説明

重合体の製造方法

【課題】極性基を有する単量体を重合した重合体であっても、簡便な方法で重合体中の不純物を有効に除去できる重合体の製造方法(又は精製方法)を提供する。
【解決手段】不純物を含む重合体と有機溶媒とを含む重合体溶液と、前記重合体に対して貧溶媒である沈殿溶媒(又は再沈殿溶媒)とを、超音波の作用下で接触させて重合体を析出又は沈殿させ、析出又は沈殿した重合体を回収して重合体を製造する。この方法は、レジストの重合体を精製するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト用重合体などの重合体から不純物(ビニル系単量体などの低分子量不純物など)を除去し、精製された重合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路を有する素子などの精密部品を形成するための重合体(レジストなど)には、不純物の含有量を低減することが要求されている。不純物を除去する方法として、重合体溶液を貧溶媒に添加する方法、または重合体溶液に貧溶媒を添加する方法により、重合体を析出させ、析出した重合体と溶媒とを濾別する方法が知られている。この方法では、貧溶媒として、高分子量体は析出させ、不純物は溶解する溶媒が使用されている。しかし、この方法では、重合体中に残存する単量体を未だ十分に除去できない。
【0003】
特開2003−020312号公報(特許文献1)には、酸の作用によりアルカリ可溶性となるフォトレジスト用高分子化合物の溶液を、口径6mmφ以下のノズルから貧溶媒中に供給して沈殿又は再沈殿させることにより、体積平均粒子径が20〜300μmの範囲にあり、且つ粒子径10〜500μmの粒子が全粒子の90体積%以上を占める粒子状フォトレジスト用高分子化合物を製造することが記載されている。また、この文献には、粒子状ポリマー中のモノマー含有量が、好ましくは0.7重量%以下であること、実施例では0.3重量%であったことも記載されている。
【0004】
特開2006−274276号公報(特許文献2)には、ラクトン骨格を含む単量体(a)と、酸により脱離してアルカリ可溶性となる基を含む単量体(b)と、ヒドロキシル基を有する脂環式骨格を含む単量体(c)とを含む単量体混合物を滴下重合し、生成したポリマーを、貧溶媒として混合溶媒を用いて沈殿又は再沈殿させること、沈殿精製の後、ポリマーを有機溶媒に再溶解して調製したポリマー溶液を濃縮し、低沸点溶媒を除去することが開示されている。この文献の実施例には、貧溶媒としてヘプタンと酢酸エチルとの混合溶媒を用いるとともに、ヘプタンで繰り返し洗浄することにより、金属成分の含有量が少なく、残存モノマー含有量1600ppmのポリマーを得たことも記載されている。
【0005】
特開2005−320444号公報(特許文献3)には、単量体を溶剤中で溶液重合して重合体溶液を生成させ、全溶媒のSP値が30〜35[MPa1/2]の条件で、再沈殿溶媒(水、水とメタノールとの混合溶媒など)に前記重合体溶液を滴下して混合し、重合体を析出させ、レジスト用重合体を製造することが提案されている。この文献には、乱流状態の再沈殿溶媒に重合体溶液を滴下し、重合体中に残存する単量体及び溶媒を効率よく除去できること、上記の方法で重合体を析出させた後、回収した重合体をメタノール中で加熱して撹拌し、長時間に亘り真空乾燥することにより単量体の残存量が350ppmの重合体粉末を得たことも記載されている。
【0006】
しかし、これらの方法では、重合体中に残存する単量体を低減させるためには、精製工程又は除去工程を繰り返し又は長時間に亘り行う必要があり、簡便な方法で重合体中に残存する単量体を低減できない。そのため、技術の進展に伴い、不純物(残存する単量体、金属など)含有量をさらに低減した高分子が要求されているものの、このような要求に応じることができない。すなわち、再沈条件を最適化しただけでは限界がある。また、再沈工程を繰り返すと、生産性を低下させるとともにコストが上昇し、工業的に不利である。さらに、ラクトン環、ヒドロキシル基などの極性基を含む単量体を重合すると、前記再沈法を利用しても、残存する単量体を重合体から効率よく除去することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−020312号公報(特許請求の範囲、段落[0041]、実施例)
【特許文献2】特開2006−274276号公報(特許請求の範囲、実施例8)
【特許文献3】特開2005−320444号公報(特許請求の範囲、段落[0056][0063]、実施例2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、簡便な方法で重合体中の不純物を有効に除去できる重合体の製造方法(又は精製方法)を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、極性基を有する単量体を重合した重合体であっても、再沈分離工程を繰り返すことなく、工業的に有利に精製できる重合体の製造方法(又は精製方法)を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、有機溶媒に対する溶解性を改善できる重合体の製造方法(又は精製方法)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、超音波を印加した条件で重合体溶液(高分子溶液)を貧溶媒に滴下すると、再沈分離工程を繰り返すことなく、不純物である残留モノマー(若しくは低分子量成分)を大きく低減できることを見いだし、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の方法では、不純物を含む重合体と有機溶媒とを含む重合体溶液を、前記重合体に対して貧溶媒である沈殿溶媒(又は再沈殿溶媒)と接触させて重合体を析出又は沈殿させ、析出又は沈殿した重合体を回収して重合体を製造する。この方法において、本発明では、超音波の作用下で重合体溶液と沈殿溶媒とを接触させる。
【0013】
なお、沈殿溶媒(又は再沈殿溶媒)としては、前記不純物に対して良溶媒である溶媒が使用される。前記方法において、沈殿溶媒(又は再沈殿溶媒)に重合体溶液を滴下しながら超音波を作用させ、重合体を析出又は沈殿させてもよい。また、析出又は沈殿した重合体を回収して乾燥し、粉末状の形態で重合体を得てもよい。前記超音波の周波数は、例えば、15kHz〜10GHz程度であってもよい。
【0014】
さらに、重合体の種類は特に制限されないが、悪影響を及ぼす不純物を含む重合体、例えば、残存するビニル系単量体を不純物として含むレジスト(感光性樹脂組成物)の重合体であってもよい。重合体は、(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体などであってもよく、多環式脂肪族炭化水素環を有し、酸の作用によりアルカリ可溶性となる共重合体であってもよい。また、重合体は、ラクトン環を有する脂環式(メタ)アクリル系単量体、及び酸素含有極性基を有する脂環式(メタ)アクリル系単量体から選択された少なくとも1つの単量体を含む単量体混合物の共重合体であってもよく、前記酸素含有極性基は、ヒドロキシル基、オキソ基及びカルボキシル基から選択された少なくとも1つの極性基であってもよい。さらに、重合体は、酸の作用により解離してカルボキシル基を生成可能な橋架け環式(メタ)アクリル系単量体(脂肪族橋架け環式(メタ)アクリル系単量体)と、ラクトン環を有する橋架け環式(メタ)アクリル系単量体(脂肪族橋架け環式(メタ)アクリル系単量体)と、ヒドロキシル基を有する橋架け環式(メタ)アクリル系単量体(脂肪族橋架け環式(メタ)アクリル系単量体)との共重合体であってもよい。なお、前記のように、重合体としては、(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体を用いてもよく、沈殿溶媒(又は再沈殿溶媒)として、炭化水素系溶媒と、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒及びアルコール系溶媒から選択された少なくとも一種の溶媒とを含む混合溶媒を用いてもよい。
【0015】
さらに、重合体は、体積平均粒子径0.1〜50μm程度の重合体粒子として析出させてもよく、重合体の形状は、球状又は楕円体状であってもよい。なお、回収し、乾燥した後の重合体粒子は、析出した重合体の形態に対応している場合が多い。
【0016】
本発明の方法では、不純物(又は低分子量成分)の残存量を低減でき、例えば、不純物の含有量が1700ppm以下の重合体を製造することができる。そのため、本発明は、前記方法で得られた重合体も包含する。また、本発明は、単量体を重合した重合体(ビニル系単量体のラジカル付加重合などにより生成する重合体)において、不純物としての単量体(又は低分子量成分)の残存量を低減する方法として有用である。特に、単量体が、ラクトン環を有する脂環式(メタ)アクリル系単量体(例えば、橋架け環式(メタ)アクリル系単量体)、及びヒドロキシル基を有する脂環式(メタ)アクリル系単量体(例えば、橋架け環式(メタ)アクリル系単量体)から選択された少なくとも1つの極性基を有する単量体を含み、重合体から、前記極性基を有する単量体の残存量(又は低分子量成分)を低減するのに有用である。
【0017】
なお、本明細書中、「沈殿溶媒」とは、重合体溶液から重合体を析出又は沈殿させる溶媒を意味し、反応により生成した重合体を含む反応混合液(重合体溶液)から重合体を析出又は沈殿させる溶媒(沈殿溶媒)に限らず、反応混合液から析出又は沈殿などの精製・分離操作により重合体を分離又は単離し、この重合体を有機溶媒に溶解した重合体溶液から重合体を析出又は沈殿させる溶媒(再沈殿溶媒)も含む。本明細書でも、特に断りがない限り、「沈殿溶媒」とは、通常、再沈殿溶媒の意味で使用される。また、アクリル系単量体とメタクリル系単量体とを(メタ)アクリル系単量体と総称する。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、超音波の作用下で重合体溶液と沈殿溶媒とを接触させて重合体を析出又は沈殿させるため、簡便な方法で重合体中の不純物を有効に除去できる。特に、極性基を有する単量体(又は低分子量成分)であっても、重合体から有効に除去でき、工業的に有利に重合体を精製できる。しかも、再沈分離工程を繰り返すことなく、重合体を効率よく精製できる。さらに、得られた重合体の粉粒体は、粒子径が小さく、有機溶媒に対する溶解性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は実施例2及び比較例2で得られた重合体のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による測定結果を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明では、超音波の作用下で重合体溶液と沈殿溶媒とを接触させ、重合体から不純物を有効に除去し、精製された重合体を製造する。
【0021】
[重合体溶液]
重合体溶液は、不純物を含む重合体と、有機溶媒(重合体に対する良溶媒、すなわち、重合体を溶解する有機溶媒)とを含んでいる。重合体に含まれる不純物の種類は特に制限されないが、環境、重合体の加工、重合体を利用した加工処理(半導体の微細加工など)などに悪影響を及ぼす不純物、例えば、重合体の単量体成分(未反応の単量体など)、有機溶剤(主に重合系や精製工程での有機溶剤)、金属成分などが例示できる。
【0022】
重合体の種類は、有機溶媒に可溶であり、かつ不純物の除去・精製が必要な重合体であればよく、縮合重合体(ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネートなど)であってもよいが、付加重合体、特にビニル系単量体が残存しやすいラジカル付加重合体であるのが好ましい。中でも、溶液重合法などを利用して有機溶剤の存在下で重合すると、生成した重合体は、未反応のビニル系単量体に加えて、微量の有機溶剤を含有する。さらに、重合体は、触媒、反応装置などに起因して、不可避的に微量の金属成分を含む場合が多い。このような点から、本発明は、ビニル系単量体の付加重合により生成する重合体を製造するのに適している。
【0023】
重合体を形成するビニル系単量体としては、例えば、オレフィン系単量体(エチレン、プロピレン、ブチレンなどのα−C2−10オレフィン類など)、ジエン系単量体(ブタジエン、イソプレンなどの鎖状C4−10ジエン類、ジシクロペンタジエンなどの環状又は橋架け環式C6−12ジエン類など)、芳香族ビニル系単量体(スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドンなど)、脂肪酸ビニルエステル系単量体(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのC1−12アルカン−カルボン酸ビニルエステルなど)、(メタ)アクリル系単量体などが例示できる。(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのC1−12アルキル(メタ)アクリレート]、シクロアルキル(メタ)アクリレート[シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのC5−12シクロアルキル(メタ)アクリレート]、アリール(メタ)アクリレート[フェニル(メタ)アクリレートなどのC6−12アリール(メタ)アクリレート]、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−10アルキル(メタ)アクリレート]、グリシジル(メタ)アクリレート、N−置換アミノアルキル(メタ)アクリレート[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのN−C1−4アルキルアミノC2−4アルキル(メタ)アクリレート]などが例示できる。これらの(メタ)アクリル系単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0024】
これらのビニル系単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのビニル系単量体のうち、通常、芳香族ビニル系単量体、脂肪酸ビニルエステル系単量体、(メタ)アクリル系単量体から選択された少なくとも一種の単量体、特に少なくとも(メタ)アクリル系単量体が好ましい。
【0025】
なお、微細加工に利用されるレジスト(又は感光性樹脂組成物)の重合体をラジカル付加重合体で形成すると、単量体及び有機溶剤の残存量が多くなりやすく、重合体の不純物が微細加工に悪影響を及ぼしやすい。例えば、重合体の不純物は、露光波長の透過率を低下させ、感度及び解像度を損なう。感光性レジストの重合体は、ネガ型であってもよいが、ポジ型、特に、微細加工に有利な化学増幅型レジストの重合体であるのが好ましい。この化学増幅型レジストの重合体は、通常、エキシマレーザー(KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーなど)、電子線などのエネルギー線に対する透過率(紫外線透過率)の高い脂環式炭化水素環(特に、多環式又は橋架け環式炭化水素環)を有している。
【0026】
一方、本発明では、重合体中に残存する不純物、特に、極性基(ヒドロキシル基、カルボキシル基、エーテル基、オキソ基、鎖状エステル結合又は環状エステル結合(ラクトン環)などの酸素含有極性基など)を有するビニル系単量体、中でもラクトン環を有する単量体及びヒドロキシル基を有する単量体の残存量を有意に低減するのに有用である。そのため、本発明は、ラクトン環を有する(メタ)アクリル系単量体(例えば、脂環式(メタ)アクリル系単量体)、及びヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系単量体(例えば、脂環式(メタ)アクリル系単量体)から選択された少なくとも1つの単量体を含む単量体混合物の共重合体、特にレジストの重合体の製造又は精製に適している。さらには、化学増幅型レジストの重合体(脂肪族炭化水素環を有し、かつ酸(光酸発生剤により生成する酸)の作用によりアルカリ可溶性となる共重合体の製造又は精製に適している。
【0027】
ラクトン環を有する単量体としては、γ−ブチロラクトン環、δ−バレロラクトン環、ε−カプロラクトン環などの4〜10員単環式ラクトン環を有する単量体、ラクトン環と脂肪族炭化水素環との縮合環を有する脂環式単量体などが例示でき、縮合環を有する脂環式単量体は、多環式、例えば、橋架け環式炭化水素環を有する単量体であってもよい。
【0028】
ラクトン環と脂肪族炭化水素環との縮合環を有する脂環式単量体は、例えば、下記式(1)で表すことができる。
【0029】
【化1】

【0030】
(式中、環Aはラクトン環又はラクトン環と脂環式炭化水素環との縮合環を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rはアルキル基を示し、nは0〜3の整数を示す。(メタ)アクリロイルオキシ基が環Aの非橋頭位に位置するとき、その非橋頭位にはR(水素原子又はアルキル基)が置換していてもよい。)
環Aで表されるラクトン環としては、γ−ブチロラクトン環、δ−バレロラクトン環、ε−カプロラクトン環、γ−ラウロラクトン環などの4〜10員単環式ラクトン環が例示できる。縮合環を形成する脂環式炭化水素環としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンなどのC3−10シクロアルカン環、デカヒドロナフタレン環、ジシクロペンタン環、テルペン環(ボルナン環、ノルボルナン環などの環式テルペン炭化水素環)、トリシクロデカン環(アダマンタン環など)、パーヒドロアントラセン環、テトラシクロドデカン環などのC7−14二環式乃至四環式脂肪族炭化水素環(C8−12二環式乃至四環の橋架け環式炭化水素環)が例示できる。環Aの縮合環を形成する脂環式炭化水素環は、C4−8シクロアルカン環、C6−12二環式脂肪族炭化水素環であってもよい。
【0031】
はメチル基であってもよいが、水素原子である場合が多い。Rで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基が例示できる。Rは水素原子、メチル基又はエチル基である場合が多い。
【0032】
で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基が例示できる。nが2以上の整数である場合、Rの種類は異なっていてもよい。Rはメチル基、エチル基などのC1−4アルキル基である場合が多く、nは0又は1である場合が多い。
【0033】
代表的なラクトン環を有する単量体としては、下記化合物が例示できる。
【0034】
【化2】

【0035】
(式中、MACO−は(メタ)アクリロイルオキシ基(−O−C(=O)−C(R)=CH)を示し、R,R及びnは前記に同じ。)
単環式ラクトン環を有する単量体としては、例えば、式(1-1)〜(1-4)で表される化合物[α−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−メチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−α,γ,γ−トリメチル−γ−ブチロラクトンなどのα−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン類;α−(メタ)アクリロイルオキシ−δ−バレロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−δ−メチル−δ−バレロラクトンなどのα−(メタ)アクリロイルオキシ−δ−バレロラクトン類]が例示でき、これらのラクトン環を有する(メタ)アクリル系単量体に対応するC6−9(又は7〜10員)ラクトン環を有する(メタ)アクリル系単量体などが例示できる。
【0036】
式(1-5)(1-6)で表される化合物としては、例えば、7−(メタ)アクリロイルオキシ−2−オキサビシクロ[4.1.0]オクタン−3−オン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−2−オキサビシクロ[4.1.0]オクタン−3−オンなどが例示できる。
【0037】
式(1-7)(1-8)で表される化合物としては、例えば、5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン類(=9−(メタ)アクリロイルオキシ−2−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−3−オン類)、5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル=アクリラート類(=2−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−5−オン類)などが挙げられる。
【0038】
式(1-9)(1-10)で表される化合物としては、例えば、5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.3.1.03.7]デカン−2−オン類などが挙げられる。
【0039】
式(1-11)(1-12)で表される化合物としては、例えば、7−オキソー8−オキサビシクロ〔4.3.0〕ノナン−3−イル=(メタ)アクリラートなどが挙げられる。
【0040】
式(1-13)(1-14)で表される化合物としては、例えば、8−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−5−オン、9−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−5−オンなどが挙げられる。
【0041】
式(1-15)(1-16)で表される化合物としては、例えば、1−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[4.3.1.13,8]ウンデカン−5−オン類、6−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン類などが挙げられる。
【0042】
これらのラクトン環を有する単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいラクトン環を有する単量体は、式(1-7)(1-8)で表される化合物及び式(1-15)(1-16)で表される化合物である。
【0043】
ラクトン環を有する単量体(特に、(メタ)アクリル系単量体)の使用量は、単量体全体に対して、例えば、25〜95モル%程度の範囲から選択でき、通常、25〜90モル%、好ましくは30〜80モル%(例えば、35〜75モル%)、さらに好ましくは40〜60モル%程度であってもよい。
【0044】
酸素含有極性基を有する単量体(特に、(メタ)アクリル系単量体)は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−10アルキル(メタ)アクリレート]、(メタ)アクリル酸などであってもよいが、脂環式炭化水素基を有する脂環式(メタ)アクリル系単量体、特に橋架け環式脂肪族炭化水素基を有する橋架け環式(メタ)アクリル系単量体が好ましい。
【0045】
酸素含有極性基を有する脂環式又は橋架け環式(メタ)アクリル系単量体は、例えば、下記式(2a)(2b)で表すことができる。
【0046】
【化3】

【0047】
(式中、環Aは脂環式炭化水素環を示し、Rは酸素含有極性基を示し、pは1〜3の整数、R及びRは、同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、R及びRの少なくとも一方はアルキル基であってもよく、(メタ)アクリロイルオキシ基又は(メタ)アクリロイルオキシアルキル基が、環Aの非橋頭位に位置するとき、その非橋頭位にはR(水素原子又はアルキル基)が置換していてもよく、R、R及びnは前記に同じ)
環Aで表される脂環式炭化水素環は、単環式炭化水素環(シクロペンタン環、シクロヘキサン環など)であってもよいが、テルペン環(ボルナン環、ノルボルナン環などの環式テルペン炭化水素環)、デカヒドロナフタレン環、ジシクロペンタン環、トリシクロデカン環(アダマンタン環など)、パーヒドロアントラセン環、テトラシクロドデカン環などのC7−14二環式乃至四環式脂肪族炭化水素環(C8−12二環式乃至四環の橋架け環式炭化水素環)が例示できる。好ましい環AはC9−12三環式脂肪族炭化水素環であってもよい。
【0048】
で表される酸素含有極性基は、ヒドロキシル基、オキソ基及びカルボキシル基から選択された少なくとも1つの極性基である。好ましい極性基はヒドロキシル基である。pが2以上の整数である場合、R(酸素含有極性基)の種類は異なっていてもよい。pは1又は2である場合が多い。なお、オキソ基は、前記式(1)で表されるラクトン環のオキソ基(=O)を形成しない。Rはメチル基であってもよいが、水素原子である場合が多い。
【0049】
及びRで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基などが例示できる。R及びRは、同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、R及びRの少なくとも一方はアルキル基であってもよい(R及びRが同時に水素原子であることはない)。
【0050】
で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基が例示でき、好ましいRは水素原子、メチル基又はエチル基である。Rで表されるアルキル基としては、前記と同様に、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基が例示でき、メチル基、エチル基などのC1−4アルキル基である場合が多い。nが2以上の整数である場合、Rの種類は異なっていてもよい。nは0又は1である場合が多い。
【0051】
なお、式(2b)で表される化合物のように、酸素含有極性基を有する(メタ)アクリル系単量体は、酸の作用により解離してカルボキシル基を生成可能な(メタ)アクリル系単量体であってもよい。式(2a)において(メタ)アクリロイルオキシ基は環Aの非橋頭位(メチレン炭素部位)に置換している場合が多く、式(2b)において(メタ)アクリロイルオキシアルキル基は環Aの橋頭位(メチン炭素部位)に置換している場合が多い。
【0052】
代表的な酸素含有極性基を有する橋架け環式(メタ)アクリル系単量体は、例えば、下記式(2a−1)(2b−1)で表すことができる。
【0053】
【化4】

【0054】
(R、R、R、R、R、n、p及びMACOは前記に同じ)
式(2a-1)で表される化合物としては、例えば、1−(メタ)アクリロイルオキシ−3−ヒドロキシアダマンタン、1−(メタ)アクリロイルオキシ−3−ヒドロキシ−5−メチルアダマンタン、1−(メタ)アクリロイルオキシ−3−ヒドロキシ−5,7−ジメチルアダマンタンなどのC1−4アルキル基を有していてもよい(メタ)アクリロイルオキシ−ヒドロキシアダマンタン類;1−(メタ)アクリロイルオキシ−4−オキソアダマンタンなどのC1−4アルキル基を有していてもよい(メタ)アクリロイルオキシ−オキソアダマンタン類などが挙げられる。式(2b-1)で表される化合物としては、例えば、1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルエチル)−3−ヒドロキシアダマンタン、1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−エチルエチル)−3−ヒドロキシアダマンタン、1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルイソプロピル)−3−ヒドロキシアダマンタンなどの1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−C1−4アルキルC1−4アルキル)−ヒドロキシアダマンタン;1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルエチル)−2−オキソアダマンタンなどの1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−C1−4アルキルC1−4アルキル)−オキソアダマンタンなどが例示できる。
【0055】
これらの酸素含有極性基を有する(メタ)アクリル系単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい単量体は式(2a-1)で表される化合物である。
【0056】
酸素含有極性基を有する(メタ)アクリル系単量体は、単量体全体に対して、1〜50モル%(例えば、5〜40モル%)、好ましくは10〜30モル%(例えば、10〜25モル%)程度であってもよい。ラクトン環を有する単量体と酸素含有極性基を有する単量体とのモル比は、例えば、前者/後者=95/5〜30/70程度の範囲から選択でき、通常、90/10〜50/50、好ましくは80/20〜60/40、さらに好ましくは75/25〜65/35程度であってもよい。
【0057】
酸(光酸発生剤により生成する酸)の作用によりアルカリ可溶性となる共重合体は、酸の作用により解離してカルボキシル基を生成可能な(メタ)アクリル系単量体(特に、多環式又は橋架け環式(メタ)アクリル系単量体)を共重合することにより得ることができる。酸の作用により解離してカルボキシル基を生成可能な(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、ピラニル(メタ)アクリレート、フラニル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートなどの他、下記式(3a)(3b)で表される化合物が例示できる。
【0058】
【化5】

【0059】
(式中、環Aは脂環式炭化水素環を示し、(メタ)アクリロイルオキシ基又は(メタ)アクリロイルオキシアルキル基が環Aの非橋頭位に位置するとき、その非橋頭位にはR(水素原子又はアルキル基)が置換していてもよく、R、R、R、R及びnは前記に同じ)
環Aで表される脂環式炭化水素環は、前記環Aと同様に、単環式炭化水素環(シクロペンタン環、シクロヘキサン環など)であってもよいが、テルペン環(ボルナン環、ノルボルナン環などの環式テルペン炭化水素環)、デカヒドロナフタレン環、ジシクロペンタン環、トリシクロデカン環(アダマンタン環など)、パーヒドロアントラセン環、テトラシクロドデカン環などのC7−14二環式乃至四環式脂肪族炭化水素環(C8−12二環式乃至四環の橋架け環式炭化水素環)が例示できる。環Aは、通常、C9−12三環式脂肪族炭化水素環である。
【0060】
及びRで表されるアルキル基としては、前記と同様の直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基などが例示できる。R及びRは、同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、R及びRの少なくとも一方はアルキル基である(R及びRが同時に水素原子であることはない)。
【0061】
はメチル基であってもよいが、水素原子である場合が多い。Rで表されるアルキル基としては、前記と同様の直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基が例示でき、好ましいRは水素原子、メチル基又はエチル基である。Rで表されるアルキル基としては、前記と同様の直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基(直鎖状又は分岐鎖状メチル基、エチル基などのC1−4アルキル基)が例示できる。nが2以上の整数である場合、Rの種類は異なっていてもよく、nは0又は1である場合が多い。
【0062】
なお、式(3a)において(メタ)アクリロイルオキシ基は非橋頭位(メチレン炭素部位)に置換している場合が多く、式(3b)において(メタ)アクリロイルオキシアルキル基は橋頭位(メチン炭素部位)に置換している場合が多い。
【0063】
好ましい化合物は、下記式(3a-1)(3b-1)(3a-2)で表すことができる。
【0064】
【化6】

【0065】
(式中、R、R、R、R、n及びMACOは前記に同じ)
下記式(3a-1)で表される2−アダマンチル(メタ)アクリレート類としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−エチルアダマンタン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2,5,7−トリメチルアダマンタンなどの2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−C1−4アルキルアダマンタンなどが例示できる。
【0066】
式(3b-1)で表される1−アダマンチル(メタ)アクリレート類としては、例えば、1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン、1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−エチルエチル)アダマンタン、1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルイソプロピル)アダマンタン、1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルエチル)−3,5−ジメチルアダマンタンなどの1−(1−(メタ)アクリロイルオキシ−1−C1−4アルキルC1−4アルキル)アダマンタンなどが例示できる。
【0067】
式(3a-2)で表される化合物としては、例えば、テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカン−4−イル−(メタ)アクリレート、3−((メタ)アクリロイルオキシ)−3−メチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカンなどが例示できる。
【0068】
これらの(メタ)アクリル系単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい(メタ)アクリル系単量体は、式(3a-1)(3b-1)、特に式(3b-1)で表される化合物である。
【0069】
酸により加水分解して遊離のカルボキシル基を生成する単量体の使用量は、単量体全体に対して、5〜70モル%程度の範囲から選択でき、通常、10〜50モル%、好ましくは15〜45モル%、さらに好ましくは20〜40モル%程度であってもよい。なお、単量体の総量は100モル%である。ラクトン環を有する単量体及び酸素含有極性基を有する単量体の総量と、酸により加水分解して遊離のカルボキシル基を生成する単量体とのモル比は、前者/後者=50/50〜95/5、好ましくは55/45〜90/10、さらに好ましくは60/40〜80/20(例えば、55/45〜75/25)程度であってもよい。
【0070】
[重合工程]
なお、重合体の重合方法は特に制限されず、塊状重合、懸濁重合、乳化重合などであってもよいが、有機溶媒の存在下で重合する溶液重合法でビニル系単量体を重合する場合が多い。この溶液重合において、共重合体を生成させる場合、複数の単量体はそれぞれ重合系に供給又は添加してもよいが、通常、複数の単量体の混合物として重合系に供給又は添加される。特に、有機溶媒の存在下、重合開始剤を用い、重合系に単量体を滴下して重合する滴下重合法が汎用される。
【0071】
重合系の有機溶媒(反応溶媒)としては、生成する重合体を溶解可能であればよく、例えば、炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類など)、アルコール類(エタノール、イソプロパノールなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどの鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類)、グリコールエーテル類(メチルセロソルブ(=エチレングリコールモノメチルエーテル)、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテル類など)、グリコールエーテルエステル類(エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類など)、カルビトール類、カルビトールアセテート類、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、これらの混合溶媒などが挙げられる。好ましい有機溶媒は、PGMEA、PGME、及びそれらの混合溶媒である。
【0072】
重合開始剤としては、慣用の開始剤、例えば、N,N’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートなどのアゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンなどの有機過酸化物などが例示できる。重合開始剤の使用量は、単量体全体100重量部に対して、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量部程度であってもよい。なお、重合開始剤は、単量体との混合物として重合系に供給してもよく、重合系の有機溶媒(反応溶媒)に添加してもよい。
【0073】
さらに、必要であれば、重合体の分子量、分子量分布などを制御するため、チオール類などの連鎖移動剤の存在下で単量体を重合してもよい。連鎖移動剤の使用量は単量体全体に対して0.001〜10モル%、好ましくは0.05〜5モル%程度であってもよい。
【0074】
単量体の重合は、不活性雰囲気(窒素、アルゴンなどの不活性ガスの気流)中、溶媒の還流温度以下の温度(例えば、50〜100℃程度)で行うことができる。
【0075】
[沈殿又は再沈殿工程]
生成した重合体を含む反応混合液(重合体溶液又は高分子溶液)は、必要により、前記良溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、PGMEA、メチルエチルケトン、酢酸エチル、乳酸エチルなど)で希釈してもよい。このような重合体溶液(反応混合液又は希釈溶液)は、通常、多量の貧溶媒である沈殿溶媒(例えば、水、メタノールなどのアルコール類など)中に添加(滴下などによる添加)又は注入し、重合体と貧溶媒との接触により重合体を析出又は沈殿させ、析出した重合体を、濾別、デカンテーション、遠心分離などの分離手段により分離し、必要によりリンス及び/又は乾燥し、重合体(粗重合体)を得ている。また、必要であれば、このような操作を繰り返して不純物含有量の少ない重合体(粗重合体)を得ている。しかし、このような方法では、不純物を十分に除去できず、重合体(粗重合体)中には未だ比較的多くの不純物が残存している。
【0076】
そこで、本発明では、前記反応混合液又は希釈溶液(重合体溶液)、好ましくは上記粗重合体(乾燥又は湿潤状態の析出又は沈殿物)と有機溶媒(前記例示の良溶媒)とを含む重合体溶液を、超音波の作用下で沈殿溶媒(再沈殿溶媒)と接触させ、重合体を析出又は沈殿させる。なお、前記反応混合液又は希釈溶液(重合体溶液)は比較的多くの未反応単量体及び有機溶媒(良溶媒)を含んでおり、上記超音波の作用下で沈殿溶媒と接触させ、重合体を析出又は沈殿させても、一回の操作で重合体から未反応単量体及び有機溶媒を高い除去効率で除去できるが、未だ不純物を十分に除去できない場合がある。そのため、本発明は、上記のように、粗重合体(乾燥又は湿潤状態の析出又は沈殿物)と有機溶媒(前記例示の良溶媒)とを含む重合体溶液に好適に適用される。
【0077】
沈殿又は再沈殿工程に供される重合体溶液の重合体の濃度は、例えば、1〜50重量%(例えば、3〜30重量%)、好ましくは5〜25重量%(例えば、5〜20重量%)、さらに好ましくは10〜20重量%程度であってもよい。
【0078】
重合体溶液の粘度は、温度20℃でB型粘度計で測定したとき、例えば、1〜500mPa・s、好ましくは3〜200mPa・s(例えば、3〜100mPa・s)、さらに好ましくは4〜75mPa・s(例えば、5〜50mPa・s)程度であってもよい。
【0079】
沈殿又は再沈殿溶媒は、重合体を析出又は沈殿させ、重合体中の不純物を溶解又は分離できる貧溶媒(前記重合体に対して貧溶媒であり、かつ前記不純物に対して良溶媒である沈殿溶媒)であればよく、重合体の種類に応じて選択できる。沈殿又は再沈殿溶媒としては、例えば、水、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなど)、エステル系溶媒(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル系溶媒など)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトンなど)、炭化水素系溶媒(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶媒;芳香族炭化水素系溶媒)、ニトリル系溶媒(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、カーボネート系溶媒(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、これらの混合溶媒などが例示できる。
【0080】
なお、重合体及び沈殿又は再沈殿溶媒の種類によっては、撹拌条件下で重合体を析出させても、重合体が、粒状化せずに、塊状(例えば、餅状)の形態で析出又は沈殿し、取り扱い性が低下する場合がある。重合体を粒状体の形態で析出させ、かつ不純物を有効に除去するためには、非極性溶媒と極性溶媒とを組み合わせるのが有利である。例えば、前記レジスト用の重合体を粒状の形態で析出させ、高度に精製するためには、炭化水素系溶媒(ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒)と極性基を有する溶媒(エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒及びアルコール系溶媒から選択された少なくとも一種の極性溶媒)との混合溶媒を用いるのが有利である。このような混合溶媒としては、例えば、炭化水素系溶媒(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの直鎖状又は分岐鎖状C5−10アルカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒)とエステル系溶媒(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類など)との混合溶媒が例示できる。炭化水素系溶媒と前記極性溶媒との重量割合は、例えば、前者/後者=70/30〜98/2(例えば、75/25〜95/5)、好ましくは80/20〜95/5(例えば、85/15〜93/7)程度であってもよい。なお、極性溶媒の割合が多くなると、単量体の残存量を低減させるのに有利であるものの、低分子領域の重合体(オリゴマーなど)も除去されやすくなり、全体としての収率が低下する場合がある。
【0081】
沈殿又は再沈殿溶媒に対する重合体溶液の添加又は注入速度は、沈殿又は再沈殿溶媒の量、温度、超音波の照射条件などに応じて選択でき、例えば、沈殿又は再沈殿溶媒の量100重量部に対して、0.01〜10重量部/分(例えば、0.1〜5重量部/分)程度であってもよい。なお、重合体溶液の添加又は注入は、所定の温度、例えば、0〜50℃、好ましくは10〜40℃、さらに好ましくは15〜30℃、特に室温(例えば、20〜25℃)程度で行ってもよい。
【0082】
重合体溶液と沈殿溶媒とを超音波の作用下で接触させると、重合体中の不純物(又は低分子量成分)を高い効率で除去できる。また、析出又は沈殿した重合体を微細な粒状体の形態で得ることもできる。すなわち、通常の再沈殿操作によって析出した粒状の重合体に比べて、超音波の作用下で析出した重合体粒状体の粒径は非常に細かい。このことは、再沈殿工程での超音波振動の印加により、重合体粒子が微細化し、貧溶媒と重合体溶液との接触界面の面積が大きく増大し、より高効率で不純物(又は低分子量成分)が除去されるものと推測される。そのためか、通常の再沈殿操作及び濾過操作により得られた湿潤状態の重合体に比べて、超音波の作用下で析出した重合体粒状体をろ過分離した湿潤状態の重合体中の未反応単量体(又は低分子量成分)及び有機溶媒が大きく低減する。
【0083】
超音波は、重合体溶液と沈殿溶媒とが接触する系に作用させればよく、通常、沈殿溶媒を介して重合体溶液に超音波が印加又は作用する。すなわち、超音波を印加又は作用させた沈殿溶媒に、重合体溶液を添加又は滴下することにより、重合体を析出又は沈殿させる。好ましい方法では、重合体溶液を沈殿溶媒に滴下しながら、沈殿溶媒に超音波が印加又は作用される。
【0084】
超音波の周波数は、キャビテーションが生じる範囲、例えば、15kHz〜10GHz(例えば、20kHz〜1GHz)程度の範囲から選択でき、通常、17kHz〜1MHz(例えば、20kHz〜500kHz)、好ましくは20〜300kHz(例えば、20〜200kHz)、さらに好ましくは25〜100kHz(例えば、25〜75kHz)程度であってもよい。なお、超音波の出力は、適当に選択でき、例えば、100〜200W程度であってもよい。
【0085】
このような超音波の作用により、析出した重合体粒子の粒子サイズを小さくしてもよい。重合体粒子の体積平均粒子径は、例えば、0.1〜500μm(例えば、1〜100μm)程度であってもよい。また、重合体粒子の形状は、無定形であってもよく、通常、球状又は楕円体状であってもよい。
【0086】
[回収工程]
重合体と沈殿溶媒とを含む混合液(又は懸濁液)から析出又は沈殿した重合体を分離し回収することにより、不純物の含有量の少ない生成された重合体(又は重合体粒子)を得ることができる。この分離回収工程では、前記混合液(又は懸濁液)を濾別してもよく、前記混合液(又は懸濁液)を静置し、上澄みをデカンターにより除去し、重合体を濾別してもよい。また、濾別した重合体は洗浄又はリンスし、常圧又は減圧下、所定の温度(重合体が融着しない温度、例えば、30〜100℃程度の温度)で乾燥してもよい。この乾燥工程では、処理前の重合体中に残存していた有機溶媒を除去してもよい。このような回収・分離工程により、重合体は、通常、粉粒体(例えば、粉末状)の形態で得ることができる。この粉粒状重合体の平均粒子径及び粒子径状は、通常、前記析出した重合体粒子の平均粒子径及び粒子形状に対応している。
【0087】
このようにして得られた重合体では、1回の再沈殿操作により、不純物(単量体、有機溶媒、金属成分など)の含有量を大きく低減でき、通常、1回の再沈殿操作により、重合体の不純物(例えば、単量体)の含有量を、沈殿操作前の重合体(粗重合体)に比べて、85〜98%(例えば、90〜95%)程度も低減できる。1回の再沈殿操作による重合体の不純物の含有量は、重量基準で、例えば、1700ppm以下(例えば、1〜1500ppm)、好ましくは1300ppm以下(例えば、10〜1250ppm)、さらに好ましくは1000ppm以下(例えば、20〜800ppm)であってもよい。
【0088】
特に、本発明は、重合体に残存する不純物のうち、前記単量体、特に極性基(ヒドロキシル基、カルボキシル基、エーテル基、鎖状エステル結合又は環状エステル結合(ラクトン環)などの酸素含有極性基など)を有する単量体の残存量を低減するのに有用である。中でもラクトン環を有する単量体(ラクトン環を有する橋架け環式(メタ)アクリル系単量体など)及びヒドロキシル基を有する単量体(ヒドロキシル基を有する橋架け環式(メタ)アクリル系単量体など)の残存量を有意に低減できる。より具体的には、本発明者は、従来の沈殿操作(再沈殿操作)と超音波の作用下での沈殿操作(再沈殿操作)とでは、単量体の除去効率だけでなく、除去されやすい単量体の種類が異なることを見いだした。すなわち、沈殿操作(再沈殿操作)だけでは、重合体に残存する単量体のうち、ラクトン環を有する単量体<ヒドロキシル基を有する単量体<非極性基を有する単量体の順に除去されやすく、ラクトン環を有する単量体及びヒドロキシル基を有する単量体の除去効率を高めることができない。これに対して、本願発明では、沈殿操作前の重合体(粗重合体)に比べて、種々の単量体の除去効率を高めることができるだけでなく、ラクトン環を有する単量体及びヒドロキシル基を有する単量体の除去効率を高めることができる。例えば、1回の再沈殿操作により、従来の方法では、ラクトン環を有する単量体について、約70%であった除去率を、本発明では80〜85%程度に向上でき、ヒドロキシル基を有する単量体について、約85%であった除去率を、本発明では90〜95%程度に向上できる。
【0089】
本発明の方法により得られた重合体、例えば、1回の再沈殿操作により得られた重合体中のラクトン環を有する単量体の含有量は、重量基準で、1200ppm以下(例えば、10〜1100ppm)、好ましくは1000ppm以下(例えば、50〜900ppm)、さらに好ましくは900ppm以下(例えば、100〜900ppm)程度であってもよい。また、重合体中のヒドロキシル基を有する単量体の含有量は、重量基準で、600ppm以下(例えば、10〜550ppm)、好ましくは500ppm以下(例えば、50〜450ppm)程度であってもよい。
【0090】
本発明では、超音波の作用下での前記沈殿操作(又は再沈殿操作)を少なくとも1回行えばよく、さらに本発明の前記沈殿操作(又は再沈殿操作)を繰り返すことにより、不純物の含有量をさらに大きく低減できる。そのため、本発明は、重合体中に残存する不純物が、成形加工、重合体による微細加工などに悪影響を及ぼす種々の重合体、特にレジスト(化学増幅型レジストなど)用重合体を製造又は精製するのに適している。
【0091】
なお、本発明により精製されたレジスト(化学増幅型レジストなど)用重合体は、慣用の組成物、例えば、有機溶媒と感光剤(光酸発生剤など)とを含む感光性樹脂組成物の形態でリソグラフィによる微細加工に供される。例えば、化学増幅型レジストでは、基板に感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥して形成された感光膜には、エネルギー線(エキシマレーザー、電子線など)が所定のパターンで照射され、プリベークした後、現像することにより、所定のパターンが形成される。
【実施例】
【0092】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0093】
実施例1
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)28g、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)12gを導入し、75℃に昇温後、5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル=アクリラート(ANBL)23g、1−アクリロイルオキシ−3−ヒドロキシアダマンタン(HAA)10g、1−(1−アクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン(IAA)17gとジメチルー2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(開始剤;(株)和光純薬工業製:V−601)、PGMEA 112g及びPGME 48gの混合溶液を6時間かけて滴下した後、2時間かけて熟成して、共重合体溶液を得た。なお、上記共重合体の構造は以下の構造式で表される。
【0094】
【化7】

【0095】
上記重合体溶液中の単量体の残存量を高速液相クロマトグラフィーにより測定したところ、下表に示す結果を得た。なお、固形分換算(固体重合体中)の単量体の残存量も括弧内に併せて記載する。
【0096】
そして、超音波洗浄機(アズワン「US−3」、超音波周波数38Kw、高周波出力150W)のバスに水を入れ、このバスに再沈殿溶媒を入れたガラスビーカーを配置した。再沈殿溶媒としてn−ヘプタン246g及び酢酸エチル27gの混合溶媒を用いた。室温で、再沈殿溶媒を撹拌翼で回転数250pmで撹拌しながら、超音波洗浄機で超音波を再沈殿溶媒に印加し、超音波を印加した状態で再沈殿溶媒に重合体溶液20gを添加速度20g/分で添加し、重合体を析出させた。添加終了後、撹拌と超音波印加を停止し、スラリー混合液を静置した。析出した重合体が沈殿した後、上澄み液を廃棄した。残ったスラリーを吸引ろ過し、粒子状重合体と溶媒とを分離し、粒子状重合体を温度70℃、真空度20mmHgで15時間に亘り真空乾燥し、乾燥した粒子状重合体を得た。
【0097】
比較例1
実施例1で用いた重合体溶液20g及び再沈殿溶媒(ノルマルヘプタン246gと酢酸エチル27gとの混合溶媒)を用い、超音波を印加することなく、再沈殿溶媒を撹拌翼で撹拌しながら、再沈殿溶媒に重合体溶液を添加する以外、実施例1と同様にして、粒子状重合体を得た。
【0098】
実施例1及び比較例1で得られた粉粒状重合体中の単量体の残存量を高速液相クロマトグラフィーにより測定したところ、下表に示す結果を得た。
【0099】
【表1】

【0100】
表1から明らかなように、比較例1では、再沈前の重合体中の単量体の残存量が減少しているものの、未だ残存量が多い。これに対して、実施例1では、比較例1に比べて、単量体の残留量が著しく減少している。特に、比較例1に比べて、実施例1では、ラクトン環を有する単量体>ヒドロキシル基を有する単量体の順に除去率が高い。
【0101】
実施例2
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた重合槽にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)130部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)60部を導入し、86℃に昇温後、5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル=メタクリラート(MNBL)100部、1−メタクリロイルオキシ−3−ヒドロキシアダマンタン(HMA)40部、2−メチルー2−アダマンチルメタクリレート(2MMA)100部、PGMEA 730部及びPGME 330部との混合溶液と、ジメチルー2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(開始剤;(株)和光純薬工業製:V−601)16部、PGMEA 33部の混合溶液とを6時間かけて滴下した後、2時間かけて熟成して、共重合体溶液を得た。なお、上記共重合体の構造は以下の構造式で表される。
【0102】
【化8】

【0103】
そして、超音波洗浄機(アズワン「US−3」、超音波周波数38Kw、高周波出力150W)のバスに水を入れ、このバスに再沈殿溶媒を入れたガラスビーカーを配置した。再沈殿溶媒としてn−ヘプタン280gを用いた。室温で、再沈殿溶媒を撹拌翼で回転数250pmで撹拌しながら、超音波洗浄機で超音波を再沈殿溶媒に印加し、超音波を印加した状態で再沈殿溶媒に重合体溶液20gを添加速度20g/分で添加し、重合体を析出させた。添加終了後、撹拌と超音波印加を停止し、スラリー混合液を静置した。析出した重合体が沈殿した後、上澄み液を廃棄した。残ったスラリーを吸引ろ過し、粒子状重合体と溶媒とを分離し、粒子状重合体を温度70℃、真空度20mmHgで15時間に亘り真空乾燥し、乾燥した粒子状重合体を得た。
【0104】
比較例2
実施例2で用いた重合体溶液20g及び再沈殿溶媒(ノルマルヘプタン280g)を用い、超音波を印加することなく、再沈殿溶媒を撹拌翼で撹拌しながら、再沈殿溶媒に重合体溶液を添加する以外、実施例2と同様にして、粒子状重合体を得た。
【0105】
実施例2及び比較例2で得られた粉粒状重合体の分子量分布をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定した。そのチャートを図1に示す。なお、横軸のLog(M.W.)は分子量(M.W.)の対数値であることを示す。
【0106】
SECチャートから分かるように、比較例2に比べ実施例2の低分子量成分が低くなっている。このことは、再沈殿工程の際に超音波を照射することによって低分子量成分が除去され、より精製された重合体が得られていることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、重合体の精製、特に不純物(単量体、有機溶媒、金属成分など)の混入を回避すべき重合体(例えば、ポジ型レジスト用重合体など)から不純物を除去し、高度に精製された重合体を製造するのに有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物を含む重合体と有機溶媒とを含む重合体溶液を、前記重合体に対して貧溶媒であり、かつ前記不純物に対して良溶媒である沈殿溶媒と接触させて重合体を析出又は沈殿させ、析出又は沈殿した重合体を回収して重合体を製造する方法であって、超音波の作用下で重合体溶液と沈殿溶媒とを接触させる製造方法。
【請求項2】
沈殿溶媒に重合体溶液を滴下しながら超音波を作用させ、重合体を析出又は沈殿させ、析出又は沈殿した重合体を回収して乾燥し、粉末状の形態で重合体を得る請求項1記載の方法。
【請求項3】
周波数15kHz〜10GHzの超音波を作用させる請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
重合体が、残存するビニル系単量体を不純物として含むレジストの重合体である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
重合体が、多環式脂肪族炭化水素環を有し、酸の作用によりアルカリ可溶性となる共重合体である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
重合体が、ラクトン環を有する脂環式(メタ)アクリル系単量体、及び酸素含有極性基を有する脂環式(メタ)アクリル系単量体から選択された少なくとも1つの単量体を含む単量体混合物の共重合体であり、前記酸素含有極性基が、ヒドロキシル基、オキソ基及びカルボキシル基から選択された少なくとも1つの極性基である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
重合体が、酸の作用により解離してカルボキシル基を生成可能な橋架け環式(メタ)アクリル系単量体と、ラクトン環を有する橋架け環式(メタ)アクリル系単量体と、ヒドロキシル基を有する橋架け環式(メタ)アクリル系単量体との共重合体である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
重合体として、(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体を用い、沈殿溶媒として、炭化水素系溶媒と、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒及びアルコール系溶媒から選択された少なくとも一種の溶媒とを含む混合溶媒を用いる請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
不純物の含有量が1700ppm以下の重合体を製造する請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載に方法で得られた重合体。
【請求項11】
単量体を重合した重合体と有機溶媒とを含む重合体溶液を、前記重合体に対して貧溶媒であり、かつ前記単量体に対して良溶媒である沈殿溶媒と接触させて重合体を析出又は沈殿させ、析出又は沈殿した重合体を回収し、重合体から単量体の残存量を低減する方法であって、超音波の作用下で重合体溶液と沈殿溶媒とを接触させ、前記単量体の残存量を低減する方法。
【請求項12】
単量体が、ラクトン環を有する橋架け環式(メタ)アクリル系単量体、及びヒドロキシル基を有する橋架け環式(メタ)アクリル系単量体から選択された少なくとも1つの極性基を有する単量体を含み、重合体から、前記極性基を有する単量体の残存量を低減する請求項11記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−57025(P2013−57025A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196911(P2011−196911)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】