説明

重合性組成物、粘着性材料及び接着剤

【課題】高感度、高識別性及び高安定性な重合性組成物並びに該重合性組成物を含有する粘着性材料を提供すること、並びに、高感度及び高安定性な重合性組成物並びに接着力が高い該重合性組成物を含有する接着剤を提供すること。
【解決手段】式(I)で表される化合物、式(II)で表されるモノマー単位を有する高分子及び/又はその他の付加重合型高分子、並びに、無機粒子を含有する重合性組成物。


式(I)(II)中、Q1はシアノ基又は−COX2基を表し、X1はヘテロ原子を介してα炭素に結合する水素原子、有機残基若しくはポリマー鎖、ハロゲン原子を表し、X2はヘテロ原子を介してカルボニル基に結合する水素原子、有機残基若しくはポリマー鎖、又は、ハロゲン原子を表し、Ra、Rbは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は有機残基を表し、X1とX2、RaとRb、X1とRa又はRbとが結合して環状構造を形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性組成物、粘着性材料及び接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着剤として、エマルジョン型、溶剤型、ホットメルト型のものが使用されてきている。しかし、これらは、水分乾燥、溶剤乾燥に長時間がかかる。また、塗布時に高温にするため、製造ラインのコストが高い。また、溶剤型粘着剤の場合には、乾燥工程でトルエン等の溶剤が飛散するので、環境汚染の問題が深刻である。
【0003】
これらの欠点を改善する手段として、放射線、例えば紫外線のごとき光、または電子線のごとき電離性放射線を透過する支持体と、この支持体上に塗工された放射線照射により硬化する性質を有する粘着剤層とからなる放射線硬化性粘着テープや紫外線硬化型粘着剤が開発されている(特許文献1及び2)。
【0004】
放射線硬化性粘着テープは、例えば、ダイシング加工時においては半導体ウエハに対して強い粘着力を有し、一方、半導体ウエハを素子小片に切断後は、基材側から放射線照射を行い、粘着層を硬化させることによって、素子固定粘着力を大幅に低下させるようにしたものである。この放射線硬化性粘着テープは素子小片の大きさに関係なく、例えば25mm2以上の大きな素子であっても容易にピックアップすることができるようにしたものとして提案されている。
これらの提案は、放射線透過性の支持体上に塗工した放射線硬化性粘着剤に含まれる放射線重合性化合物を放射線照射によって硬化させ粘着剤に三次元網状化構造を与えて、その流動性を著しく低下させる原理に基づくものである(特許文献3〜6)。
【0005】
また、放射線重合性化合物を使用せずにテープの伸展後に粘着力を低下させる半導体素子ダイシング用フィルムとしては、粘着剤層の粘着剤に有機質または無機質の充填剤を配合し、半導体ウエハの素子小片への切断分離後、テープを伸展させて該充填剤を粘着剤層表面に突出させピックアップを容易にするという半導体ウエハ固定用粘着テープが提案されている(特許文献7)。
【0006】
ところで、近年、半導体素子の製造工程を簡略化するために、半導体ウエハの素子小片への切断した後、テープの伸展を行わずに半導体素子をピックアップする方法が行われている。この場合、特許文献7で提案されているような粘着剤の放射線硬化によらないで、伸展によってピックアップを容易にするタイプのテープは、伸展によるピックアップ性向上を前提としているので適用できない。
【0007】
一方、放射線硬化性テープの場合は、伸展工程が不要となるタイプの設計が可能であるため、上記したような半導体素子の製造工程の簡略化という目的に対してきわめて有用である。しかし、かかる放射線硬化性テープにおいても、半導体ウエハを切断した後の素子の大きさが100mm2を越えるような大型の素子の場合には粘着力の低下が不十分であるためにピックアップができないという新たな問題が生じている。
【0008】
一方、従来の粘着性材料は、単に、アクリル共重合体にアクリルモノマーを配合したものや、アクリルオリゴマーとアクリルモノマーとを配合したものであった。しかし、従来のものはいずれも、エマルジョン型、溶剤型等の粘着剤に比べ、硬化膜の表面タック、硬化膜凝集力、接着力のバランスが悪かった。このため、粘着剤としての機能は、著しく劣っていた。
【0009】
以上のように放射線硬化性粘着テープや紫外線硬化型粘着剤分野においては、硬化膜の表面タック、硬化膜凝集力、接着力のバランスが必要であるが、依然、解決には至っていない。
【0010】
【特許文献1】特開平5−214299号公報
【特許文献2】特開平9−8109号公報
【特許文献3】特開昭60−196956号公報
【特許文献4】特開昭60−201642号公報
【特許文献5】特開昭61−28572号公報
【特許文献6】特開昭62−10180号公報
【特許文献7】特開昭62−16543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、高感度、高識別性(ディスクリミネーション)及び高安定性な重合性組成物並びに該重合性組成物を含有する粘着性材料を提供すること、並びに、高感度及び高安定性な重合性組成物並びに接着力が高い該重合性組成物を含有する接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、下記に記載の手段により達成された。
<1>式(I)で表される化合物、式(II)で表されるモノマー単位を有する高分子及び/又はその他の付加重合型高分子、並びに、無機粒子を含有することを特徴とする重合性組成物、
【0013】
【化1】

式(I)及び式(II)中、Q1はシアノ基又は−COX2基を表し、X1は、ヘテロ原子を介してα炭素に結合する水素原子、有機残基若しくはポリマー鎖、又は、ハロゲン原子を表し、X2は、ヘテロ原子を介してカルボニル基に結合する水素原子、有機残基若しくはポリマー鎖、又は、ハロゲン原子を表し、Ra、Rbは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は有機残基を表し、X1とX2、RaとRb、X1とRa又はRbとが互いに結合して環状構造を形成してもよい、
<2>前記X1の該ヘテロ原子が、酸素原子又は窒素原子である<1>に記載の重合性組成物、
<3>前記X1が、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合及びアミド結合よりなる群から選ばれた少なくとも1つの基若しくは結合を有する有機残基又はポリマー鎖である<1>又は<2>に記載の重合性組成物、
<4>前記X1及び/又はX2が脂環構造又は芳香環を含む置換基を有する<1>〜<3>いずれか1つに記載の重合性組成物、
<5>前記高分子充填剤が、ゴム、アクリル−オレフィン共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、キシレン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1つの高分子充填剤である<1>〜<4>いずれか1つに記載の重合性組成物、
<6>前記高分子充填剤を2種以上併用する<5>に記載の重合性組成物、
<7><1>〜<6>のいずれか1つに記載の重合性組成物を含む層を支持体上に厚さ10〜200μmの層に形成してなる粘着性材料、
<8><1>〜<6>のいずれか1つに記載の重合性組成物を含有する接着剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高感度、高識別性及び高安定性な重合性組成物並びに該重合性組成物を含有する粘着性材料を提供すること、並びに、高感度及び高安定性な重合性組成物並びに接着力が高い該重合性組成物を含有する接着剤を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<重合性組成物>
本発明の重合性組成物は、式(I)で表される化合物、式(II)で表されるモノマー単位を有する高分子及び/又はその他の付加重合性高分子、並びに、高分子充填剤を含有することを特徴とする。
【0016】
【化2】

式(I)及び式(II)中、Q1はシアノ基又は−COX2基を表し、X1は、ヘテロ原子を介してα炭素に結合する水素原子、有機残基若しくはポリマー鎖、又は、ハロゲン原子を表し、X2は、ヘテロ原子を介してカルボニル基に結合する水素原子、有機残基若しくはポリマー鎖、又は、ハロゲン原子を表し、Ra、Rbは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は有機残基を表し、X1とX2、RaとRb、X1とRa又はRbとが互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【0017】
式(I)で表される化合物について以下に説明する。
【0018】
【化3】

【0019】
式(I)中、Q1はシアノ基又は−COX2基を表し、X1は、ヘテロ原子を介してα炭素に結合する水素原子、有機残基若しくはポリマー鎖、又は、ハロゲン原子を表し、X2は、ヘテロ原子を介してカルボニル基に結合する水素原子、有機残基若しくはポリマー鎖、又は、ハロゲン原子を表し、Ra、Rbは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は有機残基を表し、X1とX2、RaとRb、X1とRa又はRbとが互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【0020】
本発明において、式(I)で表される化合物は、エチレン性不飽和二重結合を形成する片方の炭素原子に2つの置換基が結合したエチレン性不飽和基を少なくとも1つ有する。
1及びX2は1価の有機残基でもよく、2価若しくはn価(n≧3;nは3以上の整数を表す。)の有機連結基によってX1同士若しくはX2同士が連結して2官能型若しくはn官能型となっていてもよく、また、オリゴマー又はポリマー中のモノマー単位の残基を形成して高分子型となってもよい。
【0021】
以下に式(I)で表される代表的な化合物群i)〜iv)について説明する。
以下の説明において、X2はエチレン性不飽和結合のα−位にあるカルボニル基に直接結合するので、X1と同じく、「ヘテロ原子を介してα炭素に結合する水素原子、1価の有機残基、又はハロゲン原子」ともいうことにする。
式(I)で示される化合物は、Q1が−COX2を表す場合において、X1及びX2がヘテロ原子を介してα炭素に結合する水素原子、1価の有機残基、又はハロゲン原子である場合には、後掲のi)単官能型エチレン性不飽和化合物となり(例示化合物A−1〜A−42)、X1とX2、RaとRb、X1とRaあるいはRbとが互いに結合して環状構造を形成する場合には、環状構造を有する単官能型エチレン性不飽和化合物となる(例示化合物B−1〜B−9)。
式(I)で示される化合物は、Q1が−COX2を表す場合において、X1がヘテロ原子を介してα炭素に結合する水素原子、1価の有機残基、又はハロゲン原子であって、X2がヘテロ原子を介して2つのカルボニル基に結合する2価の基である場合には、ii)2官能型エチレン性不飽和化合物となり(例示化合物C−1〜C−14)、X1がヘテロ原子を介して2つのα炭素に結合する2価の有機残基であって、X2が水素原子、1価の有機残基又はハロゲン原子である場合にもやはり2官能型エチレン性不飽和化合物となる(例示化合物D−1〜D−30)。
式(I)で示される化合物は、X1が1価の基であって、X2がn価の有機残基(n≧3)である場合には、iii)3官能型以上の官能基数を有するn官能型エチレン性不飽和化合物となり(例示化合物E−1〜E−22)、X1がn価の有機残基(n≧3)であってX2が水素原子、1価の有機残基又はハロゲン原子である場合にもやはりn官能型エチレン性不飽和化合物となる(例示化合物F−1〜F−30)。
また、式(I)で示される化合物は、X1又はX2のいずれかが、好ましくはX2が、付加重合又は付加共重合により生成するオリゴマー又は高分子のモノマー単位の残基である場合には、iv)高分子型エチレン性不飽和化合物となる(例示化合物G−1〜G−15)。
式(I)で示される化合物は、Q1がシアノ基を表す場合においても、Q1がCOX2である場合と同様にして、後掲のようなi)単官能型、ii)2官能型、iii)多官能型、及び、iv)高分子型の化合物となることができる(H−1〜H−8)。
1が−COX2又は−CNを表す場合において、上記の4つの化合物群以外にも、当業者は多くのバリエーションの化合物を製造できることはいうまでもない。
【0022】
上述の高分子型エチレン性不飽和化合物では、X1、X2のうち少なくとも片方で、重合体の主鎖に結合している。即ち、重合体鎖の側鎖に式(I)から誘導される構造が存在する形態を採っている。ここで、重合体としては次の線状有機高分子重合体が例示できる。
すなわち、ポリウレタン、ノボラック、ポリビニルアルコール、ポリヒドロシスチレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリル酸アミド等のようなビニル系高分子、ポリアセタールが例示できる。これら重合体はホモポリマーでも、コポリマー(共重合体)でもよい。
【0023】
式(I)においてQ1がシアノ基又は−COX2基であり、X1又はX2において、α炭素及び有機残基等に結合するヘテロ原子は、炭素以外の原子を意味し、好ましくは非金属原子であり、具体的には酸素原子、イオウ原子、窒素原子、リン原子が挙げられ、酸素原子、イオウ原子、窒素原子が好ましく、酸素原子又は窒素原子がより好ましい。
1及び/又はX2は、脂環構造又は芳香環を含む基を有することも好ましい。
1又はX2がハロゲン原子である場合、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びフッ素原子等が挙げられ、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0024】
1は、好ましくは、ヒドロキシ基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、アミノ基、置換アミノ基、スルホ基、スルホナト基、置換スルフィニル基、置換スルホニル基、ホスホノ基、置換ホスホノ基、ホスホナト基、置換ホスホナト基、ニトロ基及びヘテロ環基(但し、ヘテロ原子で連結している)よりなる群から選ばれた、ヘテロ原子を介してα炭素に結合する水素原子、有機残基又はポリマー鎖であり、より好ましくは、ヒドロキシ基、エーテル結合、カルボン酸エステル結合、ウレタン結合及びアミド結合よりなる群から選ばれた少なくとも1つの基若しくは結合を有する有機残基又はポリマー鎖である。
【0025】
2は、好ましくは、ヘテロ原子を介してカルボニル基に結合している水素原子、有機残基又はポリマー鎖であり、ヒドロキシ基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、アミノ基、置換アミノ基、ヘテロ環基(但し、ヘテロ原子で連結している)が例示できる。
【0026】
a、Rbは、各々独立して、より好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又は有機残基を表し、有機残基は置換基を有していてもよくかつ不飽和結合を含んでいてもよい、炭化水素基、置換オキシ基、置換チオ基、置換アミノ基、置換カルボニル基、カルボキシラート基を表し、またRaとRbは互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【0027】
次に、式(I)におけるX1、X2、Ra、Rbに許容される置換基の例を示す。この置換基には、さらに置換基を有していてもよくかつ不飽和結合を含んでいてもよい炭化水素基、アシル基、ヘテロ環基が含まれる。
【0028】
上記の置換基を有していてもよくかつ不飽和結合を含んでいてもよい炭化水素基としては、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基及び置換アルキニル基が挙げられる。
【0029】
上記のアシル基には、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルスルフホニル基、アリールスルホニル基が含まれる。
【0030】
上記のヘテロ環基には、窒素、酸素、硫黄原子をヘテロ原子として含む5員又は6員のヘテロ環基及びこれに芳香族基が縮合した基が含まれる。
【0031】
アルキル基としては炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基をあげることができる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
【0032】
置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成される基であり、その置換基としては、水素を除く一価の非金属原子(団)が挙げられ、式(I)で示される化合物の重合反応を阻害しない限り任意の原子又は基が許容される。置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換アリール基も同様に定義できる。これらの基において、好ましい置換基の例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシルオキシ基、シアノ基が例示できる。その他の許容できる置換基は、特開2001−92127の段落0017〜0041に記載されている。
【0033】
アリール基としては、炭素数が6〜20であり、1個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものをあげることができ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナブテニル基、フルオレニル基、をあげることができ、これらのなかでは、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0034】
アルケニル基としては、炭素数2〜20の基が好ましい。置換アルケニル基は、置換基がアルケニル基の水素原子と置き換わり結合したものであり、この置換基としては、上述の置換アルキル基における置換基が用いられる。
【0035】
アルキニル基としては、炭素数2〜20であることが好ましい。置換アルキニル基は、置換基がアルキニル基の水素原子と置き換わり、結合したものであり、この置換基としては、上述の置換アルキル基における置換基が用いられる。
【0036】
次に、X1とX2、RaとRb、又はX1とRaあるいはRbとが互いに結合して形成する環状構造の例を示す。X1とX2、RaとRb、又はX1とRaあるいはRbとが互いに結合して形成する脂肪族環としては、5員環、6員環、7員環及び8員環の脂肪族環をあげることができ、より好ましくは、5員環、6員環の脂肪族環をあげることができる。これらは更に、これらを構成する炭素原子上に置換基を有していてもよく(置換基の例としては、前述の置換アルキル基に許容される置換基をあげることができる)、また、環構成炭素の一部が、ヘテロ原子(酸素原子、硫黄原子、窒素原子等)で置換されていてもよい。また更に、この脂肪族環の一部が芳香族環の一部を形成していてもよい。
【0037】
1及び/又はX2は、炭素原子数(C)が4〜12のアルキル基(好ましい脂環構造であるシクロアルキル基を含む)、C4〜20の置換アルキル基、C6〜12のアリール基、C6〜20の置換アリール基及びヘテロ原子としてO、N又はSを含むヘテロ環基よりなる群から選ばれた少なくとも1つの置換基を有することが好ましく、炭素原子数4から12の環状のアルキル基、アリール基及びヘテロ環基よりなる群から選ばれた少なくとも1つの置換基を有することがより好ましい。該環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及び2−ノルボルニル基が挙げられ、アリール基としては、フェニル基が挙げられ、ヘテロ環基としてはモルホリノ基が挙げられる。
【0038】
以下に式(I)で示される化合物を前に説明したi)単官能型、ii)2官能型、iii)多官能型、及び、iv)高分子型の順に例示化合物を示す。
【0039】
なお、以下に例示する具体例以外にも特開2001−92127の段落0043〜0066及び特開2002−105128の段落0043〜0051に他の具体例が例示されている。
【0040】
【化4】

【0041】
【化5】

【0042】
【化6】

【0043】
【化7】

【0044】
【化8】

【0045】
【化9】

【0046】
【化10】

【0047】
【化11】

【0048】
【化12】

【0049】
【化13】

【0050】
【化14】

【0051】
【化15】

【0052】
以下に式(I)のQ1がシアノ基を表す場合においても同様にi)単官能型、ii)2官能型、iii)多官能型、及び、iv)高分子型の順に例示化合物を示す。
【0053】
【化16】

【0054】
【化17】

【0055】
【化18】

【0056】
前掲の例示化合物の中で、A−1、A−12、A−17、A−22、A−27、A−38、B−5、C−1、D−7、E−4、F−3、G−5及びG−13については、特許文献3の段落0322〜0335に合成方法が記載されている。その他の例示化合物についても、これらの合成方法に準じて合成することができる。また、例示化合物H−1、H−2、H−3、H−4及びH−5についても特開2002−105128の段落0178〜0182にそれらの合成方法が記載されており、その他の例示化合物についても、これらの合成方法に準じて合成可能である。
【0057】
本発明の重合性組成物には、式(I)で表される化合物以外の重合性化合物を併用することができる。式(I)で表される化合物以外の重合性化合物には、アクリル酸エステル類、α位にヘテロ原子を有しない通常のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、α−位にヘテロ原子を有しない通常のメタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレンなどの芳香族基を有するエチレン性不飽和化合物、アクリルニトリル類、(メタ)アクリルアミド類、無水マレイン酸、マレイン酸イミド、シアヌレート、イソシアヌレート等の公知の重合性化合物が含まれる。これらの具体例としては、特開2002−107927号公報の段落0051〜段落0056、特開平5−214299号公報の段落0010に記載された重合性化合物が含まれる。
【0058】
式(I)で表される化合物の含有率は、重合性化合物全量に対して30重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上であることが特に好ましい。
【0059】
本発明の重合性組成物は、式(II)で表されるモノマー単位を有する高分子又はその他の付加重合性高分子を含む。
式(II)で表されるモノマー単位を有する高分子について説明する。
【0060】
【化19】

【0061】
式(II)中、Q1、X1、X2、Ra及びRbは、式(I)におけるQ1、X1、X2、Ra及びRbと同義であり、好ましい範囲も同様である。なお、式(I)で表される化合物及び式(II)で表されるモノマー単位を有する高分子を併用する場合において、Q1、X1、X2、Ra及びRbはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0062】
1及び/又はX2は、炭素原子数(C)が4〜12のアルキル基(好ましい脂環構造であるシクロアルキル基を含む)、C4〜20の置換アルキル基、C6〜12のアリール基、C6〜20の置換アリール基及びヘテロ原子としてO、N又はSを含むヘテロ環基よりなる群から選ばれた少なくとも1つの置換基を有することが好ましく、炭素原子数4から12の環状のアルキル基、アリール基及びヘテロ環基よりなる群から選ばれた少なくとも1つの置換基を有することがより好ましい。該環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及び2−ノルボルニル基が挙げられ、アリール基としては、フェニル基が挙げられ、ヘテロ環基としてはモルホリノ基が挙げられる。
【0063】
上記式(II)で表されるモノマー単位のみから成るホモポリマーであってもよいが、他の構成単位をも含む共重合体であってもよい。好適に用いられる他の構成単位としては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーより導入されるモノマー単位が挙げられる。
【0064】
式(II)で表される構造を有するモノマー単位を重合して得られるポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマ−等いずれでもよいが、ランダムポリマーであることが好ましい。次に式(II)で表される構造を有するモノマー単位を重合して得られるポリマーの具体例を示す。
【0065】
【化20】

【0066】
【化21】

【0067】
【化22】

【0068】
【化23】

【0069】
<一般式(II)で表されるモノマー単位を有する高分子の合成>
<合成例1:化合物P−1>
フラスコ内にA−1(0.8mol)とメタクリル酸メチル(0.2mol)、V−65(和光純薬社製、アゾ系熱重合開始剤)(0.03mol)、N,N−ジメチルアセトアミド(1L)を混合し、70℃で5時間撹拌した。反応後、水5Lに撹拌しながら少量ずつ反応液を入れていくと白色粉末が析出した。この粉末を濾過し、乾燥することでP−1を収量90%で得た。この物質の構造はNMR、IR、GPCにより確認した。
<合成例2:化合物P−3>フラスコ内にA−2(0.7mol)とメタクリル酸メチル(0.3mol)、V−65(和光純薬社製、アゾ系熱重合開始剤)(0.03mol)、N,N−ジメチルアセトアミド(1L)を混合し、70℃で5時間攪拌する。反応後、水5Lに攪拌しながら少量ずつ反応液を入れていくと白色粉末が析出する。この粉末を濾過し、乾燥することでP−3を収量93%で得た。この物質の構造はNMR、IR、GPCにより確認した。
<合成例3:化合物P−5>
フラスコ内にα−ベンジルオキシメタクリレート(0.7mol)とアクリル酸メチル(0.3mol)、V−65(和光純薬社製、アゾ系熱重合開始剤)(0.03mol)、N,N−ジメチルアセトアミド(1L)を混合し、70℃で5時間撹拌した。反応後、水5Lに撹拌しながら少量ずつ反応液を入れていくと白色粉末が析出した。この粉末を濾過し、乾燥することでP−5を収量95%で得た。この物質の構造はNMR、IR、GPCにより確認した。
以上の合成例に準じて具体例に示した全てのポリマーを合成できる。
【0070】
本発明の重合性組成物は、式(II)で表されるモノマー単位を有する高分子の替わりに、又は、式(II)で表されるモノマー単位を有する高分子に加えて、他の高分子を含んでいてもよい。
他の高分子には、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等が含まれる。式(II)で表されるモノマー単位を有する高分子に他の高分子を併用する場合には両者が相溶性を有することが好ましい。他の高分子の具体例として、特開2002−107927号公報の段落0063に記載された高分子が含まれる。
【0071】
式(II)で表されるモノマー単位を有する高分子の含有率は、高分子の全成分の重量に対して30重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上であることが特に好ましい。
【0072】
<高分子充填剤>
本発明の重合性組成物は、高分子充填剤を含有する。
本発明の重合性組成物は種々の用途に使用できるが、下記(1)及び(2)の用途が例示できる。
(1)ダイシングテープに代表される粘着性材料
(2)接着剤
上記の二用途に好ましく用いられる高分子充填剤について以下説明する。
【0073】
本発明の重合性組成物に使用する高分子充填剤としては、ゴム、アクリル−オレフィン共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、キシレン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂が例示でき、好ましくは、ゴム、アクリル−オレフィン共重合樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、キシレン樹脂、スチレン樹脂である。
本発明の重合性組成物を(1)粘着性材料として使用する場合、放射線硬化前後の識別性を良好にする観点から、ポリメタクリル酸メチル及びポリウレタン樹脂を併用することが好ましく、(2)接着剤として使用する場合、射線硬化後の接着力を大きくする観点から、キシレン樹脂にアクリルゴム及びポリビニルアセタール樹脂を併用することが好ましい。
【0074】
高分子充填剤は、本発明の重合性組成物の用途により、該重合性組成物に対する添加量が異なる。(1)粘着性材料の場合、充填剤の添加量は、20〜40重量部であることが好ましく、25〜35重量部であることがより好ましい。また、ポリメタクリル酸メチル及びポリウレタン樹脂を併用する系でのポリウレタン樹脂の添加量は、1〜20重量部であることが好ましく、5〜15重量部であることがより好ましい。一方、(2)接着剤の場合、充填剤の添加量は、20〜40重量部であることが好ましく、25〜35重量部であることがより好ましい。また、キシレン樹脂にアクリルゴム及びポリビニルアセタール樹脂を併用する系でのキシレン樹脂の添加量は、5〜15重量部であることが好ましい。さらに、ポリビニルアセタール樹脂の添加量は、1〜20重量部であることが好ましく、5〜15重量部であることがより好ましい。
【0075】
<粘着付与剤>
本発明の重合性組成物を(2)接着剤として使用する場合、粘着付与剤を使用できる。
粘着付与剤とは、高分子に添加して粘着性を付与するものであり、ゴム系粘着剤は、粘着性を出すのにレジン状の粘着付与剤(タッキファイヤー)を主要成分として用いる。粘着付与剤の添加量はおよそゴム100に対して60〜110部である。アクリル系の粘着剤では、粘着剤を使うとしても少量である。大量に使われている粘着付与剤には石油精製時のC5、C9留分のオリゴマーがある。C5留分からのタッキファイヤーは水素化された成分を含み、多くの粘着剤と相溶する。そのよく使われるタッキファイヤーには天然ロジンエステル、クマロン−インデン樹脂、α−メチルスチレンとビニルトルエンとの共重合体があり、C9系の炭化水素系タッキファイヤーと似た性質を示す。
【0076】
本発明の重合性組成物を(2)接着剤として使用する場合、製品の品質を向上させるために、消泡剤、レベリング剤も添加できる。
【0077】
<重合開始剤>
本発明においては、重合開始剤を使用することができる。
本発明の重合性化合物に用いることのできる重合開始剤は、外部エネルギーを吸収してラジカル重合開始種を生成する化合物である。重合を開始するために使用される外部エネルギーは、熱及び活性放射線に大別され、それぞれ、熱重合開始剤及び光重合開始剤が使用される。活性放射線としては、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できるが、紫外線が好ましい。
【0078】
重合開始剤としては、周知のラジカル重合開始剤を使用することができる。なお、ラジカル重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、クロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノン、ベンゾフェノン類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、チオキサントン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアントラキノン、カンファーキノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等が挙げられ、中でも、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。
【0079】
重合開始剤の含有率は、感度の点で、好ましくは、重合性組成物全量の0.005〜10重量%である。より好ましくは、0.01〜7重量%、最も好ましくは、0.02〜5重量%である。
【0080】
<支持体>
粘着性材料には、支持体を使用することができる。
支持体としては、放射線を透過する限りにおいて特に制限されず、プラスチック、ゴム等が好ましく用いられる。このような支持体として使用しうる具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのα−オレフィンの単独重合体または共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン−酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系単独重合体あるいは共重合体、フッ化ビニル−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などのフッ素系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のエンジニアリングプラスチックなどの単独あるいは混合物が挙げられる。この支持体の形状はシートまたはフィルム状が一般的であり、上述した樹脂の単独あるいは複数層からなり、その厚さは10〜200μm程度とするのが好ましく、その厚さは25〜150μm程度とするのがより好ましく、最も好ましいのは、40〜100μmである。
【0081】
<添加剤>
粘着性材料には、添加剤を使用することができる。添加剤を使用することで、放射線照射前後の識別性が良好となり、優れた粘着性材料が得られる。添加剤には、シアヌレートまたはイソシアヌレート化合物を使用することが好ましく、多官能イソシアヌレートがより好ましい。
このシアヌレートまたはイソシアヌレート化合物は、分子内にトリアジン環またはイソトリアジン環を有し、さらに放射線重合性のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物であり、モノマー、オリゴマーまたはこれらの混合物であっても差し支えない。トリアジン環またはイソトリアジン環を有する化合物は一般にハロシアン化合物、ジアニリン化合物、ジイソシアネート化合物などを原料として常法の環化反応によって合成することができる。さらにこのようにして合成された化合物に放射線重合性エチレン性不飽和二重結合含有基、例えばビニル基、アリル基、アクリロキシ基もしくはメタクリロキシ基等を含む官能基を導入してこの発明に使用される化合物が得られる。
【0082】
本発明では上記の点以外はシアヌレートまたはイソシアヌレート化合物については特に制限はないが、さらに詳しく述べればトリアジン環またはイソトリアジン環に導入されたエチレン性不飽和二重結合基がいわゆる剛直な分子構造、例えば芳香環、複素環基等を含まないものが望ましい。その理由はこれらによって重合性組成物に過度の剛直性を与えては、粘着性材料が放射線照射により過度に脆化するからである。したがってエチレン性不飽和二重結合とトリアジン環またはイソトリアジン環との間の結合基は原子の自由回転性に富む基を含むことが好ましい。これらの基を例示すると、アルキレン基、アルキリデン基などの脂肪族基等であり、これらには−O−、−OCO−、−COO−、−NHCO−、−NHCOO−結合などを有していてもよい。なおこの結合基が−O−を介してトリアジン環に結合する場合には、この−O−に結合する3つのアルキレン基、アルキリデン基などのうち少なくとも1つはその炭素数は2以上がよい。
【0083】
このようなシアヌレートまたはイソシアヌレート化合物の具体例としては、2−プロペニル−ジ−3−ブテニルシアヌレート、2−ヒドロキシエチル−ビス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2−アクリロキシエチル)2−{(5−アクリロキシヘキシル)−オキシ}エチルイソシアヌレート、トリス(1,3−ジアクリロキシ−2−プロピル−オキシカルボニルアミノ−n−ヘキシル)イソシアヌレート、トリス(1−アクリロキシエチル−3−メタクリロキシ−2−プロピル−オキシカルボニルアミノ−n−ヘキシル)イソシアヌレート、トリス(4−アクリロキシ−n−ブチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0084】
上記シアヌレートまたはイソシアヌレート化合物のモノマーまたはオリゴマーの繰り返し単位当たりのエチレン性不飽和二重結合の数は通常少なくとも2個有するのがよく、より好ましくは2〜6個がよい。この二重結合の数が2個未満では放射線照射により粘着強度を低下せしめるに十分な架橋度が得られず、また6個を越えては放射線照射後の粘着剤の脆化を過度にすることがある。
【0085】
本発明の重合性組成物におけるシアヌレートまたはイソシアヌレート化合物の配合量は式(I)で表される化合物100重量部に対して1〜500重量部が好ましく、2〜400重量部がより好ましく、もっとも好ましくは3〜300重量部である。この配合量が少なすぎると粘着性材料の放射線照射による三次元網状化が不十分となり、アクリル系粘着剤の流動性阻止を制御することができず、容易に素子をピックアップすることができる程度に素子固定粘着力が低下せず好ましくない。また逆にこの配合量が多すぎるとアクリル系粘着剤に対する可塑化効果が大きく、ダイシング時の回転丸刃による切断衝撃力または洗浄水の水圧に耐えうるだけに十分な素子固定粘着力が得られなくなる。
【実施例】
【0086】
以下、具体的に実施例と比較例とを挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特にことわりのない限り「部」は重量部を表すものとする。
【0087】
(実施例1)
表1の重合性化合物[X](A−4) 50部
表1の高分子[Y](P−1) 50部
充填剤1:ポリメタクリル酸メチル(平均粒径 8μm)(ジュリマーMB−1 日本純薬(株)製) (30−r)部
充填剤2:ポリウレタン樹脂(平均粒径 7μm)(ダイナミックビーズ 大日精化工業(株)製) r部
開始剤:α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 0.5部
添加剤:多官能イソシアネート(日本ポリウレタン(株)製) 1.5部
を混合して調製した粘着性の重合性組成物を、厚み100μmのポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚みが20μmになるように塗布し、ダイシングテープを作製した。
【0088】
<識別性の評価>
上記ダイシングテープについて、紫外線照射前後の粘着力の比(照射前の粘着力/照射後の粘着力:g/25mm巾)とし、粘着力の比が大きいほど識別性に優れているものとした。
直径5インチのシリコンウエハ表面に、ダイシングテープを貼着し、JIS−Z0237に基づいて紫外線照射前後の粘着力を測定した(90゜剥離、剥離速度50mm/min)。紫外線ランプは高圧水銀灯80W/cm2を用い、照射時間は10秒とした。結果を表1に示す。
【0089】
<感度の評価>
ダイシングテープに固定した直径5インチのシリコンウエハを、水で洗浄しつつ回転丸刃で20×20mmのサイズにフルカットで切断し、乾燥後高圧水銀灯下で紫外線照射時間を5秒〜20秒まで1秒刻みで変更した後、素子のピックアップを行い、ピックアップ性が良好となる照射時間を測定し感度を評価した。ピックアップ性が良好となるまでの時間が短いほど感度が良好と判断し、生産性向上の観点で製品としての許容レベルは8秒以下とした。結果を表1に示す。
【0090】
<安定性の評価>
紫外線照射前の上記ダイシングテープを45℃で3日間保持した。その後、上記と同様の感度試験を行い、安定性を評価した。ピックアップ性が良好となるまでの時間が短いほど感度が良好と判断し、生産性向上の観点で製品としての許容レベルは10秒以下とした。結果を表1に示す。
【0091】
(実施例2〜8)
表1に記載の重合性化合物及び高分子を用い、充填剤1を30−r部、充填剤2をr部用いた以外は実施例1と同様にして識別性及び安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0092】
(実施例9)
表1に記載の重合性化合物を用い、高分子として2−エチルヘキシルアクリレート/n−ブチルアクリレート(共重合比30:70 Mw2.0万)を用い、充填剤1を20部、充填剤2を10部用いた以外は実施例1と同様にして識別性、感度及び安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0093】
(実施例10)
表1に記載の重合性化合物を用い、高分子として2−エチルヘキシルアクリレート/n−ブチルアクリレート(共重合比30:70 Mw2.0万)を用い、充填剤1を30部用いた以外は実施例1と同様にして識別性、感度及び安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0094】
(実施例11)
表1に記載の高分子を用い、重合性化合物としてトリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートとC−7を50重量%ずつ混合したものを用い、充填剤1を25部、充填剤2を5部用いた以外は実施例1と同様にして識別性、感度及び安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0095】
(実施例12)
表1に記載の高分子を用い、重合性化合物としてトリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートとA−5をそれぞれ70重量%及び30重量%混合したものを用い、充填剤1を25部、充填剤2を5部用いた以外は実施例1と同様にして識別性、感度及び安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0096】
(比較例1〜4)
表1に記載の重合性化合物及び高分子を用い、充填剤1を30−r部、充填剤2をr部用いた以外は実施例1と同様にして識別性、感度及び安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
表中の記号は以下に示す通りである。
X1:トリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート/C−7=50/50(重量%)
X2:トリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート/A−5=70/30(重量%)
T1:トリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート
T2:ヘキサンジオールジアクリレート
T3:トリエチレングリコールジアクリレート
T4:ペンタエリスリトールテトラアクリレート
Y1:2−エチルヘキシルアクリレート/n−ブチルアクリレート=30/70% Mw2.0万
【0099】
表1に示す結果より本発明のダイシングテープは、高感度、高識別性及び高安定性である。
【0100】
(実施例13)
表1の重合性化合物[X](A−1) 50部
表1の高分子[Y](P−1) 10部
充填剤1:充填剤1:アクリルゴム(トアアクロンPS−210:(株)トウペ製)
(30−r)部
充填剤2:キシレン樹脂(ダイミックビーズ 大日精化社製) 10部
充填剤3:ポリビニルアセタール樹脂(エスレックB 積水化学(株)製) r部
開始剤:ベンジルジメチルケタール(イルガキュアー651 チバガイギー(株)製)
2部
消泡剤:BYK−020(ビックケミー(株)製) 1部
を混合して調製した重合性組成物を、高速撹拌機で分散させ、接着剤を作製した。そして接着剤を基板上に塗布して塗膜を形成し、この塗膜の厚さを50μmに調整した。
【0101】
<接着力の評価>
上記接着剤について、JIS−Z0237の試験方法に準拠して、180度剥離試験を行った。メタルハライドランプにより、上記塗膜に対し露光量400mJ/cm2の紫外線を照射し硬化して、接着力の評価をした。接着力の数値が大きいほど光による物性変化に優れているものとした。数値は、3.0(kg/インチ)以上を適合とした。結果を表2に示す。
【0102】
<感度の評価>
露光量を400mJ/cm2〜1000mJ/cm2まで50mJ/cm2刻みで変更し、接着力が3.0(kg/インチ)以上となる露光量を測定し感度を評価した。露光量が少ないほど感度が良好と判断し、生産性向上の観点で製品としての露光量の許容レベルを450mJ/cm2以下とした。結果を表2に示す。
【0103】
<安定性の評価>
紫外線照射前の上記接着剤を45℃で3日間保持した。その後、上記と同様の感度試験を行い、安定性を評価した。露光量が少ないほど感度が良好と判断し、生産性向上の観点で製品としての露光量の許容レベルを550mJ/cm2以下とした。結果を表2に示す。
【0104】
(実施例14〜20)
表2に記載の重合性化合物及び高分子を用い、充填剤1を30−r部、充填剤3をr部用いた以外は実施例13と同様にして接着力、感度及び安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0105】
(実施例21)
表2に記載の重合性化合物を用い、高分子として2−エチルヘキシルアクリレート/n−ブチルアクリレート(共重合比30:70 Mw2.0万)を用い、充填剤1を25部、充填剤3を5部用いた以外は実施例13と同様にして接着力、感度及び安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0106】
(実施例22)
表2に記載の重合性化合物を用い、高分子として2−エチルヘキシルアクリレート/n−ブチルアクリレート(共重合比30:70 Mw2.0万)を用い、充填剤1を30部用いた以外は実施例13と同様にして接着力、感度及び安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0107】
(実施例23)
表2に記載の高分子を用い、重合性化合物及びトリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートとC−7を50重量%ずつ混合したものを用い、充填剤1を20部、充填剤3を10部用いた以外は実施例13と同様にして接着力、感度及び安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0108】
(実施例24)
表2に記載の高分子を用い、重合性化合物としてトリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートとC−5をそれぞれ70重量%及び30重量%混合したものを用い、充填剤1を25部、充填剤2を5部用いた以外は実施例13と同様にして接着力、感度及び安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0109】
(比較例5〜8)
表2に記載の重合性化合物及び高分子を用い、充填剤1を30−r部、充填剤3をr部用いた以外は実施例13と同様にして接着力、感度及び安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0110】
【表2】

【0111】
表中の記号は以下に示す通りである。
X3:トリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート/C−7=50/50(重量%)
X4:トリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート/A−5=70/30(重量%)
T5:ベンジルアクリレート
T6:イソボルニルアクリレート
T7:トリエチレングリコールジアクリレート
T8:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
Y1:2−エチルヘキシルアクリレート/n−ブチルアクリレート=30/70% Mw2.0万
Y2:ポリアクリル酸ブチル Mw5.0万
【0112】
表2に示す結果より本発明の重合性組成物は、高感度及び高安定性である。また、本発明の重合性組成物を含有する接着剤は、接着力が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物、
式(II)で表されるモノマー単位を有する高分子及び/又はその他の付加重合型高分子、並びに、
高分子充填剤を含有することを特徴とする
重合性組成物。
【化1】

式(I)及び式(II)中、Q1はシアノ基又は−COX2基を表し、X1は、ヘテロ原子を介してα炭素に結合する水素原子、有機残基若しくはポリマー鎖、又は、ハロゲン原子を表し、X2は、ヘテロ原子を介してカルボニル基に結合する水素原子、有機残基若しくはポリマー鎖、又は、ハロゲン原子を表し、Ra、Rbは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は有機残基を表し、X1とX2、RaとRb、X1とRa又はRbとが互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【請求項2】
前記X1の該ヘテロ原子が、酸素原子又は窒素原子である請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項3】
前記X1が、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合及びアミド結合よりなる群から選ばれた少なくとも1つの基若しくは結合を有する有機残基又はポリマー鎖である請求項1又は2に記載の重合性組成物。
【請求項4】
前記X1及び/又はX2が脂環構造又は芳香環を含む置換基を有する請求項1〜3いずれか1つに記載の重合性組成物。
【請求項5】
前記高分子充填剤が、ゴム、アクリル−オレフィン共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、キシレン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1つの高分子充填剤である請求項1〜4いずれか1つに記載の重合性組成物。
【請求項6】
前記高分子充填剤を2種以上併用する請求項5に記載の重合性組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の重合性組成物を含む層を支持体上に厚さ10〜200μmの層に形成してなる粘着性材料。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の重合性組成物を含有する接着剤。

【公開番号】特開2008−201894(P2008−201894A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39417(P2007−39417)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】