説明

量子ドット発光素子およびその製造方法

【課題】 量子ドット発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、量子ドット発光素子およびその製造方法に関し、正孔輸送層に接する面と電子輸送層に接する面とが互いに異なる有機リガンド分布を有する量子ドット発光層を含んで量子ドット発光層のバンドレベルを調節することで、ターンオン電圧および駆動電圧が低くて輝度および発光効率に優れた量子ドット発光素子を具現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドット発光素子およびその製造方法に関し、詳細には、ターンオン電圧および駆動電圧が低くて輝度および発光効率に優れた量子ドット発光素子およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
量子ドット(quantum dot)は、数ナノメートルの大きさの結晶構造を有する半導体物質であって、数百から数千個程度の原子で構成されている。量子ドットは、大きさが非常に小さいため、単位体積当たりの表面積が広くて、大部分の原子がナノ結晶の表面に存在し、量子閉じ込め(quantum confinement)効果などを示す。
【0003】
このような量子閉じ込め効果により、量子ドットは、その大きさを調節することだけで発光波長を調節することができ、優れた色純度および高いPL(photoluminescence)発光効率などの特性を有して、多くの関心を集めている。
【0004】
量子ドット発光(quantum dot electroluminescence;QD−EL)素子は、量子ドット発光層を間において両端に正孔輸送層(hole transport layer;HTL)および電子輸送層(electron transport layer;ETL)を含む3層構造の素子が基本素子として知られている。
【0005】
従来の有機電界発光(Organic Light Emitting Diodes;OLED)素子は正孔輸送層(HTL)および発光層を含む。前記正孔輸送層(HTL)に使用される物質のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)レベルは5.0〜5.3eVに存在する。また、前記発光層に使用される物質のHOMOレベルは5.0ないし5.5eVの間に存在するため、正孔輸送層(HTL)に使用される物質のHOMOレベルとの差が小さくて効率的な正孔輸送が可能になり、高効率の素子を提供することができる。
【0006】
しかしながら、発光ドット発光(QD−EL)素子に使用される量子ドットの価電子帯(valance band)レベルが約6.8eVであるため、既存の有機電界発光(OLED)素子に使用される正孔輸送層物質のHOMOレベルとのバンドオフセット(band offset)の差が大きくて、量子ドット発光(QD−EL)素子のターンオン電圧、駆動電圧、効率、キャリア注入効率の低下などの問題をもたらす。
【0007】
このような問題点を解決するために、正孔輸送層(HTL)のHOMOレベルを調節したり適切な正孔輸送層物質を使用してQD(Quantum Dot)層とのバンドオフセットを下げる方法が考慮されている。しかし、HOMOレベルが5.4eV以上である正孔輸送層物質がほとんど知られておらず、HOMOレベルが5.4eV以上である正孔輸送層物質を使用した場合には、正孔輸送層(HTL)とITO(Idium−Tin Oxide)陽極とのバンドオフセットの差が大きくなって、正孔の移動が容易でないという問題点が発生する。
【0008】
従って、既存に知られている優れた物性の正孔輸送層(HTL)をそのまま用いながら、量子ドット発光(QD−EL)素子のターンオン電圧および駆動電圧を下げてキャリア注入効率を向上させることができる方法として、量子ドット発光層のバンドレベルを調節できる方法が切実に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2007−0082385号公報
【特許文献2】韓国公開特許第10−2004−0059588号公報
【特許文献3】韓国公開特許第10−2006−0100151号公報
【特許文献4】米国特許第7,306,823号明細書
【特許文献5】米国公開特許第2007−174939 A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、量子ドット発光層のバンドレベルの調節が可能であり、ターンオン電圧および駆動電圧が低くて輝度および発光効率に優れた量子ドット発光素子を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、前記量子ドット発光素子の製造方法を提供することにある。本発明が解決しようとする技術的課題は、上記の技術的課題に限らず、言及されていない他の技術的課題は、下記の記載によって当業者に明確に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明の一つの態様は、基板;前記基板で支持される量子ドット発光層;前記量子ドット発光層にキャリアを注入するように外部電源と連結された第1電極および第2電極;前記第1電極と量子ドット発光層との間に位置する正孔輸送層;ならびに前記第2電極と量子ドット発光層との間に位置する電子輸送層を含み、前記正孔輸送層に接する前記量子ドット発光層の第1面と前記電子輸送層に接する前記量子ドット発光層の第2面とが互いに異なる有機リガンド分布を有する量子ドット発光素子に関する。
【0013】
また、本発明の他の態様は、基板上に第1電極および正孔輸送層を順に形成する段階;前記正孔輸送層上に量子ドットコーティング膜を形成した後、表面改質して前記正孔輸送層に接する量子ドット発光層の第1面とその反対側面の第2面とが互いに異なる有機リガンド分布を有する量子ドット発光層を形成する段階;ならびに前記量子ドット発光層の上に電子輸送層および第2電極を順に形成する段階を含む量子ドット発光素子の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明による量子ドット発光素子は、正孔輸送層に接する面と電子輸送層に接する面とが互いに異なる有機リガンド分布を有する量子ドット発光層を含むことで、量子ドット発光層のバンドレベルを調節することができる。すなわち、量子ドット発光層の価電子帯(valance band)ベルと正孔輸送層のHOMOレベルとのエネルギー差が最小化されるように量子ドット発光層のバンドレベルを調節することで、ターンオン電圧および駆動電圧が低くて輝度および発光効率に優れた量子ドット発光素子を具現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態による量子ドット発光素子の概略図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態による量子ドット発光層の製造工程を示した図面である。
【図3】図3は、(A)表面改質前の量子ドットコーティング膜、(B)熱処理した量子ドットコーティング膜、(C)表面改質した量子ドット発光層、および(D)表面改質後に180℃で熱処理した量子ドット発光層のSIMS分析結果を示した図面である。
【図4】図4は、(A)表面改質前の量子ドットコーティング膜、(B)熱処理した量子ドットコーティング膜、(C)表面改質した量子ドット発光層、および(D)表面改質後に180℃で熱処理した量子ドット発光層に対してPL強度測定結果を示した図面である。
【図5】図5は、実施例1,2および比較例1による量子ドット発光素子に対して輝度特性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【0017】
本明細書で、「ある層が他の層の上にある」とは、他の層の上に直接存在することおよび他の層を間において位置することとを含む。
【0018】
本明細書で、別途の定義がない限り、アルキルは、炭素数1〜22のアルキルを意味し、アリールは、炭素数6〜30のアリールを意味する。
【0019】
本発明の一実施形態による量子ドット発光素子は、基板;前記基板で支持される量子ドット発光層;前記量子ドット発光層にキャリアを注入するように外部電源と連結された第1電極および第2電極;前記第1電極と量子ドット発光層との間に位置する正孔輸送層;ならびに前記第2電極と量子ドット発光層との間に位置する電子輸送層を含み、前記正孔輸送層に接する前記量子ドット発光層の第1面と前記電子輸送層に接する前記量子ドット発光層の第2面とが互いに異なる有機リガンド分布を有する。
【0020】
本発明の一実施形態による量子ドット発光素子の断面図を図1に示した。
【0021】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による量子ドット発光素子10は、基板12の上に支持される量子ドット発光層18、前記量子ドット発光層18にキャリア(電荷運搬体)を注入するように外部電源と連結された第1電極(陽極、14)および第2電極(陰極、22)を含む。前記量子ドット発光層18と第1電極14との間には正孔輸送層16が位置し、前記量子ドット発光層18と第2電極22との間には電子輸送層20が位置する。図1は、第1電極14が陽極である場合を示しているが、前記第1電極14は陰極であることもできる。この場合、基板に陽極/電子輸送層/量子ドット発光層/正孔輸送層/陽極が順に位置することができる。
【0022】
前記基板12としては、透明なガラスまたはフレキシブルプラスチック基板が使用されることができる。前記プラスチック基板は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレートなどのポリアルキレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン;ポリブテン;ポリブタジエン;ポリメチルペンテンなどのポリアルキルペンテン;ポリビニルクロライド;トリアセチルセルロース;ポリエーテルスルホン;ポリウレタン;ポリエチレンビニルアセテートなどのポリアルキレンビニルアセテート;イオノマー(ionomer)樹脂;エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体などのアルキレン−(メタ)アクリル酸共重合体;エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのアルキレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体;ポリスチレン;ポリイミド;ポリアミド;ポリアミドイミド;フルオロ樹脂;これらの共重合体;およびこれらの混合物からなる群より選択される樹脂で作られることができ、これらに限定されるものではない。
【0023】
前記第1電極14は、正孔の注入が可能になるように高い仕事関数(work function)を有する物質で作られることが好ましく、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム酸化物などの透明酸化物であることができる。前記第1電極14は、スパッタリング(sputtering)などの乾式蒸着法を通じて基板12の上に形成されることができる。
【0024】
前記第1電極14の上には、正孔輸送層(HTL)16が位置する。前記正孔輸送層16は、p−タイプ半導体(p−type semiconductor)で作られる。前記p−タイプ半導体の具体的な例としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(Poly(3,4−ethylene dioxythiophene);PEDOT)、ポリ(4−スチレンスルホネート)(poly(4−styrenesulfonate)、PSS)、下記化学式(1)のポリ(フェニレンビニレン)(poly(phenylene vinylenes)、PPV)、下記化学式(2)のポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチル−ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン](poly[2−methoxy−5−(2’−ethyl−hexyloxy)−1,4−phenylene vinylene]、MEH−PPV)、下記化学式(3)のポリ(9−ビニルカルバゾール)(poly(9−vinylcarbazole)、PVK)、下記化学式(4)のポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4’−(N−(4−sec−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](poly[(9,9−dioctylfluorenyl−2,7−diyl)−co−(4,4’−(N−(4−sec−butylphenyl))diphenylamine)]、TFB)のようなポリ[(9,9−ジアルキルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4−(N−(4−アルキルフェニル))ジフェニルアミン)]、下記化学式(5)のポリ[9,9’−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(N,N’−ジフェニル)−N,N’−ジ−(p−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン)](poly[9,9’−dioctylfluoren−2,7−diyl)−co−(N,N’−diphenyl)−N,N’−di−(p−butylphenyl)−1,4−diaminobenzene)]、PFB)のようなポリ[(9,9−ジアルキルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(N,N’−ジフェニル)−N,N’−ジ−(p−アルキルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン)]、下記化学式(6)のポリ[N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン](poly[N,N’−diphenyl−N,N’−bis(3−methylphenyl)−1,1’−biphenyl−4,4’−diamine]、poly−TPD)のようなポリ[N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−アルキルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン]などのポリマーが挙げられ、または前記PEDOT、PSS、PPV、MEH−PPVおよびPVKの中から選択された二つ以上の互いに異なるポリマーの組み合わせが挙げられる。または、N,N’−ビス−(1−ナフタレニル)−N,N’−ビス−フェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(N,N’−bis−(1−naphthalenyl)−N,N’−bis−phenyl−(1,1’−biphenyl)−4,4’−diamine、NPB)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(N,N’−bis(3−methylphenyl)−N,N’−diphenyl−benzidine、TPD)などのようなモノマーなども使用可能である。
【0025】
【化1】

前記化学式(2)中、Rは、メトキシのような炭素数1〜6のアルコキシであり、Rは、OCHCH(C)(C)のような炭素数1〜15のアルコキシである。
【0026】
【化2】

前記化学式(4)中、RおよびRは、それぞれ独立してオクチルのような炭素数1〜12のアルキルであり、Rは、sec−ブチルのような炭素数1〜12のアルキルである。
【0027】
【化3】

前記化学式(5)中、RおよびRは、それぞれ独立してオクチルのような炭素数1〜12のアルキルであり、RおよびRは、それぞれ独立してメチルのような炭素数1〜12のアルキルである。
【0028】
【化4】

前記化学式(6)中、R10およびR11は、それぞれ独立してメチルのような炭素数1〜12のアルキルである。
【0029】
このような正孔輸送層16は、発光素子の寿命を増加させ、量子ドット発光素子10の作動開始電圧であるターンオン電圧(turn−on voltage)を低める機能をする。特に、これらポリマー素材の正孔輸送層16は、低分子の有機素材に比べて、酸素や水分などの有害物質に対して相対的に耐性が強いという特性を有し、結晶化に対する高い抵抗性を有する。前記正孔輸送層16は、スピンコーティングなどの湿式コーティング法により形成されることができる。例えば、前記第1電極14の上にPPVのポリマー膜を成膜する場合、PPV前駆体ポリマーとメタノール有機溶媒とが含まれた前駆体溶液を第1電極14の上にスピンコーティング(spin−coating)し、好ましくはNの非活性ガス雰囲気または真空中で250〜300℃の硬化(curing)温度で3時間熱処理(thermal treatment)することで、PPV薄膜で作られた正孔輸送層16を得ることができる。
【0030】
前記正孔輸送層16の上に位置する量子ドット発光層18は、多数の量子ドットが単一膜(monolayer)または多層膜(multilayer)で配列されたものであり、ここで、前記量子ドットとは、量子閉じ込め効果を有する所定の大きさの粒子を言う。前記量子ドットは、大略1〜10nm程度の直径を有する。
【0031】
このような量子ドットは、湿式化学工程(wet chemical process)により合成されることができ、この方法は、有機溶媒に前駆体物質を入れて粒子を成長させる方法であって、結晶が成長される際、有機溶媒が自然に量子ドット結晶の表面に配位されて分散剤の役割をすることで結晶の成長を調節するため、有機金属化学蒸着(MOCVD、metal organic chemical vapor deposition)または分子線エピタキシー(MBE、molecular beam epitaxy)のような気相蒸着法に比べてより容易で経済的な工程を通じてナノ粒子の成長を制御できる長所がある。このように量子ドットの大きさを調節することでエネルギーバンドギャップ(energy band gap)を調節することができて、多様な波長帯の光を得ることができる。
【0032】
より具体的に、前記量子ドットとしては、II−VI族半導体化合物;III−V族半導体化合物;IV−VI族半導体化合物;IV族元素または化合物;およびこれらの組み合わせからなる群より選択される半導体物質を使用することができる。
【0033】
前記II−VI族半導体化合物は、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTeおよびこれらの混合物からなる群より選択される2元素化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSeおよびこれらの混合物からなる群より選択される3元素化合物;ならびにCdHgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTeおよびこれらの混合物からなる群より選択される4元素化合物からなる群より選択されることができ、前記III−V族半導体化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSbおよびこれらの混合物からなる群より選択される2元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNPおよびこれらの混合物からなる群より選択される3元素化合物;ならびにGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSbおよびこれらの混合物からなる群より選択される4元素化合物からなる群より選択されることができ、前記IV−VI族半導体化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTeおよびこれらの混合物からなる群より選択される2元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTeおよびこれらの混合物からなる群より選択される3元素化合物;ならびにSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTeおよびこれらの混合物からなる群より選択される4元素化合物からなる群より選択されることができ、前記IV族元素または化合物は、Si、Geおよびこれらの混合物からなる群より選択される元素化合物;ならびにSiC、SiGeおよびこれらの混合物からなる群より選択される2元素化合物からなる群より選択されることができる。
【0034】
前記量子ドットは、均質な(homogeneous)単一構造またはコア−シェル(core−shell)の二重構造を有することができ、コア−シェルの二重構造を有した場合、それぞれのコアおよびシェルは、上述した互いに異なる半導体化合物からなることができる。ただし、前記シェル物質のエネルギーバンドギャップがコア物質のエネルギーバンドギャップより大きいことが好ましい。例えば、CdSe/ZnSのコア−シェル構造を有する量子ドットを得ようとする場合、界面活性剤としてTOPO(trioctylphosphine oxide)を使用した有機溶媒に(CHCd(dimethyl cadmium)、TOPSe(trioctylphosphine selenide)などのコア(CdSe)に該当する前駆体物質を注入して結晶が生成されるようにし、結晶が一定の大きさで成長するように高温で一定時間維持した後、シェル(ZnS)に該当する前駆体物質を注入して既に生成されたコアの表面にシェルが形成されるようにすることで、TOPOでキャッピング(capping)されたCdSe/ZnSの量子ドットを得ることができる。
【0035】
前記量子ドットは、表面に存在するリガンドを置換または改質して量子ドットのバンドギャップを調節することができる。このように、量子ドットを表面改質する方法としては、量子ドットに改質しようとする界面活性剤を過量添加して若干の熱処理を行って改質させる方法、または互いに異なる二つの溶媒を使用して表面改質された量子ドットを他の溶媒へ移動させて分離する方法が挙げられる。しかし、これらの方法は、表面改質が完璧に行われなかったり量子ドットが凝集して量子ドットの損失が大きいという問題点があり、量子ドットの酸化や表面欠陥(defect)で発光効率が下がる問題点がある。また、前記表面改質工程を行うためには、量子ドットと界面活性剤とを全て溶かせる溶媒を使用しなければならないため、使用できる界面活性剤の種類が制限される場合がある。
【0036】
これに対して、本発明では、量子ドットコーティング膜を形成した後、表面改質して量子ドット発光層18を形成する。図2を参照すると、まず、量子ドット105を含むコロイド溶液をスピンコーティング、ディップコーティング、プリンティング、スプレーコーティングなどの比較的簡単な湿式工程を通じてコーティングして、量子ドットコア101の表面に存在する第1有機リガンド103を含む量子ドット105が配列された量子ドットコーティング膜18’を形成する(S1)。
【0037】
前記量子ドットを含むコロイド溶液は、有機溶媒と第1界面活性剤および陽イオン前駆体を混合し混合物を製造した後、前記混合物を加熱して反応温度を維持しながら陰イオン前駆体を注入して製造する方法があるが、特にこれに限定されない。前記第1界面活性剤は、量子ドットコーティング膜18’の第1有機リガンド103を構成する。
【0038】
前記有機溶媒の例としては、炭素数6〜22の一次アルキルアミン、炭素数6〜22の二次アルキルアミン、炭素数6〜22の三次アルキルアミン、炭素数6〜22の一次アルコール、炭素数6〜22の二次アルコール、炭素数6〜22の三次アルコール、炭素数6〜22のケトンおよびエステル、炭素数6〜22の窒素または硫黄を含むヘテロ環化合物、炭素数6〜22のアルカン、炭素数6〜22のアルケン、炭素数6〜22のアルキン、トリオクチルホスフィンのようなトリアルキルホスフィン、トリオクチルホスフィンオキシドのようなトリアルキルホスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0039】
前記第1界面活性剤は、下記化学式(7)で表される化合物を使用することができる。
【0040】
−Q (7)
前記化学式(7)中、
は、N、O、P、F、ClまたはSの元素を含む官能基および酸基からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む官能基であり、
好ましい例としては、N、NO、NO、NH、NH、NH、COOH、CO、CO、P、POOH、P=O、PO、PO、S、SOOH、SH、SO、SO、SO、CN、F、Clなどがあり、
は、炭化水素基であり、好ましくは炭素数3〜20の置換もしくは非置換のアルキル、または炭素数6〜30の置換または非置換のアリールであり、前記置換のアルキルまたはアリールは、アルキル、アリールおよびハロゲンからなる群より選択される置換基で置換されたアルキルまたはアリールである。
【0041】
前記陽イオン前駆体の例としては、Zn、Cd、HgなどのII族元素の前駆体、Al、Ga、In、TiなどのIII族元素の前駆体、またはSi、Ge、Sn、PbなどのIV族元素の前駆体が挙げられる。前記陽イオン前駆体の例としては、P、As、Sb、BiなどのV族元素の前駆体、O、S、Se、TeなどのVI族元素の前駆体が挙げられる。この外にも、量子ドットの構成元素に応じて陽イオン前駆体および陰イオン前駆体を選択して使用することができる。
【0042】
前記前駆体としては、各元素のカルボキシレート(carboxylate)、カルボネート(carbonate)、ハライド(halide)、ナイトレート(nitrate)、ホスフェート(phosphate)、サルフェート(sulfate)などを使用することができる。
【0043】
前記量子ドットを含むコロイド溶液は、正孔輸送層(HTL)または電子輸送層(ETL)の上にコーティングされて量子ドットコーティング膜18’を形成する。前記量子ドットコーティング膜18’は、量子ドットコア101と量子ドットの合成の際に使用される第1界面活性剤とから由来し、前記量子ドットコアの表面に分布する第1有機リガンド103を含む。
【0044】
次に、量子ドットコーティング膜18’を表面改質するための第2界面活性剤を含む表面改質組成物で量子ドットコーティング膜を改質して量子ドット発光層18を形成する。前記第2界面活性剤は、量子ドットコア101の表面に形成された第2有機リガンド107を形成する。
【0045】
前記表面改質組成物における第2界面活性剤の濃度は、5〜100mMであることが好ましい。前記表面改質組成物は、第2界面活性剤を適切な溶媒に分散させて製造されることができ、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール溶媒を使用することができる。前記溶媒としては、第2界面活性剤を分散させることができるものであれば、制限なく使用可能である。また、量子ドットを完全に溶解させなくていいため、溶媒の選択幅が広く、これにより第2界面活性剤も多様に使用することができる。
【0046】
前記表面改質組成物のコーティング法としては、ディップコーティング法、スピンコーティング法、プリンティング法、スプレーコーティング法などがあるが、これらに限定されることはない。前記ディップコーティング法の場合には、30秒〜24時間浸漬することが好ましく、表面改質組成物の温度は、常温ないし70℃であることが好ましい。前記スピンコーティング法の場合には、被コーティング部を300〜5000rpmで回転しながら表面改質組成物で15秒〜2分間コーティングする。スピンコーティングは、1〜20回繰り返して行うことができる。前記スプレーコーティング法の場合には、被コーティング部の温度は0〜200℃で調節することが好ましく、5秒〜2時間スプレーすることが好ましい。このようにコーティングした後、アルコールで洗滌して不純物を除去することが好ましい。
【0047】
前記第2有機リガンド107を導入するための第2界面活性剤は、下記化学式(8)で表されることができる。
【0048】
X−Q (8)
前記化学式(8)中、
Xは、N、O、P、F、ClまたはSの元素を含む電気陰性度の大きい電子求引基(electron withdrawing group)および酸基からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む官能基であり、好ましい例としては、N、NO、NO、NH、NH、NH、COOH、CO、CO、P、POOH、P=O、PO、PO、S、SOOH、SH、SO、SO、SO、CN、F、Clなどがあり、ただし、Xは、量子ドットに第1有機リガンドを提供する化学式(7)の第1界面活性剤のXと相違し、Xより電気陰性度が大きいことが好ましく、
Qは、炭化水素基であり、好ましくは炭素数3〜20の置換もしくは非置換のアルキル、または炭素数6〜30の置換または非置換のアリールであり、前記置換のアルキルまたはアリールは、アルキル、アリールおよびハロゲンからなる群より選択される置換基で置換されたアルキルまたはアリールである。
【0049】
前記化学式(8)で表される第2界面活性剤の具体的な例としては、オレイン酸(oleic acid)、ステアリン酸(stearic acid)、パルミチン酸(palmitic acid)、ヘキシルホスホン酸(hexyl phosphonic acid)、n−オクチルホスホン酸(n−octyl phosphonic acid)、テトラデシルホスホン酸(tetradecyl phosphonic acid)、オクタデシルホスホン酸(octadecyl phosphonic acid)、n−オクチルアミン(n−octylamine)、ヘキサデシルアミン(hexadecyl amine)、ヘプチルアミン(heptyl amine)のようなアルキルアミン、オクタンチオール(octanthiol)のようなアルカンチオールなどがある。
【0050】
前記化学式(8)のQの末端にXと異なる官能基で構成されたY基をさらに含む下記化学式(9)の第2界面活性剤も使用することができる。
【0051】
X−Q−Y (9)
前記化学式(9)中、
XおよびQは、化学式(8)での定義と同一であり、Yは、N、O、P、F、ClまたはSの元素を含む電気陰性度の大きい電子求引基および酸基からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む官能基であり、好ましい例としては、N、NO、NO、NH、NH、NH、COOH、CO、CO、P、POOH、P=O、PO、PO、S、SOOH、SH、SO、SO、SO、CN、F、Clなどがあり、ただし、XおよびYは、量子ドットに第1有機リガンドを提供する化学式(7)の第1界面活性剤のXと相違し、Xより電気陰性度が大きいことが好ましく、XおよびYは互いに相違する。
【0052】
前記化学式(8)および前記化学式(9)で表される第2界面活性剤は、量子ドットコーティング膜18’の一部の第1有機リガンド103を置換して量子ドット105の表面を改質する。既に量子ドットコーティング膜18’が形成された後、第2界面活性剤で表面改質するため、量子ドットコア101の下に位置して正孔輸送層に接する第1面と量子ドットコア101の上に位置して以後の工程により電子輸送層に接する第2面とは、互いに異なる表面改質環境にあるようになる。従って、第2界面活性剤107により多く露出される第2面は、第1有機リガンド103が第2有機リガンド107でより多く置換されて、互いに異なるリガンド分布を有する量子ドット109が形成される。このような量子ドット109を含む量子ドット発光層18は、量子ドットコア101の下に位置して正孔輸送層に接する第1面と量子ドットコア101の上に位置して以後の工程で電子輸送層に接する第2面とが互いに異なる有機リガンド分布を有するため、非対称構造を有する。
【0053】
前記化学式(8)および化学式(9)で表される第2界面活性剤に存在する電気陰性度の大きい電子求引基であるXおよびYは、量子ドット発光層18の量子ドットコア101の表面に位置して量子ドット発光層の電子密度分布(electron density disribution)に影響を与えて量子ドット発光層の価電子帯(valance band)レベルを変化させる。また、前記XおよびYは、量子ドット発光層18の極性(polarity)を誘導して、量子ドット発光層18が正孔輸送層(HTL)または電子輸送層(ETL)に接する界面で、エネルギー障壁(energy barrier)を下げてキャリアの伝達を容易にすることができる。両末端のリガンドが互いに異なる化学式(9)の第2界面活性剤で表面改質した場合、上記のような極性がもっと大きく誘導されることができる。
【0054】
前記非対称構造の有機リガンド分布を有する量子ドット発光層18は、バンドポジションをシフト(shift)させて量子ドット発光層18のバンドレベルを上昇させることができる。前記非対称構造を有する有機リガンドの分布は、量子ドット発光層18の価電子帯(valance band)レベルと正孔輸送層のHOMOレベルとのバンドオフセットを顕著に減少させて、ターンオン電圧および駆動電圧が低くて効率に優れた量子ドット発光素子を具現することができる。
【0055】
前記量子ドット発光層(18、図2のS2)は、量子ドットコア101と前記量子ドットコア101の表面に分布する第1有機リガンドおよび第2有機リガンドを含み、前記互いに異なる有機リガンド分布を有する量子ドット発光層の第1面および第2面のうちの一方は正孔輸送層に接し、他の一方は電子輸送層に接する。本発明の一実施形態によると、電子輸送層に接する量子ドット発光層の第2面の電気陰性度が正孔輸送層に接する量子ドット発光層の第1面の電気陰性度より高いことが好ましく、前記電気陰性度の差は、0.1〜3.7の範囲にあることが好ましい。正孔輸送層に接する量子ドット発光層の第1面と電子輸送層に接する量子ドット発光層の第1面との電気陰性度の差を上記の範囲で調節すると、素子の効率をより改善することができる。
【0056】
前記製造された量子ドット発光層18は、さらに熱処理して発光層をより安定化させることができる。前記熱処理工程は、60〜240℃で5分〜24時間行うことが好ましい。
【0057】
また、量子ドットコーティング膜18’を形成した後、表面改質して量子ドット発光層18を形成する場合、量子ドットの損失なしに簡単な工程で量子ドット発光層18を形成することができる。
【0058】
量子ドット発光層18の上には、電子輸送層20が形成される。前記電子輸送層20を構成する素材としては、多様な物質が使用されることができ、例えば、TiO、ZrOなどの金属酸化物を含む無機物やn−タイプ半導体ポリマーなどが使用されることができる。本発明では、水分や酸素などの有害物質に脆弱である低分子有機物(small organic molecule)の代わりに、無機素材またはポリマー素材で電子輸送層20を形成することで、酸化または腐食による発光素子の構造的な劣化を防止し、特に低分子有機物に近接する低いしきい電圧(threshold voltage)を有する素材を利用することで、量子ドット発光素子のターンオン電圧を従来の有機電界発光素子(OLED)のように低い水準で維持している。前記電子輸送層20は、真空蒸着法(evaporation)、スパッタリング(sputtering)、プラズマめっき、イオンめっきなどの乾式成膜法、またはスピンコーティング(spin coating)、浸漬法(dipping)、フローコーティング法(flow coating)などの湿式成膜法により形成されることができる。
【0059】
前記電子輸送層20の上に形成された陰極は、通常、電子輸送層20への電子注入を容易にするため、仕事関数の小さい物質で作られることが好ましい。このような物質の具体的な例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、錫、鉛、セシウム、バリウムなどの金属およびこれらの合金;LiF/Al、LiO/Al、LiF/Ca、LiF/AlおよびBaF/Caなどの多層構造物質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記第2電極22は、スパッタリングなどの乾式蒸着法を通じて形成されることができる。
【0060】
以下、実施例を挙げてより詳しく本発明を説明するが、これら実施例は説明を目的としたものに過ぎず、本発明の保護範囲を制限するものと解釈してはならない。
【0061】
製造例1:量子ドットコロイド溶液の製造
まず、CdOパウダー(1.6mmol、0.206g;Aldrich、+99.99%)とオレイン酸(6.4mmol、1.8g;Aldrich、95%)とを40mLのトリオクチルアミン(TOA、Aldrich、95%)中で混合した。混合された溶液を高速で撹拌しながら150℃で熱処理し、Nを流しながら300℃まで温度を上昇させた。次いで、300℃で、トリオクチルホスフィン(TOP、Strem、97%)に添加された2.0M Se(Alfa Aesar)0.2mLを前記Cd−含有混合物に高速で注入した。90秒後、TOA(210μL in6mL)に添加された1.2mmolのn−オクタンチオールを注射器ポンプ(syringe pump)を用いて1mL/minの速度で注入して40分間反応させた。
【0062】
次に、0.92gの酢酸亜鉛と2.8gのオレイン酸とを20mLのTOAに200℃でN雰囲気下で溶解させて0.25M Zn前駆体溶液を製造した。16mLアリコート(aliquot)のZn−オレイン酸溶液(100℃で加熱された)を前記Cd−含有反応媒質に2mL/minの速度で注入した。その後、TOA(1.12mL in 6mL)中の6.4mmolのn−オクタンチオールを注射器ポンプを用いて1mL/minの速度で注入した。全体反応は、2時間行われた。反応が終わった後、生成物を約50〜60℃に冷却させ、有機スラッジを遠心分離(5,600rpm)で除去した。不透明な塊がなくなるまでエタノール(Fisher、HPLC grade)を添加した。次いで、遠心分離して得られた沈殿物をトルエン(Sigma−Aldrich、Anhydrous 99.8%)中で溶解させてCdSe/CdS/ZnSコア−シェル量子ドットコロイド溶液を得た。
【0063】
製造例2:表面改質組成物の製造
ヘプチルアミンを20mMの濃度でメタノール溶媒に添加して表面改質組成物を製造した。
【0064】
量子ドット発光層の表面改質の確認
シリコンウエハーの上に製造例1の量子ドットコロイド溶液をスピンコーティングして量子ドットコーティング膜を製造した後、前記シリコンウエハーを2000rpmで回転しながら製造例2の表面改質組成物をスピンコーティングすることで表面改質して量子ドット発光層を形成した。(A)表面改質前の量子ドットコーティング膜、(B)熱処理した量子ドットコーティング膜、(C)表面改質後の量子ドット発光層、および(D)表面改質後に180℃で熱処理した量子ドット発光層のTOF−SIMSを分析してその結果を図3に示した。図3で、「●」は、n−オクタンチオールリガンドを示し、「▲」はヘプチルアミン(表面改質)リガンドを示す。図3の(A)および(B)では、ヘプチルアミンが検出されていないことから表面改質が全く行われていないことを確認することができ、図3の(C)および(D)では、ヘプチルアミンが検出されたため、表面改質が行われたことを確認することができる。
【0065】
量子ドット発光層のバンドレベルのシフト確認
シリコンウエハーの上に製造例2の量子ドットコロイド溶液をスピンコーティングして量子ドットコーティング膜を製造した後、前記シリコンウエハーを製造例2の表面改質組成物に60℃で15分間浸漬(dipping)することで表面改質して量子ドット発光層を形成した。(A)表面改質前の量子ドットコーティング膜、(B)表面改質を行わずに熱処理した量子ドットコーティング膜、(C)表面改質後の量子ドット発光層、(D)表面改質後に80℃で熱処理した量子ドット発光層、および(E)表面改質後に180℃で熱処理した量子ドット発光層に対してHe(II)UV光電子分光法(photoelectron spectroscopy)によりイオン化ポテンシャルを測定して下記表1に記載した。
【0066】
【表1】

前記表1に示したように、表面改質された量子ドット発光層(C)、(D)および(E)が表面改質されていない量子ドット発光層(A)および(B)に比べて0.6eVシフトされたことを確認することができる。
【0067】
発光波長の変化の確認
シリコンウエハーの上に製造例1の量子ドットコロイド溶液をスピンコーティングして量子ドットコーティング膜を製造した後、製造例2の表面改質組成物に60℃で15分間浸漬(dipping)することで表面改質して量子ドット発光層を形成した。(A)表面改質前の量子ドットコーティング膜、(B)表面改質を行わずに熱処理した量子ドットコーティング膜、(C)表面改質した量子ドット発光層、(D)表面改質後に180℃で熱処理した量子ドット発光層に対してPL強度を測定して図4に示した。図4に示したように、表面改質によりPLのピークポジションは変わらないことを確認することができる。すなわち、表面改質工程により量子ドットのバンドギャップは変わらないことを確認することができる。
【0068】
実施例1:量子ドット発光素子の製作
表面にITO陽極が形成されたガラス基板にPEDOT正孔輸送層を形成した。TFB(Poly[(9,9−dioctylfluorenyl−2,7−diyl)−co−(4,4’−(N−(4−sec−butylphenyl))diphenylamine)])をグローブボックス中で2000rpmでコーティングした後、180℃で30分間熱処理して20nmの厚さの正孔輸送層(HTL)を形成した。次に、前記正孔輸送層の上に製造例1の量子ドットコロイド溶液をスピンコーティングして量子ドットコーティング膜を製造した後、製造例2の表面改質組成物に60℃で15分間浸漬(dipping)することで表面改質して量子ドット発光層を形成した。前記量子ドット発光層の上にTiO電子輸送層およびAl陰極を順に形成して量子ドット発光素子を製作した。
【0069】
実施例2:量子ドット発光素子の製作
表面にITO陽極が形成されたガラス基板にPEDOT正孔輸送層を形成した。TFB(Poly[(9,9−dioctylfluorenyl−2,7−diyl)−co−(4,4’−(N−(4−sec−butylphenyl))diphenylamine)])をグローブボックス中で2000rpmでコーティングした後、180℃で30分間熱処理して20nmの厚さの正孔輸送層(HTL)を形成した。次に、前記正孔輸送層の上に製造例1の量子ドットコロイド溶液をスピンコーティングして量子ドットコーティング膜を製造した後、製造例2の表面改質組成物に60℃で15分間浸漬(dipping)した後、180℃で熱処理することで表面改質して量子ドット発光層を形成した。前記量子ドット発光層の上にTiO電子輸送層およびAl陰極を順に形成して量子ドット発光素子を製作した。
【0070】
比較例1:量子ドット発光素子の製作
製造例2による表面改質組成物で表面改質を行わずに、製造例1による量子ドットコロイド溶液をスピンコーティングして量子ドット発光層を形成したことを除いて、実施例1と同様の方法で量子ドット発光素子を製作した。
【0071】
前記実施例1、2および比較例1による量子ドット発光素子に対して輝度特性を測定して図5に示した。最大輝度および発光効率を下記表2に要約した。
【0072】
【表2】

前記表2に示したように、本発明による実施例1および実施例2の量子ドット発光素子は、比較例1の量子ドット発光素子に比べて優れた輝度および効率特性を示した。
【0073】
以上、好適な実施例を参考として本発明を詳細に説明したが、これらの実施例は例示的なものに過ぎない。本発明に属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、各種の変更例または均等な他の実施例に想到し得ることは明らかである。したがって、本発明の真正な技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0074】
10 量子ドット発光素子
12 基板
14 第1電極
16 正孔輸送層
18 量子ドット発光層
18’ 量子ドットコーティング膜
20 電子輸送層
22 第2電極
101 量子ドットコア
103 第1有機リガンド
107 第2有機リガンド
105,109 量子ドット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板;前記基板で支持される量子ドット発光層;前記量子ドット発光層にキャリアを注入するように外部電源と連結された第1電極および第2電極;前記第1電極と量子ドット発光層との間に位置する正孔輸送層;ならびに前記第2電極と量子ドット発光層との間に位置する電子輸送層を含み、
前記正孔輸送層に接する前記量子ドット発光層の第1面と前記電子輸送層に接する前記量子ドット発光層の第2面とが互いに異なる有機リガンド分布を有することを特徴とする量子ドット発光素子。
【請求項2】
前記量子ドット発光層は、II−VI族半導体化合物;III−V族半導体化合物;IV−VI族半導体化合物;IV族元素または化合物;およびこれらの組み合わせからなる群より選択される量子ドットを含むことを特徴とする、請求項1に記載の量子ドット発光素子。
【請求項3】
前記II−VI族半導体化合物は、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTeおよびこれらの混合物からなる群より選択される2元素化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSeおよびこれらの混合物からなる群より選択される3元素化合物;ならびにCdHgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTeおよびこれらの混合物からなる群より選択される4元素化合物からなる群より選択され、
前記III−V族半導体化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSbおよびこれらの混合物からなる群より選択される2元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNPおよびこれらの混合物からなる群より選択される3元素化合物;ならびにGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSbおよびこれらの混合物からなる群より選択される4元素化合物からなる群より選択され、
前記IV−VI族半導体化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTeおよびこれらの混合物からなる群より選択される2元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTeおよびこれらの混合物からなる群より選択される3元素化合物;ならびにSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTeおよびこれらの混合物からなる群より選択される4元素化合物からなる群より選択され、
前記IV族元素または化合物は、Si、Geおよびこれらの混合物からなる群より選択される元素化合物;ならびにSiC、SiGeおよびこれらの混合物からなる群より選択される2元素化合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項2に記載の量子ドット発光素子。
【請求項4】
前記量子ドット発光層は、量子ドットコアと前記量子ドットコアの表面に分布する第1有機リガンドおよび第2有機リガンドを含み、前記電子輸送層に接する前記量子ドット発光層の第2面の電気陰性度が前記正孔輸送層に接する前記量子ドット発光層の第1面の電気陰性度より高いことを特徴とする、請求項1に記載の量子ドット発光素子。
【請求項5】
前記電子輸送層に接する前記量子ドット発光層の第2面の電気陰性度と前記正孔輸送層に接する前記量子ドット発光層の第1面の電気陰性度との差は、0.1〜3.7であることを特徴とする、請求項4に記載の量子ドット発光素子。
【請求項6】
前記量子ドット発光層は、多層構造であり、正孔輸送層に近い発光層から電子輸送層に近い発光層まで異なる有機リガンド分布の傾きを有することを特徴とする、請求項1に記載の量子ドット発光素子。
【請求項7】
基板上に第1電極および正孔輸送層を順に形成する段階;
前記正孔輸送層の上に量子ドットコーティング膜を形成した後、表面改質して前記正孔輸送層に接する量子ドット発光層の第1面とその反対側面である第2面とが互いに異なる有機リガンド分布を有する量子ドット発光層を形成する段階;ならびに
前記量子ドット発光層の上に電子輸送層および第2電極を順に形成する段階を含むことを特徴とする量子ドット発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記量子ドットコーティング膜は、前記正孔輸送層の上に第1有機リガンドを含む量子ドットコロイド溶液をコーティングして形成され、前記量子ドットコロイド溶液は、下記化学式(7)の第1界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項7に記載の量子ドット発光素子の製造方法:
−Q (7)
前記化学式(7)中、
は、N、O、P、F、ClまたはSの元素を含む官能基および酸基からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む官能基であり、
は、炭化水素基である。
【請求項9】
前記表面改質工程は、前記量子ドットコーティング膜の上に第2有機リガンドを含有する表面改質組成物をコーティングする段階を含むことを特徴とする、請求項7に記載の量子ドット発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記表面改質組成物でのコーティングは、スピンコーティング、ディップコーティング、プリンティングおよびスプレーコーティングからなる群より選択される湿式コーティング法により行われることを特徴とする、請求項9に記載の量子ドット発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記表面改質組成物は、下記化学式(8)の第2界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項9に記載の量子ドット発光素子の製造方法:
X−Q (8)
前記化学式(8)中、
Xは、N、O、P、F、ClまたはSの元素を含む電気陰性度の大きい電子求引基(electron withdrawing group)および酸基からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む官能基であり、前記Xは、前記第1有機リガンドを提供する前記化学式(7)の第1界面活性剤のXと相違し、
Qは、炭化水素基である。
【請求項12】
前記表面改質組成物は、下記化学式(9)の第2界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項9に記載の量子ドット発光素子の製造方法:
X−Q−Y (9)
前記化学式(9)中、
Xは、N、O、P、F、ClまたはSの元素を含む電気陰性度の大きい電子求引基(electron withdrawing group)および酸基からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む官能基であり、
Qは、炭化水素基であり、
Yは、Xと相違するものであり、N、O、P、F、ClまたはSの元素を含む電気陰性度の大きい電子求引基および酸基からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む官能基であり、前記XおよびYは、前記第1有機リガンドを提供する前記化学式(7)の第1界面活性剤のXと相違する。
【請求項13】
前記方法は、前記電子輸送層の形成前に熱処理(annealing)する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の量子ドット発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−114079(P2010−114079A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249344(P2009−249344)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】