説明

酸素バリア性を有するピンホールの発生を低減した積層包装材料および積層包装袋

【課題】本発明は、酸素バリア性を有するピンホールの発生を低減した積層包装材料および積層包装袋を提供する。
【解決手段】少なくとも、2軸延伸ポリプロピレンフィルム層、酸素バリア層、多層熱融着層とがこの順序で積層された積層包装材料であって、前記2軸延伸ポリプロピレンフィルム層と酸素バリア層とは押し出しラミネーション法によって積層され、前記酸素バリア層と多層熱融着層とはドライラミネーション法によって積層されており、かつ、前記多層熱融着層は少なくとも低密度層と高密度層とを2層以上からなり、その低密度層が酸素バリア層側に配置されて、かつ、少なくともその低密度層に溶液重合法によりメタロセン触媒によって炭素数8個(C8)のエチレンとα−オレフィンから重合された直鎖状低密度ポリエチレンを用いることを特徴とする酸素バリア性を有するピンホールの発生を低減した積層包装材料および積層包装袋である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療、医薬品や、食品などの分野において、酸素により品質が容易に劣化するような、厚みと重みを有する易酸化性内容物を包装・梱包して輸送する目的に使用される酸素バリア性を有するピンホールの発生を低減した積層包装材料および積層包装袋に関する。特に、500ml〜1500mlと大容量の注射剤を柔軟なプラスチック容器に充填してなる、輸液バックの2次外装材料などとして好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
比較的大容量(500ml〜1500ml)の注射剤が充填される輸液バックは、近年、ハンドリング(取り扱い)性の良さや、輸液バックの軽量化、ゴミの減容化などの観点から、ガラス瓶、プラスチック成形容器から柔軟なプラスチック包装袋に充填されたものが増えている。
【0003】
輸液バックに充填されるアミノ酸液や糖・電解質液などの薬液は、酸素によって著しく変質しやすく、更には直接体内に薬液を注入する事からも、薬液が直接接触する輸液バックは無添加のポリオレフィン材料を用いる事が多く、酸素バリア性はほとんど無いに等しい。そのため、輸液バックを大気中に放置しておくと、大気中の酸素が輸液バックを透過し経時的に薬液を変質させてしまい、沈殿物の生成や、薬液の黄変、臭いの発生などの現象が起こり、実際に使用する事ができなくなる。そこで、近年は薬液の充填された輸液バックを酸素バリア性の高い透明包装材料で2次包装することが行われている。
【0004】
この輸液バック外装材には上記しているように酸素バリア性が高く要求されるため、Pポリ塩化ビニリデン(VDC)コートを施したプラスチックフィルムや、エチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、酸化アルミニウムや酸化珪素などを蒸着したポリエステルテレフタレート(PET)フィルムなどがバリア層に用いられた積層包装材料が使用されている。
【0005】
通常はアミノ酸などの高カロリー輸液が充填された輸液バックが上記した輸液外装袋に入れられ、更にダンボールに積載梱包され輸送される。しかし、輸送工程中の振動・衝撃により、輸液外装袋にピンホールが生じる問題があり(100万袋に1袋のppmオーダー)、そのため内容物の品質を保持する酸素バリア性が得られなくなる。
【0006】
一般的にピンホールは3つの要素が加味して発生する事が多く、(1)屈曲疲労による屈曲ピンホール、(2)包装材料同士が摩耗する、及び内容物容器と2次包装材が摩耗する、あるいは2次包装材とダンボールが摩耗する事による摩耗ピンホール、(3)包装材料の突起部が突き刺すことによる突き刺しピンホールに大別される。上記、輸送工程におけるピンホールはこれらの3つの要素が複合して発生すると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来、包装袋の輸送工程上での問題点を解決するためになされたものであり、医療、医薬品や、食品などの分野において、酸素により品質が容易に劣化するような、例えば、500ml〜1500mlと大容量の注射剤などのような厚みと重みを有する易酸化性内容物を包装・梱包して輸送する目的に使用される酸素バリア性を有するピンホールの発生を低減した積層包装材料および積層包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、すなわち、
請求項1に係るの発明は、 少なくとも、印刷基材層、酸素バリア層、熱融着(シーラント)層とがこの順序で積層された酸素バリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料であって、
前記熱融着層が、オレフィン系熱可塑性エラストマーを中間層としたフィルムからなることを特徴とする酸素バリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料である。
【0009】
請求項2に係るの発明は、
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、エチレン−プロピレン系ランダムコポリマーにエチレン−プロピレンゴムをアロイ化したオレフィン系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項1記載の酸素バリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料である。
【0010】
請求項3に係るの発明は、
前記熱融着層を構成するオレフィン系熱可塑性エラストマーを中間層としたフィルムが、3層共押し出しフィルムであることを特徴とする請求項1または2記載の酸素バリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料である。
【0011】
請求項4に係るの発明は、
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーを中間層とした隣接層が、メタロセン触媒によって重合された直鎖状低密度ポリエチレン(m−LLDPE)からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸素バリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料である。
【0012】
請求項5に係るの発明は、
前記メタロセン触媒によって重合された直鎖状低密度ポリエチレン(m−LLDPE)が、溶液重合法によりメタロセン触媒によって炭素数8個(C8)のエチレンとα−オレフィンから重合されてなることを特徴とする請求項4記載の酸素バリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料である。
【0013】
請求項6に係るの発明は、
前記印刷基材層と酸素バリア層および酸素バリア層と熱融着とが、押し出しラミネーション法によって積層されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸素バリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料である。
【0014】
請求項7に係るの発明は、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の酸素バリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料を用いてなることを特徴とする酸素バリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装袋である。
【0015】
<作用>
本発明の酸素バリア性を有するピンホールの発生を抑制した積層包装材料および積層包装袋は、シーラント層となる熱融着層
【発明の効果】
【0016】
本発明により、医療、医薬品や、食品などの分野において、酸素により品質が容易に劣化するような、厚みと重みを有する易酸化性内容物を包装・梱包して輸送する目的に使用される酸素バリア性を有するピンホールの発生を低減した積層包装材料および積層包装袋
を提供することができる。
【0017】
本発明のピンホールの発生を低減した積層包装材料および積層包装袋は、例えば、500ml〜1500mlと大容量の注射剤を柔軟なプラスチック容器に充填してなる輸液バックの2次外装材料などととして好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施例としての実施の形態について具体的に説明する。図1は、本発明のピンホールの発生を低減した積層包装材料の一例を示す断面図である。図に示すように、本発明のピンホールの発生を低減した積層包装材料の構成は、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム層(a)、接着樹脂層(b)、酸素バリア層(c)、接着剤層(d)、多層熱融着(シーラント)層(e)からなり、多層熱融着層(e)が低密度層(e1)と高密度層(e2)とから構成されて、低密度層(e1)が酸素バリア層(c)側に配置されている。
【0019】
本発明における2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム層(a)は、各社ポリプロピレンフィルムメーカーから上市されてい2軸延伸ポリプロピレンフィルムなら特に制限はなく、厚みは30μm以下が望ましい。厚みが、30μmを超えると積層包装材料の剛性が増大することで耐屈曲性が減少し、耐ピンホール性が低下する。
【0020】
本発明における接着樹脂層(b)は、押し出しラミネーションで使用可能なポリオレフィン樹脂であるなら各社から上市されているものを使用することができ、密度は0.920g/cm3以下であり、溶融フロー速度は加工適性を考慮して、4〜15g/10min.が望ましい。押し出し樹脂の厚みは30μm以下でありことが望ましい。厚みが、30μmを超えると積層包装材料の剛性が増大することで耐屈曲性が減少し、耐ピンホール性が低下する。
【0021】
本発明における酸素バリア層(c)は、酸化アルミニウムや、酸化珪素を蒸着したガスバリア性フィルムやエチレン−ビニルアルコール共重合(EVOH)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムなどが使用でき、厚みは15μm前後が望ましい。
【0022】
本発明における接着剤層(d)は、ドライラミネーションに用いられる2液硬化型ウレタン系接着剤ならどれも使用可能であり、乾燥時の塗布量は1.5〜3.5g/m2程度であれば接着強度の観点からも望ましい。
【0023】
本発明における多層熱融着層(e)は、少なくとも低密度層を有し、その低密度層が酸素バリア層側に配置されて、かつ、その低密度層に溶液重合法によりメタロセン触媒によって炭素数8個(C8)のエチレンとα−オレフィンから重合された直鎖状低密度ポリエチレン(m−LLDPE)を用いる。少なくとも低密度層と高密度層の2種以上からなる構成の場合は、低密度層と高密度層との密度差が、0.02g/cm3であり、酸素バリア層側に配置する低密度層の密度が0.920g/cm3未満で、低密度層の厚さが多層熱融着層総厚の60%以上であり、一方、高密度層の密度が0.920g/cm3以上で、高密度層の厚さが多層熱融着層総厚の40%以下である。C8溶液重合法によって得られるm−LLDPEは、C4、あるいはC6気相重合法に比べて柔らかい膜物性が得られることから、高いピンホール耐性を有する。また、多層熱融着層を上記のような構成とすることで、包装材の腰を柔らかく、屈曲ピンホール耐性を持ち、突き刺し、摩耗によるピンホール耐性を維持することができる。
【0024】
本発明のピンホールの発生を低減した積層包装材料を用いて、様々の包装形態の積層袋に成形して用いることができる。特に、500ml〜1500mlと大容量の注射剤を柔
軟なプラスチック容器に充填してなる、輸液バックの2次外装材料などとして好適に使用される。
【0025】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0026】
下記に示す材料を用いて、図1に示す構成の本発明のピンホールの発生を低減した積層包装材料を作成した。
(a)OPP層:2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東セロ(株)製「U1」、厚さ20μm)
(b)接着樹脂層:高機能性押し出しラミネート樹脂「ジェイレクス」(LDPE、密度0.918g/cm3、溶融フロー速度7g/10min.、厚さ20μm)(日本ポリオレフィン(株)製「JH607D」)
(c)酸素バリア層:酸化アルミニウム蒸着2軸延伸ナイロンフィルム(凸版印刷(株)製「GL−AEY」、厚さ15μm)
(d)接着剤層:2液硬化型ウレタン系接着剤(三井武田ケミカル(株)製「A515」、乾燥塗布量3g/m2
(e)熱融着層:メタロセン触媒重合LLDPE(2層、低密度層:C8溶液重合法、中密度層:C6気相重合法、総厚60μm)
酸素バリア層側←(密度0.905g/cm3、厚さ40μm‖密度0.931g/cm3、厚さ20μm)
【実施例2】
【0027】
下記に示す材料を用いて、本発明のピンホールの発生を低減した積層包装材料と比較するための積層包装材料を作成した。
(a)OPP層:2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東セロ(株)製「U1」、厚さ20μm)
(b)接着樹脂層:高機能性押し出しラミネート樹脂「ジェイレクス」(LDPE、密度0.918g/cm3、溶融フロー速度7g/10min.、20μm)(日本ポリオレフィン(株)製「JH607D」)
(c)酸素バリア層:酸化アルミニウム蒸着2軸延伸ナイロンフィルム(凸版印刷(株)製「GL−AEY」、15μm)
(d)接着剤層:2液硬化型ウレタン系接着剤(三井武田ケミカル(株)製「A515」、乾燥塗布量3g/m2
(e)熱融着層:メタロセン触媒重合LLDPE(2層、低密度・中密度層:C6気相重合法、総厚60μm)
酸素バリア層側←(密度0.904g/cm3、厚さ40μm‖密度0.931g/cm3、厚さ20μm)
【実施例3】
【0028】
下記材料を用いて、本発明のピンホールの発生を低減した積層包装材料と比較するための積層包装材料を作成した。
(a)OPP層:2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東セロ(株)製「U1」、20μm)
(b)接着樹脂層:高機能性押し出しラミネート樹脂「ジェイレクス」(LDPE、密度0.918g/cm3、溶融フロー速度7g/10min.、20μm)(日本ポリオレフィン(株)製「JH607D」)
(c)酸素バリア層:酸化アルミニウム蒸着2軸延伸ナイロンフィルム(凸版印刷(株)製「GL−AEY」、厚さ15μm)
(d)接着剤層:2液硬化型ウレタン系接着剤(三井武田ケミカル(株)製「A515」
、乾燥塗布量3g/m2
(e)熱融着層:メタロセン触媒重合LLDPE(単層、低密度層:C8溶液重合法、総厚60μm)
酸素バリア層側←(密度0.905g/cm3、厚さ60μm)
【実施例4】
【0029】
本発明のピンホールの発生を低減した積層包装材料と比較するために、OPP層(厚さ30μm/PVA層(厚さ12μm)/LLDPE(厚さ90μm)の構成からなる市場品を使用した。
【0030】
上記実施例1〜4で得られた積層包装材料を用いて、下記の方法に基づいて耐ピンホール性を評価した。
【0031】
<ピンホール評価方法>
上記実施例1〜4で得られた積層包装材料をヒートシールした後、輸液バックを充填し残りの一方をヒートシールし輸液外装袋を作成した。作成した輸液外装袋を2行×5段でダンボールに梱包積載し、下記条件で振動試験を行い。ダンボール3箱分(30袋)の輸液外装袋のピンホール数をカウントした。
【0032】
振動条件:振動加速度±4G、振動数11Hz、垂直方向30分+水平方向15分で2回、計1時間。
【0033】
【表1】

上記の振動条件(振動加速度:±4G、11Hz)は、JIS規格Z0200に準拠した輸送試験(振動加速度:±0.75G)に比べてはるかに過酷な振動条件で評価したものである。表1から、実施例1で得られた本発明のピンホールの発生を低減した積層包装材料を用いた積層包装袋は、本発明のピンホールの発生を低減した積層包装材料と比較するための実施例2〜4で得た積層包装材料を用いた積層包装袋と比較してピンホールの低減効果が優れていることがわかる。このことは、本発明のピンホールの発生を低減した積層包装材料を構成する多層熱融着層は少なくとも低密度層と高密度層とを2層以上からなり、その低密度層が酸素バリア層側に配置されて、かつ、少なくともその低密度層に溶液重合法によりメタロセン触媒によって炭素数8個(C8)のエチレンとα−オレフィンから重合された直鎖状低密度ポリエチレン(m−LLDPE)を用い、低密度層と高密度層との密度差が、0.02g/cm3であり、酸素バリア層側に配置する低密度層の密度が0.920g/cm3未満で、低密度層の厚さが多層熱融着層総厚の60%以上であり、一方、高密度層の密度が0.920g/cm3以上で、高密度層の厚さが多層熱融着層総厚の40%以下の構成からなることで、振動試験において優れたピンホールの低減効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のピンホールの発生を低減した積層包装材料の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
(a):2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム層
(b):押し出しラミネーション用接着樹脂層
(c):酸素バリア層
(d):ドライラミネーション用接着剤層
(e):多層熱融着層
(e1):低密度層
(e2):高密度層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム層、酸素バリア層、多層熱融着(シーラント)層とがこの順序で積層された酸素バリア性を有するピンホールの発生を低減した積層包装材料であって、
前記2軸延伸ポリプロピレンフィルム層と酸素バリア層とは押し出しラミネーション法によって積層され、前記酸素バリア層と多層熱融着層とはドライラミネーション法によって積層されており、かつ、前記多層熱融着層は少なくとも低密度層と高密度層とを2層以上からなり、その低密度層が酸素バリア層側に配置されて、かつ、少なくともその低密度層に溶液重合法によりメタロセン触媒によって炭素数8個(C8)のエチレンとα−オレフィンから重合された直鎖状低密度ポリエチレン(m−LLDPE)を用いることを特徴とする酸素バリア性を有するピンホールの発生を低減した積層包装材料。
【請求項2】
前記多層熱融着層を構成する低密度層と高密度層との密度差が、0.02g/cm3であり、酸素バリア層側に配置する低密度層の密度が0.920g/cm3未満で、低密度層の厚さが多層熱融着層総厚の60%以上であり、一方、高密度層の密度が0.920g/cm3以上で、高密度層の厚さが多層熱融着層総厚の40%以下であることを特徴とする請求項1記載の酸素バリア性を有するピンホールの発生を低減した積層包装材料。
【請求項3】
請求項1または2記載の酸素バリア性を有するピンホールの発生を低減した積層包装材料を用いてなることを特徴とする積層包装袋。

【図1】
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【公開番号】特開2006−7508(P2006−7508A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185987(P2004−185987)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】