説明

重合性液晶組成物

【課題】 本願発明の目的は、二軸性フィルム用の材料として供される重合性液晶組成物において、紫外線照射時に不活性ガスで雰囲気を置換することなく、空気中で硬化が可能であり、得られた正面位相差の熱安定性に優れる二軸位相差フィルムを実現できる材料を提供することにある。
【解決手段】 本願発明は、重合性液晶化合物、キラル化合物、光吸収剤及び光重合開始剤を含有する重合性液晶組成物において、重合性液晶化合物として、2つの6員環を有する単官能重合性液晶化合物及び光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール化合物を含有し、光吸収剤の光吸収帯が波長280〜400nmであり、キラルネマチック相を示す重合性液晶組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、液晶ディスプレイ等の光学補償フィルム製造に使用される重合性液晶組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、特にVA液晶ディスプレイの性能向上に有用な技術として、重合性コレステリック材料を用いた二軸性位相差フィルムの利用が提案されている(特許文献1〜3参照)。この二軸性フィルムは、重合性コレステリック液晶を基板に塗布した後、偏光紫外線により重合することによって製造することができる。
二軸性位相差フィルムにおいて次のように定義される正面位相差(Re)及び厚み方向位相差(Rth)は重要な物性値であり、正面位相差(Re)は40nm以上、厚み方向位相差Rthは180nm以上を確保するのが好ましい。
【0003】
【数1】

(式中、nx、nyはそれぞれフィルム平面方向の屈折率を表し、nzは厚み方向の屈折率を表し、dは厚みをを表す。)
【0004】
【数2】

(式中、nx、nyはそれぞれフィルム平面方向の屈折率を表し、nzは厚み方向の屈折率を表し、dは厚みをを表す。)
このような二軸性位相差フィルムは例えば、二色性の光重合開始剤を使用することによって実現できる。しかし、二色性開始剤は二色性と重合開始剤の性能を合わせ持たせるために設計が難しく、材料が限られてしまうという問題があった。また、二色性開始剤に空気中(酸素存在下)での硬化を可能にするような光重合開始の性能を付与するのは極めて難しく、偏光UVの照射時に窒素などの不活性ガスで雰囲気を置換する必要があるため、製造コスト上昇、タクトタイムの増加、またプロセスマージンが狭くなるという問題を引き起こしていた。
【0005】
また、これらの物性値のうち、正面位相差の熱安定性は極めて重要である。液晶ディスプレイに応用する場合、二軸位相差フィルムをプラスチックフィルム上に形成した後に液晶セルに貼合するか、液晶セルの中に位相差フィルムを作りこむ「インセル」化することになるが、どちらにしても正面位相差の熱安定性が悪いとディスプレイの画質が経時変化してしまう。二軸位相差フィルムの正面位相差の熱安定性を向上させるには、偏光紫外線の照射量を増やして材料の硬化度を改善することが有効である。偏光紫外線の照射量を増やすには偏光紫外線の強度を上げる、もしくは照射時間を長くする必要がある。しかし、偏光紫外線の強度を上げるには、一般的に高価な偏光紫外線発生装置のコストが更にかさんでしまうという問題があった。また、照射時間を長くすると、工程時間が長くなり、生産性が低下してしまうという問題があった。以上のような背景から、工程上の工夫ではなく、材料側の工夫で、つまり、正面位相差の熱安定性が改善できる材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2005−513241号公報
【特許文献2】特表2008−505369号公報
【特許文献3】特表2008−512504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明の目的は、二軸性フィルム用の材料として供される重合性液晶組成物において、紫外線照射時に不活性ガスで雰囲気を置換することなく、空気中で硬化が可能であり、得られた正面位相差の熱安定性に優れる二軸位相差フィルムを実現できる材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の条件を満たすように開始剤と光吸収剤、及び液晶材料を選択すればよいことを見出し、本願発明の完成に至った。
本願発明は、重合性液晶化合物、キラル化合物、光吸収剤及び光重合開始剤を含有する重合性液晶組成物において、重合性液晶化合物として、2つの6員環を有する単官能重合性液晶化合物及び光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール化合物を含有し、光吸収剤の光吸収帯が波長280〜400nmであり、キラルネマチック相を示す重合性液晶組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本願発明の重合性液晶組成物は、特定の光重合開始剤と吸収剤、及び重合性液晶化合物を利用することで、二色性開始剤を用いることなく空気中において重合が可能で、作製された二軸性フィルムの正面位相差の熱安定性を改善することができる。本願発明の重合性液晶組成物はUV硬化時の雰囲気を不活性ガスで置換しなくても良いので作製工程が煩雑でなく、残存酸素の影響によって硬化度が左右されにくく、二軸性フィルム作製時のプロセスマージンが広くすることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の重合性液晶組成物に含有される光吸収剤としては、波長280〜400nmにおいて吸収帯を有するが、波長300〜390nmにおいて吸収帯を有することが更に好ましく、320〜380nmにおいて吸収帯を有することが特に好ましい。具体的な構造としては2重結合を分子内に有することが好ましい。2重結合としては、炭素-炭素2重結合、炭素-窒素2重結合が好ましい。また、分子として直線性が良いものが好ましい。この光吸収剤は、液晶性を示しても、また示さなくてもよい。
具体的には、一般式(PA)
【0011】
【化1】

(式中、X1からX4はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボキシ基、炭素原子数2〜18のアルケニル基、又はアルケニルオキシ基を表し、l及びoはそれぞれ独立して1から5の整数を表し、m及びnはそれぞれ独立して1から4の整数を表し、L1からL3はそれぞれ独立して単結合又は−CH=CH−を表すが、L1からL3の少なくとも二つは−CH=CH−を表す。)で表される化合物が好ましく、一般式(PA-a)
【0012】
【化2】

(式中、X1からX4はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボキシ基、炭素原子数2〜18のアルケニル基、又はアルケニルオキシ基を表し、l及びoはそれぞれ独立して1から5の整数を表し、m及びnはそれぞれ独立して1から4の整数を表す。)で表される化合物がより好ましく、
式(PA-1)
【0013】
【化3】

で表される化合物が特に好ましい。本化合物は360nm付近に吸収帯を有する。
光吸収剤の添加量は0.1~4%以下が好ましく、0.2~3%が更に好ましく、0.3~2%が特に好ましい。
光重合開始剤としてはベンジルジメチルケタール化合物を含有する。このような化合物として具体的には、一般式(RI-1)で表されるものが好ましい。
【0014】
【化4】

(式中、X及びXはそれぞれ独立して炭素原子数20以下のアルキル基、アリール基、アラルキル基又は芳香環を表し、p及びqはそれぞれ独立して1〜4の整数を表す。)
更に具体的には、式(RI-1a)を挙げることができる。
【0015】
【化5】

光重合開始剤としては、ベンジルジメチルケタール化合物以外に他の光重合開始剤と組み合わせて使用してよい。このような光重合開始剤としては、アシルフォスフィンオキシド化合物の「Irgacure 819」、「Darocur TPO」(以上、チバスペシャリティケミカルズ社製)、オキシムエステル化合物の「Irgacure OXE01」、「Irgacure OXE02」(以上、チバスペシャリティケミカルズ社製)、αーアミノアルキルフェノン化合物の「Irgacure 907」、「Irgacure 369」、「Irgacure 379」(以上、チバスペシャリティケミカルズ社製)を上げることができる。
【0016】
ベンジルジメチルケタール化合物以外の光重合開始剤は波長280〜400nmにおいて吸収帯を持つことが好ましく、波長300〜390nmにおいて吸収帯をもつことが更に好ましく、320〜380nmにおいて吸収帯を持つことが特に好ましい。
【0017】
以上のほかに、光の振動面によって光吸収に差のある多色性の開始剤を用いても良く、多色性の開始剤として一般的な二色性の開始剤を使用しても良いが、入手の容易性、開始剤選択肢の数の観点から、多色性の開始剤以外の、光学的に等方性の開始剤を用いることが好ましい。
重合開始剤の重合性液晶組成物中の添加量は1〜6%が好ましく、1〜5%が更に好ましく、3〜5%が特に好ましい。添加量が少ないと硬化性が悪くなり、添加量が多いと重合性液晶組成物の液晶としての性質が損なわれやすくなる。
【0018】
本願発明の液晶組成物は重合性液晶化合物を必須の構成成分とするが、その含有量は重合性液晶組成物中に40〜95%、更に好ましくは50〜80%、特に好ましくは60〜70%含有させることが好ましい。
重合性液晶化合物としては、2つの6員環を有する単官能重合性液晶化合物を必須成分とする。このような化合物としては、一般式(I)
【0019】
【化6】

【0020】
(式中、Z3は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、Z4は水素原子又はメチル基を表し、W3は単結合、-O-、-COO-又は-OCO-を表し、vは0〜18の整数を表し、D、Eはそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、隣接しないCH基が窒素で置換された1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1つ又は隣接しない2つのCH2基が酸素又は硫黄原子で置換された1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基を表すが、式中に存在する1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良く、Y6及びY7はそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、-OCH2-、-COO-、-OCO-、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CF-、-(CH24-、-CH2CH2CH2O-、-OCH2CH2CH2-、-CH=CHCH2CH2-、-CH2CH2CH=CH-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH2CH2COO-、-CH2CH2OCO-、-COO CH2CH2-又は-OCOCH2CH2-を表し、Y8は単結合、-O-、-COO-、-OCO-又は-CH=CHCOO-を表すが、W3が単結合を表す場合vは2〜18の整数を表す。)で表される化合物を含有させることが好ましい。
【0021】
一般式(I)で表される化合物は、液晶下限温度を下げる効果を有するために有用であるが、その添加量は5〜60%が好ましく、10〜40%が更に好ましく、15〜25%が特に好ましい。添加量が多いと得られる二軸性フィルムの耐熱性を損なう傾向がある。
一般式(I)で表される化合物には、液晶性骨格を重合性官能基の間にスペーサーを有する化合物と有さない化合物を含む。
一般式(I)において、W3が単結合以外の置換基を表し、vが2〜18の整数を表す場合がスペーサーを有する化合物に相当し、具体的には以下の一般式(I-1)から一般式(I-9)で表される化合物が好ましい。
【0022】
【化7】

【0023】
(式中、X1は水素原子又はメチル基を表し、Sは1〜20の整数を表し、Rは炭素原子数1から20のアルキル基を表す。)。X1としては水素原子が好ましく、Sとしては3、4又は6が好ましい。そのような化合物の中でも、末端基としてシアノ基を有する(I-5)の化合物が最も好ましい。この化合物を用いると正面位相差を大きくすることができる。
一方、一般式(I)において、W3が単結合を表しvが0を表す場合が、スペーサーを有さない化合物に相当し、具体的には以下の構造が好ましい。
【0024】
【化8】

【0025】
【化9】

【0026】
【化10】

【0027】
(式中、シクロヘキサン環はトランスシクロヘキサン環を表し、数字は相転移温度を表し、Cは結晶相、Nはネマチック相、Sはスメクチック相、Iは等方性液体相をそれぞれ表す。)
以上のような2つの6員環を有する単官能重合性液晶化合物以外、3つ以上の6員環を有する単官能液晶化合物を含有しても良い。このような化合物としては、一般式(II)
【0028】
【化11】

【0029】
(式中、Zは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、Z6は水素原子又はメチル基を表し、W4は単結合、-O-、-COO-又は-OCO-を表し、vは0〜18の整数を表し、uは1又は2を表し、F、G及びHはそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、隣接しないCH基が窒素で置換された1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1つ又は隣接しない2つのCH2基が酸素又は硫黄原子で置換された1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基を表すが、式中に存在する1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良く、Y及びYはそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、-OCH2-、-COO-、-OCO-、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CF-、-(CH24-、-CH2CH2CH2O-、-OCH2CH2CH2-、-CH=CHCH2CH2-、-CH2CH2CH=CH-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH2CH2COO-、-CH2CH2OCO-、-COO CH2CH2-又は-OCOCH2CH2-を表し、Y10は単結合、-O-、-COO-、-OCO-又は-CH=CHCOO-を表すが、Wが単結合を表す場合vは2〜18の整数を表す。)
一般式(II)で表される化合物の添加量は、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下が特に好ましい。
【0030】
一般式(II)は液晶性骨格を重合性官能基の間にスペーサーを有する化合物と有さない化合物を含むが、W4が単結合以外の置換基を表し、vが2〜18の整数を表す場合がスペーサーを有する化合物に相当し、具体的には以下の一般式(II-1)から一般式(II-9)で表される化合物が好ましい。
【0031】
【化12】

【0032】
一方、一般式(II)において、W34が単結合を表し、vが0を表す場合がスペーサーを有さない化合物に相当し、具体的に以下の構造が好ましい。
【0033】
【化13】

【0034】
本願発明の重合性液晶組成物は、硬化させて得られるフィルムの耐熱性・信頼性を確保する観点から重合性液晶化合物として2官能の材料を含有させることが好ましい。このような化合物としては一般式(III)
【0035】
【化14】

(式中、P1、及びP2は反応性官能基を表し、Sp1、及びSp2はそれぞれ独立的にスペーサー基を表し、i、及びjはそれぞれ独立的に0又は1を表し、MGはメソゲン基又はメソゲン性支持基を表す。)で表される化合物が好ましい。
【0036】
一般式(III)において、Sp1、及びSp2がそれぞれ独立的に炭素原子数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH2基又は隣接していない2つ以上のCH2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-SCO-、-COS-又は-C≡C-により置き換えられていても良く、MGが一般式(III-b)
【0037】
【化15】

(式中、A1、A2及びA3はそれぞれ独立的に、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、テトラヒドロチオピラン-2,5-ジイル基、1,4-ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、フェナントレン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a-オクタヒドロフェナントレン2,7-ジイル基又はフルオレン2,7-ジイル基を表し、該1,4-フェニレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、フェナントレン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a-オクタヒドロフェナントレン2,7-ジイル基及びフルオレン2,7-ジイル基は置換基として1個以上のF、Cl、CF3、OCF3、シアノ基、炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケノイル基又はアルケノイルオキシ基を有していても良く、Z0、Z1、Z2及びZ3はそれぞれ独立して、-COO-、-OCO-、-CH2 CH2-、-OCH2-、-CH2O-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH2CH2COO-、-CH2CH2OCO-、-COO CH2CH2-、-OCOCH2CH2-、-CONH-、-NHCO-又は単結合を表し、nは0、1、2又は3を表す。)で表される構造を表し、
P1、及びP2がそれぞれ独立的に一般式(III-c)又は、一般式(III-d)
【0038】
【化16】

(式中、R21、R22、R23、R31、R32、R33はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、nは0又は1を表す。)で表される置換基からなる群より選ばれる置換基を表すことが好ましい。
一般式(II)で表される化合物のうち、重合性官能基を二つ有する化合物としては一般式(IV)
【0039】
【化17】

(式中、Z、及びZは水素原子又はメチル基を表し、I、J及びKはそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、隣接しないCH基が窒素で置換された1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1つ又は隣接しない2つのCH2基が酸素又は硫黄原子で置換された1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基を表すが、式中に存在する1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良く、mは0から3の整数を表し、W1及びW2はそれぞれ独立的に単結合、-O-、-COO-又は-OCO-を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立的に単結合、-COO-、-OCO-、-CH2CH2COO-、-CH2CH2OCO-、-COO CH2CH2-又は-OCOCH2CH2-を表し、r及びsはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表すが、式中に存在する1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基、又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い。)で表される化合物が好ましい。
【0040】
一般式(IV)で表される化合物は、フィルム化した際に高い耐熱性を得るのに効果的であるが、その添加量は30〜85%が好ましく、40〜80%が更に好ましく、50〜75%が特に好ましい。
更に具体的には以下に挙げることができる。
【0041】
【化18】

【0042】
【化19】

【0043】
【化20】

【0044】
(式中、j、k、l及びmはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表す。)
以上のような化合物の中でも、(IV-8)、(IV-9)で表される化合物が好ましい。j及びkは3、4又は6である化合物を用いることが化合物製造コスト及び液晶温度範囲を適切に設定できる点から好ましい。
また、本願発明の重合性液晶組成物に円盤状化合物を添加しても良い。このような円盤状化合物としては、ベンゼン誘導体、トリフェニレン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体又はシクロヘキサン誘導体を分子の中心の母核とし、直鎖のアルキル基、直鎖のアルコキシ基又は置換ベンゾイルオキシ基がその側鎖として放射状に置換した構造であることが好ましく、一般式(V)
【0045】
【化21】

(式中、R5はそれぞれ独立して一般式(V-a)で表される置換基を表す。)
【0046】
【化22】

(式中、R6及びR7はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R8は炭素原子数1〜20アルコキシ基を表すが、該アルコキシ基中の水素原子は一般式(V-b)、一般式(V-c)又は一般式(V-d)で表される置換基によって置換されていても良い。)
【0047】
【化23】

(式中、R81、R82、R83、R84、R85、及びR86はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、nは0又は1を表す。)で表される構造を有することがさらに好ましく、一般式(V-a)においてR8の内少なくとも一つは一般式(V-b)、一般式(V-c)で表される置換基によって置換されたアルコキシ基を表すことが好ましく、R8の全てが一般式(V-b)、一般式(V-c)で表される置換基によって置換されたアルコキシ基を表すことが特に好ましい。
さらに、一般式(V-a)は具体的には一般式(V-e)
【0048】
【化24】

(式中nは2〜9の整数を表す)で表される構造を有することが特に好ましい。
重合性液晶組成物には、塗布したときに良好なプラナー配向を迅速に得ることを目的として、一般式(VI)
【0049】
【化25】

(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基中の水素原子は1つ以上のハロゲン原子で置換されていても良い。)で表される繰り返し単位を有する重量平均分子量が100以上である化合物を含有させることが好ましい。
【0050】
一般式(VI)で表される化合物は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、パラフィン、流動パラフィン、塩素化ポリプロピレン、塩素化パラフィン、又は塩素化流動パラフィンが挙げられる。これ以外にも、フッ素原子が導入された化合物はムラ抑制の観点からも有効である。 一般式(VI)で表される繰り返し単位を有する化合物のうち、好適な構造として、式(VI-a)〜式(VI-f)
【0051】
【化26】

【0052】
で表される繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。中でも、式(VI-a)〜式(VI-e)で表される構造がより好ましく、式(VI-a)及び式(VI-c)で表される構造が特に好ましい。又、式(VI-a)〜式(VI-f)で表される繰り返し単位を有する化合物を2種以上共重合させた共重合体も好ましい。この場合、式(VI-a)及び式(VI-b)を有する共重合体、式(VI-a)及び式(VI-c)を有する共重合体、式(VI-a)及び式(VI-f)を有する共重合体、及び、式(VI-a)、(VI-b)及び式(VI-f)を有する共重合体がより好ましく、式(VI-a)及び式(VI-b)を有する共重合体、及び、式(VI-a)、(VI-b)及び式(VI-f)を有する共重合体が特に好ましい。
【0053】
該化合物の重量平均分子量は、小さすぎるとチルト角を減じる効果が乏しくなり、大きすぎると配向が長時間安定しないため最適な範囲が存在する。具体的には、200〜1000000であることが好ましく、300〜100000であることがさらに好ましく、400〜80000であることが特に好ましい。
又、該化合物を、重合性液晶組成物中に0.01〜5質量%含有することが好ましく、0.05〜2質量%含有することがより好ましく、0.1〜1質量%含有することが特に好ましい。
【0054】
本発明の重合性液晶組成物はキラルネマチック相を得ることを目的としてキラル化合物を含有するが、キラル化合物のなかでも、分子中に重合性官能基を有する化合物が特に好ましい。
【0055】
キラル化合物中の重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。キラル化合物の添加量は、化合物の螺旋誘起力によって適宜調整することが必要であるが、12%以下が好ましい。キラル化合物の具体的例としては、式(a)〜(g)の化合物を挙げることができる。
【0056】
【化27】

【0057】
(式中、nは2〜12の整数を表す)これらの化合物のなかでも(a)の化合物が好ましい。この場合、nは2もしくは4が合成コストの観点からもっとも好ましい。
【0058】
重合性液晶組成物には、塗布した際に表面の平滑性を確保することを目的として、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤の区別はない。含有することができる界面活性剤としては、アルキルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルリン酸塩、フルオロアルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン誘導体、フルオロアルキルエチレンオキシド誘導体、ポリエチレングリコール誘導体、アルキルアンモニウム塩、フルオロアルキルアンモニウム塩類、シリコーン誘導体等をあげることができ、特に含フッ素界面活性剤、シリコーン誘導体が好ましい。
【0059】
更に具体的には「MEGAFAC F−110」、「MEGAFACF−113」、「MEGAFAC F−120」、「MEGAFAC F−812」、「MEGAFAC F−142D」、「MEGAFAC F−144D」、「MEGAFAC F−150」、「MEGAFAC F−171」、「MEGAFACF−173」、「MEGAFAC F−177」、「MEGAFAC F−183」、「MEGAFAC F−195」、「MEGAFAC F−824」、「MEGAFAC F−833」、「MEGAFAC F−114」、「MEGAFAC F−410」、「MEGAFAC F−493」、「MEGAFAC F−494」、「MEGAFAC F−443」、「MEGAFAC F−444」、「MEGAFAC F−445」、「MEGAFAC F−446」、「MEGAFAC F−470」、「MEGAFAC F−471」、「MEGAFAC F−474」、「MEGAFAC F−475」、「MEGAFAC F−477」、「MEGAFAC F−478」、「MEGAFAC F−479」、「MEGAFAC F−480SF」、「MEGAFAC F−482」、「MEGAFAC F−483」、「MEGAFAC F−484」、「MEGAFAC F−486」、「MEGAFAC F−487」、「MEGAFAC F−489」、「MEGAFAC F−172D」、「MEGAFAC F−178K」、「MEGAFAC F−178RM」、「MEGAFAC R−08」、「MEGAFAC R−30」、「MEGAFAC F−472SF」、「MEGAFAC BL−20」、「MEGAFAC R−61」、「MEGAFAC R−90」、「MEGAFAC ESM−1」、「MEGAFAC MCF−350SF」(以上、DIC株式会社製)、
【0060】
「フタージェント100」、「フタージェント100C」、「フタージェント110」、「フタージェント150」、「フタージェント150CH」、「フタージェントA」、「フタージェント100A-K」、「フタージェント501」、「フタージェント300」、「フタージェント310」、「フタージェント320」、「フタージェント400SW」、「FTX-400P」、「フタージェント251」、「フタージェント215M」、「フタージェント212MH」、「フタージェント250」、「フタージェント222F」、「フタージェント212D」、「FTX-218」、「FTX-209F」、「FTX-213F」、「FTX-233F」、「フタージェント245F」、「FTX-208G」、「FTX-240G」、「FTX-206D」、「FTX-220D」、「FTX-230D」、「FTX-240D」、「FTX-207S」、「FTX-211S」、「FTX-220S」、「FTX-230S」、「FTX-750FM」、「FTX-730FM」、「FTX-730FL」、「FTX-710FS」、「FTX-710FM」、「FTX-710FL」、「FTX-750LL」、「FTX-730LS」、「FTX-730LM」、「FTX-730LL」、「FTX-710LL」(以上、ネオス社製)、
【0061】
「BYK−300」、「BYK−302」、「BYK−306」、「BYK−307」、「BYK−310」、「BYK−315」、「BYK−320」、「BYK−322」、「BYK−323」、「BYK−325」、「BYK−330」、「BYK−331」、「BYK−333」、「BYK−337」、「BYK−340」、「BYK−344」、「BYK−370」、「BYK−375」、「BYK−377」、「BYK−350」、「BYK−352」、「BYK−354」、「BYK−355」、「BYK−356」、「BYK−358N」、「BYK−361N」、「BYK−357」、「BYK−390」、「BYK−392」、「BYK−UV3500」、「BYK−UV3510」、「BYK−UV3570」、「BYK−Silclean3700」(以上、ビックケミー・ジャパン社製)、
【0062】
「TEGO Rad2100」、「TEGO Rad2200N」、「TEGO Rad2250」、「TEGO Rad2300」、「TEGO Rad2500」、「TEGO Rad2600」、「TEGO Rad2700」(以上、テゴ社製)等の例をあげることができる。界面活性剤の好ましい添加量は、重合性液晶組成物中に含有される界面活性剤以外の成分や、使用温度等によって異なるが、重合性液晶組成物中に0.01〜1質量%含有することが好ましく、0.02〜0.5質量%含有することがさらに好ましく、0.03〜0.1質量%含有することが特に好ましい。含有量が0.01質量%より低いときは膜厚ムラ低減効果が得にくい。一般式(VI)で表される繰り返し単位を有する重量平均分子量が100以上である化合物の含有量と界面活性剤の含有量の合計が0.02〜0.5質量%であることが好ましく、0.05〜0.4質量%含有することがさらに好ましく、0.1〜0.2質量%含有することが特に好ましい。
【0063】
重合性液晶組成物のキラルネマチック相の下限温度は40℃より低いことが好ましく、30℃より低いことが更にこのましく、20℃より低いことが特に好ましい。キラルネマチック相の上限温度は、60℃より高いことが好ましく、80℃より高いことが好ましく、100℃より高いことが特に好ましい。
【0064】
キラルネマチック相の螺旋ピッチは、キラルネマチック相の選択反射が可視光域にでないように設計することが好ましい。つまり、赤外領域、もしくは紫外領域に設計するのが好ましく、紫外領域に設計するのが特に好ましい。
【0065】
本発明の重合性液晶組成物には1000〜15000ppmの重合性禁止剤を含有させることが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、β−ナフチルアミン類、β−ナフトール類、ニトロソ化合物等が挙げられる。より具体的にはメトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールを挙げることができる。
【0066】
本発明の光学異方体は、例えば、本発明の重合性液晶組成物を基板上に坦持させて、材料が配向した後、紫外線もしくは電子線を照射により硬化させることによって得ることができる。二軸性光学異方体(フィルム)を作製する場合には、偏光した紫外線を照射することが好ましい。重合性液晶組成物を坦持させる場合には、重合性液晶組成物を溶媒に溶解させ、これを基板上に塗布し、さらに溶媒を揮発させる方法を挙げることができる。重合性液晶を溶剤に溶解させないで、そのまま、基板上に塗布することも可能である。好適な有機溶媒として例えばトルエン、キシレン、クメンなどのアルキル置換ベンゼンやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、シクロペンンタノン等を挙げることができる。さらにこれらの溶媒にジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N-メチルピロリジノン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等を添加しても良い。溶媒を揮発させる方法としては60〜150℃、さらに好ましくは80℃〜120℃での加熱を、15〜120秒、さらに好ましくは30〜90秒の間行う方法を例示することができる。この加熱の他に、減圧乾燥を組み合わせることもできる。塗布の方法としては、スピンコーティング、ダイコーティング、エクストルージョンコーティング、ロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ディッピング、プリント法等を挙げることができる。基板としてはガラスなどの無機材料、プラスチックフィルムなどの有機材料のどちらを使用しても良い。これらの基板に配向処理を施しても良いし、そのまま使用しても良い。配向処理としては、基板を布などで擦るラビング処理やポリイミドなどの有機薄膜を基板上に形成してからのラビング処理、もしくは光配向膜を基板上に形成してから更に偏光紫外線を照射する光配向処理などを挙げることができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を挙げて本願発明を更に詳述するが、本願発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、%は質量%を表す。正面位相差Reは大塚電子製のRETS-100にて測定した(波長は589nm)。厚み方向の位相差は、位相差の角度依存性を大塚電子製のRETS-100にて測定し、コンピュータシミュレーションソフトLCD-Master(株式会社シンテック社製)によるフィッティングにより求めた。
(参考例1) 重合性液晶組成物の調製
式(IV-9-a)の液晶性アクリレート化合物36.47%
【0068】
【化28】

式(IV-9-b)の液晶性アクリレート化合物15.63%
【0069】
【化29】

式(IV-8-a)の液晶性アクリレート化合物13.03%
【0070】
【化30】

式(I-5-a)の液晶性アクリレート化合物21.71%
【0071】
【化31】

式(a-1)のキラルアクリレート化合物9.12%
【0072】
【化32】

式(e-1)のキラルアクリレート化合物3.04%
【0073】
【化33】

光吸収剤(I-1)0.74%
【0074】
【化34】

流動パラフィン0.26%、p-メトキシフェノール0.09%からなる重合性液晶組成物(A)を調整した。光吸収剤(PA−1)は360nm付近に吸収帯を有する。図1に光吸収剤(PA-1)の分光スペクトルを示す。
(実施例1)
参考例1で調製した重合性液晶組成物(A)が95.84%、360nm付近に吸収帯を持つ光重合開始剤2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(Irgacure 651 チバスペシャリティケミカルズ社製)2.08%、
【0075】
【化35】

360nm付近に吸収帯を持つ光重合開始剤Irgacure OXE01(チバスペシャリティケミカルズ社製) 2.08%
【0076】
【化36】

からなる重合性液晶組成物(B)を調整した。図2にIrgacure OXE01の吸収スペクトルを示す。
【0077】
更に重合性液晶組成物(B)40%、シクロヘキサノン60%からなる重合性液晶溶液(B)を調製した。これをラビング処理を施したポリイミド配向膜付きのガラス基板にスピンコート(1000回転/分、30秒)した。スピンコートした基板を60℃で2分間乾燥した後、3分間室温で放置し、重合性液晶をプラナー配向させた。このようにして得られた重合性液晶組成物層に、高圧水銀ランプから発生する紫外線を偏光フィルター、バンドパスフィルターを通して波長360nmの偏光UV(強度10mW/cm2)を30秒照射して重合性液晶組成物を硬化させた。図3に高圧水銀ランプ光源(偏光フィルター、バンドパスフィルターを通す前)の発光スペクトルを示す。得られた膜の厚みは3μmであった。得られた膜は光学的に二軸性であった。正面位相差Reは30.4nmであった。これを230℃で1時間加熱したところ、正面位相差Reは25.1nmになった。加熱前の位相差を100%とすると、正面位相差Reは82.6%になった。
【0078】
(実施例2)
重合性液晶溶液(B)をラビング処理を施したポリイミド配向膜付きのガラス基板にスピンコート(1000回転/分、30秒)した。スピンコートした基板を60℃で2分間乾燥した後、3分間室温で放置し、重合性液晶をプラナー配向させた。このようにして得られた重合性液晶組成物層に、高圧水銀ランプから発生する紫外線を偏光フィルター、バンドパスフィルターを通して波長360nmの偏光UV(強度10mW/cm2)を30秒照射して重合性液晶組成物を硬化させた。さらに同じ高圧水銀ランプから発生する紫外線をバンドパスフィルター、偏光フィルターを通すことなく、非偏光UV(強度30mW/cm2)を27秒照射して、追加硬化を行った。得られた膜の厚みは3μmであった。得られた膜は光学的に二軸性であった。正面位相差Reは30.2nmであった。これを230℃で1時間加熱したところ、正面位相差Reは26.0nmになった。加熱前の位相差を100%とすると、正面位相差Reは86.1%になった。
【0079】
(比較例1)
参考例1で調製した重合性液晶組成物(A)が95.84%、360nm付近に吸収帯を持つ光重合開始剤Irgacure OXE01(チバスペシャリティケミカルズ社製)4.16%からなる重合性液晶組成物(C)を調整した。
更に重合性液晶組成物(C)40%、シクロヘキサノン60%からなる重合性液晶溶液(C)を調製した。これをラビング処理を施したポリイミド配向膜付きのガラス基板にスピンコート(1000回転/分、30秒)した。スピンコートした基板を60℃で2分間乾燥した後、3分間室温で放置し、重合性液晶をプラナー配向させた。このようにして得られた重合性液晶組成物層に、高圧水銀ランプから発生する紫外線を偏光フィルター、バンドパスフィルターを通して波長360nmの偏光UV(強度10mW/cm2)を30秒照射して重合性液晶組成物を硬化させた。得られた膜の厚みは3μmであった。得られた膜は光学的に二軸性であった。正面位相差Reは43.7nmであった。これを230℃で1時間加熱したところ、正面位相差Reは31.9nmになった。加熱前の位相差を100%とすると、正面位相差Reは73.0%になった。また、ヘイズは0.28%であった。
【0080】
(比較例2)
重合性液晶溶液(C)をラビング処理を施したポリイミド配向膜付きのガラス基板にスピンコート(1000回転/分、30秒)した。スピンコートした基板を60℃で2分間乾燥した後、3分間室温で放置し、重合性液晶をプラナー配向させた。このようにして得られた重合性液晶組成物層に、高圧水銀ランプから発生する紫外線を偏光フィルター、バンドパスフィルターを通して波長360nmの偏光UV(強度10mW/cm2)を30秒照射して重合性液晶組成物を硬化させた。さらに同じ高圧水銀ランプから発生する紫外線をバンドパスフィルター、偏光フィルターを通すことなく、非偏光UV(強度30mW/cm2)を27秒照射して、追加硬化を行った。得られた膜の厚みは3μmであった。得られた膜は光学的に二軸性であった。正面位相差Reは37.8nmであった。これを230℃で1時間加熱したところ、正面位相差Reは28.6nmになった。加熱前の位相差を100%とすると、正面位相差Reは75.7%になった。
以上の結果を表1にまとめた。これらの結果から、本発明の重合性液晶組成物を用いると、正面位相差の熱安定性が向上することがわかる。
【0081】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】光吸収剤(PA-1)の分光スペクトル(アセトニトリル溶液、10ppm、光路長1cm)
【図2】光重合開始剤Irgacure 651の分光スペクトル(アセトニトリル溶液、20ppm、光路長1cm)
【図3】光重合開始剤Irgacure OXE01の分光スペクトル(アセトニトリル溶液、20ppm、光路長1cm)
【図4】高圧水銀ランプ(偏光フィルター、バンドパスフィルターを通す前)の発光スペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性液晶化合物、キラル化合物、光吸収剤及び光重合開始剤を含有する重合性液晶組成物において、重合性液晶化合物として、2つの6員環を有する単官能重合性液晶化合物及び光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール化合物を含有し、光吸収剤の光吸収帯が波長280〜400nmであり、キラルネマチック相を示す重合性液晶組成物。
【請求項2】
空気中において波長280〜400nmの紫外線により硬化する請求項1記載の重合性液晶組成物。
【請求項3】
光吸収剤の骨格中に二重結合を有する請求項1又は2記載の重合性液晶組成物。
又は
【請求項4】
光吸収剤が、一般式(PA)
【化1】

(式中、X1からX4はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボキシ基、炭素原子数2〜18のアルケニル基、又はアルケニルオキシ基を表し、l及びoはそれぞれ独立して1から5の整数を表し、m及びnはそれぞれ独立して1から4の整数を表し、L1からL3はそれぞれ独立して単結合又は−CH=CH−を表すが、L1からL3の少なくとも二つは−CH=CH−を表す。)で表される化合物である請求項3記載の重合性液晶組成物。
【請求項5】
ベンジルジメチルケタール化合物が一般式(RI-1)
【化2】

(式中、X及びXはそれぞれ独立して炭素原子数20以下のアルキル基、アリール基、アラルキル基又は芳香環を表し、p及びqはそれぞれ独立して1〜4の整数を表す。)で表される請求項1から4の何れかに記載の重合性液晶組成物。
【請求項6】
キラル化合物が分子中に重合性官能基を有する請求項1から5の何れかに記載の重合性液晶組成物。
【請求項7】
2つの6員環を有する単官能重合性液晶化合物が一般式(I)
【化3】

(式中、Z3は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、Z4は水素原子又はメチル基を表し、W3は単結合、-O-、-COO-又は-OCO-を表し、vは0〜18の整数を表し、D、Eはそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、隣接しないCH基が窒素で置換された1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1つ又は隣接しない2つのCH2基が酸素又は硫黄原子で置換された1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基を表すが、式中に存在する1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良く、Y6及びY7はそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、-OCH2-、-COO-、-OCO-、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CF-、-(CH24-、-CH2CH2CH2O-、-OCH2CH2CH2-、-CH=CHCH2CH2-、-CH2CH2CH=CH-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH2CH2COO-、-CH2CH2OCO-、-COO CH2CH2-又は-OCOCH2CH2-を表し、Y8は単結合、-O-、-COO-、-OCO-又は-CH=CHCOO-を表すが、W3が単結合を表す場合vは2〜18の整数を表す。)で表される請求項1から6のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【請求項8】
重合性液晶化合物として一般式(III)
【化4】

(式中、P1、及びP2は反応性官能基を表し、Sp1、及びSp2はそれぞれ独立的にスペーサー基を表し、i、及びjはそれぞれ独立的に0又は1を表し、MGはメソゲン基又はメソゲン性支持基を表す。)
で表される請求項1から7のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【請求項9】
一般式(III)において、Sp1、及びSp2がそれぞれ独立的に炭素原子数1から20のアルキレン基を表し、該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH2基又は隣接していない2つ以上のCH2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-SCO-、-COS-又は-C≡C-により置き換えられていても良く、MGが一般式(III-b)
【化5】

(式中、A1、A2及びA3はそれぞれ独立的に、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、テトラヒドロチオピラン-2,5-ジイル基、1,4-ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、フェナントレン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a-オクタヒドロフェナントレン2,7-ジイル基又はフルオレン2,7-ジイル基を表し、該1,4-フェニレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、フェナントレン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a-オクタヒドロフェナントレン2,7-ジイル基及びフルオレン2,7-ジイル基は置換基として1個以上のF、Cl、CF3、OCF3、シアノ基、炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケノイル基又はアルケノイルオキシ基を有していても良く、Z0、Z1、Z2及びZ3はそれぞれ独立して、-COO-、-OCO-、-CH2 CH2-、-OCH2-、-CH2O-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH2CH2COO-、-CH2CH2OCO-、-COO CH2CH2-、-OCOCH2CH2-、-CONH-、-NHCO-又は単結合を表し、nは0、1、2又は3を表す。)で表される構造を表し、P1、及びP2がそれぞれ独立的に一般式(III-c)又は、一般式(III-d)
【化6】

(式中、R21、R22、R23、R31、R32、及びR33はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、kは0又は1を表す。)で表される置換基を表す請求項8記載の重合性液晶組成物。
【請求項10】
一般式(III)で表される化合物が一般式(IV)
【化7】

(式中、Z7、及びZ8はそれぞれ独立的に水素原子、メチル基を表し、I、J及びKはそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、隣接しないCH基が窒素で置換された1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1つ又は隣接しない2つのCH2基が酸素又は硫黄原子で置換された1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基を表すが、式中に存在する1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良く、mは0から3の整数を表し、W1及びW2はそれぞれ独立的に単結合、-O-、-COO-又は-OCO-を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立的に単結合、-COO-、-OCO-、-CH2CH2COO-、-CH2CH2OCO-、-COO CH2CH2-、-OCOCH2CH2-を表し、r及びsはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表すが、式中に存在する1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基、又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い。)で表される化合物である請求項8記載の重合性液晶組成物。
【請求項11】
重合性液晶組成物として、ベンゼン誘導体、トリフェニレン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体又はシクロヘキサン誘導体を分子の中心の母核とし、直鎖のアルキル基、直鎖のアルコキシ基又は置換ベンゾイルオキシ基がその側鎖として放射状に置換した構造である円盤状液晶化合物を含有することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【請求項12】
円盤状液晶化合物が一般式(V)で表される重合性液晶組成物を含有する請求項10記載の重合性液晶組成物。
【化8】

(式中、R5はそれぞれ独立して一般式(V-a)で表される置換基を表す。)
【化9】

(式中、R6及びR7はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R8は炭素原子数1〜20アルコキシ基を表すが、該アルコキシ基中の水素原子は一般式(V-b)、一般式(V-c)又は一般式(V-d)で表される置換基によって置換されていても良い。)
【化10】

(式中、R81、R82、R83、R84、R85、及びR86はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、nは0又は1を表す。)
【請求項13】
請求項1から12記載のいずれかの重合性液晶組成物を硬化させた光学異方体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−42703(P2011−42703A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189997(P2009−189997)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】