説明

重合性ビフェニル化合物

【課題】 本発明が解決しようとする課題は、重合性の液晶組成物を構成した場合他の液晶化合物と優れた溶解性を有し、前記重合性の液晶組成物を硬化させた場合に優れた耐熱性及び機械強度を示す重合性化合物を提供することである。
【解決手段】
【化1】


で表わされる重合性化合物を提供し、当該化合物を構成部材とする液晶組成物、更に、当該液晶組成物を用いた光学異方体、又は液晶デバイスを提供する。本願発明の重合性化合物は、他の液晶化合物との優れた溶解性を有することから重合性組成物の構成部材として有用である。又、本願発明の重合性化合物を含有する重合性成物は、液晶相温度範囲が広く当該重合性組成物を用いた光学異方体は、耐熱性が高く、偏向板、位相差板等の用途に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合性ビフェニル化合物、及び当該化合物を含有する液晶組成物、さらに当該液晶組成物の硬化物である光学異方体又は液晶デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化社会の進展に伴い液晶ディスプレイに必須な偏向板、位相差板などに用いられる光学補償フィルムの重要性は益々高まっており、耐久性が高く、高機能化が求められる光学補償フィルムには重合性の液晶組成物を重合させる例が報告されている。光学補償フィルム等に用いる光学異方体は光学特性だけでなく化合物の重合速度、溶解性、融点、ガラス転移点、重合物の透明性、機械的強度、表面硬度及び耐熱性なども重要な因子となる。更に液晶媒体に重合性化合物を添加して表示特性を向上させる例が報告されている。
【0003】
重合性の液晶組成物を構成する化合物として従来は、1,4−フェニレン基をエステル結合によって連結した構造を有する化合物(特許文献1参照)や、フルオレン基を有する化合物(特許文献2参照)が提案されている。しかしながら、当該引用文献記載の重合性化合物は溶解性が低い等の問題があった。一方、溶解性を向上させるために構造を非対称とした重合性化合物が開示されており(特許文献3参照)、従来の重合性化合物と比較して溶解性の点で改善がなされているものの十分でなく、また耐熱性や機械強度が低い等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平10−513457号公報
【特許文献2】特開2005−60373公報
【特許文献3】特表平2001−527570公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、重合性の液晶組成物を構成した場合他の液晶化合物と優れた溶解性を有し、前記重合性の液晶組成物を硬化させた場合に優れた耐熱性及び機械強度を示す重合性化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは重合性化合物における種々の置換基の検討を行った結果、特定の構造を有する重合性化合物が前述の課題を解決できることを見出し本願発明を完成するに至った。
【0007】
本願発明は、一般式(I)
【0008】
【化1】

【0009】
(ただし、Rはお互い独立して以下の式(R-1)から式(R-15)
【0010】
【化2】

【0011】
の何れかを表わし、X、X、X、X、X、X、X、及びXは、水素原子、又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン、シアノ基、又はニトロ基を表わし、S及びSは、酸素原子同士が直接結合しないものとしてメチレン基が酸素原子、−COO−、−OCO−、−OCOO−に置き換えられても良い炭素数2〜12のアルキレン基、又は単結合を表わし、Lは、―CH=CH−COO−、又は―CCOO−を表わし、L及びLはお互い独立して、単結合、−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−C−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOOCH−、−CHOCOO−、−CO−NR11−、−NR11−CO−、−SCH−、−CHS−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COOC−、−OCOC−、−COCO−、−CCOO−、−OCOCH−、−CHCOO−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF−、−CFO−、−OCF−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−又は−C≡C−を表わし(式中、R11は炭素原子1〜4のアルキル基を表す。)、Mは、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表わし、Mは無置換であるか又は基中の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、シアノ基、又はニトロ基に置換されていても良く、Zは1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−シクロヘキシレン基、ナフタレン−2,3−ジイル基、ナフタレン−1,2−ジイル基、ナフタレン−1,8−ジイル基、1,2,4,5−ベンゼンテトライル基、1,4,5,8−ナフタレンテトライル基、又は
【0012】
【化3】

【0013】
を表わし、Zは無置換であるか又は基中の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、シアノ基、又はニトロ基に置換されていても良く、mは0、1及び2を表し、nは2及び4を表わす。mが2を表す場合、2個存在するM及びLは同一であっても異なっていても良く、nが2及び4を表す場合、2個、あるいは4個存在するR、M、X、X、L、L、L、S、S、及びmは同一であっても異なっていても良い。)で表わされる重合性化合物更に、当該液晶組成物を用いた光学異方体、又は液晶デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本願発明の重合性化合物は、他の液晶化合物との優れた溶解性を有することから重合性組成物の構成部材として有用である。又、本願発明の重合性化合物を含有する重合性成物は、液晶相温度範囲が広く当該重合性組成物を用いた光学異方体は、耐熱性が高く、偏向板、位相差板等の用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一般式(I)において、Rは重合性基を表すが、重合性基の具体的な例としては、下記に示す構造が挙げられる。
【0016】
【化4】

【0017】
これらの重合基はラジカル重合、ラジカル付加重合、カチオン重合、及びアニオン重合により硬化する。特に重合方法として紫外線重合を行う場合には、式(R−1)、式(R−2)、式(R−4)、式(R−5)、式(R−7)、式(R−11)、式(R−13)又は式(R−15)が好ましく、式(R−1)、式(R−2)、式(R−7)、式(R−11)又は式(R−13)がより好ましく、式(R−1)、式(R−2)がより好ましい。
【0018】
及びSはお互い独立してスペーサー基又は単結合を表すが、スペーサー基としては、炭素数2〜10のアルキレン基又は単結合が好ましく、該アルキレン基は酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子、−COO−、−OCO−、−OCOO−に置き換えられても良い。
【0019】
は、―CH=CH−COO−、又は―CCOO−を表わし、大きな吸光度を要求される場合には、ビフェニル骨格と共役した炭素炭素二重結合を持ち、π電子の共役を広くする―CH=CH−COO−が更に好ましく、L、Lはお互い独立して、単結合、−O−、−OCH−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−OCOOCH−、−CHOCOO−、−CH=CH−COO−、−OOC−CH=CH−、−COOC−、−OCOC−、−COCO−、−CCOO−、−CFO−が好ましく、安価に製造、液晶配向性の観点から、単結合、―COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−又は−O−がより好ましい。
【0020】
は、1,4−フェニレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基が好ましい。
【0021】
Zは1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−シクロヘキシレン基、ナフタレン−2,3−ジイル基、1,2,4,5−ベンゼンテトライル基、1,4,5,8−ナフタレンテトライル基が更に好ましく、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−シクロヘキシレン基、ナフタレン−2,3−ジイル基、1,2,4,5−ベンゼンテトライル基が好ましく、1,2−フェニレン基1,2−シクロヘキシレン基、ナフタレン−2,3−ジイル基、1,2,4,5−ベンゼンテトライル基が、液晶組成物中でお互いの重合性基が近傍にあるため、重合が促進され易く特に好ましい。
【0022】
mは0及び1が好ましく、nは2及び4を表わす。nが2及び4を表す場合、2個、あるいは4個存在するM、X、X、L、L、L、S、S、m及びRは同一であっても異なっていても良い。
【0023】
一般式(I)で表される化合物は、より具体的には、下記の一般式(I-1)〜一般式(I-23)で表される化合物が好ましい。
【0024】
【化5】

【0025】
【化6】

【0026】
【化7】

【0027】
【化8】

【0028】
(式中、p及びqは、0〜12の整数を表すが、0の場合は芳香環に結合している酸素原子は除去する。)
本発明の化合物は以下に記載する合成方法で合成することができる。
(製法1) 一般式(I-1)で表される化合物の製造
4-ブロモ-4’-ヒドロキシビフェニルとアクリル酸ターシャリーブチルとのパラジウム触媒による溝呂木−ヘック反応により、ビフェニル誘導体(S-1)を得て、更に塩化アクリロイルとのエステル化反応により、アクリロイル基を有するビフェニル誘導体(S-2)を得る。更にトリフルオロ酢酸により、ターシャリーブチル基を脱離させてカルボン酸基に変換したビフェニル誘導体(S-3)を得る。
【0029】
【化9】

【0030】
次いで1,2-ヒドロキシベンゼンと6-クロロヘキサノールとを炭酸カリウム等の塩基存在下でエーテル化反応させて水酸基を有する化合物(S-4)を得る。更に(S-3)と(S-4)とをジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたエステル化反応により目的化合物(I-1)を得ることができる。
【0031】
【化10】

【0032】
(製法2) 一般式(I-5)で表される化合物の製造
2-フルオロ-4-ブロモビフェニルと塩化アセチルとを塩化アルミニム(III)を用いたフリーデルクラフト反応を行い、更にギ酸と過酸化水素水による過ギ酸によりフッ素原子により置換したヒドロキシビフェニル化合物(S-6)を得る。更にアクリル酸ターシャリーブチルとのパラジウム触媒による溝呂木−ヘック反応により、ビフェニル誘導体(S-7)を得る。次いで6-クロロヘキシルアクリレートと炭酸カリウム等の塩基存在下でエーテル化反応させて、アクリロイル基を有するビフェニル誘導体(S-8)を得る。更にトリフルオロ酢酸により、ターシャリーブチル基を脱離させてカルボン酸基に変換したビフェニル誘導体(S-9)を得る。
【0033】
【化11】

【0034】
次いで、1,2-ヒドロキシベンゼンと6-クロロヘキサノールとのエーテル化反応により得られる(S-4)と(S-9)とをジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたエステル化反応により目的化合物(I-5)を得ることができる。
【0035】
【化12】

【0036】
(製法3) 一般式(I-9)で表される化合物の製造
水酸基を有するビフェニル誘導体(S-1)にパラジウムカーボンを用いた接触水素還元により、ビフェニル誘導体(S-10)を得る。更に塩化アクリロイルとのエステル化反応により、アクリロイル基を有するビフェニル誘導体(S-11)を得る。更にトリフルオロ酢酸により、ターシャリーブチル基を脱離させてカルボン酸基に変換したビフェニル誘導体(S-12)を得る。
【0037】
【化13】

【0038】
次いで、イソフタル酸と6-クロロヘキサノールとの炭酸カリウム等を用いたエステル化反応により得られる(S-13)と(S-9)とをジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたエステル化反応により目的化合物(I-5)を得ることができる。
【0039】
【化14】

ヒドロキシベンジルアルコールとクロロメチルメチルエーテルとを炭酸カリウム等の塩基存在下でエーテル化反応させてメトキシメチルエーテル保護(MOM保護)した化合物(S-14)を得る。次いで、プロトカテク酸ブチルエステルとの光延反応を利用したエーテル化、更に、塩酸による脱メトキシメチルエーテル基によりフェノール性水酸基を2つ有する化合物(S-15)を得る。
【0040】
【化15】

【0041】
【化16】

【0042】
(製法5) 一般式(I-21)で表される化合物の製造
3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(商品名EOXA,東亜合成社製)と1-ブロモ-3-クロロプロパンとを水酸化ナトリウム等の塩基の存在下でエーテル化反応させ、オキセタン誘導体(S-18)を得る。次いで、4-ブロモ-4'-ヒドロキシビフェニルとを炭酸カリウム等の塩基存在下でエーテル化反応させて、オキセタン基を有するビフェニル誘導体(S-19)を得る。
【0043】
【化17】

【0044】
【化18】

【0045】
本願発明の化合物は、ネマチック液晶、スメクチック液晶、キラルネマチック、キラルスメクチック、及びコレステリック液晶組成物に使用できる。本願発明の液晶組成物は、本願発明の一般式(I)で表される化合物を一種以上用いる以外に、任意の範囲で他の重合性化合物を添加しても構わない。本願発明の重合性液晶組成物中に含まれる重合性液晶化合物としては、重合性官能基としてアクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基を有するものが特に好ましい。更に重合性液晶化合物としては、重合性官能基を分子内に2つ以上持つものが好ましい。また、本願発明の液晶組成物がコレステリック液晶の場合は、キラル化合物の添加が好ましい。更に重合性基を有しない液晶組成物に添加しても構わなく、特に高分子安定化液晶デバイスに有用な材料である。
【0046】
本願発明以外の重合性化合物の具体例としては、一般式(I)で表される化合物を含有する以外に制限はないが、組み合わせて使用する重合性液晶化合物としては、化合物中にアクリロイルオキシ基(R-1)又はメタアクリロイルオキシ基(R-2)を有するものが好ましく、重合性官能基を分子内に2つ以上持つものがより好ましい。
【0047】
組み合わせて使用する重合性液晶化合物として具体的には一般式(III)
【0048】
【化19】

【0049】
ただし、式中Aは、H、F、Cl、CN、SCN、OCF、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基であり、酸素原子同士が直接結合しないものとしてメチレン基が酸素原子、硫黄原子、−CO−、―COO−、−OCO−、−OCOO、−CH=CH−、−C≡C−で置換されて良く、又は−L6−S−R3、又は一般式(IV)
【0050】
【化20】

【0051】
であり、R2、R、R、及びRは、重合性基であり、S、S、S及びSは、お互い独立して単結合、又は1〜12個の炭素原子を有するアルキレン基を表わし、ここで一つ以上の−CH−は、酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子、−COO−、−OCO−、−OCOO−に置き換えられても良く、L、L、L、L及びLはお互い独立して、単結合、−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、―COO−、−OCO−、−OCOOCH−、−CHOCOO−、−CO−NR11−、−NR11−CO−、−SCH−、−CHS−、―CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−COO−CH=CH−、−CH=CH−OCO−、―COOC−、―OCOC−、―COCO−、―CCOO−、−OCOCH−、−CHOCO−、―CHCOO−、―COOCH−、−CH=CH−、−C−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF−、−CFO−、−OCF−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−又は−C≡C−を表わすが(式中、R11は炭素原子1〜4のアルキル基を表わす。)、M、及びMはお互い独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表わすが、M2、及びM3はお互い独立して無置換であるか又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、又はニトロ基に置換されていても良く、lは0、1、2又は3を表わす。lが2又は3を表す場合、2個あるいは3個存在するL及びMは同一であっても異なっていても良い。
【0052】
特に好ましい化合物としては、L、L、L、L及びLはお互い独立して、単結合、−O−、―COOC−、―OCOC−、―COCO−、―CCOO−、−COO−又は−OCO−を表し、M、及びMはお互い独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基で表される化合物が好ましい。
【0053】
一般式(III)で表される化合物は具体的には、一般式(III-1)〜一般式(III-23)で表される化合物が好ましい。
【0054】
【化21】

【0055】
【化22】

【0056】
【化23】

【0057】
(式中、a及びbは、0〜12の整数を表すが、0の場合は芳香環に結合している酸素原子は除去する。)また本願発明の液晶組成物に使用する重合性液晶化合物としては、液晶温度範囲や複屈折率の調節、粘度低減を目的として一般式(IV-1)〜一般式(IV-11)を配合することが好ましい。
【0058】
【化24】

【0059】
式中、a及びbは、0〜12の整数を表わすが、aが0の場合は芳香環に結合している酸素原子は除去する。本願発明の液晶組成物がキラルスメクチック液晶あるいはコレステリック液晶の場合は、通常キラル化合物を添加するが、具体的な化合物としては一般式(V-1)〜一般式(V-8)に示される。キラル化合物の配合量は、液晶組成物に対して、0.5〜50質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましい。
【0060】
【化25】

【0061】
(式中、a及びbは、0〜12の整数を表わすが、0の場合は芳香環に結合している酸素原子は除去する。)更に本発明の液晶組成物に、重合性基を有しない液晶組成物に添加してもよく、通常の液晶デバイス、例えばSTN(スーパー・ツイステッド・ネマチック)液晶や、TN(ツイステッド・ネマチック)液晶、TFT(薄膜トランジスター)液晶等に使用されるネマチック液晶組成物、強誘電液晶組成物等が挙げられる。
【0062】
また、重合性官能基を有する化合物であって、液晶性を示さない化合物を添加することもできる。このような化合物としては、通常、この技術分野で高分子形成性モノマーあるいは高分子形成性オリゴマーとして認識されるものであれば特に制限なく使用することができるが、その添加量は組成物として液晶性を呈するように調整する必要がある。
【0063】
本発明の液晶組成物は、重合開始剤を添加しなくても熱及び光による重合が可能であるが、光重合開始剤の添加が好ましい。添加する光重合開始剤の濃度は、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜10質量%がさらに好ましく、0.4〜5質量%が特に好ましい。光重合開始剤としては、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、アシルフォスフィンオキサイド類等が挙げられる。
【0064】
また、本発明の液晶組成物には、その保存安定性を向上させるために、安定剤を添加することもできる。使用できる安定剤としては、例えば、ヒドロキノン類、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、β−ナフチルアミン類、β−ナフトール類、ニトロソ化合物等が挙げられる。安定剤を使用する場合の添加量は、液晶組成物に対して0.005〜1質量%の範囲が好ましく、0.02〜0.5質量%がさらに好ましく、0.03〜0.1質量%が特に好ましい。
【0065】
また、本発明の液晶組成物を位相差フィルム、偏光フィルムや配向膜の原料、又は印刷インキ及び塗料、保護膜等の用途に利用する場合には、その目的に応じて金属、金属錯体、染料、顔料、色素、蛍光材料、燐光材料、界面活性剤、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物等を添加することもできる。
【0066】
次に本発明の光学異方体について説明する。本発明の液晶組成物を重合させることによって製造される光学異方体は種々の用途に利用できる。例えば、本発明の重合性液晶組成物を、配向させない状態で重合させた場合、光散乱板、偏光解消板、モアレ縞防止板として利用可能である。また、本発明の重合性液晶組成物を配向させた状態において、重合させることにより製造された光学異方体は、物理的性質に光学異方性を有しており、有用である。このような光学異方体は、例えば、本発明の重合性液晶組成物表面を、布等でラビング処理した基板、もしくは有機薄膜を形成した基板表面を布等でラビング処理した基板、あるいはSiOを斜方蒸着した配向膜を有する基板上に担持させるか、基板間に挟持させた後、本発明の液晶を重合させることによって製造することができる。
【0067】
重合性液晶組成物を基板上に担持させる際の方法としては、スピンコーティング、ダイコーティング、エクストルージョンコーティング、ロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ディッピング、プリント法等を挙げることができる。またコーティングの際、重合性液晶組成物をそのまま使用してもに有機溶媒を添加しても良い。有機溶媒としては、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、セロソルブ、シクロヘキサノン、γ−ブチルラクトン、アセトキシ−2−エトキシエタン、プロピレングリコールモノメチルアセタート、N−メチルピロリジノン類を挙げることができる。これらは単独でも、組み合わせて用いても良く、その蒸気圧と重合性液晶組成物の溶解性を考慮し、適宜選択すれば良い。また、その添加量は90質量%以下が好ましい。添加した有機溶媒を揮発させる方法としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥を用いることができる。重合性液晶材料の塗布性をさらに向上させるためには、基板上にポリイミド薄膜等の中間層を設けることや、重合性液晶材料にレベリング剤を添加するのも有効である。基板上にポリイミド薄膜等の中間層を設けるのは、重合性液晶材料を重合させて得られる光学異方体と基板の密着性が良くない場合に、密着性を向上させる手段としても有効である。
【0068】
液晶組成物を基板間に挟持させる方法としては、毛細管現象を利用した注入法が挙げられる。基板間に形成された空間を減圧し、その後液晶材料を注入する手段も有効である。
【0069】
ラビング処理、あるいはSiOの斜方蒸着以外の配向処理としては、液晶材料の流動配向の利用や、電場又は磁場の利用を挙げることができる。これらの配向手段は単独で用いても、また組み合わせて用いても良い。さらに、ラビングに代わる配向処理方法として、光配向法を用いることもできる。この方法は、例えば、ポリビニルシンナメート等の分子内に光二量化反応する官能基を有する有機薄膜、光で異性化する官能基を有する有機薄膜又はポリイミド等の有機薄膜に、偏光した光、好ましくは偏光した紫外線を照射することによって、配向膜を形成するものである。この光配向法に光マスクを適用することにより配向のパターン化が容易に達成できるので、光学異方体内部の分子配向も精密に制御することが可能となる。
【0070】
基板の形状としては、平板の他に、曲面を構成部分として有していても良い。基板を構成する材料は、有機材料、無機材料を問わずに用いることができる。基板の材料となる有機材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリアリレート、ポリスルホン、トリアセチルセルロース、セルロース、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられ、また、無機材料としては、例えば、シリコン、ガラス、方解石等が挙げられる。
【0071】
これらの基板を布等でラビングすることによって適当な配向性を得られない場合、公知の方法に従ってポリイミド薄膜又はポリビニルアルコール薄膜等の有機薄膜を基板表面に形成し、これを布等でラビングしても良い。また、通常のTN液晶デバイス又はSTN液晶デバイスで使用されているプレチルト角を与えるポリイミド薄膜は、光学異方体内部の分子配向構造を更に精密に制御することができることから、特に好ましい。
【0072】
また、電場によって配向状態を制御する場合には、電極層を有する基板を使用する。この場合、電極上に前述のポリイミド薄膜等の有機薄膜を形成するのが好ましい。
【0073】
本発明の液晶組成物を重合させる方法としては、迅速な重合の進行が望ましいので、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射することによって重合させる方法が好ましい。紫外線を使用する場合、偏光光源を用いても良いし、非偏光光源を用いても良い。また、液晶組成物を2枚の基板間に挟持させて状態で重合を行う場合には、少なくとも照射面側の基板は活性エネルギー線に対して適当な透明性が与えられていなければならない。また、光照射時にマスクを用いて特定の部分のみを重合させた後、電場や磁場又は温度等の条件を変化させることにより、未重合部分の配向状態を変化させて、さらに活性エネルギー線を照射して重合させるという手段を用いても良い。また、照射時の温度は、本発明の液晶組成物の液晶状態が保持される温度範囲内であることが好ましい。特に、光重合によって光学異方体を製造しようとする場合には、意図しない熱重合の誘起を避ける意味からも可能な限り室温に近い温度、即ち、典型的には25℃での温度で重合させることが好ましい。活性エネルギー線の強度は、0.1mW/cm〜2W/cmが好ましい。強度が0.1mW/cm以下の場合、光重合を完了させるのに多大な時間が必要になり生産性が悪化してしまい、2W/cm以上の場合、重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物が劣化してしまう危険がある。
【0074】
重合によって得られた本発明の光学異方体は、初期の特性変化を軽減し、安定的な特性発現を図ることを目的として熱処理を施すこともできる。熱処理の温度は50〜250℃の範囲で、また熱処理時間は30秒〜12時間の範囲が好ましい。
【0075】
このような方法によって製造される本発明の光学異方体は、基板から剥離して単体で用いても、剥離せずに用いても良い。また、得られた光学異方体を積層しても、他の基板に貼り合わせて用いてもよい。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
(実施例1)
撹拌装置、冷却器、及び温度計を備えた反応容器に4−ブロモ−4’−ヒドロキシビフェニル 10g(40.1ミリモル)、ターシャリーブチルアクリレート 6.2g(48.2ミリモル)、トリエチルアミン 4.8g(48ミリモル)、酢酸パラジウム 530mg、ジメチルホルムアミド 300mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を100℃に加熱し反応させた。反応終了後、酢酸エチル、THFを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(1)に示す化合物 11gを得た。
【0077】
【化26】

【0078】
次いで、撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(1)に示す化合物3g(10.1ミリモル)、アクリル酸クロリド 1g(11ミリモル)、ジクロロメタン50mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を5℃以下に冷却した。次いでトリエチルアミン 1.2g(12ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、20℃以下で3時間反応させた。反応終了後、ジクロロメタンを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(2)に示す化合物 3.6gを得た。
【0079】
【化27】

【0080】
更に撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(2)に示す化合物3.6gをジクロロメタン 10mlに溶解させた後、トリフルオロ酢酸 10mlを滴下し、室温で30分攪拌した。反応終了を確認後、トルエン 200mlを加え結晶を析出させる。析出物をろ過し、式(3)に示す化合物 2.4gを得た。
【0081】
【化28】

【0082】
次いで、撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、1,2−ヒドロキシベンゼン 5.5g(10ミリモル)、炭酸カリウム 4.1g(30ミリモル)、6−クロロヘキサノール 3g(22ミリモル)、ジメチルホルムアミド 100mlを仕込み、90℃で4時間反応させる。反応終了後、酢酸エチル及び純水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(4)に示す化合物 2.5gを得た。
【0083】
【化29】

【0084】
次いで、上記式(4)に示す化合物 1g(3.4ミリモル)及び上記式(3)に示す化合物 2g(6.8ミリモル)、ジメチルアミノピリジン 90mg、ジクロロメタン 30mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち。窒素ガスの雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド 940mg(7.5ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し5時間反応させた。反応液をろ過した後、ろ液にジクロロメタン 50mlを加え、10%塩酸水溶液で洗浄し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い、ジクロロメタン/メタノールによる再結晶により式(5)に示す目的の化合物 1.2gを得た。この化合物は、99℃から131℃以上まで幅広い温度で液晶相を示した。
【0085】
【化30】

【0086】
(物性値)
H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:1.48−1.60(m,8H),1.72−1.77(m,4H),1.82−1.89(m,4H),4.00(t,4H),4.29(t,4H),6.02(d,2H),6.31−6.38(m,2H),6.44−6.50(m,2H),6.66(d,2H),6.89(s,4H),7.20−7.29(m,6H),7.59−7.62(m,10H),7.76(d,2H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:25.9,28.8,29.3,64.8,69.0,118.0,120.9,121.8,126.8,127.3,127.6,128.4,130.7,132.7,142.3,143.8,158.5,165.9,166.8
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1760,1652−1622,809 cm−1
融点:99℃
(実施例2)
撹拌装置、冷却器、及び温度計を備えた反応容器に塩化アルミニウム(III)を12.8g(96ミリモル)、ジクロロメタン 100mlを加え攪拌した。次いで塩化アセチル 8.4g(110ミリモル)を90分かけてゆっくり滴下し、更に4−ブロモ−2−フルオロビフェニル 20g(80ミリモル)のジクロロメタン溶液80mlを2時間かけてゆっくり滴下した。滴下終了後、更に2時間攪拌し、反応を終了させた。反応液を500mlの氷水にゆっくり注ぎ、ジクロロメタンで抽出し、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、乾燥を行いアセチル基を導入した化合物を23g得た。次いで、撹拌装置、冷却器、及び温度計を備えた反応容器にアセチル基を導入した化合物 23g、ギ酸 300mlを仕込み、34.5%の過酸化水素水 20mlを加え、加熱還流を6時間行った。反応終了後、10%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液 450mlを加え、過酸化物を分解した。析出した固体をろ過し酢酸エチルで溶解させ水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(6)に示す化合物 18gを得た。
【0087】
【化31】

【0088】
撹拌装置、冷却器、及び温度計を備えた反応容器に上記の式(6)に示す化合物 10g(37.4ミリモル)、ターシャリーブチルアクリレート 5.7g(44.8ミリモル)、トリエチルアミン 5.6g(56ミリモル)、酢酸パラジウム 410mg、ジメチルホルムアミド 300mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を100℃に加熱し反応させた。反応終了後、酢酸エチル、THFを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(7)に示す化合物 10.5gを得た。
【0089】
【化32】

【0090】
次いで、撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(7)に示す化合物 10.5g(33.4ミリモル)、アクリル酸クロリド 3.6g(40ミリモル)、ジクロロメタン100mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を5℃以下に冷却した。次いでトリエチルアミン 4g(40ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、20℃以下で3時間反応させた。反応終了後、ジクロロメタンを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い、アクリル基を有する化合物 10.5gを得た。
【0091】
更に撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、アクリル基を有する化合物 10.5gをジクロロメタン 20mlに溶解させた後、トリフルオロ酢酸 30mlを滴下し、室温で30分攪拌した。反応終了を確認後、トルエンを加え結晶を析出させる。析出物をろ過し、式(8)に示す化合物 8.9gを得た。
【0092】
【化33】

【0093】
次いで、撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、1,2−ヒドロキシベンゼン 5.5g(10ミリモル)、炭酸カリウム 4.1g(30ミリモル)、3−クロロプロパノール 2.1g(22ミリモル)、ジメチルホルムアミド 100mlを仕込み、90℃で4時間反応させる。反応終了後、酢酸エチル及び純水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(9)に示す化合物 2.0gを得た。
【0094】
【化34】

【0095】
次いで、撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(8)に示す化合物 5.5g(17.6ミリモル)、式(9)に示す化合物 2g(8.8ミリモル)、ジメチルアミノピリジン 250mg、ジクロロメタン 150mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち。窒素ガスの雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド 2.7g(21ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し5時間反応させた。反応液をろ過した後、ろ液にジクロロメタン 200mlを加え、10%塩酸水溶液で洗浄し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い、ジクロロメタン/メタノールによる再結晶により式(9)に示す目的の化合物 6.1gを得た。この化合物は、144℃から153℃以上までの温度で液晶相を示した。
【0096】
【化35】

【0097】
(物性値)
H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:2.17−2.28(m,4H),4.12(t,4H),4.49(t,4H),6.03−6.18(m,2H),6.32−6.44(m,2H),6.62(d,2H),6.65(m,2H),6.94(s,4H),7.21−7.23(m,4H),7.31−7.34(m,4H),7.42−7.44(m,4H),7.56−7.58(m,2H),7.61(d,2H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:28.7,61.5,65.6,114.2,119.0,121.2,121.4,127.4,129.7,132.5,142.3,143.8,148.3,164.8,166.8
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1760,1652−1622,809cm−1
融点:144℃
(実施例3)
撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、実施例1に記載の式(1)に示す化合物 5g(16.8ミリモル)、炭酸カリウム 2.8g(20ミリモル)、3−クロロプロピルアクリレート 3g(20ミリモル)、ジメチルホルムアミド 50mlを仕込み、90℃で4時間反応させる。反応終了後、酢酸エチル及び純水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(11)に示す化合物 5.6gを得た。
【0098】
【化36】

【0099】
更に撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(11)に示す化合物 5.6gをジクロロメタン 10mlに溶解させた後、トリフルオロ酢酸 20mlを滴下し、室温で30分攪拌した。反応終了を確認後、トルエンを加えて結晶を析出させる。析出物をろ過し式(12)に示す化合物 4.5gを得た。
【0100】
【化37】

【0101】
次いで、撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(12)に示す化合物 10.5g(33.4ミリモル)、実施例1に記載の式(4)に示す化合物 5.2g(16.7ミリモル)、ジメチルアミノピリジン 400mg、ジクロロメタン 150mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち。窒素ガスの雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド 5g(40ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し5時間反応させた。反応液をろ過した後、ろ液にジクロロメタン 200mlを加え、10%塩酸水溶液で洗浄し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い、ジクロロメタン/メタノールによる再結晶により式(13)に示す目的の化合物 13gを得た。この化合物は、114℃から119℃以上までの温度で液晶相を示した。
【0102】
【化38】

【0103】
(物性値)
H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:1.45−1.60(m,8H),1.73−1.77(m,4H),1.83−1.87(m,4H),2.15−2.20(m,4H),3.99(t,4H),4.02(t,4H),4.22(t,4H) 4.36(t,4H),5.82(d,2H),6.10−6.17(m,2H),6.39−6.47(m,4H),6.89(s,4H),6.94(d,4H),7.51−7.55(m,12H),7.65(m,6H),7.67(d,2H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:25.9,28.7,28.8,29.3,61.3,64.4,64.5,69.0,113.9,114.7,117.5,120.9,126.8,127.9,128.1,128.4,130.7,132.5,132.6,142.3,144.0,148.9,158.5,165.9,166.9,
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1760,1662−1622,809 cm−1
融点:114℃
(実施例4)
撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、ピロメリット酸 5g(20ミリモル)、ヒドロキシエチルアクリレート 9.3g(80ミリモル)、ジメチルアミノピリジン 1.2g、ジクロロメタン 150mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち。窒素ガスの雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド 940mg(96ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し5時間反応させた。反応液をろ過した後、ろ液にジクロロメタン 50mlを加え、10%塩酸水溶液で洗浄し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い、式(14)に示す化合物 11gを得た。
【0104】
【化39】

【0105】
次いで、撹拌装置、冷却器、及び温度計を備えた反応容器に上記の式(14)に示す化合物 5g(7.7ミリモル)、4−ブロモ−4’−ヒドロキシビフェニル 7.6g(31ミリモル)、トリエチルアミン 6.2g(62ミリモル)、テトラブチルアンモニウムブロミド 10g(31ミリモル)、酢酸パラジウム 250mg、ジメチルホルムアミド 300mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を70℃に加熱し反応させた。反応終了後、酢酸エチル、THFを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(15)に示す化合物 7.6gを得た。
【0106】
【化40】

【0107】
撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(15)に示す化合物 5g(3.8ミリモル)、アクリル酸クロリド 1.5g(16.6ミリモル)、ジクロロメタン 50mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を5℃以下に冷却した。次いでトリエチルアミン 1.7g(16.6ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、20℃以下で3時間反応させた。反応終了後、ジクロロメタンを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(16)に示す目的の化合物 4gを得た。
【0108】
【化41】

【0109】
(物性値)
H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:4.36(m,8H),4.44(m,8H),6.02(d,4H),6.31−6.38(m,4H),6.44−6.50(m,4H),6.66(d,4H),6.89(s,8H),7.20−7.29(m,12H),7.59−7.62(m,14H),7.76(d,4H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:61.3,64.4,64.8,69.0,118.0,120.9,121.8,126.8,127.3,127.6,128.4,130.7,132.7,142.3,143.8,158.5,165.9,166.8
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1760,1652−1622,809 cm−1
(実施例5)
以下に示す組成の重合性液晶組成物(組成物1)を調製した。
【0110】
【化42】

【0111】
重合性液晶組成物は、良好な相溶安定性を有し、ネマチック液晶相を示した。この組成物に光重合開始剤 イルガキュアー907(チバスペシャリティーケミカル社製)を3%添加して重合性液晶組成物(組成物2)を調製した。この組成物2のシクロヘキサノン溶液を、ポリイミド付きガラスにスピンコートし、これに高圧水銀ランプを用いて4mW/cmの紫外線を120秒間照射したところ、組成物2が均一な配向状態を保ったまま重合し、光学異方体が得られた。この光学異方体の表面硬度(JIS−S−K−5400による)はHであった。得られた光学異方体の加熱前の位相差を100%としたとき、240℃、1時間加熱後の位相差は83%であり、位相差減少率は17%だった。
(比較例1)
以下に示す組成の重合性液晶組成物(組成物3)を調製した。
【0112】
【化43】

【0113】
重合性液晶組成物は、ネマチック液晶相を示したが、溶解性が悪く室温1時間で結晶が析出した。
(比較例2)
以下に示す組成の重合性液晶組成物(組成物4)を調製した。
【0114】
【化44】

【0115】
重合性液晶組成物は、良好な相溶安定性を有し、ネマチック液晶相を示した。この組成物に光重合開始剤 イルガキュアー907(チバスペシャリティーケミカル社製)を3%添加して重合性液晶組成物(組成物5)を調製した。この組成物5のシクロヘキサノン溶液を、ポリイミド付きガラスにスピンコートし、これに高圧水銀ランプを用いて4mW/cmの紫外線を120秒間照射したところ、組成物5が均一な配向状態を保ったまま重合し、光学異方体が得られた。この光学異方体の表面硬度(JIS−S−K−5400による)は2Bであった。得られた光学異方体の加熱前の位相差を100%としたとき、240℃、1時間加熱後の位相差は75%であり、位相差減少率は25%だった。
【0116】
このように、比較例2の組成物5は、本願発明の組成物2と比較して、作製できる光学異方体の位相差減少率が大きく、耐熱性に劣ることが明らかである。又、表面硬度も2Bと不十分なものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(ただし、Rはお互い独立して以下の式(R-1)から式(R-15)
【化2】

の何れかを表わし、X、X、X、X、X、X、X、及びXは、水素原子、又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン、シアノ基、又はニトロ基を表わし、S及びSは、酸素原子同士が直接結合しないものとしてメチレン基が酸素原子、−COO−、−OCO−、−OCOO−に置き換えられても良い炭素数2〜12のアルキレン基、又は単結合を表わし、Lは、―CH=CH−COO−、又は―CCOO−を表わし、L及びLはお互い独立して、単結合、−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−C−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOOCH−、−CHOCOO−、−CO−NR11−、−NR11−CO−、−SCH−、−CHS−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COOC−、−OCOC−、−COCO−、−CCOO−、−OCOCH−、−CHCOO−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF−、−CFO−、−OCF−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−又は−C≡C−を表わし(式中、R11は炭素原子1〜4のアルキル基を表す。)、Mは、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表わし、Mは無置換であるか又は基中の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、シアノ基、又はニトロ基に置換されていても良く、Zは1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−シクロヘキシレン基、ナフタレン−2,3−ジイル基、ナフタレン−1,2−ジイル基、ナフタレン−1,8−ジイル基、1,2,4,5−ベンゼンテトライル基、1,4,5,8−ナフタレンテトライル基、又は
【化3】

を表わし、Zは無置換であるか又は基中の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン、シアノ基、又はニトロ基に置換されていても良く、mは0、1及び2を表し、nは2及び4を表わす。mが2を表す場合、2個存在するM及びLは同一であっても異なっていても良く、nが2及び4を表す場合、2個、あるいは4個存在するR、M、X、X、L、L、L、S、S、及びmは同一であっても異なっていても良い。)で表わされる重合性化合物。
【請求項2】
一般式(I)において、L及びLはお互い独立して、−O−、−OCH−、−CHO−、―COO−、−OCO−、−C−、−C≡C−、又は単結合を表し、Mは、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基又は、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表し、Mはアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン、シアノ基又はニトロ基により置換されていても良く、Zは1,2−フェニレン基、1,2−シクロヘキシレン基、ナフタレン−2,3−ジイル基、1,2,4,5−ベンゼンテトライル基、1,4,5,8−ナフタレンテトライル基を表わし、Mはアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン、シアノ基又はニトロ基により置換されていても良く、mは0又は1を表わす請求項1記載の重合性化合物。
【請求項3】
一般式(I)において、Sは単結合、又は炭素数2〜6のアルキレン基であり、Lは単結合、又は−O−、−COO−、−OCO−であり、Zが無置換であるかアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン、又はシアノ基により置換されていても良い1,2−フェニレン基、ナフタレン−2,3−ジイル基、又は1,2,4,5−ベンゼンテトライル基を表わし、mは0を表わす、請求項1又は2記載の重合性化合物。
【請求項4】
一般式(I)において、Rがお互いに独立して式(R-1)又は式(R-2)を表す請求項1、2又は3のいずれかに記載の重合性化合物。
【請求項5】
mが0を表す請求項1、2又は4のいずれかに記載の重合性化合物。
【請求項6】
が単結合及びを表す請求項1、2、3、4又は5のいずれかに記載の重合性化合物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載される重合性化合物を含有する液晶組成物
【請求項8】
請求7記載の重合性化合物を含有する液晶組成物の重合体により構成される光学異方体
【請求項9】
請求項8記載の光学異方体を用いることを特徴とする液晶表示素子。

【公開番号】特開2010−222280(P2010−222280A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69845(P2009−69845)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】