説明

酸素を濃縮するシステムおよび方法

本発明のシステムは、空気を濃縮ガス成分に分離する吸着システム(100)であり、供給空気と、該供給空気を受容し圧縮し、供給圧縮空気を提供する圧縮機(115)と、供給圧縮空気を濃縮ガス成分に分離するモレキュラーシーブ材料と、を有する。吸着システムは、モレキュラーシーブ材料から、少なくとも5リットル/分(LPM)の濃縮ガス成分を供給し、このシステムは、単位LPM当たりの全重量の比が、<9ポンド/LPMである。また、吸着システムにより、濃縮ガスの出力量が供給され、パージサイクル中に、濃縮ガスのパージ量が吸着システムのシーブチャンバに分配される。パージ量は、最大量と出力量の間の差以下の値であり、パージ量は、出力量に基づいて制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力スイング吸着システムに関し、特に、圧縮機からの圧縮空気を受容し、単一の組立体内に統合された一連のチャンバを介して空気を誘導する、複数のチャンバキャニスタを有する酸素濃縮システムおよびそれを作動させる方法に関し、この場合、圧力スイング吸着システム内で濃縮酸素が製造される。
【0002】
本出願は、2006年8月28日に出願された米国仮特許出願第60/840,523号から、米国特許法119条(e)に基づいて、および2006年12月6日に出願された米国出願第11/636,233号から、米国特許法120/365条に基づいて、優先権の主張をするものであり、これらは、本願の参照として取り入れられている。
【背景技術】
【0003】
吸着分離プロセスでは、ある固体の機能に依存して、混合ガスから、1または2以上の成分が選択的に吸着される。患者用の酸素濃縮器の場合、吸着分離プロセスは、通常、固定床作動であり、吸着ステップおよび脱着ステップの、2つの主要なステップを有する。
【0004】
圧力スイング吸着(PSA)法は、例えば、医療用の混合ガスの成分を分離する際に有益な技術である。混合ガスは、通常、周囲空気であり、これがチャンバに供給され、各成分が分離され、一つの成分の高百分率の蒸気が形成される。空気は、多くの不純物を含んでおり、主として約21%の酸素、78%の窒素、0.9%のアルゴン、および0.1%の他のトレース(不純物)ガスを含む。PSA法を使用することにより、入口空気から、酸素を分離することができ、患者に高濃度の酸素を提供することができる。
【0005】
通常の場合、そのようなチャンバ内での成分分離は、ゼオライトまたはモレキュラーシーブを用いて行われ、これは、選択的親和性を有し、混合物中のある成分を吸着する。ゼオライトは、天然のまたは合成製造されたモレキュラーシーブであり、均一なポアまたは結晶キャビティを有する。ゼオライトのポアに収容される程の十分に小さな化学成分が、ゼオライト材料の表面に吸着される。成分がゼオライトに吸着する容易性は、ゼオライトペレット内のポアの形状および寸法に対する、分子の形状および寸法に依存する。ゼオライトは、自身のポアサイズまでの、いかなる直径の分子も吸着する。
【0006】
圧力スイング吸着法は、選択的吸着から脱着までの一連のチャンバサイクルにおける圧力スイングに依存する。このスイングは、高圧から大気圧まで、または大気圧から真空までの変化を生じさせることができる。大気圧から真空までのスイングが生じる場合、技術的に、真空圧力スイング吸着(VPSA)法が考えられる。当業者に良く知られている成分分離用のPSA技術およびVPSA技術は、極めて異なっており、各技術は、固有の利点および欠点を有する。
【0007】
通常の圧力スイング吸着システムは、酸素濃縮器であり、これは、空気から酸素を分離し、その後、酸素が患者に吸入される。従来のシステムでは、0.5リットル/分(LPM)から10LPMの間の量が供給される。そのような酸素濃縮器は、複数のモレキュラーシーブ床を有し、ガスが酸素と窒素に分離され、これにより、その後、酸素が患者に供給される。一方、窒素は、シーブ内に残され、その後パージされる。これらの酸素濃縮器は、空気圧縮機、2つの3方向空気バルブ、複数のキャニスタであって、各々が別個のモレキュラーシーブを収容するキャニスタ、および製品リザーバタンクなど、いくつかの部材を有する。そのような構造には、広範なバルブ手段および配管が必要となり、これは、これらのシステムの効率およびコストに影響を及ぼす。
【0008】
従来のそのようなPSAシステムは、少なくとも3つのチャンバを含む圧力スイング吸着システム用の、複数のチャンバキャニスタを有する。キャニスタは、一般的な全長のハウジングを有する。第1のモレキュラーシーブチャンバは、第1のモレキュラーシーブを受容するハウジング内に配置され、このモレキュラーシーブは、周囲環境からの空気を、濃縮ガス成分に分離する。また、第2のモレキュラーシーブを受容するハウジング内には、少なくとも第2のモレキュラーシーブチャンバが配置され、このモレキュラーシーブは、周囲環境の空気から、濃縮ガス成分を分離する。ハウジング内には、供給チャンバが配置され、この供給チャンバは、周囲環境からの空気を受容し、空気を、第1または第2のモレキュラーシーブチャンバのいずれかに流通させる。
【0009】
従来の多くのシステムでは、患者の要望に合致する十分な流速を提供することができるが、これらのシステムは、高効率化、得られるガスの高濃度化、低重量化を含む、多くの患者の要求には合致しない。例えば、従来の多くのシステムでは、十分な量のモレキュラーシーブ材料、および作動電力が必要となる。他のシステムの場合、ある流速では、不十分な純度で酸素が供給される。従来のいくつかのシステムでは、これらのいくつかの欠点に対処するための特徴および方法が採用されている。
【0010】
例えば、米国特許第6,683,256号(‘256特許’)には、モレキュラーシーブタイプのガス分離機器が示されており、この機器は、製品ガスの所望の濃度に対応する、脱着再生段階と吸着再生段階の期間を変化させることができる。特に、256特許には、ガス分離機器の適応制御法が示されており、この機器には、製品ガスの成分濃度に応答する酸素センサが使用される。酸素センサから受け取ったデータに基づいて、ガス分離機器は、吸着再生段階および脱着再生段階の期間を調整する。センサが製品ガスの成分濃度が目的値よりも高いことを示した場合、脱着段階が短縮化され、これにより入力ガスの供給に対する要求が低減される。
【0011】
同様に、米国特許第5,906,672号(‘672特許’)には、マイクロプロセッサを備える酸素濃縮器が示されており、酸素濃縮器からの製品ガスの出力が評価される。また、この装置は、閉ループのフィードバック回路を有し、圧力スイング吸着サイクルの段階の期間が評価される。マイクロプロセッサは、酸素出力の減少が検知されるまで、タイミング値が徐々に増加していることを装置に指示する。酸素出力の減少が検出されると、マイクロプロセッサは、前のタイミングに戻るよう、装置に指示する。
【0012】
米国特許第4,627,860号(‘860特許’)には、酸素濃縮器および評価機器が示されている。860特許には、マイクロプロセッサを使用して、濃縮器の各部材の検知機能および特性をモニターすることが開示されている。また、860特許には、濃縮器と連携して、濃縮器の選択的にモニターされた機能を表示する評価機器が示されている。評価機器により、オペレータは、機会の特性レベルをモニターし、部材の問題を診断する。
【0013】
米国特許第5,474,595号(‘595特許’)には、圧縮機の容量制御システムを有する圧力スイング吸着機器が示されている。容量制御システムは、ユニットのハウジング内に、機械式バルブを提供し、これにより、手動で、圧縮機に摂取される周囲空気が制限されるように設定される。制限された周囲空気量により、圧縮機の負荷が減少し、さらにはシステムにより消費される電力が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,683,256号明細書
【特許文献2】米国特許第5,906,672号明細書
【特許文献3】米国特許第4,627,860号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来のシステムは、意図された目的には適しているが、これらのシステムでは、信頼性のある90%の酸素濃度、または5LPMを超えるシステムであって、最小限の重量、寸法、騒音レベル、および消費電力特性を有するシステムを提供することは難しい。また、従来技術では、0から5LPMの流速で、最大酸素濃度純度を形成することが可能な装置は、示されていない。また、従来技術には、0から5LPMの流速で、最小要求電力で作動可能なシステムについては、示されていない。また、従来技術には、低電力モードおよび上昇酸素モードの両方で作動可能なシステムは、示されていない。そのような酸素濃縮システムは、本発明によって、初めて導かれる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って、本発明の目的は、従来の吸着システムの問題を克服する吸着システムおよび/または方法を提供することである。この目的は、本発明のある実施例により達成され、本発明では、空気を濃縮ガス成分に分離する方法が提供される。この方法では、吸着システムの作動により、最大量の濃縮ガス成分が生じる。また、濃縮ガスの出力量は、吸着システムによって供給され、濃縮ガスのパージ量は、パージサイクルの下、吸着システムのシーブチャンバに分配される。パージ量の値は、最大量と出力量の間の差に等しく、またはこれ以下であり、パージ量は、出力量に基づいて制御される。
【0017】
また、本発明の一例としての実施例では、吸着システムを作動するための吸着システムおよび方法が提供され、この吸着システムは、空気を濃縮ガス成分に分離し、第1のモレキュラーシーブチャンバは、圧縮空気を供給することにより、圧縮される。また、製品ガスは、第1のモレキュラーシーブチャンバから出力され、その後、第1のモレキュラーシーブチャンバ内の圧力レベルは、第2のモレキュラーシーブチャンバ内の圧力レベルと均衡する。その後、第1のモレキュラーシーブチャンバおよび第2のモレキュラーシーブチャンバは、両シーブチャンバの均等圧力レベルを超える圧力レベルに同時に加圧される。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、空気を濃縮ガス成分に分離するための吸着システムおよび方法を提供することであり、この吸着システムは、圧縮空気を提供する圧縮機と、第1および第2のシーブチャンバと、該シーブチャンバ内に配置されたモレキュラーシーブ材料と、第1のモレキュラーシーブチャンバと第2のモレキュラーシーブチャンバの間に、濃縮ガス成分を連通させるパージ装置と、を有する。また、システムは、パージ装置を制御する制御器を有し、パージ装置は、複数の作動モードで作動するように制御される。作動モードは、手動でまたは自動で、例えば、シーブ材料から形成されたガスストリーム(ガス流)のモニターされた酸素濃度に基づいて、選択されても良い。
【0019】
本発明のこれらのおよび他の目的、特徴、特性、構造関連素子を作動させ機能させる方法、部品の組み合わせ、ならびに生産活動は、この明細書の一部を構成する添付図面を参照して、以下の説明および特許請求の範囲の記載を考慮することにより、明らかとなろう。各図において、同様の参照符号は、対応する部品を示す。ただし、図面は、単なる説明および記載用であって、本発明を限定する意図はないことは、明らかに理解される。明細書および特許請求の範囲において使用されている、「一つの」、「その」という用語は、明確な記載がない限り、複数のものを含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の原理による圧力スイング吸着システムの概略図である。
【図2】PSAプロセスの間の、PSA製品タンク内の通常の圧力を示すグラフである。
【図3】流量評価のため圧力信号の勾配が考慮される際の、窓「T」の例を示した図2と同様のグラフである。
【図4】製品タンク圧力信号の勾配とシステムからの酸素流速の関係を示すグラフである。
【図5A】本発明の原理による圧力スイング吸着システムの一部の上面斜視図である。
【図5B】本発明の原理による圧力スイング吸着システムの一部の底面斜視図である。
【図6A】本発明の原理による図5Aおよび5Bの圧力スイング吸着システムにおける、上部カバー組立体の上面斜視図である。
【図6B】本発明の原理による図5Aおよび5Bの圧力スイング吸着システムにおける、上部カバー組立体の底面斜視図である。
【図7A】本発明の原理による図2Aおよび2Bの圧力スイング吸着システムにおける、上部カバーの上面斜視図である。
【図7B】本発明の原理による図2Aおよび2Bの圧力スイング吸着システムにおける、上部カバーの底面斜視図である。
【図8A】本発明の原理による図2Aおよび2Bの圧力スイング吸着システムにおける、バルブの上面斜視図である。
【図8B】本発明の原理による図2Aおよび2Bの圧力スイング吸着システムにおける、バルブの底面斜視図である。
【図9】本発明の原理による図5Aおよび5Bの圧力スイング吸着システムにおける、エンドカバー組立体の底面斜視図である。
【図10】本発明の原理による図5Aおよび5Bの圧力スイング吸着システム内の、流体連通用のエンドカバーの斜視図である。
【図11】本発明の圧力スイング吸着システム内の流体連通用の活性パージ制御装置を含む図10のエンドカバーの斜視図である。
【図12】本発明の原理による圧力スイング吸着システムの実施例の、流速に対する圧力スイング吸着サイクルのある段階の時間を示したグラフである。
【図13】本発明の原理による圧力スイング吸着システムの実施例における、製品ガスの酸素濃度を示すグラフである。
【図14A】本発明の原理による圧力スイング吸着システムの固定パージ装置の実施例における、時間と圧力値の関係を示すグラフである。
【図14B】本発明の原理による圧力スイング吸着システムのアクティブパージ装置の実施例における、圧力値と時間の関係を示すグラフである。
【図15】電力保護モードで作動された本発明の圧力スイング吸着システムの実施例の圧力スイング吸着サイクルの異なる段階における時間値のグラフである。
【図16】電力保護モードで作動した際の、本発明の圧力スイング吸着システムの実施例の電力消費のグラフである。
【図17】本発明の原理による圧力スイング吸着システムの各種実施例での、製品ガスの酸素濃度と消費電力のグラフである。
【図18】本発明の原理による騒音抑制モードにおける値と時間の関係のグラフである。
【図19】システムを騒音抑制モードで作動した際の、PSAシステムの各種部材のピーク圧力を示したグラフである。
【図20】システムを上昇酸素モードで作動した際の、PSAシステムの各種部材のピーク圧力を示したグラフである。
【図21】延長バランスモードにおける、本発明の圧力スイング吸着システムの作動が酸素濃度に及ぼす影響を示したグラフである。
【図22】本発明の原理による圧力スイング吸着システムの実施例において、バランス時間と、切り替え圧力および酸素出力濃度の間の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、詳細を説明する。図において、同様の参照符号は、いくつかの図を通じて同様の部品を表している。図1には、本発明の実施例による圧力スイング吸着システム100の概略(ブロック)図が示されている。圧力スイング吸着システム100は、いくつかの標準的な部材を有し、これらは従来から知られている。圧力スイング吸着システム100の従来の態様の動作および構成は、米国特許第5,183,483号、および5,997,617号に示されており、両者は、本願の参照として取り入れられている。ここに示された例は、酸素を発生する圧力スイング吸着システムに関するものであるが、本発明の実施例は、多くの異なるタイプの圧力スイング吸着システムに取り込まれ、採用され得ることは、当業者には明らかである。
【0022】
本願において、「シーブチャンバ」および「シーブ床」という用語は、同意に使用され、ガス成分の分離の際に使用される、モレキュラーシーブ材料を保管することが可能な装置を意味する。本願において、「吸着」および「供給」という用語は、同意に使用され、分離のためモレキュラーシーブチャンバ内に、圧縮ガスを導入する処理を意味する。本願において、「脱着」、「パージ」および「再生」という用語は、同意に使用され、モレキュラーシーブチャンバから非製品ガスを除去する処理プロセスを意味する。
【0023】
本発明の圧力スイング吸着システム100は、軽量小型で、低騒音レベルで、低消費電力の酸素濃縮器を提供し、0.5から5LPMの範囲で酸素出力を発生することができる。これらの利点を提供するため、圧力スイング吸着システム100は、高効率構造で、目的に整合する部材を使用し、これらの部材には、高吸着性モレキュラーシーブおよび最適化圧縮機が含まれる。図1には、本発明の一実施例によるこの高効率構造の例が示されている。
【0024】
圧力スイング吸着システム100への入力は、周囲空気「A」である。この空気Aは、ほとんどの場合、未処理大気である。しかしながら、本発明では、他の入力ガス用ソース、例えば圧縮容器内に保管されたガスを使用することも考えられる。圧力スイング吸着システム100は、フィルタ110を有し、最初に入力空気Aは、フィルタ処理される。フィルタ110は、高効率粒子吸収(HEPA)フィルタであっても良く、このフィルタは、通常、ランダムに配置された繊維のマットで構成され、周囲空気A中の不純物が回収される。フィルタ110は、周囲空気A中の不純物の大部分をフィルタ処理することが可能であり、これには、ダスト、花粉、菌、バクテリア、およびその他の有意に大きな粒子が含まれる。フィルタ110による入力周囲空気Aのフィルタ処理により、圧縮機115に、清浄な周囲空気を入力することが可能となる。また本発明では、圧力スイング吸着システムのハウジングに、キャビネットフィルタスクリーン(図示されていない)を提供することも想定される。汚染されていない状態の空気は、圧縮機115に供給され、これは、圧縮機の効率に寄与するとともに、圧縮機が、空気処理の際に、不純物で詰まったり、腐食したりすることが抑制される。
【0025】
圧縮機115は、圧力スイング吸着システム内、さらにはシステムの中央部材に、加圧を提供することができる。圧縮機115は、フィルタ化された入力空気111を受容し、空気を圧縮し、圧力スイング吸着システムにより要求される圧力で、空気の出力116を提供する。一実施例では、圧縮機115は、ツインヘッド式、オイルレス装置である。別の実施例では、圧縮機は、単一ヘッド装置である。本発明では、圧縮機が本発明のシステムの使用に適した動作および/または機能を提供することが可能な限り、圧縮機は、他の構成を有することも想定される。
【0026】
圧縮機115の一実施例では、圧力スイング吸着システムのパラメータおよび仕様に合致した装置が提供される。例えば、これに限られるものではないが、圧縮機115の容量は、圧力スイング吸着システムのシーブチャンバの容量と十分に整合する。システムのパラメータと十分に整合した圧縮機を提供することで、多くの利点が得られ、これが圧力スイング吸着システム100の機能に貢献し、従来のシステムの問題が解消される。
【0027】
圧力スイング吸着システム100のシーブチャンバは、所定の空気圧力で、所定の量の周囲空気を処理するように構成され、周囲空気からの酸素の再生率は、あるレベルに維持される。圧力スイング吸着システムの一実施例では、シーブチャンバは、20ポンド/平方インチ(psi)あたり、70リットルの圧縮周囲空気を処理するように構成され、再生率は、少なくとも30%に維持される。この一実施例では、圧力スイング吸着システム100は、特に、圧縮機115が、シーブ床の容量仕様に整合するように構成され、圧縮機および圧力スイング吸着システム全体の効率が確保される。特に、圧縮機115は、シーブチャンバのパラメータに整合する出力を生成するように構成される。
【0028】
一実施例では、圧縮機115は、20psiで、1分当たり70リットルのガスを生成するように構成され、これは、シーブチャンバの容量に整合する。圧縮機115とシーブチャンバとの整合により、圧縮機の効率が最適化されるとともに、圧縮機を、比較的軽量化させることが可能となり、必要な電力量が最小限に抑制され、システムの要求と合致するようになる。本発明の一実施例では、圧縮機115は、15ポンド未満の重量である。ある実施例では、圧縮機は、10ポンド未満の重量である。
【0029】
一実施例では、圧力スイング吸着システム100の圧縮機115の仕様は、表1に示すものとなる。
【0030】
【表1】

理想気体の法則により、pV=nRT(圧力×体積=ガスのモル数×気体定数×温度)であり、空気圧力の上昇の結果、圧縮空気の温度が上昇する。従って、圧縮機115の出力116は、通常、高い温度となっている。この熱を緩和するため、いくつかの実施例では、出力116は、熱交換器117に接続される。熱交換器117は、圧縮機115の出力空気116の有効な熱移動を提供するように構成される。換言すれば、圧縮機の出力116の空気温度は、熱交換器117により抑制される。
【0031】
熱交換器117を出た後、圧縮入力空気は、メイン処理バルブ120を通る。メイン処理バルブ120は、圧力スイング吸着サイクルを通して、ガス流を分配するために使用される。処理バルブ120が、多くの異なる装置で実施され得ることは、当業者には明らかである。例えば、米国特許第6,062,260号(‘260特許’)には、SMC(登録商標)シュアサイクルバルブが示されており、これは、メイン処理バルブ120としての使用に適する。いくつかの実施例では、メイン処理バルブ120は、ロジック制御装置150により制御される。ロジック制御装置150は、マイクロプロセッサを有しても良く、このマイクロプロセッサは、メイン処理バルブ120をモニターし、これに指令を送ることができる。非限定的な例では、メイン処理バルブ120は、ソレノイドで操作され、ロジック制御ユニット150は、これらのソレノイドを制御する。いくつかの実施例では、ソレノイドは、5から8psiの間の最小切り替え圧力を有する。圧縮機115と同様、ロジック制御装置150は、所与のLPM出力で、圧力スイング吸着サイクルの1組の所定のパラメータに従って、メイン処理バルブ120の動作に指示を与える。
【0032】
一実施例では、メイン処理バルブ120は、4つのポートを有する。第1のポートは、排気ポート121であり、排気装置125に接続される。第2のポート122は、第1のシーブチャンバ130に接続される。第3のポート123は、第2のシーブチャンバ135に接続される。第4のポートは、供給入力ポート124であり、熱交換器117に接続される。ポート121、122、123、124により、メイン処理バルブ120は、圧力スイング吸着サイクルの動作に従って、多くの供給流経路と接続される。ポート122および123は、シーブチャンバに接続され、これらを開閉し、これにより、圧縮空気は、圧力スイング吸着サイクルの動作の間、各モレキュラーシーブチャンバ内に導入される。
【0033】
非限定的な構成では、メイン処理バルブ120は、熱交換器117からの供給入力ポート124が開となり、第1のシーブチャンバ130への第2のポート122が開となるように構成され、これにより、圧縮空気は、第1のシーブチャンバ130の方に供給される。同様に、メイン処理バルブ120は、供給入力ポート124が開となり、第2のシーブチャンバ135への第3のポート123が開となるように構成され、これにより、圧縮空気は、第2のシーブチャンバ135の方に供給される。あるいは、メイン処理バルブ120は、第2のポート122と第3のポート123の両方が開となるように構成され、この場合、圧縮空気は、第1のシーブチャンバ130と第2のシーブチャンバ135の両方に供給されるようになる。メイン処理バルブ120のこれらの配置は、圧力スイング吸着システム100のサイクルの吸着段階に使用される。吸着段階では、周囲空気は、圧縮機115から送気され、メイン処理バルブ120を通り、第1のシーブチャンバ130および第2のシーブチャンバ135の両方または一方に導入される。
【0034】
第1のシーブチャンバ130および第2のシーブチャンバ135は、ゼオライト材料、または他の適当な材料を有し、空気は、酸素と、窒素を含む排気生成物とに分離される。ゼオライトは、高結晶性アルミン酸シリケート骨格で構成され、[SiO4]4-および[AlO4]5-4面体ユニットを含む。原子(Si、Al)は、酸素ブリッジにより結合される。全体として負の表面電荷の導入により、例えば、Na+、K+、Ca2+のような対イオンが必要となる。ゼオライト結晶は、水を含み、この水は、加熱により除去されるため、認識可能な骨格構造の崩壊は生じない。このため、容易に調整可能な内部構造を有する、高結晶性の微細多孔質吸着体が得られ、いかなる量の成分も吸着させることができる。ゼオライトは、有意なモレキュラーシーブ特性を有する。ポアサイズ分布は、調整可能であり、ゼオライは、いわゆるモレキュラーシーブとして使用することができる。大きすぎてポア内に拡散することの難しい分子は、除かれるが、ポアサイズよりも小さな運動直径を有する分子は、ポア内に拡散し、吸着される。ある条件では、触媒反応を発生させることが可能である。ある例では、これは、直線鎖および分岐鎖炭化水素のふるいであり、ガソリンのオクタン数が増加する。
【0035】
本発明のシステムにおいて、5LPMの範囲の出力を有し、比較的軽量小型で、低騒音レベルの低電力消費PSA酸素濃縮器を供給するため、高吸着モレキュラーシーブを使用することが好ましい。SILIPORITE(登録商標)モレキュラーシーブは、顕著な選択的吸着特性を有する鉱物合成製品(ゼオライト)であり、本発明のシステムに使用した際に、空気を酸素と、窒素のような排気生成物とに分離することに適した材料の一例である。ATOFINAケミカルズ社は、パリフランスの関連会社のCECA S.A.社のSILIPORITE(登録商標)モレキュラーシーブの技術サービスを配給、提供している。SILIPORITE(登録商標)のモレキュラーシーブ材料のNitroxy51およびNitroxy51R、ならびにUOP LLC of Des Plaines ILのMDXモレキュラーシーブは、本発明の使用に適している。
【0036】
Nitroxy51、Nitroxy51RおよびMDXは、従来のモレキュラーシーブに比べて、優れた窒素吸着性能と、酸素を超える優れた窒素選択性を示すモレキュラーシーブである。例えば、Nitroxy5のような従来のモレキュラーシーブでは、窒素吸着性能は、8NI/kgであり、選択性因子は、N2/O2が3である。一方、例えば、Nitroxy51は、最小窒素吸着性能が18NI/kgであり、選択性因子は、N2/O2が少なくとも6である。簡単に言えば、窒素吸着性能が少なくとも18NI/kgであり、N2/O2選択性が少なくとも6(すなわち、6以上の選択性)のシーブ材料は、本発明への使用に適している。
【0037】
サイクルの吸着段階または供給段階の際、周囲空気Aは、実質的に酸素およびアルゴンと、窒素、水蒸気および他の不純物ガスを含む廃棄生成ガスとに分離されて、製品ガスとなる。チャンバ130および135のようなシーブチャンバのゼオライト材料は、シーブチャンバ内に適当な圧力が形成されている場合、材料表面のポア内に、廃棄生成物を収集する。酸素は、未吸着ガスとして、シーブチャンバ内に留まる。
【0038】
メイン処理バルブ120は、吸着段階に加えて、パージまたは脱着の各種段階を構成する。あるパージ段階構成では、排気装置125への第1のポート121が開となり、第1のシーブチャンバ130への第2のポート122が開となる。メイン処理バルブ120のこの構成では、第1のシーブチャンバ130のパージ処理が可能となる。一実施例では、圧力スイング吸着システム100は、排気装置125を有し、この装置は、シーブチャンバ130および135に含まれるガスを吸引して、排気ポート126を介してこのガスを排出することができる。排気装置125は、廃棄マフラまたはブローダウン装置であり、あるいはシーブチャンバからガスを吸引することが可能な他の装置である。
【0039】
酸素濃縮器の脱着段階では、シーブチャンバ130および135から、廃棄生成ガスが除去される。この方法では、シーブチャンバから、シーブのポアに収容された廃棄生成ガス分子が開放され、シーブチャンバかが再生され、次の周囲空気の注入から、新たな廃棄生成ガス分子を受容することが可能となる。従って、シーブチャンバ130および135の容量は、脱着段階に直接依存する。
【0040】
また第1のシーブチャンバ130および第2のシーブチャンバ135は、第1のチェックバルブ141および第2のチェックバルブ142の、2つのチェックバルブに接続される。チェックバルブ141および142は、製品タンク140に接続され、このタンクは、製品ガスを保管する。チェックバルブ141および142は、シーブチャンバ130、135から製品タンク140への、製品ガスの流れを調節する。ある実施例では、チェックバルブ141および142は、シーブチャンバ130、135からの製品ガスの圧力が、製品タンクの圧力を超えた場合、製品ガスが製品タンク140の方に流入するように構成される。また、チェックバルブ141および142は、製品ガスの逆流を防止するように構成されても良い。
【0041】
第1のシーブチャンバ130と第2のシーブチャンバ135の2つの出力は、パージ制御装置190により接続される。いくつかの実施例では、パージ制御装置190は、一定の直径に限定されたパッシブオリフィスである。また、パージ制御装置190は、ロジック制御装置150により制御可能な、アクティブバルブであっても良い。一実施例では、パージ制御装置190は、ソレノイドにより作動され、ロジック制御装置150は、これらのソレノイドを制御することができる。従って、アクティブパージ制御装置190により、第1のシーブチャンバ130と第2のシーブチャンバ135の間に、制御されたガス通路が得られる。
【0042】
図1に示した一実施例では、パージ制御装置190は、第1のシーブチャンバ130および第2のシーブチャンバ135の製品ガスの側にあり、一つのシーブチャンバから別のシーブチャンバに、パージ制御装置を介して流れるガスは、製品ガスである。パージ制御装置190は、圧力スイング吸着サイクルの各種段階で使用することができる。一実施例では、パージ制御装置190を用いて、吸着のシーブチャンバから脱着のシーブチャンバに、製品ガスが移動し、これにより脱着処理が容易になる。
【0043】
図1に示すように、製品タンク140は、圧力調節器143に接続される。圧力調節器143を用いて、製品ガスの出力への流れが制御される。いくつかの実施例では、図1に示すように、製品タンク140は、圧力センサ160に接続される。圧力センサ160は、圧力スイング吸着システム100の流速を評価する際に使用される情報を提供することができる。
【0044】
一実施例では、圧力センサ160は、ロジック制御装置150に、情報を通信および送信することができる。一実施例では、ロジック制御装置150は、圧力センサ160からの受信データに基づいて、計算を実施し、圧力スイング吸着システム100の流速が予測される。
【0045】
しばしば、システムから出力される酸素の流速に基づいて、PSA処理を最適化することが必要となる。最適化は、流れの関数として、バルブタイミングを連続的に調整することにより行われる。市販のシステムに、真のフロー変換器を設置するのは高額なため、本発明では、製品タンク140の圧力変換を介して、すなわち圧力センサ160による圧力信号出力により、間接的に、システムからの酸素出力の流速を予測することが想定される。図2には、通常のPSAサイクルの間、圧力センサ160により提供される圧力信号161を示す。
【0046】
特に、流れは、圧力信号の負の勾配の大きさに正比例する。従って、システムからの出力の実際の流速(フローLPM)は、いかなる時間でも、以下の式から圧力信号から計算することができる:
【0047】
【数1】

ここでKは、定数であり、ABS(Slope)は、圧力信号の勾配の絶対値である。
【0048】
流れの計算は、圧力センサ160からの信号を変換し、変換信号を調整し、調整された信号をサンプリングし、各1/2のサンプル信号について、一定の時間窓Tにわたって、勾配の大きさを計算することにより行われる。図3には、この「窓処理」の一例を示す。
【0049】
圧力センサ160は、通常、較正されていないため、平均化フィルタの出力は、不揮発メモリに保管された2つの較正値を用いて、スケール化され規格化され、機械同士で一致する値が形成される。最後に、スケール化/規格化の処理から得られた計算結果は、実際のO2の流れと対応する値となる。結果として、例えば、図4に示すように、負の勾配と酸素出力流速の間には、直線関係163が得られる。関係163および/または式(1)を使用することにより、製品タンク内の圧力に基づいて、特に、時間Tの間の、圧力信号の負の勾配に基づいて、システムからの酸素の流れが求められる。
【0050】
ロジック制御装置150は、この予測流速に従って、圧力スイング吸着システム内の他の装置を制御する。一実施例では、ロジック制御装置は、予測流速に従って、パージ制御装置190の動作を変化させる。追加の実施例では、ロジック制御装置は、予測流速に基づいて、圧力スイング吸着サイクルを修正する。
【0051】
一実施例では、圧力調節器143は、酸素センサ165に接続される。酸素センサ165は、さらに、流量計170に接続される。流量計170を用いて、ユーザに視認出力を提供することができ、または圧力スイング吸着システム100のモニタに、システムの出力速度を提供することができる。流量計170は、チェックバルブ171を介して、出力フィルタ175に接続される。出力フィルタ175は、圧力スイング吸着システム100により、高品質の製品ガスが患者に確実に提供されることを目的とする。出力フィルタ175は、HEPAバクテリアフィルタまたは他の適当なフィルタであっても良い。出力フィルタ175の出力ポートにより、装置は、製品ガス、または酸素を患者に供給することができる。いくつかの実施例では、出力フィルタ175は、DISSまたはホースバーブに固定接続され、ここから、酸素が患者に供給される。
【0052】
図5Aには、本発明の実施例による圧力スイング吸着システム100の一部の斜視図を示す。図5Aには、圧力スイング吸着システムの各種部材の組立体が示されている。図5Aに示す一実施例では、圧力スイング吸着システムの中央部は、第1のシーブチャンバ130および第2のシーブチャンバ135を有する。また、圧力スイング吸着システム100の中央部は、製品タンク140を有する。製品タンク140は、圧力スイング吸着システムで生成された製品ガス、すなわち酸素を保持することができる。一実施例では、製品タンク140は、モレキュラーシーブ材料を収容していない。第1のシーブチャンバ130、第2のシーブチャンバ135、および製品タンク140は、取付ロッド205に固定される。
【0053】
第1のシーブチャンバ130、第2のシーブチャンバ135、および製品タンク140の端部と連動するように、上部カバー組立体210およびエンドカバー組立体215が提供される。上部カバー組立体210およびエンドカバー組立体215は、圧力スイング吸着システム100の各機能および動作を容易にする各種部材を備える。上部カバー組立体210およびエンドカバー組立体215は、取付ロッド205に取り付けられる。一実施例では、取付ロッド205は、軽量で剛性のある部材であり、圧力スイング吸着システム100の部材の負荷を支えることができる。
【0054】
圧力スイング吸着システムの大部分の部材を、一つの取付ロッド205に取り付けることにより、追加の取付金具、ボルト、およびナットの必要性が排除され、システムの重量が抑制され、これによりシステムの効率が向上する。例えば、圧力スイング吸着システムの大部分の部材を固定するための、大部分の部材用の別個のボルト、ナットおよびワッシャの代わりに、一つの取付ロッド205のみが必要となる。
【0055】
また、図5Aに示すように、圧力スイング吸着システム100は、排気装置125を備える。排気装置125は、「ブローダウン」マフラのような排気システムの部材であり、圧力スイング吸着システムから、パージ非製品排気ガスを放出する。
【0056】
図5Bは、本発明の実施例による圧力スイング吸着システム100の一部の斜視図である。図5Bに示すように、第1のシーブチャンバ130および第2のシーブチャンバ135は、円筒状構造となっている。シーブチャンバ130および135は、天然のまたは合成されたゼオライトのような、モレキュラーシーブ材料を保管する。ある実施例では、第1のシーブチャンバ130および第2のシーブチャンバ135は、SILPORITE(登録商標)、Nitroxy51ビーズのような、合成ゼオライトを有するように構成される。また、製品タンク140は、円筒状のキャニスタである。一実施例では、製品タンク140は、単なる中空状の円筒であり、圧力スイング吸着システム100によって生成された製品ガスを保管する。
【0057】
図6Aには、本発明の実施例による圧力スイング吸着システム100の上部カバー組立体210の上面斜視図を示す。上部カバー組立体210は、上部カバー305を有する。一実施例では、上部カバー305は、図6Aに示すように、トラス(truss)構造によって定められた構造である。上部カバー305の複雑なトラス構造により、構造の機能が高まり、負荷力に耐え得るようになり、上部カバー305に加わる力の均等な分配が可能になる。従って、上部カバー305のトラス構造により、例えばプラスチックまたは他の高分子のような軽量材料で、上部カバーを構成することが可能になる。この方法では、カバー305は、さらに、圧力スイング吸着システムの軽量性に寄与する。
【0058】
図6Aに示すように、上部カバー305は、バルブ取付表面310を有する。また上部カバー305は、第1のシーブチャンバプレナム306と、第2のシーブチャンバプレナム307とを有する。第1のシーブチャンバプレナム306内には、バルブ取付表面310と整列する位置に、第1のシーブチャンバポート410(図7B)が設置され、このポートにより、第1のシーブチャンバ130に、ガス流が提供される。第2のシーブチャンバプレナム307内には、バルブ取付表面310と整列する位置に、第2のチャンバポート415(図7B)が設置され、このポートにより、第2のシーブチャンバ135に、ガス流が提供される。また上部カバー305は、排気出口320を有する。この排気出口は、排気装置125と連動する。また、上部カバー305には、供給入口ポート315が提供され、ここには、圧縮機115からの加圧ガスが流通する。
【0059】
一実施例では、バルブ取付表面310は、上部カバー305の本体内に配置される。バルブ取付表面310は、各種ポートを有し、これらのポートは、前述の上部カバー305のポートに対応する。バルブ取付表面310は、第1のシーブチャンバ130と連通するバルブ取付表面第1シーブチャンバポート311と、第2のシーブチャンバ135と連通するバルブ取付表面第2シーブチャンバポート312とを有する。またバルブ取付表面310は、排気出口320と連通されたバルブ取付表面排気ポート313と、入口ポート315に連通されたバルブ取付表面入口ポート314とを有する。
【0060】
図6Aに示すように、上部カバー組立体210は、製品タンク140に、製品タンクポート340を提供する。製品タンクポート340は、接続金具330により、圧力調節器335に製品タンクを接続する。一実施例では、圧力調節器335により、圧力スイング吸着システムは、製品タンク140からの出力を制御し、所定の圧力および流速で、製品ガスを供給することができる。
【0061】
さらに、圧力スイング吸着システム100は、バルブ取付表面310により担持されるバルブ120を有し、これにより、ガス流は、圧力スイング吸着サイクルを通じて、連通される。バルブ120は、パッシブ装置であり、あるいはアクティブ装置である。一実施例では、バルブ120は、ロジック制御装置150で制御することができる。ロジック制御装置は、バルブ120に信号を送信し、および/または指令を送り、バルブのポートの開閉が制御され、および他の操作が制御される。
【0062】
図6Bには、本発明の実施例による圧力スイング吸着システム100の上部カバー組立体210の底面斜視図を示す。この図には、上部カバー組立体210を、第1のシーブチャンバ130、第2のシーブチャンバ135、および製品タンク140に接続する部材が示されている。上部カバー組立体210は、シーラントリング351、352、353を有し、これらのリングにより、上部カバーは、第1のシーブチャンバ130、第2のシーブチャンバ135、および製品タンク140とシール接続を形成する。また、上部カバー組立体により、スプリング361および362が担持され、モレキュラーシーブゼオライト材料は、各モレキュラーシーブチャンバ内に適正に維持される。上部カバー組立体210は、スプリング指示ウェハ371および372を有し、これは、スプリング361および362によって、シーブチャンバ130、135に加わる負荷に耐える。また、一実施例では、上部カバー組立体210は、パッシブフィルタ処理装置381、382のような装置を有し、圧力スイング吸着システム100を介して流通するガス中に含まれる、いかなる大きな不純物もフィルタ処理される。
【0063】
図7Aには、上部カバー305の上面斜視図を示す。これは、本発明の一実施例による圧力スイング吸着システム100における、図6Aおよび6Bの上部カバー組立体に使用される。図に示すように、上部カバー305は、バルブ取付表面310、供給入口ポート315、排気出口320、および製品タンクポート340を含むように構成される。図7Aに示すように、これらの部材は、上部カバー305に埋設されても良い。また、上部カバー305は、取付溝405を有し、取付ロッド205がこの溝を貫通することにより、上部カバーが、圧力スイング吸着システムの他の部材に取り付けられる。
【0064】
図7Bには、本発明の実施例による圧力スイング吸着システム100の上部カバー305の底面斜視図を示す。図7Bには、上部カバー305内に溝が示されており、この溝を介して、ガスが流通する。上部カバー305において、第1のシーブチャンバポート410は、バルブ取付表面第1シーブチャンバポート311と連通し、これによりガス流は、第1のシーブチャンバ130に流入されるようになる。上部カバー305において、第2シーブチャンバポート415は、バルブ取付表面第2シーブチャンバポート312と連通し、これによりガス流は、第2のシーブチャンバ135に流入されるようになる。また、製品タンクポート340により、製品ガスは、上部カバー305を介して、製品タンク140から圧力調節器335の方に流れるようになる。
【0065】
図8Aには、本発明の実施例による圧力スイング吸着システム100のバルブ120の底面斜視図を示す。図8Aの底面斜視図には、バルブ120の各種ポートが示されている。バルブ120は、バルブ取付表面310のポートと整合するポートを有する。バルブ120は、第1のシーブチャンバ130と連通するバルブ第1シーブチャンバポート505と、第2のシーブチャンバ135と連通するバルブ第2シーブチャンバポート510と、を有する。またバルブ120は、排気出口320と連通するバルブ排気ポート515と、供給入口ポート315と連通するバルブ入口ポート520とを有する.これらのポートは、バルブ取付表面310上のポートと整列するように配置される。
【0066】
図8Bには、本発明の実施例による圧力スイング吸着システム100のバルブ120の上面斜視図を示す。バルブは、制御接続525および530を提供する。制御接続525および530により、信号が受信され、バルブ120の動作が誘導される。ある実施例では、ロジック制御ユニット150は、バルブ120に制御信号を提供する。例えば、信号は、制御接続525および530で受信され、バルブ入口ポート520と、バルブ第1シーブチャンバ505とが開き、他のポートが閉に維持され、これにより圧縮空気が第1のシーブチャンバ130に流入されても良い。当然のことながら、本発明では、シーブ床のサイクルを制御する際に必要な、バルブ操作の多くの他の組み合わせも想定される。
【0067】
図9には、本発明の実施例による圧力スイング吸着システム100のエンドカバー組立体215の底面斜視図を示す。エンドカバー組立体215は、エンドカバー605を有し、一実施例では、これは、図9に一例を示すような、複雑なトラス構造により定められる構造である。各トラス支持部材605a、605bおよび605cは、エンドカバー605の剛性、耐性および強度を高めるためのものである。図9に示すように、例えば605aのようなトラス部材は、三角形状支持素子を形成し、エンドカバー605の底部は、三角形のベースとして機能し、エンドカバーの中央部は、三角形の垂直部材として機能する。エンドカバー605のトラス部材の三角形構造は、構造の機能を高め、エンドカバーに加わる負荷力に耐え、力の均一な分散が可能となる。
【0068】
上部カバー組立体210と同様に、エンドカバー組立体215は、シーラントリング610、615、および620を有し、第1のシーブチャンバ130、第2のシーブチャンバ135、および製品タンク140との間に、シール接続が形成される。エンドカバー組立体215は、支持ウェハ631および632を有し、シーブチャンバ130、135によって付加される負荷に耐える。また、エンドカバー組立体215は、パッシブフィルタ処理装置641、642を提供し、圧力スイング吸着システム100を流通するガスに含まれる、いかなる大きな不純物もフィルタ処理される。
【0069】
図10には、本発明の実施例による圧力スイング吸着システム100内の流体連通用のエンドカバー605の上面斜視図を示す。エンドカバー605は、脱着サイクルの間、各シーブチャンバ130および135の間の流れを制御し、各シーブチャンバ130および135から製品タンク140への製品ガスの供給を制御する。図10に示すエンドカバー組立体215の斜視図には、エンドカバー605内に形成された溝が示されている。エンドカバー605内の溝により、圧力スイング吸着システム100のチャンバを接続する際に使用される、配管または他の装置の必要性がなくなる。その結果、これらの部材が不要となることにより、全体的な圧力スイング吸着システムの重量が抑制される。
【0070】
一実施例では、エンドカバー605は、第1のシーブチャンバ130の底部をシールする第1のシーブチャンバ底部プレナム705と、第2のシーブチャンバ135の底部をシールする第2のシーブチャンバ底部プレナム710とを有する。また、エンドカバー605は、製品タンク140の底部をシールする製品タンク底部プレナム715を有する。エンドカバー605の溝により、シーブチャンバ130および135からのガスは、シーブチャンバ130および135の間の製品タンク140に流れるようになる。図10に示すように、製品ガス出口ポート706は、第1のシーブチャンバ130から製品タンク140への溝を提供する。図10では視認できないが、同様のポートにより、第2のシーブチャンバ135から製品タンクへの溝が提供される。
【0071】
各シーブチャンバから製品タンク140への製品ガスの供給は、供給システム720により制御され、このシステムは、両シーブチャンバからの製品ガス出口ポートを有する。これらの製品ガス出口ポートにより、製品タンク底部プレナム718が排除され、各シーブチャンバから製品タンクへの、濃縮酸素の供給が可能となる。また供給システム720は、ジュアルチェックバルブ725を有する。このジュアルチェックバルブ725は、製品タンク底部プレナム715における製品ガス出口ポートと重なっている。ジュアルチェックバルブ725は、第1のシーブチャンバ130から供給される製品ガス用のチェックバルブ141と、第2のシーブチャンバ135から供給される製品ガス用のチェックバルブ142とを提供する。ジュアルチェックバルブ725は、ガス出口ポートの圧力を維持し、これにより、各シーブチャンバから製品タンクポートへの製品ガスの逆流が抑制される。
【0072】
圧力スイング吸着システム100の多くの実施例の部材は、本発明の範囲から逸脱しないで、多くの方法で、変更され、修正されても良いことは、当業者には明らかである。非限定的な例では、圧力スイング吸着システム100は、3以上のシーブチャンバを提供しても良く、多目的バルブの代わりに、複数の2方向バルブを提供しても良い。
【0073】
表2には、圧力スイング吸着システム100の2つの実施例における仕様の一覧を示す。
【0074】
【表2】

上記表の仕様には、圧力スイング吸着システム100の全体の重量、効率、低騒音作動が示されている。例えば、これに限られるものではないが、圧力スイング吸着システム100の国内実施例では、5LPMで、90%以上の純度の酸素を生成することができ、消費電力は、360W(ワット)に過ぎず、生じる騒音は、45dBA未満である。追加の非限定的な例では、圧力スイング吸着システム100の海外実施例では、5LPMで、90%以上の純度の酸素が形成され、消費電力は、280−295W(ワット)に過ぎず、生じる騒音は、43dBA未満である。
【0075】
図10に示すように、パージ制御装置190は、第1のシーブチャンバ底部プレナム705の境界表面と、第2のシーブチャンバ底部プレナム710の間に配置される。前述のように、パージ制御装置190は、ロジック制御装置150で制御可能なアクティブなバルブであって、パッシブなオリフィスであっても良い。これらの実施例では、パージ制御装置190は、パッシブオリフィス素子であり、通常オリフィスは、固定機械加工のオリフィスである。この固定オリフィスを使用して、圧力スイング吸着サイクルの吸着ステップの間の、第1のシーブチャンバ130から第2のシーブチャンバ135への、製品ガスのパージ流を制御することができる。これらの実施例では、一つのシーブチャンバからのガス減圧を利用して、シーブ材料内に収容された残りの窒素、および他の非製品ガスが脱着され、圧力スイング吸着サイクルの真空段階が容易となる。この方法では、一つのシーブチャンバの吸着段階を利用して、より効率的に、別のシーブチャンバのモレキュラーシーブ材料のパージが行われる。
【0076】
特に、いくつかの実施例では、圧力スイング吸着システム100は、アクティブパージ制御装置190を有する。いくつかのそのような実施例では、アクティブパージ制御装置190は、2方向式ソレノイドバルブであり、酸素耐性があり、10から30psiの間の作動圧力範囲を有する。アクティブパージ制御装置190の特徴が、特定のシステム用に、または所望の結果のため、本発明の範囲から逸脱しないで変更され得ることは、当業者には明らかである。アクティブパージ制御装置190は、ロジック制御装置150で制御されるように構成されても良い。前述のように、ロジック制御装置は、プリント回路基盤上に、マイクロプロセッサ、または他の適当なロジック回路機構を有しても良い。アクティブパージ制御装置190は、圧力スイング吸着サイクルの各種段階に対応する所定のパラメータに従って、シーブチャンバ間のパージガスの流れを変化させることができる。従って、アクティブパージ制御装置190により、1つのシーブチャンバから他方に、所定のガスの制御された搬送操作が可能となる。
【0077】
図11には、本発明の実施例による圧力スイング吸着システム100内に、流体流を連通させるアクティブパージ制御装置190を有するエンドカバー605の斜視図を示す。図11に示す一実施例では、アクティブパージ制御装置190は、エンドカバー605に接続された、2方向式バルブである。エンドカバー605は、第1のパージポート805および第2のパージポート810を有する。パージポート805および810は、シーブチャンバ底部プレナムに形成された溝に接続される。図11に示すように、第1のシーブチャンバ溝815は、第1のシーブチャンバ底部プレナム705内に配置される。第1のシーブチャンバ溝815により、第1のシーブチャンバ130から第1のパージポート805への、ガスの流れが可能となる。同様に、第2のシーブチャンバ溝820は、第2のシーブチャンバ底部プレナム710内に配置され、第2のパージポート810に接続される。これにより、一実施例では、ガスは、パージ制御装置190を介して、第1のシーブチャンバ130と第2のシーブチャンバ135の間に流れるようになる。図11の一実施例に示すように、パージ制御装置190は、シーブチャンバ130および135の底部に配置され、シーブチャンバ130および135の間に流れるガスは、製品ガスとなる。
【0078】
図11に示す一実施例では、アクティブパージ制御装置190は、ロジック制御装置150に接続される。非限定的な例では、アクティブパージ制御装置190は、ソレノイドを有し、このソレノイドは、ロジック制御装置150により駆動される。この実施例では、ロジック制御装置150により、第1のシーブチャンバ130から第2のシーブチャンバ135へのガスの流れを制御することができる。一実施例では、ロジック制御装置150は、所定の圧力スイング吸着サイクルに従って、パージ制御装置190の動作を制御する。また、ロジック制御装置により計算される圧力スイング吸着システムの流速の変化に従って、ロジック制御装置により、パージ制御装置の動作が変更される。
【0079】
アクティブパージ制御装置190の制御された管理により、従来のシステムにおける多くの問題が克服され、圧力スイング吸着システム100の作動特性および出力に対する、多くの強く求められる効果が得られる。一実施例では、アクティブパージ制御装置190は、上昇酸素モードで作動され、このモードでは、圧力スイング吸着システムにより生成される酸素の純度が上昇する。別の実施例では、アクティブパージ制御装置は、電力保護モードで作動され、このモードでは、圧力スイング吸着システムによる電力消費が低減される。さらに別の実施例では、アクティブパージ制御装置は、騒音抑制モードで作動される。アクティブパージ制御装置を作動するこれらのモード、およびこれらの各種モード間を切り替える技術について、以下説明する。
【0080】
A 上昇酸素モード
パージ制御装置190の制御された動作により、圧力スイング吸着システム100により生成される製品ガスの酸素濃度の増大が可能となる。既存の装置では、圧力スイング吸着サイクルの供給ステップの間、固定の機械加工オリフィスのみが使用され、一つのシーブチャンバから別のシーブチャンバへの酸素のパージ流が制御される。
【0081】
従来、酸素濃縮器は、圧縮機のストロークおよび/またはボア(bore)を大きくすることにより、圧力スイング吸着システムの酸素濃度を増加させるよう計画されてきた。システムにおいて、圧縮機のストロークおよび/またはボアの増大は、システム内の圧力の上昇につながるが、これが、製品ガスの酸素濃度の増大につながるかどうかは不明である。この方法は、あまりに非効率的である上、多くの電力を必要とし、圧力スイング吸着システムの作動パラメータを悪化させ、これによりシステムの寿命が短くなる。圧縮機に対する圧力上昇の要求により、システムにより生じる騒音、システムから発生する熱量、およびシステムにより消費される電力量が増加する。これらの全ての因子は、システム全体の使用寿命を短くする。しかしながら、アクティブパージ制御装置190の使用により、シーブチャンバ内の圧力と製品ガス中の酸素濃度が高まるため、圧縮機のストロークおよび/またはボアを増加させる必要がなくなる。
【0082】
アクティブパージ制御装置190は、パージされるシーブチャンバからの非製品ガスの脱着を助長することにより、および全体の圧力レベルを高め、供給されるシーブチャンバの吸着を助長することにより、従来の装置に比べて、低流速での出力酸素濃度の上昇に寄与する。圧力スイング吸着システム100の低流速での作動の非限定的な例では、第1のシーブチャンバ130が圧力スイング吸着サイクルの供給ステップに晒されると、少なくとも一つの主要な供給ステップの間、アクティブパージ制御装置190が開となり、パージステップの際に、第2のシーブチャンバ135に圧縮ガスが搬送される。開状態のアクティブパージ制御装置を通過する過剰な圧縮ガスの搬送により、第2のシーブチャンバ135からの、窒素のような非製品ガスの脱着が助長される。これにより、第2のシーブチャンバにおいて、次の第2のシーブチャンバ135の供給段階の間に導入された圧縮周囲空気から、非製品ガスがより効率的に分離される。
【0083】
別の非限定的な例では、パージステップの開始前に、遅延ステップが導入され、これにより、吸着段階でのピーク圧力の増大が可能となる。この例では、閉位置にあるパージ装置190により、被供給シーブチャンバは、速やかに加圧される。従って、より大きな圧力が迅速に得られ、吸着段階の間、長期間、これがシーブチャンバに維持される。一旦アクティブパージ遅延期間が終了すると、パージ装置190は、開にされ、濃縮製品ガスは、パージされたシーブチャンバ内に搬送され、シーブチャンバが再生される。
【0084】
従って、圧力スイング吸着サイクルのパージステップの開始時に遅延処理を導入することにより、および脱着段階において製品ガスをシーブチャンバに搬送することにより、アクティブパージ制御装置190で酸素濃度を高めることができることは、容易に理解できる。パージステップの開始時の遅延処理によって、従来の圧力スイング吸着サイクルからの変化が生じる。従来、圧力スイング吸着サイクルの供給ステップおよびパージステップは、組み合わされていた。本発明の一実施例では、アクティブパージ制御装置190により、圧縮周囲空気がシーブチャンバに導入される純粋な供給ステップが、パージのため、いかなる圧力損失も生じさせずに、行われるようになる。従って、いくつかの実施例では、アクティブパージ制御装置を用いて、圧力スイング吸着システムの所望の出力流速に従って、パージステップに、遅延処理が導入される。一実施例では、遅延の量は、圧力スイング吸着システムの出力流速の増加に比例して増大する。この純粋な供給ステップの後に、圧力スイング吸着サイクルの供給およびパージステップが行われる。
【0085】
アクティブパージ制御装置190のいくつかの実施例は、従来の固定オリフィスよりも大きなオリフィスを有するように構成される。一実施例では、アクティブパージ制御装置190は、通常の固定オリフィスパージ装置よりも30%から50%大きなオリフィスを有する。ある実施例では、アクティブパージ制御装置190の酸素の目標体積流速は、15psiで18LPM、20psiで21LPM、25psiで24LPMである。大きなオリフィスにより、圧力スイング吸着システム100のパージステップの抑制時間が相殺される。特に、大きなオリフィスを有するアクティブパージ制御装置190により、より大きな体積の圧縮濃縮製品ガスを、供給シーブチャンバから放出し、再生シーブチャンバに導入することが可能となる。
【0086】
図12には、圧力スイング吸着システム100の実施例の流速と、圧力スイング吸着サイクルある段階の時間の関係のグラフを示す。図12には、固定オリフィスパージ制御装置190を用いた圧力スイング吸着システム100の実施例と、アクティブパージ制御装置190を使用していない別の実施例の、両方のフェーズ時間が示されている。図12に示すように、「アクティブパージ遅延」のデータプロット線905は、圧力スイング吸着システムの流速またはLPMの増加とともに上昇する。図に示すように、0.5LPMでは、「アクティブパージ遅延」は、ゼロ秒であり、5LPMでは、「アクティブパージ遅延」は、3秒である。従って、パージ遅延は、流速の上昇とともに増加する。流速に従って「アクティブパージ遅延」を変化させることにより、製品ガス中の酸素濃度が上昇する。
【0087】
図13には、圧力スイング吸着システム100の実施例における製品ガスの酸素濃度のグラフを示す。グラフには、圧力スイング吸着システムにおいて、パージ制御装置190が固定オリフィスを有する場合の実施例と、パージ制御装置がアクティブな場合の実施例とにより生成された、製品ガスの酸素濃度が示されている。図に示すように、「固定オリフィス」の実施例では、低流速および高流速の両方において、酸素濃度が低下している。例えば、「固定オリフィス」の実施例の酸素濃度は、0.5LPMでは、ほぼ92.4%に低下し、同様に、5LPMでは、ほぼ94.4%まで低下している。「固定オリフィス」の実施例のデータプロット線1005のベル型特性は、「アクティブパージバルブ」の実施例では、修正されている。図13に示すように、「アクティブパージバルブ」の実施例のデータプロット線1010は、実質的に緩やかに低下する直線である。アクティブパージ制御装置190では、より効率的な圧力スイング吸着サイクルが可能となり、より高い酸素濃度が得られる。例えば、「アクティブパージバルブ」の実施例の酸素濃度は、0.5LPMで、約96.4%である。
【0088】
特に、上昇酸素モードでの圧力スイング吸着システムの一実施例の実施により、従来の酸素濃度の最大値以上で、酸素を生成することができることは、当業者には明らかである。従来の装置は、95.6%の最大酸素濃度を有する。図13のデータに示すように、上昇酸素モードにおける、圧力スイング吸着システムの一実施例では、この過去の最大酸素濃度を超える96%、またはそれ以上のレベルに達し得る。従来の圧力スイング吸着装置では、作動モードにおいて、95.6%を超えるレベルの酸素濃度を提供することは難しい。従って、圧力スイング吸着システム100は、従来の問題を克服し、圧力スイング吸着システムにおいて、有意な純度の酸素を生成する可能性が提供される。
【0089】
図13に示す「アクティブパージバルブ」の実施例のデータプロット線1010は、流速の上昇とともに、僅かに減少する酸素濃度を示している。図13の一実施例のグラフでは、酸素濃度は、5LPMの高流速で約95%である。アクティブパージ制御装置の実施により、圧力スイング吸着システムにより生成される酸素全体の純度が上昇する。
【0090】
図14Aには、圧力スイング吸着システム100の固定パージ装置の実施例における、圧力と時間の関係のグラフを示す。図14Bには、圧力スイング吸着システムのアクティブパージ装置の実施例における、圧力値と時間の関係のグラフを示す。グラフに示すように、図14Bのアクティブパージ装置を有する圧力スイング吸着システムの実施例において、圧力値の軌跡は、パッシブパージ制御装置を有する圧力スイング吸着システムの実施例に比べて、より均一(四角形状)となっている。図14Aには、パッシブパージ制御装置によるシーブチャンバの加圧が、約12psiから約20psiまでの比較的緩やかな勾配に沿って、どのように生じるかが示されている。対照的に、圧力スイング吸着サイクルにおいてパージ遅延が実施された、アクティブパージ制御装置によるシーブチャンバの加圧は、極めて迅速に生じ、約21psiで一定となる。従って、速やかに高い圧力が得られ、吸着の間の長期にわたってこれが維持される。アクティブパージ制御装置を使用した実施例の場合、より均一な圧力軌跡の結果、高い酸素濃度が得られる。非限定的な例では、パッシブ制御装置の実施例の場合の5LPMでの94.42%に比べて、アクティブパージ制御装置の実施例の酸素純度は、5LPMで、95.03%である。
【0091】
アクティブパージ制御装置によって得られる別の利点は、低流速での作動において、サイクル時間が延長できることである。低流速でサイクル時間を延ばすことは、圧力スイング吸着システムのユーザにとって、極めて望ましい。サイクル時間が長くなると、見かけ上、機械の騒音が運転的に平滑化されるためである。機械運転が平滑となるのは、排気または脱着段階の低周波数化による。圧力スイング吸着システムが高速サイクル時間で作動されると、排気装置は、より頻繁に作動状態となり、時折「ブローダウン」マフラと称される排気装置の騒音は、急速に作動する機器の部品と負の相互作用を及ぼしあう。排気パルスの高周波数化は、装置の作動の認知に悪影響を及ぼす。また、排気パルスの高周波数化により、大きな応力および剪断力が生じ、システムの部材に破裂が生じ、これにより、システムの作動寿命が短くなる。
【0092】
図12の戻ると、このグラフには、パッシブ装置およびアクティブパージ装置を有する圧力スイング吸着システムにおいて、圧力スイング吸着サイクルの複数の段階におけるデータプロット線が示されている。図に示すように、「アクティブパージサイクル」のデータプロット線910は、低流速で増加し、「固定オリフィスサイクル」のデータプロット線915は、低流速で減少する。非限定的な例では、図9のグラフデータに示すように、「アクティブパージサイクル」時間は、0.5LPMで約18秒であり、「固定オリフィスサイクル」の場合、0.5LPMで約5.5秒である。従って、アクティブパージ装置190により、より長いサイクル時間が得られ、作動の平滑認知が可能となり、装置の寿命が延伸する。
【0093】
B 電力保護モード
上昇酸素濃度モードに加えて、パージ制御装置190の制御された動作により、圧力スイング吸着システム100による電力消費が抑制される。電力保護モードで作動する圧力スイング吸着システムの実施例では、アクティブパージ制御装置の流速アルゴリズムを使用することにより、システムの電力消費が最小限に抑制される。圧力スイング吸着システムの電力保護モード用の流速アルゴリズムは、実施されるアルゴリズムから、アクティブパージ制御装置のタイミングを変化させ、これにより最大酸素濃度が得られる。
【0094】
図15には、電力保護モードで作動される圧力スイング吸着システム100の実施例の圧力スイング吸着サイクルの異なる段階における時間値のグラフを示す。図12に示す時間値は、電力消費モードにおける圧力スイング吸着システム100の一実施例の流速アルゴリズムに対応する。図15に示す圧力スイング吸着システムの一実施例では、流速アルゴリズムは、4.5LPMでの最大値である5秒まで、直線的に供給時間を増加させる。シーブチャンバのバランス時間または均等化時間は、4.5LPMでの0.8秒の最小値まで、直線的に減少する。アクティブパージ制御のパージ遅延は、2.5LPM以下の流速において、ゼロに維持され、2.5LPMと4.5LPMの間の流速では、直線的に増加する。図12に示したデータに対応する流速アルゴリズムの実施例では、圧力スイング吸着システムによって、低消費電力が得られる。
【0095】
図16には、電力保護モードで作動される圧力スイング吸着システム100の実施例における電力消費のグラフを示す。図に示すように、アクティブパージ制御装置190用の電力保護流速アルゴリズムの実施により、装置による電力消費に、顕著な低下が得られる。非限定的な例では、1LPMでの、電力保護モードにおける圧力スイング吸着システムの一実施例での電力消費は、1LPMでの上昇酸素モードにおける圧力スイング吸着システムの実施例に比べて、約30W低い。アクティブパージ制御装置の知的管理による電力消費の抑制により、圧力スイング吸着システムの電力消費の抑制に加えて、多くの有意な利点が提供される。また電力の抑制は、圧力スイング吸着サイクル中の、圧力スイング吸着システム内で維持される圧力の低下につながる。圧力の抑制により、作動の際にシステムに加わる応力が低下する。また、理想ガスの法則に従うと、圧力減少は、作動温度の低下につながる。この温度低下により、作動によりシステムに加わる応力がさらに軽減される。特に、電力、圧力および温度の抑制の結果、圧力スイング吸着システムの長期作動が可能となる。
【0096】
図17には、圧力スイング吸着システム100の実施例の各種モードにおける、製品ガスの酸素濃度および電力消費のグラフを示す。本発明の一実施例では、アクティブパージ制御装置190の動作を変更することにより、同じ圧力スイング吸着システムが、上昇酸素モードまたは電力保護モードのいずれかのモードで作動される。特に、アクティブパージ制御装置を用いて、圧力スイング吸着サイクルを変化させることにより、同じシステムを、上昇酸素モードまたは電力保護モードのいずれかで作動させることができる。
【0097】
一実施例では、圧力スイング吸着システムは、ロジック制御装置150により、上昇酸素モードから電力保護モードに切り替えられる。一実施例では、ロジック制御装置に指令が送信され、上昇酸素モード動作または電力保護モード動作に対応して、アクティブパージ制御装置の動作が変更される。一実施例では、ユーザは、圧力スイング吸着システムのユーザインターフェースにアクセスし、ロジック制御装置に指示を与え、所望のモードで動作が行われる。別の実施例では、ロジック制御装置に送信された指示は、圧力スイング吸着システムのスイッチを切り替えることにより、行われる。圧力スイング吸着システムを、あるモードから別のモードに切り替える方法は、本発明の範囲から逸脱しないで、変更し得ることは、当業者には明らかである。
【0098】
図17のデータプロット線に示すように、上昇酸素モードにおける圧力スイング吸着システム100の動作では、出力は、0.5LPMから5LPMまでの流速の全範囲において、通常の酸素濃度出力に比べて大きくなる。上昇酸素モードでは、酸素濃度は、改善されるが、データプロット線1410に示すように、圧力スイング吸着システム100の電力消費は、従来の装置と同程度になる。酸素濃度が特に重要な場合、圧力スイング吸着システム100は、上昇酸素モードで作動される。一方、電力消費が特に重要な場合、同じ圧力スイング吸着システムは、電力保護モードでの作動に切り替えられる。図17において、データプロット線1420に示すように、圧力スイング吸着システムによる電力消費は、電力保護モードでの作動の際に、最小値となる。しかしながら、図17のデータプロット線1415のベル型曲線に示すように、電力保護モードの間に生成される酸素濃度は、従来のシステムと同程度となる。このように、圧力スイング吸着システムは、患者の要求に従って作動される。
【0099】
C 騒音抑制モード
上昇酸素濃度モードおよび電力保護モードに加えて、本発明では、圧力スイング吸着システム100が騒音抑制モードで動作されるように、パージ制御装置190の動作を制御することが想定される。騒音抑制モードで動作される圧力スイング吸着システムの実施例では、アクティブパージ制御装置用の流速アルゴリズムを実施することにより、システムの騒音が最小化される。圧力スイング吸着システムの騒音抑制モードにおける流速アルゴリズムは、実施されるアルゴリズムから、アクティブパージ制御装置のタイミングを変化させ、最大酸素濃度または最小電力消費のいずれかが得られる。
【0100】
酸素濃縮器システムの騒音レベルは、一定のおよび周期的な特性の両方の音を有する。一定の音の例は、圧縮機115および冷却ファン(図示されていない)からの騒音である。これらの部材は、システムの作動の間、実質的に一定の騒音を発生する。周期的な音は、一定の騒音の上部で、またはこれに加えて生じる。これらは、バルブ120および190の切り替え状態の騒音、および排気マフラ125から放出される廃棄ガスの騒音を含む。バルブ120および190の切り替え状態に関連した音、ならびに排気マフラ125から排出される音が、騒音抑制モードによって最小化される対象となる。
【0101】
これは、まず、パージバルブ装置190にオフからオンのサイクルが必要な場合、および一つのみの状態(オンまたは開)にある場所を検査することにより行われ、これにより、オフからオンの状態、および逆の状態の変化により、いかなる騒音も生じなくなる。一方、上昇酸素モードでは、パージバルブ装置は、動的に状態が変化し、従って、全ての酸素出力流速で、騒音が生じる。一方、騒音抑制モードでは、パージバルブ装置190は、3LPMを超える流速でのみ繰り返される。3LPM未満では、PSAサイクルの間、バルブは開に保持され、恒久的な比較的大きなオリフィスが形成され、これらの流速の場合、すなわち、流速<3LPMの場合、酸素パージガスは、このオリフィスを有効に通る。上昇酸素モードでは、パージバルブは、前述のように作動し、これにより、バルブは、短い期間、閉に維持され、シーブ床に、圧力が迅速に構成され、これが開くと、パージ段間が開始される。
【0102】
同時に、バルブ120が作動し、これにより、全ての酸素出力流速で、実質的に同じオン/オフタイミングが得られる。これは、流速の減少とともに、徐々に速くなる速度でバルブ120が循環される電力保護モードとは対照的である。上昇酸素モードは、騒音抑制モードよりもバルブ120の周期周波数を延ばす可能性があるが、上昇酸素モードは、高圧を形成し、これがマフラ125からの高い排気「ブローダウン」騒音につながる。
【0103】
図18には、本発明の原理による圧力スイング吸着システム100を用いて、騒音抑制モードを得るために使用される、特定のバルブタイミングの一例を示す。排気マフラ125を通る排気ガスによる騒音レベルは、バルブ120がパージ床圧力を切り替え、パージ床圧力が排気マフラ125を介して排出される直前の、マフラの上流のシステム圧力に直接関係する。サイクルのこの点でのシステム圧力は、「バランス圧力」と呼ばれる。シーブ床に同じ圧力点がもたらされるのに丁度十分な時間で、バルブ120により、シーブ床と圧縮機の間の連通が可能となるからである。バランス圧力は、上昇酸素モードでは高く、騒音抑制モードでは低い。その結果、ピークマフラ圧力、およびマフラによるピーク騒音レベルは、騒音抑制モードでは、低くなる。
【0104】
図19には、騒音抑制モードにおける、通常の製品タンク圧力600a、システムバランス圧力601a、および排気マフラピーク圧力602aを示す。また図20には、上昇酸素モードにおける、通常の製品タンク圧力600b、システムバランス圧力601b、および排気マフラピーク圧力602bを示す。図19と20の比較から、これらの2つのモード間の差異は、1乃至3LPMの流速で、特に明確であることは、明らかである。この流速は、5LPMの最大流速の酸素濃縮システムにおいて使用される、最も普遍的な流速である。
【0105】
低ピークマフラ圧力の利点は、上昇酸素モードおよび騒音抑制モードの双方での作動において、システムの最大騒音レベルを測定することにより検証される。3LPMでは、騒音抑制モードで作動される通常のシステムのピーク騒音レベルは、45.7dBAであるのに対して、同じ試験条件下における同じシステムの上昇酸素モードでの作動では、ピーク騒音レベルは47.3であった。
【0106】
D モード間の切り替え
本発明では、圧力支持システムの作動モードの選定は、手動または自動で行われることが想定される。作動モードを手動選定する場合、入力/出力装置180は、ロジック制御装置150と通信可能に提供される。ユーザは、作動モードを手動で選択し、入力/出力装置180を用いて、例えば上昇酸素モード、電力保護モード、騒音抑制モードが選定される。本発明では、入力/出力装置180は、この機能を有するいかなる適当な装置、例えばスイッチ、ノブ、ボタン、キーパッド、タッチスクリーンディスプレイ、および音声活性化または音声認識装置等であっても良いことが想定される。これにより、ユーザに、幅広い自由度が提供され、ユーザの現在の要望に応じて、PSAシステムを作動する際の最良の方法が選定される。
【0107】
前述のように、本発明では、自動で、モード間を切り替えるシステムとすることも想定される。一実施例では、システムは、通常、デフォルトモードとして、電力保護モードで作動する。しかしながら、酸素出力純度が閾値を下回るある量に至っており、酸素センサ165がシステム特性が低下していることを検出した場合、システムは、現在の運転モード(電力保護モードまたは騒音抑制モード)から、上昇酸素モードに、自動で切り替えを行う。同様に、本発明では、システムの電力消費および/または周囲環境の音をモニターし、モニタリング結果に基づいて、電力保護モードおよび/または騒音抑制モードに切り替えることが想定される。また本発明では、システムの酸素濃度をモニターし、酸素濃度が閾値、例えば90%を超える値に留まる限り、徐々におよび自動で、電力保護モードまたは騒音抑制モードのいずれかの方に移行させることが想定される。
【0108】
E 拡張バランス
通常、圧力スイング吸着サイクルには、バランス段階が挿入される。このバランス段階では、圧力スイング吸着システムのシーブチャンバが均等化される。バランス段階は、一つのシーブチャンバの加圧状態に依存し、別のシーブチャンバを加圧する際に利用され、これにより圧縮機の側での要求が抑制される。シーブチャンバでのパージ段階が完了後、シーブチャンバの圧力は、激減する。後続の供給段階を効率的にするため、シーブチャンバは、再加圧される必要がある。2以上のシーブチャンバを備える圧力スイング吸着システムでは、パージおよび供給の段階は、同期化され、一つのシーブチャンバがパージ段階の場合、他方のものは、供給段階となる。従って、パージされるチャンバを用いて、供給されるチャンバの加圧が助長される。バランス段階は、供給段階とパージ段階の間に生じる。
【0109】
従来、米国特許第5,183,483号に記載されているように、バランス段階は、シーブチャンバポートと、入力ポートの両方を開放する段階を有し、圧縮空気は、圧縮機と加圧シーブチャンバの両方から、シーブチャンバ内に流入され、加圧される。一実施例では、使用バルブは、パイロット作動ソレノイド装置を有するSMCバルブであり、最小圧力で切り替えることができる。通常、一度シーブチャンバ間の圧力が均等化されると、シーブチャンバパイロットが閉止される。
【0110】
圧力スイング吸着システム100の一実施例では、従来の装置に使用される技術とは対照的に、圧力スイング吸着サイクルのバランス段階は、シーブチャンバが等しい圧力に達する時間を超えて延長される。ある実施例では、一旦第1のシーブチャンバ130および第2のシーブチャンバ135が等しい圧力に至ると、シーブチャンバに対する両ポート122および123が開のままとなり、圧縮機115から入力ポート142の供給が可能となり、これにより、両方のシーブチャンバ130、135の圧力が上昇する。
【0111】
圧力スイング吸着サイクルにおける延長バランス段階の実施により、多くの有意な利点が得られる。バランス時間の増加により、圧力スイング吸着サイクルのサイクル時間が長くなる。このサイクル時間の増加は、圧力スイング吸着システム100の動作の間の、パルスの発生頻度を下げる。特に、サイクル時間の延長により、排気装置125の作動頻度が低下し、これにより、長期にわたって、装置によって生じる騒音が抑制される。また、延長バランス段階により、システム内のバルブの切り替え圧力が上昇する。非限定的な例では、切り替え圧力の最小仕様閾値は、7psiであり、通常、従来の装置では、切り替え処理は、この閾値またはこれより僅かに高い値で生じる。圧力スイング吸着システム100の一実施例における延長バランス段階により、全体の圧力が上昇し、平均切り替え圧力は、10乃至13psiの範囲となることが好ましい。従って、延長バランスを使用することにより、圧縮機115からの圧縮ガス入力が、2つのシーブチャンバ130および135に分割される。圧縮ガス入力の分割の結果、圧力スイング吸着サイクルの吸着段階において、シーブチャンバに入力される圧縮ガスの全量が減る。この方法では、延長バランス段階により、低流速での酸素濃度レベルが上昇する。
【0112】
図21には、延長バランスモードにおいて、圧力スイング吸着システム100の動作が酸素濃度に及ぼす効果を表すグラフを示す。図15のグラフには、通常の圧力スイング吸着サイクルの下でのシステム動作により生成する酸素濃度と、本発明の実施例による圧力スイング吸着サイクルの延長バランスモード下での、システム動作における酸素濃度とが示されている。図21に示すように、圧力スイング吸着システムの圧力スイング吸着サイクルを、延長バランスモードでの動作に調節することにより、生成される製品ガスの酸素濃度が大きく上昇する。非限定的な例では、従来のモードでのシステムでは、0.5LPMで90.1%の酸素が生成するが、延長バランスモードにおけるシステムでは、0.5LPMで、92.6%の酸素が生成される。また、延長バランスモードにおけるシステムにより生成される酸素濃度は、0.5LPMから3LPMの流速範囲において、従来のモードで作動するシステムに比べて大きい。
【0113】
圧力スイング吸着システム100の圧力スイング吸着サイクルを、本発明の実施例による延長バランスモードで作動されるように調節することにより、従来技術の多くの問題が克服される。酸素濃度を高める従来のアプローチでは、一定のサイクル時間が必要となり、長い供給時間または吸着段階が必要となる。従来のアプローチでは、製品ガスの酸素濃度は、僅かに上昇する可能性があるが、そうでない場合もある。しかしながら、システムの作動におよぼす悪影響は、極めて顕著である。供給時間の長期化により、システム内の全体の圧力が上昇する。全体圧力の上昇は、圧縮機に対する負荷を増加させるとともに、システムの消費電力を増加させる。電力消費に加えて、システム内の圧力の上昇により、より大きな応力がシステムに負荷され、システムの作動寿命が短くなる。延長バランスモードにおける圧力スイング吸着システム100の作動は、実際に、酸素濃度を高め、サイクル時間を増加させる。従って、システムに加わる応力は、抑制され、システム100の作動寿命が延伸する。
【0114】
図22には、圧力スイング吸着システム100の実施例におけるバランス時間と切り替え圧力および酸素出力濃度の関係を表すグラフを示す。図22のデータに示すように、バランス時間の延長により、圧力スイング吸着システムの実施例の出力の酸素濃度と、システムの切り替え圧力の両方が上昇する。例えば、これに限られるものではないが、延長バランス時間が2秒では、14psiの切り替え圧力と、93.73%の酸素濃度が得られる。これは、8.8psiの切り替え圧力、および93.60%の酸素濃度が得られる、従来のバランス時間の0.8秒に比べて、改善されている。
【0115】
圧力スイング吸着システムの動作は、従来のものに比べて有意に優れている。本システムの部材組の構成、構造、特徴により、軽量でより効率的に作動するシステムが得られ、高い品質の出力が生成される。例えば、これに限られるものではないが、シーブチャンバの容量と圧縮機の構成の整合により、圧力スイング吸着システムの2つの重要部材の最適な組み合わせが得られる。従って、本システムにより、軽量装置において、優れた製品ガスの生成が可能となる。従来の装置に比べて、本発明の圧力スイング吸着システムは、静かであり、何度も繰り返されない。また、本発明の圧力スイング吸着システムは、ユーザに対して、一層の制御性と柔軟性を提供する。
【0116】
一実施例では、圧力スイング吸着システム100は、上昇酸素モードで作動され、これにより、本システムは、実際の最大値として、従来のいかなる装置をも超える純度レベルで、さらには当業者の予想を超える純度レベルで、酸素を生成する。当業者による従来の想定は、低い流速で非効率的に、装置で酸素を濃縮するための方法に基づくものであった。しかしながら、圧力スイング吸着システム100の一実施例では、従来の理論に対抗し、より長いサイクルで、パージ装置を正確に制御することにより、低流速で、最大酸素生成純度が得られる。また、圧力スイング吸着システム100の一実施例では、動作により、最小限の電力が消費される。従って、圧力スイング吸着システムは、従来の酸素純度レベルで作動され、従来の装置に比べて、有意に少ない電力を消費する。さらに別のモードでは、圧力スイング吸着システム100は、騒音抑制モードで作動され、システムが周囲環境に放出する騒音を最小限にすることができる。ユーザは、手動操作入力を介して、各モード間を、手動で切り替えることができ、あるいはシステムは、システムの動作特性に応じて、モードを自動で選定することもできる。
【0117】
本発明では、圧力スイング吸着システム100が、追加の特徴を有することも想定され、通常、この特徴は、酸素発生および供給システムに認められる。例えば、本発明は、ユーザにガス流を供給する際の、酸素節約装置(OCD)190に提供することも想定される。図1に示す実施例では、OCD190は、フィルタ175の上流に提供される。当然のことながら、本発明は、他の適当な配置とすることも想定される。OCD190は、電子式または空気式の酸素節約器であっても良い。
【0118】
システム100のような、酸素濃縮システム内のOCDの主な利点は、有効最大流速が連続最大率を超えるまで延びることである。例えば、シーブ床および圧縮器システムが、1LPMの連続最大流速用に寸法化されているシステムは、3:1のOCDと結合した際、3LPMシステムとして、有効に分類される。これは、OCDは、患者への酸素の流れを制御し、特定の期間にわたって、呼吸サイクルの吸息段階の間のみ、特定の体積の酸素を供給するからである。OCDの追加の重量、コスト、および電力消費は、より大きな連続フローシステムの構成に必要となる追加の重量コストおよび電力消費に比べると、僅かである。
【0119】
また、本発明では、圧力スイング吸着システム100を、大きな酸素発生、供給および/または貯蔵システムの一部に使用することが想定される。例えば、PSAシステムによるガス流出力は、例えばガス移充填(transfill)システムまたは液化システムのような、他のシステムのガスのソースに使用される。ガス移充填システムでは、通常5〜40psiの圧力の、ガスソースからのガスが、圧力ブースタまたは増圧システムに提供される。圧力増圧システムは、ガスの圧力を、2000−3000psiまで上昇させる。この高圧ガスが、患者に使用される携帯式容器に提供される。PSAシステム100の使用に適したガス移充填システムの一例は、米国特許第5,071,453号、5,858,062号、5,988,165号、6,342,090,号、6,446,630号、6,889,726号、および6,904,913号に示されている。これらの内容は、本願の参照として取り入れられている。
【0120】
ある実施例では、PSAシステムにより生成された酸素濃縮ガスは、低圧酸素濃縮ガス流として、ユーザおよび圧力増圧システムの双方に提供される。ユーザは、低圧力酸素濃縮ガス流からのシステムで呼吸をし、システムは、携帯用容器を充填し、またはこの低圧力ガス流の圧力を増加させる。そのようなシステムは、例えば、米国特許第5,858,062号に示されている。別の実施例では、低圧酸素濃縮ガス流内の全てのガスが、圧力増圧組立体に提供される。ユーザは、圧力調節器および任意の酸素節約器を介して、高圧ガス流で呼吸をし、高圧ガス流は、保管容器に提供される。そのようなシステムは、例えば、米国特許第6,904,913号に示されている。さらに別の実施例では、低圧力酸素濃縮ガスは、スイッチに提供され、このガス流は、ユーザまたは圧力増圧システムのいずれかに供給される。そのようなシステムは、例えば、米国特許第6,446,630号に示されている。
【0121】
液化システムでは、ガスソースからのガスは、酸素濃縮ガス流を液体酸素(LOX)に液化する、液化システムに提供される。LOXは、患者によって使用される携帯式容器に保管または提供される。PSAシステム100との使用に適した液化システムの例は、米国特許第5,892,275号、5,979,440号、6,212,904号、6,651,653号、6,681,764号および6,989,423号、ならびに米国特許出願第11/131,071号(公開番号US2006/0086099号)、および11/130,646(公開番号US2006/0086102号)に示されており、これらは、本願の参照として取り入れられている。ガス移充填システムとともに、ある実施例では、液化システムにより、ユーザは、液化器に提供された低圧力酸素濃縮ガスを吸引する。別の実施例では、ユーザは、LOX発生システム内のリザーバから、またはLOXシステムにより充填された携帯式容器から、液体酸素供給を吸引することができる。
【0122】
一例用の、現在想定される最も実際的で好適な実施例に基づいて、本発明について詳細に説明したが、そのような詳細は、単に説明のためのものであり、本発明は、示された実施例に限定されず、逆に、本発明は、特許請求の範囲に含まれる修正例および等価な配置を網羅することが理解される。例えば、本発明では、いかなる実施例の1または2以上の特徴を、いかなる他の実施例の1または2以上の特徴と組み合わせても良いことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を濃縮ガス成分に分離する方法であって、
吸着システムの作動により、前記濃縮ガス成分の最大量を生成するステップと、
前記吸着システムにより生じた前記濃縮ガスの出力量を供給するステップと、
前記濃縮ガスのパージ量を、脱着サイクル中の前記吸着システムのシーブチャンバに分配するステップであって、前記パージ量は、前記最大量と前記出力量の間の差以下の値であるステップと、
前記出力量に基づいて、前記パージ量を制御するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記パージ量は、前記出力量の低下とともに増加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記吸着システムは、圧力スイング吸着システムを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記濃縮ガス成分は、酸素であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
空気を濃縮ガス成分に分離する吸着システムであって、
供給空気から空気を受容し圧縮し、供給圧縮空気を提供する圧縮機と、
前記供給圧縮空気を、濃縮ガス成分に分離するモレキュラーシーブ材料と、
前記モレキュラーシーブ材料を受容する第1のモレキュラーシーブチャンバと、
前記モレキュラーシーブ材料を受容する第2のモレキュラーシーブチャンバと、
前記供給圧縮空気を受容し、該供給圧縮空気を前記第1および第2のモレキュラーシーブチャンバに流通させる供給チャンバと、
前記モレキュラーシーブ材料からの前記濃縮ガス成分を供給する出口と、
前記第1のモレキュラーシーブチャンバおよび前記第2のモレキュラーシーブチャンバの間に、前記濃縮ガス成分を流通させるパージ装置であって、処理量の調整が可能なパージ装置と、
を有する吸着システム。
【請求項6】
前記パージ装置の前記処理量は、ロジック制御ユニットにより調整されることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記ロジック制御ユニットは、アルゴリズムを実施し、
前記アルゴリズムにより、前記第1のモレキュラーシーブチャンバまたは前記第2のモレキュラーシーブチャンバのパージステップの開始時に、所望の流速出力に従って、遅延のための異なる値が提供されることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記パージ装置の処理量は、ゼロの値に調整することができることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
空気を濃縮ガス成分に分離する吸着システムを作動させる方法であって、
供給圧縮空気で、第1のモレキュラーシーブチャンバを加圧するステップと、
前記第1のモレキュラーシーブチャンバから、生成ガスを出力するステップと、
前記第1のモレキュラーシーブチャンバを、第2のモレキュラーシーブチャンバにパージするステップと、
前記加圧するステップに相関して、前記パージするステップの開始時を変化させるステップと、
を有する方法。
【請求項10】
前記パージするステップは、前記加圧するステップと同時に開始されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記パージするステップは、前記加圧するステップの開始後に、所定の遅れで開始されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の遅れは、前記吸着システムの出力流速に応じて変化する値であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
空気を濃縮ガス成分に分離する吸着システムを作動させる方法であって、
第1のモレキュラーシーブチャンバを、供給圧縮空気で加圧するステップと、
前記第1のモレキュラーシーブチャンバから生成ガスを出力するステップと、
前記第1のモレキュラーシーブチャンバの圧力レベルと、第2のモレキュラーシーブチャンバの圧力レベルとを、均等圧力にバランスさせるステップと、
前記第1のモレキュラーシーブチャンバおよび前記第2のモレキュラーシーブチャンバの前記圧力レベルを、同時に、前記均等圧力を超える圧力レベルに増加させるステップと、
を有する方法。
【請求項14】
前記濃縮ガス成分は、酸素であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記吸着システムは、圧力スイング吸着システムを有することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
空気を濃縮ガス成分に分離する吸着システムであって、
空気供給から空気を受容し圧縮し、供給圧縮空気を提供する圧縮機と、
前記供給圧縮空気を濃縮ガス成分に分離するモレキュラーシーブ材料と、
前記モレキュラーシーブ材料を受容する第1のモレキュラーシーブチャンバと、
前記モレキュラーシーブ材料を受容する第2のモレキュラーシーブチャンバと、
前記第1のモレキュラーシーブチャンバおよび前記第2のモレキュラーシーブチャンバの間に、前記濃縮ガス成分を流通させるパージ装置であって、処理量の調整が可能なパージ装置と、
前記パージ装置を制御する制御器であって、前記パージ装置を複数の作動モードで作動させるように適合された制御器と、
を有する吸着システム。
【請求項17】
前記複数の作動モードは、
上昇酸素モード、電力消費モード、および騒音抑制モードのうち、少なくとも2つのモードを含むことを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
さらに、前記複数の作動モードの一つをユーザが手動で選択することができるように適合された、入力装置を有し、
前記制御器は、前記入力装置を用いて前記選択されたモードに基づいて、前記パージ装置を制御することを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
さらに、モニタリング装置を有し、
前記パージ装置を制御する前記作動モードは、前記モニタリング装置の出力に基づいて、自動で変更されることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記モニタリング装置は、酸素センサであることを特徴とする請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記酸素センサは、前記第1および第2のモレキュラーシーブの下流に配置され、前記濃縮ガス成分中の酸素の濃度を検出し、
前記制御器は、閾値レベルを下回った前記酸素濃度に応じて、前記パージ装置を作動させる前記作動モードを、自動で、上昇酸素モードに変更することを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
空気を濃縮ガス成分に分離する吸着システムを作動させる方法であって、
供給圧縮空気で、第1のモレキュラーシーブチャンバを加圧するステップと、
第1のモレキュラーシーブチャンバから生成ガスを出力させるステップと、
前記第1のモレキュラーシーブチャンバを、第2のモレキュラーシーブチャンバにパージするステップと、
複数の作動モードで作動するように、前記パージするステップを制御するステップと、
を有する方法。
【請求項23】
前記複数の作動モードは、
上昇酸素モード、電力消費モード、および騒音抑制モードのうちの少なくとも2つを有することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
さらに、入力装置を用いて、前記複数の作動モードの一つを、手動で選択するステップを有することを特徴とする請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
さらに、
前記生成ガスのパラメータをモニタリングするステップと、
前記モニタリングするステップの結果に基づいて、前記パージするステップの作動モードを、自動で変更するステップと、
を有することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記パラメータは、酸素であることを特徴とする請求項25に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2010−502423(P2010−502423A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526803(P2009−526803)
【出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/076003
【国際公開番号】WO2008/027728
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(509032254)アールアイシー インヴェストメンツ,エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】