説明

酸化物鉱石から卑金属を回収する方法

酸化物鉱石から卑金属酸化物有価物を回収するための、鉱石が、ニッケル、コバルト及び銅から選択される第一群の金属を含む方法を提供する。本方法は、鉱石粒子径を後の単位操作に適合するように下げること、金属元素の接触を助けること、鉱石を、水和した、又は無水の塩化第二鉄又は第一鉄と接触させ、鉱石と鉄(II又はIII)塩化物の混合物を形成すること、鉱石と塩化第二鉄又は第一鉄の混合物を十分なエネルギーに作用させ、塩化物を塩酸及び第二群からの酸化鉄に分解すること、それぞれの塩化物を形成すること、形成された卑金属塩化物を選択的に溶解させ、金属を酸化物として、固体状態で残すこと、及び溶解した卑金属有価物を水溶液から回収することを含む。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2009年7月14日に出願された「酸化物から卑金属有価物を抽出する方法」と題される米国仮特許出願第61/225,264号に基づく優先権を主張するものであ、その全文が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の背景】
【0002】
1.発明の分野
本開示は、酸化物型材料からの卑金属有価物、例えばニッケル、コバルト等の回収に関する。
【0003】
2.関連技術の説明
酸化物鉱石から、特にラテライトからニッケル及び他の卑金属を抽出するための、当業者に利用可能な幾つかの方法がある。これらの従来方法には、一般的に、ラテライトからのニッケル製造を困難な仕事にする幾つかの欠点がある。
【0004】
ニッケルラテライトに関する湿式製錬経路の選択は、従来の方法が一般的に全く応用できないので、鉱石特性に応じて大きく異なる。実現可能な湿式製錬プラントには、融通性、高回収率、及びエネルギー、試薬及び水の節約、のようなパラメーターが望ましいのみならず、不可欠である。ニッケルラテライトには、幾つかの浸出方法、例えばCaron製法(焙焼/還元/アンモニアによる浸出)又は圧力酸浸出(PAL又はHPAL−高圧酸浸出)を選択できるが、これらの浸出選択肢は、一般的に高い操作及び資本のコストを伴う。これらのコストを低減させようとする他の選択肢、例えば攪拌タンク中の大気圧酸浸出又はヒープリーチング(McDonald及びWhittington、2007、Whittington、McDonald、Johnson及びMuir、2002)が開発されている。
【0005】
ニッケルラテライトに商業的に選択できる湿式製錬方法及びこの分野における優れた技術的背景を有する多くの開発があるが、これらの選択肢は依然として経費がかかる。高い資本及び経済的コストは、ニッケル抽出に現在必要な単位操作の数及びそれらの複雑さに関連している。研究者は、とりわけ高い酸消費量、不純物抽出、固液分離のような問題に対する解決策を見出すことに取り組んでいる。ニッケルの湿式製錬精製では、処理量が大きく、貴重な金属の濃度が低いことが多く、従って全体的な操作コストが著しく増加する。
【0006】
高い酸消費量は、ラテライト浸出における操作コストの主要素の一つである。ニッケル及び他の卑金属は、通常、鉄含有鉱石中で、例えばどちらもマグネシウム濃度が高いリモナイト中で、又はサプロライトマトリックス中で結合している。従って、これらの元素を効果的に浸出するには、鉄及びマグネシウムを浸出する必要があるが、鉄及びマグネシウムの両方共大量に存在するので、全体的な酸消費量が増大する。すなわち、これが、入手できる文献、例えば特許出願WO/2010/000029、WO/2009/146518、WO/2009/018619、EP1790739、その他多くの文献全体にわたってみられるように、従来の大気圧又はヒープリーチング操作に関わる主要な問題である。有益な金属の大量抽出を達成するには過剰の酸が必要である。当業者には、鉄は全て加水分解されるが、マグネシウムは問題として残るので、高圧酸浸出(PAL又はHPAL)が高鉄含有鉱石を処理できることが公知である。
【0007】
文献WO2010000029(BHP Billiton SSM)は、ニッケル含有酸化物鉱石からヒープリーチング及び/又は大気圧攪拌浸出によりニッケル及びコバルトを回収する方法を開示しているが、この方法は、一般的に、銅を含まない還元体から選択される硫黄含有還元体をニッケル含有酸化物鉱石中に混合すること、還元体/鉱石混合物を酸性浸出試薬で浸出し、ニッケル、コバルト、実質的に第一鉄形態にある鉄、及び他の酸に可溶な不純物を含む貴浸出溶液を製造すること、及びその濃厚な浸出溶液からニッケル及びコバルトを回収することを含む。
【0008】
WO2009/146518−(VALE S.A.)は、ニッケル及びコバルトを回収し、主要原料を再生する方法を記載しているが、この方法は、粒度分析分離、浸出、中和、一段階のみの混合水酸化物沈殿物(MHP)製造及び亜硫酸マグネシウムの加圧結晶化を含む。この方法は、サイズ分離による鉱石及びHSOを段階的に加えながら、大気圧浸出及びヒープリーチングにより、ニッケル及びコバルトをラテライト鉱石から回収し、ニッケル損失を低減させ、中和回路を簡素化し、より精製されたMHPを製造する方法を提案している。この製法経路は、高マグネシウム含有ラテライト鉱石からのニッケル抽出を含むニッケル抽出に使用される。
【0009】
WO2009/018619(BHP Billiton SSM)は、ラテライト鉱石からのニッケル及びコバルトの回収における大気圧浸出方法を記載しているが、この方法は、ラテライト鉱石のリモナイト系及びサプロライト系鉱石画分を用意すること、リモナイト系及びサプロライト系鉱石画分を別々にスラリー化し、リモナイト系鉱石スラリー及びサプロライト系鉱石スラリーを製造すること、サプロライト系鉱石スラリーから全てのリモナイト型鉱物を分離し、サプロライト系原料スラリーを製造すること、サプロライト系原料スラリーを摩砕又は湿式粉砕すること、一次浸出工程でリモナイト系鉱石スラリーを濃硫酸で浸出すること、一次浸出工程が実質的に完了した後に、二次浸出工程でサプロライト系原料スラリーを浸出したリモナイトスラリーと組み合わせることにより、サプロライト系原料スラリーを浸出処理に導入すること、及び硫酸を放出してサプロライト系原料スラリーの浸出を助けることを含み、リモナイト型鉱物を浸出処理に導入する前は、サプロライト系原料スラリーはリモナイト型鉱物を実質的に含まない。
【0010】
EP1790739(Companhia Vale do Rio Doce)は、ヒープリーチングによりラテライト鉱石からニッケル、コバルト、及び他の金属、並びに得られる生成物を抽出するための、粉砕、アグロメレーション、積み重ね、及びヒープリーチング段階を含んでなることを特徴とする方法を開示しているが、この最後の段階が、2段階以上を有する連続的な向流のヒープリーチング方式であり、2相を含んでなり、その一方が鉱石、又は溶質、から構成され、他方が浸出溶液、又は溶剤、から構成され、これらの2相は、これらの段階列の対向する末端で供給され、対向する方向に流れる。最後の段階で浸出が停止すると、その溶質が除去され、第一位置で新しい段階が導入され、その新しい段階は、溶剤溶液により浸出すべき新しい鉱石により形成されるが、その溶剤溶液は、最後の段階から導入され、前の全段階を通して、第一段階に到達するまで浸透するか、又は流れ、標的とする金属が含まれた時に分離される。
【0011】
酸化物卑金属鉱石の酸浸出に関わるもう一つの問題は、中和及び固液分離である。溶液pHを増加させ、ある種の不純物を溶液から加水分解するために、中和剤(例えば石灰、石灰石又はマグネシアが挙げられるがこれらに限定されない)を必要とする。この操作は、水酸化物(例えば水酸化第二鉄)を生成し、これが固液分離を非常に困難にする。レオロジーも問題となることが多い。この問題を回避するために、溶液の高希釈が必要であり、大量の低品質溶液を精製する必要がある。
【0012】
マグネシウムレベルが容認できないことがあるので、溶出液の処理も問題になろう。溶液からマグネシウムを除去するための幾つかの方法があるが、どれも高コストにつながる。固体残留物もあまり安定ではなく、大きな尾鉱沈殿池が必要である。
【0013】
Berniらの特許出願WO/2009/026694は、HClガスと酸化物鉱石を接触させることにより、上記問題への対処を試みたものである。この特許出願は、鉄、アルミニウム及びマグネシウム塩化物を有益な金属から選択的に分解し、次いでHClを回収し、処理するのに遙かに清浄であり、鉄、マグネシウム、マンガン又はアルミニウムを含まない溶液を製造することができるという事実を利用している。この技術は、安定した固体残留物をより少ない量で形成する。
【0014】
卑金属抽出へのHCl使用に対する大きな障壁は、通常、耐食性が高い材料を使用し、かつ、塩化水素ガス放出を抑制する必要性に集中している。
【0015】
Gybson及びRice(1997)は、ニッケルラテライト抽出に対する塩酸使用の利点を示している。塩酸の使用を考察するかなりの文献があり、新規な化学反応に基づいて近年提案された幾つかの新規な方法だけが強塩化物液を達成している。
【発明の概要】
【0016】
本発明の様々な態様によれば、HClのその場における発生を促進し、腐食問題を軽減し、従って資本コストを下げる、調整された方法が提供される。塩化第二鉄又は第一鉄を鉱石と凝集させ、その後、鉄塩化物の選択的加水分解に付する。凝集及び加水分解は鉄の酸化段階に依存し、卑金属酸化物を攻撃するHClをその場で発生して、金属塩化物を形成する。その後、これらの塩化物は水に可溶化され、鉄及びアルミニウムを含まない浸出溶出液を生じる。次いで、この溶出液は、鉄除去工程をもはや必要としないので、いかなる公知のより簡素化された精製技術にも付することができる。
【0017】
本発明の態様によれば、塩化第二鉄又は第一鉄を使用する間接的な塩化水素化により、酸化物鉱石を浸出するためにHClを直接使用することの影響が軽減される。その結果、HClの使用がより小さな単位操作に限定され、全体的なコスト及び保守が低減される。
【0018】
本発明の様々な態様による酸化物鉱石から卑金属有価物を回収する方法が提供される。様々な態様によれば、鉱石は、鉄、マグネシウム及びアルミニウムの少なくとも一種からなる群から選択される第一の金属と、ニッケル、コバルト及び銅から選択される第二の金属とを含む。本方法は、鉱石粒子径を後者の単位操作に適合するように小さくする工程、金属元素の接触を助ける工程、水和した又は無水の塩化第二鉄又は第一鉄の少なくとも一方と鉱石を接触させて鉱石と鉄(II又はIII)塩化物の混合物を形成する工程、鉱石及び塩化第二鉄又は第一鉄の混合物を十分なエネルギーに作用させて、塩化物を塩酸及び酸化鉄、好ましくはヘマタイトに分解する工程、直ちに形成された塩酸を上記第二の群に由来する卑金属酸化物と接触させ、それぞれの塩化物を形成する工程、及び形成された卑金属塩化物を選択的に溶解させて、第一の群に由来する金属を酸化物として固体状態で残す工程を含んでよいものである。本方法は、溶解した卑金属を水溶液から回収する方法を含むものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の様々な態様による、ラテライト鉱石から卑金属を抽出する方法を例示する図である。
【図2】本発明の様々な態様による、塩化第二鉄を使用する間接的な塩化水素化に対するギブス自由エネルギーと温度の関係を例示するグラフである。
【図3】本発明の様々な態様による、塩化第一鉄を使用する間接的な塩化水素化に対するギブス自由エネルギーと温度の関係を例示するグラフである。
【発明の詳細な説明】
【0020】
本発明の態様は、酸化物材料から卑金属有価物、具体的には例えばラテライト鉱石中にみられるニッケル、コバルト及び銅のような金属を回収する方法に関する。
【0021】
本発明の態様によれば、例えばラテライト鉱石のような酸化物材料を塩化第二鉄又は第一鉄と混合して、ニッケル、コバルト及び銅のような卑金属の塩化物を含むが鉄、アルミニウム及びマグネシウムを含まない溶液を、下記式(1)〜(3)に記載されるような間接的な塩化水素化により製造する。
【0022】
図1は、本発明の様々な態様による、ラテライト鉱石から卑金属を抽出する方法100を例示する。図1に関して以下により詳細に説明するように、工程S101に示すように、酸化物材料を最初に粉砕又は粒状にし、卑金属の酸化物を放出させてから、塩化第二鉄又は第一鉄と混合することができる。小さくした酸化物材料の粒子を、工程S102に示すように、塩化第二鉄又は第一鉄と混合し、必要であれば、鉱酸で凝集させることができる。様々な態様により、工程S103に示すように、小さくした鉱石の粒子と塩化第二鉄又は第一鉄の混合物を高温で十分な湿潤空気と接触させ、卑金属を塩化物に、及び鉄、アルミニウム及びマグネシウムをそれぞれの酸化物に転化する。塩化第二鉄及び塩化第一鉄の両方を使用する、塩化水素化に関するギブスの自由エネルギー挙動を図2及び3に示す。鉄、アルミニウム及びマグネシウムを含まない溶液を得るために、転化された鉱石に水をpH約8〜2で加えることができる。pHは、鉱酸、例えば塩酸、を使用して調整し、新たに形成された酸化物の浸出を回避することができる。
【0023】
従って、本発明の態様により、工程S104に示すような固液分離の後、溶液は鉄、アルミニウム及びマグネシウムを含まない。次いで、可溶化された卑金属を、当業者には公知の様々な方法により、販売可能な製品に精製することができる固液分離の固体部分は、残留溶液を適切に洗浄した後、高強度磁気分離に付し、ヘマタイトを他の酸化物から分離することができる。所望により、中和が必要になる場合がある。次いで、ヘマタイトを塩酸と接触させ、塩化第二鉄と水を形成することができる。塩化第一鉄を製造するには、還元剤(例えば鉄が挙げられるがこれに限定されない)を系に添加することができる。
【0024】
本発明の態様により、鉱石を鉱山から取り出し、選鉱プラントに粗鉱を供給する。次いで、この粗鉱を準備して抽出プラントに供給することができる。このためには、鉱石のサイズを適切なサイズに小さくし、適切な間接的な塩化水素化及び効率的な可溶化を行うための卑金属酸化物を放出させるのが好ましい。本発明の態様によれば、鉱石サイズは2mm〜0.050mm、所望により0.5mm未満に維持してもよい。これらのサイズは、よく知られており、文献に記載されている様々な従来の単位操作(例えば粉砕及び摩砕が挙げられるがこれらに限定されない)により得ることができる。鉱石は、二つの画分、すなわちニッケル濃度が高くほぼ上記のサイズを有する第一の画分と、ニッケル濃度が低い別の画分とに分離することができる。鉱石のニッケル濃度が低い画分は廃棄することができる。上述した画分及びサイズは例示的なものであり、当業者はおおよそ異なったサイズの画分を使用できることに注意すべきである。
【0025】
本発明の態様によれば、サイズを小さくした後、鉱石を、有益な卑金属の完全な塩化水素化に十分な塩化第二鉄又は第一鉄と混合するか又は凝集させる。塩化第二鉄又は第一鉄は、例えば鉱石質量の0.05〜1.5倍、所望により鉱石質量の0.1〜0.5倍の比で加えることができる。所望により、水又は鉱酸も加えてアグロメレーションを改良することができる。塩化第一鉄を使用する場合、鉱石に酸化剤(例えば酸素、過マンガン酸カリウム、オゾン又は過酸化水素が挙げられるがこれらに限定されない)も加えることができる。酸化剤は、塩化第一鉄と同様の質量比で加えることができる。塩化第二鉄又は第一鉄は、利用可能などのような供給源からでも入手できることに注意すべきである。
【0026】
本発明の態様により、酸化剤は、以下の反応により示されるように、塩化第一鉄と反応し、ヘマタイト及びHClを形成する。
【化1】

【0027】
本発明の態様によれば、この反応に必要な温度範囲は、速度論的理由から60℃〜600℃、所望により約100℃〜約300℃であることができる。滞留時間は、0.5時間〜12時間、所望により1時間〜2時間とすればよい。
【0028】
塩化第二鉄を使用する場合、酸化剤を必要としなくてもよい。適度に凝集した鉱石を加水分解段階(通常はキルンであるがこれに限定されない)に送り、鉱石を塩化第二鉄及び/又は第一鉄が分解される条件に付して、安定したヘマタイト又は他の水和した酸化鉄、及びHClを生成させる。この工程の間、凝集した鉱石は次いで60℃〜600℃の高温に最短約5分間〜最長約24時間に付される。十分な水の添加が必要とされることもあるが、十分な水が既に鉱石水分中に存在していてもよい。
【0029】
塩化第二鉄の分解反応は、下記のように表すことができる。
【化2】

【0030】
この第二反応機構に必要な温度範囲は、60℃〜600℃、所望により約150℃〜350℃であることができる。滞留時間の必要条件は、塩化第一鉄に対する滞留時間の必要条件と同じとすればよい。
【0031】
従って、式(1)及び(2)により表す反応から、適切な加水分解を確保するには、十分な水を系に供給する必要があることは明らかである。従って、鉱石の遊離水分は1%〜20%(m/m)に制御することができ、十分な水を供給するには、水蒸気を系に加えてもよい。
【0032】
上記のように式(1)及び(2)で凝集した鉱石中で発生するHClは、酸化物MOを形成する一般的な遷移金属Mに対して下に示すように、有価卑金属塩化物を形成するのに使用される。
【化3】

【0033】
本発明の様々な態様によれば、新たに形成された塩化物は水溶性であるが、鉄、アルミニウム及びマグネシウムのような金属Mは既に酸化物として安定した形態にある。従って、式(3)は、当業者に知られており文献において利用可能な様々な方法により容易に精製され、鉄、マグネシウム及びアルミニウムを含まない溶出液を与えうる。
【0034】
本発明の様々な態様によれば、上記の塩化水素化が終了した後、鉱石を山積みし、pHが少なくとも7の酸性化した水で浸出することができる。任意の鉱酸(例えば硫酸又は塩酸)が使用可能である。様々な態様によれば、酸含有量を100g/Lまで増加できるが、pHは約1〜約3に維持することができる。浸出溶液は、酸成分と共にリサイクルし、有益な金属の濃度を増加させることができる。有益な金属を可溶化するもう一つの可能な方法は、攪拌タンクを通し、pHを同じ範囲内に維持することである。滞留時間は、約5分間〜約24時間、所望により30分間〜120分間にすることができる。また、溶液を加熱して可溶化速度を増加させ、必要な溶液濃度に応じて、固体の百分率を約5%〜約50%に維持することができる。所望により、固体の百分率は15%〜35%であってよい。なお、当業者に公知の任意の他の可溶化形態も使用可能である。
【0035】
本発明の様々な態様によれば、適切な可溶化及び固液分離の後、任意の下流精製方法が使用可能である。様々な態様によれば、鉄除去工程及びアルミニウム除去工程、あるいはマグネシウム又はマンガンを除去するための溶出液処理は、これらの元素がすでに炉中で酸化物として安定化されているので、必要ない。
【0036】
本発明の様々な態様によれば、固液分離から形成される尾鉱は、洗浄して残留卑金属溶液を除去した後、初めて高強度の磁場と接触させることができる。中和を必要とする場合も、必要としない場合もある。磁場により、ヘマタイトが他の酸化物から分離される。なお、磁気分離装置の代わりに、当業者に公知の他の分離方法も使用可能である。
【0037】
本発明の様々な態様によれば、塩化第二鉄又は第一鉄を製造するために、ヘマタイトを塩酸と接触させ、下記式により記述されるように、選択された鉄塩化物を製造することができる。
【化4】

【0038】
なお、塩化第一鉄を形成するために、任意の還元剤(例えば金属鉄(Fe))が使用可能である。塩化第二鉄は、金属鉄を酸化条件で塩酸と接触させることにより製造してもよい。塩酸は、塩化物塩(例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム)を酸(例えば硫酸)と反応させることにより、形成することができる。様々な態様により、塩化カリウムを塩化物塩として使用することができる。塩化カリウムを硫酸と反応させることにより、無水塩酸(例えば水を含まない)及び有用な副生物である硫酸カリウムが製造される。
【0039】
本発明の様々な態様によれば、この技術の利点の一つは、制御された形態でHClを使用することで、高価な装置の必要性が低下されることである。必要とされるのは、より安価な構築材料及びより簡素な装置である。HClは凝集した鉱石の中で発生し、材料全体にわたって拡散するので、気体−固体の相互作用が大きな問題にならない。従って、簡単なキルン(例えばロータリーキルンが挙げられるがこれに限定されない)を加水分解工程で使用することができ、それによって資本コストが低減される。高塩化物溶液は形成されないので、下流の装置もより簡素である。
【0040】
本発明の様々な態様によれば、特殊なエンジニアリング及び構築材料を必要とする欠点の一つを軽減しながら、塩化物による卑金属抽出の利点が与えられる。
【0041】
さらに、本発明の様々な態様の利点は、以下の特徴:i)銅、ニッケル及びコバルトのような有価金属の抽出増加、ii)より効率的な鉱床利用、iii)酸消費量の低減、iv)鉱液の沈降特性改良、v)凝集剤の消費量低減、vi)サプロライト/リモナイト分離の必要性がないこと、vii)調整されたHCl使用、viii)簡単なエンジニアリング、ix)簡単な操作、及びx)資本コストの低減によって要約される。以下の例により、本発明の様々な態様による実験プロセスを例示する。
【0042】
例1
リモナイト型鉱石100gを、1.03%Ni、35.06%Fe、12%Si、4.05%Mg、1.94%Al、0.64%Mn及び0.065%コバルトを含んでなるラテライト鉱石、及び六水和塩化第二鉄10gと、400℃で180分間混合する。抽出結果を下記の表1に示す。
表1−例1の抽出結果
元素抽出
Al Co Fe Mg Mn Ni
0.10% 98.10% 0.50% 0.30% 0.40% 95%
【0043】
例2
ラテライトチャージを、300℃で湿潤空気を注入しながら、90分間の間接的な塩化水素化にかける。試料は、2.01%Ni、0.073%Co、49.1%Fe、3.07%Mg及び06%SiOを含む。抽出結果を下記の表2に示す。
表2−例2の抽出結果
元素抽出
Al Co Fe Mg Mn Ni
0.08% 94.12% 1.50% 0.21% 0.29% 96.70%
【0044】
本発明を上記の代表的な態様に関連して説明したが、様々な代案、修正、変形、改良、及び/又は実質的な等価物が、公知であるか、又は予見できる、もしくは現在予見できなくても、少なくとも通常の技量を有する当業者には明らかである。従って、上記のような本発明の代表的な態様は、例示のために記載するのであって、本発明を限定するものではない。本発明の精神及び範囲から離れることなく、様々な変形を加えることができる。従って、本発明は、公知の又は後に開発される代案、修正、変形、改良及び/又は実質的な等価物を全て含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄、マグネシウム及びアルミニウムからなる群から選択される第一の金属と、ニッケル、コバルト及び銅からなる群から選択される第二の金属とを含む酸化物鉱石から卑金属を回収する方法であって、
前記酸化物鉱石を塩化第二鉄又は第一鉄の少なくとも一方と接触させて塩化物を形成すること、
前記酸化物鉱石と前記塩化第二鉄又は第一鉄の前記少なくとも一方の混合物を加熱して、前記塩化物を塩酸及びヘマタイトに分解すること、
前記塩酸を前記第二の金属の卑金属酸化物と接触させて、第二の金属塩化物を形成すること、及び
前記第二の金属塩化物を選択的に溶解させて、第一の金属酸化物を固体状態で残すこと
を含んでなる、方法。
【請求項2】
前記酸化物鉱石を塩化第二鉄又は第一鉄の少なくとも一方と接触させる前に、鉱石の粒子径を約2mm〜約0.050mm又は約2mm〜0.5mm未満に低下させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩化第二鉄を酸化物鉱石質量の0.05〜1.5倍又は酸化物鉱石質量の0.1〜0.5倍の比で加える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記塩化第一鉄を酸化物鉱石質量の0.05〜1.5倍又は酸化物鉱石質量の0.1〜0.5倍の比で加える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
酸化剤を前記鉱石質量の0.0001〜10倍の比で前記酸化物鉱石に加えて、前記塩化第一鉄と反応させる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化剤が、酸素、過マンガン酸カリウム、オゾン及び過酸化水素からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱が約60℃〜約600℃又は約100℃〜約300℃の温度範囲で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱が約0.5時間〜約12時間行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記混合物を加熱する間に水を添加することをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記水の添加が、湿潤空気の注入をさらに含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第二の金属塩化物を選択的に溶解させる前又は間の少なくとも一方で、前記酸化物鉱石を山積みし、塩酸を約100g/Lまで含んでなりpHが約1〜約3である酸性化された水で浸出する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第二の金属塩化物を選択的に溶解させた後、固液分離工程をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記固液分離工程から得られる尾鉱を高強度の磁場と接触させ、ヘマタイトを分離する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記酸化物鉱石の接触に使用された前記塩化第二鉄又は第一鉄の少なくとも一方を再使用することにより、リサイクルされるヘマタイトを塩酸と接触させることにより、塩化第二鉄又は第一鉄を再生すること、及び
塩化第一鉄を再生する際に還元剤を添加すること
をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記還元剤が金属鉄を含んでなる、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−532994(P2012−532994A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519852(P2012−519852)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【国際出願番号】PCT/BR2010/000227
【国際公開番号】WO2011/006223
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(510277338)
【氏名又は名称原語表記】VALE S.A.
【Fターム(参考)】