説明

重力式下方搬送装置

【課題】重力をエネルギ源とし、構造の簡素化、人工的エネルギ消費の防止等を図ることにある。
【解決手段】プーリ(回転体)3から下方に延在し、プーリ3の回転に伴って上下に移動するワイヤ(牽引部材)41と、ワイヤ41に連結され、ワイヤ41と共に上下に移動する荷受台5と、プーリ3から下方に延在し、プーリ3の回転に伴ってワイヤ41とは逆方向の上下に移動するカウンタワイヤ(カウンタ牽引部材)42と、カウンタワイヤ42に連結され、ワーク(被搬送物)Wが積載されていない状態の荷受台5をプーリ3及びワイヤ41を介して上方に駆動可能な重さで、かつワークWが積載された状態の荷受台5をプーリ3及びワイヤ41を介して下方に移動可能にする重さに設定されたカウンタウエイト6とを備えた構成になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送物を上位置から下位置に順次搬送することが可能な重力式下方搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被搬送物を、例えば所定の高さに位置するベルトコンベヤからこれより一段低い位置のベルトコンベヤに搬送する場合があり、この場合には上位ベルトコンベヤと下位ベルトコンベヤとの間に下方搬送装置を設けることになる。
【0003】
この場合、上記下方搬送装置としては、通常、上位ベルトコンベヤから被搬送物を荷受けすると共に、当該被搬送物を下方に搬送して下位ベルトコンベヤに荷渡しする荷受台と、この荷受台を上下に移動可能にする上下移動機構と、この上下移動機構を介して荷受台を上下に駆動するモータや空圧シリンダ等を備えたもので構成することになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記下方搬送装置においては、上述のように、モータや空圧シリンダ等の人工的なエネルギ(例えば、電力や空圧等)を利用する装置を備えることになるので、構造が複雑になると共に、当該装置に対して電力や空圧等の人工的なエネルギを供給する必要が生じるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、重力をエネルギ源として用いることにより、構造が簡単でかつ人工的なエネルギを必要としない重力式下方搬送装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の重力式下方搬送装置は、上部に配置した回転体に巻回されると共に当該回転体から下方に延在し、上記回転体の回転に伴って上下に移動する牽引部材と、この牽引部材に連結され、当該牽引部材と共に上下に移動する荷受台と、上記回転体に巻回されると共に当該回転体から下方に延在し、上記回転体の回転に伴って上記牽引部材とは逆方向の上下に移動するカウンタ牽引部材と、このカウンタ牽引部材に連結され、被搬送物が積載されていない空の状態の上記荷受台を上記回転体及び上記牽引部材を介して上方に駆動可能な重さで、かつ被搬送物が積載された有積の状態の上記荷受台を上記回転体及び上記牽引部材を介して下方に移動可能にする重さに設定されたカウンタウエイトとを備えていることを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の重力式下方搬送装置は、請求項1に記載の発明において、上記荷受台は、レールに案内されて上下に移動可能に構成されており、上記レールは、その下方位置に、上記荷受台から上記被搬送物を払い出すべく当該荷受台を傾斜させる払出案内部を備えていることを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の重力式下方搬送装置は、請求項1又は2に記載の発明において、上記カウンタウエイトの移動速度を制限する制動手段を備えていることを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載の重力式下方搬送装置は、請求項3に記載の発明において、上記制動手段は、上記カウンタウエイトの移動方向に沿って当該カウンタウエイトを囲むように配置され、上記カウンタウエイトを介して上下に流れる流体の抵抗を利用して当該カウンタウエイトに制動力を作用させるシリンダを備えていることを特徴としている。
【0010】
請求項5に記載の重力式下方搬送装置は、請求項4に記載の発明において、上記シリンダは、その上端部及び下端部に、上記カウンタウエイトの移動によって生じる上記流体の流れを絞ることによって制動力を増大させるクッション部を備えていることを特徴としている。
【0011】
また、上記各請求項に記載の発明で示す上下は、垂直方向に沿う上下方向であっても、垂直方向に対して傾斜する方向に沿う上下方向であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜5に記載の発明によれば、荷受台が空の状態であれば、当該荷受台が上方に移動し、カウンタウエイトが下方に移動することになる。そこで、例えば上位搬送手段から荷受台に被搬送物が荷渡しされると、当該荷受台が下方に移動しすると共に、カウンタウエイトが上方に移動することになる。そして、この下方に位置した状態の荷受台から被搬送物が例えば下位搬送手段に荷渡されると、荷受台に作用する重力の低減により、当該荷受台が上方に移動すると共に、カウンタウエイトが下方に移動する。そこで再び、上位搬送手段から荷受台に被搬送物が荷渡しされると、当該荷受台が降下することになる。これにより、上述した被搬送物の搬送作業が繰り返し行われることになる。
【0013】
従って、電力や空圧等の人工的なエネルギを使用することなく、被搬送物を順次下方に搬送することができる。しかも、モータや空圧シリンダ等の人工的なエネルギを用いた装置を必要としないので、例えば電気配線や、空圧配管や、荷受台を所定の位置で停止させるべく制御するリミットスイッチや、その他の制御装置等々の付帯設備が不要になる。従って、構造が極めて簡単になると共に、コストの低減を図ることができる。しかも、上述したモータや空圧シリンダ等の作動に伴う騒音や振動の発生を防止することができるという利点がある。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、レールによって荷受台を一定の方向に安定的に移動することができる。しかも、レールの下方位置に、荷受台から被搬送物を払い出すべく荷受台を傾斜させる払出案内部が備えられているので、レールの下方位置に達した荷受台から被搬送物を自動的に払い出すことができる。従って、被搬送物を荷受台から例えば下位搬送手段に荷渡しする際にも、電力等の人工的なエネルギが消費されるのを防止することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、カウンタウエイトの移動速度を制限する制動手段を備えているので、有積の状態の荷受台が降下する速度や、空の状態の荷受台が上昇する速度を一定の速度以下に抑えることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、カウンタウエイトを介して上下に流れる流体の抵抗を利用して当該カウンタウエイトに制動力を作用させるシリンダを備えているので、カウンタウエイトに制動力を作用させることによって摩耗を生じる部品が生じるのを防止することができる。なお、流体としては、大気中の空気をそのまま利用することができる。また、流体としては、他の気体や、油等の液体を用いてもよい。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、シリンダの上端部及び下端部に、カウンタウエイトの移動によって生じる流体の流れを絞って制動力を増大させるクッション部が備えられているので、カウンタウエイトがシリンダの上端部や下端部に当たる前に当該カウンタウエイトを滑らかに減速することができる。従って、カウンタウエイトがシリンダの上端部や下端部に当たって停止する際の衝撃を緩和することができ、荷受台を最上位置及び最下位置に滑らかに停止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態としての一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
この実施の形態で示す重力式下方搬送装置1は、図1〜図4に示すように、フレーム2と、このフレーム2の上部に配置したプーリ(回転体)3と、このプーリ3に巻回されると共に当該プーリ3から下方に延在し、プーリ3の回転に伴って上下に移動するワイヤ(牽引部材)41と、このワイヤ41の下端部に連結され、当該ワイヤ41と共に上下方向に移動する荷受台5と、プーリ3に巻回されると共に当該プーリ3から下方に延在し、プーリ3の回転に伴ってワイヤ41の移動方向とは逆の上下方向に移動するカウンタワイヤ(カウンタ牽引部材)42と、このカウンタワイヤ42の下端部に連結され、ワーク(被搬送物)Wが積載されていない空の状態の荷受台5をプーリ3及びワイヤ41を介して上方に駆動可能な重さで、かつワークWが積載された有積の状態の荷受台5をプーリ3及びワイヤ41を介して下方に移動可能にする重さに設定されたカウンタウエイト6とを備えた構成になっている。
【0020】
フレーム2は、基礎部G上を移動可能な車21aを備えた台車21上に構成されている。
プーリ3は、図3及び図4に示すように、後述する一対のレール22の間の中央であって当該レール22に対して当該レール22から荷受台5が突出する側とは反対側に配置されている。このプーリ3は、軸方向を水平に向けた状態の回転支持軸31に同軸状に一体的に連結されている。回転支持軸31は、フレーム2に回転自在に設けられている。なお、プーリ3は回転支持軸31に1つだけ設けられている。
【0021】
ワイヤ41とカウンタワイヤ42とは、図1に示すように、連続する1本のワイヤで構成されており、プーリ3の溝を半円状に巻回して一方に垂れ下がる側がワイヤ41となっており、他方に垂れ下がる側がカウンタワイヤ42となっている。
【0022】
荷受台5は、荷受部51と、この荷受部51の基端側に位置する支持部52と、支持部52に設けられた4つのローラ53とを備えた構成になっている。
【0023】
荷受部51は、図4に示すように、四角形状の上面部51aを有している。また、荷受部51は、上面部51aに載置したワークWを荷受部51の基端部と先端部とを結ぶ先後方向Aに移動自在にする図示しないローラコンベア(滑走手段)を備えた構成になっている。
【0024】
支持部52は、図1及び図3に示すように、荷受部51と一体的に構成されたものであり、荷受部51の基端部から当該荷受部51に対して下方にL字状となるように形成されている。また、荷受部51と支持部52とは、筋交い状の補強部材54によって補強されている。
【0025】
ローラ53は、支持部52の幅方向(後述する一対のレール22の間の方向)の左右の各側縁部52aにおける上端部及び下端部に設けられている。これらのローラ53は、回転軸を水平方向に向けて各側縁部52aに取り付けられたボールベアリングによって構成されており、当該ボールベアリングにおける硬質の外輪を転輪としてそのまま利用している。
【0026】
そして、荷受台5は、フレーム2に設置された一対のレール22に案内されて上下に移動可能になっている。
【0027】
各レール22は、図4に示すように、ウエブ22a及びこのウエブ22aの左右に配置されたフランジ22bによって断面がコ字状に形成されており、対向する各フランジ22bの内面で荷受台5の各ローラ53を回転自在に支持するようになっている。
【0028】
また、各レール22は、図1に示すように、直線部221と、この直線部221の下端部に位置する傾斜部(払出案内部)222とによって一体的に形成されている。直線部221は、ウエブ22a及びフランジ22bが直線状に延在するように形成されている。傾斜部222は、少なくとも荷受部51と反対側のフランジ22bが下方に向かうにしたがって漸次荷受部51から離れる方向に湾曲した後、当該方向に一定の角度で傾斜するように形成されている。なお、荷受部51側のフランジ22aもフランジ22bと同様に湾曲及び傾斜するように形成してもよい。
【0029】
そして、各レール22は、直線部221が垂直方向に延在すべく設置されており、直線部221に位置する荷受部51を水平に保持しながら垂直方向に案内するようになっていると共に、傾斜部222に移動した荷受台5に対して、荷受部51からのワークWの払い出しを可能にすべく当該荷受部51をその先端部が下方となるように傾斜させるようになっている。
【0030】
カウンタウエイト6は、鋼等の比重の大きな金属で略円柱状に形成されたものであり、垂直方向に延在するガイド軸71によって、上下方向に移動自在に案内されるようになっている。このため、カウンタウエイト6には、その軸心部にガイド軸71が軸方向に移動自在な貫通孔(図示せず)が形成されていると共に、当該貫通孔の上下の各端部にガイド軸71に対して軸方向に移動自在となるベアリング(図示せず)が設けられている。また、カウンタウエイト6には、一定の径の外周面6aの下端部に、同軸状に拡径されたフランジ部6bが形成されている。
【0031】
ガイド軸71は、断面円形の直線状の鋼棒によって形成されたものであり、シリンダ7内にあって当該シリンダ7と同軸状に設置されている。
【0032】
シリンダ7は、カウンタウエイト6の移動方向に沿って当該カウンタウエイト6を囲むようにフレーム2に垂直に設置された円筒部7aを備えており、当該円筒部7a内を上下に移動するカウンタウエイト6を介して上下に流れる空気(流体)の流体抵抗を利用して当該カウンタウエイト6に制動力を作用させるように構成されている。即ち、シリンダ7は、円筒部7aの内面とカウンタウエイト6の外面との間の隙間を流れる空気の流体抵抗を利用して、当該カウンタウエイト6の移動速度を制限する制動手段となっている。
【0033】
また、シリンダ7には、その上端部及び下端部に、カウンタウエイト6の移動によって生じる空気の流れ(移動流量)を絞ることにより制動力を増大させるクッション部7b、7cが備えられている。
【0034】
上端側のクッション部7bは、カウンタウエイト6の外周面6aよりわずかに大径に形成された断面円形状の凹部によって形成されており、カウンタウエイト6の浸入によって行き場を失った空気がクッション部7bと外周面6aとの間のより絞られた空間を流れることによる大きな流体抵抗を利用して、当該カウンタウエイト6に大きな制動力を作用させ、カウンタウエイト6の上端面がクッション部7bの上端面に当接して当該カウンタウエイト6が停止する前に、当該カウンタウエイト6を十分に減速するようになっている。即ち、クッション部7bは、上方に移動中のカウンタウエイト6が上端停止位置で停止する際のショックを緩和するようになっている。
【0035】
下端側のクッション部7cは、カウンタウエイト6におけるフランジ部6bの外周面よりわずかに大径に形成された断面円形状の凹部によって形成されており、フランジ部6bの浸入によって行き場を失った空気がクッション部7cとフランジ部6bとの間のより絞られた空間を流れる際の大きな流体抵抗を利用して、当該カウンタウエイト6に大きな制動力を作用させ、カウンタウエイト6の下端面がクッション部7cの下端面に当接して当該カウンタウエイト6が停止する前に、当該カウンタウエイト6を十分に減速するようになっている。即ち、クッション部7cは、下方に移動中のカウンタウエイト6が下端停止位置で停止する際のショックを緩和するようになっている。
【0036】
また、図1、図2及び図4において、8は、上下移動する荷受台5の周囲を囲み、荷受部51からワークWが落下するのを防止するカバーである。このカバー8は、透明な板、金網、パンチングメタル等のような荷受台5の昇降状態を視認可能な部材で構成することが好ましい。
【0037】
上記のように構成された重力式下方搬送装置1においては、荷受台5が空の状態であれば、当該荷受台5がカウンタウエイト6の重さによって上方に移動し、当該カウンタウエイト6が下方に移動することになる。この場合、カウンタウエイト6がシリンダ7内において流体抵抗による制動力を受けることから、荷受台5が上昇する速度を一定の速度以下に抑えることができる。
【0038】
そして、カウンタウエイト6のフランジ部6bが下端側のクッション部7cに入ることによって、より大きな制動力がカウンタウエイト6に作用し、当該カウンタウエイト6が十分に減速された上で、当該カウンタウエイト6の下端面がクッション部7cの下端面に当接することにより、カウンタウエイト6が停止すると共に、荷受台5が上方荷受け位置(最上位置)C1で停止することになる。
【0039】
そこで、上位置に配置された上位ベルトコンベヤ(上位搬送手段)B1から荷受台5にワークWが荷渡しされると、荷受台5側がカウンタウエイト6側に対して重くなることから、当該荷受台5が下方に移動すると共に、カウンタウエイト6が上方に移動することになる。
【0040】
この場合も、カウンタウエイト6がシリンダ7内において流体抵抗による制動力を受けることから、荷受台5が降下する速度を一定の速度以下に抑えることができる。
【0041】
そして、カウンタウエイト6の外周面6aの部分が上端側のクッション部7bに入ることによって、より大きな制動力がカウンタウエイト6に作用し、当該カウンタウエイト6が十分に減速された上で、当該カウンタウエイト6の上端面がクッション部7bの上端面に当接することにより、カウンタウエイト6が停止すると共に、荷受台5が下方荷渡し位置(最下位置)C2で停止することになる。
【0042】
この場合、荷受台5は、レール22の直線部221に案内されて垂直に降下した後、傾斜部222に案内されて荷受部51がワークWの払い出しが可能な程度まで傾斜してから、下方荷渡し位置C2で停止することになる。
【0043】
そうすると、ワークWが荷受台5から下位置に配置された下位ベルトコンベヤ(下位搬送手段)B2に重力により荷渡しされる。この際、ワークWは、その先端部が下位ベルトコンベヤB2のベルトに当接することにより当該ベルトから搬送力を受けることになるので、荷受台5から下位ベルトコンベヤB2に円滑に荷渡しされることになる。
【0044】
なお、ワークWが下位ベルトコンベヤB2に移行する途中で、荷受台5に作用するワークWの重量が徐々に減少することになるが、カウンタウエイト6の外周面6aの部分がクッション部7bに挿入されていることから、荷受台5に作用する荷重の減少によって、カウンタウエイト6がクッション部7bから即座に抜けることがない。このため、ワークWが下位ベルトコンベヤB2へ移行する途中で荷受台5が急激に上昇するようなことがない。
【0045】
即ち、ワークWが下位ベルトコンベヤB2に荷渡されてから、カウンタウエイト6がクッション部7bから完全に抜け出し、荷受台5が一定の速度以下に制限された状態で上昇することになる。そして、荷受台5が上方荷受け位置C1に移動した後、ワークWが上位ベルトコンベヤB1から荷受台5に荷渡しされることにより、当該荷受台5が再び降下することになる。これにより、上述したワークWの下方への搬送作業が繰り返えされることになる。
【0046】
従って、電力や空圧等の人工的なエネルギを供給することなく、上位ベルトコンベヤB1から下位ベルトコンベヤB2にワークWを順次下方に搬送することができる。しかも、モータや空圧シリンダ等の人工的なエネルギを用いる装置を必要としないので、例えば電気配線や、空圧配管や、荷受台5を所定の位置で停止させるべく制御するリミットスイッチや、その他の制御装置等々の付帯設備が不要になる。従って、構造が極めて簡単になると共に、コストの低減を図ることができる。しかも、モータや空圧シリンダ等の作動に伴う騒音や振動の発生を防止することができるという利点がある。
【0047】
また、レール22の下方位置に、荷受台5からワークWを払い出すべく当該荷受台5を傾斜させる傾斜部222が備えられているので、何らの人工的なエネルギを供給することなく荷受台5から下位ベルトコンベヤB2にワークWを荷渡しすることができる。従って、ワークWを荷受台5から下位ベルトコンベヤB2に荷渡しする際にも、電力等の人工的なエネルギの消費量を零にすることができる。
【0048】
更に、カウンタウエイト6の移動速度を制限するシリンダ7を備えているので、有積の状態の荷受台5が降下する速度や、空の状態の荷受台5が上昇する速度を一定の速度以下に抑えることができる。従って、荷受台5を常に安全な速度で昇降させることができる。
【0049】
しかも、空気による流体の抵抗を利用してカウンタウエイト6に制動力を作用させるようになっているので、カウンタウエイト6に制動力を作用させることによって摩耗を生じる部品が生じるのを防止することができる。
【0050】
更に、シリンダ7の上端部及び下端部にクッション部7b、7cを設けているので、カウンタウエイト6がシリンダ7の上端部や下端部に当たって停止する際の衝撃を緩和することができる。
【0051】
また、クッション部7b、7cは、カウンタウエイト6が上方又は下方に移動を開始する際の動きを滑らかにすることもできる。従って、上方荷受け位置C1において、ワークWが荷受台5に供給された後、当該荷受台5が急激に降下するのを防止することができると共に、下方荷渡し位置C2において、ワークWが下位ベルトコンベヤB2に荷渡しされる途中で、荷受台5が急激に上昇することも防止することができる。
【0052】
一方、全体が台車21上に構成されているので、上位ベルトコンベヤB1や下位ベルトコンベヤB2を配置換えするようなことがあっても、当該配置換えに伴って、重力式下方搬送装置の設置位置を自由に変更することができる利点がある。
【0053】
なお、上記実施の形態においては、プーリ3を一対のレール22間の中央位置(即ち、支持部52の幅方向の中央に対応する位置)に1つ設けた例を示したが、このプーリ3については、図5に示す第1の他の例のように、支持部52の幅方向の各端部に対応する位置にそれぞれ1つずつ(計2つ)設けるように構成してもよい。また、この第1の他の例では、各プーリ3が回転支持軸31に同軸状に一体的に連結されていると共に、カウンタウエイト6、シリンダ7、ガイド軸71等についても各プーリ3に対応する位置にそれぞれ設けられている。但し、カウンタウエイト6、シリンダ7、ガイド軸71等については、図示を省略している。
【0054】
上記第1の他の例においては、荷受部51を支持部52の幅方向の各端部に連結されたワイヤ41、41によって安定的に支持することができる。また、プーリ3の間に上位ベルトコンベヤB1を配置することができるので、上位ベルトコンベヤB1の上側搬送面から上方荷受け位置C1までの寸法を低減することができる。
【0055】
また、プーリ3を上述のように2つ設ける場合でも、図6に示す第2の他の例のように、カウンタウエイト6、シリンダ7、ガイド軸71等をそれぞれ1つ設けるように構成してもよい。
【0056】
但し、各プーリ3に代えて、ワイヤ41を単独で巻回して巻き付けることが可能な各ドラム(回転体)3を用いることになる。そして、各ドラム3は回転支持軸31に同軸状に一体的に連結されることになる。また、回転支持軸31における各ドラム3の間の外側に第3のドラム(回転体)33を同軸状に一体的に連結することになる。この場合、第3のドラム33は、ワイヤ41と完全に分離されたカウンタワイヤ42を巻回して巻き付けることが可能になっており、下端部に連結されたカウンタウエイト6によって、回転駆動力を得るようになっている。
【0057】
そして、カウンタウエイト6は、ワークWが積載されていない空の状態の荷受台5を上方に駆動可能な重さで、かつワークWが積載された荷受台5を下方に移動可能にする重さに設定されている。
【0058】
上記第2の他の例においては、カウンタウエイト6等がそれぞれ1つに抑えられているので、上記第1の他の例に比べて、構造の簡素化、コストの低減等を図ることができる。
【0059】
また、上述したプーリ3に代えてスプロケット(回転体)を用い、上述したワイヤ41やカウンタワイヤ42に代えて上記スプロケットに巻回可能なチェーン(牽引部材)やカウンタチェーン(カウンタ牽引部材)等を用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施の形態として示した重力式下方搬送装置の要部破断正面図である。
【図2】同重力式下方搬送装置の外観を示す正面図である。
【図3】同重力式下方搬送装置を示す要部側面図である。
【図4】同重力式下方搬送装置を示す要部平面図である。
【図5】同重力式下方搬送装置の第1の他の例を示す要部側面図である。
【図6】同重力式下方搬送装置の第2の他の例を示す要部側面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 重力式下方搬送装置
3 プーリ、ドラム(回転体)
5 荷受台
6 カウンタウエイト
7 シリンダ(制動手段)
7b、7c クッション部
22 レール
33 ドラム(回転体)
41 ワイヤ(牽引部材)
42 カウンタワイヤ(カウンタ牽引部材)
222 傾斜部(払出案内部)
W ワーク(被搬送物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に配置した回転体に巻回されると共に当該回転体から下方に延在し、上記回転体の回転に伴って上下に移動する牽引部材と、
この牽引部材に連結され、当該牽引部材と共に上下に移動する荷受台と、
上記回転体に巻回されると共に当該回転体から下方に延在し、上記回転体の回転に伴って上記牽引部材とは逆方向の上下に移動するカウンタ牽引部材と、
このカウンタ牽引部材に連結され、被搬送物が積載されていない空の状態の上記荷受台を上記回転体及び上記牽引部材を介して上方に駆動可能な重さで、かつ被搬送物が積載された有積の状態の上記荷受台を上記回転体及び上記牽引部材を介して下方に移動可能にする重さに設定されたカウンタウエイトとを備えていることを特徴とする重力式下方搬送装置。
【請求項2】
上記荷受台は、レールに案内されて上下に移動可能に構成されており、
上記レールは、その下方位置に、上記荷受台から上記被搬送物を払い出すべく当該荷受台を傾斜させる払出案内部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の重力式下方搬送装置。
【請求項3】
上記カウンタウエイトの移動速度を制限する制動手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の重力式下方搬送装置。
【請求項4】
上記制動手段は、上記カウンタウエイトの移動方向に沿って当該カウンタウエイトを囲むように配置され、上記カウンタウエイトを介して上下に流れる流体の抵抗を利用して当該カウンタウエイトに制動力を作用させるシリンダを備えていることを特徴とする請求項3に記載の重力式下方搬送装置。
【請求項5】
上記シリンダは、その上端部及び下端部に、上記カウンタウエイトの移動によって生じる上記流体の流れを絞ることによって制動力を増大させるクッション部を備えていることを特徴とする請求項4に記載の重力式下方搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−137546(P2006−137546A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328619(P2004−328619)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【Fターム(参考)】