説明

重畳タグの識別方式

【課題】複数のタグが重畳していても、或いはタグと金属板とが重畳していても、これらのタグを確実に識別できる。
【解決手段】物品に添付されたタグ11〜13がアンテナコイル14とこのアンテナコイルに接続されたRFID素子16とを有し、複数の共振用コンデンサ19a〜19nがアンテナコイルと並列にかつ互いに並列に接続される。複数の共振用コンデンサにそれぞれ接続された複数のスイッチ24a〜24nが複数の共振用コンデンサをアンテナコイル及びRFID素子にそれぞれ電気的に接続又は遮断し、制御回路25が複数のスイッチを開閉制御する。この制御回路が複数のスイッチを開閉制御することにより、アンテナコイル及び複数の共振用コンデンサからなる共振回路の共振周波数が変更可能に構成される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、RFID(無線周波数識別:Radio Frequency Identification)技術を用いたタグに関する。更に詳しくはタグを複数の物品にそれぞれ添付し、これらのタグを重畳しても各タグを識別可能な方式に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、質問器とこの質問器の範囲内に存在する複数のタグとの間に単一の双方向通信チャンネルを有し、最初は質問器にタグの識別が知らされておらず、タグは質問器が単一周波数の信号に応答することにより活性化され、各タグはそれ自身を非活性化できるタグ識別システムが開示されている(特開平8−316888号)。このタグ識別システムでは、質問器の範囲内の全てのタグを活性化するのに用いられる第1信号及び質問器の範囲内のタグの数を示す第1値を含む第1照会メッセージを第1同報通信手段が質問器から同報通信し、各タグ毎に設けられた記憶手段が第1照会メッセージに応答して質問器により識別されていない識別表示をそのメモリに記憶するように構成される。
【0003】また各タグ毎に設けられた第1残留タグ形成手段が第1照会メッセージの受信に応答して第1値、各タグ毎のランダムビット及び記憶された識別表示に基づいて対応する計算を実行し、その対応する計算が所定の対応する結果を生ずるときに、それらのタグを非活性化することにより、第1組の残留する活性化されたタグを形成するように構成される。第1組の活性化された各タグを識別する第1非活性化手段が第1組の各タグのメモリに記憶された識別表示を質問器により識別が成功したことを示すように変更した後、これらのタグを非活性化するように構成される。
【0004】また質問器の範囲内の全てのタグを活性化する第2信号及び質問器の範囲内の識別されていないタグを示す第2値を含む第2照会メッセージを第2同報通信手段が質問器から同報通信し、第1値の代わりに第2値を用いて第1残留タグ形成手段及び第1非活性化手段による処理を実行する第2残留タグ形成手段及び第2非活性化手段が第2組の残留する活性化されたタグを形成することにより、識別されたタグの数を増すように構成される。更に質問器の範囲内の全てのタグの識別が終わるまで次の信号及び次の値を有する照会メッセージを用いて第2同報通信手段、第2残留タグ形成手段及び第2非活性化手段による処理を実行するように構成される。
【0005】このように構成されたタグ識別システムでは、タグが小さいグループに分割され、現に識別中のグループに属さないタグの電源をオフにすることにより電力を節約するように一度に1つのグループのタグが識別される。各タグはそれ自身に記憶されたパラメータ及び質問器から受信したパラメータから計算を実行することによりそれ自身をグループに入れる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の特開平8−316888号公報に示されたタグ識別システムでは、複数のタグが重畳すると、各タグのアンテナコイル間に相互誘導作用が生じ、タグの共振周波数が変化する。このため、質問器が周囲に交番磁場を形成しても、即ち質問器の送受信アンテナからタグが共振する電波(重畳していないタグが共振する電波)を発振しても、タグが共振しなくなり、タグのRFID素子に電力が供給されなくなる。この結果、質問器は重畳したタグを識別できなくなる不具合があった。本発明の目的は、複数のタグが重畳していても、或いはタグと金属板とが重畳していても、これらのタグを確実に識別できる、重畳タグの識別方式を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、図1及び図2に示すように、物品17に添付され、アンテナコイル14とこのアンテナコイル14に接続されたRFID素子16とを備えたタグの改良である。その特徴ある構成は、アンテナコイル14と並列にかつ互いに並列に接続された複数の共振用コンデンサ19a〜19nと、複数の共振用コンデンサ19a〜19nにそれぞれ接続され複数の共振用コンデンサ19a〜19nをアンテナコイル14及びRFID素子16にそれぞれ電気的に接続又は遮断する複数のスイッチ24a〜24nと、複数のスイッチ24a〜24nを開閉制御する制御回路25とを有し、制御回路25が複数のスイッチ24a〜24nを開閉制御することにより、アンテナコイル14及び複数の共振用コンデンサ19a〜19nからなる共振回路の共振周波数が変更可能に構成されたところにある。
【0008】上記複数のタグ11〜13は単独では同一の共振周波数を有していても、これらのタグ11〜13を重畳すると、タグ11〜13のアンテナコイル14同士の相互誘導作用によりそれぞれ異なった共振周波数を有するようになる。このため重畳したタグ11〜13に単独のタグが共振する周波数の電波を発振しても、各タグ11〜13は共振しなくなる。そこで請求項1に記載されたタグの識別方式では、重畳した複数のタグ11〜13のうち、例えばタグ11の制御回路25が複数のスイッチ24a〜24nを開閉制御することにより共振用コンデンサ19a〜19nの総静電容量が変化する。制御回路25はアンテナコイル14とスイッチ24a〜24nの閉じた共振用コンデンサ19a〜19nとにより構成される共振回路の共振周波数が、重畳しない単一のタグ11の共振周波数とほぼ同じになったときに、その開閉制御を停止する。これによりタグ11が共振するので、タグ11が活性化されてタグ11を識別することができる。他のタグ12,13についても上記と同様にして識別される。このようにして重畳した全てのタグ11〜13を短時間で順次識別することができる。
【0009】請求項2に係る発明は、図7に示すように、一端がアンテナコイル54の巻き線に所定の間隔をあけて接続され他端がRFID素子56に接続された複数のリード線57a〜57nと、複数のリード線57a〜57nにそれぞれ設けられアンテナコイル54及びRFID素子56を複数のリード線57a〜57nを介してそれぞれ電気的に接続又は遮断する複数のスイッチ58a〜58nと、複数のスイッチ58a〜58nを択一的に閉じる制御回路25とを有し、制御回路25が複数のスイッチ58a〜58nを択一的に閉じることにより、アンテナコイル54及びRFID素子56内の共振用コンデンサ56aからなる共振回路の共振周波数が変更可能に構成されたことを特徴とする。この請求項2に記載された重畳タグの識別方式では、重畳しない単一のタグ51が共振する電波を重畳したタグ51に向って発振すると、タグ51が共振しなくても各タグ51に微小な電圧が発生する。この電圧により所定のタグ51の制御回路25が作動し、この制御回路25が複数のスイッチ58a〜58bを択一的に閉じることにより、アンテナコイル54のインダクタンスが変化する。制御回路25は上記アンテナコイル54と共振用コンデンサ56aとにより構成される共振回路の共振周波数が、重畳しない単一のタグ51の共振周波数とほぼ同じになったときに、その開閉制御を停止する。これによりタグ51が共振するので、タグ51が活性化されてタグ51を識別することができる。他のタグについても上記と同様にして識別される。このようにして重畳した全てのタグ51を短時間で順次識別することができる。
【0010】請求項3に係る発明は、図8に示すように、アンテナコイル74に直列にかつ互いに並列に接続された複数の容量調整用コンデンサ77a〜77nと、複数の容量調整用コンデンサ77a〜77nにそれぞれ接続され複数の容量調整用コンデンサ77a〜77nをアンテナコイル74及びRFID素子76にそれぞれ電気的に接続又は遮断する複数のスイッチ78a〜78nと、複数のスイッチ78a〜78nを開閉制御する制御回路25とを有し、制御回路25が複数のスイッチ78a〜78nを開閉制御することにより、アンテナコイル74、複数の容量調整用コンデンサ77a〜77n及びRFID素子76内の共振用コンデンサ76aからなる共振回路の共振周波数が変更可能に構成されたことを特徴とする。この請求項3に記載された重畳タグの識別方式では、重畳しない単一のタグ71が共振する電波を重畳したタグ71に向って発振すると、タグ71が共振しなくても各タグ71に微小な電圧が発生する。この電圧により所定のタグ71の制御回路25が作動し、この制御回路25が複数のスイッチ78a〜78nを開閉制御することにより容量調整用コンデンサ77a〜77nの総静電容量が変化する。制御回路25はアンテナコイル74とスイッチ78a〜78nの閉じた容量調整用コンデンサ77a〜77nと共振用コンデンサ76aとにより構成される共振回路の共振周波数が、重畳しない単一のタグ71の共振周波数とほぼ同じになったときに、その開閉制御を停止する。これによりタグ71が共振するので、タグ71が活性化されてタグ71を識別することができる。他のタグについても上記と同様にして識別される。このようにして重畳した全てのタグ71を短時間で順次識別することができる。
【0011】請求項4に係る発明は、図9に示すように、物品に添付され、重畳用アンテナコイル94と、この重畳用アンテナコイル94に接続され重畳用コンデンサ96aが内蔵された重畳用RFID素子96とを備えたタグの改良である。その特徴ある構成は、タグ91を所定の枚数重畳したときに、重畳した各タグ91の共振周波数が重畳しない単一のタグ91の共振周波数と同一になるように、重畳用アンテナコイル94のインダクタンス及び重畳用コンデンサ96aの静電容量のいずれか一方又は双方が設定されたところにある。この請求項4に記載された重畳タグの識別方式では、予めタグ91を所定の枚数だけ重畳したときに各タグ91が共振するように重畳用アンテナコイル94のインダクタンス成分と重畳用コンデンサ96aの静電容量成分が調整されているので、所定の枚数だけ重畳したタグ91に質問器が所定の周波数の電波を発振すると、各タグ91はそれぞれ共振する。この結果、質問器は上記共振して活性化した各タグ91と順次通信することにより、各タグ91を確実に識別することができる。
【0012】請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明であって、更に重畳用アンテナコイル及び重畳用RFID素子の他に、重畳しないときに共振する単独用アンテナコイル及び単独用RFID素子が設けられたことを特徴とする。この請求項5に記載された重畳タグの識別方式では、タグが単独のときには、単独用アンテナコイルと単独用RFID素子に内蔵された単独用コンデンサとにより構成される単独用共振回路が共振してタグが識別される。一方、タグが重畳するときには、重畳用アンテナコイルと重畳用コンデンサにより構成される重畳用共振回路が共振してタグが識別される。
【0013】
【発明の実施の形態】次に本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、タグ11〜13はアンテナコイル14とこのアンテナコイル14に接続されたRFID素子16とを有する。またタグ11〜13はこの実施の形態では3枚であり、物品17にそれぞれ添付されて物品17とともに重畳される。各タグ11〜13は同一に構成される。アンテナコイル14は図3及び図4に示すように、絶縁導線を略正方形に渦巻き状に巻回してベース板18に貼付することにより形成され、或いはベース板18に積層したアルミニウム箔や銅箔等の導電性材料をエッチング法又は打抜き法等により不要部分を除去して略正方形の渦巻き状に形成される。RFID素子16はベース板18に貼付され(図4)、複数の共振用コンデンサ19a〜19n、ASK変調回路21、電圧レギュレータ22及び変調・復調ロジック部23を有する(図1)。
【0014】複数の共振用コンデンサ19a〜19nはアンテナコイル14に並列にかつ互いに並列に接続される。また複数の共振用コンデンサ19a〜19nにはこれらのコンデンサをアンテナコイル14及びRFID素子16にそれぞれ電気的に接続又は遮断する複数のスイッチ24a〜24nが接続され、これらのスイッチは制御回路25により開閉制御される。具体的には上記各スイッチ24a〜24nが各共振用コンデンサ19a〜19nに直列にそれぞれ接続されることにより、第1直列回路〜第n直列回路26a〜26nがそれぞれ構成される。各スイッチ24a〜24nは制御回路25からの信号により第1直列回路〜第n直列回路26a〜26nをそれぞれ開閉するように構成される。
【0015】制御回路25により上記各スイッチ24a〜24nが開閉制御されることにより、共振用コンデンサ19a〜19nの総静電容量が変化し、アンテナコイル14とスイッチ24a〜24nの閉じた共振用コンデンサ19a〜19nとからなる共振回路の共振周波数を、重畳しない単一のタグ11〜13の共振周波数となるように変更可能に構成される。この実施の形態では、全てのスイッチ24a〜24nが閉じた共振用コンデンサ19a〜19nとアンテナコイル14にて構成される共振回路の共振周波数が重畳しない単一のタグ11〜13の共振周波数以下(共振周波数の0.5倍〜1倍の周波数)となるように設定される。即ち、後述する質問器27によるタグ11〜13の識別前には、全てのスイッチ24a〜24nが閉じ状態に設定される。また上記各共振用コンデンサ19a〜19nの静電容量は製作上、タグ11〜13の重畳による共振周波数のシフト量に応じてそれぞれ変えて設定されることが好ましいが、同一に設定してもよい。
【0016】一方、この実施の形態ではRFID素子16はバッテリを有しない。このため共振用コンデンサ19a〜19nのうちスイッチ24a〜24nの閉じた共振用コンデンサ19a〜19nにはアンテナコイル14が特定の共振周波数の電波を受信したときにその電磁誘導で生じる電圧が印加される。上記スイッチ24a〜24nの閉じた共振用コンデンサ19a〜19nに印加された電圧は電圧レギュレータ22により整流され安定化されて変調・復調ロジック部23に供給され、これによりタグ11〜13が活性化されるように構成される。また変調・復調ロジック部23には物品固有のデータを記憶するメモリ(図示せず)が設けられる。このメモリはROM(read only memory)、RAM(ramdom-access memory)或いは不揮発性メモリ等であり、変調・復調ロジック部23の制御の下で質問器27からの電波のデータ通信による読出しコマンドに応じて記憶されたデータの読出しを行うとともに、質問器27からの書込みコマンドに応じてデータの書込みが行われるように構成される。
【0017】またASK変調回路21は電圧の振幅を変調する回路であり、コンデンサ19に並列に接続された一対の第1ツェナダイオード21a,21aと、一対の第1ツェナダイオード21a,21aに並列に接続された一対の第2ツェナダイオード21b,21bと、一対の第2ツェナダイオード21b,21bに直列に接続された変調用スイッチ21cと、この変調用スイッチ21cをオンオフするオペアンプ21dとからなる。オペアンプ21dは変調・復調ロジック部23からの信号を増幅し、変調用スイッチ21cはこの増幅された信号によりオンオフ制御されるように構成される。この変調用スイッチ21cがオンするとアンテナコイル14に供給される電圧が所定値(例えば3V)に制限され、変調用スイッチ21cがオフするとアンテナコイル14に供給される電圧が所定値(例えば9V)に制限されるように構成される。なお、ASK変調回路21に変えて、PSK変調回路(周波数変調)又はFSK変調回路(位相変調)を用いてもよい。
【0018】物品17としては、例えば紙幣(図示せず)のみが封入された現金書留の封筒が挙げられる。この場合、RFID素子16のメモリには、封筒に封入されている現金の金額、この封筒の運搬を中継した郵便局名や配達人名、或いは封筒の到着若しくは出発した日時等のデータが記憶される。なお、図3の符号31はベース板18を物品17の表面に貼付するための第1接着剤層であり、符号33は上記ベース板18上のアンテナコイル14及びRFID素子16を覆うカバー層であり、更に符号32はカバー層33をベース板18上に貼付するための第2接着剤層である。一方、タグ11〜13を識別する質問器27はRFIDコントローラであって、送受信アンテナ27a、電源回路27b、無線周波数(RF)回路27c及び変調・復調回路27dを有する(図2)。また質問器27のCPU27eにはメモリ27f、ディスプレイ27g及び入力手段27hが接続される。
【0019】なお、この実施の形態では、3枚のタグを物品とともに重畳したが、2枚又は4枚以上のタグを物品とともに重畳してもよい。また1又は2枚以上のタグを1又は2枚以上の金属板と重畳してもよい。この場合の金属板は封筒に封入された硬貨や物品に貼付されたアルミ箔等である。また、この実施の形態では、バッテリを有しないRFID素子を挙げたが、太陽電池又はその他のバッテリを有するRFID素子でもよい。
【0020】このように構成されたタグを識別する方法の一例を説明する。この例では物品17は紙幣が封入された現金書留の3枚の封筒であって、これらの物品17にはタグ11〜13がそれぞれ貼付される。タグ11〜13のRFID素子16のメモリには物品固有のデータ(封筒に封入されている現金の金額、封筒の運搬を中継した郵便局名や配達人名、或いは封筒が到着若しくは出発した日時等)が記憶される。タグ11〜13をそれぞれ貼付した3枚の封筒17を重畳した状態、即ち3枚の封筒17を束にした状態では、質問器27から所定の周波数の電波を発振すると、各タグ11〜13のアンテナコイル14間に相互誘導作用が生じ、各タグ11〜13の共振周波数が変化する。即ち、各タグ11〜13の相互誘導作用により各タグ11〜13の見掛け上の自己インダクタンスが変化し、アンテナコイル14の両端に発生する誘導起電力がRFID素子16を活性化させるのに十分な大きさでなくなる。
【0021】例えば、図示しないがアンテナコイルに抵抗体とコンデンサとをそれぞれ並列に接続したRLC回路を考え、アンテナコイルの自己インダクタンスLを7.70mH、このアンテナコイルの銅損rを700Ω、コンデンサの容量Cを210pF、抵抗体の抵抗Rを60kΩとした場合のRLC回路の共振周波数f1は次式より求まり、 f1=(1/2π)[1/(LC)−{1/(CR)}21/2 =125(kHz)
となる。
【0022】一方、上記と同一のRLC回路を2つ重畳した場合のRLC回路の共振周波数f2は次式より求まり、 f2=(1/2π)[1/{(L+M)C}−{1/(CR)}21/2 =96(kHz)
とf1より低くなる。即ち、見掛け上の自己インダクタンスLが(L+M)に増加する。なお、上記2つのアンテナコイルの間隔は1mm弱とし、この場合の2つのアンテナコイルの相互インダクタンスMは5.1mHであった。また、銅損rは上記共振周波数f1及びf2には影響を与えなかった。
【0023】しかし、各タグ11〜13が共振しなくても各タグ11〜13のA−B間(図1)にはある程度の電圧VABが発生するため、この電圧を蓄積して制御回路25が駆動される。質問器27は先ずタグ11と通信する。制御回路25のメモリ(図示せず)にはタグ11が活性化するA−B間の最低電圧V0、即ちタグ11が共振したときのA−B間の最低電圧V0が記憶されている。制御回路25は変調・復調ロジック部23からの信号(A−B間の実際の電圧VAB)と上記電圧V0とを比較し、VAB<V0ならば、スイッチ24aからスイッチ24nに向って順に開いて共振用コンデンサ19a〜19nの総静電容量を減少させていく。そしてVAB≧V0となったときに、制御回路25はスイッチ24a〜24nの開閉制御を停止する。このときタグ11は質問器27の発振する電波に共振する。
【0024】一方、上記質問器27から発振された電波(質問信号)は2値化されたデジタル信号である。このデジタル信号は質問器27の信号発生器(図示せず)から発せられ、変調・復調回路27dにより所定の周波数の搬送波に載せられる、即ち変調される。無線周波数(RF)回路27cではこの変調した信号を増幅して送受信アンテナ27aから発振する。上記変調には例えばASK(振幅変調)、FSK(周波数変調)又はPSK(位相変調)が挙げられる。
【0025】質問器27は共振した上記タグ11のRFID素子16のメモリに記憶されている固有の情報を読込む。即ち、上記所定のタグ11の共振により、コンデンサ19にはその電磁誘導で生じる電圧が印加され、電圧レギュレータ22がこの電圧を整流し安定化して、変調・復調ロジック部23に供給し、RFID素子16を活性化すると同時に、変調・復調ロジック部23では復調に必要な信号のみを取込み、元のデジタル信号の質問信号を再現させてメモリから封筒17固有の封入金額をはじめとして封筒17のデータを質問器27に発振する。このデータの発振は2値化された、例えば封入金額をRFID素子16のASK変調用回路21で増幅・変調してアンテナコイル14から発振することにより行われる。
【0026】次にこのデータを受信した質問器27では当該封筒17の固有の情報をディスプレイ27gで確認することができる。ここでタグ11のRFID素子16のメモリに所定の事項を書込むときには、入力手段27hより書込み事項(例えば、このチェックを行っている日時や郵便局名、即ち封筒に関する内容をタグから読み取った日時や郵便局名等)のデータを入力し、タグ11に発振する。この書込み事項のデータはRFID素子16のメモリに書込まれる。
【0027】タグ11のRFID素子16のメモリへの書込みが終了すると、そのタグ11の変調・復調ロジック部23から制御回路25に信号が送られ、全てのスイッチ24a〜24nを閉じる。次に質問器27はタグ12と上記と同様に通信を行い、タグ12のRFID素子16のメモリへの書込みが終了すると、そのタグ12の変調・復調ロジック部23から制御回路25に信号が送られ、全てのスイッチ24a〜24nを閉じる。更に質問器27は残ったタグ13と上記と同様に通信を行い、タグ13のRFID素子16のメモリへの書込みが終了すると、そのタグ13の変調・復調ロジック部23から制御回路25に信号が送られ、すべてのスイッチ24a〜24nを閉じる。このようにして重畳した全てのタグ11〜13を短時間で順次識別することができる。
【0028】なお、この実施の形態では、封筒17に紙幣のみを封入したが、封筒17に硬貨等の金属板を封入してもよい。この場合、各タグ11〜13の共振周波数は上記とは異なる値に変化するけれども、制御回路25が各タグ11〜13のスイッチ24a〜24nをスイッチ24aからスイッチ24nに向って順に開いて共振用コンデンサ19a〜19nの総静電容量を減少させるので、A−B間の電圧がVAB≧V0となったときに、タグは質問器27の発振する電波に共振する。
【0029】図5及び図6は本発明の第2の実施の形態を示す。図5及び図6において図3及び図4と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、アンテナコイル44が磁芯となる磁性材44aと、この磁性材44aに巻かれたコイル本体44bとを有する。磁性材44aの形状は、中実の板状、円柱状、角柱状、中空の筒状等が採用される。中空の筒状は複数の円弧状板片を集合して筒状にしたものや、薄膜や箔で筒状にしたものでもよい。また磁性材44aとしては、■軟磁性金属の薄膜又は薄板と絶縁性薄膜とを交互に複数枚重ね合せた積層体又は表面が絶縁された軟磁性金属の薄膜又は薄板を複数枚重ね合わせた積層体、■軟磁性金属の粉末又はフレークとプラスチックとの複合材、■軟磁性金属の粉末又はフレークとフェライトの粉末とプラスチックとの複合材、■フェライトの粉末とプラスチックとの複合材、■焼結フェライトなどが挙げられる。上記■〜■の中で周囲の温度により透磁率が変化せず、アンテナコイルが共振回路を構成する場合に共振周波数が変化しない軟磁性金属を磁性材として用いることが好ましく、渦電流を生じて共振特性を低下させないように、その形状は薄膜、粉末又はフレークが好ましい。
【0030】上記■の軟磁性金属薄膜としては、鉄系アモルファス、コバルト系アモルファス、パーマロイ又はケイ素鋼により形成された厚さ5〜250μmの膜を用いることが好ましく、絶縁性薄膜としては、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の厚さ5〜50μmの絶縁性樹脂フィルムを用いることが好ましい。また絶縁性薄膜は絶縁紙でもよい。上記■又は■の軟磁性金属の粉末としては、直径が0.1〜30μmのカルボニル鉄粉又は還元鉄粉を用いることが好ましい。更に軟磁性金属のフレークは、鉄、パーマロイ、アモルファス合金等をアトマイズ法により微細化して軟磁性金属の粉末を成形した後、この軟磁性金属の粉末を機械的に扁平化して得られた厚さ0.1〜10μmのフレークを用いることが好ましい。上記以外は第1の実施の形態と同一に構成される。このように構成された重畳したタグ41は他のタグ41或いは金属板と重畳したときに、第1の実施の形態のタグと異なり、他のタグ41或いは金属板との相互誘導作用が小さいという特徴がある。なお、重畳したタグの識別方法は第1の実施の形態と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。
【0031】図7は本発明の第3の実施の形態を示す。図7において図1と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、一端がアンテナコイル54の巻き線に所定の間隔をあけて接続されたn本のリード線57a〜57nの他端がRFID素子56に接続され、これらのリード線57a〜57nにn個のスイッチ58a〜58nがそれぞれ設けられ、制御回路25が上記n個のスイッチ58a〜58nを択一的に閉じるように構成される。上記n本のリード線57a〜57nの一端はアンテナコイル54の全巻き数の1/nの巻き数毎に接続される。また各スイッチ58a〜58nはアンテナコイル54及びRFID素子56を各リード線57a〜57nを介してそれぞれ電気的に接続又は遮断するように構成される。
【0032】制御回路25が上記各スイッチ58a〜58nを択一的に閉じることにより、アンテナコイル54のインダクタンスが変化し、アンテナコイル54とRFID素子56内の共振用コンデンサ56aとからなる共振回路の共振周波数を、重畳しない単一のタグ51の共振周波数となるように変更可能に構成される。この実施の形態では、n個のスイッチ58a〜58nのうちスイッチ58aのみを閉じたときのアンテナコイル54と共振用コンデンサ56aにて構成される共振回路の共振周波数が、重畳しない単一のタグ51の共振周波数以下(共振周波数の0.5倍〜1倍の周波数)となるように設定される。即ち、質問器によるタグ51の識別前には、スイッチ58aのみが閉じ、他のスイッチ58b〜58nが開いた状態にそれぞれ設定される。なお、上記n本のリード線57a〜57nの一端をアンテナコイル54の全巻き数の1/nの巻き数毎に接続したが、タグ51の重畳による共振周波数のシフト量に応じそれぞれ変えて接続してもよい。上記以外は第1の実施の形態と同一に構成される。
【0033】このように構成されたタグを識別する方法の一例を説明する。各タグ51では制御回路25が動作する前には、スイッチ58aのみが閉じているので、これらのタグ51を重畳して質問器から所定の周波数の電波を発振すると、第1の実施の形態と同様に各タグ51のアンテナコイル54間に相互誘導作用が生じ、各タグ51の共振周波数が変化する。即ち、各タグ51の相互誘導作用により各タグ51の見掛け上の自己インダクタンスが変化し、アンテナコイル54の両端に発生する誘導起電力がRFID素子56を活性化させるのに十分な大きさでなくなる。
【0034】しかし、各タグ51が共振しなくても各タグ51のA−B間(図7)にはある程度の電圧VABが発生するため、この電圧を蓄積して制御回路25が駆動される。質問器は複数のタグ51のうちの1つのタグ51と通信する。制御回路25のメモリ(図示せず)にはタグ51が活性化するA−B間の最低電圧V0、即ちタグ51が共振したときのA−B間の最低電圧V0が記憶されている。制御回路25は変調・復調ロジック部23からの信号(A−B間の実際の電圧VAB)と上記電圧V0とを比較し、VAB<V0ならば、スイッチ58aを開いてスイッチ58bのみが閉じている状態にし、アンテナコイル54の電流の流れる巻き数を減らす。この場合でもVAB<V0ならば、スイッチ58bを開いてスイッチ58cのみが閉じている状態にし、更にアンテナコイル54の電流の流れる巻き数を減らす。この操作を順に行ってVAB≧V0となったときに、制御回路25はスイッチ58a〜58nの開閉制御を停止する。このときタグ51は質問器の発振する電波に共振する。
【0035】質問器は第1の実施の形態と同様に共振した上記タグ51のRFID素子56のメモリに記憶されている固有の情報を読込んだ後に、上記メモリに所定の事項を書込む。タグ51のメモリへの書込みが終了すると、そのタグ51の変調・復調ロジック部23から制御回路25に信号が送られ、閉じていたスイッチを開き、開いていたスイッチ58aのみを閉じて最初の状態に戻す。次に質問器は別のタグと上記と同様に通信を行い、そのタグのRFID素子のメモリへの書込みが終了すると、そのタグの変調・復調ロジック部から制御回路に信号が送られ、最初の状態に戻す。このようにして重畳した全てのタグ51を短時間で順次識別することができる。なお、通信が完了したタグのスイッチは全て開いた状態にしてもよい。
【0036】なお、この実施の形態では、物品である封筒に硬貨等の金属板を封入してもよい。この場合、各タグの共振周波数は上記とは異なる値に変化するけれども、制御回路が各タグのスイッチを択一的に閉じてアンテナコイルのインダクタンスを変化(減少又は増加)させるので、A−B間の電圧がVAB≧V0となったときに、タグは質問器の発振する電波に共振する。
【0037】図8は本発明の第4の実施の形態を示す。図8において図1と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、複数の容量調整用コンデンサ77a〜77nがアンテナコイル74に直列にかつ互いに並列に接続され、これらの容量調整用コンデンサ77a〜77nに複数のスイッチ78a〜78nがそれぞれ接続され、更に制御回路25が複数のスイッチ78a〜78nを開閉制御するように構成される。上記複数のスイッチ78a〜78nは複数の容量調整用コンデンサ77a〜77nをアンテナコイル74及びRFID素子76にそれぞれ電気的に接続又は遮断するように構成される。具体的には上記各スイッチ78a〜78nが各容量調整用コンデンサ77a〜77nに直列にそれぞれ接続されることにより、第1直列回路〜第n直列回路79a〜79nがそれぞれ構成される。各スイッチ78a〜78nは制御回路25からの信号により第1直列回路〜第n直列回路79a〜79nをそれぞれ開閉するように構成される。またRFID素子76には共振用コンデンサ76aが設けられる。
【0038】制御回路25が上記各スイッチ78a〜78nを開閉制御することにより、容量調整用コンデンサ77a〜77nの総静電容量が変化し、アンテナコイル74とスイッチ78a〜78nの閉じた容量調整用コンデンサ77a〜77nと共振用コンデンサ76aからなる共振回路の共振周波数を、重畳しない単一のタグ71の共振周波数となるように変更可能に構成される。この実施の形態では、アンテナコイル74と全てのスイッチ78a〜78nを閉じたときの容量調整用コンデンサ77a〜77nと共振用コンデンサ76aにて構成される共振回路の共振周波数が重畳しない単一のタグ71の共振周波数以下(共振周波数の0.5倍〜1倍の周波数)となるように設定される。即ち、質問器によるタグ71の識別前には、上記スイッチ78a〜78nが全て閉じた状態に設定される。
【0039】また上記容量調整用コンデンサ77a〜77nの総静電容量は共振用コンデンサ76aの静電容量より大きく設定される。例えば、共振用コンデンサ76aの静電容量を210pFとすると、容量調整用コンデンサ77a〜77nの総静電容量は10,000pF程度に設定されることが好ましい。この場合、容量調整用コンデンサ77a〜77n及び共振用コンデンサ76aのトータルの静電容量は約206pFとなり、容量調整用コンデンサ77a〜77nは無視できる。一方、閉じているスイッチ78a〜78nを順に開いていくと、容量調整用コンデンサ77a〜77nの総静電容量が次第に小さくなるので、スイッチ78a〜78nの閉じている容量調整用コンデンサ77a〜77n及び共振用コンデンサ76aのトータルの静電容量も次第に小さくなる。
【0040】なお、上記各容量調整用コンデンサ77a〜77nの静電容量は製作上、タグ71の重畳による共振周波数のシフト量に応じてそれぞれ変えて設定されることが好ましいが、同一に設定してもよい。また、この実施の形態では、容量調整用コンデンサ77a〜77n及び制御回路25はRFID素子76の外部に設けられているが、容量調整用コンデンサ及び制御回路をRFID素子の内部に設けてもよい。上記以外は第1の実施の形態と同一に構成される。
【0041】このように構成されたタグを識別する方法の一例を説明する。制御回路25が動作する前には、重畳する各タグ71のスイッチ78a〜78nが全て閉じているので、これらのタグ71を重畳して質問器から所定の周波数の電波を発振すると、第1の実施の形態と同様に各タグ71のアンテナコイル74間に相互誘導作用が生じ、各タグ71の共振周波数が変化する。即ち、各タグ71の相互誘導作用により各タグ71の見掛け上の自己インダクタンスが変化し、アンテナコイル74の両端に発生する誘導起電力がRFID素子76を活性化させるのに十分な大きさでなくなる。
【0042】しかし、各タグ71が共振しなくても各タグ71のA−B間(図8)にはある程度の電圧VABが発生するため、この電圧を蓄積して制御回路25が駆動される。質問器は複数のタグ71のうちの1つのタグ71と通信する。制御回路25のメモリ(図示せず)にはタグ71が活性化するA−B間の最低電圧V0、即ちタグ71が共振したときのA−B間の最低電圧V0が記憶されている。制御回路25は変調・復調ロジック部23からの信号(A−B間の実際の電圧VAB)と上記電圧V0とを比較し、VAB<V0ならば、スイッチ78aからスイッチ78nに向って順に開いて容量調整用コンデンサ77a〜77nの総静電容量を減少させていく。そしてVAB≧V0となったときに、制御回路25はスイッチ78a〜78nの開閉制御を停止する。このときタグ71は質問器の発振する電波に共振する。
【0043】質問器は第1の実施の形態と同様に共振した上記タグ71のRFID素子76のメモリに記憶されている固有の情報を読込んだ後に、上記メモリに所定の事項を書込む。タグ71のメモリへの書込みが終了すると、そのタグ71の変調・復調ロジック部23から制御回路25に信号が送られ、スイッチ78a〜78nを全て閉じて最初の状態に戻す。次に質問器は別のタグと上記と同様に通信を行い、そのタグのRFID素子のメモリへの書込みが終了すると、そのタグの変調・復調ロジック部から制御回路に信号が送られ、最初の状態に戻す。このようにして重畳した全てのタグ71を短時間で順次識別することができる。なお、通信が完了したタグのスイッチは全て開いた状態にしてもよい。
【0044】なお、この実施の形態では、物品である封筒に硬貨等の金属板を封入してもよい。この場合、各タグの共振周波数は上記とは異なる値に変化するけれども、制御回路が各タグのスイッチを1つずつ順に開いて容量調整用コンデンサの総静電容量を減少させるので、A−B間の電圧がVAB≧V0となったときに、タグは質問器27の発振する電波に共振する。
【0045】図9は本発明の第5の実施の形態を示す。図9において図1と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、タグ91は重畳用アンテナコイル94と、この重畳用アンテナコイル94に接続され重畳用コンデンサ96aが内蔵された重畳用RFID素子96とを備える。このタグ91は所定の枚数、例えば10枚重畳したときに、これらの各タグ91の共振周波数が重畳しない単一のタグ91の共振周波数と同一になるように、重畳用アンテナコイル94のインダクタンス及び重畳用コンデンサ96aの静電容量のいずれか一方又は双方が設定される。このように構成されたタグでは、予めタグ91を所定の枚数だけ重畳したときに各タグ91が共振するように重畳用アンテナコイル94のインダクタンス成分と重畳用コンデンサ96aの静電容量成分が調整されているので、所定の枚数だけ重畳したタグ91に質問器が所定の周波数の電波を発振すると、各タグ91はそれぞれ共振する。この結果、質問器は上記共振して活性化した各タグ91と順次通信することにより、各タグ91を確実に識別することができる。
【0046】なお、上記重畳用アンテナコイル及び重畳用RFID素子の他に、重畳しないときに共振する単独用アンテナコイル及び単独用RFID素子をタグに設けてもよい。この場合、タグが単独のときには、単独用アンテナコイルと単独用RFID素子に内蔵された単独用コンデンサとにより構成される単独用共振回路が共振してタグが識別される。一方、タグが重畳するときには、重畳用アンテナコイルと重畳用コンデンサにより構成される重畳用共振回路が共振してタグが識別される。また、上記第3〜5の実施の形態において、第2の実施の形態のタグ、即ち磁性材及びコイル本体からなるタグを用いてもよい。
【0047】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、複数の共振用コンデンサをアンテナコイルと並列にかつ互いに並列に接続し、これらの共振用コンデンサに複数のスイッチをそれぞれ接続し、更に制御回路が複数のスイッチを開閉制御することにより、アンテナコイル及び複数の共振用コンデンサからなる共振回路の共振周波数を変更可能に構成したので、複数のタグを重畳し又はタグ及び金属板を重畳して各タグの共振周波数が変化しても、共振用コンデンサの総静電容量を変化させることにより、各タグのアンテナコイルとスイッチの閉じた共振用コンデンサとにより構成される共振回路の共振周波数を、重畳しない単一のタグの共振周波数とほぼ同じにすることができる。この結果、タグが共振して活性化されるので、そのタグを識別することができる。このようにして各タグを短時間で順次識別することができる。
【0048】また一端がアンテナコイルの巻き線に所定の間隔をあけて接続された複数のリード線の他端をRFID素子に接続し、これらのリード線に複数のスイッチを設け、更に制御回路が任意のスイッチを択一的に閉じることにより、アンテナコイル及びRFID素子内の共振用コンデンサからなる共振回路の共振周波数を変更可能に構成すれば、複数のタグを重畳し又はタグ及び金属板を重畳して各タグの共振周波数が変化しても、アンテナコイルのインダクタンスを変化させることにより、各タグのアンテナコイルと共振用コンデンサとにより構成される共振回路の共振周波数を、重畳しない単一のタグの共振周波数とほぼ同じにすることができる。この結果、タグが共振して活性化されるので、そのタグを識別することができる。このようにして各タグを短時間で順次識別することができる。
【0049】また複数の容量調整用コンデンサをアンテナコイルに直列にかつ互いに並列に接続し、これらの容量調整用コンデンサに複数のスイッチをそれぞれ接続し、更に制御回路が複数のスイッチを開閉制御することにより、アンテナコイル、容量調整用コンデンサ及び共振用コンデンサからなる共振回路の共振周波数を変更可能に構成すれば、複数のタグを重畳し又はタグ及び金属板を重畳して各タグの共振周波数が変化しても、容量調整用コンデンサの総静電容量を変化させることにより、各タグのアンテナコイルとスイッチの閉じた容量調整用コンデンサと共振用コンデンサとにより構成される共振回路の共振周波数を、重畳しない単一のタグの共振周波数とほぼ同じにすることができる。この結果、タグが共振して活性化されるので、そのタグを識別することができる。このようにして各タグを短時間で順次識別することができる。
【0050】またタグを所定の枚数重畳したときに、重畳した各タグの共振周波数を重畳しない単一のタグの共振周波数と同一になるように、重畳用アンテナコイルのインダクタンス及び重畳用コンデンサの静電容量のいずれか一方又は双方を設定すれば、所定の枚数だけ重畳したタグに質問器が所定の周波数の電波を発振すると、各タグはそれぞれ共振する。この結果、上記共振して活性化した各タグを確実に識別することができる。更に重畳用アンテナコイル及び重畳用RFID素子の他に、重畳しないときに共振する単独用アンテナコイル及び単独用RFID素子を設ければ、タグが単独のときには、単独用アンテナコイルと単独用RFID素子に内蔵された単独用コンデンサとにより構成される単独用共振回路が共振してタグが識別される。一方、タグが重畳するときには、重畳用アンテナコイルと重畳用コンデンサにより構成される重畳用共振回路が共振してタグが識別される。この結果、タグが重畳しているか否かに拘らず、タグを識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明第1実施形態のタグの回路構成図。
【図2】タグが添付された物品を重畳し、これらのタグに質問器を近付けた状態を示す回路構成図。
【図3】物品に添付されたタグを示す図4のC−C線断面図。
【図4】図3のD−D線断面図。
【図5】本発明第2実施形態の物品に添付されたタグを示す図6のE−E線断面図。
【図6】図5のF−F線断面図。
【図7】本発明の第3実施形態を示す図1に対応する回路構成図。
【図8】本発明の第4実施形態を示す図1に対応する回路構成図。
【図9】本発明の第5実施形態を示す図1に対応する回路構成図。
【符号の説明】
11〜13,41,51,71,91 タグ
14,44,54,74 アンテナコイル
16,56,76 RFID素子
17 封筒(物品)
19a〜19n,56a,76a 共振用コンデンサ
24a〜24n,58a〜58n,78a〜78n スイッチ
25 制御回路
57a〜57n リード線
77a〜77n 容量調整用コンデンサ
94 重畳用アンテナコイル
96 重畳用RFID素子
96a 重畳用コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 物品(17)に添付され、アンテナコイル(14,44)とこのアンテナコイル(14,44)に接続されたRFID素子(16)とを備えたタグにおいて、前記アンテナコイル(14,44)と並列にかつ互いに並列に接続された複数の共振用コンデンサ(19a〜19n)と、前記複数の共振用コンデンサ(19a〜19n)にそれぞれ接続され前記複数の共振用コンデンサ(19a〜19n)を前記アンテナコイル(14,44)及び前記RFID素子(16)にそれぞれ電気的に接続又は遮断する複数のスイッチ(24a〜24n)と、前記複数のスイッチ(24a〜24n)を開閉制御する制御回路(25)とを有し、前記制御回路(25)が前記複数のスイッチ(24a〜24n)を開閉制御することにより、前記アンテナコイル(14,44)及び前記複数の共振用コンデンサ(19a〜19n)からなる共振回路の共振周波数が変更可能に構成されたことを特徴とする重畳タグの識別方式。
【請求項2】 物品に添付され、アンテナコイル(54)とこのアンテナコイル(54)に接続されたRFID素子(56)とを備えたタグにおいて、一端が前記アンテナコイル(54)の巻き線に所定の間隔をあけて接続され他端が前記RFID素子(56)に接続された複数のリード線(57a〜57n)と、前記複数のリード線(57a〜57n)にそれぞれ設けられ前記アンテナコイル(54)及び前記RFID素子(56)を前記複数のリード線(57a〜57n)を介してそれぞれ電気的に接続又は遮断する複数のスイッチ(58a〜58n)と、前記複数のスイッチ(58a〜58n)を択一的に閉じる制御回路(25)とを有し、前記制御回路(25)が前記複数のスイッチ(58a〜58n)を択一的に閉じることにより、前記アンテナコイル(54)及び前記RFID素子(56)内の共振用コンデンサ(56a)からなる共振回路の共振周波数が変更可能に構成されたことを特徴とする重畳タグの識別方式。
【請求項3】 物品に添付され、アンテナコイル(74)とこのアンテナコイル(74)に接続されたRFID素子(76)とを備えたタグにおいて、前記アンテナコイル(74)に直列にかつ互いに並列に接続された複数の容量調整用コンデンサ(77a〜77n)と、前記複数の容量調整用コンデンサ(77a〜77n)にそれぞれ接続され前記複数の容量調整用コンデンサ(77a〜77n)を前記アンテナコイル(74)及び前記RFID素子(76)にそれぞれ電気的に接続又は遮断する複数のスイッチ(78a〜78n)と、前記複数のスイッチ(78a〜78n)を開閉制御する制御回路(25)とを有し、前記制御回路(25)が前記複数のスイッチ(78a〜78n)を開閉制御することにより、前記アンテナコイル(74)、前記複数の容量調整用コンデンサ(77a〜77n)及び前記RFID素子(76)内の共振用コンデンサ(76a)からなる共振回路の共振周波数が変更可能に構成されたことを特徴とする重畳タグの識別方式。
【請求項4】 物品に添付され、重畳用アンテナコイル(94)と、この重畳用アンテナコイル(94)に接続され重畳用コンデンサ(96a)が内蔵された重畳用RFID素子(96)とを備えたタグにおいて、前記タグ(91)を所定の枚数重畳したときに、前記重畳した各タグ(91)の共振周波数が重畳しない単一のタグ(91)の共振周波数と同一になるように、前記重畳用アンテナコイル(94)のインダクタンス及び前記重畳用コンデンサ(96a)の静電容量のいずれか一方又は双方が設定されたことを特徴とする重畳タグの識別方式。
【請求項5】 重畳用アンテナコイル及び重畳用RFID素子の他に、重畳しないときに共振する単独用アンテナコイル及び単独用RFID素子が設けられた請求項4記載の重畳タグの識別方式。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【図9】
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