説明

重合性フッ素表面修飾シリカ粒子及びそれを用いた活性エネルギー線硬化性組成物

【課題】少量添加でも塗膜表面に優れた防汚性を付与することができる添加剤である重合性フッ素表面修飾シリカ粒子を提供する。また、当該シリカ粒子を含有する活性エネルギー線硬化性組成物、その硬化物及びその硬化塗膜を有する物品を提供する。
【解決手段】ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖とその両末端に重合性不飽和基を有する化合物(A)と、反応性官能基(b)を有する重合性不飽和単量体(B)と、重合性不飽和基を有するシリカ粒子(C)とを必須成分として重合させて得られる表面修飾シリカ粒子(P)に、前記官能基(b)に対して反応性を有する官能基(d)及び重合性不飽和基を有する化合物(D)を反応させて得られるものであることを特徴とする重合性フッ素表面修飾シリカ粒子、該シリカ粒子を配合した活性エネルギー線硬化性組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ粒子表面に重合性不飽和基を有する含フッ素樹脂で修飾した重合性フッ素表面修飾シリカ粒子に関する。また、該シリカ粒子を用いた活性エネルギー線硬化性組成物、その硬化物及びその硬化塗膜を有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素化合物は、撥水性と撥油性とを兼ね備えており、物品の表面にコーティングすることで撥水性や撥油性を付与することができる。そのため、含フッ素化合物は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の各種フラットパネルディスプレイの表示画面の最表面に防汚性を付与する目的で利用されている。
【0003】
ここで、各種フラットパネルディスプレイの表示画面で特に問題となるのが、指紋等の汚れであり、この汚れが付着すると表示が見づらくなるという問題があった。特に、肌や指に触れる頻度が高い携帯電話、スマートフォン、タブレット型PC、カーナビゲーション等の表示画面や、各種装置の操作パネル等の表示装置そのものを操作パネルとしたタッチパネルでは、指紋等の汚れの付着防止、すなわち防汚性が必要となっている。
【0004】
各種フラットパネルディスプレイの表示画面に防汚性を付与する材料として、(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を有し、その両末端にジ(メタ)アクリロイル基を有する化合物を原料として製造したポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖、及び不飽和基を有する含フッ素ラジカル重合性樹脂が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この含フッ素ラジカル重合性樹脂は、コーティング材に添加することで、その硬化塗膜に高い防汚性を付与することができるものであった。
【0005】
一般に、コーティング材に添加剤を添加して防汚性を付与する場合、一定以上の添加量を加えないと、十分な防汚性が発揮できない。しかしながら、その添加量が多くなるほど、コーティング材本来の物性を損なわれる問題があった。上記の特許文献1記載の含フッ素ラジカル重合性樹脂もごく少量の添加では十分な防汚性が発揮できない問題があった。そこで、より少量で優れた防汚性を発揮する防汚剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2009/133770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、少量添加でも塗膜表面に優れた防汚性を付与することができる添加剤である重合性フッ素表面修飾シリカ粒子を提供することである。また、当該シリカ粒子を含有する活性エネルギー線硬化性組成物、その硬化物及びその硬化塗膜を有する物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖とその両末端に重合性不飽和基を有する化合物と、反応性官能基を有する重合性不飽和単量体と、重合性不飽和基を有するシリカ粒子とを重合させて得られる表面修飾シリカ粒子に、前記反応性官能基に対して反応性を有する官能基及び重合性不飽和基を有する化合物を反応させて得られた重合性フッ素表面修飾シリカ粒子を含有する活性エネルギー線硬化性組成物は、該組成物への重合性フッ素表面修飾シリカ粒子の添加がごく少量であっても、該組成物の硬化塗膜表面に優れた防汚性を付与できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖とその両末端に重合性不飽和基を有する化合物(A)と、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基及びカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基(b)を有する重合性不飽和単量体(B)と、重合性不飽和基を有するシリカ粒子(C)とを必須成分として重合させて得られる表面修飾シリカ粒子(P)に、前記官能基(b)に対して反応性を有し、かつ水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基及びカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基(d)及び重合性不飽和基を有する化合物(D)を反応させて得られる重合性フッ素表面修飾シリカ粒子及び該シリカ粒子を含有する活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0010】
さらに、本発明は、前記活性エネルギー線硬化性組成物を基材に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させてなる硬化物、及び前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を有する物品に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子は、優れた防汚性を付与する添加剤(防汚剤)として用いることができ、各種塗料やコーティング材に、ごく少量の添加で、その硬化塗膜に優れた防汚性を付与することができる。特に、本発明の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子は重合性不飽和基を有するため、活性エネルギー線硬化性組成物に添加することで、活性エネルギー線照射によって、当該シリカ粒子は樹脂マトリックス中に共有結合で固定化されるため、その防汚性の経時変化も少ない。
【0012】
したがって、本発明の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子は、添加剤を添加することによる各種塗料やコーティング材本来の物性の低下を抑制しつつ、優れた防汚性を付与したい場合に非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施例1で得られた重合性フッ素表面修飾シリカ粒子(1)の電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)による10万倍での観察写真である。
【図2】図2は、実施例1で原料として用いた重合性不飽和基を有するシリカ粒子の電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)による10万倍での観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子は、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖とその両末端に重合性不飽和基を有する化合物(A)と、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基及びカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基(b)を有する重合性不飽和単量体(B)と、重合性不飽和基を有するシリカ粒子(C)とを必須成分として重合させて得られる表面修飾シリカ粒子(P)に、前記官能基(b)に対して反応性を有し、かつ水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基及びカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基(d)及び重合性不飽和基を有する化合物(D)を反応させて得られるものである。
【0015】
本発明の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子の原料となるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖とその両末端に重合性不飽和基を有する化合物(A)について以下に説明する。
【0016】
前記化合物(A)が有するポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖としては、炭素原子数1〜3の2価フッ化炭素基と酸素原子が交互に連結した構造を有するものが挙げられる。炭素原子数1〜3の2価フッ化炭素基は、一種類であっても良いし複数種の混合であっても良く、具体的には、下記構造式(a1)で表されるものが挙げられる。
【0017】
【化1】

(上記構造式(a)中、Xは下記構造式(a1−1)〜(a1−5)であり、構造式(a1)中の全てのXが同一構造のものであってもよいし、また、複数の構造がランダムに又はブロック状に存在していてもよい。また、nは繰り返し単位を表す1以上の整数である。)
【0018】
【化2】

【0019】
これらの中でも特に塗膜表面の汚れの拭き取り性が良好となって防汚性に優れた塗膜が得られることから、前記構造式(a1−1)で表されるパーフルオロメチレン構造と、前記構造式(a1−2)で表されるパーフルオロエチレン構造とが共存するものがとりわけ好ましい。ここで、前記構造式(a1−1)で表されるパーフルオロメチレン構造と、前記構造式(a1−2)で表されるパーフルオロエチレン構造との存在比率は、モル比率[構造(a1−1)/構造(a1−2)]が1/10〜10/1となる割合であると防汚性が向上することから好ましい。また、前記構造式(a1)中のnの値は3〜100の範囲が好ましく、6〜70の範囲がより好ましい。
【0020】
前記化合物(A)の原料となる両末端に重合性不飽和基を導入する前の化合物としては、以下の一般式(a2−1)〜(a2−6)が挙げられる。なお、下記の各構造式中における「−PFPE−」は、上記のポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を表す。
【0021】
【化3】

【0022】
前記化合物(A)の鎖の両末端に有する重合性不飽和基は、例えば、下記構造式U−1〜U−5で示される重合性不飽和基を有するものが挙げられる。
【0023】
【化4】

【0024】
これらの重合性不飽和基の中でも特に化合物(A)自体の入手や製造の容易さ、あるいは、後述する重合性不飽和単量体(B)との重合性に優れることから、構造式U−1で表されるアクリロイルオキシ基、構造式U−2で表されるメタクリロイルオキシ基が好ましい。
【0025】
前記化合物(A)の製造方法としては、例えば、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端に水酸基を1つずつ有する化合物に対して、(メタ)アクリル酸クロライドを脱塩酸反応させて得る方法、(メタ)アクリル酸を脱水反応させて得る方法、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートをウレタン化反応させて得る方法、無水イタコン酸をエステル化反応させて得る方法;ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端にカルボキシル基を1つずつ有する化合物に対して、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルをエステル化反応させて得る方法、グリシジル(メタ)アクリレートをエステル化反応させて得る方法;ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端にイソシアネート基を1つずつ有する化合物に対して、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させて導入する方法、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドを反応させる方法が挙げられる。これらのなかでも、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖の両末端に水酸基を1つずつ有する化合物に対して、(メタ)アクリル酸クロライドを脱塩酸反応させて得る方法と、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートをウレタン化反応させて得る方法が合成上得られやすいので特に好ましい。
【0026】
なお、本発明において、「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基とアクリロイル基の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方又は両方をいう。
【0027】
前記化合物(A)のなかで、前記したアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有するものとしては、下記構造式(A−1)〜(A−13)で表されるものが挙げられる。なお、下記の各構造式中における「−PFPE−」は、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を示す。
【0028】
【化5】

【0029】
これらの中でも特に化合物(A)自体の工業的製造が容易であり、また、表面修飾シリカ粒子(P)を製造する際の重合反応も容易であることから、前記構造式(A−1)、(A−2)、(A−5)、(A−6)で表されるものが好ましい。また、耐薬品性が向上することから、前記構造式(A−2)、(A−4)、(A−12)、(A−13)が好ましい。
【0030】
次に、本発明の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子の原料となる官能基(b)を有する重合性不飽和単量体(B)について説明する。
【0031】
前記単量体(B)が有する官能基(b)は、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基及びカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1つである。これらの官能基(b)を有する重合性不飽和単量体(B)は、官能基(b)が単一の1種類のみで用いることも官能基(b)が異なる2種以上を併用することもできる。
【0032】
また、前記単量体(B)が有する重合性不飽和基は、ラジカル重合性を有する炭素−炭素不飽和二重結合を有する基が好ましく、より具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、マレイミド基等が挙げられ、これらの中でも、前記化合物(A)及び後述する重合性不飽和基を有するシリカ粒子(C)との重合が容易なことから(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0033】
前記単量体(B)の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、末端に水酸基を有するラクトン変性(メタ)アクリレート等の水酸基を有する不飽和単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチルイソシアネート、1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアネート基を有する不飽和単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する不飽和単量体;(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有する不飽和単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基を有する不飽和単量体;(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリル酸ブロマイド等のカルボン酸ハライド基を有する不飽和単量体などが挙げられる。
【0034】
次に、本発明の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子の原料となる重合性不飽和基を有するシリカ粒子(C)について説明する。
【0035】
前記シリカ粒子(C)は、その表面に重合性不飽和基を有するものである。前記重合性不飽和基としては、ラジカル重合性を有する炭素−炭素不飽和二重結合を有する基が好ましく、より具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、マレイミド基等が挙げられ、これらの中でも、前記化合物(A)及び単量体(B)との重合が容易なことから(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0036】
前記シリカ粒子(C)の表面に重合性不飽和基を導入する方法としては、シリカ粒子表面に存在するシラノールに反応する官能基と重合性不飽和基とを有するシラン化合物をシリカ粒子に反応させる方法が挙げられる。前記シラン化合物としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、シリカ粒子と前記シラン化合物との反応は、常法により行うことができる。
【0037】
さらに、前記シリカ粒子(C)は市販品としても入手することができ、例えば、日産化学工業株式会社製の「MIBK−SD」、「MIBK−SD−MS」、「MIBK−SD−L」、「MIBK−SD−ZL」;日揮触媒化成株式会社製の「DP1021」、「DP1022」、「DP1032」、「DP1037」、「DP1041」、「DP1042」、「DP1044」等が挙げられる。
【0038】
前記シリカ粒子(C)の平均粒子径としては、後述する活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の透明性を維持するために、1〜100nmの範囲が好ましく、10〜70nmの範囲がより好ましい。なお、平均粒子径は、レーザードップラー法を用いた粒度分布計(例えば、大塚電子株式会社製「ゼータ電位・粒径測定システム ELSZ−2」)を用いて測定できる。
【0039】
前記表面修飾シリカ粒子(P)を製造する際に、前記化合物(A)、単量体(B)及びシリカ粒子(C)の他に、これらと共重合し得るその他の重合性不飽和単量体を用いても構わない。このようなその他のラジカル重合性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン等の芳香族ビニル類;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類などが挙げられる。
【0040】
前記表面修飾シリカ粒子(P)を製造する方法は、前記化合物(A)、単量体(B)及びシリカ粒子(C)、さらに必要に応じてその他の重合性不飽和単量体を有機溶剤中にてラジカル重合開始剤の存在下で共重合させる方法が挙げられる。ここで用いる有機溶媒としては、ケトン類、エステル類、アミド類、スルホキシド類、エーテル類、炭化水素類、フッ素系溶媒が好ましく、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等が挙げられる。これら有機溶媒の選択は、沸点、原料又は重合体との相溶性、重合性を考慮して適宜選択される。また、前記化合物(A)は、特に有機溶媒との相溶性に優れるので、上記した有機溶媒にほぼ溶解する。
【0041】
前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化t−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化2−クロロベンゾイル、過酸化3−クロロベンゾイル、過酸化4−クロロベンゾイル、過酸化2,4−ジクロロベンゾイル、過酸化4−ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸t−ブチル、t−ブチルヒドロペルオキシド、過ギ酸t−ブチル、過酢酸t−ブチル、過安息香酸t−ブチル、過2-エチルヘキサン酸t−ブチル、過フェニル酢酸t−ブチル、過4−メトキシ酢酸t−ブチル等の過酸化物;2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスプロパン、1,1’−アゾ(メチルエチル)ジアセテート、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)硝酸塩、2,2’−アゾビスイソブタン、2,2’−アゾビスイソブチルアミド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオン酸メチル、2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスブタン、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2−(4−メチルフェニルアゾ)−2−メチルマロノジニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸、3,5−ジヒドロキシメチルフェニルアゾ−2−メチルマロノジニトリル、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、1,1’−アゾビス−1−フェニルエタン、1,1’−アゾビスクメン、4−ニトロフェニルアゾベンジルシアノ酢酸エチル、フエニルアゾジフェニルメタン、フェニルアゾトリフェニルメタン、4−ニトロトリフェニルアゾトリフェニルメタン、1,1’−アゾビス−1,2−ジフェニルエタン等のアゾ化合物が挙げられる。さらに必要に応じてラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノ−ル、チオグリセロール、エチルチオグリコ−ル酸、オクチルチオグリコ−ル酸等の連鎖移動剤を使用することもできる。
【0042】
前記表面修飾シリカ粒子(P)を製造する際の前記化合物(A)、単量体(B)及びシリカ粒子(C)の仕込み比率は、前記シリカ粒子(C)1質量部に対して、前記化合物(A)及び単量体(B)の合計量が1〜3質量部の範囲が好ましく、1.5〜2.5質量部の範囲がより好ましい。
【0043】
上記のようにして得られる表面修飾シリカ粒子(P)に、前記官能基(b)に対して反応性を有する官能基(d)及び重合性不飽和基を有する化合物(D)を反応させることにより、本発明の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子が得られる。
【0044】
前記化合物(D)が有する官能基(d)は、前記官能基(b)に対して反応性を有し、かつ水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基及びカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1種である。前記官能基(b)が水酸基である場合には、前記官能基(d)としてイソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、カルボン酸ハライド基が挙げられ、前記官能基(b)がイソシアネート基である場合には、官能基(d)として水酸基が挙げられ、前記官能基(b)がエポキシ基である場合には、官能基(d)として水酸基、カルボキシル基、酸無水物基が挙げられ、前記官能基(b)がカルボキシル基である場合には、官能基(c)として水酸基、エポキシ基が挙げられ、前記官能基(b)がカルボン酸ハライド基である場合には、官能基(d)として水酸基が挙げられる。これらは、反応に支障がない限り、複数の官能基の組み合わせとしても構わない。
【0045】
また、前記化合物(D)が有する重合性不飽和基としては、ラジカル重合性を有する炭素−炭素不飽和二重結合を有する基が好ましく、より具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、マレイミド基等が挙げられ、これらの中でも、後述する活性エネルギー線硬化性樹脂(E)や活性エネルギー線硬化性単量体(F)との重合が容易なことから(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0046】
前記化合物(D)の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、末端に水酸基を有するラクトン変性(メタ)アクリレート等の水酸基を有する不飽和単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチルイソシアネート、1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアネート基を有する不飽和単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する不飽和単量体;(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有する不飽和単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基を有する不飽和単量体;(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリル酸ブロマイド等のカルボン酸ハライド基を有する不飽和単量体などが挙げられる。また、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の水酸基及び複数の重合性不飽和基を有する不飽和単量体も用いることもできる。
【0047】
これらの中でも特に紫外線照射での重合硬化性が好ましいことから、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アクリル酸が好ましい。
【0048】
前記表面修飾シリカ粒子(P)に、前記官能基(b)に対して反応性を有する官能基(d)及び重合性不飽和基を有する化合物(D)を反応させる方法は、化合物(C)中の重合性不飽和基が重合しない条件で行えば良く、例えば、温度条件を30〜120℃の範囲に調節して反応させることが好ましい。この反応は触媒や重合禁止剤の存在下、必要により有機溶剤の存在下に行うことが好ましい。
【0049】
例えば、前記官能基(b)が水酸基であって前記官能基(c)がイソシアネート基である場合、又は、前記官能基(b)がイソシアネート基であって前記官能基(c)が水酸基である場合、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等を使用し、ウレタン化反応触媒としてジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、オクチル酸亜鉛等を使用し、反応温度は、20〜150℃の範囲、特に40〜120℃の範囲で反応させる方法が好ましい。また、前記官能基(b)がエポキシ基であって前記官能基(c)がカルボキシル基である場合、又は、前記官能基(b)がカルボキシル基であって前記官能基(c)がエポキシ基である場合は、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等を使用し、エステル化反応触媒としてトリエチルアミン等の第3級アミン類、塩化テトラメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム類、トリフェニルホスフィン等の第3級ホスフィン類、塩化テトラブチルホスホニウム等の第4級ホスホニウム類等を使用し、反応温度80〜130℃、特に100〜120℃で反応させることが好ましい。
【0050】
上記反応で用いられる有機溶媒は、ケトン類、エステル類、アミド類、スルホキシド類、エーテル類、炭化水素類、フッ素系溶媒が好ましく、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等が挙げられる。これらは、沸点、相溶性を考慮して適宜選択すればよい。
【0051】
また、前記化合物(D)の使用量は、前記表面修飾シリカ粒子(P)の原料として用いた前記単量体(B)1モルに対して、1〜1.5モルの範囲が好ましく、1〜1.3モルの範囲がより好ましい。
【0052】
また、本発明の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子中のフッ素含有率は、防汚性と他の成分との相溶性との両立を図ることができることから、2〜50質量%の範囲が好ましく、5〜40質量%の範囲がより好ましく、10〜35質量%の範囲がさらに好ましい。なお、本発明の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子中のフッ素含有率は、用いた原料の合計量に対するフッ素原子の質量比率から算出した値である。
【0053】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、本発明の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子を配合したものであるが、その主成分しては、活性エネルギー線硬化性樹脂(E)又は活性エネルギー線硬化性単量体(F)を含有する。なお、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物において、活性エネルギー線硬化性樹脂(E)と活性エネルギー線硬化性単量体(F)とは、それぞれ単独で用いてもよいが、併用しても構わない。
【0054】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂(E)は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、アクリル(メタ)アクリレート樹脂、マレイミド基を有する樹脂等が挙げられるが、透明性や低収縮性に優れることから、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。
【0055】
ここで用いるウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、脂肪族ポリイソシアネート化合物又は芳香族ポリイソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とを反応させて得られるウレタン結合と(メタ)アクリロイル基とを有する樹脂が挙げられる。
【0056】
前記脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート等が挙げられ、また、芳香族ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0057】
一方、水酸基を有するアクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのモノ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の3価のアルコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、あるいは、これらのアルコール性水酸基の一部をε−カプロラクトンで変性した水酸基を有するモノ及びジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の1官能の水酸基と3官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、あるいは、該化合物をさらにε−カプロラクトンで変性した水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート;ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物;ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレン−ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等のブロック構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物;ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等のランダム構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0058】
上記した脂肪族ポリイソシアネート化合物又は芳香族ポリイソシアネート化合物と水酸基を有するアクリレート化合物との反応は、ウレタン化触媒の存在下、常法により行うことができる。ここで使用し得るウレタン化触媒は、具体的には、ピリジン、ピロール、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミンなどのアミン類、トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィンなどのホフィン類、ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫などの有機錫化合物、オクチル酸亜鉛などの有機金属化合物が挙げられる。
【0059】
これらのウレタンアクリレート樹脂の中でも特に脂肪族ポリイソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とを反応させて得られるものが硬化塗膜の透明性に優れ、かつ、活性エネルギー線に対する感度が良好で硬化性に優れることから好ましい。
【0060】
次に、不飽和ポリエステル樹脂は、α,β−不飽和二塩基酸又はその酸無水物、芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物、及び、グリコール類の重縮合によって得られる硬化性樹脂であり、α,β−不飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸、及びこれらのエステル等が挙げられる。芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸及びこれらのエステル等が挙げられる。脂肪族あるいは脂環族飽和二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、グルタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びこれらのエステル等が挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、エチレングリコールカーボネート、2,2−ジ−(4−ヒドロキシプロポキシジフェニル)プロパン等が挙げられ、その他にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の酸化物も同様に使用できる。
【0061】
次に、エポキシビニルエステル樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂のエポキシ基に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるものが挙げられる。
【0062】
また、マレイミド基を有する樹脂としては、N−ヒドロキシエチルマレイミドとイソホロンジイソシアネートとをウレタン化して得られる2官能マレイミドウレタン化合物、マレイミド酢酸とポリテトラメチレングリコールとをエステル化して得られる2官能マレイミドエステル化合物、マレイミドカプロン酸とペンタエリスリトールのテトラエチレンオキサイド付加物とをエステル化して得られる4官能マレイミドエステル化合物、マレイミド酢酸と多価アルコール化合物とをエステル化して得られる多官能マレイミドエステル化合物等が挙げられる。これらの活性エネルギー線硬化性樹脂(E)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0063】
前記活性エネルギー線硬化性単量体(F)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、数平均分子量が150〜1000の範囲にあるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、数平均分子量が150〜1000の範囲にあるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールペンタ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族アルキル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジプロピレングルリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリスチリルエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、2−マレイミドエチル−エチルカーボネート、2−マレイミドエチル−プロピルカーボネート、N−エチル−(2−マレイミドエチル)カーバメート、N,N−ヘキサメチレンビスマレイミド、ポリプロピレングリコール−ビス(3−マレイミドプロピル)エーテル、ビス(2−マレイミドエチル)カーボネート、1,4−ジマレイミドシクロヘキサン等のマレイミド類などが挙げられる。
【0064】
これらの中でも、特に硬化塗膜の硬度に優れることから、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートが好ましい。これらの活性エネルギー線硬化性単量体(F)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0065】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物において、本発明の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子の使用量は、該組成物の硬化塗膜の透明性を十分なものとすることができることから、前記活性エネルギー線硬化性樹脂(E)及び活性エネルギー線硬化性単量体(F)の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲であることが好ましく、0.05〜5質量部の範囲であることがより好ましい。また、本発明の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子は、少量の使用量で十分な撥水撥油性、防汚性を発揮することができるが、より高い防汚性を付与したい場合は、適宜使用量を増量しても構わない。
【0066】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、基材に塗布後、活性エネルギー線を照射することで硬化塗膜とすることができる。この活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線をいう。活性エネルギー線として紫外線を照射して硬化塗膜とする場合には、該活性エネルギー線硬化性組成物中に光重合開始剤(G)を添加し、硬化性を向上することが好ましい。また、必要であればさらに光増感剤を添加して、硬化性を向上することもできる。一方、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線を用いる場合には、光重合開始剤や光増感剤を用いなくても速やかに硬化するので、特に光重合開始剤(G)や光増感剤を添加する必要はない。
【0067】
前記光重合開始剤(G)としては、分子内開裂型光重合開始剤及び水素引き抜き型光重合開始剤が挙げられる。分子内開裂型光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル等が挙げられる。
【0068】
一方、水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;ミヒラ−ケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が挙げられる。
【0069】
上記の光重合開始剤(G)の中でも、活性エネルギー線硬化性組成物中の前記活性エネルギー線硬化性樹脂(E)及び活性エネルギー線硬化性単量体(F)との相溶性に優れることから、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、及びベンゾフェノンが好ましく、特に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。これらの光重合開始剤(G)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0070】
また、前記光増感剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン類、o−トリルチオ尿素等の尿素類、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。
【0071】
これらの光重合開始剤及び光増感剤の使用量は、活性エネルギー線硬化性組成物中の不揮発成分100質量部に対し、各々0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜15質量部がより好ましく、0.3〜7質量部がさらに好ましい。
【0072】
さらに、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、用途、特性等の目的に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、粘度や屈折率の調整、あるいは、塗膜の色調の調整やその他の塗料性状や塗膜物性の調整を目的に各種の配合材料、例えば、各種有機溶剤、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油樹脂、フッ素樹脂等の各種樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、カーボン、酸化チタン、アルミナ、銅、シリカ微粒子等の各種の有機又は無機粒子、重合開始剤、重合禁止剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、防錆剤、スリップ剤、ワックス、艶調整剤、離型剤、相溶化剤、導電調整剤、顔料、染料、分散剤、分散安定剤、シリコーン系、炭化水素系界面活性剤等を併用することができる。
【0073】
上記の各配合成分中、有機溶媒は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の溶液粘度を適宜調整する上で有用であり、特に薄膜コーティングを行うためには、膜厚を調整することが容易となる。ここで使用できる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0074】
ここで有機溶媒の使用量は、用途や目的とする膜厚や粘度によって異なるが、硬化成分の全質量に対して、質量基準で、0.5〜4倍量の範囲であることが好ましい。
【0075】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、上記の通り、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線であるが、具体的なエネルギー源又は硬化装置としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等を光源とする紫外線、又は走査型、カーテン型電子線加速器による電子線等が挙げられる。
【0076】
これらの中でも特に紫外線であることが好ましく、酸素等による硬化阻害を避けるため、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で、紫外線を照射することが好ましい。また、必要に応じて熱をエネルギー源として併用し、紫外線にて硬化した後、熱処理を行ってもよい。
【0077】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の塗工方法は用途により異なるが、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、キスコーター、シャワーコーター、ホイーラーコーター、スピンコーター、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー、アプリケーター、バーコーター等を用いた塗布方法、あるいは各種金型を用いた成形方法等が挙げられる。
【0078】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜は、優れた防汚性(撥インク性、耐指紋性等)、耐擦傷性等を有するため、物品の表面に塗布・硬化することで、物品の表面に防汚性、耐擦傷性等を付与することができる。
【0079】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を用いて防汚性(撥インク性、耐指紋性等)を付与できる物品としては、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等の液晶ディスプレイ(以下、「LCD」と略記する。)の偏光板用フィルム;プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ等の各種ディスプレイ画面;タッチパネル;携帯電話等の電子端末の筐体又は画面;液晶ディスプレイ用カラーフィルター(以下、「CF」と略記する。)用透明保護膜;液晶TFTアレイ用有機絶縁膜;電子回路形成用インクジェットインク;CD、DVD、ブルーレイディスク等の光学記録媒体;インサートモールド(IMD、IMF)用転写フィルム;コピー機、プリンター等のOA機器用ゴムローラー;コピー機、スキャナー等のOA機器の読み取り部のガラス面;カメラ、ビデオカメラ、メガネ等の光学レンズ;腕時計等の時計の風防、ガラス面;自動車、鉄道車輌等の各種車輌のウインドウ;太陽電池用カバーガラス又はフィルム;化粧板等の各種建材;住宅の窓ガラス;家具等の木工材料、人工・合成皮革、家電の筐体等の各種プラスチック成形品、FRP浴槽などが挙げられる。これらの物品表面に本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を塗布し、紫外線等の活性エネルギー線を照射して硬化塗膜を形成することで、物品表面に防汚性を付与することができる。また、本発明の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子を各物品に適した各種塗料に添加し、塗布・乾燥することで、物品表面に防汚性を付与することも可能である。
【0080】
さらに、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を用いて耐擦傷性(耐スクラッチ性)及び防汚性を付与できる物品としては、LCDのバックライト部材であるプリズムシート又は拡散シート等が挙げられる。また、プリズムシート又は拡散シート用コート材に本発明の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子を添加することで、コート材の塗膜に防汚性及び耐擦傷性(耐スクラッチ性)を付与することができる。
【0081】
特に、LCD用偏光板の保護フィルム用コート材用途のうち、アンチグレアコート材として本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を用いる場合、上記した各組成のうち、シリカ微粒子、アクリル樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子等の無機又は有機微粒子を、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中の硬化成分の全質量の0.1〜0.5倍量となる割合で配合することで防眩性に優れたものとなるため好ましい。
【0082】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を、LCD用偏光板の保護フィルム用アンチグレアコート材に用いる場合、コート材を硬化させる前に凹凸の表面形状の金型に接触させた後、金型と反対側から活性エネルギー線を照射して硬化し、コート層の表面をエンボス加工して防眩性を付与する転写法にも適用できる。
【実施例】
【0083】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。なお、シリカ粒子の観察は下記の方法で行った。
【0084】
[シリカ粒子の観察]
粒子形状は、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)(日本電子社製「JSM6700」)を用いて、10万倍で観察した。シリカ粒子をメチルイソブチルケトンに分散させ、支持膜付きグリッドに滴下して乾燥後に観察を行った。
【0085】
(合成例1)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、下記式(a2−1−1)で表される両末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物20質量部、溶媒としてジイソプロピルエーテル10質量部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.006質量部及び中和剤としてトリエチルアミン3.3質量部を仕込み、空気気流下にて攪拌を開始し、フラスコ内を10℃に保ちながらメタクリル酸クロライド3.1質量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、10℃で1時間攪拌し、昇温して30℃で1時間攪拌した後、50℃に昇温して10時間攪拌することにより反応を行い、ガスクロマトグラフィー測定にてメタクリル酸クロライドの消失が確認された。次いで、溶媒としてジイソプロピルエーテル70質量部を追加した後、イオン交換水80質量部を混合して攪拌してから静置し水層を分離させて取り除く方法による洗浄を3回繰り返した。次いで、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.02質量部を添加し、脱水剤として硫酸マグネシウム8質量部を添加して1日間静置することで完全に脱水した後、脱水剤を濾別した。
【0086】
【化6】

(式中、Xはパーフルオロメチレン基及びパーフルオロエチレン基であり、1分子あたり、パーフルオロメチレン基が平均7個、パーフルオロエチレン基が平均8個存在するものである。また、GPCによる数平均分子量は1,500である。)
【0087】
次いで、減圧下で溶媒を留去することによって、下記式(A−2−1)で表されるポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖とその両末端にメタクリロイル基を有する化合物を得た。
【0088】
【化7】

(式中、Xはパーフルオロメチレン基及びパーフルオロエチレン基であり、1分子あたり、パーフルオロメチレン基が平均7個、パーフルオロエチレン基が平均8個存在するものである。)
【0089】
(実施例1)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメチルイソブチルケトン70gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら105℃に昇温した。フラスコ内を105℃に保ちながら、合成例1で得られたポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖とその両末端にメタクリロイル基を有する化合物24gと、2−ヒドロキシエチルメタクリレート46g、メタクリロイル基を有するシリカ粒子(日産化学工業株式会社製「MIBK−SD−L」;平均粒子径40nm、固形分31質量%メチルイソブチルケトン分散液)96.8g及びメチルイソブチルケトン30gを混合した溶液と、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルペルオキシー2−エチルヘキサノエート10.5gをメチルイソブチルケトン43.2gに溶解した重合開始剤溶液との3種類の滴下溶液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を105℃に保ちながら同時に2時間で滴下した。滴下終了後、105℃で5時間攪拌した後、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.0604g及び3,5−ジブチル−4−ヒドロキシトルエン0.4532gを、ウレタン化触媒としてオクチル酸スズ0.0453gを仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート50gを1時間で滴下した。滴下終了後、60℃で1時間攪拌した後、80℃に昇温して4時間攪拌することにより反応を行った結果、IRスペクトル測定によりイソシアネート基による吸収ピークの消失が確認された。得られた反応溶液を細孔0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターを使用してろ過精製した後、ろ液にメチルイソブチルケトンを加えて、重合性フッ素表面修飾シリカ粒子(1)を30質量%含有するメチルイソブチルケトン分散液を得た。
【0090】
上記で得られた重合性フッ素表面修飾シリカ粒子(1)の電子顕微鏡写真(10万倍)を図1に、原料として用いたメタクリロイル基を有するシリカ粒子の電子顕微鏡写真(10万倍)を図2に示す。これらの写真から、図1の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子(1)では、シリカ粒子表面がフッ素樹脂で覆われているのに対し、図2の原料として用いたメタクリロイル基を有するシリカ粒子では、そのような樹脂がシリカ粒子表面にないことがわかった。なお、図1及び2の写真で粒子が付着している部分は支持膜付きグリッドである。
【0091】
(比較例1)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてメチルイソブチルケトン700gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら105℃に昇温した。フラスコ内を105℃に保ちながら、合成例1で得られたポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖とその両末端にメタクリロイル基を有する化合物240g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート460g及びメチルイソブチルケトン851gを混合した溶液と、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルペルオキシー2−エチルヘキサノエート105.1gをメチルイソブチルケトン550.5gに溶解した重合開始剤溶液との3種類の滴下溶液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、フラスコ内を105℃に保ちながら同時に2時間で滴下した。滴下終了後、105℃で5時間攪拌した後、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.484g及び3,5−ジブチル−4−ヒドロキシトルエン3.631gを、ウレタン化触媒としてオクチル酸スズ0.3784gを仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート50gを1時間で滴下した。滴下終了後、60℃で1時間攪拌した後、80℃に昇温して4時間攪拌することにより反応を行った結果、IRスペクトル測定によりイソシアネート基の吸収ピークの消失が確認された。得られた反応溶液を細孔0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターを使用してろ過精製した後、ろ液にメチルイソブチルケトンを加えて、重合性フッ素表面修飾シリカ粒子(1)を30質量%含有するメチルイソブチルケトン溶液を得た。
【0092】
上記で得られた重合性フッ素表面修飾シリカ粒子(1)及び含フッ素硬化性樹脂(1)を用いて下記にしたがい活性エネルギー線硬化性組成物を調製した。
【0093】
(実施例2)
紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(DIC株式会社製「ユニディック17−806」;樹脂分80質量%の酢酸ブチル溶液)4.995g、実施例1で得られた重合性フッ素表面修飾シリカ粒子(1)の分散液0.0133g(該シリカ粒子として0.004g)、光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア184」;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)0.2g、メチルエチルケトン4.992gを混合撹拌して、重合性フッ素表面修飾シリカ粒子(1)の添加量として固形分中に0.1質量%含有する活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
【0094】
(比較例2)
実施例2で用いた重合性フッ素表面修飾シリカ粒子(1)の分散液0.0133gを比較例1で得られた含フッ素硬化性樹脂(1)の溶液0.0133g(該樹脂として0.004g)に変更した以外は実施例3と同様にして、重合性フッ素表面修飾シリカ粒子(1)の添加量として固形分中に0.1質量%含有する活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
【0095】
(比較例3)
実施例2で用いた重合性フッ素表面修飾シリカ粒子(1)の分散液0.0133gを比較例1で得られた含フッ素硬化性樹脂(1)の溶液0.0107g(該樹脂として0.0032g)及びメタクリロイル基を有するシリカ粒子(日産化学工業株式会社製「MIBK−SD−L」;平均粒子径40nm、固形分31質量%メチルイソブチルケトン分散液)0.0026g(該シリカ粒子として0.0008g)、メチルエチルケトン4.992gに変更した以外は実施例2と同様にして、含フッ素硬化性樹脂(1)及びメタクリロイル基を有するシリカ粒子の合計添加量として固形分中に0.1質量%含有する活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
【0096】
(比較例4)
紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(DIC株式会社製「ユニディック17−806」;樹脂分80質量%の酢酸ブチル溶液)5g、光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア184」;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)0.2g、メチルエチルケトン5gを混合撹拌して、添加剤を含まない活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
【0097】
上記の実施例2及び比較例2〜4で得られた活性エネルギー線硬化性組成物を用いて、下記の通り、塗工フィルムを作製し、防汚性を評価するため、水及びn−ドデカンの接触角の測定及び汚れ付着防止性の評価を行った。
【0098】
[塗工フィルムの作製]
活性エネルギー線硬化性組成物をバーコーターNo.13を用いて、厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗工した後、60℃の乾燥機に5分間入れて溶剤を揮発させた。次に、乾燥した塗膜に紫外線硬化装置(窒素雰囲気下、高圧水銀灯、紫外線照射量2kJ/m)で紫外線(UV)を照射して硬化させ、塗工フィルムを作製した。
【0099】
[水及びn−ドデカンの接触角の測定]
上記で得られた塗工フィルムの活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜表面について、接触角測定装置(協和界面科学株式会社製「MODEL CA−W150」)を用いて、水及びn−ドデカンの接触角を測定した。
【0100】
[汚れ付着防止性の評価]
塗工フィルムの塗工表面に、油性フェルトペン(寺西化学工業株式会社製マジックインキ大型黒色)で線を描き、その黒色インクの付着状態を目視で観察することで汚れ付着防止性の評価を行った。なお、評価基準は下記の通りである。
○:インクの線状のはじきが生じ、線幅がフェルトペンのペン先の幅の50%未満であったもの。
△:インクの線状のはじきが生じ、線幅がフェルトペンのペン先の幅の50%以上100%未満であったもの。
×:インクがまったくはじかずに表面にきれいに描けてしまうもの。
【0101】
上記の測定及び評価結果を表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
実施例2の結果から、本発明の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子(1)を固形分中に0.1質量%とごく少量しか含有しない活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜であっても、水及びn−ドデカンの接触角がそれぞれ94°及び44°と高く、汚れ付着防止性にも非常に優れていることが分かった。
【0104】
一方、比較例2の結果から、比較例1で製造した含フッ素硬化性樹脂(1)を固形分中に0.1質量%含有する活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜は、水及びn−ドデカンの接触角がそれぞれ80°及び39°と本発明の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子(1)を用いた実施例2より低く、汚れ付着防止性にも劣っていることが分かった。
【0105】
また、比較例3の結果から、比較例1で製造した含フッ素硬化性樹脂(1)と本発明の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子の製造原料として用いたメタクリロイル基を有するシリカ粒子とを合計量として固形分中に0.1質量%含有する活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜は、水及びn−ドデカンの接触角がそれぞれ78°及び38°と本発明の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子(1)を用いた実施例2より低く、汚れ付着防止性にも劣っていることが分かった。
【0106】
添加剤を加えなかった比較例4は、水及びn−ドデカンの接触角がそれぞれ53°及び17°と非常に低く、汚れ付着防止ができないことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖とその両末端に重合性不飽和基を有する化合物(A)と、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基及びカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基(b)を有する重合性不飽和単量体(B)と、重合性不飽和基を有するシリカ粒子(C)とを必須成分として重合させて得られる表面修飾シリカ粒子(P)に、前記官能基(b)に対して反応性を有し、かつ水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基及びカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基(d)及び重合性不飽和基を有する化合物(D)を反応させて得られるものであることを特徴とする重合性フッ素表面修飾シリカ粒子。
【請求項2】
請求項1記載の重合性フッ素表面修飾シリカ粒子、及び、活性エネルギー線硬化性樹脂(E)又は活性エネルギー線硬化性単量体(F)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
請求項2記載の活性エネルギー線硬化性組成物を、基材に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させてなることを特徴とする硬化物。
【請求項4】
請求項2記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を有することを特徴とする物品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−246389(P2012−246389A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119084(P2011−119084)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】