説明

重量物向き変更装置

【解決手段】載置ローラ2を有する回転支持台1と、載置ローラ2に支持されて回転支持台1上で横軸4aを中心に回転し得る連結環4を備えている。連結環4は横軸4aを中心とする周方向で互いに分離されて着脱可能な両連結端部7を有する一対の分割体5,6を備えている。各分割体5,6の内側には収容域8を設けている。各分割体5,6を両連結端部7で互いに連結した連結環4の内側で各分割体5,6の収容域8により形成された収容室10において、各分割体5,6には、互いに分離された各分割体5,6の収容域8に箱桁13を挿入して各分割体5,6を両連結端部7により互いに連結した状態で、箱桁13を挟持して保持する複数のねじジャッキ11を設けている。回転支持台1の載置ローラ2に載置した連結環4の半径方向の向きを連結環4の回転に伴い変更し得る。
【効果】箱桁13の各部の溶接作業で変更可能向きの制限を少なくして作業効率を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、橋梁の箱桁を製造する過程で各部の溶接作業を効率的に行なうために箱桁の向きを変更する重量物向き変更装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の重量物向き変更装置としては、例えば下記の特許文献1で開示された重量物用反転機構が公知になっている。この重量物用反転機構は、ローラ5(載置ローラ)を有する基台4(回転支持台)と、そのローラ5上に外周の回動面2(案内面)で支持されて基台4上で横軸を中心に回転し得るコ字形状の反転ガイド体3とを備えている。反転ガイド体3の内側には間隔調節し得る一対の受け支え盤8,9が設けられている。これらの受け支え盤8,9間にワークW(重量物)を挟持した状態で反転ガイド体3を回転させてワークWの向きを変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−155427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の特許文献1で開示された重量物用反転機構においては、ワークWを上向きや斜め上向きや横向きに変更することはできるが、一対の受け支え盤8,9間がそれらの向きへ開放されているため、ワークWを下向きに変更することはできず、変更可能向きに制限がある。例えば、橋梁の箱桁を製造する過程でこの重量物用反転機構を利用すると、変更可能向きに制限があるため、箱桁の各部の溶接作業を効率的に行なうことができない。
【0005】
そこで、従来は、箱桁をクレーンにより吊り上げて向きを変更しながら箱桁に対する溶接作業を行なっていた。ところが、クレーンによる向き変更作業は時間を要するため、また、その向き変更作業を行なっている間はクレーンを他の作業に利用することができないため、工場全体の作業効率が低下する原因になっていた。
【0006】
この発明は、上記の特許文献1で開示された重量物用反転機構の問題点を解消して変更可能向きの制限を少なくした重量物向き変更装置を開発し、例えば箱桁の各部の溶接作業でクレーンの利用時間を少なくして作業効率を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
後記実施形態の図面(図1〜9)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる重量物向き変更装置は、下記のように構成されている。
重量物向き変更装置は、載置ローラ(2)を有する回転支持台(1)と、その載置ローラ(2)上に支持されて回転支持台(1)上で横軸(4a)を中心に回転し得る連結環(4)とを備えている。この連結環(4)は横軸(4a)を中心とする周方向で互いに分離されて着脱可能な両連結端部(7)を有する複数の分割体(5,6)を備えている。その各分割体(5,6)の内側には両連結端部(7)間に設けた収容口(8a)と横軸(4a)の方向の両側に設けた収容口(8b)とで開放された収容域(8)を設けている。各分割体(5,6)を両連結端部(7)で互いに連結した連結環(4)の内側で各分割体(5,6)の収容域(8)により形成された収容室(10)において、連結環(4)の各分割体(5,6)には、互いに分離された各分割体(5,6)の収容口(8a,8b)から収容域(8)に重量物(13)を挿入して各分割体(5,6)を両連結端部(7)により互いに連結した状態で、その重量物(13)を挟持して保持する複数のクランプ(11)を設けている。前記回転支持台(1)の載置ローラ(2)に載置した連結環(4)の半径方向の向きを連結環(4)の回転に伴い変更し得る。
【0008】
請求項1の発明では、連結環(4)の全周で重量物(13)を囲っているので、重量物(13)の変更可能向きの制限を少なくして作業効率を向上させることができる。また、各分割体(5,6)を互いに分離させることができるので、収容口(8a,8b)を通して各分割体(5,6)に重量物(13)を挿脱し易い。
【0009】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明において、前記各クランプ(11)は、連結環(4)の内周で横軸(4a)を中心とする周方向へ並設されている。請求項2の発明では、重量物(13)の形態の変更に対応し易い。
【0010】
請求項2の発明を前提とする請求項3の発明において、前記クランプ(11)は、連結環(4)の半径方向へ進退し得る圧接部(11a)を有している。請求項3の発明では、重量物(13)の形態の変更により一層対応し易い。
【0011】
請求項3の発明を前提とする請求項4の発明において、前記クランプ(11)はジャッキである。請求項4の発明では、既存のジャッキを有効に利用したクランプ(11)を採用することができる。
【0012】
請求項1から請求項4のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項5の発明にかかる各分割体(5,6)の両連結端部(7)において、互いに連結される両分割体(5,6)のうち、一方の分割体(5)の連結端部(7)には凹部(15)を設け、他方の分割体(6)の連結端部(7)には凸部(19)を設け、この凹部(15)と凸部(19)とを互いに着脱可能に挿嵌して止めピン(17)などの止め手段により着脱不能に固定している。請求項5の発明では、各分割体(5,6)を互いに着脱し易い。
【0013】
請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項6の発明において、前記連結環(4)は両連結端部(7)間で180度の円周角度を有する一対の分割体(5,6)からなる。請求項6の発明では、重量物(13)を各分割体(5,6)により一層挿脱し易い。
【0014】
請求項1から請求項6のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項7の発明において、前記連結環(4)の外周には横軸(4a)を中心とする円形状の案内面(12)を設け、その案内面(12)を載置ローラ(2)上に支持している。請求項7の発明では、回転支持台(1)上で連結環(4)を360度の範囲で円滑に回転させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、例えば箱桁(13)などの重量物の各部の溶接作業において変更可能向きの制限を少なくして作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は本実施形態にかかる重量物向き変更装置において両連結環のうち一つの連結環の下分割体の設置状態を示す正面図であり、(b)は同じく側面図である。
【図2】上記両連結環の下分割体の設置状態で重量物載置状態を示す側面図である。
【図3】上記両連結環の下分割体の設置状態で重量物載置状態を示す正面図である。
【図4】(a)は上記両連結環のうち一つの連結環の上分割体を示す正面図であり、(b)は上記両連結環の分割体連結状態で重量物セット状態を示す正面図である。
【図5】上記両連結環の分割体連結状態で重量物セット状態を示す側面図である。
【図6】(a)は上記両連結環の分割体非連結状態で連結端部を示す部分側面図であり、(b)は同じく部分正面図である。
【図7】(a)は上記両連結環の分割体連結状態で連結端部を示す部分側面図であり、(b)は同じく部分正面図である。
【図8】(a)はねじジャッキを正面側から見た断面図であり、(b)は同じく側面側から見た断面図である。
【図9】別例を示す図4(b)相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態にかかる重量物向き変更装置について図面を参照して説明する。
図5及び図4(b)に示すように横方向の両側に回転支持台1が設置されている。各回転支持台1上には一対の載置ローラ2が取り付けられている。各回転支持台1の両載置ローラ2のうち少なくとも一方の載置ローラ2は電動モータ3により回転する。各回転支持台1上で横軸4aを中心に回転し得る連結環4を備えている。連結環4は横軸4aを中心とする周方向で互いに連結された一対の分割体5,6を備えている。図1(a)(b)に示す一方の分割体5と、図4(a)に示す他方の分割体6とは、互いに分離され、いずれも、両連結端部7間で180度の円周角度を有し、それらの内側には両連結端部7間に設けられた収容口8aと横軸4aの方向の両側に設けられた収容口8bとで開放された収容域8が設けられている。各分割体5,6が両連結端部7で互いに連結された連結環4の内側には各分割体5,6の収容域8により収容室10が形成される。収容室10おいて、連結環4の各分割体5,6には、図8(a)(b)に示すようにねじジャッキ11であるクランプが連結環4の内周で横軸4aを中心とする周方向へ両分割体5,6ごとに例えば4個ずつ並設されている。連結環4の外周には横軸4aを中心とする円形状の案内面12が各分割体5,6間の全体にわたり設けられて載置ローラ2上に支持されている。載置ローラ2が電動モータ3により回転すると、連結環4が案内面12で各載置ローラ2に支えられながら横軸4aを中心とする半径方向の向きを360度の範囲で変更し得る。
【0018】
このように概説した重量物向き変更装置の組付手順の概要について述べる。
図1(a)(b)に示すように、互いに分離された各分割体5,6のうち一方の分割体5をクレーンにより吊ってそれぞれの回転支持台1の上方に運び、分割体5の案内面12を載置ローラ2上に着脱可能に載せて支持する。一方の分割体5の連結端部7においては、図6(a)(b)に示すように、横軸4aを中心とする半径方向の両側に両止め板14間で凹部15が設けられているとともに、両止め板14には凹部15に連通する止め孔16が設けられ、止めピン17(止め手段)がレバー18の操作により凹部15から退避している。
【0019】
図2及び図3に示すように、重量物としての箱桁13をクレーンにより吊って例えば矢印向きへ両分割体5の収容域8に収容口8a,8bから挿入する。その際、ねじジャッキ11の頭部にある圧接部11aを連結環4の半径方向へ進退させて箱桁13に仮当てする。
【0020】
図4(a)に示す他方の分割体6の連結端部7においては、図6(a)(b)に示すように、横軸4aを中心とする半径方向の両側に止め板19(凸部)が設けられ、止め板19には止め孔20が設けられている。他方の分割体6をクレーンにより吊って図4(b)及び図5に示すように箱桁13の上方から被せ、各分割体5,6の連結端部7を互いに合わせる。その際、図7(a)(b)に示すように、止め板19を凹部15に着脱可能に挿嵌して各止め孔16,20を互いに合わせ、止めピン17をレバー18の操作により各止め孔16,20に挿入して凹部15と止め板19とを互いに着脱不能に固定する。その後、ねじジャッキ11を締め付けて各圧接部11a間で箱桁13を挟持して保持する。
【0021】
このようにして組み付けた重量物向き変更装置において、連結環4を箱桁13とともに回転させて、横軸4aを中心とする半径方向の向きを360度の範囲で変更しながら、溶接作業などを行なう。
【0022】
作業終了後は、前述した組付手順とは逆の分離手順により箱桁13を重量物向き変更装置から取り外す。
本実施形態は下記の効果を有する。
【0023】
(1) 連結環4の全周で箱桁13を囲っているので、回転支持台1上で連結環4を360度の範囲で円滑に回転させることができる。従って、箱桁13の各部の溶接作業において変更可能向きの制限を少なくして作業効率を向上させることができる。
【0024】
(2) 連結環4においては、互いに分離された一対の分割体5,6の収容口8a,8bから収容域8に箱桁13を挿入した後に、各分割体5,6を両連結端部7により互いに連結することができるので、連結環4に箱桁13を挿入し易い。また、連結環4においては、各分割体5,6を互いに分離させた後に、連結環4から箱桁13を容易に離脱させることができる。
【0025】
(3) 連結環4の内周で横軸4aを中心とする周方向へ並設された複数のねじジャッキ11の採用により、その圧接部11aを連結環4の半径方向へ進退させて箱桁13を保持することができるので、箱桁13の形態の変更に対応し易い。
【0026】
(4) 各分割体5,6の両連結端部7において、凹部15と止め板19とを互いに着脱可能に挿嵌して止めピン17により着脱不能に固定したので、各分割体5,6を互いに着脱し易い。
【0027】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 図9に示すように、箱桁13の形態を変更した場合には、各分割体5,6の内周に取着された間隔保持台11bにねじジャッキ11を取り付ける。
【0028】
・ ジャッキとしては、ねじジャッキ11などの機械式のもの以外に、既存の油圧式ジャッキや空圧式ジャッキを利用することができる。
・ 連結環4を複数の分割体により三分割以上することも可能である。
【符号の説明】
【0029】
1…回転支持台、2…載置ローラ、4…連結環、4a…横軸、5,6…分割体、7…連結端部、8…収容域、8a,8b…収容口、10…収容室、11…ねじジャッキ(クランプ)、11a…圧接部、12…案内面、13…箱桁(重量物)、15…凹部、17…止めピン(止め手段)、19…止め板(凸部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置ローラを有する回転支持台と、その載置ローラ上に支持されて回転支持台上で横軸を中心に回転し得る連結環とを備え、
この連結環は横軸を中心とする周方向で互いに分離されて着脱可能な両連結端部を有する複数の分割体を備え、その各分割体の内側には両連結端部間に設けた収容口と横軸方向の両側に設けた収容口とで開放された収容域を設け、
各分割体を両連結端部で互いに連結した連結環の内側で各分割体の収容域により形成された収容室において、連結環の各分割体には、互いに分離された各分割体の収容口から収容域に重量物を挿入して各分割体を両連結端部により互いに連結した状態で、その重量物を挟持して保持する複数のクランプを設け、
前記回転支持台の載置ローラに載置した連結環の半径方向の向きを連結環の回転に伴い変更し得る
ことを特徴とする重量物向き変更装置。
【請求項2】
前記各クランプは、連結環の内周で横軸を中心とする周方向へ並設されていることを特徴とする請求項1に記載の重量物向き変更装置。
【請求項3】
前記クランプは、連結環の半径方向へ進退し得る圧接部を有していることを特徴とする請求項2に記載の重量物向き変更装置。
【請求項4】
前記クランプはジャッキであることを特徴とする請求項3に記載の重量物向き変更装置。
【請求項5】
前記各分割体の両連結端部において、互いに連結される両分割体のうち、一方の分割体の連結端部には凹部を設け、他方の分割体の連結端部には凸部を設け、この凹部と凸部とを互いに着脱可能に挿嵌して止め手段により着脱不能に固定したことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一つの請求項に記載の重量物向き変更装置。
【請求項6】
前記連結環は両連結端部間で180度の円周角度を有する一対の分割体からなることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項に記載の重量物向き変更装置。
【請求項7】
前記連結環の外周には横軸を中心とする円形状の案内面を設け、その案内面を載置ローラ上に支持したことを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一つの請求項に記載の重量物向き変更装置。

【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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