説明

酸化防止剤ブレンドを含む潤滑剤組成物

潤滑剤と、少なくとも第1酸化防止剤と、第2酸化防止剤とを含む組成物であって、該第1酸化防止剤がヒンダード・フェノール系化合物であり、該第2酸化防止剤がチオエーテルである組成物を開示する。潤滑剤に、少なくとも第1酸化防止剤と、第2酸化防止剤とを加えることを含み、該第1酸化防止剤がヒンダード・フェノール系化合物であり、該第2酸化防止剤がチオエーテルである、潤滑剤の酸化安定性を高める方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、潤滑剤の酸化安定性の改良に関し、さらに詳しくは、少なくとも2種類の酸化防止剤の組み合わせによる、潤滑油の酸化安定性に関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
自動車、トラック、列車、船の内燃機関に及びジェット機の航空タービン油に用いられるような潤滑油は、使用中に厳しい環境にさらされる。この環境は、該油の酸化をもたらし、この酸化は、該油中に存在する不純物、例えば、鉄化合物によって触媒され、さらに、使用中に発生する高温によって促進される。使用中の潤滑油のこの酸化は、酸化防止剤の添加によって、通常、少なくともある程度は、抑制され、この酸化防止剤は潤滑油の耐用寿命を延長させることができる。
【0003】
米国特許第5,523,007号は、ディーゼル機関潤滑油と、酸化防止剤としての、式:
【化1】


[式中、RとRは、それぞれ、他方から独立的に、C−C12アルキルであり、Xは、
【化2】


又はCH−S−Rであり、Rは、式:−C2n+1(式中、nは8〜22の整数である)で示される直鎖又は分枝鎖アルキルラジカルである]で示される化合物とを含む潤滑油組成物を開示している。
【0004】
米国特許第6,559,105号は、式:
【化3】


[式中、Rは、炭素原子数2〜6のアルキル基である]で示される酸化防止剤と、分散剤又はデタージェントとの組成物が、潤滑剤組成物のための有用な添加剤パッケージであることを開示している。
上記の開示は、それらの全体で本明細書に援用される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の概要)
少なくとも1種類のフェノール系化合物(phenolic)と、少なくとも1種類のチオエーテルとの組み合わせが、潤滑油組成物の酸化を抑制するのに非常に効果的であることが、今回発見された。ヒンダード・フェノール系化合物(hindered phenolic)は、チオエーテルと相乗作用して、酸化抑制に顕著な改良を生じる。
【0006】
さらに詳しくは、本発明は、潤滑剤と、少なくとも第1酸化防止剤と、第2酸化防止剤とを含み、該第1酸化防止剤がヒンダード・フェノール系化合物であり、該第2酸化防止剤がチオエーテルである組成物に関する。
【0007】
他の態様では、本発明は、潤滑剤の酸化安定性を高める方法であって、該潤滑剤に少なくとも第1酸化防止剤と、第2酸化防止剤とを加えることを含み、該第1酸化防止剤がヒンダード・フェノール系化合物であり、該第2酸化防止剤がチオエーテルである方法に関する。
【0008】
(好ましい形態の説明)
本発明によって、潤滑油組成物の酸化抑制に非常に効果的である、ヒンダード・フェノール系化合物とチオエーテルとの組み合わせが、発見されている。該ヒンダード・フェノール系化合物は、チオエーテルと相乗作用して、酸化抑制に顕著な改良を生じる。
【0009】
種々なヒンダード・フェノール系化合物を含有する潤滑剤組成物は、当該技術分野で広く知られている。潤滑油組成物にチオエーテルを用いることは、あまり知られていない。本発明は、当該技術分野で今までに知られていない、独特の組成物である、ヒンダード・フェノール系酸化防止剤とチオエーテルとの特定の最適ブランドに関する。
【0010】
本発明の実施に有用である立体障害フェノール(sterically hindered phenols)の好ましい例は、2,4−ジメチル−6−オクチル−フェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル−フェノール(即ち、ブチル化ヒドロキシトルエン);2,6−ジ−t−ブチル−4−エチル−フェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−n−ブチル−フェノール;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール);2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール;4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール;n−オクタデシル−β(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート;2,6−ジオクタデシル−4−メチルフェノール;2,4,6−トリメチルフェノール;2,4,6−トリイソプロピルフェノール;2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール;2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェノール;2,6−メチル−4−ジドデシルフェノール;トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシイソシアヌレート;及びトリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンを包含する。
【0011】
オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート(NAUGARD76,Crompton Corp.);テトラキス{メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナメート)}メタン(NAUGARD10,Crompton Corp.);2,2’−オキサミドビス{エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)}プロピオネート(NAUGARD XL−1,Crompton Corp.);1,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン(IRGANOX MD1024,Ciba Specialty Chemicals);1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン(IRGANOX3114,Ciba Specialty Chemicals);1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン(CYANOX1790,American Cyanamid Co.);1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(ETHANOX330,Albemarle Corp.);1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンによる3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ桂皮酸トリエステル;ビス(3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブタン酸)グリコールエステル;3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸によるC−C分枝アルコールのエステル(Crompton Corp.からのNaugalube532、Ciba Specialty ChemicalsからのIganox135);及び3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸によるC13−C15分枝アルコールのエステル(Durad AX−38,Great Lakes Chemical Corp.)が好ましい。
【0012】
700を超える分子量を有するヒンダード・フェノール類がより好ましく、特に、3個以上の置換フェノール基を含有するポリフェノール類、例えば、テトラキス{メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナメート)}メタン及び1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;並びに3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸によるC−C分枝アルコールのエステル及び3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸によるC13−C15分枝アルコールのエステルであるヒンダード・フェノール類が好ましい。
【0013】
本発明の実施に用いるための最も好ましいヒンダード・フェノール系化合物は、ブチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートである。
【0014】
本発明の実施に用いるチオエーテルは、好ましくは、構造:
【化4】


[式中、RとR’は、独立的に、直鎖及び分枝鎖アルキル基から成る群から選択される]で示されるジアルキルジチオプロピオネートである。好ましくは、該アルキル基は、炭素原子1〜24個、より好ましくは炭素原子8〜18個を含む。最も好ましくは、RとR’は同じであって、炭素原子13個を含む、即ち、ジトリデシルジチオプロピオネートが最も好ましい。
【0015】
特に、ヒンダード・フェノール系化合物、ブチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(式2)酸化防止剤は、室温においてワックス状固体である。
【化5】

【0016】
このブレンドの優れた酸化防止活性の他に、その独特の特徴は、式2で示される酸化防止剤と、式1で示されるチオエーテル(ジトリデシルジチオプロプリオネート)との適当な比率によって、液体生成物を製造することができることである。式2で示される酸化防止剤の40%濃縮物を超える液体濃縮物を製造するための他の試みは、成功していない。しかし、本発明によると、式1で示されるチオエーテルは、式2で示されるフェノール系酸化防止剤を溶解して、低温(0℃)において溶解状態で維持するために完全な液体である。
【0017】
好ましい重量比率は、ブレンドにおいて式2で示される酸化防止剤30〜70%と、式1で示される酸化防止剤70〜30%である。最も好ましい重量比率は、式2で示される酸化防止剤55%と、式1で示される酸化防止剤45%である。完成潤滑剤中に配合されたときの、この酸化防止剤混合物の範囲は、好ましくは0.05〜10.0重量%、より好ましくは0.1〜5.0重量%、最も好ましくは0.5〜2重量%である。
【0018】
本発明の酸化防止剤添加剤の組み合わせは、潤滑油中に通常見い出される他の添加剤並びに他の酸化防止剤と共に用いることができる。潤滑油中に通常見い出される添加剤は、例えば、分散剤、デタージェント、錆止め、酸化防止剤、金属活性低下剤、耐摩耗剤、消泡剤、摩擦調節剤(friction modifier)、シール膨潤剤(seal swell agent)、乳化破壊剤、粘度指数(VI)改良剤、流動点降下剤等である。有用な潤滑油組成物添加剤の説明に関しては、例えば、米国特許第5,498,809号を参照のこと、該特許の開示は、その全体で、本明細書に援用される。
【0019】
分散剤の例は、ポリイソブチレン・スクシンイミド、ポリイソブチレン・スクシネートエステル、Mannich Baseアッシュレス分散剤(ashless dispersants)等を包含する。デタージェントの例は、金属フェネート、金属スルホネート、金属サリチレート等を包含する。酸化防止剤の例は、アルキル化ジフェニルアミン、N−アルキル化フェニレンジアミン、ヒンダード・フェノール系化合物、アルキル化ヒドロキノン、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、アルキリデンビスフェノール、油溶性銅化合物等を包含する。本発明の添加剤と組み合わせて用いることができる耐摩耗剤添加剤の例は、有機ホウ酸塩、有機亜リン酸塩、有機硫黄含有化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛、リン硫化炭化水素等を包含する。摩擦調節剤の例は、脂肪酸エステルとアミド、有機モリブデン化合物、ジアルキルチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン等を包含する。消泡剤の例は、ポリシロキサン等である。錆止めの例は、ポリオキシアルキレン・ポリオール等である。VI改良剤の例は、オレフィンコポリマーと、分散剤オレフィンコポリマー等を包含する。流動点降下剤の例は、ポリメタクリレート等である。
【0020】
(潤滑剤組成物)
組成物は、該組成物が上記添加剤を含有する場合に、組成物中の添加剤がそれらの標準的な付帯機能を発揮するために有効であるような量で、典型的に基油中にブレンドされる。このような添加剤の典型的な有効量を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
他の添加剤を用いる場合に、本発明の主題添加剤(subject additives)の濃縮溶液若しくは分散液を(上記濃縮物量で)、前記他の添加剤の1種類以上と共に含む添加剤濃縮物(添加剤混合物を構成する場合の前記濃縮物を、本明細書では、添加剤パッケージと呼ぶ)を調製することが、必要ではないとしても、望ましいと考えられ、これによって、幾つかの添加剤を基油に同時に加えて、潤滑油組成物を形成することができる。潤滑油中への添加剤濃縮物の溶解は、溶媒によって及び/又は軽度な加熱を伴う混合によって、促進することができるが、このことは不可欠であるという訳ではない。濃縮物又は添加剤パッケージは、典型的に、該添加剤パッケージを所定量の基剤潤滑剤(base lubricant)と組み合わせる場合に、最終製剤中で所望の濃度になるような適当量で添加剤を含有するように、作製することができる。このように、本発明の主題添加剤は、少量の基油又は他の相容性溶媒に、他の望ましい添加剤と共に加えて、適当な割合で、典型的には約2.5〜約90重量%、好ましくは約15〜約72重量%、より好ましくは約25〜約60重量%添加剤という総量で有効成分を含有し、残部が基油である添加剤パッケージを形成することができる。最終製剤は、典型的に、約1〜20重量%の添加剤パッケージを、基油である残部と共に用いることができる。
【0023】
本明細書で表現する全ての重量%は(特に指定しない限り)、添加剤の有効成分(AI)含量に基づく、及び/又は各添加剤のAI重量プラス油若しくは希釈剤総量の重量の合計であると考えられる、いずれかの添加剤パッケージ又は製剤の総重量に基づくものである。
【0024】
一般に、本発明の添加剤は、多様な潤滑油ベースストックに有用である。該潤滑油ベースストックは、約2〜約200cSt、より好ましくは約3〜約150cSt及び最も好ましくは約3〜約100cStの100℃運動粘度を有する、任意の天然又は合成潤滑油ベースストック画分(fraction)である。該潤滑油ベースストックは、天然潤滑油、合成潤滑油又はこれらの混合物のいずれにも由来することもできる。適当な潤滑油ベースストックは、合成ワックス及びワックスの異性化によって得られるベースストック、並びに原油(the crude)の芳香族極性成分の水素化分解(溶媒抽出ではなく)によって得られる水素化分解物(hydrocrackate)ベースストックを包含する。天然潤滑油は、動物性油、植物性油(例えば、菜種油、ひまし油及びラード油)、石油、鉱油、並びに石炭又はシェールに由来する油を包含する。
【0025】
合成油は、炭化水素油及びハロ置換炭化水素油、例えば重合した及び共重合したオレフィン、アルキルベンゼン、ポリフェニル、アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジフェニルスルフィド、並びにこれらの誘導体、類似体、同族体等を包含する。合成潤滑油はまた、アルキレンオキシド・ポリマー、インターポリマー、コポリマー、及びこれらの誘導体も包含し、この場合、末端ヒドロキシル基はエステル化、エーテル化等によって修飾されている。
【0026】
合成潤滑油の他の適当なクラスは、種々なアルコールによるジカルボン酸のエステルを含む。合成油として有用なエステルは、C−C18モノカルボン酸とポリオール及びポリオールエーテルから製造されるエステルも包含する。
【0027】
珪素に基づく油(例えば、ポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−、又はポリアリールオキシ−シロキサン油及びシリケート油)は、合成潤滑油の別の有用なクラスを構成する。その他の合成潤滑油は、リン含有酸の液体エステル、ポリマー・テトラヒドロフラン、ポリα−オレフィン等を包含する。
【0028】
潤滑油は、非精製油、精製油、再精製油又はこれらの混合物から由来することができる。非精製油は、天然ソース又は合成ソース(例えば、石炭、シェール、又はタール及び瀝青)から直接、さらに精製することも処理することもなく、得られる。非精製油の例は、レトルト操作から直接得られるシェール油、蒸留から直接得られる石油、又はエステル化プロセスから直接得られるエステルを包含し、これらの各々は、その後、さらに処理することなく、用いられる。精製油は、精製油が1つ以上の性質を改良するために1つ以上の工程で処理されたものである点を除いて、非精製油と同じである。適当な精製技術は、蒸留、水素化処理、脱ワックス、溶媒抽出、酸若しくは塩基抽出、濾過、パーコレーション等を包含し、これらの全ては当業者に周知である。再精製油は、精製油を得るために用いられるプロセスと同様なプロセスで精製油を処理することによって得られる。これらの再精製油は、再生油又は再加工油としても知られ、しばしば、使用済み添加剤及び油分解生成物を除去する技術によって、付加的に加工される。
【0029】
ワックスの水素化異性化に由来する潤滑油ベースストックも、単独で又は上記天然及び/若しくは合成ベースストックと組み合わせて用いることができる。このようなワックス異性化油(wax isomerate oil)は、天然若しくは合成ワックス又はこれらの混合物の、水素化異性化触媒上での水素化異性化によって製造される。天然ワックスは、典型的には、鉱油の溶媒脱ワックスによって回収されるスラック・ワックス(slack wax)である;合成ワックスは、典型的には、Fischer−Tropschプロセスによって製造されるワックスである。得られる異性化生成物に対して、典型的に、溶媒脱ワックスと分留を行なって、特定の粘度範囲を有する種々な画分を回収する。ワックス異性化物は、非常に高い粘度指数を有することによって、一般には少なくとも130、好ましくは少なくとも135又はそれ以上のVIを有し、脱ワックス後には、約−20℃以下の流動点を有することによって、さらに特徴付けられる。
【0030】
本発明の添加剤は、多くの種類の潤滑剤、好ましくは潤滑油組成物の成分として、並びに燃料油組成物の成分として特に有用である。該添加剤は、天然及び合成潤滑油とそれらの混合物を包含する、潤滑性粘度を有する、種々な油中に含めることができる。該添加剤は、スパーク点火式及び圧縮点火式内燃機関のクランク室潤滑油に含めることができる。該組成物はさらに、ガス機関潤滑剤、タービン潤滑剤、オートマチック・トランスミッション流体、ギアー潤滑剤、コンプレッサー潤滑剤、金属加工用潤滑剤、油圧油、及び他の潤滑油とグリース組成物にも用いることができる。該添加剤は、モーター燃料組成物に用いることもできる。
【0031】
本発明の利点及び重要な特徴は、下記実施例からさらに明らかになるであろう。
【実施例】
【0032】
150℃におけるニトロ酸化試験(UNOT)を用いて、大量酸化ランを行なった。全ての場合に、ヘビーデューティ・ディーゼルエンジン油を用いた。全てのランは、エンジン油中の煤をシミュレートするためにカーボンブラック(CB)を存在させて行なった。全ての油は、下記条件下で試験した:
試験条件:
温度: 150℃
撹拌速度: 500rpm
流(8000ppmNO): 100ml/分
空気流(乾燥): 200ml/分
Fe触媒: 500μl
【0033】
ブチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートと、ジトリデシルジチオプロプリオネート(Naugard(登録商標)DTDTDP)との混合物を試験して、チオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)(Durad(登録商標)AX−15;Great Lakes Chemical)と比較した。ブチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとジトリデシルジチオプロプリオネートとの混合物を、1重量%のチオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)(UNOT#153&154)によって与えられるのと同じモル数のフェノール系化合物(phenolic)とスルフィドを該油に与えるように調節したケースを研究した。このモル調節した混合物は、チオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)と等モル数において同程度の良好な性能を与えた。1重量%のジトリデシルジチオプロプリオネートは、単独では、ヒンダード・フェノール系酸化防止剤と組み合わせた場合ほど効果的ではない。結果は、表2に示す。
【表2】


−HPは、ブチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートであり、DTDTDPは、ジトリデシルジチオプロプリオネートである。
【0034】
本発明の基礎をなす要旨から逸脱することなくなされうる、多くの変更及び修正を考慮して、本発明に与えられる保護の範囲を理解するために、特許請求の範囲を参照すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤と、少なくとも第1酸化防止剤と、第2酸化防止剤とを含む組成物であって、該第1酸化防止剤がヒンダード・フェノール系化合物であり、該第2酸化防止剤がチオエーテルである組成物。
【請求項2】
第1酸化防止剤が、2,4−ジメチル−6−オクチル−フェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル−フェノール(即ち、ブチル化ヒドロキシトルエン);2,6−ジ−t−ブチル−4−エチル−フェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−n−ブチル−フェノール;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール);2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール;4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール;n−オクタデシル−β(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート;2,6−ジオクタデシル−4−メチルフェノール;2,4,6−トリメチルフェノール;2,4,6−トリイソプロピルフェノール;2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール;2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェノール;2,6−メチル−4−ジドデシルフェノール;トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシイソシアヌレート;トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン;オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート;テトラキス{メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナメート)}メタン;2,2’−オキサミドビス{エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)}プロピオネート;1,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチルー4−ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン;1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン;1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン;1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンによる3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ桂皮酸トリエステル;ビス(3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブタン酸)グリコールエステル;テトラキス{メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナメート)}メタン;及び1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンから成る群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
第2酸化防止剤が、構造:
【化1】


[式中、RとR’は、直鎖及び分枝鎖アルキル基から成る群から独立的に選択される]で示されるジアルキルジチオプロピオネートである、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
第2酸化防止剤が、ジトリデシルジチオプロプリオネートである、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
第1酸化防止剤の、第2酸化防止剤に対する比率が約70:30から約30:70までの範囲内である、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
分散剤、デタージェント、錆止め、酸化防止剤、金属活性低下剤、耐摩耗剤、消泡剤、摩擦調節剤、シール膨潤剤、乳化破壊剤、VI改良剤、及び流動点降下剤から成る群から選択される、少なくとも1種類の付加的添加剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
潤滑剤の酸化安定性を高める方法であって、該潤滑剤に少なくとも第1酸化防止剤と、第2酸化防止剤とを加えることを含み、該第1酸化防止剤がヒンダード・フェノール系化合物であり、該第2酸化防止剤がチオエーテルである方法。
【請求項8】
第1酸化防止剤が、2,4−ジメチル−6−オクチル−フェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル−フェノール(即ち、ブチル化ヒドロキシトルエン);2,6−ジ−t−ブチル−4−エチル−フェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−n−ブチル−フェノール;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール);2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール;4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール;n−オクタデシル−β(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート;2,6−ジオクタデシル−4−メチルフェノール;2,4,6−トリメチルフェノール;2,4,6−トリイソプロピルフェノール;2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール;2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェノール;2,6−メチル−4−ジドデシルフェノール;トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシイソシアヌレート;トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン;オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート;テトラキス{メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナメート)}メタン;2,2’−オキサミドビス{エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)}プロピオネート;1,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチルー4−ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン;1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン;1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン;1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンによる3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ桂皮酸トリエステル;ビス(3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブタン酸)グリコールエステル;テトラキス{メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナメート)}メタン;及び1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンから成る群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
第1酸化防止剤が、ブチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートである、請求項7記載の方法。
【請求項10】
第2酸化防止剤が、構造:
【化2】


[式中、RとR’は、直鎖及び分枝鎖アルキル基から成る群から独立的に選択される]で示されるジアルキルジチオプロピオネートである、請求項7記載の方法。
【請求項11】
第2酸化防止剤が、ジトリデシルジチオプロプリオネートである、請求項7記載の方法。
【請求項12】
第1酸化防止剤の、第2酸化防止剤に対する比率が約70:30から約30:70までの範囲内である、請求項7記載の方法。
【請求項13】
分散剤、デタージェント、錆止め、酸化防止剤、金属活性低下剤、耐摩耗剤、消泡剤、摩擦調節剤、シール膨潤剤、乳化破壊剤、VI改良剤、及び流動点降下剤から成る群から選択される、少なくとも1種類の付加的添加剤をさらに含む、請求項7記載の方法。

【公表番号】特表2007−520618(P2007−520618A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552149(P2006−552149)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/002417
【国際公開番号】WO2005/078054
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(505365356)ケムチュア コーポレイション (50)
【Fターム(参考)】