説明

酸性環境中において高エステルペクチンを用いてタンパク質を安定化するためのプロセス

【課題】酸性環境であるがその環境の粘度に不利な影響を及ぼすことなくタンパク質を安定化する方法の提供。
【解決手段】以下:a)ペクチンをブロックワイズで酵素的に脱エステル化し得る精製PME酵素を、該ペクチン骨格の長さを実質的に減少するために酵素ポリガラクツロナーゼで事前に処理されていないペクチンに添加する工程;b)ペクチンをブロックワイズで酵素的に脱エステル化し得る精製PMEによって、該ペクチンからブロックワイズの酵素的に脱エステル化したペクチンを調製する工程;c)該ブロックワイズの酵素的脱エステル化したペクチンを少なくとも1つのタンパク質を含む酸性環境に添加する工程;およびd)該ブロックワイズの酵素的に脱エステル化したペクチンによって、該タンパク質を安定化する工程を包含する、プロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスおよびこのようなプロセスに使用するための酵素に関する。
【0002】
特に、本発明は、酵素的に改変されたペクチンを調製および使用するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
ペクチンは、今日の産業において重要な商品である。例えば、これは、濃化剤またはゲル化剤として、ジャムの調製におけるような、食品産業で使用され得る。
【0004】
ペクチンは、通常、植物細胞壁にプロトペクチンの形態で見いだされる構造多糖類である。ペクチンの骨格は、少数の1,2結合したα-L-ラムノース単位で断続されるα-1-4結合したガラクツロン酸残基を含む。さらに、ペクチンは、ほとんど交互になっているラムノ−ガラクツロナン鎖とともに高度に分枝した領域を含む。これらの高度に分枝した領域はまた、ラムノース単位のC3またはC4原子あるいはガラクツロン酸単位のC2またはC3原子へのグリコシド結合によって結合される他の糖単位(例えば、D-ガラクトース、L-アラビノース、およびキシロースなど)を含む。α-1-4結合したガラクツロン酸残基の長鎖は、通常「平滑」領域と呼ばれるが、高度に分枝した領域は、通常「毛状領域」と呼ばれる。
【0005】
ガラクツロン残基のカルボキシル基のいくつかはエステル化される(例えば、カルボキシル基がメチル化される)。代表的には、カルボキシル基のエステル化は、ガラクツロン酸残基の重合化後に生じる。しかし、すべてのカルボキシル基がエステル化(例えば、メチル化)されることは非常にまれである。通常、エステル化の程度は0〜90%で変化する。50%以上のカルボキシル基がエステル化されると、得られるペクチンは、「高エステルペクチン」(略して「HEペクチン」)または「高メトキシルペクチン」と呼ばれる。50%未満のカルボキシル基がエステル化されると、得られるペクチンは「低エステルペクチン」(略して「LEペクチン」)または「低メトキシルペクチン」と呼ばれる。ペクチンが全くまたは2、3しかエステル化した基を含まなければ、通常、ペクチン酸と呼ばれる。
【0006】
ペクチンの構造、特にエステル化(例えば、メチル化)の程度は、ペクチンの多くの結果としてもたらされる物理学的および/または化学的特性を指示する。例えば、ペクチンのゲル化は、ペクチンの化学的性質、特にエステル化の程度に依存する。しかし、さらに、ペクチンのゲル化はまた、可溶化固体含量、pH、およびカルシウムイオン濃度に依存する。後者に関しては、カルシウムイオンが、カルボキシル基、特にLEペクチン上の遊離のカルボキシル基と複合体を形成すると考えられる。
【0007】
ペクチン酵素は、ペクチン分子のガラクツロナン部分への攻撃の様式に従って分類される。いくつかのペクチン酵素の総説は、PilnikおよびVoragen(Food Enzymology, P.F.Fox編; Elsevier; (1991); 303-337頁)によって作成されている。特に、ペクチンメチルエステラーゼ(EC3.1.1.11)(他にPMEと呼ばれる)は、HEペクチンをLEペクチンまたはペクチン酸に脱エステル化する。対照的に、および例として、ペクチンデポリメラーゼは、ガラクツロノシルメチルエステル残基間のグリコシル結合を分裂させる。
【0008】
より詳細には、PME活性は、遊離のカルボキシル基および遊離のメタノールを生成する
。遊離のカルボキシル基の増加は、自動化滴定によって容易にモニターされ得る。これに関して、初期の研究は、いくつかのPMEが、1つより多くのペクチン鎖上のエステル化し
た(例えば、メチル化した)ガラクツロン酸残基のいずれかを脱エステル化するという意味で、ランダムな様式でペクチンを脱エステル化することを示している。ペクチンをランダムに脱エステル化するPMEの例は、Aspergillus aculeatus(WO 94/25575を参照のこと
)およびAspergillus japonicus(Ishiiら J Food Sci 44 611-14頁)のような真菌供給
源から得られ得る。Baronら(Lebensm. Wiss. M-Technol 13 330-333頁)は明らかに、Aspergillus nigerから真菌PMEを単離している。この真菌PMEは、39000Dの分子量、3.9の等電点、4.5の至適pH、および3のK値(mg/ml)を有することが報告されている。
【0009】
対照的に、いくつかのPMEは、これらが非還元末端でまたは遊離のカルボキシル基の隣
でのいずれかでペクチンを攻撃し、次いで一本鎖メカニズムによってペクチン分子にそって続行し、それによって非常にカルシウム感受性である非エステル化ガラクツロン酸単位のブロックを生成すると考えられているという意味で、ブロックワイズ様式でペクチンを脱エステル化することが公知である。ペクチンをブロックワイズに酵素的に脱エステル化するこのような酵素の例は、植物PMEである。PMEの12までのイソ形態は、柑橘類中に存在することが示唆されている(PilnikW.およびVoragen A.G.J. (Food Enzymology (P.F.Fox編); Elsevier; (1991); 303-337頁)。これらのイソ形態は、異なる特性を有する。
【0010】
Versteegら(J Food Sci 45 969-971頁)は、明らかに、オレンジからPMEを単離している。この植物PMEは、異なる特性の複数のイソ形態に存在することが報告される。イソ形
態Iは、36000Dの分子量、10.0の等電点、7.6の至適pH、および0.083のK値(mg/ml)
を有する。イソ形態IIは、36200Dの分子量、11.0の等電点、8.8の至適pH、および0.0046
のK値(mg/ml)を有する。イソ形態III(HMW-PE)は、54000Dの分子量、10.2の等電点、8の至適pH、および0.041のK値(mg/ml)を有する。しかし、今日までのところ、このようなPMEについては非常に限定された配列データがあった。
【0011】
PilnikおよびVoragen(同上)によれば、PMEは多くの他の高等植物中に見いだされ得、例えば、リンゴ、アンズ、アボカド、バナナ、イチゴ、ライム、グレープフルーツ、マンダンリン、サクランボ、スグリ、ブドウ、マンゴ、パパイヤ、パッションフルーツ、モモ、西洋ナシ、プラム、マメ、ニンジン、カリフラワー、キュウリ、ニラ、タマネギ、エンドウマメ、ポテト、ダイコン、およびトマトである。しかし、同様に、今日までのところ、このようなPMEについては非常に限定された配列データがあった。
【0012】
遊離のカルボキシル基のランダムまたはブロックワイズ分布は、高速イオン交換クロマトグラフィーによって区別され得る(ScholsらFood Hydrocolloids 1989 6 115-121頁)
。これらのテストは、低温殺菌後に柑橘類果汁中の望ましくない残りのPME活性について
チェックするためにしばしば使用される。なぜなら、残りのPMEは、果汁中のメタノール
の構成の他に、オレンジ果汁中に「曇りなし(cloud loss)」と呼ばれるものを生じ得るからである。
【0013】
PMEは、産業において重要な用途を有する。例えば、これらはカルシウムイオンに対す
る封鎖剤にまたは封鎖剤として使用され得る。これに関して、ならびにPilnikおよびVoragen(同上)によれば、家畜の餌は、果汁抽出後に水酸化カルシウムのスラリーを柑橘類
の皮に添加することによって調製され得る。添加後、高いpHおよびカルシウムイオンは、皮において任意の天然のPMEを活性化してペクチンの迅速な脱エステル化を引き起こし、
そしてペクチン酸カルシウム凝集を生じる。結合した液相は放出され、そして容易に押し出されて、その結果、元の水含有物の画分のみが高価な熱乾燥によって除去される必要がある。次いで圧搾液体は動物の餌として使用される。
【0014】
PilnikおよびVoragen(同上)は、外因性PMEの使用を挙げ、これらは、果物に由来する非常に多くのペクチンを含む場合に、果汁の粘度を減少させるために果汁へ添加すること
、未処理の果汁袋からの皮および他の膜の除去を容易にするために、20〜40℃の中心温度に加熱されている柑橘類の果物のアルベドにおいて気泡へペクチナーゼ溶液としてそれらを添加すること(US-A-4284651)、ならびにいくつかの加工した果物および野菜(例えば、リンゴ(WileyおよびLee1970 Food Technol 24 1168-70)、缶詰にしたトマト(Hsuら1965 J Food Sci 30583-588頁)、およびポテト(BartolomeおよびHoff 1972 J Agric Food Chem 20 262-266頁))の構造および堅さを保護および改良することにおいてそれら
を使用することを包含する。
【0015】
GlahnおよびRolin(1994 Food Ingredients Europe, Conf Proceedings 252-256頁)は、サワーミルク飲料と相互作用させるための工業用「GENU pectin type YM-100」の仮説の適用を報告する。GENU pectin type YM-100がどのように調製されるかについてすべては詳細に示されていない。
【0016】
EP-A-0664300は、カルシウム感受性ペクチンを調製するための化学的分画方法を開示する。このカルシウム感受性ペクチンは、食品産業に好都合であるといわれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、PMEに加えて、ペクチンおよび脱エステル化ペクチンが、産業的重要性を
有する。しかし、酸性環境であるがその環境の粘度に不利な影響を及ぼすことなくタンパク質を安定化する公知の方法を改良するということが継続して求められている。これに関して、この環境の粘度への不利な影響は、得られる産物の全体の外観および/または構造および/または風味の良さおよび/または口当たりを悪くし得る。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の局面によれば、少なくとも1つのタンパク質含む酸性環境に、ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチンを添加する工程を包含するプロセスが提供され、ここでペクチンは高エステルペクチンである。
【0019】
本発明の第2の局面によれば、配列番号1もしくは配列番号2に示すアミノ酸配列のいずれか1つを含む組換え酵素、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログ(それらの組み合わせを含む)でペクチンを処理する工程を包含する、ペクチンをブロックワイズに酵素的に脱エステル化する方法が提供される。
【0020】
本発明の第3の局面によれば、配列番号1もしくは配列番号2に示すアミノ酸配列のいずれか1つを含む組換え酵素、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログ(それらの組み合わせを含む)が提供される。
【0021】
本発明の第4の局面によれば、本発明の組換え酵素をコードするヌクレオチド配列が提供され、ここでヌクレオチド配列は、配列番号3もしくは配列番号4に示す配列のいずれか1つ、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログを含む。
【0022】
本発明の第5の局面によれば、本発明の組換え酵素をコードするヌクレオチド配列が提供され、ここでヌクレオチド配列は、NCIMB 40749もしくはNCIMB 40750、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログから得られ得る。
【0023】
本発明の第6の局面によれば、本発明の組換え酵素または本発明のヌクレオチド配列を発現するまたは含む構築物が提供される。
【0024】
本発明の第7の局面によれば、本発明の構築物または本発明の組換え酵素または本発明
のヌクレオチド配列を発現するまたは含むベクターが提供される。
【0025】
本発明の第8の局面によれば、本発明の組換え酵素または本発明のヌクレオチド配列を発現するまたは含む少なくとも第1の構築物;ならびに目的の遺伝子(GOI)およびプロ
モーターを含む第2の構築物を含む構築物の組み合わせが提供される。
【0026】
本発明の第9の局面によれば、本発明のベクターまたは本発明の構築物または本発明の組換え酵素または本発明のヌクレオチド配列または本発明の構築物の組み合わせを発現するまたは含む細胞、組織、または器官が提供される。
【0027】
本発明の第10の局面によれば、本発明の上記の局面のいずれかを発現するまたは含むトランスジェニック生物が提供される。
【0028】
本発明の第11の局面によれば、NCIMB 40749またはNCIMB 40750が提供される。
【0029】
本発明の第12の局面によれば、トマトPME酵素ではなく、本発明の第3の局面による精
製組換え酵素に対して惹起した抗体と免疫学的に反応する組換えPME酵素が提供される。
【0030】
本発明の第13の局面によれば、ペクチンのエステル基の数を減少するための本発明の組換え酵素の使用を提供する。
【0031】
本発明の第14の局面によれば、ブロックワイズの様式でペクチンを脱エステル化するための本発明の組換え酵素の使用が提供される。
【0032】
本発明の第15の局面によれば、ペクチンのカルシウム感受性に影響を及ぼすための本発明の組換え酵素の使用が提供される。
【0033】
本発明の第16の局面によれば、遊離のカルボキシル基を含むペクチンをエステル化するための本発明の組換え酵素の使用が提供される。
【0034】
本発明の第17の局面によれば、本発明の方法によるような、本発明の組換え酵素の使用によって得られ得るペクチンが提供される。
【0035】
本発明の第18の局面によれば、本発明の組換え酵素および真菌PMEおよび/または他の
ペクチン分解酵素(例えば、ペクチンライアーゼ)を含む酵素の組み合わせが提供される。
【0036】
本発明の他の局面には、食料品を調製するための本発明のペクチンの使用;および環境の粘度に不利な影響を及ぼすことなく酸性環境でタンパク質を安定化するための本発明のペクチンの使用;および本発明の酵素をコードする組換えヌクレオチド配列が挙げられる。
【0037】
したがって、本発明は、脱エステル化したペクチンの新しい使用に関する。本発明はまた、このようなペクチンを調製するための新しい組換えPMEに関する。
【0038】
本発明の重要な有利点のいくつかは、本発明の脱エステル化されたペクチンが、環境の粘度に不利な影響を及ぼすことなく酸性環境でタンパク質に安定化を与えることである。
【0039】
本発明の第1の局面の好ましい実施態様は、少なくとも1つのタンパク質を含む酸性環境に、ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチンを添加する工程を包含し、
ここでペクチンは、組換えDNA技法の使用によって調製された高エステルペクチンである
、プロセスである。
【0040】
用語「組換えDNA技法の使用によって調製されたブロックワイズに酵素的に脱エステル
化されたペクチン」とは、ブロックワイズに脱エステル化された基を含むペクチンを意味し、ここでこのペクチンは、組換えDNA技法の使用によって調製されている酵素でエステ
ル化した基を含むペクチンを処理(例えば、接触)することによって調製される。
【0041】
本発明のこの好ましい局面の重要な有利点のいくつかは、脱エステル化したペクチンが容易に、そして相対程度の粘性で調製され得ることである。これに関して、組換えPME自
体は、かなり簡単および容易に、ならびに高い程度の均一性まで調製され得る。これは次に、および先行技術のPME調製物とは異なり、得られるPME活性がより一致しそして均質であるため、全体の脱エステル化プロセスがより制御されることが可能となることを意味する。
【0042】
酸性環境で少なくとも1つのタンパク質を安定化するために、本発明のプロセスにおけるブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチンを使用すること−これは好ましくは組換えDNA技法の使用によって調製される−は、乳清およびミルクタンパク質(例え
ば、カゼイン)のようなタンパク質を酸性溶液中で安定にさせるので、有用である。これは、スキムミルク、果汁、および乳清タンパク質飲料のような飲料市場に重要である。この分野では、以前は、高量の安定化剤が存在したならば、pH4.2のようなかなり高い酸性
条件下で重要なタンパク質の風味を保持することのみが可能であった。
【0043】
発明者らは、いくつかの適用について、本発明の少量の脱エステル化されたペクチンが用いられ得ることを、現在見いだしている。これらの低レベルで、本発明の脱エステル化されたペクチンは、安定化剤として作用するだけでなく、最終産物に不利な影響を与えない。
【0044】
所望であれば、本発明の脱エステル化されたペクチンの使用は、食品製造業者が飲料のような食品のpHを増加させることを可能にする。これに関して、いくつかの場合には、飲料のより酸性でない性質は、さらに人々、特に幼児の口に合うようにし得る。したがって、先行技術のプロセスとは対照的に、現在は、ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチン、特に組換えDNA技法の使用によって調製されたブロックワイズに酵素的に
脱エステル化されたペクチンの使用によって、pH5.5までのような4.2よりも高いpH条件(例えば、pH5.2)でそれらのタンパク質の風味を保持することが可能である。
【0045】
さらに、pH4.2またはそれより低いような低いpH条件下でさえも、ブロックワイズに酵
素的に脱エステル化されたペクチン−特に組換えDNA技法の使用によって調製されたブロ
ックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチン−は、これらのpH条件に使用される先行技術の安定化剤よりもタンパク質を安定化すると考えられている。
【0046】
さらなる利点は、組換えPMEが、実質的に均質なブロックワイズの脱エステル化ペクチ
ンを産生し得ることである。これによって、実質的にすべてのペクチン鎖が、少なくとも2つの隣接する脱エステル化されたカルボキシル基を含むことを意味する。しかし、いくつかの適用については、このような実質的に均質なブロックワイズの脱エステル化ペクチンを調製または使用することが必要であり得ない。
【0047】
理論によって結びつけることを望むことなく、ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチン−特に組換えDNA技法の使用によって調製されたペクチン−は、負電荷の
ブランケットでタンパク質を取り囲んで、そうして安定な乳濁物を形成することによって
タンパク質を安定化する。
【0048】
本発明の組換えPME酵素は、ペクチンが実質的な水性培地中で組換え酵素と接触する場
合、ペクチンをブロックワイズに脱エステル化するために有用である。いくつかの場合、ペクチンを脱エステル化することは、ペクチンのカルシウムイオン感受性を増加させ得る−これは同様に有利であり得る。
【0049】
あるいは、本発明の組換えPME酵素は、ペクチンが実質的な非水性培地中で、例えば、
メタノールの存在下、または高濃度の硫酸アンモニウムの存在下で、組換え酵素と接触する場合、ペクチンをエステル化するために有用である。この局面は、例えば、ペクチンのカルシウム感受性を減少させることが所望される場合、有利である。
【0050】
ペクチンをエステル化するこの方法は、先行技術のプロセスに関連する高温およびメタノールエステル化条件への必要性を除去するので、有利である。したがって、本発明はまた、食料品の調製におけるそのエステル化されたペクチンならびにペクチン自体の使用を包含する。
【0051】
本発明によれば、本発明の脱エステル化ペクチンは、食料品の調製に有利である。
【0052】
代表的な食料品には、乳製品、肉製品、家禽製品、魚製品、およびパン製品が挙げられる。好ましくは、食料品は飲料である。
【0053】
本発明の脱エステル化されたペクチンはまた、医薬品、医療用具、化粧品、および化粧用具の調製における安定化剤および/または粘度調セクション剤としての使用に有利である。
【0054】
好ましくは、酸性環境は水溶液である。
【0055】
好ましくは、水溶液は飲料である。
【0056】
好ましくは、飲料は、飲用ヨーグルト、果汁、または乳清タンパク質を含む飲料である。
【0057】
好ましくは、このタンパク質は、ミルクまたはチーズのような乳製品に由来するまたは由来し得る。
【0058】
好ましくは、このタンパク質はカゼインまたは乳清タンパク質である。
【0059】
好ましくは、酸性環境は、約3.5〜約5.5のpHを有する。
【0060】
好ましくは、酸性環境は4〜約5.5のpHを有する。
【0061】
好ましくは、ここでは酸性環境は約4のpHを有する。
【0062】
好ましくは、ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチン、特に組換えDNA
技法の使用によって調製されたペクチンは、約80%またはそれより少ないエステル基(すなわち、80%またはそれより少ないエステル化(DE)の程度)、好ましくは約75%またはそれより少ないエステル基(すなわち、75%またはそれより少ないDEの程度)を含む高エステルペクチンである。これに関して、エステル化カルボキシル基に対するペクチンにおける遊離のカルボキシル基の比は、1:1〜1:4、好ましくは1:2〜1:3である。
【0063】
好ましくは、ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチンは約76%エステル基を含む。
【0064】
いくつかの場合には、好ましくは、ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチンは、Ca2+イオンに感受性である。カルシウム感受性は、実施例に記載のプロトコルに従って決定され得る。
【0065】
しかし、より好ましくは、ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチン、特に組換えDNA技法によって調製されたペクチンは、 Ca2+イオンに非感受性である。カルシウム非感受性は、実施例に記載のプロトコルに従って決定され得る。
【0066】
好ましくは、ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチンは、高分子量を有する。
【0067】
代表的には、分子量は、約50KDから約150KDまでの間である。
【0068】
好ましくは、ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチンは、少なくとも実質的にすべてのペクチン鎖におけるペクチンの2つ以上の隣接するガラクツロン酸残基を脱エステル化する組換えペクチンメチルエステラーゼでペクチンを処理することによって調製される。
【0069】
好ましくは、組換えペクチンメチルエステラーゼは、植物から得られ得るPMEに由来す
る。
【0070】
用語「植物から得られ得るPMEに由来する」とは、組換えPMEがブロックワイズの様式でペクチンを脱エステル化し得るならば、組換えPMEが、植物から得られ得るPMEの配列と類似の配列を有することを意味する。
【0071】
好ましくは、植物は果物である。
【0072】
好ましくは、果物は柑橘類の果物である。
【0073】
好ましくは、柑橘類の果物はオレンジである。
【0074】
好ましくは、組換えペクチンメチルエステラーゼは、オレンジのラメラまたはアルベドから得られ得るPMEに由来する。参考のために、代表的な柑橘類の果物の断面を図1に示
し、ここにはラメラおよびアルベドを示す。用語「オレンジのラメラまたはアルベドから得られ得るPMEに由来する」とは、組換えPMEがブロックワイズの様式でペクチンを脱エステル化し得るならば、組換えPMEがオレンジのラメラまたはアルベドから得られ得るPMEの配列と類似の配列を有することを意味する。
【0075】
好ましくは、ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチンは、配列番号1もしくは配列番号2に示すアミノ酸配列のいずれか1つを含む組換え酵素、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログ(それらの組み合わせを含む)でペクチンを処理することによって調製される。
【0076】
好ましくは、ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチンは、配列番号3もしくは配列番号4に示すヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列の発現によって得られ得る組換え酵素、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログ、あるいはそれらの組み
合わせでペクチンを処理することによって調製される。
【0077】
好ましくは、ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチンは、NCIMB 40749
またはNCIMB 40750に含まれるPMEコード配列の発現によって得られ得る組換え酵素、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログ、あるいはそれらの組み合わせでペクチンを処理することによって調製される。
【0078】
好ましくは、ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチンは、ナトリウムイオンの存在下で組換えペクチンメチルエステラーゼでペクチンを処理することによって調製される。
【0079】
好ましくは、組換えDNA技法によって調製されたブロックワイズに酵素的に脱エステル
化されたペクチンは、NaCl、NaNO、またはNaSOの存在下で組換えペクチンメチルエステラーゼでペクチンを処理することによって調製される。
【0080】
好ましくは、組換え酵素は、配列番号1または配列番号2に示す配列のすべてを含む。
【0081】
好ましくは、組換え酵素は、配列番号3または配列番号4に示す配列のすべてを含むヌクレオチド配列によって発現される。
【0082】
本発明はまた、上記の配列に相補的である配列を包含する。
【0083】
用語「ペクチン」には、その正常な意味でのペクチン、ならびにその分別物および誘導体、ならびに改変されたペクチン(例えば、化学的に改変されたペクチンおよび酵素的に改変されたペクチン)が含まれる。
【0084】
好ましくは、ペクチンは、ペクチン骨格の長さを実質的に減少するために酵素ポリガラクツロナーゼで先に処理されているペクチンではない。
項目1.少なくとも1つのタンパク質を含む酸性環境に、ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチンを添加する工程を包含するプロセスであって、ここで該ペクチンが高エステルペクチンである、プロセス。
項目2.前記ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチンが、組換えDNA技法
によって調製される、項目1に記載のプロセス。
項目3.前記酸性環境が水溶液であり、好ましくは、該水溶液が飲料である、項目1または項目2に記載のプロセス。
項目4.前記飲料が、飲用ヨーグルト、果汁、または乳清タンパク質を含む飲料である、項目3に記載のプロセス。
項目5.前記タンパク質が、ミルクまたはチーズのような乳製品に由来する、または由来し得る、または乳製品中に存在する、項目1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
項目6.前記タンパク質が、カゼインまたは乳清タンパク質である、項目5に記載のプロセス。
項目7.前記酸性環境が約3.5〜約5.5のpHを有し、好ましくは、該酸性環境が4〜約5.5
のpHを有する、項目1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
項目8.前記酸性環境が約4のpHを有する、項目1〜7のいずれか一項に記載のプロセス。
項目9.組換えDNA技法の使用によって調製された前記ブロックワイズに酵素的に脱エス
テル化されたペクチンが、約70%〜約80%のエステル基、好ましくは約76%のエステル基を含む、項目1〜8のいずれか一項に記載のプロセス。
項目10.組換えDNA技法によって調製された前記ブロックワイズに酵素的に脱エステル
化されたペクチンが、実施例に記載されるようなプロトコルのCa2+イオンに非感受性で
ある、項目1〜9のいずれか一項に記載のプロセス。
項目11.組換えDNA技法によって調製された前記ブロックワイズに酵素的に脱エステル
化されたペクチンが、高分子量を有する、項目1〜10のいずれか一項に記載のプロセス。
項目12.組換えDNA技法によって調製された前記ブロックワイズに酵素的に脱エステル
化されたペクチンが、少なくとも実質的にすべてのペクチン鎖におけるペクチンの2つ以上の隣接するガラクツロン酸残基を脱エステル化する組換えペクチンメチルエステラーゼを用いてペクチンを処理する工程によって調製される、項目1〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
項目13.前記組換えペクチンメチルエステラーゼが、植物から得られ得るPMEに由来す
る、項目1〜12のいずれか一項に記載のプロセス。
項目14.前記植物が果物である、項目13に記載のプロセス。
項目15.前記果物が柑橘類の果物である、項目14に記載のプロセス。
項目16.前記柑橘類の果物がオレンジである、項目15に記載のプロセス。
項目17.前記組換えペクチンメチルエステラーゼが、オレンジのラメラまたはアルベドから得られ得るPMEに由来する、項目13〜16のいずれか一項に記載のプロセス。
項目18.前記ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチンが、配列番号1もしくは配列番号2に示すアミノ酸配列のいずれか1つを含む組換え酵素、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログ、それらの組み合わせを含むものを用いてペクチンを処理する工程によって調製される、項目1〜17のいずれか一項に記載のプロセス。
項目19.前記ブロックワイズに酵素的に分解されたペクチンが、NCIMB 40749もしくはNCIMB 40750に含まれるPMEコード配列の発現によって得られ得る組換え酵素、またはその
改変体、誘導体、もしくはホモログ、またはそれらの組み合わせ;あるいは、配列番号3もしくは配列番号4に示すヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列の発現によって得られ得る組換え酵素、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログ、またはそれらの組み合わせを用いてペクチンを処理する工程によって調製される、項目1〜18のいずれか一項に記載のプロセス。
項目20.前記ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチンが、ナトリウムイオンの存在下で前記組換えペクチンメチルエステラーゼを用いてペクチンを処理する工程によって調製される、項目12〜19のいずれか一項に記載のプロセス。
項目21.前記ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチンが、NaCl、NaNO、またはNaSOの存在下で前記組換えペクチンメチルエステラーゼを用いてペクチンを処理する工程によって調製される、項目20に記載のプロセス。
項目22.ペクチンをブロックワイズに酵素的に脱エステル化する方法であって、配列番号1もしくは配列番号2に示すアミノ酸配列のいずれか1つを含む組換え酵素、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログ、それらの組み合わせを含むものを用いてペクチンを処理する工程を包含する、方法。
項目23.前記ブロックワイズに酵素的に分解されたペクチンが、NCIMB 40749もしくはNCIMB 40750に含まれるPMEコード配列の発現によって得られ得る組換え酵素、またはその
改変体、誘導体、もしくはホモログを用いてペクチンを処理する工程によって調製される、項目22に記載の方法。
項目24.前記ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチンが、ナトリウムイオンの存在下で前記組換えペクチンメチルエステラーゼを用いてペクチンを処理する工程によって調製される、項目22〜23に記載の方法。
項目25.前記ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチンが、NaCl、NaNO、またはNaSOの存在下で前記組換えペクチンメチルエステラーゼを用いてペクチンを処理する工程によって調製される、項目24に記載の方法。
項目26.配列番号1もしくは配列番号2に示すアミノ酸配列のいずれか1つを含む組換え酵素、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログ、それらの組み合わせを含むもの。
項目27.前記ヌクレオチド配列が配列番号3もしくは配列番号4に示す配列のいずれか1つを含む項目26に記載の組換え酵素をコードするヌクレオチド配列、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログ。
項目28.前記ヌクレオチド配列がNCIMB 40749もしくはNCIMB 40750から得られ得る項目26に記載の組換え酵素をコードするヌクレオチド配列、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログ。
項目29.項目26に記載の組換え酵素、あるいは項目27または28に記載のヌクレオチド配列を発現するまたは含む構築物。
項目30.項目29に記載の構築物、あるいは項目26に記載の組換え酵素、あるいは項目27または28に記載のヌクレオチド配列を発現するまたは含むベクター。
項目31.項目26に記載の組換え酵素あるいは項目27または28に記載のヌクレオチド配列を発現するまたは含む少なくとも1つの第1の構築物;ならびに目的の遺伝子(GOI)およびプロモーターを含む第2の構築物を含む構築物の組み合わせ。
項目32.項目30に記載のベクター、あるいは項目29に記載の構築物、あるいは項目26に記載の組換え酵素、あるいは項目27または28に記載のヌクレオチド配列、あるいは項目31に記載の構築物の組み合わせを発現するまたは含む細胞、組織、または器官。
項目33.項目26〜32のいずれか一項に記載の発明を発現するまたは含むトランスジェニック生物。
項目34.NCIMB 40749またはNCIMB 40750。
項目35.トマトPME酵素ではなく、項目26に記載の精製組換え酵素に対して惹起した
抗体と免疫学的に反応性である、組換えPME酵素。
項目36.ペクチンのエステル基の数を減少するための項目26または項目35に記載の組換え酵素の使用。
項目37.ブロックワイズの様式でペクチンを脱エステル化するための項目26または項目35に記載の組換え酵素の使用。
項目38.ペクチンのカルシウム感受性に影響を及ぼすための項目26または項目35に記載の組換え酵素の使用。
項目39.遊離のカルボキシル基を含むペクチンをエステル化するための項目26または項目35に記載の組換え酵素の使用。
項目40.項目26または項目35に記載の組換え酵素の使用によって得られ得るペクチン。
項目41.食料品を調製するための項目40に記載のペクチンの使用。
項目42.環境の粘度に不利な影響を及ぼすことなく酸性環境においてタンパク質を安定化するための、項目40に記載のペクチンの使用。
項目43.項目26または項目35に記載の組換え酵素および真菌PMEまたは他のペクチ
ン分解酵素を含む酵素の組み合わせ。
項目44.タンパク質に熱安定性を与えるまたは増加させることにおける使用に適切な、配列番号5に示す配列、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログを含むアミノ酸配列。
項目45.タンパク質に熱安定性を与えるまたは増加させるためのアミノ酸配列を発現させることにおける使用に適切な、配列番号6に示す配列、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログを含むヌクレオチド配列。
項目46.項目26に記載の酵素をコードする組換えヌクレオチド配列。
項目47.実質的に本明細書に記載される組換えPME酵素。
項目48.実質的に本明細書に記載される組換えPME酵素の使用によって調製されるペク
チン。
【発明の効果】
【0085】
酸性環境であるがその環境の粘度に不利な影響を及ぼすことなくタンパク質を安定化し、
かつ、この環境の粘度への不利な影響を与えなず、得られる産物の全体の外観および/または構造および/または風味の良さおよび/または口当たりを悪くしない方法が提供された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0086】
本発明の組換え酵素に関して、用語「改変体」、「ホモログ」、または「フラグメント」には、得られるアミノ酸配列が、PME活性を有し、好ましくは配列番号1および2に示
す配列のいずれか1つ以上を含む組換え酵素の少なくとも同一の活性を有するならば、配列からのまたは配列への1つ(またはそれより多くの)アミノ酸の任意の代用、変更、改変、置換、欠失、または付加が含まれる。特に、用語「ホモログ」は、得られる組換え酵素がPME活性を有するならば、構造および/または機能に関する相同性を包含する。配列
相同性(すなわち、類似性)に関しては、好ましくは、添付の配列表に示す配列に対して少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%の相同性である。より好ましくは、添付の配列表に示す配列に対して少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の相同性である。
【0087】
本発明の組換え酵素をコードするヌクレオチド配列に関して、用語「改変体」、「ホモログ」、または「フラグメント」には、得られるヌクレオチド配列が、PME活性を有し、
好ましくは配列番号1および2に示す配列のいずれか1つ以上を含む組換え酵素の少なくとも同一の活性を有する組換え酵素をコードするならば、配列からのまたは配列への1つ(またはそれより多くの)核酸の任意の代用、変更、改変、置換、欠失、または付加が含まれる。特に、用語「ホモログ」は、得られるヌクレオチド配列がPME活性を有する組換
え酵素をコードするならば、構造および/または機能に関する相同性を包含する。配列相同性(すなわち、類似性)に関しては、好ましくは、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%の相同性である。より好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の相同性である。
【0088】
上記の用語は、配列の対立遺伝子改変と同義である。
【0089】
用語「相補的」とは、本発明がまた、コード配列のヌクレオチド配列にハイブリダイズし得るヌクレオチド配列を包含することを意味する。
【0090】
本発明に関して、用語「ヌクレオチド」には、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、およびRNA
が含まれる。好ましくは、DNA、より好ましくは本発明のコード配列についてのcDNAを意
味する。
【0091】
用語「柑橘類の果物」とは、Citrus属の種を意味し、そしてライム、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、キンカン、ザボン、およびマンダリンを含む。好ましくは、オレンジを意味する。
【0092】
用語「構築物」−これは、「結合体」、「カセット」、および「ハイブリッド」のような用語と同義である−は、本発明のヌクレオチド配列、または構築物の組み合わせの場合、プロモーターに直接的または間接的に結合したGOIを含む。間接的結合の例は、イント
ロン配列(例えば、Sh1-イントロンまたはADHイントロン)のような適切なスペーサー基
の用意であり、プロモーターと本発明のヌクレオチド配列またはGOIとを媒介する。同じ
ことは、直接的または間接的結合を含む本発明に関しての用語「融合した」について当てはまる。各場合において、そして両方とも天然に環境下にある場合、用語は、野生型遺伝子プロモーターに通常関連する酵素をコードする遺伝子の天然の組み合わせを含まない。
【0093】
構築物は、さらに、それが移される、例えば、糸状菌、好ましくはAspergillus属(例
えば、Aspergillus niger)、または植物(例えば、ポテト、テンサイなど)における遺
伝子構築物を選択させるマーカーを含むまたは発現し得る。種々のマーカーが存在し、例えば、マンノース-6-リン酸イソメラーゼをコードするマーカー(特に植物について)、
または抗生物質耐性を与えるマーカー(例えば、G418、ハイグロマイシン、ブレオマイシン、カナマイシン、およびゲンタマイシンへの耐性)が使用され得る。
【0094】
用語「ベクター」は、発現ベクターおよび形質転換ベクターを包含する。
【0095】
用語「発現ベクター」とは、インビボまたはインビトロ発現を可能にする構築物を意味する。
【0096】
用語「形質転換ベクター」とは、1つの種から他へ−例えば、E. coliプラスミドから
糸状菌(好ましくはAspergillus属)へ−移され得る構築物を意味する。E. coliプラスミドから植物のAgrobacteriumへ移され得る構築物でもあり得る。
【0097】
用語「組織」には、組織自体および器官を含む。
【0098】
本発明に関して、用語「生物」には、本発明の組換え酵素をコードするヌクレオチド配列および/またはそれから得られる産物を含み得る任意の生物を含み、ここでプロモーターは、生物に存在する場合、本発明のヌクレオチド配列を発現させ得る。
【0099】
好ましくは、生物は、糸状菌であり、好ましくはAspergillus属、より好ましくはAspergillus nigerである。
【0100】
本発明に関して、用語「トランスジェニック生物」には、本発明の組換え酵素をコードするヌクレオチド配列および/またはそれから得られる産物を含み得る任意の生物を含み、ここでプロモーターは、生物内で本発明のヌクレオチド配列を発現させ得る。好ましくは、ヌクレオチド配列は生物のゲノムに組み込まれる。
【0101】
好ましくは、トランスジェニック生物は、糸状菌であり、好ましくはAspergillus属、
より好ましくはAspergillus nigerである。
【0102】
したがって、本発明のトランスジェニック生物は、プロモーター、本発明の組換え酵素をコードするヌクレオチド配列、本発明の構築物(それらの組み合わせを含む)、本発明のベクター、本発明のプラスミド、本発明の細胞、本発明の組織、またはそれらの産物のいずれか1つまたは組み合わせを含む生物を含む。
【0103】
用語「トランスジェニック生物」は、天然の環境にある天然のプロモーターの制御下にある場合、天然の環境中の本発明の天然のヌクレオチドコード配列を包含しない。さらに、本発明は、天然の環境にある場合、およびこれもまた天然の環境にある天然のヌクレオチドコード配列によって発現されている場合、およびヌクレオチド配列がこれもまた天然の環境にある天然のプロモーターの制御下にある場合、本発明の天然の酵素を包含しない。
【0104】
形質転換された細胞または生物は、その細胞または生物から容易に回復可能である所望の化合物の受容可能な量を調製し得る。
【0105】
好ましくは、本発明の構築物は、本発明のヌクレオチド配列およびプロモーターを含む。
【0106】
用語「プロモーター」は、当該分野の通常の意味で、例えば、遺伝子発現のJacob-Monod理論におけるRNAポリメラーゼ結合部位に使用される。
【0107】
1つの局面では、本発明のヌクレオチド配列は、細胞または組織特異的プロモーターであり得るプロモーターの制御下にある。例えば、生物が植物であるならば、プロモーターは、塊茎、茎、芽、根、および葉組織のいずれか1つ以上のヌクレオチド配列の発現に影響を及ぼすものであり得る。
【0108】
例として、本発明のヌクレオチド配列についてのプロモーターは、本発明者らの1994年10月21日に出願された同時係属中の英国特許出願第9421292.5号に記載されるようなα-Amy1プロモーター(他に、Amy 1プロモーター、Amy 637プロモーター、またはα-Amy 637
プロモーターとして知られる)であり得る。あるいは、本発明のヌクレオチド配列についてのプロモーターは、本発明者らの1994年10月21日に出願された同時係属中の英国特許出願第9421286.7号に記載されるようなα-Amy 3プロモーター(他に、Amy 3プロモーター、Amy 351プロモーター、またはα-Amy 351プロモーターとして知られる)であり得る。
【0109】
プロモーターは、適切な宿主中での発現を確実にするまたは増加させるための特徴をさらに含み得る。例えば、この特徴は、Pribnow BoxまたはTATAボックスのような保存され
た領域であり得る。プロモーターは、本発明のヌクレオチド配列の発現のレベルまたは構築物の組み合わせの場合、GOIの発現のレベルに影響を及ぼす(例えば、維持する、増強
する、減少させる)ための他の配列をさらに含み得る。例えば、適切な他の配列は、Sh1-イントロンまたはADHイントロンを含む。他の配列は、誘導性エレメント−例えば、温度
、化学、光、またはストレス誘導性エレメントを含む。また、転写または翻訳を増強するための適切なエレメントが存在し得る。後者のエレメントの例は、TMV 5'シグナル配列である(Sleat Gene 217 [1987] 217-225;およびDawson Plant Mol. Biol. 23 [1993] 97を参照のこと)。
【0110】
さらに、本発明はまた、プロモーターおよび/またはタンパク質または組換え酵素をコードするヌクレオチド配列および/またはエレメントの組み合わせを包含する。
【0111】
本発明はまた、本発明の組換え酵素またはGOIをコードするヌクレオチド配列を発現す
るためのプロモーターの使用を包含し、ここでプロモーターの一部は不活性化されるが、プロモーターはなおプロモーターとして機能し得る。ある場合には、プロモーターの部分的不活性化は有利である。特に、先に述べたAmy 351プロモーターでは、部分的に不活性
化したプロモーターが、ほんの1つの特定の組織タイプまたは器官を発現するような、より特異的方法で、本発明のヌクレオチドまたはGOIを発現するように、その一部を不活性
することが可能である。
【0112】
用語「不活性化した」とは、プロモーターの発現パターンが改変されているが、部分的に不活性化されたプロモーターがなおプロモーターとして機能するという意味での部分的不活性化を意味する。しかし、上記のように、改変されたプロモーターは、元のプロモーターの少なくとの1つ(しかしすべてではない)の特定の組織において本発明のヌクレオチドまたはGOIを発現し得る。このようなプロモーターの1つは、上記のAmy 351プロモーターである。部分的不活性化の例には、プロモーター配列の折り畳みパターンを変更すること、またはヌクレオチド配列の部分に種を結合することが挙げられ、その結果ヌクレオチド配列の一部は例えば、RNAポリメラーゼによって認識されない。プロモーターを部分
的に不活性化する他のそして好ましい方法は、そのフラグメントを形成するためにプロモーターを切断することである。他の方法は、RNAポリメラーゼがその部分または他の部分
に結合し得ないように配列の少なくとも一部を変異することである。他の改変は、調セクションタンパク質(例えば、炭素カタボライト抑制を発揮するための糸状菌から公知のCr
eAタンパク質)に対する結合部位を変異することであり、したがって、天然のプロモーターのカタボライト抑制を廃止する。
【0113】
本発明の構築物の組み合わせに関して、用語「GOI」とは、目的の任意の遺伝子を意味
する。GOIは、問題の生物(例えば、糸状菌、好ましくはAspergillus属、または植物)に対して外来または生来のいずれかである任意のヌクレオチドであり得る。GOIの代表的な
例は、代謝およびカタボライトプロセスを改変するタンパク質および酵素をコードする遺伝子を含む。GOIは、病原体耐性を導入または増加するための因子をコードし得る。GOIは、関連の組織に存在する天然の転写物の発現を改変するためのアンチセンス構築物でもあり得る。GOIはさらに、糸状菌、好ましくはAspergillus属の非天然タンパク質、あるいは動物またはヒトに有益である化合物をコードし得る。
【0114】
GOIの例には、他のペクチナーゼ、ペクチンデポリメラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、
ペクテートリアーゼ、ペクチンライアーゼ、ラムノ−ガラクツロナーゼ、ヘミセルラーゼ、エンド-β-グルカナーゼ、アラビナーゼ、またはアセチルエステラーゼ、あるいはそれらの組み合わせ、ならびにそのアンチセンス配列が挙げられる。
【0115】
GOIは、食物または作物に栄養価を与えるタンパク質であり得る。代表的な例には、抗
栄養因子の形成を阻害し得る植物タンパク質、およびより望ましいアミノ酸組成を有する植物タンパク質(例えば、非トランスジェニック植物よりも高いリジン含量)が挙げられる。GOIはさらに、キモシン、タウマチン、およびα-ガラクトシダーゼのような食物加工に使用され得る酵素をコードし得る。GOIは、害虫トキシン、パタチンまたはα-アミラーゼに対するもののようなアンチセンス転写物、ADP-グルコースピロホスホリラーゼ(例えば、EP-A-0455316を参照のこと)、プロテアーゼアンチセンス、グルカナーゼ、またはゲノムPMEのいずれか1つをコードする遺伝子であり得る。
【0116】
GOIはさらに、特定の酵素のイントロンをコードし得るが、イントロンはセンスまたは
アンチセンス方向であり得る。後者の場合、特定の酵素はゲノムPMEであり得る。ゲノム
エクソンまたはイントロン配列のGOIとしてのアンチセンス発現は、天然のPME発現が減少または排除されるが、組換えPME発現は影響を受けないことを意味する。これは、アンチ
センスイントロンまたはセンスイントロン発現について特に真実である。
【0117】
GOIは、1994年7月4日に出願された本発明者らの同時係属中の英国特許出願9413439.2の主題であるα-アミラーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列であり得る。GOIは、1994年10月21日に出願された本発明者らの同時係属中の英国特許出願9421290.9の主題であるα-アミラーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列であり得る。GOIは、1994年4月7日に出願
された本発明者らの同時係属中のPCT特許出願PCT/EP94/01082の主題であるADP-グルコー
スピロホスホリラーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列のいずれかであり得る。GOIは
、1994年10月15日に出願された同時係属中の本発明者らのPCT特許出願PCT/EP94/03397に
記載されるα-グルカンリアーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列のいずれかであり得
る。
【0118】
宿主生物は、原核生物または真核生物であり得る。適切な原核生物の例には、E. coli
およびBacillus subtilisが含まれる。原核生物宿主の形質転換の教示は、当該分野で十
分に立証されており、例えば、Sambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press)を参照のこと。真核生物宿主が
使用されるならば、遺伝子は、形質転換前にイントロンの除去によるように適切に改変される必要があり得る。
【0119】
上記のように、好ましい宿主生物は、Aspergillus nigerのようなAspergillus属であり
得る。
【0120】
本発明のトランスジェニックAspergillusは、以下の教示に従って調製され得る。Rambosek, J.およびLeach, J. 1987(Recombinant DNA in filamentous fungi: Progress and Prospects. CRC Crit. Rev. Biotechnol.6:357-393)、Davis R.W. 1994(Heterologous gene expression and protein secretion in Aspergillus.: Martinelli S.D.,Kinghorn J.R.(編) Aspergillus: 50 years on. Progress in industrial microbiology29巻. Elsevier Amsterdam 1994. 525-560頁)、Ballance, D.J. 1991(Transformation systems for Filamentous Fungi and an Overview of Fungal Gene structure.: Leong,S.A., Berka R.M.(編) Molecular Industrial Mycology. Systems and Applications for Filamentous Fungi. Marcel Dekker Inc. New York 1991. 1-29頁)、およびTurner G. 1994(Vectorsfor genetic manipulation.: Martinelli S.D., Kinghorn J.R.(編) Aspergillus:50 years on. Progress in industrial microbiology 29巻. Elsevier Amsterdam 1994.641-666頁)。しかし、以下の説明は、本発明のトランスジェニックAspergillusを生産するためのこれら教示の要旨を提供する。
【0121】
ほぼ一世紀の間、糸状菌は、有機化合物および酵素の生産のために、多くのタイプの産業に広く使用されてきた。例えば、伝統的な日本の麹および大豆発酵は、Aspergillus種
を使用してきた。また、今世紀には、Aspergillus nigerは、有機酸、特にクエン酸の生
産に、および産業での使用のための種々の酵素の生産に使用されている。
【0122】
糸状菌が産業でこのように広く使用されているのには2つの主な理由がある。第1に、糸状菌は、大量の細胞外産物、例えば、酵素および有機化合物(例えば、抗生物質または有機酸)を産生し得る。第2に、糸状菌は、穀物、ふすま、ビートパルプなどのような低コストの基質上で増殖し得る。同じ理由で、糸状菌は本発明の異種発現のための宿主として、魅力的な生物となった。
【0123】
トランスジェニックAspergillusを調製するために、発現構築物は、本発明のヌクレオ
チド配列(またはGOIも)を糸状菌での発現のために設計された構築物中に挿入すること
によって調製される。
【0124】
異種発現のために使用されるいくつかのタイプの構築物が開発されている。これらの構築物は、好ましくは、真菌中で活性であるプロモーターを含む。プロモーターの例として、グルコアミラーゼプロモーターまたはα-アミラーゼプロモーターのような、高度に発
現された細胞外酵素についての真菌性プロモーターが挙げられる。本発明のヌクレオチド配列(またはGOIも)は、分泌されるべき本発明のヌクレオチド配列(またはGOIも)によってコードされるタンパク質を指向するシグナル配列に融合され得る。通常、真菌起源のシグナル配列が使用される。真菌で活性なターミネーターは発現系を終結させる。
【0125】
他のタイプの発現系が、真菌において開発されており、ここで、本発明のヌクレオチド配列(またはGOIも)は、安定なタンパク質をコードする真菌遺伝子のより小さなまたは
より大きな部分に融合され得る。これは、本発明のヌクレオチド配列(またはGOIも)に
よってコードされるタンパク質を安定化し得る。このような系において、特定のプロテアーゼによって認識される切断部位は、真菌のタンパク質と本発明のヌクレオチド配列(またはGOIも)によってコードされるタンパク質との間に導入され得、それにより、産生さ
れた融合タンパク質は特定のプロテアーゼによってこの位置で切断され得、従って、本発明のヌクレオチド配列(またはGOIも)によってコードされるタンパク質を遊離させる。
例として、少なくともいくつかのAspergillusで見いだされるKEX-2様ペプチダーゼによって認識される部位を導入し得る。このような融合物は、インビボの切断を導き、その結果、より大きな融合タンパク質ではなく、発現された産物の保護を生じる。
【0126】
Aspergillusにおける異種発現は、細菌、真菌、脊椎動物、および植物のタンパク質を
コードするいくつかの遺伝子について報告されている。タンパク質は、本発明のヌクレオチド配列(またはGOIも)がシグナル配列に融合されない場合、細胞内に堆積し得る。こ
のようなタンパク質は、細胞質内に蓄積し、そして通常はグリコシル化されず、このことはいくつかの細菌タンパク質にとって利点となり得る。本発明のヌクレオチド配列(またはGOIも)がシグナル配列に備え付けられると、タンパク質は細胞外に蓄積する。
【0127】
産物の安定性および宿主株の改変に関しては、いくつかの異種タンパク質は、真菌の培養液中に分泌される場合、あまり安定ではない。ほとんどの真菌は、異種タンパク質を分解するいくつかの細胞外プロテアーゼを産生する。この問題を避けるために、プロテアーゼ産生が減少された特別な真菌株が、異種産生のための宿主として使用されている。
【0128】
糸状菌の形質転換について、いくつかの形質転換プロトコルが多くの糸状菌について開発されている(Ballance 1991, 同上)。それらの多くは、プロトプラストの調製ならび
にPEGおよびCa2+イオンを使用するプロトプラスト中へのDNAの導入に基づく。次いで、形質転換されたプロトプラストは再生し、そして形質転換された真菌は、種々の選択マーカーを使用して選択される。形質転換に使用されるマーカーの中では、argB、trpC、niaD、およびpyrGのような多くの栄養要求性マーカー、ベノミル耐性、ハイグロマイシン耐性、およびフレオマイシン耐性のような抗生物質耐性マーカーがある。通常使用される形質転換マーカーは、A.nidulansのamdS遺伝子であり、これは唯一の窒素供給源としてアク
リルアミドを用いて高コピー数で真菌を増殖させる。
【0129】
他の実施態様では、トランスジェニック生物は酵母であり得る。これに関して、酵母はまた、異種遺伝子発現のためのビヒクルとして広く使用されている。Saccharomyces cerevisiae種は、異種遺伝子発現のための使用を含めて、産業用途の長い歴史を有する。Saccharomyces cerevisiaeにおける異種遺伝子の発現は、Goodeyら(1987,Yeast Biotechnology, D R Berryら編, 401-429頁, Allen and Unwin, London)およびKingら(1989,Molecular and Cell Biology of Yeasts, E F WaltonおよびG T Yarronton編, 107-133頁,Blackie, Glasgow)によって総説されている。
【0130】
いくつかの理由について、Saccharomyces cerevisiaeは異種遺伝子発現によく適合している。第1に、ヒトに対して病原性でなくそして特定のエンドトキシンを産生し得ない。第2に、種々の目的のための数世紀の商業的利用にならった安全な用途の長い歴史を有する。このことは、広い公衆への受容可能性を導いている。第3に、広範な商業的用途およびこの生物に向けられた研究により、Saccharomycescerevisiaeの遺伝学および生理学、ならびに大規模発酵の特徴についての豊富な知識が得られた。
【0131】
Saccharomyces cerevisiaeにおける異種遺伝子発現および遺伝子産物の分泌の原理の総説は、E Hinchcliffe E Kenny(1993,「異種遺伝子の発現のためのビヒクルとしての酵
母」, Yeasts, 5巻, Anthony H RoseおよびJ Stuart Harrison編, 第2版, Academic Press Ltd.)によって与えられる。
【0132】
組込みベクターを含むいくつかのタイプの酵母ベクターが入手可能であり、これはその維持のために宿主ゲノムとの組換えを必要とし、そしてプラスミドベクターを自律的に複製する。
【0133】
トランスジェニックSaccharomycesを調製するために、発現構築物は、本発明のヌクレ
オチド配列を酵母での発現のために設計された構築物中に挿入することによって調製される。異種発現に使用されるいくつかのタイプの構築物が開発されている。構築物は、本発
明のヌクレオチド配列に融合される酵母中で活性なプロモーターを含み、通常は、GAL1プロモーターのような酵母起源のプロモーターが使用される。通常、SUC2シグナルペプチドをコードする配列のような、酵母起源のシグナル配列が使用される。酵母中で活性なターミネーターは、発現系を終結させる。
【0134】
酵母の形質転換について、いくつかの形質転換プロトコルが開発されている。例えば、本発明のトランスジェニックSaccharomycesは、Hinnenら(1978,Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA 75, 1929);Beggs, J D(1978,Nature, London, 275, 104);およびIto, Hら(1983, J Bacteriology 153, 163-168)の教示に従っ
て調製され得る。
【0135】
形質転換された酵母細胞は、種々の選択マーカーを使用して選択される。形質転換のために使用されるマーカーには、LEU2、HIS4、およびTRP1のような多くの栄養要求性マーカー、およびアミノグリコシド系抗生物質マーカー(例えば、G418)のような優勢抗生物質耐性マーカーがある。
【0136】
他の宿主生物は植物である。
【0137】
たとえ酵素およびそれをコードするヌクレオチド配列がEP-B-0470145およびCA-A-2006454に開示されていなくても、これらの2つの文献は、本発明のトランスジェニック植物を調製するために用いられ得るタイプの技法についてのいくつかの有用なバックグラウンドの説明を提供する。これらのバックグラウンド教示のいくつかは、ここで以下の説明に含まれる。
【0138】
遺伝学的に改変された植物の構築における基本的原理は、挿入された遺伝物質の安定な維持を得るために植物ゲノムに遺伝情報を挿入することである。
【0139】
遺伝情報を挿入するためのいくつかの技法が存在し、2つの主な原理は遺伝情報の直接的導入およびベクター系の使用による遺伝情報の導入である。一般的技法の総説は、Potrykus(Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol [1991] 42:205-225)およびChristou(Agro-Food-IndustryHi-Tech 3月/4月 1994 17-27)による文献に見られ得る。
【0140】
したがって、1つの局面において、本発明は、本発明のヌクレオチド配列または構築物を有し、そして植物のような生物のゲノム中にこのヌクレオチド配列または構築物を導入し得るベクター系に関する。
【0141】
ベクター系は1つのベクターを含んでいてもよいが、2つのベクターを含み得る。2つのベクターの場合には、ベクター系は、通常、バイナリーベクター系と呼ばれる。バイナリーベクター系は、GynheungAnら(1980), Binary Vectors, Plant Molecular Biology Manual A3, 1-19に、さらに詳細に記載される。
【0142】
所定のプロモーターまたはヌクレオチド配列または構築物での植物細胞の形質転換のために広範に用いられる1つの系は、Agrobacterium tumefaciens由来のTiプラスミドまた
はAgrobacterium rhizogenes由来のRiプラスミドの使用に基づく。Anら(1986), Plant Physiol. 81,301-305およびButcher D.N.ら(1980), Tissue Culture Methods for Plant Pathologists,D.S. IngramsおよびJ.P. Helgeson編, 203-208。
【0143】
いくつかの異なるTiおよびRiプラスミドが構築されており、これらは上記の植物または植物細胞構築物の構築に適している。このようなTiプラスミドの限定されない例は、pGV3850である。
【0144】
本発明のヌクレオチド配列または構築物は、T-DNA境界を直接取り囲む配列の分裂を避
けるために、好ましくはT-DNAの末端配列間またはT-DNA配列に隣接するTiプラスミドに挿入されるべきである。なぜなら、少なくとも1つのこれらの領域が植物ゲノムへの改変されたT-DNAの挿入に必須であるようであるからである。
【0145】
上記の説明から理解されるように、生物が植物である場合は、本発明のベクター系は、好ましくは、植物を感染させるために必要な配列(例えば、vir領域)およびT-DNA配列の少なくとも1つの境界部分を含むものであり、境界部分は、遺伝子構築物と同じベクター上に位置している。好ましくは、ベクター系は、Agrobacterium tumefaciens Ti-プラス
ミドまたはAgrobacterium rhizogenes Ri-プラスミド、あるいはそれらの誘導体であり、これらのプラスミドは周知でありそしてトランスジェニック植物の構築に広く用いられるので、これらのプラスミドまたはその誘導体に基づく多くのベクター系が存在する。
【0146】
トランスジェニック植物の構築において、本発明のヌクレオチド配列または構築物は、まず、ベクターが複製され得そして植物への挿入前に操作することが容易である微生物中に構築され得る。有用な微生物の例は、E.coli.であるが、上記の特性を有する他の微生物が使用され得る。上記のようなベクター系のベクターがE. coli中に構築されている場
合、必要ならば、適切なAgrobacterium株、例えば、Agrobacterium tumefaciens中に移される。したがって、本発明のヌクレオチド配列または構築物を有するTi-プラスミドは、
本発明のヌクレオチド配列または構築物を有するAgrobacterium細胞を得るために、好ま
しくは、適切なAgrobacterium株、例えば、A. tumefaciens中に移され、DNAは続いて改変されるべき植物細胞中に移される。
【0147】
CA-A-2006454に報告されるように、大量のクローニングベクターが利用可能であり、これらはE. coliでの複製系および形質転換された細胞の選択を可能にするマーカーを含む
。ベクターとして、例えば、pBR 322、pUCシリーズ、M13 mpシリーズ、pACYC184などが挙
げられる。
【0148】
このように、本発明のヌクレオチドまたは構築物は、ベクター中の適切な制限位置に導入され得る。含まれるプラスミドは、E. coliにおける形質転換に使用される。E.coli細胞は、適切な栄養培地中で培養され、次いで採収されて溶解される。次いでプラスミドが回収される。分析の方法として、一般的に使用される配列分析、制限分析、電気泳動、およびさらなる生化学的分子生物学的方法がある。各操作後、使用されたDNA配列は、制限
されそして次のDNA配列と連結され得る。各配列は、同じまたは異なるプラスミドにクロ
ーニングされ得る。
【0149】
植物中の本発明の所望のプロモーターまたは構築物またはヌクレオチド配列の各導入方法の後、さらなるDNA配列の存在および/または挿入が必要であり得る。例えば、形質転
換について、植物細胞のTi-またはRi-プラスミドが使用される場合、Ti-およびRI-プラスミドT-DNAの少なくとも右の境界、しかししばしば右および左の境界が、導入された遺伝
子の領域に隣接するように、連結され得る。植物細胞の形質転換のためのT-DNAの使用は
集中的に研究されており、そしてEP-A-120516;Hoekema: The Binary Plant Vector System Offset-drukkerij Kanters B.B., Alblasserdam, 1985, 第5章;Fraleyら, Crit. Rev.Plant Sci., 4:1-46;およびAnら, EMBO J. (1985) 4:277-284に記載される。
【0150】
Agrobacteriumによる植物組織の直接感染は、広く用いられ、そしてButcher D.N.ら(1980), Tissue CultureMethods for Plant Pathologists, D.S. IngramsおよびJ.P. Helgeson編, 203-208に記載されている単純な技法である。この項目のさらなる教示については、Potrykus(Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol [1991] 42:205-225)およびChris
tou(Agro-Food-Industry Hi-Tech 3月/4月 1994 17-27)を参照のこと。この技法で、植物の感染は、植物の特定の部分または組織、すなわち、葉、根、茎の一部、または植物の他の部分で行われ得る。
【0151】
代表的には、プロモーターおよび/またはGOIを有するAgrobacteriumによる植物組織の直接感染では、感染されるべき植物は、例えば、かみそりで植物を切断すること、または針で植物に穴を開けること、または研磨剤で植物をこすることによって、傷つけられる。次いで、傷は、Agrobacteriumが接種される。次いで、接種された植物または植物の部分
は、適切な培養培地で増殖され、そして成熟植物に発育させる。
【0152】
植物細胞が構築される場合、これらの細胞は、アミノ酸、植物ホルモン、ビタミンなどのような必要な増殖因子を補充した適切な培養培地中で細胞を培養することによるような、周知の組織培養方法に従って、増殖および維持され得る。遺伝子的に改変された植物中に形質転換された細胞の再生は、例えば、形質転換された苗条を抗生物質を使用して選択することによって、および適切な栄養、植物ホルモンなどを含む培地で苗条を継代培養することによって、細胞または組織培養物からの植物の再生のための公知の方法を使用して成し遂げられ得る。
【0153】
植物形質転換のさらなる教示は、EP-A-0449375に見い出され得る。
【0154】
要約すると、本発明は、酸性環境下で少なくとも1つのタンパク質を安定化するプロセスを提供し、このプロセスは、ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチン(特に組換えDNA技法によって調製されたブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペ
クチン)とタンパク質とを接触させる工程を包含する。
【0155】
さらに、本発明は、このプロセスに有用な組換え酵素を提供する。
【0156】
本発明の好ましい実施態様は、酸性環境で少なくとも1つのタンパク質を安定化するプロセスに関し、このプロセスは、組換えDNA技法によって調製されたブロックワイズに酵
素的に脱エステル化されたペクチンとタンパク質とを接触させる工程を包含する。ここで、ブロックワイズに酵素的に脱エステル化されたペクチンは、組換え酵素の使用によって調製され、そして組換え酵素は、配列番号1もしくは配列番号2に示すアミノ酸配列のいずれか1つ、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログ(それらの組み合わせを含む)を含み、そして以下の特徴を有する:
1.約36kD〜約64kDの分子量;
2.0.15M NaCl中の0.5%ライムペクチンとともに測定した場合、pH7〜8の
至適pH;
3.最低でも50℃の至適温度;
4.10℃〜最低でも40℃の範囲における温度安定性;
5.0.07%のK値;
6.約0.25M NaClのレベルでの最大活性;
7.約0.2M NaSOのレベルでの最大活性;および
8.約0.3M NaNOのレベルでの最大活性。
【0157】
本発明の他の好ましい実施態様は、ペクチンをブロックワイズに酵素的に脱エステル化する方法に関し、この方法は、配列番号1もしくは配列番号2に示すアミノ酸配列のいずれか1つ、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログ(それらの組み合わせを含む)を含む組換え酵素でペクチンを処理する工程を包含する。ここで組換え酵素は以下の特徴を有する:
1.約36kD〜約64kDの分子量;
2.0.15M NaCl中の0.5%ライムペクチンとともに測定した場合、pH7〜8の
至適pH;
3.最低でも50℃の至適温度;
4.10℃〜最低でも40℃の範囲における温度安定性;
5.0.07%のK値;
6.約0.25M NaClのレベルでの最大活性;
7.約0.2M NaSOのレベルでの最大活性;および
8.約0.3M NaNOのレベルでの最大活性。
【0158】
本発明の他の好ましい実施態様は、配列番号1もしくは配列番号2に示すアミノ酸配列のいずれか1つ、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログ(それらの組み合わせを含む)を含む組換え酵素に関し、ここで組換え酵素は以下の特徴を有する:
1.約36kD〜約64kDの分子量;
2.0.15M NaCl中の0.5%ライムペクチンとともに測定した場合、pH7〜8の
至適pH;
3.少なくとも50℃の至適温度;
4.10℃〜少なくとも40℃の範囲における温度安定性;
5.0.07%のK値;
6.約0.25M NaClのレベルでの最大活性;
7.約0.2M NaSOのレベルでの最大活性;および
8.約0.3M NaNOのレベルでの最大活性。
【0159】
本発明のより好ましい実施態様は、上記の好ましいプロセス、方法、および組換え酵素に関し、そしてここで組換え酵素は、配列番号3もしくは配列番号4に示す配列を含むヌクレオチド配列、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログによって発現されている。
【0160】
以下のサンプルは、承認された寄託機関であるThe National Collections of Industrial and Marine Bacteria Limited (NCIMB)(23 St Machar Drive, Aberdeen, Scotland, AB2 1RY,United Kingdom)に、1995年6月6日にブダペスト条約に基づいて寄託されてい
る:NCIMB 40749(プラスミドpO34に対応する)。
【0161】
以下のサンプルは、承認された寄託機関であるThe National Collections of Industrial and Marine Bacteria Limited (NCIMB)(23 St Machar Drive, Aberdeen, Scotland, AB2 1RY,United Kingdom)に、7月12日にブダペスト条約に基づいて寄託されている:NCIMB 40750(プラスミドpO17に対応する)。
【0162】
したがって、本発明のより好ましい実施態様は、上記のプロセス、方法、および組換え酵素に関し、そしてここで組換え酵素は、NCIMB 40749またはNCIMB 40750によって発現され得る。
【0163】
本発明はまた、タンパク質に熱安定性を与えるまたは増加させることにおける使用に適切な、配列番号5に示す配列を含むアミノ酸配列、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログを提供する。
【0164】
さらに、本発明は、タンパク質に熱安定性を与えるまたは増加させるためのアミノ酸配列を発現させることにおける使用に適切な、配列番号6に示す配列を含むヌクレオチド配列、またはその改変体、誘導体、もしくはホモログを提供する。
【0165】
これらの最後の局面に関して、この場合アミノ酸配列およびヌクレオチド配列はもちろ
んタンパク質の熱安定性に影響を及ぼすが、改変体、誘導体、ホモログ、構築物、ベクター、宿主生物の形質転換についての上記の説明は、等しく適用可能である。
【0166】
これに関して、配列番号5に示すアミノ酸配列が、本発明の組換えPMEのようなタンパ
ク質の熱安定性を与えるまたは増加させ得ると考えられる。このアミノ酸配列はまた、他の供給源由来のPMEを含む他のタンパク質の熱安定性を増加させまたは与え得る。
【0167】
図1は、上記の説明で参照された。他の図は以下の説明で論じられる。
【0168】

実験のセクション
生化学のための材料および方法
植物材料:種子を有さないNavelina変種クラスIの未成熟なSpanishオレンジをPMEの単離
のために用いた。このオレンジを手で皮をむき、そしてその皮を−80℃で保存した。
【0169】

オレンジの皮からのPMEの抽出
PMEを以下の手順に従って精製した。全ての操作を4℃で行った。600gの冷凍したオレ
ンジの皮を解凍し、小片に切断した。次いで、それらを1200mlの緩衝液(100mM コハク酸Na pH 6.2、1mM DTT)中で2分間、Warringブレンダーでホモジナイズした。膜結合タンパク質を単離するために、36gの固体NaClをこのホモジネートに添加して、3%(w/v)
の最終濃度にした(Versteegら、(1978) Lebensmittel.-Wiss.u. Technol., 11:267-274
)。4℃で穏やかに撹拌しながら2時間インキュベートした後に、この懸濁物をナイロンメッシュで濾過し、濾液を10,000rpmで20分間遠心分離して、不溶性の残渣を除去した。
【0170】
次いでこの上清を(NH4)2SO4沈殿を用いて分画した。上清を、30分間緩徐に撹拌しなが
ら30%(NH4)2SO4で最初に沈殿した。20,000rpmで10分間遠心分離した後に、上清を30分間、60%(NH4)2SO4でさらに沈殿した。この懸濁物を上記のように遠心分離し、沈殿物を50mlの50mMMES、1mM DTT pH 6.8中に再懸濁し、そして同じ緩衝液に対して一晩透析した。
【0171】

クロマトグラフィー
透析したサンプルを陽イオン交換クロマトグラフィーによりさらに分離した。40〜50mlのサンプルを、緩衝液A:50mM MES、1mM DTT pH 6.8でのラウンドの間に30分間の洗浄
を伴う2ラウンドで、CM-SepharoseTMCL-6B(1.5×15cm)にアプライした。緩衝液Aで非結合タンパク質を洗浄した後、結合タンパク質を、総量500mlの0〜0.4MNaClの漸増NaClグラジエントで溶出した。流速は25ml/hであり、8.33mlの画分を回収した。このタンパク質吸収プロフィールを280nmで測定した。
【0172】
全ての画分を、PME活性およびタンパク質について分析した。タンパク質含量を、BioRad法で分光光度的に測定した。
【0173】
PME活性を含む画分をプールし、Amiconフィルターシステムを用いて加圧透析によって
濃縮した。50mM Tris、1mM DTT、0.1M NaCl pH 7への緩衝液交換を同一のシステムで行った。
【0174】
次いで、9mlの濃縮PMEサンプルをSephacrylTMS-200(2.6×70cm)ゲル濾過カラムにアプライした。このカラムを、50mMTris、1mM DTT、0.1M NaCl pH 7で平衡化した。流速
は40ml/hであり、5.33mlの画分を回収した。PME活性を含む画分をプールし、濃縮した。
【0175】

酵素活性
PMEは、ペクチンからのメチルエステル基の切断を触媒する。精製工程の間、PMEを、メチルレッド指標試験を用いる迅速な方法によって検出した。ペクチン鎖中のガラクツロン酸残基からのメチル基の切断により、このアッセイにおいてカルボキシル基が形成され、そしてpHが低下する。pH指標-メチルレッド-は、pH低下時に黄色(pH6.2)からピンク(pH 4.2)に色が変化する。このアッセイは、0.15M NaCl pH 7中に可溶化された1mlの0.5% GrindstedTM Pectin1450(DE 70%)(Danisco Ingredients, Danisco A/Sにより供給される)および125μlのサンプルを含有した。次いで、30℃で10分間のインキュベーションの後にメチルレッド試験で陽性を示したサンプルを、滴定法(Versteegら(1978)Lebensmittel.-Wiss.u. Technol., 11: 267-274)によってさらに測定した。
【0176】
滴定法において、アッセイは、0.15M NaCl pH 6.8中に可溶化された10mlの0.5%ライムペクチン(GrindstedTMPectin 1450 -Danisco Ingredients, Danisco A/Sによって供給
される)および10〜100μlのサンプルを含有した。適定を0.02M NaOHを用いて行い、そして反応を室温で測定した。自動滴定機を用いた(Versteegら、(1978)Lebensmittel.-Wiss.u. Technol., 11: 267-274)。
【0177】

SDS-PAGE/ウエスタンブロッティング
PME画分の純度を、10〜15%SDS-勾配ゲルを用いるPharmacia PhastSystemTMを用いるSDS-PAGEによって調査した。タンパク質の電気泳動および銀染色を、Pharmaciaのマニュア
ルに記載されるように行った。pIの決定のために、IEF 3-9 PhastSystemTMゲルを用いた

【0178】
免疫ゲル電気泳動を、オレンジの皮のPMEに対して惹起したポリクローナル抗体の特徴
付けのために用いた。酵素画分を、SDS-PAGEで分離し、PhastSystemTMのSemidryトランスファーユニット上でのセミドライブロッティング技術によってNC-ペーパーに移した。こ
のNC-ペーパーを、1:50に希釈した一次抗体とともにインキュベートし、そして1:1000の
希釈度で用いられるアルカリホスファターゼ(Dako A/S Glsotrup, Denmark)に結合した二次抗体で染色した。
【0179】

ペプチドマッピング
PMEを、トリプシンまたはLysobacter enzymogenes由来のエンド-プロテイナーゼLys-C
のいずれかで消化した(両酵素調製物は、Boerhinger Mannheim, Germanyから購入した配列決定用グレードであった)。
【0180】
100μgの精製したPMEをヨードアセトアミドでカルボキシメチル化して、還元SH基を保
護した。次いで、このタンパク質をトリプシン(4μg/20〜100μl)で切断した。加水分解切断を、40℃で2×3時間行った。この反応を、20μlのTFAの添加により停止した。15,000rpmでの5分間の遠心分離の後、ペプチドを逆相HPLCカラム(Vydac10 C18カラム)で
精製した。2×500μlのサンプルをアプライした。ペプチドを、0.1%TFA中で60分間、0.05〜0.35%の漸増アセトニトリルグラジエントを用いて溶出し、そして分離した。ペプチ
ドを、Eppendorfチューブ中に手動で回収した。
【0181】
エンド-プロテイナーゼLys-Cでの消化のために、凍結乾燥PME(0.1mg)を、50μlの8M尿素、0.4M NH4HCO3,pH 8.4中に溶解した。N2での被覆および5μlの45mM DTTの添加の
後、このタンパク質をN2下で50℃にて15分間変性および還元した。室温に冷却した後、5μlの100mMヨードアセトアミドを添加し、N2下で暗所にて室温で15分間システインを誘導
体化した。続いて、90μlの水ならびに50μlの50mMトリシンおよび10mM EDTA, pH 8.0中
の5μgのエンド-プロテイナーゼLys-Cを添加し、N2下で37℃にて24時間消化を行った。
【0182】
得られたペプチドを、トリプシン消化ペプチドに関して記載されるように分離した。
【0183】
選択したペプチドを、Devosil 3 C18 RP-HPLCカラム0.46×10cm(Novo Nordisk, Denmark)上でさらに精製した。次いで、精製ペプチドを、pulsed-liquidfast cycleを用いて、アミノ酸シーケンサー、Applied Biosystems 476Aにアプライした。
【0184】

研究1
PMEの精製の間、600gの凍結したオレンジの皮をホモジナイズし、30〜60%(NH4)2SO4での沈殿および透析の後、サンプルを陽イオン交換カラム(CM-SepharoseTMCL-6B)にアプ
ライした。PMEはpH 6.8で陽イオン交換カラム材料に強固に結合したが、一方、タンパク
質のほとんどはそのカラムに結合せず、それ故洗浄容積中に溶出する。漸増NaClグラジエントにより、PMEは、0.25MのNaCl濃度でPME I(画分49〜53)において主要な活性を有す
る2つのピーク中に溶出した。微量なPMEピークが、より低濃度のNaCl(画分25〜32)で
溶出した。さらなる精製を、PME Iについてのみ行った。これは最も高い活性を含んでい
た。
【0185】
濃縮の後、ゲル濾過クロマトグラフィー(SephacrylTM S-200カラム)を用いてPME画分をさらに精製した。最も高いPME活性を含む画分をプールし、アミコンフィルター透析に
おいて濃縮した。
【0186】
総量で約4mgのPMEを600gのオレンジの皮から得た。これは12%のタンパク質収量に相
当する。
【0187】
SDS-PAGEは、36,000 DのMWを有する精製PME画分中の唯1つのタンパク質バンドを示し
た(図2)。PMEの等電点電気泳動は、そのPIが>9であることを示した。
【0188】

特徴付けおよび動態学的データ
PMEの特徴付けおよび至適条件決定(optima determination)を、材料および方法に記
載されるような滴定方法で全て行った。
【0189】
PME活性の至適pHを、0.15M NaCl中の0.5%ライムペクチン(GrindstedTM Pectin 1450-Danisco Ingredients, Danisco A/Sによって供給される)を用いて測定した。このデー
タを図3に示す。至適はpH7〜8付近に見出された。
【0190】
至適温度は、50℃で見出された−図4に示されたデータを参照のこと。
【0191】
PMEの熱(温度)安定性を、異なる温度で15分間Eppendolfチューブ中の酵素サンプルをインキュベートすることにより決定した。インキュベーション後、酵素活性を、滴定法による従来のアッセイによって測定した。酵素活性の安定性は、10℃〜40℃の間であった−図5のデータを参照のこと。
【0192】
ライムペクチン(GrindstedTMPectin 1450 -Danisco Ingredients, Danisco A/Sによって供給される)に対する親和性を、活性に対する異なるペクチン濃度のLineweaver Burk
プロットによって決定した。このデータを図6に示す。Kmは0.07%であることがカーブから計算された。
【0193】
本発明者らはまた、PMEがまたサトウダイコンペクチンを脱エステル化し得ることを見
出した。サトウダイコンペクチンは、そのカルボキシル基のいくつかがメチル化されている60%のガラクツロン酸残基を含有し(約60%のDE)、さらに、ガラクツロン酸基の幾つかはC-2および/またはC-3でアセチル化されている。0.15 M NaCl中に可溶化された1%
サトウダイコンペクチンを、サトウダイコンペクチンが約60%のペクチンを含有するようなアッセイにおいて用いた以外は、PME活性を材料および方法に記載のように測定した。
結果は、ガラクツロン酸残基がC-2/C-3位でアセチル化されているとしてもPMEがサトウダイコンペクチンを脱エステル化し得たことを示した。
【0194】
【表1】

【0195】
さらなる実験は、本発明のPMEが、好ましくは、活性のためにNaClを必要とすることを
示した−図7のデータを参照のこと。活性は、漸増するNaCl濃度(0.25M NaClで至適である)で増大する。最大活性と比較して、より高い濃度が活性を減少させている。
【0196】
さらなる実験は、他の塩、例えば、Na2SO4またはNaNO3がPME活性のためにNaClを置換し得ることを示した。このデータを図8および9に示す。至適活性を、0.2MNa2SO4および0.3M NaNO3それぞれで見出した。
【0197】

N-末端分析
天然のPMEのN-末端配列がブロックされることが研究により示された。チューブ中で45
℃にて4分間、無水TFAでPVDF膜にブロットしたPMEを処理することにより、脱ブロック化を達成した。 TFAのほとんどの蒸発の後、チューブを65℃にて4時間置いた(Wellner,D.ら、(1990) Proc.Natl.Acad.Sci 87: 1947-1949)。得られた配列は、SSSVTPNVVVAADSSGNFKであった。そのN-アセチルセリンはPMEのN末端残基である。
【0198】

免疫組織局在化
免疫組織化学のための組織サンプルの調製のために、成熟果物の中央部分の薄切片を、0.05Mのリン酸緩衝液pH 7で緩衝化した2%パラホルムアルデヒド、0.25%グルタルアル
デヒドおよび3%スクロース中で固定した。25℃で2時間および5℃で63時間のインキュベーションの後、検体を0.05Mリン酸緩衝液pH 7中で3×20分洗浄した。一連のエタノー
ル洗浄(50%、70%、80%および96%)、それに続く99%エタノールの3回の洗浄(各エタノール濃度について30分間)を用いて脱水を行った。石油(ShellsolTMD70k, Q7712)中で2×2時間および7%ビーズワックスを有するパラフィン中での2×2時間のさらなる処理の後、サンプルをパラフィン中に包埋した。12.5μmの横断面を、Supercut2050 Reichart Jung pyramitome上で作製した。
【0199】

免疫学
PME抗体での1時間の処理の前に、組織切片をTBS(0.5M Tris/HCl pH 7.6, 0.15M NaCl, 0.1%Triton X-100)中の20%ブタ血清で30分間プレインキュベートし、TBS中に1:50で希釈した。過剰な抗体を、5×5分間のTBSでの洗浄により除去した。洗浄後、切片をTBS緩衝液中にて1:20のアルカリホスファターゼと結合した二次抗体で30分間インキュベートした。余剰の二次抗体を上述のようなTBS洗浄によって除去した。染色の前に、切片をベ
ロナールアセテート緩衝液pH 9.2で5分間処理し、次いでFast RedおよびNaphtol AS-BI
ホスフェート(Sigma no N4875)で20分間染色した。過剰な試薬を水での洗浄により除去した。コントロールを平行して実行し、免疫前の血清で処理した。
【0200】

結果
皮PMEに対して惹起した抗体を用いた免疫学的局在化により、 PMEが袋間のラメラの外
側の細胞層、小胞(juice sac)の果心および外側の細胞層、アルベドの内側の細胞層に
も大量に位置することが示された(図1を参照のこと)。これらの結果は、皮PMEに対す
る抗体が果肉(袋からなる果肉、図1を参照のこと)由来のPMEと交差反応することを実
証し、皮および果肉それぞれに位置するPME間の高い相同性を示した。
【0201】

研究2
オレンジの皮由来のPMEを大量に精製した。これに関して、約70mgのPMEを5kgのオレンジの皮から単離した。次いで、精製PMEをミルクタンパク質(すなわち、飲用ヨーグルト
)を用いる応用試験に用いた。この試験において、ブロックワイズの様式で酵素的に脱エステル化されたペクチンは、おそらくは形成されたブロック構造のために、非脱エステル化ペクチンと比較してタンパク質安定化特性を改善した。最終産物はまた、好適な粘度を有していた。
【0202】

酵素イソ型
理論に束縛されることを意図しないが、本発明のPMEは少なくとも2つのイソ型で存在
し得ると考えられている。イソ型Sは約36kDの分子量を有し、「短PME」と称され得る。
イソ型Lは約64kDの分子量を有し、「長PME」と称され得る。
【0203】
また、イソ型Lはイソ型Sよりも熱安定性であると考えられている。また、イソ型Sはブロックワイズで最初の脱エステル化工程を開始し、次いでイソ型Lによって取って替わられると考えられている。
【0204】
換言すれば、イソ型Lは、部分的に脱エステル化されたペクチンに対してイソ型Sよりも大きな親和性を有し得ると考えられている。
【0205】
イソ型Lの熱安定性は、配列番号5として表されたアミノ酸配列に起因し得ると考えられている。
【0206】
さらなる研究により、イソ型Lの遺伝子は、シグナル配列の上流にN末端伸長を有することが示されている。これは図12に模式的に示されている。
【0207】

オレンジより入手可能であるペクチンメチルエステラーゼをコードするcDNAの単離および
特徴付け
分子生物学のための材料および方法
1.材料
Morocco起源のオレンジ(Citrus sinensis)var. Navelを用いた。
【0208】

2.DNA
ゲノムDNAを、Dellaporta S.L.ら(1983)Plant Mol Biol Rep 1 (4):19-21に記載されるように単離した。プラスミドDNAを、EP-B-0470145に記載されるように単離した。
【0209】

3.RNA
全RNAを、成熟オレンジ果物から単離した。 Logemann J., Schell J.およびWillmitzer
L. (1987) Anal. Biochem 163: 16-20、「植物組織からのRNAの単離のための改善方法」に記載される手順に従って、Navelオレンジ果物の果肉の外部部分およびアルベド層の内
部部分(図1を参照のこと)をRNA単離のために用いた。
【0210】

4.PCR
全オレンジRNAを用いて、以下の温度サイクルで供給者の指示に従ってrTth Reverse PCR Kit(Perkin Elmer)で逆PCRを行った:

逆転写:
70℃ 2分
60℃ 2分
50℃ 2分
45℃ 5分
40℃ 5分
30℃ 10分
42℃ 10分
70℃ 2.5分
5℃ 浸漬

増幅(PCR):
94℃ 2分
92℃ 1分
45℃ 2分
72℃ 2分 40サイクル
72℃ 5分
5℃ 浸漬

5.PCRフラグメントのクローニング
PCRフラグメントを、供給者の指示に従ってベクターpT7Blue(Novagen)のEcoRV部位にクローン化した。
【0211】

6.DNA配列決定
Auto Rad Sequencing Kit (Pharmacia)およびPharmacia LKB A.L.F. DNA sequencer(Ref:Sanger, F., Nicklen, S.、およびCoulson, A.R. (1979))を用いて、本質的にSangerら(1979) のジデオキシ法に従って、2本鎖DNAを配列決定した。DNA配列決定は鎖決定
インヒビターを用いて行った(Proc. Nat. Acad. Sci. USA 74:5463-5467)。配列決定に用いたプライマーを以下に列挙する(5’から3’に示す):
【0212】
【化1−1】

【0213】
【化1−2】

【0214】
【化1−3】

【0215】
配列決定したヌクレオチド配列を配列番号3(pO17由来)および配列番号4(pO34由来)として示す。N末端配列を配列番号6として示す。
【0216】

7.ライブラリーのスクリーニング
オレンジ果物の果肉およびアルベド層から単離されたmRNAから調製したλzapII(Stratagene)のcDNAライブラリーを、適切な放射標識PCRプローブでスクリーニングした。プレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションを、2×SSC、0.1%SDS、10×Denhardt’sおよび100μg/mlの変性サケ精子DNA中で行った以外は、スクリーニングを供給者
の指示に従って行った。ハイブリダイゼーションは67℃で一晩であった。フィルターを、2×SSC、0.1% SDS中で2回、1×SSC、0.1% SDS中で2回、および0.1×SSC、0.1%SDS中で2回洗浄した。
【0217】

8.プローブ
クローン化されたPCRフラグメントを、適切な制限酵素で消化することによりpT7 blue
ベクターから単離した。フラグメントを、アガロースゲル電気泳動により、ベクターから分離し、フラグメントを精製し、そしてReady to GoTMDNA標識化キット(Pharmacia)を用いて放射標識した。
【0218】

9.サザン分析
オレンジゲノムDNAまたはプラスミドDNAを、適切な制限酵素で消化し、HybondN+TM膜に転写し、そして供給者(Amersham)の指示に従ってハイブリダイズした。
【0219】

10.インサイチュハイブリダイゼーション実験
インサイチュハイブリダイゼーション技術は、mRNAへのアンチセンスリボヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションの原理に基づく。この技術は、上記のmRNAが存在する顕微鏡切片中の領域を可視化するのに用いられる。本願の場合には、この技術を、C.sinensisの切片中の酵素ペクチンメチルエステラーゼをコードするmRNAを局在化するのに用いた

【0220】

インサイチュハイブリダイゼーション用の組織サンプルの調製
成熟オレンジ果物の中央部分の薄切片を、FAA固定法(45%エタノール、5%ホルマリ
ン (40%パラホルムアルデヒド)および5%酢酸)による固定および25℃で2時間および
5℃で63時間のインキュベーションによって固定化した。サンプルを、0.05Mリン酸緩衝
液、pH 7中で3×20分間洗浄した。一連のエタノール洗浄(50%、70%、80%、96%)を用いて脱水を行い、99%エタノール中で3回洗浄することにより終了させた。各洗浄は30分間であった。次いでこのサンプルを2×2時間石油(shellsolTMD70k, Q7712)中で、およびさらに2×2時間7%ビーズワックスを有するパラフィン中で処理した。この後、サンプルをパラフィン中に包埋した。Supercut 2050 Reichart Jung pyramitomeを用いて、12,5μmの断面を作製した。
【0221】
インサイチュハイブリダイゼーション用の35S標識プローブの調製
2回目のPCR増幅由来の501bpのPCRフラグメントを、pT7blueベクター(Novagen)中に
両方向でクローン化した。pT7ベクターはT7プロモーターを含有する。アンチセンスRNAおよびセンスRNAの転写を、BamHIでプラスミドを消化した後にSP7プロモーターにより駆動
させた。Maxiscript KitTM(Ambion)を以下の改変を加えて行った。転写産物を6%配列決定用ゲルに泳動して、取り込まれたヌクレオチド取り出し、そしてT7RNAポリメラーゼインビトロ転写キット(Ambion)で供給される溶出緩衝液で溶出させた。転写産物は、一方の末端に55個の非コードヌクレオチドを、さらに他方の末端に9個の非コードヌクレオチドを含有していた。ハイブリダイゼーションのために107cpm/mlの35S標識プローブを
用いた。
【0222】
インサイチュハイブリダイゼーションを、本質的にLangedale J.A. (1994) Maize Handbook-M. Freeling and V.Walbot, 編、165-180頁 SpringerVerlaga, New York, Inc.に
記載されるように行った。ハイブリダイゼーション温度は、57℃で至適であることが見出
された。57℃での洗浄の後、切片をKodak K-5写真感光乳剤で被覆し、そして暗所で5℃
にて3日間放置した。
【0223】
11.結果
以下の配列情報を用いて、以下に記載したPCR反応のためのプライマーを生成し、そし
てそれぞれのヌクレオチド配列によって生成されたアミノ酸配列(添付の配列番号7〜19を参照のこと)をチェックした。
【0224】
プライマーの産生のために用いたペクチンメチルエステラーゼのペプチド配列
【0225】
【化2】

【0226】
プライマーA(Met Leu Ala Tyr Gln Asp Thr)を生成するために用いたアミノ酸配列(PE492B, 4〜7)

プライマーA
ATG(CT)T(GATC)GC(GATC)TA(TC)CA(AG)GA(TC)AC 256ミックス
プライマーB(Glu Ala Gln Ala Phe Thr Pro)を生成するために用いたアミノ酸配列(PE701, 7〜13)

プライマーB
GT(AG)AA(GATC)GC(TC)TG(GATC)GC(TC)TC 128ミックス
(配列は相補鎖に対応する)
ペクチンメチルエステラーゼを部分的にコードするPCR DNAフラグメントの生成
2つのオーバーラッしないペプチド(上記)のアミノ酸配列を用いて、ミックスオリゴヌクレオチドを生成した。これらを、逆転写および引き続く全RNAの増幅(PCR)のためのプライマーとして用いた。得られたPCRクローンを配列決定し、そしてそれは501bpの挿入物を有していた。ヌクレオチド配列から推定されたアミノ酸配列は、配列番号7〜19で与えられたペプチド配列とほとんど完全に一致した。
【0227】
インサイチュハイブリダイゼーション分析
ペクチンメチルエステラーゼのmRNAに対するリボプローブ(適切なPCRクローンから産
生された)を用いるインサイチュハイブリダイゼーション実験(材料および方法を参照のこと)により、袋間のラメラの外側の細胞層における強固なハイブリダイゼーションが示された(図1を参照のこと)。強いシグナルをまた、小胞の外側の細胞層、albedoの内側の細胞層および果心から得た。これらの結果は、以前に記載された皮PMEに対して惹起さ
れた抗体で見られた免疫学的局在化の結果と非常に良好に一致する。
【0228】
サザン分析
サザン分析により、単離されたPME遺伝子(cDNAクローンにより表される)のさらなる
コピーが、C.sinensisゲノム中に存在することが示された。これらの他のPME遺伝子は、pO17およびpO34中に表される遺伝子とかなり相同であった。
【0229】
この点に関して、本発明者らは、強いハイブリダイゼーションシグナルの1つのバンド、中程度のハイブリダイゼーションシグナルの2つのバンドおよび残りと比較してより弱
いシグナルの少なくとも2つのバンドを各レーンにおいて観察した。このパターンは、C.sinensisがゲノムに中に少なくとも5および7コピーのPME遺伝子を有することを示して
いる。
【0230】
新規PME cDNAの単離および特徴付け
材料および方法に記載のように調製したλzapII(Stratagene)のcDNAライブラリーを
、PCRクローン由来の放射標識した501bp挿入物でスクリーニングした。いくつかのハイブリダイゼーションクローンを同定し、プラスミドDNAを供給者の指示に従ってインビボで
切り出した。クローン中のcDNA挿入物のサイズを、EcoRVおよびSmaIでの消化、それに続
くアガロースゲル電気泳動によって決定した。1方のクローンpO34は約2kbの挿入物サイ
ズを有し、一方、他方のクローンpO17は約1.4kbの挿入物サイズを有していた。これらの
クローンをさらなる分析のために選択した。ヌクレオチド配列を決定し、そしてpO17およびpO34についてそれぞれ配列番号3および配列番号4として示す。
【0231】
ヌクレオチド29から開始しそしてヌクレオチド1780で終結する、O34中のオープンリー
ディングフレームは、推定上のシグナルペプチドを含む584アミノ酸のPMEをコードする。46位のグリシンと47位のイソロイシンとの間の可能な切断部位は、von Heijne, G. (1986) Nucl Acids Res 14, 4683-4690「シグナル配列切断部位を予測するための新規の方法」の規則に従って予測し、それによって58386ダルトンの計算分子量を有する538アミノ酸の長い成熟PME酵素を得た。シグナル配列を含む長PMEの分子量は、63502ダルトンとして計
算され得る。pO34ヌクレオチド配列は、29ヌクレオチドの非翻訳5’領域およびポリAテイルで終結する186ヌクレオチドの非翻訳3’領域を含む。
【0232】
O17中のオープンリーディングフレームは、ヌクレオチド18から開始し、そしてヌクレ
オチド1103で終結する。これは、44アミノ酸のシグナルペプチドを含む362アミノ酸の短PMEをコードする。推定上の切断部位は、44位のグルタミンと45位のセリンとの間に予測され得、アミノ酸配列Ser-Ser-Ser-Val-Thr-Proで開始する成熟短PMEを残す。このN末端アミノ酸配列は、生化学セクションに記載したような精製された短型のPMEのN末端アミノ
酸配列と同一である。精製酵素から得られたアミノ酸配列を、pO17の推定上の成熟アミノ酸配列と整列させた。完全な同一性をペプチドフラグメントについて見出した。
【0233】
全ての配列決定したペプチドとpO17中の推定アミノ酸配列との間にほぼ完全な同一性が存在し、そしてまた、pO34から推定されるアミノ酸配列である長PMEともほぼ完全な同一
性が存在した。この点に関して、pO17は1つのアミノ酸位(成熟ポリペプチドをコードする配列における24番目)で異なる。成熟短PMEタンパク質は、33954ダルトンの計算分子量を有する。シグナルペプチドを含む短PME型の計算分子量は、39088ダルトンである。O17
は、17ヌクレオチドの5’非翻訳領域およびポリA尾部で終結する180ヌクレオチドの3’非翻訳領域を含む。
【0234】
長PME酵素と短PME酵素との間の主要な差異は、O34由来の成熟酵素中に存在し、配列番
号5として表される220アミノ酸のN末端伸長部である。長PME酵素のこの領域をコードす
る対応するヌクレオチド配列を、配列番号6として示す。
【0235】
微生物におけるPMEの発現
オレンジPMEの長形態または短形態のいずれかをコードするDNA配列を微生物に導入し、ペクチンの酵素的処置のために使用すべき高い特異的活性を有する大量の組換え酵素を生産する。
【0236】
PICHIA PASTORISにおける発現
pJK10、pJK11、およびpJK12の構築(図13〜15を参照のこと)
以下の対のプライマーを用いるPCR反応において、 pO34プラスミドDNAを鋳型DNAとして使用した:
5’-GAATTCATTGTCGCCGGAGTGAAC-3’(1つの末端にEcoRI部位を有する)、および
5’-AAGACCAGAGACCTATGGATCCAC-3’(末端の近くにBamHIを有する)。
【0237】
AmpliTaqRDNA Polymerase (Perkin Elmer)、鋳型DNA、dATP、dGTP、dCTP、およびdTTP
、ならびに2つのプライマーを以下の緩衝液中で合わせ:
60mM Tris-HCl (pH 8.5)、15mM(NH4)2SO4、および1.5mMMgCl2
そして以下の温度サイクルを用いた:

94℃ 2分
94℃ 1分
55℃ 2分

35サイクルにおいては72℃ 2分

72℃7分
5℃で浸漬

1690bpの予想されるPCR産物が生成され、これは、供給者の説明に従って、精製され、ベ
クターpT7Blue(Novagen由来)にサブクローン化した。
【0238】
予想されるサイズのEcoRI-BamHIフラグメントを含む得られたクローン(pT7-O34と呼ぶ)を、DNA配列決定(Molecular Biologyの材料および方法を参照のこと)によってさらに確認した。適正な配列を含むpT7-O34サブクローンを、EcoRIおよびBamHIで消化し、そし
て1685bpのフラグメントを精製し、そして同一の酵素で消化したPchia pastorisベクターpHIL-S1(Invitrogen由来)にサブクローン化した。
【0239】
PMEの成熟した長形態をコードする配列を、ベクター中のPHO1分泌シグナル(S)とインフレームで、この方法でクローン化した。得られたプラスミドを、pJK10と呼び、そして
図13に示す。
【0240】
pJK11(図14を参照のこと)を作製するために、pT7-O34クローンのEcoRI-BanHIフラグ
メントを、同じ酵素で消化したpBSK-ベクター(Straragene由来)にさらにサブクローン
化した。次いで、得られたクローンの1つに由来するEcoRI-NotIフラグメント(DNA配列
決定によって確認された)を、同じ酵素で消化したPichia pastoris発現ベクターpPIC9(Invitorogen由来)にサブクローン化した。これにより、長形態のPMEの成熟タンパク質をコードするリーディングフレームは、下流、およびpPIC9中のα因子分泌シグナル(S)の下流またはそれとインフレームで配置される。図14を参照のこと。
【0241】
さらに、pT7-O34由来のEcoRI-NotIフラグメントをまた、 pPIC9K(Invitorogen)ベク
ターにサブクローン化して、図15に示すpJK12プラスミドを作製した。pJK11とpJK12との
間の差異は、カナマイシンに対する耐性をコードする遺伝子のみであり、そしてこれはpJK12中に位置する。
【0242】
pJK10中のPHO1分泌シグナルおよびpJK11およびpJK12中のα分泌シグナルの両方は、PMEの長形態をコードする成熟ペプチドの分泌を指向し得る。
【0243】
pJK20、pJK21、およびpJK22の構築
以下のプライマーを用いるPCR反応において、 pO17プラスミドDNAを鋳型DNAとして使用
した:
5’-GAATCCTCTCCTCGTCGGTGACACCG-3’(1つの末端にEcoRI部位を有する)、および
5’-AAGACCAGAGACCTATGGATCCAC-3’(末端の近くにBamHI部位を有する)。
【0244】
鋳型DNA、AmpliTaqRポリメラーゼ、dATP、dGTP、dCTP、およびdTTPを、緩衝液(60 mM Tris-HCl(pH8.5)、15mM(NH4)2SO4、および1.5mM MgCl2)と合わせ、そして以下の温度サイクルでサーモブロックにおいて置いた:
94℃ 2分
94℃ 1分
55℃ 2分

35サイクルにおいては2℃ 2分
72℃7分
5℃浸漬

これにより1008bpの予想されるPCRバンドを産生し、これを精製し、そしてpT7Blue(Novagen)にサブクローン化した。得られたクローンを、上記に説明したようにDNA配列決定によって確認した。適正な配列を有するプラスミドを、EcoRIおよびBamHIで消化し、そして得られたフラグメントをさらにpHIL-S1ベクター(Invitrogen)にさらにサブクローン
化し、得られたプラスミドをpJK20(図16を参照こと)と呼ぶ。そしてこれにより、PMEの短形態の成熟ポリペプチドをコードする領域が、PHO1分泌シグナルのインフレームに、そしてその下流に配置される。
【0245】
プラスミドpJK21およびpJK22を、EcoRI-NotIフラグメントをpBSK-O17クローンから得ること以外はpJK11およびpJK12について説明した同じ様式で構築した。図17および図18は得られたプラスミドを示し、ここで、成熟ポリペプチドをコードする領域は、それぞれpPIC9およびpPIC9K中のα分泌シグナルの下流に、そしてそれとインフレームで配置される。
【0246】
スフェロプラスト形成および形質転換による、Pichia pastoris中のPMEの長形態または短形態の導入
プラスミドpJK10、pJK11、pJK12、pJK20、pJK21、およびpJK22を、Pichia pastoris GS115細胞への分離実験において導入した。
【0247】
これに関して、スフェロプラストを、酵母抽出物ペプトンデキストロース培地(YPD)
中で、28〜30℃で増殖させたGS115細胞から調製した。スフェロプラストの調製および形
質転換手順を、Pichia発現キット:Instruction Manuzl(Invitrogen)に記載のように行った。次いで、得られたPchiapastoris Mut+またはMuts形質転換体を、組換えPME遺伝子の発現について、Biochemistryの材料および方法に記載の方法を用いてPME活性について
上清をアッセイすることによって分析した。
【0248】
PMEの長形態または短形態の高発現についての形質転換体のスクリーニング
推定のポジティブな形質転換体を、最少培地(Pichia 発現キットInstruction Manual,Invitrogenに詳述されるMinimal Dextrose MediumまたはMinimal Glycerol Mediumのいずれか)中でさらに増殖させ、そしてゲノムDNAを単離し、そしてInstructionManualに記
載のPCRによって分析した。
【0249】
最初のスクリーニングにおいて見出されたポジティブクローン(これは、予想されるサイズのPCRバンドもまた産生する)を選択し、そしてPchiaInstruction Manualに記載の
手順に従って、28〜30℃でフラスコ中でさらに増殖させた。
【0250】
各構築物(pJK10、pJK11、pJK12、pJK20、pJK21、およびpJK22)の少なくとも10個の確認した組換えクローンを、PMEの分泌についてスクリーニングし、そしてそれらの相対的
な発現レベルを2〜6時間毎にサンプリングすることによって経時的に過剰時間を測定した。サンプル中の細胞をペレット化し、そしてMaterials and Methods for Biochemistryに説明された方法に従ってPME活性について上清をアッセイした。
【0251】
pJK12またはpJK22のいずれかでの形質転換後に得られたクローンを、Scorer C.A.ら、(1994) Bio/Technology 第12巻、181〜184頁およびLarocheY.ら、(1994)Bio/Technology 第12巻、1119〜1124頁に記載のように、選択遺伝子として組み込まれたカナマイシン耐性遺伝子を用いて予め選択した。この方法により、複数のコピー組み込み形質転換体が得られ、そして上記のようにさらにスクリーニングした。
【0252】
PMEの長形態または短形態のいずれかを示すか、あるいは高レベルで組み換えタンパク
質を発現することが示された形質転換対を選択し、そしてウェスタンブロット分析(Materials and Methods for Biocheistryを参照のこと)によってさらに分析した。
【0253】
組換えPMEの精製および特徴付け
組換えPMEタンパク質を、必要に応じてMaterials and Methods for Biochemistryに記
載の手順を用いて培養上清から精製した。
【0254】
PMEの長形態の予想される高温安定性を、Characterization and kinetic dataのセクションに説明されるように、異なる温度でのインキュベーション後に酵素活性を試験することによって確認した。精製した組換え酵素(長PME形態および短PME形態の両方)を、Characterization and kineticc dataのセクションで説明されるようにさらに特徴付けた。これらの分析は、両方のタイプが、約7〜8の至適pHを有し、組換え短PMEの熱安定性は10
℃〜40℃の間、そして組換え長PMEについては80℃までであることが見出されたことを示
した。
【0255】
ASPERGILLUS NIGERにおける発現
別の実施態様において、pO34またはpO17を適切な制限酵素で消化し、そして本発明のPMEの長形態または短形態のコード配列をAspergillusnigerでの発現のためにAspergillus
発現ベクターpBAMTE1(Neurospora crassas由来のメチルトリプトファン耐性プロモータ
ーを含む)にクローン化した(Pallら、(1993) Fungal Genet Newslett.第40巻 59〜62頁)。
【0256】
プロトプラストを、溶解酵素Sigma L-2773およびリティカーゼSigma L-8012を用いるDaboussiら(Curr Genet (1989) 第15巻453〜456頁)に従って調製した。プロトプラスト
の形質転換は、形質転換されたプロトプラストをプレーティングすることについてはPuntら(Methods in Enzymology (1992) 第216巻447〜457頁)に記載のプロトコルに従ったが0.6%の浸透左安定性のトップアガロースを用いた以外は、Buxtonら(Gene (1985) 第37巻
207〜214頁)に記載のプロトコルに従った。
【0257】
結果は、精製されたオレンジPME活性が、Aspergilus niger培養物から得ることが出来
ることを示した。
【0258】
用途
タンパク質飲料の粘度および安定性に対するペクチンで処置されたオレンジPMEの効果
方法
オレンジから誘導可能なPMEを用いたペクチンの酵素処理
酵素的に処理されたペクチンのバッチを以下のように調製した:
125gのペクチンを、有効な撹拌下で熱湯に溶解した。45.3gのNaCl(試薬グレード)を
添加し、そして容積を水で4.0 lに調整した。この溶液を、塩が溶解するまで撹拌した。
このペクチン溶液を40℃に冷却し、そして1NのNaOH(試薬グレード)を用い、そして有
効に撹拌してpHをpH7.0まで増加させた。オレンジPMEの適切なサンプルを添加し、そして所望の程度のエステル化が達成されるまで、酵素反応を続けた。インキュベーションの間、1NのNaOH(試薬グレード)の自動投与によってpHをpH7に一定に保ち、そして酵素反
応をNaOHの消費によって追跡した。
【0259】
ペクチンサンプルが所望の程度の脱エステル化に達した際に、NaOHの添加を停止し、溶液のpHを、2%のHClの添加により約3.0に低下させた。次いで、ペクチン溶液を、70℃で5分間加熱し、完全に酵素を不活化した。処理されたペクチンを、1容積のイソプロパノールを用いて沈殿させ、60%のイソプロパノールで洗浄し、そして約50%の乾燥物にプレスした。次いで、酵素処理されたペクチンバッチを、40℃で風乾し、そして最終的に乾燥粉末に粉砕した。
【0260】
プロトコル
カルシウム感受性指標(CF)のためのペクチンサンプルの測定
ペクチン1gあたり57.6mgのカルシウムを有する溶液中に溶解したペクチンの粘度を、
溶液中の正確に同量のペクチンの粘度(しかし、カルシウムを添加しない)で割った比としてカルシウム感受性を測定する。非カルシウム感受性ペクチンは、1のCF値を有する。
【0261】
4.2gのペクチンサンプルを、有効な撹拌を伴って550mlの熱湯に溶解する。溶液を約20
℃に冷却し、そしてpHを1NのHClで1.5に調セクションする。ペクチン溶液を水で700mlに調セクションし、そして撹拌した。この溶液の145gを4つの粘度ガラス(viscosityglass)中に個々に測り入れる。10mlの水をこのガラスうちの2つに添加し(二重測定)、そ
して10mlの250mM CaCl2溶液を残りの2つのガラスに撹拌下で添加する。
【0262】
50mlの酢酸緩衝液(50M、pH約4.6)を、有効な磁石撹拌下で4つの粘度ガラスに添加し、それによりペクチン溶液のpHはpH4.0を超えて上昇する。磁石を取り出し、そしてガラ
スを20℃で一晩放置する。翌日に粘度をBrookfieldの粘度計を用いて測定する。カルシウム感受性指標を、以下のように計算する:
【0263】
【数1】

【0264】
ペクチンサンプルのエステル化の程度(%DE)の決定
50mlの60%イソプロパノールおよび5%のHCl溶液に、2.5gのペクチンサンプルを添加
し、そして10分間撹拌する。ペクチン溶液をガラスフィルターを通して濾過し、そして15mlの60%イソプロパノール/5%HCl溶液で6回洗浄し、その後さらに60%のイソプロパノールでフィルターに塩素がなくなるまで洗浄した。フィルターを80℃で一晩乾燥する。
【0265】
20mlの0.5NのNaOHおよび20.0mlの0.5NのHClをコニカルフラスコ中で合わせ、そして2
滴のフェノールフタレインを添加した。これを0.1NのNaOHで永久的な色素変化が得られるまで滴定した。0.5NのHClは、0.5NのNaOHよりわずかに強いはずである。0.1NのNaOHの添
加した容積をV0として表す。
【0266】
0.5gの乾燥ペクチンサンプル(濾過物)を、コニカルフラスコ中に測り入れ、そしてサ
ンプルを96%エタノールで湿らせる。最近ボイルし、そして冷却した100mlの蒸留水を添
加し、そして得られた溶液をペクチンが完全に溶解するまで撹拌する。次いで、5滴のフェノールフタレインを添加し、そしてその溶液を0.1NのNaOHで滴定する(色が変化し、そしてpHが8.5まで)。ここで使用した0.1NのNaOHの量を、V1として表す。20.0mlの0.5NのNaOHを添加し、そしてフラスコを強く振り、次いで15分間放置する。20.0mlの0.5NのHClを添加し、そしてピンク色が消えるまで振る。次いで、3滴のフェノールフタレインを添加し、次いで、得られた溶液を0.1NのNaOHで滴定する。使用した0.1NのNaOHの容積をV2として表す。
【0267】
エステル化の程度(%DE: 全カルボキシ基の%)を、以下のように計算する:
【0268】
【数2】

【0269】
ヨーグルト生産
標準化した脱脂乳(粉状のミルクを適切な容量の水と混合して調整した)を、90℃で5分間加熱し、次いで200kp/cm2でホモジェナイズし、そしてミルクを31℃に冷却した。ヨ
ーグルト培養物を添加し、そしてそのミルクを約pH4.0まで発酵した。ヨーグルトを20℃
に冷却し、そしてペクチンサンプルを飽和糖溶液(約65%糖)として添加し、そして15分間撹拌した。pHを乳酸でpH4.0に調整した。ヨーグルトを88℃で15秒間低温殺菌し、そし
て150kp/cm2でホモジェナイズし、次いで20℃に冷却し、そして滅菌した250mlの青キャップボトル中に満たした(200ml/ボトル)。
【0270】
最終製品の組成は:7.6%MSNF(乳固形分)、9.15%糖、および0.25%または0.35%ペ
クチンサンプルであり、総固形分はそれぞれ17.0%または17.10%であった。
【0271】
ヨーグルト飲料の粘度の決定
ヨーグルトサンプルの粘度を、18.5〜46.0の剪断速度(shear rate)を有するBohlin RheometerTM(Bohlin Instrumentsより供給された)または同一の剪断速度を有するStressTechTM(Rheologica instrumentsAB)のいずれかを用いて決定(二重決定)した。
【0272】
遠心分離試験によって測定されたタンパク質の安定性
20gのサンプル(例えば、飲用ヨーグルト)を、10℃で20分間、2300×gで遠心分離する。上清を捨て、そして遠心分離ガラスを30分間逆さまにした。ガラスを計量し、そして沈降%を以下のように計算した:
【0273】
【数3】

【0274】
ここで、Wgt=重さ、そしてCentri =遠心分離
サンプルにおける粒子サイズ分布によって判断されるタンパク質の安定性
ヨーグルトサンプルの粒子サイズ分布を、Malvern 2600 EasyTM サイズ測定器の使用により決定した。粒子サイズを、この方法によるレーザー光散乱によって決定する。1mlのヨーグルトサンプルを9mlの脱気(de-areated)緩衝溶液(30.7%の0.1Mクエン酸、19.3
%の0.2M Na2HPO4、および50.0%水)に添加し、そして混合した。脱気した緩衝液を測定するガラスに添加し、そしてサンプル/緩衝液の混合物を最適な濃度が得られるまで滴下によって添加する。平均の粒子サイズは、測定から計算される。
【0275】
約3μm未満の平均粒子サイズを有するヨーグルトはむしろ安定であると考えられるが
、約10μm以上を越える平均粒子サイズを有するヨーグルトは、長期保存において安定で
はないと考えられる。
【0276】
長期安定性の決定
サンプルを4℃または室温で保存し、そしてホエー分離を測定した(ボトル中のサンプルの上部におけるホエーのmmにおいて)。サンプルを250mlの青いキャップのボトル(二
重決定)に満たした。各場合におけるサンプルの深さは、約70mmであった(これは、各ボトルの200mlのマークに対応する)。
【実施例】
【0277】
実施例1
サワーミルク乳飲料
ペクチンをサワーミルク乳飲料(例えば、ヨーグルト飲料)に添加する目的は、飲料の細菌学的および感覚による有効期間の間、物理的に均一なままの飲料を生産することである。さらに、ペクチンを添加しない場合、長期貯蔵のためのヨーグルト飲料の処理により、飲料中のタンパク質が不安定化し、砂っぽい舌触りのある飲料となり、そしてかなり早期にシネレシスを示す。
【0278】
ペクチンの処理
市販の高エステルペクチン;GrindstedTMPectin URS(Ultra Rapid Setpectin型)を
、その高いエステルレベル(82の%DE、図19参照のこと)のために、母ペクチンとして選択した。この母ペクチンのオレンジPME酵素での処理を、方法のセクションで説明する。
【0279】
酵素反応を停止し、そして得られた実験に用いるペクチン(ペクチン番号1944-96-2と呼ぶ)を、エステル化の程度に関して、方法のセクションに記載の方法で調べた。さらに、2つのペクチンのタイプ、母ペクチンおよび処理されたペクチンを、公知の良質の市販の飲用ヨーグルトペクチンのタイプと比較するために、GrinstedTMPectin AM453を実験
に含めた。
【0280】
3つの選択されたペクチンの相対的カルシウム感受性を、方法のセクションで説明したように測定した:ペクチンサンプルのカルシウム感受性指標(CF)の測定、およびその結果を以下の表に示す。
【0281】
【表1】

【0282】
82%DEから下は76%DEまでのGrindstedTM Pectin URS母ペクチンの脱エステル化は、これらの2つのペクチンのカルシウム感受性に、ほとんど何ら変化を与えなかった(ΔCF=1は感受性なし)。測定可能なカルシウム感受性を有するペクチンが、70%DEまでのオレ
ンジPME酵素での母ペクチンのさらなる処理によって生産され得る。なぜなら、このペク
チンは14のΔCFを有していたからである。
【0283】
ヨーグルト/飲用ヨーグルト分析の結果
ヨーグルトを方法のセクションで説明したように生産した。3つのペクチン(GrindstedTM Pectin URS、ペクチン1944-96-2、およびGrindstedTMPectinAM453)を、以下の調製法において個々に用いた:
7.6%MSNF(乳固形分)、9.15%砂糖、および0.25%または0.35%ペクチンサンプルを
用いると、最終産物中で、それぞれ17.0%または17.10%の全固形分となった。
【0284】
生産された個々のヨーグルトの質は、方法のセクションに記載のように、遠心分離試験におけるそれらの沈降%により、ヨーグルト中の粒子サイズを測定することにより、粘度を測定することにより、そして長期貯蔵の間に乳清の分離が生じるか否かを試験することにより調べた。
【0285】
3つのペクチンのタイプを用いて生産されたヨーグルトの沈降を、以下の表に示す。
【0286】

ヨーグルトの沈降(%)
【0287】
【表2】

【0288】
これらの結果は、1〜4個の独立した生産物の平均値である。
【0289】
母ペクチン(URS型)が高い沈降%を有し、従って生産されたヨーグルトが乳清の分
離を示し、そして用いられた両方のペクチン濃度(0.25および0.35%)で不安定であったことが明らかである。これは驚くことではない。なぜなら、通常URSペクチンのタイプは
、熱処理されたタイプのヨーグルトの長期保存のための安定化に用いられ得ないからである。
【0290】
ペクチン1944-96-2を用いて生産されたヨーグルトは、75日を越える貯蔵後に、用いら
れた両方のペクチン用量で安定性、および上記の結果に見られるように低い沈降を示し、そして乳清の分離は何ら示さなかった。これに対して、ヨーグルト生産に通常用いられる良質のGrindstedTMPectin AM453もまた、予想されたように低い沈降を示し、そして乳清の分離のない安定なヨーグルトを生産した(上記の結果を参照のこと)。
【0291】
母URSペクチンのオレンジPMEでの処理により、不適切なペクチンを、ヨーグルトの中の安定剤として適切にし、そしてこの処理されたペクチンは良質の市販の安定剤と同じくらい良く働く。
【0292】
粒子サイズ決定による生産されたヨーグルトのさらなる試験(方法のセクションを参照のこと)を行った。結果を以下の表に示す。
ヨーグルトの粒子サイズ(μM)
【0293】
【表3】

【0294】
母URSペクチンを用いて生産されたヨーグルトの平均の粒子サイズ(Malvern装置を用いたD(4.3) 画分に対応する数を示す)は、予想通り高い。これらの結果もまた1〜4個の
生産物の平均値である。
【0295】
ペクチン1944-96-2およびGrindstedTM Pectin AM453の両方から生産されたヨーグルト
の平均の粒子サイズは、用いられた両方のペクチン用量において小さい(上記の結果を参照のこと)。これらのペクチンのタイプを用いて生産されたヨーグルトが、安定なヨーグ
ルトを生産するのに適していることがまた示される。
【0296】
最後に、そして非常に重要であるが、長期保存のための飲料ヨーグルトを生産する場合には、その粘度を測定し、そしてその結果を以下の表に示す。
【0297】

ヨーグルトの粘度(MPa)
【0298】
【表4】

【0299】
母URSペクチンがヨーグルトを安定化し得なかったので、得られた粘度は、予想通り、
両方のペクチン濃度でやや高い。沈降の度合いが低くそして小さい粒子サイズを有する安定なヨーグルトを生産した良質のGrindstedTMPectin AM453は、 0.25%ペクチン用量に
おいてGrindstedTM Pectin URSペクチンを用いたときに見られた粘度の約半分の粘度、そして0.35%ペクチン用量においてURSペクチンをほぼ同じ粘度(AM453ペクチンのみが安定なヨーグルトを生産したという事実とは無関係に)を示した。
【0300】
URSおよびAM453の両方の場合、観察されたより高い粘度は、添加されたペクチンの量に部分的に起因するようであり、特にこれはAM453ペクチンの場合にあてはまるようである
。なぜなら、添加されたペクチンの量が増加(0.25から0.35%まで)すると、ほぼ2倍粘度の高いヨーグルトが生産されたからである。
【0301】
オレンジ処理されたPMEペクチン1944-96-2を用いて得られた粘度は、0.25%濃度において、母URSペクチンに比較して劇的な粘度の低下を示す。これは、1944-96-2ペクチンでのヨーグルトの安定化に部分的に起因するが、これが唯一の理由ではない。なぜなら、AM453ヨーグルトは、そのペクチン用量において2倍高い粘度を有するからである。実際、0.35%の1944-96-2ペクチンをヨーグルトに添加しても、(0.25%用量に比較して)粘度が6
単位増加するだけであるが、AM453の場合、0.25%から0.35%に変えると、19単位増加す
る。
【0302】
オレンジPME処理ペクチン1944-96-2は、ペクチン用量が0.25%(または0.35%)(これは、他の未処理ペクチン(例えば、GrindstedTMPectin AM453)を用いた場合、ほぼ2倍高い粘度を与える)であったにも関わらず、非常に低い粘度を有するヨーグルトを安定化し得る。
【0303】
これは、サワーミルク乳飲料の生産のための、新しく非常に重要な開発である。
【0304】
GrindstedTMPectin URSをオレンジPMEで処理することにより、新しいペクチンのタイプが作製される。これは、母ペクチンとは対照的に、ヨーグルトを安定化し得、そして最も重要なことに、通常用いられるペクチンよりもずっと低い粘度を示す。他の高エステルペクチンはまた、オレンジPMEでの処理により改善され得る。
【0305】
実施例2
乳清ジュース飲料
(上記のように調製された)本発明の改変されたペクチンを、以下のように乳清ジュース飲料において用いた:

【0306】
【表5】

【0307】
乾燥したPME改変ペクチン、クエン酸ナトリウム、および砂糖を混合し、次いで80℃で
水に溶解した。このペクチン溶液を5℃未満に冷却し、そして乳清を5℃において添加した。Grindsted着香料(Danisco Ingredients,Danisco A/Sにより供給される)およびジュースをゆっくり添加し、そしてサンプル混合物中のpHをクエン酸または乳酸でpH 4.0に調セクションした。サンプル混合物を、撹拌しながら約30分間熟成した。低温殺菌を80℃で15秒間行い、そして均質化を200bar(2900psi)で行った。サンプルを20℃にまで冷却し、
そして無菌的に容器に満たした。
【0308】
サンプル試験を、室温で、24時間、1ヶ月、および6ヶ月インキュベートした後に分析した。調査分析には、粘度の測定、安定性指標粒子サイズ、および長期的安定性が含まれた(上記のプロトコル)。
【0309】
これらの結果により、PME改変ペクチンで加工された乳清ジュース飲料において、改善
された安定性および長期的安定性が、コントロール試験で用いた参照ペクチンに比較して示された。さらに、乳清ジュース飲料は、コントロール飲料よりも低い都合の良い粘性を有していた。
【0310】
乳清ジュース飲料をまた、植物PMEで改変されたライムおよびレモンペクチンでそれぞ
れ加工した(すなわち、本発明のPMEで改変した)。その結果により、PME改変ペクチンが
、非改変ペクチンと比較して、また参照ペクチンと比較して、改善されたタンパク質安定性を有することが実証された。
【0311】
実施例3
ミルク/果汁飲料
GrindstedTMURS(Danisco Ingredients, Danisco A/Sから入手した)を、ヨーグルト飲料について記載したように、PMEで改変した。改変ペクチンを、以下を含むミルク/果汁飲料において用いた:
【0312】
【表6】

【0313】
乾燥したPME改変ペクチンおよび砂糖を混合し、次いで80℃で水に溶解した。ペクチン
溶液を5℃未満に冷却し、そしてミルクを5℃で添加した。Grindsted着香料およびジュ
ースをゆっくり添加し、そしてサンプル混合物中のpHを(必要であれば)クエン酸または乳酸でpH 4.0に調セクションした。サンプル混合物を、乳清ジュース飲料について記載のように熟成させ、低温殺菌し、そして均一化した。サンプルを20℃に冷却し、そして無菌的に容器に満たした。
【0314】
その結果により、PME改変ペクチンで加工されたミルク/果汁飲料において改善された安定性(長期的安定性を含む)が、コントロール試験において用いた参照ペクチンに比較して示された。さらに、ミルク/果汁飲料は、コントロール飲料よりも低い都合の良い粘性
を有していた。改善された機能性もまた観察された。
【0315】
ミルク/果汁飲料はまた、本発明のPMEで改変されたライムおよびレモンペクチンで加工し得る。
【0316】
実施例4
乳清安定性
酵素で改変されたペクチンをpH 4.0で試験した。得られたペクチン溶液のpHを、KOH/HClでpH 4.0に調セクションした。ペクチン濃度を、1.0%に調整した。ペクチンを濃度0.1
%〜0.25%において試験した。ペクチン、Jenness緩衝液(以下を参照のこと)、および
乳清溶液(以下を参照のこと)を混合し、そして96℃にて25分間加熱した。室温に冷却した後、吸光度を500nmで測定した。
【0317】

乾燥混合Jennessの緩衝液:
乾燥粉末Jenness(Jenness, RおよびKoops, J Preparation and Properties of a salt
solution which simulates milk ultrafiltrate, Nederlands Melk-enZuiveltijdschrift、第16巻 nr3、153-164頁、1962):
15.80g KH2PO4
5.08g K3シトレート
17.91g Na3シトレート,2H2O
1.80g K2SO4
13.20g CaCl2,2H2O
5.02g Mg3シトレート,H2O
3.00g K2CO3
10.78g KCl
緩衝液:
pH 4.0の7.5900g/lの乾燥粉末Jennessの水溶液。
【0318】

乳清溶液
乳清タンパク質の濃縮物を凍結乾燥し、そして粉末化した。0.40%w/wの乳清タンパク
質の溶液を、Jenness緩衝液中でpH 4.0で調製した。
【0319】

ペクチン溶液
1%w/wのペクチン水溶液をpH 4.0で作製した。
【0320】

混合物濃度:
ペクチン、Jenness緩衝液、および乳清溶液を、以下の表に示すように混合した。混合
物を、25分間96℃に加熱し、そして室温に冷却してから、サンプルを分光光度計で500nm
において測定した。
【0321】
【表7】

【0322】
結果
結果を以下の表に示す。上述の500nmでの吸光度の値は、2つの測定から得た平均値で
ある。種々の異なるタイプのペクチンおよび本発明の酵素的に改変されたペクチンの比較のために、非改変ペクチンであるGrindstedTMPectin 3450(Danisco Ingredients, Danisco A/Sから供給された)についての指標を100に設定する。
【0323】
指標>100は、サンプル3450を用いるよりも低いタンパク質の安定性を示す。指標=100は、サンプル3450と類似の安定性を示す。指標<100は、サンプル3450を用いるよりも良
いタンパク質の安定性を示す。指標≦95は、非常によいタンパク質の安定性を示す。
【0324】
【表8】

【0325】
結果から見られるように、本発明により改変されたGrindstedTM pectin URSペクチンは、参照のGrindstedTMpectin 3450および非改変GrindstedTM pectin URSペクチンに比較
して、安定性を増加するのに都合の良い特性、そしていくつかの場合には非常によい特性を示す。
【0326】
実施例5
長期の有効期間を有する低pHのラバン飲料
ラバン(Laban)飲料は、pH値が4.2より低い酸性化した乳飲料である。ラバン飲料は、ペクチン溶液と混合したラバンベースからなる飲料である。ラバンベースの処方は以下の通りである:
【0327】
【表9】

【0328】
標準化された全乳(無水乳脂肪および脱脂乳粉末)を、75-80℃、圧力200bar(2900psi)で均質化し、その後90-95℃で5〜10分間低温殺菌した。pH4.0くらいまで培養した後、pHをクエン酸または乳酸で3.8〜4.2に調セクションする。次いで、ペクチン溶液を添加する。次いで、その混合物を均一な混合物になるまで撹拌する。次いで、90〜95℃で10〜15秒間低温殺菌し、そしてさらに150〜200barで均質化する。20〜25℃に冷却した後、その製
品を無菌的に容器に満たす。
【0329】
2〜3日後、非安定化ラバン飲料は、しばしばシネレシスを示す。
【0330】
しかし、本発明の酵素的に改変したペクチンの添加により、シネレシスは抑制され、そして粘性は改善される。
【0331】
さらに、この製品は、はっきりしたヨーグルトの味および長期の有効期間を有する。
【0332】
実施例6
オレンジジュース(タンパク質富化)
オレンジジュース飲料は、2%のDANPROLACT 40TM(Central Soya, Aarhus A/S)、6%の砂糖、10%のオレンジ濃縮物、0.4%のレモン濃縮物、0.2%のペクチン、および81.4%の水を含む酸性化された飲料(pHは約4)である。この製品は、大豆タンパク質を富化したオレンジジュースである。この製品は、低温殺菌および均質化されている。20〜25℃に冷却した後、この製品を無菌的に容器に満たし、そして約6ヶ月間、室温で貯蔵することが可能である。本発明の酵素的に改変されたペクチンをオレンジ飲料に添加(タンパク質添加)すると、都合の良い特性(例えば、長期安定性)を示し、そしてこれは良い口当たりであった。
【0333】
実施例7
抗体産生
抗体を本発明の酵素に対して生じさせた。つまり、N HarboeおよびA Ingild(「Immunnization, Isolation of Immunoglobulins, Estimation of Antibody Titre」In A Manualof Quantitative Immunoelectrophoresis, Methods and Applications, N H Axelsenら、(編)、Universitetsforlaget, Oslo, 1973)およびT G Cooper(「The Tools of Biochemistry」、JohnWiley & Sons, New York, 1977)に従って記載された手順に従い、精製された酵素をウサギに注射し、そして免疫グロブリンを抗血清から単離することにより抗体が生じた。
【0334】
本発明の他の改変が、本発明の範囲から逸脱することなく当業者に明らかである。
【0335】
以下の頁において、多数の配列リストを提示する。これらには、配列番号1から配列番号19まで連続的に番号が付され、そしてこれらは核酸配列およびアミノ酸配列を表す。
【0336】
【化2−1】

【0337】
【化2−2】

【0338】
【化2−3】

【0339】
【化2−4】

【0340】
【化2−5】

【0341】
【化2−6】

【0342】
本発明は、今回、例としてのみ記載されており、その参照は、以下に添付の図面に対してなされる:
【図面の簡単な説明】
【0343】
【図1】図1は、オレンジのような、柑橘類の果物の概略図である;
【図2】図2は、本発明の組換え酵素のSDS PAGEゲルである;
【図3】図3は、至適pHを決定するためのプロットである;
【図4】図4は、至適温度を決定するためのプロットである;
【図5】図5は、温度安定性を決定するためのプロットである;
【図6】図6は、K値を決定するためのプロットである;
【図7】図7は、NaClの存在下または不在下での活性を決定するためのプロットである;
【図8】図8は、NaSOの存在下または不在下での活性を決定するためのプロットである;
【図9】図9は、NaNOの存在下または不在下での活性を決定するためのプロットである;
【図10】図10は、pO17のプラスミドマップである;
【図11】図11は、pO34のプラスミドマップである;
【図12】図12は、2つの遺伝子の模式図である;
【図13】図13は、pJK10のプラスミドマップである;
【図14】図14は、pJK11のプラスミドマップである;
【図15】図15は、pJK12のプラスミドマップである;
【図16】図16は、pJK20のプラスミドマップである;
【図17】図17は、pJK21のプラスミドマップである;そして
【図18】図18は、pJK22のプラスミドマップである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−262905(P2006−262905A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127112(P2006−127112)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【分割の表示】特願2004−371762(P2004−371762)の分割
【原出願日】平成8年7月12日(1996.7.12)
【出願人】(397060588)ダニスコ エイ/エス (67)
【Fターム(参考)】