説明

酸素バリア性多層延伸フィルム及びそれを用いた多層包装体

【課題】 外方からの酸素を好適に遮断して一定期間実質酸素透過をなくすことができ、延伸加工時の熱固定により酸素吸収性能が失活することがなく、内容物の保存性、耐衝撃性、耐ピンホール性に優れた酸素バリア性を向上させた包装体または容器を形成するための酸素吸収性多層フィルムを開発する。
【解決手段】 少なくとも酸素吸収性樹脂からなる酸素吸収樹脂層(B)の内側および外側に内側隣接層(A)および外側隣接層(C)を共押出しにより設けた多層フィルムにおいて、各層を伸度および酸素バリア性が比較的高い樹脂組成物により構成し、延伸処理を施すことにより酸素吸収性能を発現する前後において高いバリア性および強度を維持できる酸素バリア性多層フィルムを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体または容器を形成するための酸素吸収性樹脂組成物を用いた酸素バリア性の延伸フィルム及びそれを用いた多層包装体に関するものであり、酸素吸収性樹脂組成物に由来する経時的なフィルムの強度低下を改善し、多層包装体、多層容器の用途に好適な酸素バリア性を向上させたフィルム及びそれを用いた多層包装体を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス(酸素、炭酸ガス)バリア性に優れているエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)が開発されて以来、EVOHは、ガラス製、金属製あるいは従来のプラスチック材料に代わって、食品、化粧品、工業薬品等の分野において、酸素を嫌う商品用の包装材料あるいは容器等のガスバリア性材料として広く利用されている樹脂である。その使用態様は、EVOHが吸湿性を有していること、そして吸湿するとガスバリア性が低下することから、EVOHにポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂などの疎水性の熱可塑性樹脂を被覆して用いるか、あるいはEVOHを中間層とし、熱可塑性樹脂を内層及び外層とする多層構造として用いるのが通常である。
【0003】
EVOHは、そのガスバリア性を利用して包装材料などに広く使われているが、酸素を完全に遮断するわけではなく、一方で酸素を吸収する作用は有していないから、僅かな酸素の透過は避けられない。この透過した酸素に加えて、密封時すでに内部に存在している酸素、あるいは蓋をしばしば開閉して使用する特に食品容器においては、開閉時に新たに進入する酸素の除去が、食品分野を中心として問題とされるようになり、EVOHなどのガスバリア性樹脂および被酸化性樹脂と酸化触媒とからなる酸素吸収性能を有する樹脂(酸素吸収性樹脂)を組合せた包装用材料の開発が盛んに行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
酸素吸収性樹脂は、被酸化性樹脂と酸化触媒とからなり、具体的には被酸化性樹脂としては炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂やポリオレフィン系樹脂(特に主鎖に三級炭素原子を有するもの)などの酸化触媒の存在下において酸化されやすく空気中の酸素と反応して酸素吸収性能(酸素掃去機能)を発現させるものであり、酸化触媒としてはコバルトなどの遷移金属及びその有機酸塩または無機酸塩が一般に使用される。また、その他の酸素吸収性樹脂として、ポリアミド(PA)とPA反応性の被酸化性ポリブタジエン又は被酸化性ポリエーテルとを含むポリアミド組成物、及びこのポリアミド組成物に酸化促進金属塩触媒を含むポリアミド組成物、並びにこのポリアミド組成物からなる酸素バリア性ポリアミド層の隣接層としてEVOH等のバリア性樹脂層を設けた多層製品が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
ところが、酸素吸収性樹脂は一定量の酸素を吸収した後は酸素吸収性能を失い、その後は酸素を吸収する効果を得られなくなる。この際、酸素吸収性樹脂は酸素を捕捉することにより酸化される。つまり、酸素吸収性樹脂は酸素吸収性能を発揮するのと引き換えに酸化劣化によりその強度が低下することとなる。この強度の低下は酸素吸収性樹脂の組成により程度が異なることが期待できるが、当初の強度を完全に維持することはできない。
【0006】
ここで、酸素吸収性樹脂組成物のうち当初の強度の少なくとも50%を保持することができる樹脂として炭素−炭素二重結合を有するエチレン系不飽和炭化水素のポリマーが開示されている。(特許文献3参照)。
【0007】
しかし、上記したように強度低下の小さな樹脂を用いたものであっても多層包装体、多層容器の用途に用いるフィルムとしては充分なものではなかった。
【特許文献1】特開2001−39475公報
【特許文献2】特表2004−527395公報
【特許文献3】特許第3064420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、包装体または容器を形成するための酸素吸収性多層フィルムであって、延伸加工時の熱固定により酸素吸収性能が失活することがなく、外方からの酸素を好適に遮断して一定期間実質酸素透過をなくすことができ、内容物の保存性、耐衝撃性、耐ピンホール性、延伸適性に優れた酸素バリア性を向上させた多層フィルムを開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行ったところ、少なくとも酸素吸収性樹脂からなる酸素吸収樹脂層の内側および外側に内側隣接層および外側隣接層を共押出しにより設けた多層フィルムにおいて、各層を伸度および酸素バリア性が比較的高い樹脂組成物により構成し、延伸処理を施すことにより酸素吸収性能を発現する前後において高いバリア性および強度を保持し、包装袋または容器の用途に適したフィルムが得られることを見出した。本発明はかかる知見に基づいてなされたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(8)記載の構成からなる酸素バリア性多層延伸フィルム及び当該多層フィルムを用いた多層包装体を提供するものである。
【0011】
(1)酸素吸収樹脂層(B)と、前記酸素吸収樹脂層の内側及び外側に位置する酸素吸収性能を有しない内側隣接層(A)および外側隣接層(C)とを少なくとも有する多層フィルムであって、多層フィルムの総膜厚が100μm以下であり、前記酸素吸収樹脂層(B)は前記内側隣接層(A)及び前記外側隣接層(C)の各層間に接着層を介すことなく配置されるとともに、前記酸素吸収樹脂層はポリアミド系樹脂を主体とする引張破断点伸度(JIS K7113)が300%以上の樹脂組成物により構成されることを特徴とする酸素バリア性多層延伸フィルム。
【0012】
(2)前記多層フィルムの延伸前の引張強度と延伸後の引張破強度の比が1:1.2〜1:3.5の範囲であり、少なくとも一軸方向に1.5〜30倍(面積比)に延伸してなることを特徴とする酸素バリア性多層延伸フィルム。
【0013】
(3)前記内側隣接層(A)および前記外側隣接層(C)を構成する樹脂組成物が引張破断点伸度(JIS K7113)が200%以上であるとともに、酸素透過度が60cm3/m2・day・atm(20℃、dry)未満であることを特徴とする酸素バリア性多層延伸フィルム。
【0014】
(4)前記多層フィルムは酸素吸収性能発現後の引張強度が延伸前の引張強度に対して2倍以上の強度を保持していることを特徴とするの酸素バリア性多層延伸フィルム。
【0015】
(5)前記内側隣接層(A)及び前記外側隣接層(C)を構成する樹脂はエチレン−ビニルアルコール共重合体またはポリアミド6からなることを特徴とする請求項1記載の酸素バリア性多層延伸フィルム。
【0016】
(6)酸素吸収樹脂層(B)がポリアミドと被酸化性ポリジエンとの反応生成物及び遷移金属塩からなることを特徴とするの酸素バリア性多層延伸フィルム。
【0017】
(7)上記1)〜6)に記載の何れかの酸素バリア性多層延伸フィルムを用いたことを特徴とする多層包装体。
【0018】
(8)前記酸素バリア性多層延伸フィルムに少なくともヒートシール層を有するフィルムがドライラミネーションまたはウェットラミネーションによりラミネートされた多層フィルムを用いることを特徴とする請求項7に記載の多層包装体。
【発明の効果】
【0019】
本発明の酸素バリア性多層フィルムは、上記(A)層〜(C)層を少なくとも有し、(A)〜(C)の各間に接着層を介すことなく共押出しされた多層フィルムを特定の延伸倍率にて延伸することにより、以下の如き優れた特性を得ることができる。
(1)多層フィルムを構成する少なくとも(A)〜(C)層は接着剤層を介すことなく共押出し成形され、(B)層は引張伸度が300%以上のポリアミド系樹脂を主体とした酸素吸収性樹脂組成物からなり、(A)層および(C)層は酸素透過度が60cm3/m2・day・atm(20℃・dry)未満の酸素バリア性を有しかつ引張伸度が200%以上の熱可塑性樹脂からなる。この(A)、(B)および(C)層を有するフィルムに延伸処理を施すことにより、バリア性および強度低下を改善することができる。
(2)また上記多層フィルムを用いて包装体、容器を形成することにより、経時的な劣化による性能低下を防止し、内容物の保存性、耐衝撃性、耐ピンホール性の良好な包装体および容器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。(A)層及び(C)層を構成する熱可塑性樹脂は酸素バリア性を有し、20℃−dryの条件下における酸素透過度が60(cm3/m2・day・atm)以下、好ましくは45(cm3/m2・day・atm)以下の樹脂が好適に用いられる。また、(A)層及び(C)層を構成する熱可塑性樹脂は融点が180℃以上であり、好ましくは185℃以上、さらに好ましくは190℃以上である。上記熱可塑性樹脂としてはエチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化度90%以上にケン化したエチレン含有量が25〜50mol%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)またはポリアミド6が好適に用いられる。エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量は上記範囲のものから適宜選択が可能であり、酸素バリア性を優先すればエチレン含有量の少ないものが好適であるが、フィルムの加工性および成形性等の観点からはエチレン含有量が32〜40mol%のものを選択することが好ましい。
【0021】
(B)層を構成する熱可塑性樹脂は、ポリアミドとポリアミド反応性の被酸化性ポリジエン又は被酸化性ポリエーテルとの反応生成物と遷移金属塩からなるものが好適である。被酸化性ポリジエン又はポリエーテルはポリアミドと反応しており、そのポリジエン又はポリエーテルは好ましくは酸変性されたものを用い、エポキシ基又は無水官能基を含み、ポリアミドのカルボキシル基又はアミノ末端基さらにはポリアミド骨格中のアミド基と反応している。
【0022】
上記ポリアミドは、アミド結合を有するポリマーであればよく、カルボン酸とアミンとの脱水縮合反応により得られるもののほか、カルボン酸とイソシアネートとの反応により得られるアミド結合を有するポリマーを含むものである。具体的には、ポリカプロアミド(ナイロン−6)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウロラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,10)等の脂肪族ポリアミド単独重合体;カプロラクタム/ラウロラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ナイロン−6/11)、カプロラクタム/≡−アミノノナン酸共重合体(ナイロン−6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド共重合体(ナイロン−6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンセバカミド共重合体(ナイロン−6/6,6/6,10)等の脂肪族ポリアミド共重合体;ポリメタキシリレンアジパミド(MX−ナイロン)、ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド共重合体(ナイロン−6T/6I)等の芳香族ポリアミドまたはこれらの混合物を用いることができる。
【0023】
特にフィルムの加工性等の観点からは伸度の比較的大きいポリアミド6またはポリアミド6と非晶性ポリアミド等の他のポリアミドとのブレンドが好適である。ここで、非晶性ポリアミドとは、示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶融解熱量が1cal/g以下のものであり、ポリマーの結晶化がほとんど起こらないか、或いは結晶化速度が非常に小さい一群のポリアミド樹脂をいう。被酸化性ポリジエンとしては、エポキシ官能化ポリブタジエン、エポキシ官能化ポリイソプレン、無水マレイン酸グラフト又は共重合化ポリブタジエン、無水マレイン酸グラフト又は共重合化ポリイソプレンなどが挙げられる。
【0024】
また、被酸化性ポリエーテルとしては、アミン、エポキシ又は無水官能性ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、ポリスチレンオキシドなどが挙げられる。さらに、(B)層を構成する熱可塑性樹脂には酸化触媒として遷移金属塩が金属原子重量で5000ppm以下の範囲で添加されている。遷移金属塩はコバルト、鉄、ニッケル、さらには銅、チタン、クロム、マンガン、ルテニウムなどの遷移金属の無機塩、有機塩、または錯塩であり、特にカルボン酸塩、スルホン酸塩などの有機酸塩が好適であり、その具体例としては酢酸塩、ステアリン酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、オクタン酸塩、ネオデカン酸塩、ステアリン酸塩などが挙げられる。
【0025】
なお、本発明の(B)層を構成する熱可塑性樹脂としてはその他公知の酸素吸収性樹脂を用いることができる。さらに、その特性を損なわない範囲で、各種公知の添加剤、着色剤、耐熱・耐候剤、帯電防止剤、接着剤さらには基材樹脂としてエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂など他の熱可塑性樹脂を適宜必要に応じて加えることは差し支えない。
【0026】
ただし、上記(B)層を構成する熱可塑性樹脂としては引張伸度が300%以上であり、延伸後の引張強度が1.2倍以上、好ましくは2.0〜3.5倍の範囲で向上するように調整する必要がある。
【0027】
さらに、包装体を形成するためにラミネートされるヒートシール層を構成する熱可塑性樹脂はポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。ポリオレフィン系樹脂としては低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びその混合物など適宜公知の樹脂を用いることができる。またさらに、接着剤層を構成する接着性樹脂としては、カルボキシル基を有するオレフィン系共重合体及びエポキシ系、ポリウレタン系又はポリエステル系硬化性が好適に用いられ、中でもエチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレン等がポリオレフィン系樹脂からなるヒートシール層との接着に適している。
【0028】
また、本発明における酸素バリア性多層フィルムとしては以下の層構成が特に好適である。
ポリアミド6/酸素吸収性樹脂/ポリアミド6
EVOH/酸素吸収性樹脂/EVOH
ポリアミド6/酸素吸収性樹脂/EVOH
なお、上記層構成の外側または内側に適宜、他の層を共押出しによって積層することが可能である。この際、多層フィルムの延伸適性を低下させないため、(A)〜(C)と同程度(少なくとも200%以上)の引張伸度を有する樹脂組成物より構成する必要がある。また、本発明において延伸処理の方法はテンター式およびチューブラー式のどちらを用いてもよく、同時二軸延伸または逐次二軸延伸など適宜公知の延伸方法を用いることができる。
【0029】
本発明に係る多層フィルムからなる多層包装体、多層容器は、内容物が空気中の酸素によって酸化又は劣化するのを防止し、シェルフライフを長くすることができるものであり、内容物としてはマヨネーズ、ソース類、ケチャップ、ドレッシング、食用油、味噌などの調味料さらにはハム・ソーセージ、茶、生麺、漬物、水産加工食品、レトルト食品および飲料、化粧品、芳香剤、工業薬品等が挙げられる。
【実施例】
【0030】
次に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。各実施例の多層フィルム作製し、多層包装体を形成した。さらにこの多層フィルムおよび多層包装体の性能を、以下の測定法及び基準により評価した。
(1)引張弾性率、引張破断点強度、伸度
作製した酸素バリア性多層フィルムをJIS K7113(2号形)に準じて引張速度50mm/minで測定した。
(2)酸素透過量
酸素バリア性多層フィルムより多層包装体を製袋し、23℃−90%RHの高湿度環境下、酸素透過量測定装置(MOCON社製、Ox−Tran 10/50)により測定した。
【0031】
[実施例1]
以下記載の樹脂を用いて、内側隣接層/酸素吸収樹脂層/外側隣接層を1:2:1の膜厚比率にて150μmの厚さで共押出し成形し、延伸工程にて総膜厚が20μmとなるように延伸することにより3層構造の多層フィルムを作製した。各層の肉厚は内側より、5:10:5(μm)、総膜厚20μmであった。
・内側隣接層:ポリアミド6(商品名:CM1061、東レ(株)製)
・酸素吸収樹脂層:無水マレイン酸変性ポリブタジエンとポリアミドの反応生成物およびコバルト有機酸塩を含有するポリアミド6を主体とする樹脂組成物
・外側隣接層:ポリアミド6(商品名:CM1061、東レ(株)製)
【0032】
[実施例2]
以下記載の樹脂を用いた以外は実施例1と同様の構成にて多層フィルムを作製した。
・内側隣接層:エチレン含有量38mol%、ケン化度99%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(商品名:ソアノールET3803、日本合成化学(株)製)
・酸素吸収樹脂層:無水マレイン酸変性ポリブタジエンとポリアミドの反応生成物およびコバルト有機酸塩を含有するポリアミド6を主体とする樹脂組成物
・外側隣接層:エチレン含有量38mol%、ケン化度99%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(商品名:ソアノールET3803、日本合成化学(株)製)
【0033】
[実施例3]
以下記載の樹脂を用いた以外は実施例1と同様の構成にて多層フィルムを作製した。
・内側隣接層:ポリアミド6(商品名:CM1061、東レ(株)製)
・酸素吸収樹脂層:無水マレイン酸変性ポリブタジエンとポリアミドの反応生成物およびコバルト有機酸塩を含有するポリアミド6を主体とする樹脂組成物
・外側隣接層:エチレン含有量38mol%、ケン化度99%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(商品名:ソアノールET3803、日本合成化学(株)製)
【0034】
[比較例1]
以下記載の樹脂を用いた以外は実施例1と同様の構成にて多層フィルムを作製した。
・内側隣接層:ポリアミド6(商品名:CM1061、東レ(株)製)
・酸素吸収樹脂層:メタキシリレンアジパミド(商品名:MXナイロン6007、三菱ガス化学(株)製)、コバルト有機酸塩を触媒量として含有する
・外側隣接層:エチレン含有量38mol%、ケン化度99%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(商品名:ソアノールET3803、日本合成化学(株)製)
【0035】
上記実施例1より作製した多層フィルムを(1)延伸加工を施す前、(2)延伸加工を施した後、(3)酸素吸収性能を発現後高温・高湿度条件下にて保管して酸素吸収性能失活後、にて取り出してそれぞれの引張破断点強度を常温(23℃)で測定した。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例1〜3の酸素吸収多層フィルムは延伸加工により高い強度を保持するとともに経時的な劣化に伴い、酸素吸収性能が失活した後であっても高い(延伸前の引張強度に対して2倍以上)強度を維持することができた。
【0038】
これに対して比較例1の酸素吸収多層フィルムにあっては酸素吸収性能の発現に伴い、フィルムの強度が大きく低下することとなり(延伸前の引張り強度に対して2倍以下)、延伸フィルムの特性を十分に得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上詳細に説明したように、本発明の内側隣接層、酸素吸収層、外側隣接層を有する多層フィルムは、良好な酸素バリア性を備えており、加えて経時的な劣化にともなう強度の低下を改善し、酸素を嫌う内容物を収納するための包装用フィルムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例1、2及び3における延伸多層フィルムの層構成を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0041】
(A) 内側隣接層
(B) 酸素吸収樹脂層
(C) 外側隣接層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素吸収樹脂層(B)と、前記酸素吸収樹脂層の内側及び外側に位置する酸素吸収性能を有しない内側隣接層(A)および外側隣接層(C)とを少なくとも有する多層フィルムであって、
多層フィルムの総膜厚が100μm以下であり、
前記酸素吸収樹脂層(B)は前記内側隣接層(A)及び前記外側隣接層(C)の各層間に接着層を介すことなく配置されるとともに、
前記酸素吸収樹脂層はポリアミド系樹脂を主体とする引張破断点伸度(JIS K7113)が300%以上の樹脂組成物により構成される
ことを特徴とする酸素バリア性多層延伸フィルム。
【請求項2】
前記多層フィルムの延伸前の引張強度と延伸後の引張強度の比が1:1.2〜1:3.5の範囲であり、
少なくとも一軸方向に1.5〜30倍(面積比)に延伸してなる
ことを特徴とする請求項1記載の酸素バリア性多層延伸フィルム。
【請求項3】
前記内側隣接層(A)および前記外側隣接層(C)を構成する樹脂組成物が引張破断点伸度(JIS K7113)が200%以上であるとともに、
酸素透過度が60cm3/m2・day・atm(20℃、dry)未満である
ことを特徴とする請求項1記載の酸素バリア性多層延伸フィルム。
【請求項4】
前記多層フィルムは酸素吸収性能発現後の引張強度が延伸前の引張強度に対して2倍以上の強度を保持している
ことを特徴とする請求項1に記載の酸素バリア性多層延伸フィルム。
【請求項5】
前記内側隣接層(A)及び前記外側隣接層(C)を構成する樹脂はエチレン−ビニルアルコール共重合体またはポリアミド6からなる
ことを特徴とする請求項1記載の酸素バリア性多層延伸フィルム。
【請求項6】
酸素吸収樹脂層(B)がポリアミドと被酸化性ポリジエンとの反応生成物及び遷移金属塩からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の酸素バリア性多層延伸フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の何れかの酸素バリア性多層延伸フィルムを用いた
ことを特徴とする多層包装体。
【請求項8】
前記酸素バリア性多層延伸フィルムに少なくともヒートシール層を有するフィルムがドライラミネーションまたはウェットラミネーションによりラミネートされた多層フィルムを用いた
ことを特徴とする請求項7に記載の多層包装体。

【図1】
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【公開番号】特開2007−283569(P2007−283569A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111462(P2006−111462)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】