説明

重金属及び/又は放射性物質の排泄、又は除去を用途とするメラニン類含有組成物、及びメラニン類の用途

【課題】 重金属及び/又は放射性物質の排泄、又は除去を用途とするメラニン類含有組成物、食品、医薬品、及びメラニン類の用途を提供すること。
【解決手段】 イカスミパウダー:0.1g、果汁:5g、クエン酸 :0.5g、香料:微量、色素:微量、精製水:全量が200gとなる量、を混合することにより、重金属及び/又は放射性物質の排泄、又は除去を用途とするジュース(組成物、食品)を製造した。ここで、イカスミパウダーは、イカスミから抽出されたメラニンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属及び/又は放射性物質の排泄、又は除去を用途とするメラニン類含有組成物、メラニン類含有食品、メラニン類含有医薬品、及びメラニン類の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
食品中には、各種の有毒物質が存在する。特に、近年の汚染物質の増大と拡散に伴い、汚染由来の有毒物質の問題が深刻化している。汚染物質は、食品が生産される環境から混入してくる。例えば、農産物の場合は、農場を汚染する産業廃棄物の混入があり、畜産物の場合は、家畜の病気治療に使用される動物医薬の混入があり、水産物の場合は漁網洗浄剤の混入があり、加工食品の場合は加工機械からの汚染物質の混入がある。
【0003】
なかでも、食品を汚染する最も危険な物は、産業活動に伴う廃棄物である。かっては規制が緩やかだったこともあり、多くの産業廃棄物が食品を汚染し、食品公害と呼ばれた。具体的には、1940年から1950年にかけて富山県を中心として発症したイタイイタイ病は鉱業所から排出されたカドミウムが米に蓄積されたものであり、1965年頃から水俣湾を取り巻く地域で発症した水俣病は肥料工場から排出された水銀が魚に蓄積したものである。その他に、食品を生産する過程での、加工機械からの金属汚染や、容器包装からの溶出物なども新たな汚染物質として問題となる。
【0004】
また、放射性物質も食品を汚染する。かって、大気圏で核実験が行われていたときは、核爆発で散逸した核分裂生成分が、降雨とともに地表に達し、特に牧草を介して牛乳を汚染することが問題となった。また、1986年には、旧ソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリで原子力発電所の事故があり、多くの核分裂生成物が散逸した。日本に輸入される食品でも放射性物質で汚染されている恐れがあるため、食品1Kgあたり370Bq以下という規制値が定められている。
【0005】
更に、このような汚染による環境の悪化に伴い、国内各地では生態系に影響が出ている。特に、金属が蓄積しやすいといわれる水性生物の魚類等では、奇形の固体が確認される場合が増えてきたとの報道が一部にある。これを受けて、平成16年6月3日に開催された、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品・合同部会では、水銀を含む魚介類の摂取に関する注意事項が発表された。
【0006】
尚、本願出願に係る発明に関する公知文献は発見できなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の様に重金属や放射性物質等の有害物質に汚染された食品を摂取していると、人体に有害物質が蓄積し、健康を損ねてしまう恐れがある。
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、重金属及び/又は放射性物質の排泄、又は除去を用途とするメラニン類含有組成物、食品、医薬品、及びメラニン類の用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、メラニン類を含有し、重金属及び/又は放射性物質の排泄、又は除去を用途とする組成物を要旨とする。
本発明の組成物を、例えば、食品(機能性食品、健康食品)や医薬品(医薬部外品を含む)として人体に取り入れると、含有するメラニン類が、人体中に存在する重金属、放射性物質、又はその両方を吸着する。そして、それらの物質を吸着したメラニン類は尿や便とともに排泄されるので、結果として、重金属や放射性物質も排泄され、人体から除去される。
【0009】
また、本発明の組成物がメラニン類を含んでいるので、組成物の他の成分に重金属及び/又は放射性物質等の有害物質が含まれていても、メラニン類がそれら有害物質を吸着する。そのため、本発明の組成物を食品や医薬品として人体に取り入れても、組成物中の有害物質はメラニン類に吸着されたまま、やがてメラニン類とともに体外に排泄される。このことにより、組成物中に有害物質が存在する場合でも、その有害物質が人体内に残留することがない。
【0010】
尚、本発明は、人の毛髪中に含まれるメラニンが、体内(毛髪以外の部分)の重金属(例えば、水銀、鉛、ヒ素等)を配位させて吸着し、体内から排出することを鋭意研究の結果見い出したことに基づいてなされた。
【0011】
毛髪中のメラニンは、病気、ストレス等の理由で脱毛が起きたり、加齢によって毛髪が白髪となると減少してしまう。この場合、毛髪中のメラニンによる重金属の排出作用は低下してしまう。
【0012】
しかし、本発明では、組成物に含まれるメラニン類により、確実に重金属等の有害物質の排泄、又は除去を行うことができる。
・前記メラニン類としては、例えば、黒褐色のユーメラニン、赤色又は黄色のフェオメラニンがある。これらは、顆粒のメラニン色素である。
【0013】
・前記重金属としては、例えば、金、白金、銀、クロム、カドミウム、鉛、鉄、ニッケル、亜鉛、モリブテン、水銀、ランタン、タリウム、銅、マンガン、ヒ素、シアン、セレン、コバルト、ベリリウム等が挙げられる。
【0014】
・前記放射性物質としては、例えば、アクチニウム、アメリシウム、アスタチン、バークリウム、カリフォルニウム、キュリウム、アインスタイニウム、フェルニウム、フランシウム、ローレンシウム、メンデレビウム、ネプツニウム、ノーベリウム、プルトニウム、ポロニウム、プロメチウム、プロトアクチニウム、ラジウム、ラドン、テクネチウム、トリウム、ウラン等が挙げられる。
【0015】
本発明におけるメラニン類は、例えば、動物から抽出されたものとすることができる。また、本発明におけるメラニン類は、例えば、頭足類、腹足類、両生類、魚類、昆虫、哺乳類の中から選択される少なくとも一種から抽出されたものとすることができる。
【0016】
本発明の組成物におけるメラニン類の配合濃度は1000ppm以上が好適である。上記濃度範囲とすることにより、有害物質の排泄、除去効果が高い。
本発明の組成物は、例えば、食品(機能性食品、健康食品)、医薬品(医薬部外品を含む)とすることができる。
【0017】
また、本発明は、重金属及び/又は放射性物質の排泄、又は除去のために用いられる組成物の製造におけるメラニン類の用途を要旨とする。
本発明によれば、メラニン類は、例えば、上述した組成物のように、重金属及び/又は放射性物質の排泄、又は除去のために用いられる組成物を製造するために用いることができる。
【0018】
また、本発明は、重金属及び/又は放射性物質の排泄、又は除去のために使用することを特徴とするメラニン類の用途を要旨とする。
本発明によれば、メラニン類を人体に取り入れ、人体中に存在する重金属、放射性物質、又はその両方をメラニン類に吸着させることができる。それらの物質を吸着したメラニン類は尿や便とともに排泄されるので、結果として、重金属や放射性物質も排泄され、人体から除去される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態の例(実施例)を説明する。
【実施例1】
【0020】
以下の成分を混合することにより、重金属及び/又は放射性物質の排泄、又は除去を用途とするジュース(組成物、食品)を製造した。
イカスミパウダー(商品名、南海商事株式会社):0.1g
果汁:5g
クエン酸 :0.5g
香料:微量
色素:微量
精製水:全量が200gとなる量
ここで、イカスミパウダーは、イカスミから抽出されたメラニンである。
【実施例2】
【0021】
以下の成分を混合することにより、重金属及び/又は放射性物質の排泄、又は除去を用途とする粉末スープ(組成物、食品)を製造した。
イカスミパウダー:1g
コーンスターチ:10g
粉乳:10g
野菜粉末:7g
牛肉エキス:5g
食塩:3g
調味料:1g
バター:4g
香辛料: 微 量
この粉末スープは、温湯150mlに溶解することにより使用できる。
【実施例3】
【0022】
常法により、以下の成分に水を加えミキサーで混練し、成型した後、オーブンで焼成することにより、重金属及び/又は放射性物質の排泄、又は除去を用途とするビスケット(組成物、食品)を製造した。
【0023】
イカスミパウダー:5g
小麦粉:100g
澱粉:5g
練乳:5g
バター:10g
ショートニングオイル:15g
鶏卵:10g
食塩:0.5g
膨剤:0.5g
【実施例4】
【0024】
常法により、以下の成分を混練した後、成形することにより、重金属及び/又は放射性物質の排泄、又は除去を用途とするチョコレート(組成物、食品)を製造した。
イカスミパウダー:1g
カカオペースト:50g
カカオバター:15g
シスチン:0.5g
【実施例5】
【0025】
以下の成分を混合することにより、重金属及び/又は放射性物質の排泄、又は除去を用途とするドリンク剤(組成物、食品)を製造した。
イカスミパウダー:0.5g
硝酸チアミン:10mg
リボフラビン:4mg
塩酸ピリドキシン:10mg
シアノコバラミン:10μg
ニコチン酸アミド:20mg
クエン酸:90mg
香料:微量
精製水:全量を50mlとする量
【実施例6】
【0026】
イカスミパウダー(20g)とヒドロキシプロピルメチルセルロース(60g)をエタノールと塩化メチレンの1:1の混合溶液に溶解した後、この溶液に低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(90g)と乳糖(30g)を均一に混合したものを加えて練合した。この練合物を60℃で4時間乾燥した後、粉砕機を用いて粉砕し、32メッシュ通過粒とした。このようにして製した顆粒の110gをとり、融解大豆硬化油(110g)と練合しながら室温まで冷却した後、20メッシュ通過粒を得た(ワックス処理粒)。このワックス処理粒の200gをとり、ステアリン酸マグネシウム(0.4g)と混合した後、打錠して、重金属及び/又は放射性物質の排泄、又は除去を用途とする持続性錠剤(組成物、医薬品)を得た。
【0027】
次に、本実施例1〜6で製造した組成物が奏する効果を確かめるために行った実験を図1を参照しながら説明する。
i)マウスの準備
マウスC3HHeNSlc雄3匹(マウスA,マウスB,マウスC、以下マウスと呼ぶ)を用意し、各個体をそれぞれナツメ社製ケージ250mm×200mm×150mmに入れた。
【0028】
ii)3日間の整腸
図1に示すように、腸内をきれいにする意味で、えさD(ゼラチン20%、グルコース20%、水60%)を、それぞれのマウスに3日間与えた。また、水分は自由に補給できるように水のみ場を設置した。このときのマウスの体重減少をそれぞれのマウスと比較したところ微差であった。
【0029】
iii)メラニンと重金属の投与
次に、図1に示すように、それぞれのマウスに対し、所定の成分の投与を3日間行った。
【0030】
1日目:マウスAに対し、メラニンと重金属とを投与した。具体的には、針(ディスポーザブル・フィーディングニードル、先玉経:1.9mmφ、チューブサイズ0.9φ×70mm長、フチガミ機器店製)及びシリンジ(テルモシリンジ1ml、ツベルクリン用、テルモ製)を用い、メラニン水溶液(pH4.0:ヒドロキシエチルセルロース0.5%、フェノキシエタノール0.01%,パラベン類0.1%,イカスミ由来メラニン0.8%、リン酸でpH調整、精製水で100%に調整,)を0.25ccおよび金属添加水溶液(pH4.0:ヒドロキシエチルセルロース0.5%、グルコース15%、安息香酸ナトリウム0.1%、DL-a−アラニン0.5%、,タウリン0.5%、アスコルビン酸でpH調整、水酸化バリウム八水和物60mg、塩化クロム(II)30mg、酢酸鉛20
mg、硫酸アルミニウム300mg、精製水で100%に調整)を0.25cc胃袋に強制投与した。
【0031】
また、マウスBには、メラニンは投与せず、重金属のみを投与した。具体的には、水溶液(pH4.0:ヒドロキシエチルセルロース0.5%、フェノキシエタノール0.01%、パラベン類0.1%、リン酸でpH調整、精製水で100%に調整,)を0.25ccおよび、金属添加水溶液(pH4.0:ヒドロキシエチルセルロース0.5%、グルコース15%、安息香酸ナトリウム0.1%、DL-a−アラニン0.5%、タウリン0.5%、アスコルビン酸でpH調整、水酸化バリウム八水和物60mg、塩化クロム(II)30mg、酢酸鉛20mg、硫
酸アルミニウム300mg、精製水で100%に調整)を0.25cc胃袋に強制投与した。
【0032】
また、マウスCには、レファレンスとして、メラニンも重金属も投与しなかった。具体的には、水溶液(pH4.0:ヒドロキシエチルセルロース0.5%、フェノキシエタノール0.01%、パラベン類0.1%、精製水で100%に調整、リン酸でpH調整)を0.25ccおよび、水溶液(pH4.0:ヒドロキシエチルセルロース0.5%、グルコース15%、安息香酸ナトリウム0.1%、DL-a−アラニン0.5%、タウリン0.5%、アスコルビン酸でpH調整, 精製水で100%に調整)を0.25cc胃袋に強制投与した。
【0033】
また、通常のエサの替わりに、本実験前に与えたエサと同じ えさD(ゼラチン20%、グルコース20%、精製水60%)を、それぞれのマウスに与えた。
2日目、3日目:1日目と同じ操作を、2日目、3日目と繰り返した。
【0034】
iv)排泄物中の重金属の定量
3日間の投与の間の排泄物中の各種金属を定量した。具体的には、マウスA、B、Cのそれぞれについて、排泄物を全量回収し、この排泄物を50%硝酸溶液に溶かし、マイクロウエーブ波を10分間適用し、完全に溶解して試験溶液を作成した。各試験溶液を、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)を用いて、重金属の分析を行った。
【0035】
測定の結果、以下表1に示すように各成分が検出された。尚、表1中の数値の単位はppmである。
【0036】
【表1】

この結果から、同じように大量に重金属が投与されたマウスA、Bを比較すると、メラニンを投与したマウスAは、メラニンを投与しなかったマウスBに比べて、重金属の排泄量が大幅に多くなっていた。これは、メラニンが、その金属配位能の効果によって重金属と吸着し、更にその排泄作用によって重金属とともに排泄されたことによるものである。
【0037】
この実験の結果から、メラニンを、重金属の排泄、又は除去の用途に使用できることが確認できた。また、この実験から、メラニンを含む実施例1〜6の各組成物は、体内に存在する重金属と吸着し、体外へ排泄する効果があることが確認できた。
【0038】
更に、実施例1〜6の各組成物は、体内に存在する重金属を吸着、排泄するだけではなく、組成物自体の中に含まれる重金属も吸着し、除去することができる。そのことにより、組成物を体内に摂取しても、重金属は、体内に広がることなく、メラニンに吸着されたまま排出される。
【0039】
また、実施例1〜6の組成物は、放射性物質に対しても、吸着、排泄作用を奏する。
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】メラニンによる重金属の吸着、排泄作用を確認するための実験の方法を表す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラニン類を含有し、重金属及び/又は放射性物質の排泄、又は除去を用途とする組成物。
【請求項2】
前記メラニン類は、動物から抽出されたものであることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記メラニンは、頭足類、腹足類、両生類、魚類、昆虫、哺乳類の中から選択される少なくとも一種から抽出されたものであることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記メラニン類の配合濃度が1000ppm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の組成物から成る食品。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の組成物から成る医薬品。
【請求項7】
重金属及び/又は放射性物質の排泄、又は除去のために用いられる組成物の製造におけるメラニン類の用途。
【請求項8】
重金属及び/又は放射性物質の排泄、又は除去のために使用することを特徴とするメラニン類の用途。
【請求項9】
前記メラニン類は、動物から抽出されたものであることを特徴とする請求項7又は8記載の用途。
【請求項10】
前記メラニンは、頭足類、腹足類、両生類、魚類、昆虫、哺乳類の中から選択される少なくとも一種から抽出されたものであることを特徴とする請求項7又は8記載の用途。

【図1】
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【公開番号】特開2006−76946(P2006−76946A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263945(P2004−263945)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】