説明

重心調整装置

【課題】回転翼の回転軸の軸線方向に沿った飛行に加え、簡易な構造で、回転翼の回転軸の軸線方向に交差する方向への飛行を実現できる、操縦の容易な飛行玩具を実現するための重心調整装置を提供する。
【解決手段】回転軸を中心に回転する回転翼を有する飛行玩具の重心の位置を調整する重心調整装置であって、第1の錘と、前記回転軸の軸線と交差する方向に延在する第1の錘支持部材と、第1の錘を保持し、前記第1の支持部材の所定位置に係止可能な第1の錘位置決め手段と、を備え、前記第1の錘支持部材の延在する方向に沿って前記飛行玩具の重心の位置を調整することにより、前記第1の錘支持部材の延在する方向へ前記飛行玩具を飛行可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として回転軸を中心に回転する回転翼を有する飛行玩具の重心の位置を調整する重心調整装置に関し、特に、回転翼の回転軸の軸線方向と交差する方向へ飛行玩具を飛行可能にする重心調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、胴体と、胴体に支持され回転駆動される回転翼と、胴体から後方に延びる尾部と、尾部の後端部に回転可能に支持され、胴体のカウンタトルクに抗する推力を発生される副回転翼と、を備える無線操縦式のヘリコプタ玩具が市販されている(例えば、特許文献1参照)。このヘリコプタ玩具では、2チャンネルの送信機を用いて回転翼と副回転翼を制御し、鉛直方向に上昇若しくは下降、または空中停止(ホバリング)といった無線操縦を行うことができる。
【0003】
【特許文献1】特許第4031022号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したヘリコプタ玩具では、上昇若しくは下降、または空中停止といった飛行、すなわち、回転翼の回転軸の軸線方向への飛行に限定されている。一方、ヘリコプタ玩具の回転軸の軸線に交差する方向への飛行を可能にすべく、回転翼のプロペラ翼のピッチや回転翼の回転軸の軸線の角度を変更し、玩具ヘリコプタの前後方向、すなわち軸線に交差する方向への推進力を発生させるヘリコプタ玩具が市販されている。
【0005】
しかしながら、回転軸の軸線に交差する方向への飛行を可能にするために回転翼に対する制御を行う飛行玩具は、その構造の複雑さや、操縦の困難性から、飛行玩具の一部の愛好者のみに利用される傾向にある。
【0006】
そこで、本発明は上記課題を鑑み、回転翼の回転軸の軸線方向に沿った飛行に加え、簡易な構造で、回転翼の回転軸の軸線方向に交差する方向への飛行を実現できる、操縦の容易な飛行玩具を実現するための重心調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の重心調整装置は、回転軸を中心に回転する回転翼を有する飛行玩具の重心の位置を調整する重心調整装置であって、第1の錘と、前記回転軸の軸線と交差する方向に延在する第1の錘支持部材と、第1の錘を保持し、前記第1の支持部材の所定位置に係止可能な第1の錘位置決め手段と、を備え、前記第1の錘支持部材の延在する方向に沿って前記飛行玩具の重心の位置を調整することにより、前記第1の錘支持部材の延在する方向へ前記飛行玩具を飛行可能にすることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の重心調整装置によれば、前記第1の錘位置決め手段は、所定以上の力が加わると前記第1の錘支持部材に沿って摺動可能であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の重心調整装置によれば、前記飛行玩具は胴体を有するヘリコプタ玩具であり、前記回転翼は前記胴体に回転可能に支持され、前記第1の錘支持手段は前記胴体から延びる尾部であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の重心調整装置によれば、前記尾部には、前記回転翼によるカウンタトルクに抗するための副回転翼が回転可能に支持され、前記ヘリコプタ玩具は、前記回転翼の回転と前記副回転翼の回転とを制御することにより飛行する2チャンネル制御式の無線操縦式ヘリコプタであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の重心調整装置によれば、前記第1の錘が前記第1の錘支持部材の前記胴体側から最も遠い位置にあるときは、前記ヘリコプタ玩具の重心の位置がほぼ前記回転軸の軸線上に位置することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の重心調整装置によれば、前記飛行玩具はヘリコプタ玩具であり、前記回転翼は互いに反対方向に回転する2つの回転翼部から構成され、前記2つの回転翼部は異心若しくは同心の回転軸に固定されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の重心調整装置によれば、さらに、第2の錘と、前記回転軸の軸線の方向と前記第1の錘支持部材の延在する方向とにより形成される平面に交差する方向に延在する第2の錘支持部材と、第2の錘を保持し、前記第2の錘支持部材の所定位置に係止可能な第2の錘位置決め手段と、を備え、前記第2の錘支持部材の延在する方向に沿って前記飛行玩具の重心の位置を調整することにより、前記第1の錘支持部材の延在する方向へ前記飛行玩具を飛行可能にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回転翼の回転軸の軸線方向に飛行ができる飛行玩具に、回転翼の回転軸の軸線方向に交差する方向に沿って飛行玩具の重心の位置を調整できる重心調整装置を設けることにより、構造を複雑にすることなく、広く一般の使用者であっても、ホバリング状態のみならず、回転軸の軸線方向に交差する方向へも容易に飛行できる飛行玩具を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明に係る重心調整装置を、無線操縦式のヘリコプタ玩具に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、第1の錘202が前方に位置する第1の実施形態のヘリコプタ玩具1の側面図、図2は、第1の錘202が後方に位置する第1の実施形態のヘリコプタ玩具1の側面図、図3は、固定部材204を取り外した状態のヘリコプタ玩具を左前方から見た斜視図、図4は、固定部材204を取り外した状態のヘリコプタ玩具1を右前方から見た斜視図である。
【0016】
ヘリコプタ玩具1は、主として、胴体2と、尾部3(110)と、回転翼4と、副回転翼6と、重心調整装置200と、を備え、回転翼4の回転と副回転翼6の回転とを制御するための2チャンネルの図示しないコントローラ(送信機)で無線操縦される構成である。なお、本実施形態ではヘリコプタ玩具1の回転翼4及び補助回転翼5の制御を、コントローラから送信される赤外線、AM(振幅変調)波、FM(周波数変調)波等の無線波を用いて行う。
【0017】
重心調整装置200は、第1の錘202と、回転軸の軸線270の延びる方向(図中の鉛直方向)と交差する方向(図中の水平方向)に延在する第1の錘支持部材、すなわち尾部110と、尾部110の所定位置において第1の錘202を係止する第1の錘位置決め手段、すなわち固定部材204と、を備える。なお、固定部材204は、第1の支持部材である尾部110の長手方向に沿って使用者が所定以上の力を加えると摺動可能であり、ヘリコプタ玩具1の飛行中には、移動しない程度の摩擦力で、固定部材204が係止されている。
【0018】
図1乃至図4に示すように、固定部材204は、ヘリコプタ玩具1の胴体2の後部2aの輪郭形状と相補的な屈曲形状である屈曲部204aを有する板状部材である。すなわち、図2に示すように、胴体2の後部2aを構成する第1の傾斜面230と第2の傾斜面232とは鈍角で連続する構成であるところ、固定部材204の屈曲部204aも、ほぼ同じ角度で連続する第1の傾斜面236及び第2の傾斜面238により構成され、屈曲部204aが胴体2の後部2aにぴったりと接触する構成である。
【0019】
固定部材204の下端部204cには、円柱状の第1の錘202を保持するための第1の錘保持部203が固定部材204と一体的に成形されている。第1の錘保持部203は、固定部材204の厚さ方向に延在する有底円筒部材である。円柱形状の第1の錘202は、第1の錘保持部203内に、締り嵌めで固定される。
【0020】
また、固定部材204の上端部には、尾部110の所定位置で係止可能かつ、尾部110に対して摺動する係止部204bが設けられている。係止部204bの長手方向長さ245は、固定部材204の、尾部110が延在する方向の長さ、すなわち長手方向長さ241より短く寸法付けされている。さらに、本実施形態では、固定部材204が尾部110から下方に延在するように装着され、固定部材204の長手方向長さ241が、固定部材204の、軸線270が延在する方向の長さ、すなわち短手方向長さ243の約1.5倍となるように寸法付けされている。このように、胴体2の形状に適合させて固定部材204を形成することにより、第1の錘202を尾部110に直接装着する構成に比べ、玩具ヘリコプタ1の重心(CG)を前方に位置付けることができる。
【0021】
従って、図1に示すように、固定部材204を胴体2の後部2aに当接させた状態では、第1の錘202が、後部2aから胴体2の長手方向長さの約5分の1の位置、若しくは、軸線270と後部2aとの間のほぼ中間位置に配置できることになる。
【0022】
また、図2に示すように、固定部材204を尾部110の後端部に位置付けると、固定部材204は、側面視で尾部110の下方に延在する垂直尾翼108と重なるような位置関係となり、固定部材204は、垂直尾翼108としても機能することになる。
【0023】
なお、第1の錘202は、その重心が、固定部材204の厚さ方向のほぼ中央、換言すると、第1の錘202の重心がヘリコプタ玩具1を前方若しくは後方から見たときの中心面(図7(a)(b)の符号271参照)に位置するように配置され、ヘリコプタ玩具1の左右のバランスが保たれている。第1の錘の材料は、金属、プラスチック等適宜選択できる。
【0024】
図3及び図4に示すように、固定部材204の係止部204bは、尾部110の四角形状断面に相補的な四角形状の穴を有する筒状部材である。係止部204bをこのような形状とすることにより、固定部材204が尾部110の回りへの回転移動を確実に防止できる。この係止部204bは、上面207、下面211、2つの対向する側面209、213とから形成される。側面209には、角形穴215が形成されている。側面209の角形穴215は、方形を構成する1辺を残し3辺を切り、方形領域すなわち切欠片209aを、切られていない1辺に沿って側面213方向に折り曲げて形成される。折り曲げられた状態の切欠片209aが尾部110に係合すると、再度折り曲げた状態に戻ろうとすることにより生じる付勢力が尾部110に加わり、ヘリコプタ玩具1の飛行中にずれることなく、固定部材204が所定位置に係止されることになる。
【0025】
なお、固定部材204を尾部110に位置決めするための手段は、上記構成に限定されず、スナップ嵌めで固定するC状クリップ等、固定部材204を取り外し可能に固定できるものであればよい。
【0026】
さらに、固定部材204は、プラスチック、金属、合金等の種々の材料から形成できる。第1の錘202は、ヘリコプタ玩具1と固定部材204(第1の錘202を除く)を含めた重量の1乃至15パーセントの重量、より好ましくは、3乃至10パーセントの重量とすると、第1の錘202を有する固定部材204の移動に追随して、ヘリコプタ玩具1の重心(CG)が移動する構成となる
【0027】
次に、ヘリコプタ玩具1のその他の構成について簡単に説明する。回転翼4は、2つのプロペラ翼12から構成され、回転駆動されるロータシャフト8に嵌合するロータヘッド7にスピンドル15を介して連結され、上下に揺動可能である。2つのプロペラ翼12の長手方向軸はほぼ一直線上に延び、その長手方向軸は、スピンドル15の中心線とほぼ一致し、ロータシャフト8に対して交差する。
【0028】
ロータシャフト8は、ヘリコプタ玩具1の胴体2内に配置されるベアリングにより回転可能に支持されるとともに、図示しない第1のモータにより回転駆動される。第1のモータは、図示しない電池から供給される電力により駆動する。なお、プロペラ翼の数は3枚もしくはそれ以上の枚数により構成することも可能である。
【0029】
また、ヘリコプタ玩具1は、補助回転翼5を備える。補助回転翼5は、回転翼4が連結されるロータヘッド7に対して上下に揺動可能に連結され、ロータシャフト8からの回転力により回転する。すなわち、回転翼4と補助回転翼4とはほぼ同期して駆動される。補助回転翼5は、2つの羽根28を備え、各羽根28の長手方向軸は一直線上に延在する。
【0030】
なお、回転翼4のプロペラ翼12の長手方向軸と補助回転翼5の長手方向軸とは、ロータシャフト8の長手方向に沿って見た場合には、一致するか僅かな角度ずらした関係である。従って、羽根12とプロペラ翼28とが回転すると、回転角度方向位置(位相が)がほぼ同じとなる。
【0031】
また、補助回転翼5の羽根28の先端には、2つの羽根28それぞれに安定用の錘39が固定されている。羽根28はその全長がプロペラ翼12より短く寸法づけされている。
【0032】
さらに、回転翼4と補助回転翼5とは、ロッド31、第1のジョイント33、第2のジョイント36、第1のレバーアーム34、第2のレバーアーム37から構成されるリンク機構により連結され、回転翼4の揺動と補助回転翼5の揺動とは同期する。
【0033】
上記構成の回転翼4及び補助回転翼5によれば、ヘリコプタ玩具1が安定的に空中で静止している状態では、回転翼4及び補助回転翼5は、その回転面をロータシャフト8に垂直に維持する。しかし、胴体2が外乱によってバランスを失ったときには、回転翼5の回転面も傾くが、比較的自由度の大きい補助回転翼5は、その回転により生じる遠心力により回転面を水平に維持する傾向を示し、前述のリンク機構を介して回転翼4の回転面の傾ききを補正する機能を果たす。なお、本実施形態及び後述する第2の実施形態において、補助回転翼5を備える玩具ヘリコプタであるが、本発明の重心調整装置を適用できる飛行玩具が、補助回転翼を備える玩具ヘリコプタに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0034】
また、胴体2に連結される尾部110の後端部には、副回転翼6が配置されている。副回転翼6は、第2のモータ18により第2のロータシャフト17(図3参照)を介して連結されている。第2のロータシャフト17は、ロータシャフト8の軸線270に交差する方向に延在する。また、第2のモータ18は、前述した図示しない電池から供給される電力により駆動され、副回転翼6を回転させる。この副回転翼6は、回転翼4が回転することにより胴体2に生じるカウンタトルクに抗する推力を発生させる。なお、本実施形態では、副回転翼6のプロペラ翼6aを2枚としたが、3枚もしくはそれ以上とすることもできる。
【0035】
胴体2の下部には、一対の脚部100、102が、胴体2を正面から見て左右対称に鉛直方向に対して所定角度で傾斜するように下方に突出して設けられている。この脚部100、102により、ヘリコプタ玩具1を地上に安定して載置又は着地させることができる。
【0036】
上記構成のヘリコプタ玩具1の重心(CG)の調整は、飛行させる前に使用者が行う。なお、第1の錘202を尾部110の最後尾(副回転翼6近傍)に配置した状態では、ヘリコプタ玩具1の重心GCは、回転軸8の軸線270上もしくは軸線270より僅かに前方に位置付けるように設定されている。
【0037】
使用者がヘリコプタ玩具1で昇降もしくは空中停止をさせる場合には、固定部材204を尾部110の最後尾(副回転翼6近傍)に配置する(図2参照)。そして、図示しない2チャンネルのコントローラを用いて、回転翼4及び副回転翼6の回転数を制御し、昇降動作、空中停止動作、胴体の向きの変更動作を行う。
【0038】
反対に、ヘリコプタ玩具1を前方向に飛行させる場合には、使用者は、固定部材204を胴体2の後部2a側にずらした任意の位置に配置する。そして使用者は、コントローラで回転翼4及び副回転翼6の回転を制御して、ヘリコプタ玩具1の前方向への飛行動作、胴体の向きの変更動作を行う。
【0039】
このように、使用者は、胴体2とスタビライザ108との間で固定部材204を適宜位置決めすることにより、ヘリコプタ玩具1の重心(CG)を調整し、ヘリコプタ玩具1の前方向へのスピードを任意に変更することができる。
【0040】
〔固定部材の変形例〕
以下に、重心調整装置を構成する固定部材の変形例について図5及び図6を用いて説明する。図5は、変形例1に係る固定部材301が装着されたヘリコプタ玩具101の側面図、図6は、変形例2に係る固定部材401が装着されたヘリコプタ玩具101の側面図である。
【0041】
なお、図5及び図6に示す玩具ヘリコプタ101は、第1の実施形態の玩具ヘリコプタ1と異なり、スタビライザが尾部310、410の後端部に設けられていない。その他の構成要素については、形状は異なるものの第1の実施形態と同じ機能を有する構成要素を備えているので詳細は割愛する。
【0042】
図5に示す変形例1において、重心調整装置300は、ロータシャフト8の軸線と交差する方向に延在する第1の錘支持部材である尾部310と、第1の錘として機能し、かつ、尾部310の所定位置に係止するための係止部209a、209bを有する固定部材301と、を備える。固定部材301は、金属もしくはプラスチック等の材料から形成し、ヘリコプタ玩具101の全重量に対して3乃至10パーセントの重量となるように設定すると、固定部材301の移動に追随して、ヘリコプタ玩具101の重心が移動する構成となる。
【0043】
固定部材301は、側面視で台形形状の板状部材であり、尾部310に沿って延在する上辺301aは、上辺301aに対向する下辺301bの長さより長く寸法づけされ、上辺301a及び301bは互いに平行に延びる。従って、固定部材301は、図5中において下方に向かい先細りとなっている。
【0044】
固定部材301には、固定部材301を尾部310に沿って摺動可能とし、所定位置で固定するための係止部209a、209bを有する。係止部209a、209bは、固定部材301の上辺301aの両端部において、互いに離間して設けられている。第1の実施形態の係止部204bと同様に、係止部209a及び209bのそれぞれは、尾部310の四角形状断面と相補的な四角形状の穴を形成する筒状部材である。さらに、第1の実施形態と同様に、係止部209a、209bの側面に角形穴が形成され、角形穴を形成する切欠片215a、215bが尾部310側に折り曲げられている。折り曲げられた状態の切欠片215aが尾部310に係合する際に生じる付勢力により、ヘリコプタ玩具101の飛行中にずれることなく、固定部材301が尾部310の所定位置に係止されることになる。
【0045】
上記構成の重心調整装置300の固定部材301を適宜移動させることにより、ヘリコプタ玩具101の重心(CG)の位置を移動し、単に上昇下降、及び空中停止といった飛行のみではなく、前方向への飛行を可能にすることができる。なお、固定部材301を胴体102から最も離れた位置に固定したときには、ヘリコプタ玩具101の重心(CG)がロータシャフト8の軸線270上に位置するように構成し、胴体102に固定部材301を近づけるに従い、ヘリコプタ玩具101の重心(CG)が、前方向に軸線270から離れていくように設定する。
【0046】
図6に示す変形例2の固定部材401は、側面視で四角形状の板状部材であり、変形例1に係る固定部材301とは形状が異なる。係止部409a、409bを有する上辺401aは、尾部410に沿って延びている。上辺401aの一端部は、前方辺401bの一端部に連結し、上辺401aの他端部は、後方辺401cの一端部に連結し、前方辺401bと後方辺401cとは互いにほぼ平行に延びる。前方辺401bの他端部と後方辺401cの他端部とは、上辺401aに対向し水平方向に対して傾斜する下辺401dに連結される。なお、前方辺401bは、後方辺401cより短く寸法付けされている。また、上辺401aは前方辺401bに対して鋭角に連結され、上辺401aは後方辺401cに対して鈍角に連結されている。
【0047】
さらに、固定部材401の係止部409a及び409bは、上辺401aの両端部より若干内側において、互いに離間して配置されている。したがって、この固定部材401は、胴体102から最も離れた位置では、後方辺401cと下辺401dとにより形成される角領域401eが、側面視において尾部410に設けられた副回転翼6の回転領域内に重なる位置関係となる。もちろん、固定部材401と副回転翼6が物理的に干渉することはなく、図面の表裏方向にずれて配置されていることは言うまでもない。
【0048】
また、変形例1と同様に、係止部409a、409bの側面に角形穴が形成され、角形穴を形成する切欠片415a、415bが尾部410側に折り曲げられている。折り曲げられた状態の切欠片415aが尾部410に係合する際に生じる付勢力により、ヘリコプタ玩具101の飛行中にずれることなく、固定部材401が所定位置に係止されることになる。
【0049】
上記構成の重心調整装置400の固定部材401を適宜移動させることにより、ヘリコプタ玩具101の重心の位置を移動し、単に上昇下降、及び空中停止といった飛行のみではなく、前方向への飛行を可能にすることができる。なお、固定部材401を胴体102から最も離れた位置に固定したときには、ヘリコプタ玩具101の重心(CG)がロータシャフト8の軸線270上に位置するように構成し、胴体102に固定部材301を近づけるに従い、ヘリコプタ玩具101の重心(CG)が軸線270より前方向に離れていくように設定する。
【0050】
上記変形例1、2では、固定部材301、401は、相対的にその面積を大きくすることにより、重心の位置を調整する機能のみでなく、ヘリコプタ玩具101の姿勢を安定化させる機能も果たす。すなわち、飛行中には、回転翼4からの空気流により生じる推力が固定部材301、401に付与され、回転翼4の回転に伴うカウンタトルクを相殺させることができる。よって、変形例1、2によれば、カウンタトルクに抗するための全推力を、ほぼ副回転翼6のみで発生させる第1の実施形態と比べて、電力量を削減でき、ヘリコプタ玩具の連続飛行時間を長くすることができる。
【0051】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態は、第1の実施形態のヘリコプタ玩具1に、左右方向への飛行も可能にするための重心移動装置を組み込んだヘリコプタ玩具である。図7(a)は、ヘリコプタ玩具1の正面図であり、図7(b)は、重心調整装置500を示す部分斜視図であり、図7(c)は、ヘリコプタ玩具1の底面図である。なお、第2の実施形態に係るヘリコプタ玩具1は、図1乃至図4に示すヘリコプタ玩具1と、重心移動装置500を除き同じである。従って、特に説明のない事項については、第1の実施形態と同じことを意味する。
【0052】
重心調整装置500は、第2の錘502と、ロータシャフト8の軸線270(図7(a)参照)の方向と尾部110の延在する方向とにより形成される平面に交差する方向(図7(a)、(c)の左右方向)に延びる第2の錘支持部材である支持バー503と、第2の錘502を保持し、第2の錘支持部材503の所定位置に係止可能な第2の錘位置決め手段である固定部材509と、を備える。
【0053】
第2の錘502は、金属もしくはプラスチック等から成る円柱形状部材であり、固定部材509に設けられた錘収容穴541に固定されている。また、第2の錘502は、ヘリコプタ玩具1、第1の重心調整装置200(第1の錘202を含む)、及び第の2の重心調整装置500(第2の錘502を除く)を含めた重量の1乃至15パーセントの重量、より好ましくは、3乃至10パーセントの重量とすると、第2の錘502を有する固定部材509の移動に追随して、ヘリコプタ玩具1の重心(CG)が移動する構成となる。
【0054】
固定部材509は、直方体形状であり、固定部材509を支持バー503の所定位置に係止するための係止部509aが設けられている。係止部509aは、第1の実施形態の係止部204bと同様に、支持バー503の角形断面と相補的な角形穴を構成する貫通孔509bと、係止部509aの側面に角形穴を形成し、貫通孔509c側に折り曲げられた切欠片509cと、を有する。折り曲げられた状態の切欠片509cが支持バー503に係合すると、再度折り曲げた状態に戻ろうとすることにより生じる付勢力が支持バー503に加わり、ヘリコプタ玩具1の飛行中にずれることなく、固定部材509が支持バー503の所定位置に係止されることになる。この付勢力は、固定部材504は、支持バー503の長手方向(図7(c)中の左右方向)に使用者が所定以上の力を加えると摺動できる程度とし、ヘリコプタ玩具1が飛行中には、意図せずに移動しない程度の摩擦力である。
【0055】
使用者は、上記構成の重心調整装置500の固定部材509を適宜移動させることにより、玩具ヘリコプタ101の左右方向に関する重心(CG)の位置を移動し、左右方向への飛行を可能にすることができる。なお、固定部材509を支持バー503の中点に固定したとき、ヘリコプタ玩具101の左右対称面271上に重心(CG)が位置するように設定しておく。
【0056】
上記構成によれば、回転翼4及び副回転翼6を2チャンネルのコントローラで制御する飛行玩具であっても、前方、左右方向に飛行させることが可能となり、操縦の自由度を高めることができる。
【0057】
上記第1及び第2の実施形態では、ヘリコプタ玩具の尾部を第1及び第2の錘支持部材として用いたが、尾部とは別体で胴体から延び、前後方向に関して重心(CG)を変更できる棒部材を設ける構成とすることも可能である。
【0058】
上記第1及び第2の実施形態では、回転翼によるカウンタトルクを相殺するために副回転翼を設けた飛行玩具に、重心調整装置を適用した構成としたが、本発明の重心調整装置は種々の飛行玩具に適用できる。
【0059】
例えば、尾部に副回転翼を備えないヘリコプタ玩具、また、回転翼が2つの回転翼から構成され、2つの回転翼部が同軸のロータシャフトに固定され、互いに反転するヘリコプタ玩具、さらに、回転翼が、前後若しくは胴体を中心として左右に配置されたロータシャフトのそれぞれに固定され、互いに反転する2つの回転翼部から構成されるタンデム式もしくはサイドバイサイド式ヘリコプタ玩具、さらにまた、トンボ等の昆虫を模した形状、アニメのキャラクタを模した形状、ロボットを模した形状等であって、回転翼を回転することにより飛行する飛行玩具等に、本発明の重心調整装置が適用できることは言うまでもない。
【0060】
さらに、上記に例示した飛行玩具において、飛行安定性を確保するため、回転翼に対応して補助翼部を設けた構成であっても、本発明の重心調整装置を適用できることは言うまでもない。
【0061】
なお、タンデム式ヘリコプタ玩具のように、尾部を備えないタイプの飛行玩具の場合には、第1の錘支持部材として、玩具の前後方向に延びる棒状の部材を設けることで、本発明の目的を達成することができる。
【0062】
上述した第1及び第2の実施形態、変形例1、2では、重心調整装置の固定部材を尾部の最後尾に配置したときに、ヘリコプタ玩具の重心(CG)がほぼ回転軸7の軸線270上に位置する構成とした。これは、重心(CG)が、軸線270より尾部側に位置する構成では、回転翼による後方へ生じる推進力と、副回転翼による横方向への推進力とが干渉し、ヘリコプタ玩具の飛行姿勢が不安定になる恐れがあるからである。
【0063】
従って、尾部に副回転翼を備えないヘリコプタ玩具、また、2つの回転翼部が同軸のロータシャフトに固定され、互いに反転するヘリコプタ玩具、さらに、回転翼部が、前後若しくは胴体を中心として左右に配置されたロータシャフトのそれぞれに固定され、2つの回転翼部が互いに反転するヘリコプタ玩具では、副回転翼を備えるヘリコプタ玩具に固有の事情を考慮することなく重心の移動領域を任意に設定できる。
【0064】
上記第1及び第2の実施形態では、第1の重心調整部材200の固定部材204を屈曲形状としたが、本発明は、この構成に限定されることはない。すなわち、図5及び図6に示す側面視において丸みを帯びた台形形状等、種々の形状とすることができる。
【0065】
この発明は、その本質的特性から逸脱することなく数多くの形式のものとして具体化することができる。よって、上述した実施形態及び実施例は専ら説明上のものであり、本発明を制限するものではないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1の錘が前方に位置する実施形態1のヘリコプタ玩具1の側面図である。
【図2】第1の錘が後方に位置する実施形態1のヘリコプタ玩具1の側面図である。
【図3】第1の錘を取り外した状態のヘリコプタ玩具を左前方から見た斜視図である。
【図4】第1の錘を取り外した状態のヘリコプタ玩具を右前方から見た斜視図である。
【図5】変形例1に係る固定部材が装着されたヘリコプタ玩具の側面図である。
【図6】変形例2に係る固定部材が装着されたヘリコプタ玩具の側面図である。
【図7】(a)は、第2の実施形態に係るヘリコプタ玩具の正面図であり、(b)は、重心調整装置の部分斜視図であり、(c)は、第2の実施形態に係るヘリコプタ玩具の底面図である。
【符号の説明】
【0067】
1、101 ヘリコプタ玩具
2、102 胴体
3 尾部
4 回転翼
5 補助回転翼
6 副回転翼
7 ロータヘッド
8 ロータシャフト(回転軸)
12 プロペラ翼
15 スピンドル
17 第2のロータシャフト
18 第2のモータ
28 羽根
100、102 脚部
108 スタビライザ
110、310、410 尾部
200、300、400、500 重心調整装置
202 第1の錘
203 第1の錘保持部
204、301、401、509 固定部材
209a、215a、215b、415a、415b、509c 切欠片
204b、209a、209b、409a、409b、509a 係止部
215 角形穴
270 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転する回転翼を有する飛行玩具の重心の位置を調整する重心調整装置であって、
第1の錘と、
前記回転軸の軸線と交差する方向に延在する第1の錘支持部材と、
第1の錘を保持し、前記第1の支持部材の所定位置に係止可能な第1の錘位置決め手段と、を備え、
前記第1の錘支持部材の延在する方向に沿って前記飛行玩具の重心の位置を調整することにより、前記第1の錘支持部材の延在する方向へ前記飛行玩具を飛行可能にすることを特徴とする重心調整装置。
【請求項2】
前記第1の錘位置決め手段は、所定以上の力が加わると前記第1の錘支持部材に沿って摺動可能であることを特徴とする請求項1に記載の重心調整装置。
【請求項3】
前記飛行玩具は胴体を有するヘリコプタ玩具であり、前記回転翼は前記胴体に回転可能に支持され、前記第1の錘支持手段は前記胴体から延びる尾部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の重心調整装置。
【請求項4】
前記尾部には、前記回転翼によるカウンタトルクに抗するための副回転翼が回転可能に支持され、前記ヘリコプタ玩具は、前記回転翼の回転と前記副回転翼の回転とを制御することにより飛行する2チャンネル制御式の無線操縦式ヘリコプタであることを特徴とする請求項3に記載の重心調整装置。
【請求項5】
前記第1の錘が前記第1の錘支持部材の前記胴体側から最も遠い位置にあるときは、前記ヘリコプタ玩具の重心の位置がほぼ前記回転軸の軸線上に位置することを特徴とする請求項4に記載の重心調整装置。
【請求項6】
前記飛行玩具はヘリコプタ玩具であり、前記回転翼は互いに反対方向に回転する2つの回転翼部から構成され、前記2つの回転翼部は異心若しくは同心の回転軸に固定されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の重心調整装置。
【請求項7】
さらに、第2の錘と、前記回転軸の軸線の方向と前記第1の錘支持部材の延在する方向とにより形成される平面に交差する方向に延在する第2の錘支持部材と、第2の錘を保持し、前記第2の錘支持部材の所定位置に係止可能な第2の錘位置決め手段と、を備え、前記第2の錘支持部材の延在する方向に沿って前記飛行玩具の重心の位置を調整することにより、前記第1の錘支持部材の延在する方向へ前記飛行玩具を飛行可能にすることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の重心調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−88518(P2010−88518A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259005(P2008−259005)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(500464539)株式会社シー・シー・ピー (3)
【Fターム(参考)】