野菜の殺菌処理方法
【課題】野菜の表面の菌数の増加を大幅に抑制して日持ちをより延長できるようにすることが強く求められている。
【解決手段】切断されて収穫されて産地から出荷される野菜の当該切断面を当該産地において殺菌液で処理する野菜の殺菌処理方法である。
【解決手段】切断されて収穫されて産地から出荷される野菜の当該切断面を当該産地において殺菌液で処理する野菜の殺菌処理方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜の殺菌処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デパートやスーパマーケットやコンビニエンスストア等では、プラスチック製の容器内に充填されて密封された容器詰カットサラダが販売されている。このような容器詰カットサラダにおいては、野菜の表面の菌数の増加を抑制して日持ちできるようにすることが要求されている。
【0003】
このため、例えば、下記特許文献1,2等では、カットしたレタスやキャベツやキュウリや大根等の野菜を亜塩素酸塩や次亜塩素酸塩の殺菌液で洗浄して冷蔵保存し、水洗した後に水切りして容器内に充填することを提案し、下記特許文献3等では、亜塩素酸塩や次亜塩素酸塩の水溶液に微粉砕化卵殻を分散させた分散液中にミズナ等の野菜を浸漬した後に水洗して水切りしてから容器内に充填することを提案している。
【0004】
また、例えば、下記特許文献4,5等では、収穫された野菜を温度や気圧の管理可能な専用容器に収容して産地から出荷輸送することにより、加工場所や販売場所や消費場所等に入荷するまでの野菜の鮮度を維持することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−135631号公報
【特許文献2】特開2004−065149号公報
【特許文献3】特開2009−072065号公報
【特許文献4】特開2002−078446号公報
【特許文献5】特開2002−160787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、市場では、前記特許文献1〜3等での提案よりも野菜の表面の菌数の増加をさらに抑制してより日持ちできるようにすることが強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するためになされた本発明は、切断されて収穫されて産地から出荷される野菜の当該切断面を当該産地において殺菌液で処理することを特徴とする野菜の殺菌処理方法である。
【0008】
また、本発明は、上述した野菜の殺菌処理方法において、前記野菜が、葉野菜であると好ましい。
【0009】
特に、本発明は、上述した野菜の殺菌処理方法において、前記殺菌液を前記葉野菜の前記切断面へ噴霧して処理すると好ましい。
【0010】
くわえて、本発明は、上述した方法を実施された野菜を下処理加工することを特徴とする下処理加工野菜の製造方法にもある。
【0011】
さらに、本発明は、上述した方法を実施された野菜を調理加工することを特徴とする加工食品の製造方法にもある。
【0012】
さらに、本発明は、上述した方法を実施された野菜をカットして容器に充填することを特徴とする容器詰カットサラダの製造方法にもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、野菜の表面の菌数の増加を大幅に抑制して日持ちをより延長することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について以下に説明するが、本発明は、以下に説明する実施形態のみに限定されるものではない。
【0015】
本発明に係る実施形態は、切断されて収穫されて産地から出荷される野菜の切断面を当該産地において殺菌液で処理する野菜の殺菌処理方法である。
【0016】
ここで、「産地」とは、野菜を生産して出荷するエリアのことであり、当該野菜を下処理や調理加工する工場等の加工場所、当該野菜を卸売りする市場等の卸売場所、当該野菜を小売りするデパートやスーパマーケットやコンビニエンスストアや商店等の小売場所、当該野菜を消費する消費者宅等の消費場所等のような、加工や販売や消費等される場所へ出荷する前までの地域のことである。具体的には、上記野菜を栽培,収穫する畑や付属する敷地,建屋等の農場、収穫された当該野菜を出荷まで保管する集荷場,予冷庫,保管庫等の保管場所等が挙げられる。
【0017】
また、上記野菜としては、レタス,リーフレタス,ロメインレタス,サニーレタス,サラダ菜,サンチュ,コスレタス等のレタス類、キャベツ、白菜、ホウレン草、紫蘇、小松菜、セロリ、ベビーリーフ(水菜,デトロイト,ルッコラ,レッドオーク,コスレタス,グリーンリーフ,ターサイ等の幼葉だけを5〜15cm程度で収穫したものも含む)等のような葉野菜や、キュウリ,パプリカ,トマト,ナス,ピーマン,トウガラシ等のような果菜類等が挙げられる。なお、大根,人参,ゴボウ等の根菜類であっても適用することはできる。
【0018】
このような産地において、切断されて収穫された上記野菜をザルやカゴ等にいれて殺菌液中に浸漬したり、切断されて収穫された上記野菜を殺菌液で洗い流したり、切断されて収穫された上記野菜に殺菌液を噴霧や噴射したりすることにより、当該野菜の少なくとも切断面全体を殺菌液に接触させて処理する。
【0019】
このようにして上記野菜を殺菌処理すると、当該野菜の表面の菌数の増加を大幅に抑制して日持ちをより延長することができる。
【0020】
この理由は定かではないが、本発明者らが各種研究を行ったところ、まず、野菜を収穫するために切断すると、その切断面から当該野菜の内部の液が滲み出てきて、当該野菜を段ボール箱に複数箱詰め等したときに、上記液が野菜の切断面以外の表面等に付着して、出荷輸送中に当該液を培地にして菌が増殖してしまうのではないかと推察された。
【0021】
そこで、本発明者らがさらに鋭意研究した結果、収穫した野菜の切断面を産地において殺菌液で処理する、言い換えれば、収穫した野菜の切断面を「すぐに」殺菌液で処理するようにして、当該野菜の内部から当該切断面に滲み出てくる上記液が当該野菜の当該切断面以外の表面等に付着する前、すなわち、当該野菜を出荷用の段ボール箱に複数箱詰めする前等、当該野菜の当該切断面が段ボール箱等の容器や他の野菜の表面等のような他の物体に接触する前(通常、収穫してから24時間以内、早い場合で収穫してから12時間以内、特に早い場合で収穫してから6時間以内)に、当該野菜の内部から当該切断面に滲み出てくる上記液中に上記殺菌液を含有させることにより、当該液が野菜の切断面以外の表面等に付着しても、当該液による菌の増殖が抑制され、野菜の表面の菌数の増加が抑制できることを見出して、本発明を完成するに至ったのである。
【0022】
ここで、上記「産地」の中でも前記「農場」で上述した殺菌液による処理を行うと、野菜の切断面が段ボール箱等の容器や他の野菜の表面等のような他の物体に接触する前に、当該野菜の内部から当該切断面に滲み出てくる前記液中に殺菌液を含有させることが確実にできて、非常に好ましい。
【0023】
さらに、本発明者らは、野菜が葉野菜(中でも、レタス類(特に、レタス,ロメインレタス,サニーレタス,サラダ菜,サンチュ,コスレタス)やキャベツ)である場合、当該葉野菜の切断面に殺菌液を噴霧することにより殺菌処理を行うと、当該野菜の表面の菌数の増加を上述した他の場合(殺菌液中への浸漬や殺菌液の洗い流し等)よりも抑制できることも見出した。
【0024】
この理由は定かではないが、葉野菜を殺菌液中へ浸漬したり、殺菌液で洗い流したりすると、果菜類等よりも薄い厚さで表面積の大きい葉野菜の全体にわたって当該殺菌液が付着した状態で保持(数〜十数時間)されることから、当該殺菌剤によって受けるダメージが大きくなり、葉野菜そのもの自身の菌への抵抗力を低下させてしまうものの、葉野菜の切断面に殺菌液を噴霧すると、当該切断面以外の葉野菜の表面に付着する殺菌剤の量が非常に少なくなり、当該殺菌剤によって受ける当該葉野菜のダメージを大幅に抑制して菌への抵抗力の低下が抑制できるからではないかと推察される。
【0025】
なお、前記殺菌液としては、亜塩素酸ナトリウム等の亜塩素酸塩、次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カリウム等の次亜塩素酸塩、オゾン水、酢酸、焼成カルシウム液、水酸化ナトリウム液等を挙げることができが、少なくとも亜塩素酸塩又は次亜塩素酸塩を含有すると好ましい。
【0026】
このとき、亜塩素酸塩や次亜塩素酸塩の有効塩素濃度が25〜500ppm(特に50〜300ppm)であるとより好ましい。なぜなら、有効塩素濃度が25ppm未満であると、殺菌効果が低くなり過ぎてしまうおそれを生じ、有効塩素濃度が500ppmを超えると、野菜に大きなダメージを与えてしまうおそれを生じるからである。また、焼成カルシウムや水酸化ナトリウムを用いた場合、殺菌効果及び野菜へのダメージを考慮すると、殺菌液のpHが11〜14であると好ましい。
【0027】
このような殺菌処理方法で殺菌処理された野菜は、上記産地から出荷輸送され、上述したような場所で加工や販売や消費等される。具体的には、例えば、加工場に搬送された上記野菜は、外葉や芯や皮等の不可食部の除去、等分カット等の下処理加工を施された下処理加工野菜にされた後、千切りや角切り等で任意の大きさにカットされて、プラスチック製の容器内に充填されて密封されることにより、容器詰カットサラダとしてデパートやスーパマーケットやコンビニエンスストア等の小売店等へ配送されて消費者に販売されたり、さらに調理場へ搬送されて他の各種材料と共に調理加工されることにより、惣菜等の加工食品として上記小売店等へ配送されて消費者に販売されたりする。
【0028】
このような上記下処理野菜や上記容器詰カットサラダや上記加工食品においては(特に容器詰カットサラダ)、上記野菜の表面の菌数の増加を大幅に抑制して日持ちをより延長することができる(詳細は後述する[実施例]参照)。
【実施例】
【0029】
本発明の効果を確認するために行った確認試験を以下に説明するが、本発明は、以下に説明する確認試験の場合のみに限定されるものではない。
【0030】
[実施例1]
〈調製〉
《試験体1:浸漬処理》
畑においてサニーレタスを根から切断して収穫し、その場で(切断後経過時間:1時間)殺菌液(有効塩素濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウム液)中に浸漬(10分間)して殺菌処理した後、当該殺菌液中から取り出して液切りする。そして、予冷庫で予冷(10℃)した上記サニーレタスを箱詰めして加工場へ出荷輸送(25℃×3時間)する。
【0031】
次に、上記加工場において、上記サニーレタスに対して外葉及び芯の除去等の下処理加工を施して下処理加工野菜とする。続いて、下処理加工された上記サニーレタスをカット(40mm幅)して流水中で水洗い(10分間)して、殺菌液(有効塩素濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウム液)中に浸漬(10分間)して殺菌処理した後、当該殺菌液中から取り出して水洗(5分間)し、遠心分離機で脱水処理する。そして、上記サニーレタスを容器(ポリプロピレン製)内に充填(100g)して、容器詰カットサラダを得る(試験体1)。
【0032】
《試験体2:噴霧処理》
畑においてサニーレタスを根から切断して収穫し、その場で(切断後経過時間:1時間)殺菌液(有効塩素濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウム液)をスプレーにより切断面に噴霧して殺菌処理する。そして、予冷庫で予冷(10℃)した上記サニーレタスを箱詰めして加工場へ出荷輸送(25℃×3時間)する。
【0033】
以下、上記試験体1の場合と同じ処理を行うことにより、容器詰カットサラダを得る(試験体2)。
【0034】
《比較体1:基準》
畑においてサニーレタスを根から切断して収穫したら箱詰めし、予冷庫で予冷(10℃)して加工場へ出荷輸送(25℃×3時間)する。
【0035】
次に、上記加工場において、上記サニーレタスを殺菌液(有効塩素濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウム液)中に浸漬(10分間)して殺菌処理した後、当該殺菌液中から取り出して液切りする。
【0036】
以下、上記加工場において上記試験体1に施された処理と同一の処理を行うことにより、容器詰カットサラダを得る(比較体1)。
【0037】
《比較体2:水噴霧処理》
畑においてサニーレタスを根から切断して収穫し、その場で(切断後経過時間:1時間)水をスプレーにより切断面に噴霧した後、箱詰めする。そして、予冷庫で予冷(10℃)した上記サニーレタスを加工場へ出荷輸送(25℃×3時間)する。
【0038】
以下、上記試験体1の場合と同じ処理を行うことにより、容器詰カットサラダを得る(比較体2)。
【0039】
〈試験方法〉
上記試験体1,2及び上記比較体1,2の容器充填前及び保存後(10℃×169時間)の一般生菌数をそれぞれ測定した。なお、比較のため、加工場へ到着したときの各サニーレタスの一般生菌数もそれぞれ測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
上記表1からわかるように、試験体1(浸漬処理)は、殺菌液による処理が比較体1と同程度行われているにもかかわらず、保存後の一般生菌数の増加が比較体1よりも抑制されていた。また、試験体2(噴霧処理)は、保存後の一般生菌数の増加が比較体2(水噴霧処理)よりも大幅に抑制されているばかりか、試験体1(浸漬処理)よりもさらに抑制されていた。
【0042】
[実施例2]
《試験体3〜14:各種条件》
上述した試験体1(浸漬処理),試験体2(噴霧処理)の調製に対して下記の表2に示した条件(野菜、産地での殺菌液、切断してから殺菌液で切断面を処理するまでの時間)のみを変えて試験体3〜14を作製(ただし、試験体13,14は、野菜のカットを4mm幅にスライスした)し、上記実施例1と同様にして一般生菌数を測定して評価を行った。その結果を表2に示す。なお、評価値は、実施例1と同一である。
【0043】
【表2】
【0044】
表2からわかるように、産地での殺菌液の相違によって大きな違いは見られなかった(試験体3〜10)。また、野菜が葉野菜であると、浸漬処理よりも噴霧処理の方が一般生菌数の増加を抑制でき(試験体11,12)、野菜が果菜類であると、浸漬処理でも一般生菌数の増加を大幅に抑制できた(試験体13,14)。
【0045】
[実施例3]
《加工食品:ポテトサラダ》
〈下拵え〉
(1)ジャガイモ
皮付きのジャガイモを水洗いして、蒸煮(60分)した後、熱いうちに皮剥ぎしてクラッシュしてから、真空冷却する。
【0046】
(2)ニンジン
ニンジンの表皮を剥いていちょう切りし、沸騰水中に浸漬してブランチング(3分間)した後、水冷する。
【0047】
(3)タマネギ
タマネギの皮を剥いてスライスし、沸騰水中に浸漬してブランチング(3分間)した後、水冷する。
【0048】
(4)レタス
上記実施例2の試験体11と同様にして調製した容器詰め前のレタス(ただし、50mm幅にカット)を使用する。
【0049】
(5)キュウリ
上記実施例2の試験体13と同様にして調製した容器詰め前のキュウリ(ただし、輪切りにカット)を使用する。
【0050】
〈調製〉
下記の表3に示す各種調味料を当該表3に示した配合量で均一に混合した後、下拵えした上記野菜を当該表3に示した配合量で加えて和えることにより、ポテトサラダ(加工食品)を得た。なお、まな板や包丁等の各種道具は、殺菌処理したものを使用した。
【0051】
【表3】
【0052】
このようにして得られたポテトサラダ(加工食品)は、10℃で3日間保存した後でも、問題がなく、良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、野菜の表面の菌数の増加を大幅に抑制して日持ちをより延長することができるので、農業や食品産業等において、極めて有益に利用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜の殺菌処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デパートやスーパマーケットやコンビニエンスストア等では、プラスチック製の容器内に充填されて密封された容器詰カットサラダが販売されている。このような容器詰カットサラダにおいては、野菜の表面の菌数の増加を抑制して日持ちできるようにすることが要求されている。
【0003】
このため、例えば、下記特許文献1,2等では、カットしたレタスやキャベツやキュウリや大根等の野菜を亜塩素酸塩や次亜塩素酸塩の殺菌液で洗浄して冷蔵保存し、水洗した後に水切りして容器内に充填することを提案し、下記特許文献3等では、亜塩素酸塩や次亜塩素酸塩の水溶液に微粉砕化卵殻を分散させた分散液中にミズナ等の野菜を浸漬した後に水洗して水切りしてから容器内に充填することを提案している。
【0004】
また、例えば、下記特許文献4,5等では、収穫された野菜を温度や気圧の管理可能な専用容器に収容して産地から出荷輸送することにより、加工場所や販売場所や消費場所等に入荷するまでの野菜の鮮度を維持することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−135631号公報
【特許文献2】特開2004−065149号公報
【特許文献3】特開2009−072065号公報
【特許文献4】特開2002−078446号公報
【特許文献5】特開2002−160787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、市場では、前記特許文献1〜3等での提案よりも野菜の表面の菌数の増加をさらに抑制してより日持ちできるようにすることが強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するためになされた本発明は、切断されて収穫されて産地から出荷される野菜の当該切断面を当該産地において殺菌液で処理することを特徴とする野菜の殺菌処理方法である。
【0008】
また、本発明は、上述した野菜の殺菌処理方法において、前記野菜が、葉野菜であると好ましい。
【0009】
特に、本発明は、上述した野菜の殺菌処理方法において、前記殺菌液を前記葉野菜の前記切断面へ噴霧して処理すると好ましい。
【0010】
くわえて、本発明は、上述した方法を実施された野菜を下処理加工することを特徴とする下処理加工野菜の製造方法にもある。
【0011】
さらに、本発明は、上述した方法を実施された野菜を調理加工することを特徴とする加工食品の製造方法にもある。
【0012】
さらに、本発明は、上述した方法を実施された野菜をカットして容器に充填することを特徴とする容器詰カットサラダの製造方法にもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、野菜の表面の菌数の増加を大幅に抑制して日持ちをより延長することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について以下に説明するが、本発明は、以下に説明する実施形態のみに限定されるものではない。
【0015】
本発明に係る実施形態は、切断されて収穫されて産地から出荷される野菜の切断面を当該産地において殺菌液で処理する野菜の殺菌処理方法である。
【0016】
ここで、「産地」とは、野菜を生産して出荷するエリアのことであり、当該野菜を下処理や調理加工する工場等の加工場所、当該野菜を卸売りする市場等の卸売場所、当該野菜を小売りするデパートやスーパマーケットやコンビニエンスストアや商店等の小売場所、当該野菜を消費する消費者宅等の消費場所等のような、加工や販売や消費等される場所へ出荷する前までの地域のことである。具体的には、上記野菜を栽培,収穫する畑や付属する敷地,建屋等の農場、収穫された当該野菜を出荷まで保管する集荷場,予冷庫,保管庫等の保管場所等が挙げられる。
【0017】
また、上記野菜としては、レタス,リーフレタス,ロメインレタス,サニーレタス,サラダ菜,サンチュ,コスレタス等のレタス類、キャベツ、白菜、ホウレン草、紫蘇、小松菜、セロリ、ベビーリーフ(水菜,デトロイト,ルッコラ,レッドオーク,コスレタス,グリーンリーフ,ターサイ等の幼葉だけを5〜15cm程度で収穫したものも含む)等のような葉野菜や、キュウリ,パプリカ,トマト,ナス,ピーマン,トウガラシ等のような果菜類等が挙げられる。なお、大根,人参,ゴボウ等の根菜類であっても適用することはできる。
【0018】
このような産地において、切断されて収穫された上記野菜をザルやカゴ等にいれて殺菌液中に浸漬したり、切断されて収穫された上記野菜を殺菌液で洗い流したり、切断されて収穫された上記野菜に殺菌液を噴霧や噴射したりすることにより、当該野菜の少なくとも切断面全体を殺菌液に接触させて処理する。
【0019】
このようにして上記野菜を殺菌処理すると、当該野菜の表面の菌数の増加を大幅に抑制して日持ちをより延長することができる。
【0020】
この理由は定かではないが、本発明者らが各種研究を行ったところ、まず、野菜を収穫するために切断すると、その切断面から当該野菜の内部の液が滲み出てきて、当該野菜を段ボール箱に複数箱詰め等したときに、上記液が野菜の切断面以外の表面等に付着して、出荷輸送中に当該液を培地にして菌が増殖してしまうのではないかと推察された。
【0021】
そこで、本発明者らがさらに鋭意研究した結果、収穫した野菜の切断面を産地において殺菌液で処理する、言い換えれば、収穫した野菜の切断面を「すぐに」殺菌液で処理するようにして、当該野菜の内部から当該切断面に滲み出てくる上記液が当該野菜の当該切断面以外の表面等に付着する前、すなわち、当該野菜を出荷用の段ボール箱に複数箱詰めする前等、当該野菜の当該切断面が段ボール箱等の容器や他の野菜の表面等のような他の物体に接触する前(通常、収穫してから24時間以内、早い場合で収穫してから12時間以内、特に早い場合で収穫してから6時間以内)に、当該野菜の内部から当該切断面に滲み出てくる上記液中に上記殺菌液を含有させることにより、当該液が野菜の切断面以外の表面等に付着しても、当該液による菌の増殖が抑制され、野菜の表面の菌数の増加が抑制できることを見出して、本発明を完成するに至ったのである。
【0022】
ここで、上記「産地」の中でも前記「農場」で上述した殺菌液による処理を行うと、野菜の切断面が段ボール箱等の容器や他の野菜の表面等のような他の物体に接触する前に、当該野菜の内部から当該切断面に滲み出てくる前記液中に殺菌液を含有させることが確実にできて、非常に好ましい。
【0023】
さらに、本発明者らは、野菜が葉野菜(中でも、レタス類(特に、レタス,ロメインレタス,サニーレタス,サラダ菜,サンチュ,コスレタス)やキャベツ)である場合、当該葉野菜の切断面に殺菌液を噴霧することにより殺菌処理を行うと、当該野菜の表面の菌数の増加を上述した他の場合(殺菌液中への浸漬や殺菌液の洗い流し等)よりも抑制できることも見出した。
【0024】
この理由は定かではないが、葉野菜を殺菌液中へ浸漬したり、殺菌液で洗い流したりすると、果菜類等よりも薄い厚さで表面積の大きい葉野菜の全体にわたって当該殺菌液が付着した状態で保持(数〜十数時間)されることから、当該殺菌剤によって受けるダメージが大きくなり、葉野菜そのもの自身の菌への抵抗力を低下させてしまうものの、葉野菜の切断面に殺菌液を噴霧すると、当該切断面以外の葉野菜の表面に付着する殺菌剤の量が非常に少なくなり、当該殺菌剤によって受ける当該葉野菜のダメージを大幅に抑制して菌への抵抗力の低下が抑制できるからではないかと推察される。
【0025】
なお、前記殺菌液としては、亜塩素酸ナトリウム等の亜塩素酸塩、次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カリウム等の次亜塩素酸塩、オゾン水、酢酸、焼成カルシウム液、水酸化ナトリウム液等を挙げることができが、少なくとも亜塩素酸塩又は次亜塩素酸塩を含有すると好ましい。
【0026】
このとき、亜塩素酸塩や次亜塩素酸塩の有効塩素濃度が25〜500ppm(特に50〜300ppm)であるとより好ましい。なぜなら、有効塩素濃度が25ppm未満であると、殺菌効果が低くなり過ぎてしまうおそれを生じ、有効塩素濃度が500ppmを超えると、野菜に大きなダメージを与えてしまうおそれを生じるからである。また、焼成カルシウムや水酸化ナトリウムを用いた場合、殺菌効果及び野菜へのダメージを考慮すると、殺菌液のpHが11〜14であると好ましい。
【0027】
このような殺菌処理方法で殺菌処理された野菜は、上記産地から出荷輸送され、上述したような場所で加工や販売や消費等される。具体的には、例えば、加工場に搬送された上記野菜は、外葉や芯や皮等の不可食部の除去、等分カット等の下処理加工を施された下処理加工野菜にされた後、千切りや角切り等で任意の大きさにカットされて、プラスチック製の容器内に充填されて密封されることにより、容器詰カットサラダとしてデパートやスーパマーケットやコンビニエンスストア等の小売店等へ配送されて消費者に販売されたり、さらに調理場へ搬送されて他の各種材料と共に調理加工されることにより、惣菜等の加工食品として上記小売店等へ配送されて消費者に販売されたりする。
【0028】
このような上記下処理野菜や上記容器詰カットサラダや上記加工食品においては(特に容器詰カットサラダ)、上記野菜の表面の菌数の増加を大幅に抑制して日持ちをより延長することができる(詳細は後述する[実施例]参照)。
【実施例】
【0029】
本発明の効果を確認するために行った確認試験を以下に説明するが、本発明は、以下に説明する確認試験の場合のみに限定されるものではない。
【0030】
[実施例1]
〈調製〉
《試験体1:浸漬処理》
畑においてサニーレタスを根から切断して収穫し、その場で(切断後経過時間:1時間)殺菌液(有効塩素濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウム液)中に浸漬(10分間)して殺菌処理した後、当該殺菌液中から取り出して液切りする。そして、予冷庫で予冷(10℃)した上記サニーレタスを箱詰めして加工場へ出荷輸送(25℃×3時間)する。
【0031】
次に、上記加工場において、上記サニーレタスに対して外葉及び芯の除去等の下処理加工を施して下処理加工野菜とする。続いて、下処理加工された上記サニーレタスをカット(40mm幅)して流水中で水洗い(10分間)して、殺菌液(有効塩素濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウム液)中に浸漬(10分間)して殺菌処理した後、当該殺菌液中から取り出して水洗(5分間)し、遠心分離機で脱水処理する。そして、上記サニーレタスを容器(ポリプロピレン製)内に充填(100g)して、容器詰カットサラダを得る(試験体1)。
【0032】
《試験体2:噴霧処理》
畑においてサニーレタスを根から切断して収穫し、その場で(切断後経過時間:1時間)殺菌液(有効塩素濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウム液)をスプレーにより切断面に噴霧して殺菌処理する。そして、予冷庫で予冷(10℃)した上記サニーレタスを箱詰めして加工場へ出荷輸送(25℃×3時間)する。
【0033】
以下、上記試験体1の場合と同じ処理を行うことにより、容器詰カットサラダを得る(試験体2)。
【0034】
《比較体1:基準》
畑においてサニーレタスを根から切断して収穫したら箱詰めし、予冷庫で予冷(10℃)して加工場へ出荷輸送(25℃×3時間)する。
【0035】
次に、上記加工場において、上記サニーレタスを殺菌液(有効塩素濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウム液)中に浸漬(10分間)して殺菌処理した後、当該殺菌液中から取り出して液切りする。
【0036】
以下、上記加工場において上記試験体1に施された処理と同一の処理を行うことにより、容器詰カットサラダを得る(比較体1)。
【0037】
《比較体2:水噴霧処理》
畑においてサニーレタスを根から切断して収穫し、その場で(切断後経過時間:1時間)水をスプレーにより切断面に噴霧した後、箱詰めする。そして、予冷庫で予冷(10℃)した上記サニーレタスを加工場へ出荷輸送(25℃×3時間)する。
【0038】
以下、上記試験体1の場合と同じ処理を行うことにより、容器詰カットサラダを得る(比較体2)。
【0039】
〈試験方法〉
上記試験体1,2及び上記比較体1,2の容器充填前及び保存後(10℃×169時間)の一般生菌数をそれぞれ測定した。なお、比較のため、加工場へ到着したときの各サニーレタスの一般生菌数もそれぞれ測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
上記表1からわかるように、試験体1(浸漬処理)は、殺菌液による処理が比較体1と同程度行われているにもかかわらず、保存後の一般生菌数の増加が比較体1よりも抑制されていた。また、試験体2(噴霧処理)は、保存後の一般生菌数の増加が比較体2(水噴霧処理)よりも大幅に抑制されているばかりか、試験体1(浸漬処理)よりもさらに抑制されていた。
【0042】
[実施例2]
《試験体3〜14:各種条件》
上述した試験体1(浸漬処理),試験体2(噴霧処理)の調製に対して下記の表2に示した条件(野菜、産地での殺菌液、切断してから殺菌液で切断面を処理するまでの時間)のみを変えて試験体3〜14を作製(ただし、試験体13,14は、野菜のカットを4mm幅にスライスした)し、上記実施例1と同様にして一般生菌数を測定して評価を行った。その結果を表2に示す。なお、評価値は、実施例1と同一である。
【0043】
【表2】
【0044】
表2からわかるように、産地での殺菌液の相違によって大きな違いは見られなかった(試験体3〜10)。また、野菜が葉野菜であると、浸漬処理よりも噴霧処理の方が一般生菌数の増加を抑制でき(試験体11,12)、野菜が果菜類であると、浸漬処理でも一般生菌数の増加を大幅に抑制できた(試験体13,14)。
【0045】
[実施例3]
《加工食品:ポテトサラダ》
〈下拵え〉
(1)ジャガイモ
皮付きのジャガイモを水洗いして、蒸煮(60分)した後、熱いうちに皮剥ぎしてクラッシュしてから、真空冷却する。
【0046】
(2)ニンジン
ニンジンの表皮を剥いていちょう切りし、沸騰水中に浸漬してブランチング(3分間)した後、水冷する。
【0047】
(3)タマネギ
タマネギの皮を剥いてスライスし、沸騰水中に浸漬してブランチング(3分間)した後、水冷する。
【0048】
(4)レタス
上記実施例2の試験体11と同様にして調製した容器詰め前のレタス(ただし、50mm幅にカット)を使用する。
【0049】
(5)キュウリ
上記実施例2の試験体13と同様にして調製した容器詰め前のキュウリ(ただし、輪切りにカット)を使用する。
【0050】
〈調製〉
下記の表3に示す各種調味料を当該表3に示した配合量で均一に混合した後、下拵えした上記野菜を当該表3に示した配合量で加えて和えることにより、ポテトサラダ(加工食品)を得た。なお、まな板や包丁等の各種道具は、殺菌処理したものを使用した。
【0051】
【表3】
【0052】
このようにして得られたポテトサラダ(加工食品)は、10℃で3日間保存した後でも、問題がなく、良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、野菜の表面の菌数の増加を大幅に抑制して日持ちをより延長することができるので、農業や食品産業等において、極めて有益に利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断されて収穫されて産地から出荷される野菜の当該切断面を当該産地において殺菌液で処理する
ことを特徴とする野菜の殺菌処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の野菜の殺菌処理方法において、
前記野菜が、葉野菜である
ことを特徴とする野菜の殺菌処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の野菜の殺菌処理方法において、
前記殺菌液を前記葉野菜の前記切断面へ噴霧して処理する
ことを特徴とする野菜の殺菌処理方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法を実施された野菜を下処理加工する
ことを特徴とする下処理加工野菜の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法を実施された野菜を調理加工する
ことを特徴とする加工食品の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法を実施された野菜をカットして容器に充填する
ことを特徴とする容器詰カットサラダの製造方法。
【請求項1】
切断されて収穫されて産地から出荷される野菜の当該切断面を当該産地において殺菌液で処理する
ことを特徴とする野菜の殺菌処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の野菜の殺菌処理方法において、
前記野菜が、葉野菜である
ことを特徴とする野菜の殺菌処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の野菜の殺菌処理方法において、
前記殺菌液を前記葉野菜の前記切断面へ噴霧して処理する
ことを特徴とする野菜の殺菌処理方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法を実施された野菜を下処理加工する
ことを特徴とする下処理加工野菜の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法を実施された野菜を調理加工する
ことを特徴とする加工食品の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法を実施された野菜をカットして容器に充填する
ことを特徴とする容器詰カットサラダの製造方法。
【公開番号】特開2013−74827(P2013−74827A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216069(P2011−216069)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】
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