3のX線回折パターンにて確認した。0Tでの77Kにて、本チューブの接合部は接触抵抗(ρc)0.26μΩ・cmとなった。この値は、0T・77Kの下でのチューブ単体の接触抵抗(0.035μΩ・cm)よりも高い値であった。その際、一組のチューブの接合により、272Aの臨界電流が発現した。この電流は、0T・77Kの下でのコンポーネントチューブの臨界電流(300A)よりも多少は小さかった。そして、接合チューブの臨界電流保持率は90%であった。表1に示される結果が得られた。
【0090】
(実施例9)
部分的前駆超伝導相粉末物質を、実施例1と同様に用意した。
【0091】
この粉末は主として超伝導Bi−2212/Bi−2223相および非超伝導:CaPbO、CuO相(すなわち、図1に示されるX線回折パターンによって表されるような所望のBi−2223超伝導相へと部分的に前駆形成されている)により形成されており、図2に示すように、この粉末は400MPaの冷間静水圧により長さ220mm、外径31.2mmおよび壁厚1.3mmの4つのチューブ(1)へと形成された。
【0092】
これらの部分的前駆超伝導チューブの両端に、長さ20mm(2)の溝が形成された。その後、銀金属層(3)を積層した。図2に示されるように新生面同士を向かい合わせるように、この部分的前駆超伝導チューブ(1)の端面を合わせ配置した。L=30mm、O.D.=28.55mmおよびI.D.=22.55mmの大きさの銀軸受(5)を、チューブ端部の内部に挿入することによって、この一組のチューブに衝撃が加えられた。これによって、図2に示されるように、隙間を設けつつも超伝導体(1)の合わせ配置表面(4)を近接させた。5C.C.イソアミラセテートにおける、上述と同じ部分的前駆
超伝導粉末5gmsを含むペースト(6)が、上述の合わせ配置表面(4)に設けられた。すなわち被覆端面を互いに接触させるように、これらの一組のチューブを接触させた。
【0093】
続いて、穿孔銀箔(7)でこの物理的接合部を被覆し、続いて図2に示されるように金属銀噴霧積層(8)を形成した。
【0094】
最後に、一組の部分的変形超伝導チューブと接合部との組立体を電気マッフル炉にて835℃で100時間、大気中にて焼結し、所望のBi−2223相を有する一組の接合体を得た。Bi−2223相が形成されていることを、図1のX線回折パターンにて確認した。0Tでの77Kにて、本チューブの接合部は接触抵抗(ρc)0.02μΩ・cmとなった。この値は、0T・77Kの下でのチューブ単体の接触抵抗(0.001μΩ・cm)よりも高い値であった。その際、一組のチューブの接合により、595Aの臨界電流が発現した。この電流は、0T・77Kの下でのコンポーネントチューブの臨界電流(650A)よりも多少は小さかった。そして、接合チューブの臨界電流保持率は91%であった。表1に示される結果が得られた。
【0095】
下記の表1は、上記の実施例から得られた対照データについて記載している。この対比データには、コンポーネントチューブの臨界電流、チューブ接合部の臨界電流および自己磁界、77Kにおける保持率が示されている。また下記の表1は、チューブ端部を近接させかつ有機溶媒における部分的前駆粉末のペーストで接合部を形成するために銀軸受を使用することが非自明的な進歩性を有するために結果として新規となった、部分的前駆中空チューブ間の超伝導接合にスポットをあてている。
【表1】

【0096】
本発明による利点は以下の通りである。
1.超伝導接合部を有する接合中空酸化チューブ超伝導体が得られる。
2.部分的前駆超伝導物質を使用することにより、最終熱処理の間に、所望の超伝導相(Bi−2223)を純度高く形成することができる。
3.接合物質と同様にチューブ本体用にその部分的前駆超伝導物質を使用すると、同じ熱処理温度のおかげで、接合部とコンポーネント部が異なる超伝導性を有するのを防ぐことができる。これにより、十分なIcを有する超伝導接合部を形成することができる。
4.有機調合体にて混合した部分的前駆超伝導物質粉末から形成されたペースト状の接合物質を使用することにより、接合される超伝導体の端面に、超伝導微粒子を同質かつ密に設けることができ、拡散結合接合を容易にする。
5.所望の超伝導相を全て回収することが難しい溶融技術を使用する際、高温であることが必要でなくなる。
【符号の説明】
【0097】
1 部分的前駆超伝導チューブ
2 溝
3 銀金属層
4 合わせ配置表面
5 銀軸受
6 ペースト
7 穿孔銀箔
8 金属銀噴霧積層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)Bi,Pb,Sr,CaおよびCuの硝酸塩水溶液を各々用意し、前記溶液をAgと混合して単一の溶液を得る工程と、
ii)工程(i)で得られた生成硝酸塩水溶液混合物を噴霧乾燥し、噴霧乾燥粉末を得る工程と、
iii)工程(ii)で得られた噴霧乾燥粉末を焼成した後、続いての粉砕および攪拌を行
い、
同質の焼成粉末を得る工程と、
iv)工程(iii)で得られた焼成粉末を冷間静水圧して、約500mm以下の長さ、1
50mm以下の外径および2〜10mmの範囲の壁厚を有する大サイズチューブとする工程と、
v)工程(iv)で得られた冷間静水圧チューブを焼結し、前記焼結酸化物超伝導体チューブを粉末状に粉砕し、攪拌することにより、同質の、部分的前駆超伝導相粉末を得る工程と、
vi)工程(v)の部分的前駆超伝導酸化粉末を冷間静水圧して種々のサイズのチューブとする工程と、
vii)工程(vi)のチューブの両端に溝を形成し、前記溝に金属銀層を積層させ、一組
の前記チューブの両端面のうちの一つを前記チューブ上に合わせ配置し、一組のチューブの接触用端部の内部に銀軸受を挿入することによって互いを近接させるように一組のチューブを配置し、さらに前記合わせ配置両端面に介在物ペーストを設ける工程と、
viii)前記被覆端面を物理的に接触させ、穿孔銀箔で前記物理的接合部を覆い、さらに金属噴霧銃にて銀層を積層する工程と、
ix)前記接合部と前記一組のチューブとの前記組み合わせを、大気中830℃〜850℃の温度範囲で100〜150時間加熱し、一組のチューブ間の超伝導接合部を得る工程と、
を有する、酸化物超伝導体チューブと超伝導接合部との接合方法。
【請求項2】
使用される酸化物超伝導体チューブは、122〜320mmの範囲の長さの一組の中空筒状チューブである、請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
使用される酸化物超伝導体チューブの壁厚は、1〜3mmの範囲である、請求項1または2に記載の接合方法。
【請求項4】
使用される酸化物超伝導体チューブの外径は、10〜32mmの範囲である、請求項1ないし3のいずれかに記載の接合方法。
【請求項5】
Bi,Pb,Sr,Ca,Cuおよびこれらに加えられたAgのモル比は、1.84:0.35:1.9:2.05:3.05:1.2である、請求項1ないし4のいずれかに記載の接合方法。
【請求項6】
超伝導接合体は、酸化物超伝導体チューブ単体の臨界電流の70〜90%の臨界電流を有している、請求項1に記載の接合方法。
【請求項7】
超伝導接合体は、酸化物超伝導体チューブと同じ物質を含む、請求項1に記載の接合方法。
【請求項8】
酸化物超伝導体チューブの接合に用いられる粉末物質は、部分的前駆超伝導粉末である、請求項1に記載の接合方法。
【請求項9】
用いられる介在/接合物質は、イソアミラセテートおよび魚油における部分的前駆超伝導粉末ペーストである、請求項1に記載の接合方法。
【請求項10】
接合物質は、結合剤としてのポリビニルブチアール、溶媒としてのシクロヘキサノンおよび分散剤としての魚油を用いた有機調合体における部分的前駆超伝導粉末ペーストである、請求項1に記載の接合方法。
【請求項11】
接合物質は、空気乾燥銀塗料における部分的前駆超伝導粉末ペーストである、請求項1に記載の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−517247(P2010−517247A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547813(P2009−547813)
【出願日】平成19年12月31日(2007.12.31)
【国際出願番号】PCT/IN2007/000616
【国際公開番号】WO2008/093354
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(596020691)カウンスィル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (42)
【氏名又は名称原語表記】COUNCIL OF SCIENTIFIC & INDUSTRIAL RESEARCH
【Fターム(参考)】