説明

量子秘密鍵配送システムおよび量子秘密鍵配送方法

【課題】3者以上の間で秘密鍵を簡便に配送する量子秘密鍵配送技術を提供する。
【解決手段】アリスは、コヒーレントな光パルス列の各パルスをランダムに0またはπに位相変調し、どのように変調したかを記録する。ボブ1およびボブ2は、それぞれ光パルス列を受信し、光子を検出した時刻とどちらの光子検出器で検出したかを記録する。ボブ1およびボブ2は、光子を検出した時刻をアリスに通知する。アリスは、送出した光パルスについて、ボブ1およびボブ2が共に光子を検出した共通の時刻情報を抽出し、ボブ1およびボブ2に通知する。ボブ1およびボブ2は、共通の時刻情報の各時刻で光子をどちらの光子検出器で検出したかの記録から秘密鍵を作成し、アリスは、共通の時刻情報の各時刻で光パルスをどのように変調したかの記録から秘密鍵を作成する。このようにして、アリスとボブ1とボブ2の3者は、一度に同一の秘密鍵を作成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗号通信に用いる秘密鍵配送技術に関し、特に、量子秘密鍵配送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、量子暗号システムを実現する方法として、さまざまな方法が提案されている。ここでは、差動位相シフト量子鍵配送と呼ばれる方式について説明する。
【0003】
図1に、従来の差動位相シフト量子鍵配送システムの基本構成を示す。送信機(アリス)20は、コヒーレントパルス光源22からの一定間隔のコヒーレント光パルス列を、位相変調器24により0またはπでランダムに位相変調し、減衰器26で1パルス当り平均1光子未満となるように減衰して伝送路30に送出する。
【0004】
受信機(ボブ)40は、受信パルス列のパルス間隔に等しい光路差を有する干渉計を用いて、連続する2つの光パルスの位相差を測定する。この干渉計は、受信パルス列をそれぞれ2分岐する光カップラ44aと、分岐した経路間に受信パルス列のパルス間隔に等しい時間遅延を与える遅延手段45と、分岐した経路からの光パルスを合波する2×2光カップラ44bとから構成されている。2×2光カップラ44bの出力には、光子検出器B1およびB2が備えられ、連続する2つの光パルスの位相差が0の場合には、光子検出器B1で光子が検出され、位相差がπの場合には、光子検出器B2で光子が検出される。
【0005】
以上のようなセットアップを用いて、アリスとボブは、次のようにして秘密鍵を共有することができる。アリスは、コヒーレントな光パルス列の各パルスを位相変調器24でランダムに0またはπに位相変調し、どのように変調したかを記録しておく。ボブは、光パルス列を受信し、光子が検出された時刻とどちらの光子検出器で検出されたかを記録する。そして、ボブは、光子を検出した時刻をアリスに通知する。
【0006】
ボブは、光子がどちらの光子検出器で検出されたかという情報から、光子が光子検出器B1で検出された場合には「0」、光子検出器B2で検出された場合には「1」として秘密鍵となるビットを作成する。一方、アリスは、ボブから通知された光子検出時刻に対応する光パルスを、自身の記録からどのように変調したかを知ることができる。したがって、光パルスの位相差が0になるように変調した場合には「0」、位相差がπになるように変調した場合には「1」とすると、アリスはボブと同一の秘密鍵ビットを作成することができる。
【0007】
以上のように、アリスとボブは、ボブの光子検出時刻を明かすのみで、ビットに関する情報(どちらの光子検出器で検出されたかやどのように変調したか)を明かすことなく、秘密鍵を共有することができる。
【0008】
【非特許文献1】K. Inoue, E. Waks, and Y. Yamamoto, “Differential-phase-shift quantum key distribution using coherent light,” Physical Review A68, 022317 (2003).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の量子暗号システムでは、2者(アリスとボブ)間での秘密鍵の配送を対象にしている。3者以上の間での同一の秘密鍵の配送には、2者間での秘密鍵の配送をそれぞれのペアに適用しなければならず、手間と時間がかかるという問題があった。そこで、3者以上の間で同一の秘密鍵を一度に配送することができれば便利である。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、3者以上の間で秘密鍵を簡便に配送することのできる量子秘密鍵配送システムおよび量子秘密鍵配送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、量子秘密鍵配送システムであって、光パルスを位相変調して送出する送信機と、前記送信機から送出された光パルスを分岐する分岐手段と、前記分岐手段により分岐された光パルスの一方を受信して変調位相を検出し、その検出に成功した時刻情報を提供する第1の受信機と、前記分岐手段により分岐された光パルスの他方を受信して変調位相を検出し、その検出に成功した時刻情報を提供する第2の受信機とを備え、前記第1および第2の受信機から提供された時刻情報のうち、前記送信機から送出された各光パルスについて、前記第1および第2の受信機が共に検出に成功した時刻情報を共通時刻情報として抽出し、前記共通時刻情報の各時刻における変調位相に基づいて、前記送信機、前記第1の受信機および前記第2の受信機のそれぞれが同一の秘密鍵データを生成することを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、量子秘密鍵配送システムであって、光パルスを位相変調して送出する送信機と、前記送信機から送出された光パルスをn分岐する分岐手段と、前記分岐手段によりn分岐された光パルスをそれぞれ受信するn個の受信機であって、それぞれが光パルスの変調位相を検出し、その検出に成功した時刻情報を提供するn個の受信機とを備え、前記n個の受信機から提供された時刻情報のうち、前記送信機から送出された各光パルスについて、前記n個の受信機すべてが検出に成功した時刻情報を共通時刻情報として抽出し、前記共通時刻情報の各時刻における変調位相に基づいて、前記送信機および前記n個の受信機のそれぞれが同一の秘密鍵データを生成することを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の量子秘密鍵配送システムにおいて、前記共通時刻情報と共に、前記複数の受信機の少なくとも1つが検出に成功した時刻情報を検出時刻情報として抽出し、前記検出時刻情報の各時刻における変調位相に基づいて、前記送信機および前記検出に成功した受信機のうちの少なくとも2つがそれぞれ同一の秘密鍵データを生成することを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の量子秘密鍵配送システムにおいて、前記位相変調は、差動位相シフト変調であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の量子秘密鍵配送システムにおいて、前記送信機から送出される光パルスは、1パルスあたり平均1光子未満であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、量子秘密鍵配送方法であって、送信機から光パルスを位相変調して送出する送信ステップと、前記送信機から送出された光パルスを分岐する分岐ステップと、前記分岐された光パルスの一方を第1の受信機で受信して変調位相を検出する第1の検出ステップと、前記第1の検出ステップで検出に成功した時刻情報を提供する第1の情報提供ステップと、前記分岐された光パルスの他方を第2の受信機で受信して位相変調を検出する第2の検出ステップと、前記第2の検出ステップで検出に成功した時刻情報を提供する第2の時刻情報提供ステップと、前記第1および第2の情報提供ステップにより提供された時刻情報のうち、前記送信ステップで前記送信機から送出された各光パルスについて、前記第1および第2の検出ステップで前記第1および第2の受信機が共に検出に成功した時刻情報を共通時刻情報として抽出する抽出ステップと、前記共通時刻情報の各時刻における変調位相に基づいて、前記送信機、前記第1の受信機および前記第2の受信機のそれぞれが同一の秘密鍵を生成する生成ステップとを備えることを特徴とする。
【0017】
また、請求項7に記載の発明は、量子秘密鍵配送方法であって、送信機から光パルスを位相変調して送出する送信ステップと、前記送信機から送出された光パルスをn分岐する分岐ステップと、前記n分岐された光パルスをn個の受信機でそれぞれ受信するステップであって、それぞれが変調位相を検出する検出ステップと、前記検出ステップのそれぞれで検出に成功した時刻情報を提供する情報提供ステップと、前記提供された時刻情報のうち、前記送信ステップで前記送信機から送出された光パルスについて、前記検出ステップで前記n個の受信機すべてが検出に成功した時刻情報を共通時刻情報として抽出する抽出ステップと、前記共通時刻情報の各時刻における変調位相に基づいて、前記送信機および前記n個の受信機のそれぞれが同一の秘密鍵データを生成するステップとを備えることを特徴とする。
【0018】
また、請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の量子秘密鍵配送方法において、前記複数の受信機の少なくとも1つが検出に成功した時刻情報を検出時刻情報として抽出するステップと、前記検出時刻情報の各時刻における変調位相に基づいて、前記送信機および前記検出に成功した受信機のうちの少なくとも2つがそれぞれ同一の秘密鍵データを生成するステップとをさらに備えることを特徴とする。
【0019】
また、請求項9に記載の発明は、請求項6ないし8のいずれかに記載の量子秘密鍵配送方法において、前記位相変調は、差動位相シフト変調であることを特徴とする。
【0020】
また、請求項10に記載の発明は、請求項6ないし9のいずれかに記載の量子秘密鍵配送方法において、前記送信機から送出される光パルスは、1パルスあたり平均1光子未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、3者間で一度に共通の秘密鍵を配送することができる。また、その際に、2者間での秘密鍵を配送することもできる。さらに、多者間で送信機を共通化することができるので、全体のシステムを簡素化できるという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
図2に、本発明の一実施例による量子秘密鍵配送システムの構成例を示す。この量子秘密鍵配送システム100は、コヒーレントな光パルス列を位相変調して送出する送信機(アリス)200と、送出された光パルス列を分岐する50:50の光カップラ(スプリッタ)320と、分岐した光パルス列の一方を受信して復調する受信機(ボブ1)400と、分岐した光パルス列の他方を受信して復調する受信機(ボブ2)600とから構成されている。
【0023】
送信機200は、コヒーレントな光パルス列を出力するコヒーレントパルス光源220と、連続する2つの光パルスの位相差を変調する位相変調器240と、光パルス列の強度を1パルスあたり平均1光子未満となるよう減衰する減衰器260とを備えている。また、受信機400は、受信した光パルス列を2分岐する光カップラ440aと、分岐した光パルス列の一方をパルス間隔に等しい時間だけ遅延する遅延手段450と、分岐した光パルス列を合波して干渉させる2×2光カップラ44bとから構成される干渉計を備えている。さらに、受信機400は、干渉した光パルスを検出する2つの光子検出器B11およびB12を備えている。受信機600は、基本的に受信機400と同じ構成であり、光カップラ640aと、遅延手段650と、2×2光カップラ640bとから構成される干渉計と、光子検出器B21およびB22とを備えている。
【0024】
送信機のコヒーレントパルス光源220は、一定の間隔でコヒーレントな光パルス列を出力する。位相変調器240は、この光パルス列の各パルスをランダムに0またはπで位相変調する。減衰器260は、位相変調された光パルス列を1パルスあたり1光子未満になるように減衰する。減衰された光パルス列は、光伝送路300に送出され、スプリッタ320で分岐され、それぞれ、光伝送路340、360を介して受信機400、600に伝送される。ここで、光パルス列は、減衰器260で1パルスあたり平均1光子未満になるように減衰されているので、光パルスのいくつかは、ある確率で受信機400および600の一方のみで検出されることもあれば、ある確率で受信機400および600の両方で検出されることもある。
【0025】
受信機400は、受信した光パルス列を光カップラ440aで2分岐し、分岐した光パルス列の一方に遅延手段450で光パルス列のパルス間隔に等しい時間遅延を与え、合波カップラ440bで再び合波し、干渉させる。この干渉計により、連続する2つの光パルスの位相差を測定することができる。具体的には、連続する2つの光パルスの位相差が0の場合には、光子検出器B11で光子が検出され、位相差がπの場合には、光子検出器B12で光子が検出されるように干渉計を調整する。
【0026】
同様に、受信機600は、光カップラ640a、遅延手段650および合波カップラ640bからなる干渉計を介して受信した光パルス列を干渉させる。ここで、連続する2つの光パルスの位相差が0の場合には、光子検出器B21で光子が検出され、位相差がπの場合には、光子検出器B22で光子が検出されるように干渉計を調整する。
【0027】
以上のようなセットアップを用いて、アリスとボブ1とボブ2は、次のようにして秘密鍵を共有することができる。アリスは、コヒーレントな光パルス列の各パルスを位相変調器240でランダムに0またはπに位相変調し、どのように変調したかを記録しておく。ボブ1およびボブ2は、それぞれが光パルス列を受信し、各パルスについて光子が検出された時刻とどちらの光子検出器で検出されたかを記録する。そして、ボブ1およびボブ2は、それぞれ、光子を検出した時刻をアリスに通知する。アリスは、ボブ1およびボブ2から通知された時刻情報のうち、送出された光パルスについて、両者(ボブ1およびボブ2)が共に検出した光パルスの時刻情報を、共通の時刻情報として抽出し、ボブ1およびボブ2に通知する。
【0028】
ボブ1は、アリスから通知された共通の時刻情報に対応する記録を抽出し、それぞれの時刻で光子がどちらの光子検出器で検出されたかという情報から、光子が光子検出器B11で検出された場合には「0」、光子検出器B12で検出された場合には「1」として秘密鍵となるビットを作成する。同様に、ボブ2は、アリスから通知された共通の時刻情報に対応する記録を抽出し、それぞれの時刻で光子がどちらの光子検出器で検出されたかという情報から、光子が光子検出器B21で検出された場合には「0」、光子検出器B22で検出された場合には「1」として秘密鍵となるビットを作成する。一方、アリスは、自身の記録から、共通の時刻情報のそれぞれの時刻で光パルスをどのように変調したかを知ることができる。したがって、光パルスの位相差が0になるように変調した場合には「0」、位相差がπになるように変調した場合には「1」とすると、アリスはボブ1およびボブ2と同一の秘密鍵ビットを作成することができる。
【0029】
以上のように、アリスとボブ1とボブ2は、ボブ1およびボブ2の光子検出時刻を明かすのみで、ビットに関する情報(どちらの光子検出器で検出されたかやどのように変調したか)を明かすことなく、秘密鍵を共有することができる。
【0030】
さらに、上記の構成を用いて、3者間で共通の秘密鍵を生成すると共に、アリスとボブ1およびアリスとボブ2の各2者間で共通の秘密鍵を生成することもできる。すなわち、アリスがボブ1との秘密鍵を生成するには、ボブ1のみが光子を検出した時刻情報を用いて秘密鍵を生成すればよい。また、アリスがボブ2との秘密鍵を生成するには、ボブ2のみが光子を検出した時刻情報を用いて秘密鍵を生成すればよい。
【0031】
(他の実施例)
上記の実施例では、3者間での秘密鍵の配送について説明したが、本発明を4者以上の間での秘密鍵の配送にも拡張できることは明らかである。具体的には、1つの送信機からの光パルス列をn分岐して、n個の受信機に対して光パルス列を伝送する。そして、各受信機が光パルスを検出した時刻情報を提供し、全員に共通する時刻情報に対応する記録を抽出することで、全員に共通する秘密鍵を作成することができる。
【0032】
以上、本発明の原理を適用できる多くの実施可能な形態に鑑みて、ここに記載した実施例は、単に例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。例えば、上記の実施例では、差動位相シフト変調を例に説明したが、本発明の原理は、光子の検出時刻などの情報を交換して、秘密鍵を作成する他の変調方式に適用することもできる。したがって、ここに例示した実施例は、本発明の趣旨から逸脱することなくその構成と詳細を変更することができる。さらに、説明のための構成要素および手順は、本発明の趣旨から逸脱することなく変更、補足、またはその順序を変えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来の差動位相シフト変調による2者間の量子秘密鍵配送システムの基本構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施例による3者間の量子秘密鍵配送システムの構成例を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0034】
10 差動位相シフト量子鍵配送システム
20 送信機(アリス)
22 コヒーレントパルス光源
24 位相変調器
26 減衰器
30 伝送路
40 受信機(ボブ)
44a,44b 光カップラ
45 遅延手段
B1,B2 光子検出器
100 量子秘密鍵配送システム
200 送信機(アリス)200
220 コヒーレントパルス光源
240 位相変調器
260 減衰器
300,340,360 伝送路
320 光カップラ(スプリッタ)
400 受信機(ボブ1)
440a,440b 光カップラ
450 遅延手段
B11,B12 光子検出器
600 受信機(ボブ2)
640a,640b 光カップラ
650 遅延手段
B21,B22 光子検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子秘密鍵配送システムであって、
光パルスを位相変調して送出する送信機と、
前記送信機から送出された光パルスを分岐する分岐手段と、
前記分岐手段により分岐された光パルスの一方を受信して変調位相を検出し、その検出に成功した時刻情報を提供する第1の受信機と、
前記分岐手段により分岐された光パルスの他方を受信して変調位相を検出し、その検出に成功した時刻情報を提供する第2の受信機と
を備え、前記第1および第2の受信機から提供された時刻情報のうち、前記送信機から送出された各光パルスについて、前記第1および第2の受信機が共に検出に成功した時刻情報を共通時刻情報として抽出し、前記共通時刻情報の各時刻における変調位相に基づいて、前記送信機、前記第1の受信機および前記第2の受信機のそれぞれが同一の秘密鍵データを生成することを特徴とする量子秘密鍵配送システム。
【請求項2】
量子秘密鍵配送システムであって、
光パルスを位相変調して送出する送信機と、
前記送信機から送出された光パルスをn分岐する分岐手段と、
前記分岐手段によりn分岐された光パルスをそれぞれ受信するn個の受信機であって、それぞれが光パルスの変調位相を検出し、その検出に成功した時刻情報を提供するn個の受信機と
を備え、前記n個の受信機から提供された時刻情報のうち、前記送信機から送出された各光パルスについて、前記n個の受信機すべてが検出に成功した時刻情報を共通時刻情報として抽出し、前記共通時刻情報の各時刻における変調位相に基づいて、前記送信機および前記n個の受信機のそれぞれが同一の秘密鍵データを生成することを特徴とする量子秘密鍵配送システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の量子秘密鍵配送システムにおいて、
前記共通時刻情報と共に、前記複数の受信機の少なくとも1つが検出に成功した時刻情報を検出時刻情報として抽出し、前記検出時刻情報の各時刻における変調位相に基づいて、前記送信機および前記検出に成功した受信機のうちの少なくとも2つがそれぞれ同一の秘密鍵データを生成することを特徴とする量子秘密鍵配送システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の量子秘密鍵配送システムにおいて、
前記位相変調は、差動位相シフト変調であることを特徴とする量子秘密鍵配送システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の量子秘密鍵配送システムにおいて、
前記送信機から送出される光パルスは、1パルスあたり平均1光子未満であることを特徴とする量子秘密鍵配送システム。
【請求項6】
量子秘密鍵配送方法であって、
送信機から光パルスを位相変調して送出する送信ステップと、
前記送信機から送出された光パルスを分岐する分岐ステップと、
前記分岐された光パルスの一方を第1の受信機で受信して変調位相を検出する第1の検出ステップと、
前記第1の検出ステップで検出に成功した時刻情報を提供する第1の情報提供ステップと、
前記分岐された光パルスの他方を第2の受信機で受信して位相変調を検出する第2の検出ステップと、
前記第2の検出ステップで検出に成功した時刻情報を提供する第2の時刻情報提供ステップと、
前記第1および第2の情報提供ステップにより提供された時刻情報のうち、前記送信ステップで前記送信機から送出された各光パルスについて、前記第1および第2の検出ステップで前記第1および第2の受信機が共に検出に成功した時刻情報を共通時刻情報として抽出する抽出ステップと、
前記共通時刻情報の各時刻における変調位相に基づいて、前記送信機、前記第1の受信機および前記第2の受信機のそれぞれが同一の秘密鍵を生成する生成ステップと
を備えることを特徴とする量子秘密鍵配送方法。
【請求項7】
量子秘密鍵配送方法であって、
送信機から光パルスを位相変調して送出する送信ステップと、
前記送信機から送出された光パルスをn分岐する分岐ステップと、
前記n分岐された光パルスをn個の受信機でそれぞれ受信するステップであって、それぞれが変調位相を検出する検出ステップと、
前記検出ステップのそれぞれで検出に成功した時刻情報を提供する情報提供ステップと、
前記提供された時刻情報のうち、前記送信ステップで前記送信機から送出された光パルスについて、前記検出ステップで前記n個の受信機すべてが検出に成功した時刻情報を共通時刻情報として抽出する抽出ステップと、
前記共通時刻情報の各時刻における変調位相に基づいて、前記送信機および前記n個の受信機のそれぞれが同一の秘密鍵データを生成するステップと
を備えることを特徴とする量子秘密鍵配送方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の量子秘密鍵配送方法において、
前記複数の受信機の少なくとも1つが検出に成功した時刻情報を検出時刻情報として抽出するステップと、
前記検出時刻情報の各時刻における変調位相に基づいて、前記送信機および前記検出に成功した受信機のうちの少なくとも2つがそれぞれ同一の秘密鍵データを生成するステップと
をさらに備えることを特徴とする量子秘密鍵配送方法。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれかに記載の量子秘密鍵配送方法において、
前記位相変調は、差動位相シフト変調であることを特徴とする量子秘密鍵配送方法。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれかに記載の量子秘密鍵配送方法において、
前記送信機から送出される光パルスは、1パルスあたり平均1光子未満であることを特徴とする量子秘密鍵配送方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−116520(P2007−116520A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307229(P2005−307229)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】