説明

重質芳香族化合物の処理方法

【解決手段】 C+芳香族炭化水素をより軽質の芳香族生成物に転化する処理方法において、C+芳香族炭化水素から成るフィード(feed)を、アルキル交換反応条件下にて、(i)12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07および3.42±0.07に面間隔の極大値を有するX線回折パターンをもったZSM−12、モルデナイトおよび多孔質結晶性無機酸化物材料のうちから選択された第1の分子ふるい、および(ii)3ないし12の拘束指数(constraint index)を有する第2の分子ふるいから成る触媒組成物と接触させる。少なくとも第1の分子ふるいはそれに付随した水素化成分を有し、第1および第2の分子ふるいは同一の触媒床に含まれている。C+芳香族炭化水素は、アルキル交換反応条件下にて、キシレンを含む反応生成物に転化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重質芳香族化合物、特にC+芳香族化合物のより軽質な芳香族生成物、特にベンゼン、トルエンおよびキシレン(BTX)への転化に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゼンおよびキシレンの源は、ハロゲン処理されたアルミナなどの適度の酸性担体に、白金などの強度の水素化/脱水素化触媒に、石油ナフサおよび水素の混合物を接触させることにより用意された接触改質油である。通常、CないしC成分は改質油から分離され、芳香族化合物または脂肪族化合物選択性の溶媒により抽出されて比較的脂肪族化合物を含まない芳香族化合物の混合物を生成する。この芳香族化合物の混合物は、通常、エチルベンゼンとともに、BTXを含んでいる。
【0003】
精製所は、貴金属を含むゼオライト触媒によるC+芳香族化合物およびトルエンのアルキル交換によるベンゼンおよびキシレンの製造に重点的に取り組んでいる。貴金属を含む触媒上でのC+芳香族化合物およびトルエンのアルキル交換によって、ベンゼンやキシレンのような高価値の石油化学製品にする際に、副産物である飽和化合物が、一般的には生産を開始して始めの数ヶ月間産出される。これらの副産物である飽和化合物は、所望の芳香族生成物と同じ温度領域で沸騰するので、所望の生成物を高純度レベルにするのは困難である。例えば、市販用のベンゼン製品は99.85%を越える純度でなければならない。しかし、アルキル交換反応生成物の蒸留後の初期ベンゼン純度は、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、ジメチルシクロペンタンおよび3−メチルヘキサンなどの類似沸点物質の存在により、一般的には、99.2%から99.5%にしかならない。従って、さらにベンゼン純度を所望のレベルに改善するには、通常、追加の抽出工程が必要である。
【0004】
重質芳香族化合物のアルキル交換過程においてベンゼンの類似沸点物質が生成される問題の1つの解決策は、米国特許第5,942,651号に開示されていて、C+芳香族炭化水素およびトルエンから成るフィードを、アルキル交換反応条件下にて、ZSM−12のような、0.5ないし3の拘束指数を有するゼオライトおよび水素化成分から成る第1の触媒組成物と接触させる工程を含んでいる。第1の接触工程から得られる流出物は、次に、ZSM−5のような、3ないし12の拘束指数を有するゼオライトから成り、第1の触媒組成物とは別個の反応床または別個の反応装置に置いてもよい第2の触媒組成物と接触して、ベンゼンおよびキシレンから成るアルキル交換反応生成物を生成する。アルキル交換反応生成物からベンゼンを蒸留すると、追加の抽出工程を必要とすることなく、少なくとも99.85%の純度を有するベンゼン生成物が得られる可能性がある。‘651特許によると、第2の触媒組成物は、第1および第2の触媒組成物の合計重量に対して、20までの重量%を構成する。
【0005】
米国特許第5,905,051号は、第1の触媒組成物および第2の触媒組成物から成り、これらの触媒組成物が別個の工程にあって、物理的に混合あるいは融合されることがなく、前記第1の触媒組成物が金属促進型、アルミナ結合型またはシリカ結合型ベータゼオライトであり、前記第2の触媒組成物が、シリコン、リン、イオウ、およびそれらの組み合わせの中から選択した活性促進剤と組み合わされたZSM−5であるような触媒系に、流れを接触させて、例えば、C+芳香族化合物などの炭化水素の流れを、キシレンなどのCないしC芳香族炭化水素に転化する処理方法を開示している。‘051特許によれば、別個の触媒工程を採用することは、C+芳香族化合物およびナフタレンのキシレンへの転化を改善し、生成物中の望ましくないエチルベンゼンの量を減少させる。
【0006】
米国特許第5,905,051号で教えるところとは反対に、現在では、少なくとも2つの異なった特定の分子ふるいから成る単一工程の触媒系が、C+フィードをキシレンなどの有益な化合物に転化する際に総体的な減少を伴うことなく、C+芳香族フィード中のエチル基を含む芳香族化合物の除去に対するより高度の活性を示すことが知られている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、C+芳香族炭化水素から成るフィードを、
(i)12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07および3.42±0.07に面間隔の極大値を有するX線回折パターンをもったZSM−12、モルデナイトおよび多孔質結晶性無機酸化物材料のうちから選択された第1の分子ふるい、および、
(ii)3ないし12の拘束指数(constraint index)を有する第2の分子ふるいから成る触媒組成物とアルキル交換反応条件下にて接触させる工程を有し、
少なくとも第1の分子ふるいはそれに付随した水素化成分を有し、第1および第2の分子ふるいは同一の触媒床に含まれており、C+芳香族炭化水素を前記アルキル交換反応条件下にてキシレンを含む反応生成物に転化する、C+芳香族炭化水素をより軽質の芳香族生成物に転化する処理方法である。
【0008】
1つの実施形態においては、第1の分子ふるいはZSM−12であり、第2の分子ふるいはZSM−5である。
【0009】
好ましくは、触媒組成物は粒子状物質であり、第1および第2の分子ふるいは、前記触媒床において物理的に混合された別個の触媒粒子に含まれている。
【0010】
あるいはまた、触媒組成物は粒子状物質であり、第1および第2の分子ふるいは、それぞれ同一の触媒粒子に含まれている。
【0011】
一般的には、フィードはベンゼンまたはトルエンをも含んでいる。
【0012】
さらに別の態様においては、本発明は、
(a)少なくとも第1の分子ふるいはそれに付随した水素化成分を有し、第1および第2の分子ふるいは同一の触媒床に含まれており、C+芳香族炭化水素とトルエンをアルキル交換反応条件下にて、
(i)12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07および3.42±0.07に面間隔の極大値を有するX線回折パターンをもったZSM−12、モルデナイトおよび多孔質結晶性無機酸化物材料のうちから選択された第1の分子ふるい、および、
(ii)3ないし12の拘束指数(constraint index)を有する第2の分子ふるいから成る触媒組成物と接触させて、ベンゼンおよびキシレンを含む反応生成物の流れを生成する工程と、
(b)前記反応生成物の流れを蒸留してベンゼン生成物を得る工程とから成る、ベンゼンを生成する処理方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、ベンゼン、トルエンおよびキシレンを含む生成物を生成するために、C+芳香族炭化水素から成り、状況に応じて、追加したトルエンまたはベンゼンとともに成る、フィードを転化する処理方法を提供する。その処理方法は、アルキル交換反応条件下において、同一の触媒床に収容された少なくとも2つの異なった分子ふるいから成る触媒組成物にフィードを接触させることを含んでいる。
【0014】
触媒組成物
本発明の処理方法において用いられる触媒組成物は、
(i)12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07および3.42±0.07に面間隔の極大値を有するX線回折パターンをもったZSM−12、モルデナイトおよび多孔質結晶性無機酸化物材料のうちから選択された第1の分子ふるい、および、
(ii)3ないし12の拘束指数(constraint index)を有する第2の分子ふるいから成る。
第1の分子ふるいに関しては、ZSM−12が米国特許第3,832,449号において特に詳しく記載されている。モルデナイトは天然に存在するが、また、TEAモルデナイト(すなわち、テトラエチルアンモニウム型剤(directing agent)を含む反応混合物から用意される合成モルデナイト)などの合成形態の1つとしても利用され、これは、米国特許第3,766,093号および第3,894,104号に開示されている。規定されたX線回折パターンを有する適当な多孔質結晶性無機酸化物材料の例には、MCM−22、PSH−3、SSZ−25、MCM−36、MCM−49またはMCM−56が含まれる。MCM−22は米国特許第4,954,325号に記載されており、PSH−3は米国特許第4,439,409号に記載されており、SSZ−25は米国特許第4,826,667号に記載されており、MCM−36は米国特許第5,250,277号に記載されており、MCM−49は米国特許第5,236,575号に記載されており、MCM−56は米国特許第5,362,697号に記載されている。前述の特許のそれぞれの全内容は、参照することにより本願に組み込まれる。
【0015】
第2の分子ふるいに関しては、3ないし12の拘束指数を有する適当な材料には、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57およびZSM−58が含まれる。ZSM−5は米国特許第3,702,886号に記載されている。ZSM−11は米国特許第3,709,979号に記載されている。ZSM−22は米国特許第5,336,478号に記載されている。ZSM−23は米国特許第4,076,842号に記載されている。ZSM−35は米国特許第4,016,245号に記載されている。ZSM−48は米国特許第4,375,573号に記載されている。ZSM−57は米国特許第4,873,067号に記載されている。ZSM−58は米国特許第4,698,217号に記載されている。拘束指数およびその決定方法は米国特許第4,016,218号に記載されている。前述の特許のそれぞれの全内容は、参照することにより本願に組み込まれる。
【0016】
一般には、触媒組成物中の第1および第2の分子ふるいの合計重量に対して、第2の分子ふるいが20を越えて80までの重量%などのように、5ないし95重量%を構成する。
【0017】
1つの実施形態においては、第1の分子ふるいはZSM−12であり、第2の分子ふるいはZSM−5である。
【0018】
第1の分子ふるいがZSM−12である場合には、ZSM−12は、Xが、アルミニウム、ボロン、鉄、インジウム、及び/又はガリウムなどの三価の元素、好ましくはアルミニウムであり、Yが、シリコン、スズ及び/又はゲルマニウムなどの四価の元素、好ましくはシリコンであり、nが、20以上で60より小さいなどの75より小さいような
:(n)YO
という分子量関係の組成を有している。さらに、ZSM−12は、約0.05ミクロンなど、0.1ミクロン未満の平均結晶サイズ、および、温度100℃でメシチレン圧力が2Torrのときに、メシチレンに対して、少なくとも2000x10−6sec−1など、少なくとも1000x10−6sec−1の拡散パラメータD/rを有するように選定してもよい。
【0019】
ここで用いたように、特定の多孔質結晶性材料の拡散パラメータは、D/rx10で定義される。ここで、Dは拡散係数(cm/sec)であり、rは結晶半径(cm)である。所要の拡散パラメータは、平面シートモデルが拡散過程を説明できると仮定して、吸着測定から求めることができる。このようにして、ある吸着物量(sorbate loading)Qに対して、Qを平衡吸着物量として、Q/Qの値は数学的に(Dt/r1/2に関係付けられる。ここで、tは吸着物量がQになるのに要する時間(sec)である。平面シートモデルに対する図的解法は、“The Mathematics of Diffusion”,Oxford University Press,Ely House,London,1967においてJ.Crankにより与えられている。
【0020】
第1の分子ふるいとして使われるZSM−12は、少なくとも300などのように、少なくとも150のアルファ値を有するように準備されてもよい。アルファ値試験は、触媒のクラッキング(cracking)活性の尺度であり、米国特許第3,354,078号およびJournal of Catalysis,Vol.4,p.527(1965);Vol.6,p.278(1966);およびVol.61,p.395(1980)に説明されている。これらのそれぞれは、その記述を参照することにより本願に組み込まれる。ここで用いられた試験の実験条件には、Journal of Catalysis,Vol.61,p.395に詳しく説明されているように、538℃の一定温度および可変流量という条件が含まれる。
【0021】
これまでのパラグラフで説明した、組成、結晶サイズ、拡散パラメータおよびアルファ値を有するZSM−12は、通常はナトリウムであるアルカリまたはアルカリ土類金属(M)カチオン、通常はアルミナである三価元素(X)の酸化物、通常はヨウ化物塩として存在するメチルトリエチルアンモニウムイオン(R)、水酸基イオンおよび水の供給源を含む合成用混合物の結晶化により生成され得る。合成用混合物は、酸化物のモル比で表すと、次のような配合であってもよい。
【0022】
成分 実用的な範囲 好適な範囲
YO/X 20−100 40−80
O/YO 10−100 15−40
OH/YO 0.1−0.6 0.15−0.4
R/YO 0.1−0.6 0.15−0.4
M/YO 0.1−0.6 0.15−0.4
【0023】
合成用混合物は、また、ZSM−12の核発生の種を含んでいてもよく、そのような種がある場合には、種は一般には混合物の0.05−5重量%を構成する。合成用混合物の結晶化は、撹拌または静置条件にて、好ましくは撹拌条件にて、140−160℃で48ないし500時間などのように160℃またはそれ以下の温度で、行われてもよく、その後、得られたZSM−12結晶は母液から分離されて再生される。
【0024】
触媒組成物中のそれぞれの分子ふるいを、本発明のアルキル交換工程で採用される温度およびその他の条件に耐えられるような、他の材料と合体させることが望ましい。そのような材料としては、粘土などの無機材料、シリカ、および/または、アルミナなどの金属酸化物だけでなく、活性および不活性材料、および合成または天然産のゼオライトも含まれる。無機材料は、天然産でもよいし、シリカおよび金属酸化物を含むゼリー状の沈殿物すなわちゲルの形態であってもよい。
【0025】
1つのまたはそれぞれの分子ふるいとともに、ある材料を使用することは、すなわち、結合し、または合成時に存在して、それ自身が触媒として活性であって、触媒組成物の転化および/または選択性を変化させる可能性がある。反応速度を制御するための他の手段を採用することなく、アルキル交換された生成物を経済的かつ秩序だった方法で得ることができるように、不活性材料は希釈剤として働き、転化量を制御する。
工業用の作業条件における触媒組成物の粉砕強度を改善するために、これらの触媒として活性または不活性な材料を、例えば、ベントナイトやカオリンなどの天然産の粘土に組み込んでもよい。工業的な用途においては、触媒組成物が壊れて粉末状物質になってしまわないようにすることが望ましいので、触媒組成物が良好な破壊強度を有するようにすることが望ましい。
【0026】
触媒組成物に対する結合剤として1つのまたはそれぞれの分子ふるいと合成された天然産の粘土にはモンモリロナイトおよびカオリン族が含まれ、これらの族にはサブベントナイトおよびディキシー、マクナミー、ジョージアおよびフロリダ粘土として良く知られているカオリン、または、主な鉱物成分がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライトまたはアノキサイトであるその他が含まれる。これらの粘土は、採掘されたもとのままの状態で、またはまず焼成、酸処理または化学変化させた状態で用いることができる。
【0027】
前述の材料に加えて、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、トリア、ベリリア、マグネシア、およびそれらの組み合わせ、例えば、シリカアルミナ、シリカマグネシア、シリカジルコニア、シリカトリア、シリカベリリア、シリカチタニア、および3元組成物(シリカアルミナトリア、シリカアルミナジルコニア、シリカアルミナマグネシアおよびシリカマグネシアジルコニアなど)の中から選択された無機酸化物などの多孔質母材結合材料と1つまたはそれぞれの分子ふるいが合成されても良い。触媒組成物の押し出しを容易にするように、前述の多孔質母材結合材料の少なくとも一部をコロイド状形態にすることも好都合である。
【0028】
それぞれの分子ふるいは、通常、結合材または母材物質と混合されていて、最終的な触媒組成物は、5ないし90重量%、一般的には10ないし60重量%の量の結合材または母材物質を含んでいる。
【0029】
本発明の処理方法において、第1のおよび第2の分子ふるいは同一の触媒床に収容されている。最終的な触媒組成物の個々の粒子が第1および第2の両方の分子ふるいを含むように、通常は、個々の分子ふるいの個別粒子を、好ましくは結合状態で、物理的に混合することにより、または、分子ふるいの混合物を、一般的には結合材とともに、同時押し出しすることにより、これが実現される。あるいは、その全内容は参照することにより本願に組み込まれるものである国際特許公開(International Patent Publication)WO 97/45198に説明されているように、第1および第2の分子ふるいのうちの1つの粒子は、前記第1および第2の分子ふるいのうちの他方に対する結合材として作られていても良い。
【0030】
触媒組成物において、少なくとも第1の分子ふるいは、そして好ましくはそれぞれの分子ふるいは、タングステン、バナジウム、モリブデン、レニウム、クロム、マンガン、元素周期表(CAS版、1979)のVIII族から選択された金属、あるいはこれらの混合物などの水素化成分の少なくとも1つと結合されている。有益なVIII族金属の具体的な例は、鉄、ルテニウム、オスミウム、ニッケル、コバルト、ロジウム、イリジウム、および白金またはパラジウムなどの貴金属である。好ましくは、水素化成分はパラジウム、白金またはレニウムである。
【0031】
水素化成分の量は、水素化活性度と触媒機能性との釣り合いによって選定される。白金などの最も活性な金属が使用される場合には、そのような強い水素化活性度を有しないパラジウムに比べて、より少ない水素化成分でよい。一般的に、触媒組成物は、10重量%未満の水素化成分そして通常は0.01重量%から2重量%の前記成分を含んでいる。
【0032】
水素化成分は、例えばアルミニウムなどのIIIA族元素が、分子ふるい構造中や、その中に飽和していたり、あるいは分子ふるいおよび結合材と混合していたりして存在する程度まで、同時結晶化により触媒組成物中に組み込まれ得る。例えば白金の場合には、分子ふるいを白金金属含有イオンを含む溶液で処理することにより、そのような成分を分子ふるいの中あるいはその上に飽和させることができる。触媒を白金で飽和するための適切な白金化合物には、塩化白金酸、塩化第1白金、および、Pt(NH)4CIOなどの白金アンミン錯体を含む種々の化合物が含まれる。
【0033】
もう1つの方法として、分子ふるいが結合材と合成される際に、あるいは分子ふるいと結合材が押し出しまたは小粒状化により粒子に成形された後で、水素化成分の化合物を分子ふるいに追加しても良い。
【0034】
水素化成分による処理の後、65℃ないし160℃(150°ないし320°F)、通常は110ないし143℃(230°ないし290°F)の温度にて、少なくとも1分そして一般的には24時間以下の間、100から200kPaまで(0ないし15psig)の範囲の圧力にて、熱処理されて、分子ふるいは通常乾燥される。その後、260°から650℃(500°ないし1200°F)の温度にて1ないし20時間、空気あるいは窒素などの乾燥ガスの流れにて焼成しても良い。焼成は通常、100から300kPaまで(0ないし30psig)の範囲の圧力にて行われる。
【0035】
使用の前に、触媒組成物の芳香族水素化活性度を最小化するために、触媒組成物の水蒸気処理を採用しても良い。水蒸気処理では、触媒組成物は、通常、少なくとも260°から650℃(500°ないし1200°F)の温度にて少なくとも1時間、具体的には1ないし20時間、100から2590kPaまで(0ないし360psig)の圧力にて、5ないし100%水蒸気に接触させる。
【0036】
なおまた、触媒組成物を炭化水素フィードに接触させる前に、水素化成分を硫化しても良い。これは、およそ320°から480℃(600°ないし900°F)の範囲の温度にて、硫化水素などのイオウの供給源に触媒を接触させることにより、都合良く実行される。イオウの供給源は、水素または窒素などのキャリアガスを経て、触媒と接触され得る。
【0037】
フィード
本発明の処理方法で使用される芳香族フィードは、少なくとも9個の炭素原子を含む1またはそれより多くの芳香族化合物から成る。通常のフィードに見られる具体的なC+芳香族化合物は、メシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン)、ジュレン(1,2,4,5−テトラメチルベンゼン)、ヘミメリテン(1,2,4−トリメチルベンゼン)、プソイドキュメン(1,2,4−トリメチルベンゼン)、1,2−メチルエチルベンゼン、1,3−メチルエチルベンゼン、1,4−メチルエチルベンゼン、プロピル置換ベンゼン、ブチル置換ベンゼン、およびジメチルエチルベンゼンを含んでいる。C+芳香族化合物の適切な供給源は、芳香族化合物が多く含まれている任意の精製プロセスの任意のC+成分である。この芳香族成分は多くの割合のC+芳香族化合物、例えば少なくとも80重量%のC+芳香族化合物を含んでおり、好ましくは少なくとも80重量%、そしてより好ましくは90重量%以上の炭化水素がCないしC12の範囲に分布している。標準的な有用精製成分には、改質油、FCCナフサまたはTCCナフサが含まれる。
【0038】
本発明の処理方法に対するフィードとして、ベンゼンまたはトルエンもまた含まれる。従って、実用的な一実施形態として、アルキル交換反応装置へのフィードはC+芳香族炭化水素およびトルエンから成る。また、フィードとして、アルキル交換反応自体の流出生成物の蒸留により得られる、再利用/未反応トルエンおよびC+芳香族化合物も含まれる。標準的には、トルエンは、フィード全量の50ないし70重量%などのように、40ないし90重量%を占めており、C+芳香族成分は、アルキル交換反応ゾーンへのフィード全量の30ないし50重量%などのように、10ないし60重量%を占めている。
【0039】
炭化水素転化処理工程
処理工程は、放射状流、固定床、連続下降流、または流動床反応装置を含む任意の適当な反応装置にて行われ得る。アルキル交換反応条件としては、通常は、約400°ないし約454℃(750°ないし850°F)などの、約343°ないし約510℃(650°ないし950°F)の範囲の温度、約1480ないし約3550kPa(200ないし500psig)などの、約380ないし約4240kPa(50ないし600psig)の圧力、約1ないし約3などの、約1ないし約5の水素対炭化水素モル比、約1ないし約5などの、約0.2ないし約20のWHSVを含んでいる。アルキル交換反応条件は、重質芳香族化合物をベンゼン、トルエンおよびキシレン、特にベンゼンおよびキシレンなどの、C−C芳香族化合物を十分な量含んだ生成物に転化するのに十分なものである。
【0040】
以下、次の実施例を参照して、より詳しく本発明を説明する。
【実施例】
【0041】
実施例1(比較例)
第1の床は、触媒調製の最終段階において480℃(900°F)で5.5時間蒸気処理された、レニウムを飽和させたZSM−12触媒(65重量%ZSM−12/35重量%アルミナおよび0.5重量%レニウム)を含み、第2の床はZSM−5触媒(65重量%ZSM−5/35重量%アルミナ)を含んでいるような、2床触媒組成物を調製した。第1の床にて用いられたZSM−12は、約200のシリカ/アルミナ・モル比、30のアルファ値、約0.1ミクロンの結晶サイズ、および温度が100℃でメシチレン圧力が2Torrのときに、1000x10−6sec−1のメシチレンに対する拡散パラメータD/rを有していた。第2の床にて用いられたZSM−5は、0.02ないし0.05ミクロンの結晶サイズ、約60のシリカ/アルミナ・モル比を有していた。第1の床の第2の床に対する重量比は9:1であった。
【0042】
実施例2
40重量%の実施例1で用いられたZSM−12、40重量%の実施例1で用いられたZSM−5および20重量%のアルミナの混合物を同時押し出しすることにより単一床触媒組成物を調製した。押し出し物は、窒素中で予備焼成され、硝酸アンモニウム溶液で置換され、そして空気中、540℃(1000°F)で6時間焼成されて、水素型に転換された。得られた触媒粒子を、次に触媒組成物全重量に対して0.5重量%のレベルになるようにレニウムで飽和させ、空気中、524℃(975°F)で1時間焼成した。この材料を、次に900°Fで5.5時間蒸気処理したところ、触媒は67のアルファ値を有していた。
【0043】
実施例3
実施例2と同様の方法で、ただし、結晶サイズが0.2ないし0.5ミクロンであり、シリカ/アルミナ・モル比が約25に等しいようなZSM−5を用いて、単一床触媒組成物を調製した。
【0044】
実施例4
温度が約425℃、圧力が2445kPa(340psig)、水素対炭化水素・モル比が1.02、およびWHSVが6にて、61重量%のトルエン、0.12重量%のエチルベンゼン、3.5重量%のキシレン、0.36重量%のクメン、1.15重量%のn−プロピルベンゼン、13.55重量%のエチルトルエン、19.36重量%のトリメチルベンゼン、0.35重量%のジエチルベンゼン、および0.21重量%のインダンの混合物のアルキル交換を起こさせる個別の作業において、実施例1ないし3の触媒組成物を用いた。結果は、以下の表1にまとめてある。
【0045】
実施例2ないし4の同時押し出しされた単一床触媒は、実施例1の2床触媒に比べて、エチル含有C+芳香族炭化水素に対しておよそ2倍の転化活性を示したことが表1から分かるであろう。さらに、エチル基含有芳香族化合物の転化は、実施例1の2床触媒での約41重量%から、実施例2および3の同時押し出し単一床触媒での80−86重量%に増加した。
【0046】
表1
実施例1 実施例2 実施例3
温度(℃) 427 428 425
作業日数 1.5 2.5 1.5
重量%、H/C基準
C1 0.13 0.05 0.15
C2 0.47 0.97 0.95
C3 0.43 0.26 0.27
C4 0.12 0.07 0.04
C5 0.01 0.01 0.01
ベンゼン 10.43 10.07 9.50
トルエン 35.92 42.72 44.11
エチルベンゼン 2.31 0.62 0.67
キシレン 31.31 30.65 29.00
エチルトルエン 4.30 1.28 1.64
トリメチルベンゼン 10.70 11.66 11.87
ジエチルベンゼン 0.10 0.00 0.00
ジメチルエチルベンゼン 1.68 0.46 0.55
テトラメチルベンゼン 0.74 0.51 0.55
インダン 0.08 0.00 0.04
ナフタレン 0.11 0.06 0.07
メチルナフタレン 0.32 0.17 0.20
その他 0.84 0.45 0.39
エチル転化(重量%) 41.43 83.95 80.59
プロピル転化(重量%) 100.00 100.00 100.00
トルエン転化(重量%) 41.12 29.97 27.70
A9+転化(重量%) 46.94 59.46 57.10
【0047】
実施例5
1180グラムの水、1210グラムの塩化メチルトリエチルアンモニウム(MTEACl)、1950グラムのウルトラシルPM(Ultrasil PM)、229グラムのアルミン酸ナトリウム溶液(45%)、および364グラムの50%水酸化ナトリウム溶液から成る混合物から小結晶、高活性のZSM−12を合成した。混合物は次のようなモル構成比を有していた。
【0048】
SiO/Al = 50
O/SiO = 22
OH/SiO = 0.2
Na/SiO = 0.2
MTEACl/SiO = 0.26
【0049】
混合物は、5ガルのオートクレーブ中で、320°F(160℃)にて、150RPMで144時間反応させた。生成物は、ろ過し、脱イオン化した(DI)水で洗浄し、250°F(120℃)で乾燥した。合成直後の材料のXRDパターンは標準的な純粋相ZSM−12の幾何学形状を示した。合成直後の材料のSEMでは、その材料は、(平均結晶サイズがおよそ0.05ミクロンの)小結晶の凝集体から成ることが分かった。
【0050】
合成直後の結晶は、室温での硝酸アンモニウム溶液による2イオン交換、これに続く250°F(120℃)での乾燥および1000°F(540℃)6時間の焼成により、水素型に転換された。得られたZSM−12の結晶は、44.98のSiO/Al・モル比、500のアルファ値、および温度が100℃でメシチレン圧力が2Torrのときに、5000x10−6sec−1以上のメシチレンに対する拡散パラメータD/rを有していた。
【0051】
40重量%の上述製法によるZSM−12、40重量%のZSM−5、および20重量%のアルミナを含む混合物を押し出して、長さ1.3mm(1/20インチ)で四つ葉状の断面形状を有する小粒体とした。小粒体は、120℃(250°F)で乾燥され、窒素中480℃(900°F)で3時間焼成された。この材料は、次いで、硝酸アンモニウムで交換され、120℃(250°F)で乾燥され、さらに空気中540℃(1000°F)で6時間焼成された。次に、テトラアミン硝酸パラジウムの水溶液からの初期湿式飽和により、0.1%パラジウムが触媒に加えられた。飽和した材料を120℃(250°F)で乾燥し、空気中350℃(660°F)で6時間焼成して最終の触媒を生成した。
【0052】
3グラムの得られた触媒組成物を用いて、温度が約480℃、圧力が2170kPa(300psig)、水素対炭化水素・モル比が2、およびWHSVが2.7にて、トルエンと表2中に示された組成のC+芳香族炭化水素混合物との混合物のアルキル交換を起こさせた。4.4日間の作業の結果は以下の表2にまとめられている。
【0053】
表2
重量%、H/C基準 フィード 生成物
− 8.24
非芳香族 0.04
ベンゼン 12.79
トルエン 61.27 39.58
エチルベンゼン 0.03 0.11
キシレン 0.26 28.80
29.82 8.45
10 8.31 0.86
11+ 0.30 1.12
合計 99.99 99.99
トルエン転化(%) 35.39
転化(%) 71.64
10転化(%) 89.46
エチル転化(%) 96.52
プロピル転化(%) 97.19
【0054】
表2の結果は、実施例5の触媒が、特にエチルを含む材料を含めたC+芳香族化合物の転化に対して、きわめて活性であることを示している。しかし、試験に用いた触媒自体は、使用が進むに従って劣化する兆候が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
+芳香族炭化水素から成るフィードを、
(i)12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07および3.42±0.07に面間隔の極大値を有するX線回折パターンをもったZSM−12、モルデナイトおよび多孔質結晶性無機酸化物材料のうちから選択された第1の分子ふるい、および、
(ii)3ないし12の拘束指数(constraint index)を有する第2の分子ふるいから成る触媒組成物とアルキル交換反応条件下にて接触させる工程を有し、
少なくとも第1の分子ふるいはそれに付随した水素化成分を有し、第1および第2の分子ふるいは同一の触媒床に含まれており、C+芳香族炭化水素を前記アルキル交換反応条件下にてキシレンを含む反応生成物に転化する、C+芳香族炭化水素をより軽質の芳香族生成物に転化する処理方法。
【請求項2】
第1の分子ふるいがZMS−12である請求項1の処理方法。
【請求項3】
ZSM−12が、Xが三価の元素であり、Yが四価の元素であり、nが60より小さいようなX:(n)YOという分子量関係の組成を有している、請求項2の処理方法。
【請求項4】
nが20以上で60未満である、請求項3の処理方法。
【請求項5】
XがアルミニウムでありYがシリコンである、請求項3または4の処理方法。
【請求項6】
ZMS−12が0.1ミクロン未満の平均結晶サイズを有する、請求項2ないし5の処理方法。
【請求項7】
ZMS−12が、温度100℃でメシチレン圧力が2Torrのときにメシチレンに対して、少なくとも1000x10−6sec−1の拡散パラメータD/rを有する、請求項2ないし6の処理方法。
【請求項8】
ZMS−12が、少なくとも150のアルファ値(Alpha value)を有する、請求項2ないし7の処理方法。
【請求項9】
第2の分子ふるいがZMS−5である、請求項1ないし8の処理方法。
【請求項10】
第1および第2の分子ふるいの合計重量に対して、第2の分子ふるいが5ないし95重量%を構成する、請求項1ないし9の処理方法。
【請求項11】
第1および第2の分子ふるいの合計重量に対して、第2の分子ふるいが20を越えて80までの重量%を構成する、請求項10の処理方法。
【請求項12】
水素化成分が、タングステン、バナジウム、モリブデン、レニウム、クロム、マンガン、元素の周期表のVIII族の金属、およびその混合物のうちから選択されている、請求項1ないし11の処理方法。
【請求項13】
水素化成分が、イリジウム、レニウム、白金またはパラジウムである、請求項12の処理方法。
【請求項14】
水素化成分がレニウムである請求項13の処理方法。
【請求項15】
前記接触させる工程において、水素化成分が硫化物である、請求項1ないし14の処理方法。
【請求項16】
触媒組成物が粒子状物質であり、第1および第2の分子ふるいが、前記触媒床に物理的に混合されている別個の粒子に含まれている、請求項1ないし15の処理方法。
【請求項17】
触媒組成物が粒子状物質であり、第1および第2の分子ふるいが、それぞれ同一の触媒粒子に含まれている、請求項1ないし15の処理方法。
【請求項18】
フィード(feed)がベンゼンまたはトルエンをも含んでいる、請求項1ないし17の処理方法。
【請求項19】
アルキル交換反応条件として、約343ないし510℃(650ないし950°F)、約380ないし約4240kPa(50ないし600psig)、約1ないし5の水素対炭化水素モル比および約0.2ないし約20のWHSVを含む、請求項1ないし18の処理方法。
【請求項20】
アルキル交換反応条件として、約400ないし454℃(750ないし850°F)、約1480ないし約3550kPa(200ないし500psig)、約1ないし3の水素対炭化水素モル比および約1ないし約5のWHSVを含む、請求項19の処理方法。
【請求項21】
(a)少なくとも第1の分子ふるいはそれに付随した水素化成分を有し、第1および第2の分子ふるいは同一の触媒床に含まれており、C+芳香族炭化水素とトルエンをアルキル交換反応条件下にて、
(i)12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07および3.42±0.07に面間隔の極大値を有するX線回折パターンをもったZSM−12、モルデナイトおよび多孔質結晶性無機酸化物材料のうちから選択された第1の分子ふるい、および、
(ii)3ないし12の拘束指数(constraint index)を有する第2の分子ふるいから成る触媒組成物と接触させて、ベンゼンおよびキシレンを含む反応生成物の流れを生成する工程と、
(b)前記反応生成物の流れを蒸留してベンゼン生成物を得る工程とから成る、請求項1に述べられている、C+芳香族炭化水素をより軽質の芳香族生成物に転化する処理方法。

【公表番号】特表2006−506434(P2006−506434A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553459(P2004−553459)
【出願日】平成15年10月21日(2003.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2003/033216
【国際公開番号】WO2004/046278
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】