説明

酸化触媒及びパティキュレートフィルタ

【課題】優れた触媒活性を有する酸化触媒及びこれを用いたパティキュレートフィルタを提供すること。
【解決手段】酸化触媒は、層状ペロブスカイト構造を有し、次の一般式(1)
(A’3−xA”)Mn7−δ…(1)
(式中、Aサイトに位置するA’はカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)からなる群より選ばれた少なくとも1種のものを、A”はランタン(La)及びネオジム(Nd)からなる群より選ばれた少なくとも1種のものを、Bサイトに位置するMnはマンガンを、Oは酸素を、δは酸素欠陥量を示し、xが0<x<3、δがδ<1.4の関係を満足する。)で表される複酸化物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化触媒及びパティキュレートフィルタに関する。更に詳細には、本発明は、層状ペロブスカイト構造を有し、所定の成分組成を有する複酸化物からなる酸化触媒及びこれを用いたパティキュレートフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ペロブスカイト構造を有する複酸化物は、一般式ABOで表される。理想的には立方晶系に属するが、正方晶系、斜方晶系、六方晶系などに属する歪んだ構造をとることが多い。この歪みのため、様々な特性を発現する材料として、注目されている。
例えば、ディーゼルエンジンのパティキュレートマター(PM)の除去に関する触媒としては、ランタンガレート系のペロブスカイト構造を有する複酸化物が開示されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−341235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された触媒は、白金を担持した場合であっても、450℃においてパティキュレートマター(PM)を除去しているに過ぎず、その触媒活性が十分なものとは言えないという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。
そして、その目的とするところは、優れた触媒活性を有する酸化触媒及びこれを用いたパティキュレートフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた。
そして、その結果、層状ペロブスカイト構造を有し、所定の成分組成を有する複酸化物からなる構成とすることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の酸化触媒は、層状ペロブスカイト構造を有し、次の一般式(1)で表される複酸化物からなることを特徴とする。
(A’3−xA”)Mn7−δ…(1)
(式中、Aサイトに位置するA’はカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)からなる群より選ばれた少なくとも1種のものを、A”はランタン(La)及びネオジム(Nd)からなる群より選ばれた少なくとも1種のものを、Bサイトに位置するMnはマンガンを、Oは酸素を、δは酸素欠陥量を示し、xが0<x<3、δがδ<1.4の関係を満足する。)
【0008】
また、本発明のパティキュレートフィルタは、上記本発明の酸化触媒と、該酸化触媒を担持するパティキュレートフィルタ用担体と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、層状ペロブスカイト構造を有し、次の一般式(1)
(A’3−xA”)Mn7−δ…(1)
(式中、Aサイトに位置するA’はカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)からなる群より選ばれた少なくとも1種のものを、A”はランタン(La)及びネオジム(Nd)からなる群より選ばれた少なくとも1種のものを、Bサイトに位置するMnはマンガンを、Oは酸素を、δは酸素欠陥量を示し、xが0<x<3、δがδ<1.4の関係を満足する。)で表される複酸化物からなる構成としたため、優れた触媒活性を有する酸化触媒及びこれを用いたパティキュレートフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】A型の結晶構造を示す模式図である。
【図2】実施例6の酸化触媒のX線回折(XRD)分析の結果を示すグラフである。
【図3】ランタン(La)置換量及びネオジム(Nd)置換量とPM酸化開始温度との関係を示すグラフ(a)及び(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る酸化触媒及びこれを用いたパティキュレートフィルタについて詳細に説明する。
【0012】
まず、本発明の実施の形態に係る酸化触媒について詳細に説明する。
本実施形態の酸化触媒は、層状ペロブスカイト構造を有し、次の一般式(1)で表される複酸化物からなるものである。
(A’3−xA”)Mn7−δ…(1)
(式中、Aサイトに位置するA’はカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)又はバリウム(Ba)及びこれらの任意の組み合わせに係るものを、A”はランタン(La)又はネオジム(Nd)及びこれらの組み合わせに係るものを、Bサイトに位置するMnはマンガンを、Oは酸素を、δは酸素欠陥量を示し、xが0<x<3、δがδ<1.4の関係を満足する。)
【0013】
このような酸化触媒とすることにより、優れた触媒活性を有するものとなり、例えばPM酸化触媒として好適に用いることができる。
つまり、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を基本骨格とし、積層した構造を有する層状ペロブスカイト構造においては、層間に位置するAサイトや酸素八面体の中心に位置するBサイトの元素を置換させることによって、様々な物性を示すものとすることができる。
上述した層状ペロブスカイト構造を有し、一般式(1)で表される複酸化物は、図1に示すような結晶構造を有する。このような結晶構造においては、層間に存在する酸素八面体が広く分布し、層内方向やそれに垂直な積層方向において、酸素の電子密度が広く共有できるため、酸素イオン伝導性が向上し、優れた触媒活性を有するものとなる。
また、カルシウム(Ca)やストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)などは電子供与性であり、酸素との親和性に寄与する。
【0014】
また、特に限定されるものではないが、式中xが0.5≦x≦1.8の関係を満足することが好ましく、式中xが1.0≦x≦1.5の関係を満足することがより好ましい。
上述の好ましい範囲であると、より優れた触媒活性を有するものとなる。
【0015】
更に、特に限定されるものではないが、式中A”がランタン(La)であり、A’がストロンチウム(Sr)であることが望ましい。
上述のものとすると、より優れた触媒活性を有するものとなる。一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有する複酸化物においては、Aサイトの元素は酸化還元反応に殆ど寄与しないが、層状ペロブスカイト構造を有する一般式(1)で表される複酸化物においては、Aサイトの元素が酸化還元反応に寄与する。ランタン(La)はネオジム(Nd)に比較してイオン半径が大きく、電子親和力が小さくなるため、電子供与性を示すようになる。そのため、酸素との親和力が大きくなり、酸化還元反応が起こりやすくなる。
【0016】
次に、本発明の実施の形態に係るパティキュレートフィルタについて詳細に説明する。
本実施形態のパティキュレートフィルタは、上述した酸化触媒と、その酸化触媒を担持するパティキュレートフィルタ用担体とを有するものである。
このようなパティキュレートフィルタとすることにより、ディーゼルエンジンなどの排ガス中に含まれるPMを比較的低温で酸化させて、PMを浄化することができる。
ここで、パティキュレートフィルタ用担体としては、例えばハニカム担体のセル一端を交互に目詰めした、いわゆるチェッカードハニカム担体を挙げることができるが、これに限定されるものではない。すなわち、パティキュレートフィルタ用担体として、例えば繊維集合体を用いることもできる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例においては、炭酸ストロンチウム(SrCO)として炭酸ストロンチウム(和光純薬工業株式会社製、純度:99.99%)、炭酸カルシウム(CaCO)として炭酸カルシウム(和光純薬工業株式会社製、純度:99.99%)、炭酸バリウム(BaCO)として炭酸バリウム(和光純薬工業株式会社製、純度99.99%)、炭酸ストロンチウム(SrCO)として炭酸ストロンチウム(和光純薬工業株式会社製、純度:99.99%)、酸化ランタン(La)として酸化ランタン(和光純薬工業株式会社製、純度:99.99%)、酸化ネオジム(Nd)として酸化ネオジム(和光純薬工業株式会社製、純度:99.9%)、酸化マンガン(Mn)として酸化マンガン(和光純薬工業株式会社製、純度:99.5%)を用いた。
【0018】
(実施例1)
炭酸ストロンチウム(SrCO)と酸化ランタン(La)と酸化マンガン(Mn)とを、Sr:La:Mn=1.2:1.8:2.0(モル比)となるように秤量し、ボールミルで粉砕混合した。次いで、得られた混合粉末を、大気中、900℃で24時間仮焼し、更に1050℃で24時間仮焼した。更に、仮焼した粉末を成型し、大気中、1600℃で24時間本焼成した。その後、得られた焼結体をボールミルで粉砕して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0019】
(実施例2)
炭酸ストロンチウム(SrCO)と酸化ランタン(La)と酸化マンガン(Mn)とを、Sr:La:Mn=1.5:1.5:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0020】
(実施例3)
炭酸ストロンチウム(SrCO)と酸化ランタン(La)と酸化マンガン(Mn)とを、Sr:La:Mn=2.0:1.0:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0021】
(実施例4)
炭酸ストロンチウム(SrCO)と酸化ランタン(La)と酸化マンガン(Mn)とを、Sr:La:Mn=2.5:0.5:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0022】
(実施例5)
炭酸カルシウム(CaCO)と酸化ランタン(La)と酸化マンガン(Mn)とを、Ca:La:Mn=1.2:1.8:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0023】
(実施例6)
炭酸カルシウム(CaCO)と酸化ランタン(La)と酸化マンガン(Mn)とを、Ca:La:Mn=1.5:1.5:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0024】
(実施例7)
炭酸カルシウム(CaCO)と酸化ランタン(La)と酸化マンガン(Mn)とを、Ca:La:Mn=2.0:1.0:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0025】
(実施例8)
炭酸カルシウム(CaCO)と酸化ランタン(La)と酸化マンガン(Mn)とを、Ca:La:Mn=2.5:0.5:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0026】
(実施例9)
炭酸バリウム(BaCO)と酸化ランタン(La)と酸化マンガン(Mn)とを、Ba:La:Mn=1.2:1.8:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0027】
(実施例10)
炭酸バリウム(BaCO)と酸化ランタン(La)と酸化マンガン(Mn)とを、Ba:La:Mn=1.5:1.5:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0028】
(実施例11)
炭酸バリウム(BaCO)と酸化ランタン(La)と酸化マンガン(Mn)とを、Ba:La:Mn=2.0:1.0:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0029】
(実施例12)
炭酸バリウム(BaCO)と酸化ランタン(La)と酸化マンガン(Mn)とを、Ba:La:Mn=2.5:0.5:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0030】
(実施例13)
炭酸ストロンチウム(SrCO)と酸化ネオジム(Nd)と酸化マンガン(Mn)とを、Sr:Nd:Mn=1.2:1.8:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0031】
(実施例14)
炭酸ストロンチウム(SrCO)と酸化ネオジム(Nd)と酸化マンガン(Mn)とを、Sr:Nd:Mn=1.5:1.5:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0032】
(実施例15)
炭酸ストロンチウム(SrCO)と酸化ネオジム(Nd)と酸化マンガン(Mn)とを、Sr:Nd:Mn=2.0:1.0:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0033】
(実施例16)
炭酸ストロンチウム(SrCO)と酸化ネオジム(Nd)と酸化マンガン(Mn)とを、Sr:Nd:Mn=2.5:0.5:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0034】
(実施例17)
炭酸カルシウム(CaCO)と酸化ネオジム(Nd)と酸化マンガン(Mn)とを、Ca:Nd:Mn=1.2:1.8:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0035】
(実施例18)
炭酸カルシウム(CaCO)と酸化ネオジム(Nd)と酸化マンガン(Mn)とを、Ca:Nd:Mn=1.5:1.5:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0036】
(実施例19)
炭酸カルシウム(CaCO)と酸化ネオジム(Nd)と酸化マンガン(Mn)とを、Ca:Nd:Mn=2.0:1.0:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0037】
(実施例20)
炭酸カルシウム(CaCO)と酸化ネオジム(Nd)と酸化マンガン(Mn)とを、Ca:Nd:Mn=2.5:0.5:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0038】
(実施例21)
炭酸バリウム(BaCO)と酸化ネオジム(Nd)と酸化マンガン(Mn)とを、Ba:Nd:Mn=1.2:1.8:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0039】
(実施例22)
炭酸バリウム(BaCO)と酸化ネオジム(Nd)と酸化マンガン(Mn)とを、Ba:Nd:Mn=1.5:1.5:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0040】
(実施例23)
炭酸バリウム(BaCO)と酸化ネオジム(Nd)と酸化マンガン(Mn)とを、Ba:Nd:Mn=2.0:1.0:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0041】
(実施例24)
炭酸バリウム(BaCO)と酸化ネオジム(Nd)と酸化マンガン(Mn)とを、Ba:Nd:Mn=2.5:0.5:2.0(モル比)となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
【0042】
(比較例1)
酸化アルミニウム粉末をジニトロジアミン白金水溶液と混合し、撹拌後、水分を150℃で蒸発させ、更に400℃で1時間焼成して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。なお、ジニトロジアミン白金水溶液の濃度は、4質量%Pt/Alとなるように調製した。
【0043】
(比較例2)
炭酸ストロンチウム(SrCO)と酸化ランタン(La)とを、Sr:La=1.0:1.0(モル比)となるように秤量し、ボールミルで粉砕混合した。次いで、得られた混合粉末を、大気中、900℃で24時間仮焼し、更に1050℃で24時間仮焼した。更に、仮焼した粉末を成型し、大気中、1600℃で本焼成した。その後、得られた焼結体をボールミルで粉砕して、本例の酸化触媒(粉末)を得た。
各例の仕様の一部を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
また、実施例6の酸化触媒を、次に示す装置及び条件で、X線回折(XRD)分析に供し、結晶構造を確認した。得られた結果を図2に示す。図2から、本発明の範囲に属する酸化触媒は、A型の結晶構造を有することが分かる。
【0046】
・装置名:マックサイエンス社製 X線回折装置(MXP18VAHF)
・電圧、電流:40kV、300mA
・X線波長:CuKα
【0047】
[性能評価]
実施例1の酸化触媒粉末とエンジンから採取したすす(PM)とを、酸化触媒粉末:すす=1:1(質量比)となるように秤量し、乳鉢で混合した。得られた試料について、10体積%の酸素(O)ガスとヘリウム(He)ガス(バランス量)の混合ガス流を導入しながら、触媒床の温度を変化させ、質量分析計を用いて、一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO)が発生した温度を測定し、この測定値をPM酸化開始温度とした。なお、実施例2〜実施例24、比較例1及び比較例2についても同様にして、性能評価を行った。得られた結果を各例の仕様の一部と共に表1に示す。また、図3(a)及び(b)に、ランタン(La)置換量及びネオジム(Nd)置換量とPM酸化開始温度との関係を示す。
【0048】
表1から分かるように、本発明の範囲に属する実施例1〜実施例24の酸化触媒は、本発明外の比較例1及び比較例2の酸化触媒と比較して、PM酸化開始温度が低く、触媒活性が優れることが分かる。特にAサイトにおけるランタン(La)やネオジム(Nd)の置換量は0.5〜1.8であることが好ましく、1.0〜1.5であることがより好ましいことが分かる。また、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)のうちストロンチウム(Sr)を選択した場合に最も触媒活性が優れることが分かる。更に、ランタン(La)及びネオジム(Nd)のうちランタン(La)を選択した場合に最も触媒活性が優れることが分かる。
また、本発明の範囲に属する実施例1〜実施例24の酸化触媒は、本発明外の比較例1の酸化触媒と比較して、貴金属を含まない場合であっても、PM酸化開始温度が低く、触媒活性が優れることが分かる。
【0049】
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0050】
例えば、上記の実施形態や実施例では、排ガス中のPMの酸化に適用する酸化触媒について説明したが、固体電解質型燃料電池(中温動作型燃料電池、高温動作型燃料電池を含む。)の電極における触媒材料としても、本発明を適用することができる。
本発明の酸化触媒を燃料極や空気極に適用することにより、優れた酸素イオン伝導性を発揮することができる。また、燃料極に適用することにより、燃料極表面に析出することがある炭素を効率良く酸化することができ、優れた発電性能を発揮させることができる。
【0051】
また、例えば、上記実施形態や実施例では、酸化触媒として複酸化物からなるものを例に挙げて説明したが、上述した複酸化物の他に、例えば白金、パラジウム、ロジウムなどの貴金属からなる触媒成分や、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、酸化タングステンなどの無機基材を更に適宜含ませたものも、本発明の範囲に含まれる。
【0052】
更に、δは酸素欠陥量を示すが、Mnの価数(2+〜4+)の変動により、0にもなり得る。δは、1以下であることがより好ましい。δが、1以下であると層状ペロブスカイト構造が非常に安定となる。1を超えても1.4以下であれば、層状ペロブスカイト構造を組むことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状ペロブスカイト構造を有し、次の一般式(1)
(A’3−xA”)Mn7−δ…(1)
(式中、Aサイトに位置するA’はカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)からなる群より選ばれた少なくとも1種のものを、A”はランタン(La)及びネオジム(Nd)からなる群より選ばれた少なくとも1種のものを、Bサイトに位置するMnはマンガンを、Oは酸素を、δは酸素欠陥量を示し、xが0<x<3、δがδ<1.4の関係を満足する。)で表される複酸化物からなることを特徴とする酸化触媒。
【請求項2】
上記式中xが0.5≦x≦1.8の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の酸化触媒。
【請求項3】
上記式中xが1.0≦x≦1.5の関係を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化触媒。
【請求項4】
上記式中A”がランタン(La)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の酸化触媒。
【請求項5】
上記式中A’がストロンチウム(Sr)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の酸化触媒。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の酸化触媒と、該酸化触媒を担持するパティキュレートフィルタ用担体と、を有することを特徴とするパティキュレートフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−207754(P2010−207754A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58300(P2009−58300)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】