説明

重送検知装置、重送判断方法及び画像形成装置

【課題】最初に繰り出される用紙も重送検知が可能な重送検知装置を提供する。
【解決手段】搬送されたカット用紙1の厚さを検知する厚さ検知手段と、搬送された用紙1の曲げ剛性を検知する剛性検知手段と、厚さ検知手段で検知された用紙1の厚さと剛性検知手段で検知された用紙1の曲げ剛性値を、その用紙1の1枚と積重時の厚さとその時の曲げ剛性値に基づいて設定された用紙の厚さと剛性の閾値と比較して重送か否かを判断する重送判断手段38とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のサイズにカットされたカット用紙(以下、単に用紙という)の重送検知装置、重送判断方法、及び前記用紙重送検知装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙を搬送する用紙搬送装置における用紙重送検知装置としては、用紙堆積部に堆積された用紙が繰り出される枚数をカウントし、その枚数と堆積した用紙の高さ変化から用紙の厚さを求めて閾値を決め、その閾値に比べ用紙搬送路上で計測される用紙厚さが厚ければ重送と判断する装置が提案されている。(特許文献1)
また、用紙堆積部に堆積された用紙が繰り出され際に用紙の厚さを計測して、平均厚さを求めて記憶し、その値に対し以降計測される用紙の厚さが厚ければ重送と判断する装置が提案されている。(特許文献2)
【特許文献1】特開平06−040604号公報
【特許文献2】特開平11−116101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1に記載された用紙重送検知装置は、用紙堆積部に堆積された用紙が繰り出される枚数をカウントし、その枚数と堆積した用紙の高さ変化から用紙の厚さを求めて閾値を決めて重送を判断するので、用紙堆積部から最初に繰り出される用紙の重送判断はきない。
【0004】
しかも堆積した用紙の高さ変化から用紙の厚さを求めるので、数百枚堆積した状態での用紙の高さから、数枚分の厚さ変化を精度よく測定するのは難しく、正確な重送判断ができない。
【0005】
また、前記特許文献2に記載の従来技術は、用紙堆積部に堆積された用紙が繰り出される際に用紙厚さを計測してその平均値を求めて記憶し、その値に対して以降計測される用紙厚さが厚ければ重送と判断する場合も、最初の用紙の重送判断は困難である。
【0006】
さらに、これらの用紙重送検知装置は、用紙堆積部内に厚さの異なる用紙が混在している場合、正確に重送を判断することができない。
【0007】
本発明の目的は、前記従来の欠点を解消し、最初に繰り出される用紙も確実に重送が検知でき、しかも厚さの異なる用紙が混在している場合でも確実に重送が検知できる重送検知装置、重送判断方法及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本発明の第1の手段は、搬送されたカット用紙の厚さを検知する厚さ検知手段と、
搬送された前記用紙の曲げ剛性を検知する剛性検知手段と、
前記厚さ検知手段で検知された用紙の厚さと前記剛性検知手段で検知された用紙の曲げ剛性値を、その用紙の1枚と積重時の厚さとその時の曲げ剛性値に基づいて設定された用紙の厚さと剛性の閾値と比較して重送か否かを判断する重送判断手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、前記厚さ検知手段は、回転する駆動ローラと、それに圧接する従動ローラと、その従動ローラと前記駆動ローラで前記用紙を挟持した際の前記従動ローラの駆動ローラに対する軸間の変位量を検知する変位検知手段を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第3の手段は前記第2の手段において、前記変位検知手段は前記従動ローラを一端に支持した回動するレバーを有し、そのレバーの他端の変位から前記従動ローラの前記駆動ローラに対する軸間の変位量を検知する構成になっていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の第4の手段は前記第3の手段において、前記レバーの回動支点から前記従動ローラの支持点までの距離L1よりも、前記レバーの回動支点からそのレバーの他端の変位量を検知する検知部までの距離L2の方が長いことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第5の手段は前記第2の手段において、前記剛性検知手段は前記駆動ローラの回転軸に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第6の手段は前記第1または第5の手段において、前記剛性検知手段は、前記用紙の先端が当接すると回動するように支持された検知部材と、その検知部材の一部を前記用紙の搬送経路上に出没可能に弾性付勢する弾性部材と、前記用紙が前記検知部材の一部に当接して屈曲したときの前記検知部材の回動変位量を検知する変位検知手段を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第7の手段は前記第6の手段において、前記検知部材は前記用紙の先端が当接する第1のアーム部と、前記変位検知手段により回動変位量を検知する検知部を有する第2のアーム部とを一体に有し、前記第1のアーム部と第2のアーム部の間に回動支点が設けられ、前記第1のアーム部の用紙先端が当接する位置から前記回動支点までの距離L3よりも、前記検知部から前記回動支点までの距離L4の方が長いことを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第8の手段は、搬送されたカット用紙の厚さを検知する厚さ検知手段と、
搬送された前記用紙の曲げ剛性を検知する剛性検知手段と、
用紙の重送を判断する重送判断手段とを備え
予め用紙の1枚と積重時の厚さとその時の曲げ剛性値に基づいて用紙の厚さと曲げ剛性値の閾値を設定して、前記重送判断手段の記憶部に記憶させ、
前記厚さ検知手段で検知された用紙の厚さと前記剛性検知手段で検知された用紙の曲げ剛性値を前記重送判断手段に入力して前記閾値と比較することにより用紙の重送の有無を判断することを特徴とするものである。
【0016】
本発明の第9の手段は、感光体と、その感光体上に静電潜像を形成する露光手段と、その感光体上にトナー画像を形成する現像手段と、カットされた用紙を堆積する用紙堆積部と、その用紙堆積部から前記用紙を前記感光体側に繰り出す搬送機構と、前記感光体上のトナー画像を前記用紙に転写する転写手段と、転写されたトナー画像を用紙に定着する定着手段とを備えた画像形成装置において、
前記転写手段の用紙搬送方向上流側に前記第1ないし第7の手段のいずれかの重送検知装置を設けたことを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第10の手段は前記第9の手段において、前記重送検知装置で重送と判断された用紙を退避させる重送用紙退避部を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、最初に繰り出される用紙も重送検知が可能で、しかも用紙堆積部に厚さの異なる用紙が混在している場合でも確実に重送が検知でき、重送による装置のトラブル、例えば紙詰り、搬送ローラへの用紙の巻つき、印刷時のトナーの未定着等の発生が防止でき、オペレータの負担を低減できて、画像形成装置では印刷効率の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明においては、1枚の用紙と積重された2枚以上の用紙では、これらの用紙の曲げ剛性が異なり、しかも1枚の用紙でも厚い用紙の場合には、薄い用紙を重ねた複葉として前記1枚の厚い用紙と同じ厚さとした場合でも1枚の厚い用紙の曲げ剛性と薄い用紙を複葉とした場合に曲げ剛性が異なることを究明した。そして用紙搬送装置において、用紙の厚さと曲げ剛性を検知することにより、用紙が1枚で搬送されているのか、重送されているのかを容易かつ適切に判断できるようにしたものである。
【0020】
即ち、1枚の用紙の厚さとその場合の曲げ剛性及び2枚以上の用紙の厚さとその場合の曲げ剛性を測定し、これらの測定値から重送の判定基準となる用紙の厚さと曲げ剛性の閾値を予め設定する。そして、実際に搬送された用紙の厚さと曲げ剛性を用紙搬送路内で検知し、そのデータを前記閾値と比較して、用紙の重送か否かを判断するものである。
【0021】
図1は、用紙の厚さと剛性の関係を示す概念図である。図中の直線Aは用紙を2枚積重して厚さを変えた場合の曲げ剛性の変化を示し、曲線Bは1枚の用紙の厚さを変えた場合の曲げ剛性の変化を示している。
【0022】
この図から明らかなように、直線Aから2枚の場合の剛性は1枚の場合の剛性に比べてほぼ2倍の剛性を有し、ほぼ積重数に比例して剛性が増加するのに対して、1枚で厚さを変えた場合には曲線Bから厚さのほぼ3乗に比例して剛性が増加することが判明した。
【0023】
このような曲げ剛性の変化の違いから、同一厚さの用紙が搬送されている場合には、1枚の厚さと2枚の厚さの中間領域に、例えばC点に判定基準となる閾値を設定し、この閾値と検知された用紙の厚さ及び曲げ剛性値を比較して、閾値以下の値に該当する場合は1枚の搬送、それ以上では重送であると判断することができる。
【0024】
また、直線Aと曲線Bとの中間領域に用紙厚さと曲げ剛性の閾値線Dを設定しておき、用紙の厚さと曲げ剛性を検知して、用紙の厚さの検知値と曲げ剛性の検知値との交点が閾値線Dの上方、例えは図中のF点であれば1枚送りであり、閾値線Dの下方、例えば図中のE点であれば重送であると判定する。
【0025】
図中の領域Gと領域Hは、1枚の用紙及び積重した用紙の曲げ剛性に関する用紙の材質や測定のばらつきを考慮した曲げ剛性の変動幅を示し、これらの変動幅を考慮して、すなわちこの領域G,Hに入らないように閾値線Dが設定される。
【0026】
前記閾値C及び閾値線Dは使用する各種用紙についてそれぞれ設定して、これを重送判断手段の記憶部に記憶しておき、この記憶されたデータに基いて判定すればよい。
【0027】
本発明では用紙を搬送する工程で、搬送される用紙の厚さと曲げ剛性を測定する必要があり、用紙の厚さや剛性の測定には公知の測定方法を採用することができるが、用紙の厚さについては、用紙を搬送する駆動ローラと、それに圧接する従動ローラを利用し、両ローラの軸間距離を監視することにより簡単に測定が可能である。
【0028】
特に回動するレバーの一端に従動ローラを支持して、そのレバーの他端の変位量を監視することにより前述の軸間距離を測定する方法は、高精度の測定が可能である。
【0029】
用紙の曲げ剛性は、搬送される用紙の先端に当接する検知部材を設け、その検知部材は弾性部材により用紙の先端を屈曲させる方向に回動付勢されており、用紙が前記検知部材で屈曲された際の検知部材の回動変位量を検知する構成とした場合、簡単な構造で用紙の剛性を適切に測定することができる。
【0030】
また用紙の厚さと曲げ剛性の測定を、用紙を搬送する駆動ローラと、それに圧接する従動ローラを備え、その従動ローラに前記厚さ検知手段を取り付け、前記駆動ローラの回転軸に前記剛性検知手段を取り付けることにより、部品点数を少なくして構造の簡略化が図れる。
【0031】
次に本発明の実施形態に係る重送検知装置を図とともに説明する。図2は、第1実施形態に係る重送検知装置の概略構成図である。
【0032】
同図に示すように固定位置に支持された搬送ローラ25に対して検知ローラ23が上下動可能に配置されている。検知ローラ23はL字状をした厚さ検知レバー21のアーム部211の先端に支軸231を介して取り付けられている。検知レバー21は支軸24により回動可能に支持され、それのアーム部212の途中にスプリング22が接続されて、スプリング22の引張力で検知ローラ23は搬送ローラ25側に押し付けられている。搬送ローラ25は図示しないモータ(駆動手段)により矢印b方向に回転して、搬送ローラ25との間で用紙1を挟んで用紙1を矢印a方向に搬送する。従って搬送ローラ25が駆動ローラ、検知ローラ23が従動ローラとして機能する。
【0033】
搬送ローラ25の位置は固定状態にあり、検知ローラ23は回動する検知レバー21に支持されて上下動可能であるから、用紙1が検知ローラ23と搬送ローラ25の間に挟み込まれると、検知ローラ23が用紙1の厚さ分だけ押し上げられる。この検知ローラ23の変位に伴い、図3に示すように検知レバー21が支軸24を中心にして図面に向かって時計周り方向に回動する。
【0034】
検知レバー21のアーム部212の先端部付近に例えば反射面などの検知部213が設定されており、この検知部213と支軸24との距離L2は検知ローラ23を支持する支軸231と支軸24との距離L1の数倍に設定されているから、検知ローラ23の変位が検知部213では(L2/L1)の倍率で増幅して現れる。このようにして拡大された検知部213の変位量は、光学的センサや位置検知形検出器(Position Sensitive Detector PSD)などからなる第1の変位センサ20で検知される。
【0035】
このように用紙1の挟み込みによる検知ローラ23と搬送ローラ25の軸間距離Xの変化、すなわち用紙1の厚さは、用紙1を搬送しながら第1の変位センサ20で自動的に検知できる。第1の変位センサ20で得られた用紙1の厚さに関するデータは、重送判断手段38に送信される。
【0036】
搬送ローラ25は、用紙1を搬送するための摩擦駆動力を確保するためゴムローラが望ましく、一方、厚さ検知精度を上げるためには適度の硬さが必要であり、搬送ローラ25の硬度は50度以上(JIS K6301A)とすることが望ましいことが諸種の実験結果から判明した。後述の第2実施形態でも前記硬度を有する搬送ローラを用いる方が望ましい。
【0037】
次に用紙1は、搬送ローラ31と従動ローラ34の間に送り込まれる。搬送ローラ31は固定位置に支持され、図示しないモータ(駆動手段)により矢印c方向に回転駆動される。従動ローラ34はスプリング35により搬送ローラ31側に押し付けられ、搬送ローラ31と一緒に連れ回りして、用紙1を矢印a方向に搬送する。
【0038】
短いアーム部331と長いアーム部332を備えてく字状をした剛性検知レバー33の屈曲部が、前記搬送ローラ31の支軸36上に回動自在に支持されている。短いアーム部331は、用紙1の搬送経路上で搬送ローラ31と従動ローラ34のローラ対の出口側付近に突出するように配置されている。長いアーム部332の途中にスプリング32が接続されて矢印d方向に引っ張られ、また剛性検知レバー33の一部と当接するストッパ37が設けられている。このスプリング32とストッパ37により、剛性検知レバー33は用紙1が到達しない待機位置に保持される。
【0039】
長いアーム部332の先端部付近に、その部分の変位量を検知する光学的センサやPSDなどからなる第2の変位センサ30が設置されている。
【0040】
図3に示すように、搬送されて来た用紙1の先端部10が搬送ローラ31と従動ローラ34の間から突出すると直ちに剛性検知レバー33のアーム部331の側面に当り、用紙1の剛性によりスプリング32の引張力に抗してアーム部331が沈み込む。この沈込量はスプリング32の引張力とのバランスで、用紙1の剛性が弱ければ沈込量は小さく、用紙1の剛性が強ければ沈込量は大きい。用紙1の剛性は、所謂、用紙1のこしの強さの関係から、用紙1の先端部10から僅かに離れた部分が搬送ローラ31と従動ローラ34で挟持された状態で測定することが望ましいため、剛性検知レバー33のアーム部331は搬送ローラ31と従動ローラ34との接合部出口側近傍に配置している。
【0041】
図2に示すように、搬送ローラ31と従動ローラ34との接合部、すなわちその接合部から直進した用紙1の先端部10がアーム部331に当接する位置から支軸36までの距離L3に対して、支軸36から検知部333までの距離L4が長く設定されているから、アーム部331の沈込量は(L4/L3)の倍率で増幅される。この検知部333の変位量、すなわち検知部333と第2の変位センサ30との距離の変化が第2の変位センサ30で検知される。第2の変位センサ30で得られた用紙1の剛性に関するデータは、重送判断手段38に送信される。
【0042】
用紙1が1枚の場合のその厚さと曲げ剛性の値、ならびに用紙1が2枚重なった場合のそれの厚さと曲げ剛性の値から、重送の閾値C及び閾値線Dが、各用紙1の種類毎に予め設定されて、その設定データが重送判断手段38の記憶部381に記憶されている。
【0043】
変位センサ20,30からの出力信号が重送判断手段38の判断部382に取り込まれるとともに、記憶部381に記憶されている閾値Cと閾値線Dのデータも取り込まれて比較され、センサ20,30で検知された用紙1の厚さ及び曲げ剛性が、閾値Cよりも大きくかつ閾値線Dよりも下方の値(図1参照)に該当する場合、用紙1は重送されていると判断し、閾値Cよりも小さくかつ閾値線Dよりも上方の値に該当する場合、用紙1は1枚で搬送されていると判断し、さらに閾値Cよりも大きくかつ閾値線Dよりも上方の値に該当する場合、前回搬送された用紙1と厚さの異なる1枚の用紙である判断して、判断結果が装置本体の制御を行なう制御部100に送られる。
【0044】
このように用紙の搬送経路に用紙の厚さと曲げ剛性を測定する手段を配置し、これらの手段により計測された厚さとその場合の曲げ剛性の測定値と、予め設定された閾値と閾値線との比較により、搬送される最初の用紙であっても、正確かつ適切に重送か否かを判断でき、しかも搬送される用紙に厚さの異なる用紙が混在した場合でも適切に重送か否かを判断することが可能となる。
【0045】
図6は、前記閾値線の具体的な設定例を示す特性図である。このテストでは図2に示す距離L3に対する距離L4の比率(L4/L3)、距離L3に対する支軸36からスプリング32による引張点までの距離L5の比率(L5/L3)、スプリング32による引張力Fを、それぞれ下記のように設定した。
【0046】
(L4/L3)=2
(L5/L3)=1
F=5N
また第2の変位センサ30として、オムロン社製 Z4D−B02を用いた。用紙の剛性は、用紙無しのときの第2の変位センサの出力電圧Snと用紙有りのときの第2の変位センサの出力電圧Seの差から求められ、用紙剛性電圧をStとすると下式で表せられる。
【0047】
St=Se−Sn
図6中の曲線Iは前述のような設定条件でテストを行ない、用紙1枚の場合の用紙厚さと用紙剛性電圧Stとの関係をプロットして作成した特性曲線、曲線Jは用紙2枚を積重した場合の用紙厚さと用紙剛性電圧Stとの関係をプロットして作成した特性曲線である。この図から明らかなように曲線Iと曲線Jは重ならず離れているから、両曲線I,Jの中間位置を通る線を引いて、それを閾値線Dとする。
【0048】
用紙剛性電圧をSt、用紙の厚さをTpとした場合の閾値線Dの式の一例を示せば下記の通りである。
【0049】
St=5.3×Tp−0.53
従ってSt>5.3×Tp−0.53であれば1枚送り、St<5.3×Tp−0.53であれば重送と判断する。
【0050】
図4は、第2実施形態に係る重送検知装置の概略構成図である。この実施形態は、1つの用紙搬送手段で用紙1の厚さと曲げ剛性の検知をほぼ同時に行うものである。
【0051】
厚さ検知ローラ27は上下動可能に支持され、スプリング26で搬送ローラ25に押圧されている。搬送ローラ25と検知ローラ27の間に挟み込まれた用紙1により検知ローラ27は上方に押し上げられ、第1の変位センサ20がその厚さ検知ローラ27の支軸271の変位を検知して、厚さ検知ローラ27の支軸271と搬送ローラ25の回転軸251との軸間距離Xの変位量を計測する。
【0052】
剛性検知レバー33は、支軸36(搬送ローラ25の回転軸上)を中心に回動可能に支持され、スプリング32は剛性検知レバー33を矢印d方向に引っ張り、剛性検知レバー33のアーム部332をストッパ37に突き当てる。第2の変位センサ30は、剛性検知レバー33のアーム部331が用紙1の曲げ剛性で回動されたとき、剛性検知レバー33の回動変位量を計測する。
【0053】
前記第1実施形態と同様に、前記変位センサ20,30の出力は重送判断手段38に入力され、閾値C及び閾値線Dと比較されて重送の有無が判断される。
【0054】
前記ローラ25,27の用紙搬送方向下流側に、用紙1の有無を検知する用紙検知センサ29と、さらにその下流側にレジストローラ41,42が配置されている。レジストローラ41は表面が金属であり、レジストローラ42は表面がゴムで形成されており、レジストローラ42は図示しない駆動機構により回転され、用紙1を矢印a方向に搬送する。
【0055】
この際用紙検知センサ29は用紙1の先端を検知し、この検知信号により搬送ローラ25を回転駆動して、用紙1をそこから所定の距離搬送する。この距離は図4に示すように、レジストローラ41,42のニップ部に用紙先端を押し付けて、上方にたわませてスキューを補正できる量に設定されており、このようにしてスキュー補正した後にレジストローラ41,42が用紙1を搬送する。
【0056】
本実施形態は、搬送ローラ25と検知ローラ27のローラ対で用紙1の厚さと曲げ剛性を計測して重送検知を行なっているが、このローラ対を用紙1のスキューを補正するレジストローラ41、42の直前に配置することにより、用紙1のスキューを補正するための用紙1の搬送手段と重送検知手段の共用が図れ、装置の小型化が可能となる。
【0057】
前記第1,2実施形態では剛性検知レバー33を搬送ローラの支軸上に設けたが、必ずしも同軸上に設ける必要はなく、搬送ローラの支軸とは別の支軸で剛性検知レバー33を支持することもできる。しかし剛性検知レバー33を搬送ローラの支軸上に設けると、構造の簡略化が図れる。
【0058】
図5は、第2実施形態に係る重送検知装置を備えた画像形成装置の概略構成図である。この画像形成装置は4つの現像ユニット501〜504を転写ベルト2上に配置し、転写ベルト2上にトナーによるカラー像を形成して、そのカラー像を用紙堆積手段4から送られた用紙1に転写し、定着器60で定着してカラー画像を得る。
【0059】
現像ユニット501〜504は、黒色トナー、シアン色トナー、マゼンタ色トナー、イエロー色トナーを、それぞれ個別に収容している。各現像ユニット501〜504は、感光体ドラム54、感光体ドラム54上を帯電させる帯電器55、感光体ドラム54上に静電潜像を書き込む露光器56、トナーを貯めるトナーホッパ53、トナー層を形成して感光体ドラム54にトナーを接触させる現像ローラ52、感光体ドラム54上をクリーニングするドラムクリーナ57で構成される。
【0060】
中間転写ベルト2は複数のローラで張架され、ベルト駆動ローラ3で搬送される。ベルトクリーナ91は中間転写ベルト2上の残留トナーを除去する。一次転写ローラ58は、感光体ドラム54に対向して中間転写ベルト2の内側に配置される。
【0061】
用紙搬送経路8は、用紙堆積手段4からピックローラ9、分離ローラ11、重送検知装置201及びレジストローラ41、42を経て、二次転写ローラ7と中間転写ベルト2の間を通過し、搬送ベルト81から定着器60へ至る。
【0062】
重送検知装置201の下流側の用紙搬送路8上に、支軸702を中心に回動するレバー701が搬送路8から出没可能に取り付けられている。このレバー701の下方に、用紙搬送路8から分岐した重送用紙退避路71と、それに続くトレイ状の重送用紙退避部72が設けられている。このレバー701は、搬送切り替えガイド70を兼ねている。
【0063】
定着器60は、バックアップローラ64、弾性ローラ63、加熱ローラ62、定着ベルト61を有し、定着ベルト61は弾性ローラ63と加熱ローラ62に掛け渡され、加熱ローラ62あるいは他のローラの回転により駆動される。用紙1はバックアップローラ64により弾性ローラ63側に押し付けられて搬送され、加熱ローラ62は金属の中空シャフト内にハロゲンヒータ等の加熱手段を有し、定着ベルト61を加熱する。弾性ローラ63の表面はシリコンゴム等の弾性材で形成され、バックアップローラ64の押し付けによりニップ部を弾性ローラ63側に突出し、用紙1が定着ベルト61に巻きつくのを防止する。
【0064】
感光体ドラム54上を帯電器55で帯電し、露光器56で画像情報に応じた光を照射して感光体ドラム54上に静電潜像を形成する。その静電潜像が感光体ドラム54の回転により現像ローラ52に達し、トナー層と接すると帯電しているトナーが静電潜像上に付着する。
【0065】
感光体ドラム54上のトナー画像は、現像ユニット501で例示するように、一次転写ローラ58が中間転写ベルト2を押し付ける位置で、中間転写ベルト2上に転写され、続いてシアン,マゼンタ,イエローの順で各現像ユニットの感光体ドラム上のトナー画像は中間転写ベルト2上に転写され、カラーのトナー画像が得られる。
【0066】
そして中間転写ベルト2の搬送により、二次転写ローラ7の位置で搬送されてきた用紙1上にトナー画像が転写される。トナー画像が転写された用紙1は、搬送ベルト81により定着器60に搬送され、熱と圧力によりトナーが溶融定着されカラー画像が用紙1上に固定される。
【0067】
この例では、トナー画像を用紙1に転写する際に中間転写ベルト2を使用したが、中間転写ベルト2は必ずしも必要でなく、トナー画像を現像ユニット501〜504から直接用紙1に転写してもよい。
【0068】
次に用紙1の重送検知について説明する。用紙1は用紙堆積手段4からピックローラ9で繰り出され、分離ローラ11で1枚毎に分離されて搬送されるが、確実に分離されず複数枚が重なった状態で搬送されることもある。前述のように重送検知装置201(第1の変位センサ20、第2の変位センサ30、重送判断手段38)は搬送されて来る用紙1の状態を常に監視しており、重送が検知されると重送検知信号を画像形成装置の諸動作を制御する制御部100に送る。
【0069】
この重送検知信号により制御部100は搬送路切り替えガイド70に対して切替え信号を出力して、今まで用紙搬送路8から離れた位置に待機していたガイド70(レバー701)を回動させて図に示すように用紙搬送路8を遮り、その用紙を重送用紙退避路71側に導き、重送用紙退避部72内にストックする。重送した用紙1を重送用紙退避路71側に案内すると、ガイド70(レバー701)は用紙搬送路8から離れた待機位置に直ちに戻される。
【0070】
このように重送した用紙を自動的に退避させることで、重送によるジャム等で装置が停止することが予め回避でき、さらに重送用紙を退避させることで重送した用紙を取り除くために装置を停止する必要もない。そのため装置の稼働効率が良く印刷効率が向上し、オペレータの負担も軽減される。
【0071】
前記実施形態では重送判断手段38と制御部100とを別々に設けたが、重送判断手段38を制御部100の中に取り込むこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明による重送検知装置は、印刷を行う用紙の搬送装置に限らず、印刷された用紙の枚数確認あるいは印刷された用紙の仕分け等のための用紙の搬送装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】用紙の厚さと曲げ剛性との関係を示す概念図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る重送検知装置の概略構成図である。
【図3】その重送検知装置の検知動作を示す概略構成図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る重送検知装置の概略構成図である。
【図5】その重送検知装置を備えた画像形成装置の概略構成図である。
【図6】本発明の実施形態において閾値線の具体的な設定例を示す特性図である。
【符号の説明】
【0074】
1:用紙、2:中間転写ベルト、3:ベルト駆動ローラ、4:用紙堆積手段、7:二次転写ローラ、8:用紙搬送経路、9:ピックアップローラ、10:用紙の先端部、11:分離ローラ、20:第1の変位センサ、201:重送検知装置、21:厚さ検知レバー、211:アーム部、212:アーム部、213:検知部、22:スプリング、23:厚さ検知ローラ、231:支軸、24:支軸、27:厚さ検知ローラ、271:支軸、29:用紙検知センサ、30:第2の変位センサ、31:搬送ローラ、32:スプリング、33:剛性検知レバー、331:アーム部、332:アーム部、333:検知部、34:従動ローラ、35:スプリング、36:支軸、37:ストッパ、38:重送判断手段、381:記憶部、382:判断部、41:レジストローラ、42:レジストローラ、52:現像ローラ、53:トナーホッパー、54:感光体ドラム、55:帯電器、56:露光器、57:ドラムクリーナ、58:一次転写ローラ、501,502,503,504:現像ユニット、60:定着器、61:定着ベルト、62:加熱ローラ、63:弾性ローラ、64:バックアップローラ、70:搬送切り替えガイド、701:レバー、702:支軸、71:重送退避路、72:重送用紙退避部、81:搬送ベルト、91:ベルトクリーナ、100:制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されたカット用紙の厚さを検知する厚さ検知手段と、
搬送された前記用紙の曲げ剛性を検知する剛性検知手段と、
前記厚さ検知手段で検知された用紙の厚さと前記剛性検知手段で検知された用紙の曲げ剛性値を、その用紙の1枚と積重時の厚さとその時の曲げ剛性値に基づいて設定された用紙の厚さと剛性の閾値と比較して重送か否かを判断する重送判断手段と
を備えたことを特徴とする重送検知装置。
【請求項2】
請求項1記載の重送検知装置において、前記厚さ検知手段は、回転する駆動ローラと、それに圧接する従動ローラと、その従動ローラと前記駆動ローラで前記用紙を挟持した際の前記従動ローラの駆動ローラに対する軸間の変位量を検知する変位検知手段を備えていることを特徴とする重送検知装置。
【請求項3】
請求項2記載の重送検知装置において、前記変位検知手段は前記従動ローラを一端に支持した回動するレバーを有し、そのレバーの他端の変位から前記従動ローラの前記駆動ローラに対する軸間の変位量を検知する構成になっていることを特徴とする重送検知装置。
【請求項4】
請求項3記載の重送検知装置において、前記レバーの回動支点から前記従動ローラの支持点までの距離L1よりも、前記レバーの回動支点からそのレバーの他端の変位量を検知する検知部までの距離L2の方が長いことを特徴とする重送検知装置。
【請求項5】
請求項2記載の重送検知装置において、前記剛性検知手段は前記駆動ローラの回転軸に取り付けられていることを特徴とする重送検知装置。
【請求項6】
請求項1または5記載の重送検知装置において、前記剛性検知手段は、前記用紙の先端が当接すると回動するように支持された検知部材と、その検知部材の一部を前記用紙の搬送経路上に出没可能に弾性付勢する弾性部材と、前記用紙が前記検知部材の一部に当接して屈曲したときの前記検知部材の回動変位量を検知する変位検知手段を備えていることを特徴とする重送検知装置。
【請求項7】
請求項6記載の重送検知装置において、前記検知部材は前記用紙の先端が当接する第1のアーム部と、前記変位検知手段により回動変位量を検知する検知部を有する第2のアーム部とを一体に有し、前記第1のアーム部と第2のアーム部の間に回動支点が設けられ、
前記第1のアーム部の用紙先端が当接する位置から前記回動支点までの距離L3よりも、前記検知部から前記回動支点までの距離L4の方が長いことを特徴とする重送検知装置。
【請求項8】
搬送されたカット用紙の厚さを検知する厚さ検知手段と、
搬送された前記用紙の曲げ剛性を検知する剛性検知手段と、
用紙の重送を判断する重送判断手段とを備え
予め用紙の1枚と積重時の厚さとその時の曲げ剛性値に基づいて用紙の厚さと曲げ剛性値の閾値を設定して、前記重送判断手段の記憶部に記憶させ、
前記厚さ検知手段で検知された用紙の厚さと前記剛性検知手段で検知された用紙の曲げ剛性値を前記重送判断手段に入力して前記閾値と比較することにより用紙の重送の有無を判断することを特徴とする重送判断方法。
【請求項9】
感光体と、その感光体上に静電潜像を形成する露光手段と、その感光体上にトナー画像を形成する現像手段と、カットされた用紙を堆積する用紙堆積部と、その用紙堆積部から前記用紙を前記感光体側に繰り出す搬送機構と、前記感光体上のトナー画像を前記用紙に転写する転写手段と、転写されたトナー画像を用紙に定着する定着手段とを備えた画像形成装置において、
前記転写手段の用紙搬送方向上流側に請求項1ないし7のいずれか1項記載の重送検知装置を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9記載の画像形成装置において、前記重送検知装置で重送と判断された用紙を退避させる重送用紙退避部を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−39242(P2007−39242A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162621(P2006−162621)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】