説明

金型の製造方法、金型、光学機能シート、光学シート、及び映像表示装置

【課題】切れ味が良いときのバイトで切削した溝と、切れ味が悪くなってきたバイトで切削した溝とが隣り合った部分や外観の濃淡ムラが目立たない金型を製造することができる金型の製造方法、該方法によって製造される金型、該金型を用いて製造される光学機能シート、該光学機能シートを備えた光学シート、及び該光学シートを備えた映像表示装置を提供する。
【解決手段】円柱状体の外周面に平行に切削された複数の溝と、該溝間に形成された山部とを有する金型の製造方法であって、溝を切削する順番が溝の配列順と異なる、金型の製造方法、該方法によって製造される金型、該金型を用いて製造される光学機能シート、該光学機能シートを備えた光学シート、及び該光学シートを備えた映像表示装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型の製造方法、該方法によって製造される金型、該金型を用いて製造される光学機能シート、該光学機能シートを備えた光学シート、及び、該光学シートを備えた映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、リアプロジェクションディスプレイ、有機EL、FED等のような、映像を観察者に出射する映像表示装置には、映像源と、該映像源からの映像光の質を高めて観察者に出射するための各種機能を有する層を具備する光学シートとが備えられている。
【0003】
このような光学シートに備えられる層として、例えば、特許文献1に記載されたコントラスト向上フィルムのように、映像光のコントラストを向上させるものがある。プラズマディスプレイパネル(PDP)は、周囲が明るい場所に設置された場合、周囲の光(外光)がPDPに照射されることによって、映像光のコントラストが不十分となり、画像品質が低下する。そのため、PDPに貼合される光学シートには、コントラストを向上させるための層として、シート面に沿って所定の間隔で並列されるとともに光を透過可能な部分(光透過部)と、該光透過部間に光を吸収可能に形成された部分(光吸収部)とを有し、外光を適切に遮蔽する機能を有する層(以下、「光学機能シート層」という。)が設けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−535673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記光学機能シート層を構成する光学機能シートは、金型を用いて基材層上に光透過部を形成した後、該光透過部間に光吸収部を形成することによって作製できる。光透過部の形成には、通常、円柱状体の外周面に平行な溝が複数形成された金型を用いる。
【0006】
図9は、従来の金型の製造方法を説明する断面図である。図9(a)〜図9(d)は、従来の金型のうち溝が切削される部分を概略的に示した断面図である。従来の金型の製造方法では、まず図9(a)に示すように金型の外周面に一つの溝102aを切削した後、図9(b)に示すように溝102aの隣に溝102bを切削し、その後、図9(c)に示すように溝102bの隣に溝102cを切削し、さらに図9(d)に示すように、溝102cの隣に溝102dを切削するというように、金型の外周面に切削される溝は、該溝の配列順に従って切削されていた。
【0007】
光透過部の長手方向が光学機能シートの端辺に対して所定の角度を有する光学機能シートを作製する場合、円周方向に対して所定の角度を持って傾斜した溝を外周面に多条ねじ切りで切削した円柱状の金型(図1参照)を用いる場合がある。多条ねじ切りで外周面に溝を切削した円柱状の金型では、螺旋状の溝のピッチの間に1以上の溝が存在することとなる。このような金型について、上記のような従来の方法で、溝の配列順に沿って溝を切削すると、最も切れ味が良いときのバイトで切削した1条目の溝と、切れ味が悪くなってきたバイトで切削した最後の条の溝とが隣り合うことになる。すなわち、図10(従来の金型の断面の一部を概略的に示す図。)に示すように、1条目の溝102aのピッチxの間に、2条目の溝102b、3条目の溝102c、及び4条目の溝102dが存在している場合、それらの溝のうち最後に切削される溝102dが、最初に切削された1条目の溝102aと隣り合うことになる。なお、図10では、1条目の溝102aのピッチxの間に3条の溝が切削された形態を例示したが、通常、さらに多くの溝が備えられるようにする。
【0008】
また、一つの金型について溝を切削中にバイトを交換した場合も、溝の配列順に従って溝を切削すると、最も切れ味が良いときのバイトで切削した溝と、切れ味が悪くなってきたバイトで切削した最後の条の溝とが隣り合うことになる。
【0009】
上記のように、最も切れ味が良いときのバイトで切削した溝と、最も切れ味が悪くなってきたバイトで切削した溝とが隣り合った金型は、切れ味が良いときのバイトで切削した溝と、切れ味が悪くなってきたバイトで切削した溝とが隣り合った部分が明確であり、金型の外観が良くなかった。また、このような金型を用いて光学機能シートを製造した場合、該光学機能シートや該光学機能シートを備えた光学シートの外観も良くなかった。
【0010】
また、後に詳述するように、金型の外周面に溝の配列順に従って溝を切削すると、溝と溝との間の山部の傾斜の程度の変化によって、金型の外観に濃淡ムラを生じていた。
【0011】
そこで本発明は、切れ味が良いときのバイトで切削した溝と、切れ味が悪くなってきたバイトで切削した溝とが隣り合った部分や外観の濃淡ムラが目立たない金型を製造することができる金型の製造方法、該方法によって製造される金型、該金型を用いて製造される光学機能シート、該光学機能シートを備えた光学シート、及び該光学シートを備えた映像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0013】
請求項1に記載の発明は、円柱状体の外周面に平行に切削された複数の溝(2、2、…)と、該溝間に形成された山部(3、3、…)とを有する金型(1)の製造方法であって、該溝を切削する順番が該溝の配列順と異なる、金型の製造方法を提供することにより前記課題を解決する。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の金型の製造方法において、溝(2、2、…)の長手方向が金型(1)の円周方向に対して傾斜するように、多条ねじ切りで溝を切削することを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の金型の製造方法によって製造される金型(1)を提供することにより前記課題を解決する。
【0016】
請求項4に記載の発明は、基材層(11)と、該基材層の一方の面側に形成された光学機能層(5)とを備え、該光学機能層が、シート面に沿って所定の間隔で並列されるとともに光を透過可能に形成される光透過部(12、12、…)と、該光透過部間に光を吸収可能に形成される光吸収部(13、13、…)とを有し、光透過部が請求項3に記載の金型を用いて成形される光学機能シート(10)を提供することにより前記課題を解決する。
【0017】
請求項5に記載の発明は、入射した光を制御して観察者側に透過する複数の層を有する光学シートであって、該複数の層のうち少なくとも1層が、請求項4に記載の光学機能シートからなる層である光学シートを提供することにより前記課題を解決する。
【0018】
請求項6に記載の発明は、観察者側に映像を出射可能に形成された映像表示装置(100)であって、映像光源(111)と、該映像光源の観察者側に備えられる光学シート(112)とを備え、該光学シートは、基材層(11)と、該基材層の一方の面側に形成された光学機能層(5)とを備え、該光学機能層が、シート面に沿って所定の間隔で並列されるとともに光を透過可能に形成される光透過部(12、12、…)と、該光透過部間に光を吸収可能に形成される光吸収部(13、13、…)とを有し、円柱状体の外周面に平行に切削された複数の溝(2、2、…)と、該溝間に形成された山部(3、3、…)とを有し、該溝を切削する順番が該溝の配列順と異なる製造方法で作製された金型(1)を用いて光透過部が作製された映像表示装置を提供することにより前記課題を解決する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、切れ味が良いときのバイトで切削した溝と、切れ味が悪くなってきたバイトで切削した溝とが隣り合った部分や外観の濃淡ムラが目立たない金型を製造することができる金型の製造方法、該方法によって製造される金型、該金型を用いて製造される光学機能シート、該光学機能シートを備えた光学シート、及び該光学シートを備えた映像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の金型の製造方法によって製造される金型の一例を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の金型の製造方法を説明する断面図である。
【図3】図1に示した金型の断面の一部を概略的に示す図である。
【図4】金型の山部の傾斜を説明する図である。
【図5】本発明の光学機能シートの断面の一部を概略的に示す図である。
【図6】図5に示した光学機能層の一部を拡大して示す図である。
【図7】光透過部を製造する装置を概略的に示す図である。
【図8】光吸収部を製造する装置を概略的に示す図である。
【図9】従来の金型の製造方法を説明する断面図である。
【図10】従来の金型の断面の一部を概略的に示す図である。
【図11】本発明の映像表示装置を模式的に示した分解斜視図である。
【図12】図11に示した映像表示装置のPDPユニットの層構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0022】
1.金型の製造方法
本発明の金型の製造方法について、以下に説明する。図1は、本発明の金型の製造方法によって製造される金型の一例について、概略的に示す斜視図である。図1では、見易さのため繰り返しとなる符号は一部省略している(以降に示す各図においても同じ。)。図2は、本発明の金型の製造方法の一例を説明する図である。図2(a)〜図2(e)は、金型のうち溝が切削される部分を概略的に示した断面図である。図2において、紙面上側が金型の外周面側であり、紙面下側が金型の内側(中心軸側)である。なお、図2及び以下に示す図では、山部3、3、…の傾斜を誇張して表現している。山部の「傾斜」については、後に詳述する。図3は、図1に示した金型の断面の一部を概略的に示す図である。
【0023】
本発明の金型の製造方法によれば、図1に示したような、円柱状体の外周面に平行に切削された複数の溝2、2、…と、該溝2、2、…間に形成された山部3、3、…とを有する金型を製造することができる。図1に示した金型1は、溝2、2、…が金型1の円周方向に対して所定の角度を持つように多条ねじ切りで切削されている。以下に説明するように、本発明の金型の製造方法は、溝2、2、…を切削する順番が溝2、2、…の配列順と異なることを特徴とする。
【0024】
図2に示した方法では、まず図2(a)に示すように、金型1の外周面に一つの溝2aを切削した後、図2(b)に示すように、溝2aの隣に他の溝(2b)を切削する間隔を空けて、溝2cを切削する。その後、図2(c)に示すように溝2aと溝2cと間に溝2bを切削する。さらにその後、図2(d)に示すように、溝2cの隣に他の溝(2d)を切削する間隔を空けて、溝2eを切削し、図2(e)に示すように、溝2cと溝2eと間に溝2dを切削する。
【0025】
本発明の金型の製造方法によれば、上記のようにして溝2、2、…の切削順を溝2、2、…の配列順と異なるようにして溝2、2、…を切削することによって、バイトの切れ味が良い状態で切削された溝と、バイトの切れ味が悪くなってきた状態で切削された溝とが隣り合うことを防止できる。また、このように製造された金型は、外観の濃淡ムラを低減することができる。金型の外観の濃淡ムラは、以下の2つの理由によって生じると考えられる。
【0026】
1つ目の理由は、溝2、2、…を切削するバイトの磨耗によって、溝2、2、…を構成する斜面の荒れ具合が変化することである。すなわち、バイトが使用されて磨耗するにつれ、2、2、…を構成する斜面の荒れ具合が大きくなる。従来のように溝の配列順に従って溝を切削すると、上述したように、最も切れ味が良いときのバイトで切削した溝と、最も切れ味が悪くなってきたバイトで切削した溝とが隣り合うことになり、上記荒れ具合の変化が金型の外観の濃淡ムラとして目立つようになっていた。一方、本発明の金型の製造方法によれば、溝2、2、…の切削順を溝2、2、…の配列順と異なるようにして溝2、2、…を切削するため、2、2、…を構成する斜面の荒れ具合の変化が目立たなくなる。よって、本発明の金型の製造方法によれば、外観の濃淡ムラが目立たない金型を製造することができる。
【0027】
2つ目の理由は、金型に溝を切削する際に生じる溝間の山部の傾斜する向き及び該傾斜の大きさの変化である。バイトで金型に溝を切削する際、該溝の横に山部が存在する場合、該山部はバイトによって押され、傾斜する。ここで、一つの山部3を例にして、山部の「傾斜」について説明する。図4は、一つの山部3とその両側の溝2、2に注目した図である。山部が「傾斜」しているとは、図4に示すように、山部3の底部の幅方向の中点Mと山部3の頂部の幅方向の中点mとを結ぶ線、及び該中点Mを通る金型1の中心軸に垂直な線の成す角θが1度以上であることを意味する。
【0028】
従来の金型の製造方法では、溝の配列順に従って溝を切削するため、新たに切削される溝の一方(既に切削されている溝がある方)にのみ山部が存在することになる。すなわち、従来の金型の製造方法では、図9に矢印で示したように、新たな溝を切削する際には、その溝の横の山部は、既にある溝の方に傾斜する。よって、従来の金型の製造方法で製造された金型は、図10に示すように、山部102、102、…の傾斜方向が一定方向になる。また、山部の傾斜の大きさは、バイトが使用されて磨耗するにつれて変化する。よって、溝の配列順に従って溝を切削すると、山部が一定の方向に傾斜しつつ、その傾斜の大きさが溝の配列方向に従って変化する。従来の金型の製造方法で製造された金型では、上記のように山部の傾斜の程度の変化していることによって、金型の外観の濃淡ムラが目立っていた。
【0029】
一方、本発明の金型の製造方法によれば、溝2、2、…の切削順を溝2、2、…の配列順と異なるようにして溝2、2、…を切削するため、山部3、3、…の傾斜方向が一定方向ではなくなる。すなわち、図2(c)に示すように、溝2bを切削するとき、バイトが溝2bの両側にある山部3a、3bを矢印の方向に押し、山部3aは溝2a側に、山部3bは溝2c側に傾斜することになる。よって、本発明の金型の製造方法で製造された金型1は、図3に示すように、山部3、3、3、の傾斜方向が一定方向ではなくなる。また、溝2、2、…の切削順を溝2、2、…の配列順と異なるようにして溝2、2、…を切削することによって、山部3、3、…の傾斜の大きさの変化も溝2、2、…の配列方向に従って変化するわけではなくなる。よって、本発明の金型の製造方法によれば、外観の濃淡ムラが目立たない金型を製造することができる。
【0030】
なお、図2には、溝一つ分だけの間隔を空けて溝を切削した後、その間隔に溝を切削する方法を例示したが、本発明はかかる形態に限定されない。本発明の金型の製造方法は、溝を切削する順番が溝の配列順と異なっていれば良く、より複雑な順序で切削することが好ましい。また、図1には溝2、2、…の長手方向が金型1の円周方向に対して傾斜するように、多条ねじ切りで溝2、2、…が切削された形態を例示したが、条数や金型の円周方向に対する溝の長手方向の角度は特に限定されない。金型の円周方向に対する溝の長手方向の角度は、金型に溝を切削する際に、金型の回転速度やバイトの送り速度(金型の中心軸に平行な方向に送る速度)を調整することによって適宜変更することができる。また、本発明の金型の製造方法によって製造される金型は、円柱状体の円周方向に平行に溝が切削された金型でも良い。
【0031】
2.金型
次に、図1〜図4を参照しつつ本発明の金型について説明する。本発明の金型は、上記本発明の金型の製造方法によって製造される。
【0032】
図1に示したように、金型1は、円柱状体の外周面に平行に切削された複数の溝2、2、…と、該溝2、2、…間に切削された山部3、3、…とを有する。当該山部3は、図3に示すように、隣接する溝2、2のうち一方の溝2側に傾斜しており、その傾斜方向は一定ではない。これは、例えば、図2(c)及び図2(e)に示した矢印のように、溝2bを切削したときにバイトが山部3aを溝2a側に押すとともに溝3bを溝2c側に押し、溝2dを切削したときにバイトが山部3cを溝2c側に押すとともに溝3dを溝2e側に押すことによる。
【0033】
一方、従来の金型の製造方法、すなわち、溝の配列順に溝を切削する金型の製造方法によって製造された金型は、山部が一定方向に傾斜することになる。これは、上述したように、新たに切削される溝の一方にのみ山部が存在するため、山部は常に一定の方向、すなわち、既に切削されている溝がある方向に押されることによる(図9、10参照。)。
【0034】
本発明の金型は、上記本発明の金型の製造方法によって製造され、上述したように、切れ味が良いときのバイトで切削した溝と、切れ味が悪くなってきたバイトで切削した溝とが隣り合った部分や濃淡ムラが目立たなく、外観が良好である。
【0035】
なお、図1には、溝2、2、…の長手方向が金型1の円周方向に対して傾斜するように、多条ねじ切りで溝2、2、…が切削された形態を例示したが、本発明はかかる形態に限定されない。例えば、溝が円柱状の金型の円周方向に平行な方向に切削されていても良い。
【0036】
3.光学機能シート
次に、本発明の光学機能シートについて説明する。図5は、一つに実施形態にかかる本発明の光学機能シート10を概略的に示す断面図である。なお、図5及び以下に示す図では、光吸収部13、13、…の傾斜を誇張して表現している。
【0037】
図5に示すように、光学機能シート10は、基材層11と、基材層11の一方の面側に形成された光学機能層5とを備えている。光学機能シート10は、図5に示した断面を有して紙面奥/手前側に延在する形状を備える。
【0038】
<基材層>
基材層11は、後で詳しく説明する光学機能層5を形成するための基材層としての層である。基材層11は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とした材料で構成されることが好ましい。基材層11がPETを主成分とする場合、基材層11には、他の樹脂が含まれてもよい。また、各種添加剤を適宜添加してもよい。一般的な添加剤としては、フェノール系等の酸化防止剤、ラクトン系等の安定剤等を挙げることができる。ここで「主成分」とは、基材層を形成する材料全体に対して上記PETが50質量%以上含有されていることを意味する(以下、同様とする。)。
【0039】
ただし、基材層11を構成する材料の主成分は、必ずしもPETであることは必要なく、その他の材料でもよい。これには例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸−イソフタル酸−エチレングリコール共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、イミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。また、これら樹脂中には、必要に応じて適宜、紫外線吸収剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。
なお、性能に加え、量産性、価格、入手可能性等の観点からは、PETを主成分とする樹脂によって基材層11を構成することが好ましい。
【0040】
<光学機能層>
光学機能層5は、シート面に沿って所定の間隔で並列されるとともに光を透過可能に形成される光透過部12、12、…と、光透過部12、12、…間に光を吸収可能に形成される光吸収部13、13、…とを有している。光学機能層5は、映像光源側からの映像光の光路を制御するとともに、迷光や外光を適切に吸収する機能を有する層である。
【0041】
光透過部12、12、…は以下に説明するように、上記本発明の金型を用いて成形される。図7は、光透過部を形成する装置を概略的に示す図である。図7には、金型1を用いる形態を例示しているが、金型1にかえて本発明の他の形態の金型を用いることも可能である。
【0042】
光透過部12、12、…を形成するには、まず金型1とニップロール31との間に、基材層11となる基材11’を矢印Xの方向に搬送する。この基材11’の搬送に合わせて、後に説明する光透過部構成組成物30を装置40から基材11’上に供給する。その後、金型1およびニップロール31間で光透過部構成組成物30を押圧し、高圧水銀灯34により紫外線を光透過部構成組成物30に照射して光透過部構成組成物30を硬化させ、基材層11上に光透過部12、12、…を成形することができる。その後、剥離用のニップロール33により、金型1から光透過部12、12、…を離型し、基材層11上に光透過部12、12、…が形成されたシートを得ることができる。
【0043】
上記のように、光透過部12、12、…は本発明の金型の溝に対応した形状に成形される。よって、光透過部12、12、…間には、本発明の金型の山部に対応した形状の溝が形成される。上述したように、本発明の金型の溝間の山部は、隣接する溝のうち一方の溝側に傾斜しており、その傾斜方向は一定ではない。そのため、光透過部12、12、…間の溝(後に説明する光吸収部13、13、…が形成される部分)は、隣接する光透過部12、12のうち一方の光透過部12側に傾斜しており、その傾斜方向が一定方向ではない。図5では、この光吸収部13の傾斜を誇張して表現しているが、実際の光吸収部13、13、…の断面は、基材層11側が短い上底で基材層11と反対側が長い下底の略台形、若しくは基材層11側が頂部で基材層11と反対側が底辺の略三角形となる。一方、光透過部12、12、…の断面は、基材層11側が長い下底で基材層11と反対側が短い上底の略台形となる。
【0044】
図6に、図5に示した光学機能層5のうち、1つの光吸収部13とこれに隣接する光透過部12、12を拡大して示した。図5、図6及び適宜示す図を参照しつつ光学機能層5についてさらに説明する。
【0045】
光透過部12、12、…は、光透過部として機能する部位で、図5及び図6に表れる断面において、略台形の断面を有する要素である。略台形断面における短い上底及び長い下底が光学機能シート10のシート面に沿う方向に配置されている。そして、略台形断面における長い下底が基材層11側に面する向きである。また、光透過部12、12、…は、屈折率がNpであり、光透過性を有する。このような光透過部12、12、…は、以下に説明する光透過部構成組成物を硬化させることによって構成することができる。なお、屈折率Npの値は特に限定されることはないが、適用する材料の入手性の観点等から1.49〜1.56であることが好ましい。
【0046】
光透過部構成組成物としては、例えば、光硬化型プレポリマー(P1)に、反応性希釈モノマー(M1)および光重合開始剤(S1)を配合した光硬化型樹脂組成物が好ましく用いられる。
【0047】
上記光硬化型プレポリマー(P1)としては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリチオール系等のプレポリマーを挙げることができる。
【0048】
また、上記反応性希釈モノマー(M1)としては、例えば、ビニルピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
【0049】
また、上記光重合開始剤(S1)としては、例えば、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置および光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。なお、光透過部13、13、…の着色防止の観点から好ましいのは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドである。
【0050】
本発明において光硬化型樹脂組成物に含まれる光重合開始剤(S1)の量は、光硬化型樹脂組成物の硬化性およびコストの観点から、光硬化型樹脂組成物全量を基準(100質量%)として、0.5質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。光重合開始剤(S1)を着色(例えば、黄色に着色)していてもよいが、光透過部構成組成物を硬化させて光透過部を形成したときに実質的に無色になることを条件とする。
【0051】
これらの光硬化型プレポリマー(P1)、反応性希釈モノマー(M1)および光重合開始剤(S1)は、それぞれ、1種で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
また必要に応じて、光透過部構成組成物中に、塗膜の改質や塗布適性、金型からの離型性を改善させるため、種々の添加剤としてシリコーン系添加剤、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、離型剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、等を添加することも可能である。
【0053】
次に、光吸収部13、13、…について説明する。光吸収部13、13、…は、光透過部12、12、…の間に配置され、図5及び図6に表れる断面において、略台形の断面を有する要素である。略台形断面における短い上底及び長い下底が光学機能シート10のシート面に沿う方向に配置されている。そして、略台形断面における長い下底が、光透過部12、12、…の上底間に並列されている。これにより光吸収部13、13、…の下底、及び光透過部12、12、…の上底により光学機能シート10の一方の面が形成されている。ここで、このとき当該略台形断面における斜辺の角度は、光学機能シート10のシート面の法線方向に対して0度以上10度以下であることが好ましい。なお、斜辺の角度とは、略台形断面における斜辺の接線と光学機能シート10のシート面の法線とがなす角を意味する。すなわち、略台形断面における斜辺のうち、いずれの箇所における接線も光学機能シート10のシート面の法線方向に対して0度以上10度以下であることが好ましい。斜辺の角度が0度に近い場合は、光吸収部13、13、…の断面は略矩形となる。また、光吸収部13、13、…の上記斜辺の傾きは必ずしも一定である必要はなく折れ線状であってもよいし、曲線状であってもよい。
【0054】
また、光吸収部13、13、…は、光透過部12、12、…の屈折率Npより小さい屈折率Nbを有する所定の材料により構成されている。このように光透過部12、12…の屈折率Npと光吸収部13、13、…の屈折率NbとをNp>Nbとすることにより、光透過部12、12、…に入射した光源からの映像光を、光吸収部13、13、…と光透過部12、12、…との界面でスネルの法則によって反射させ、観察者に明るい映像を提供することができる。NpとNbとの屈折率の差は特に限定されるものではないが、0以上0.06以下であることが好ましい。
【0055】
また、本実施形態では上記のようにNp>Nbの関係が好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではなく、光透過部の屈折率と光吸収部の屈折率とを同じにしてもよく、光透過部の屈折率を光吸収部の屈折率よりも小さくすることも可能である。
【0056】
加えて、本実施形態における光吸収部13、13、…は、光吸収粒子15、15、…と光吸収粒子15、15、…を分散させたバインダー14とを含む光吸収部構成組成物が光透過部12、12、…間の溝に充填されることにより構成されている。これにより、光透過部12、12、…と光吸収部13、13、…との界面でスネルの法則によって反射せずに光吸収部13、13、…の内側に入射した映像光を光吸収粒子15、15、…で吸収することができる。さらには所定の角度で入射した観察者側からの外光を光吸収粒子15、15、…で適切に吸収することができ、コントラストを向上させることも可能となる。
【0057】
このときバインダー14が上記の屈折率Nbである材料により構成される。当該バインダーとして用いられるものは特に限定されないが、これには例えば、光硬化型プレポリマー(P2)に、反応性希釈モノマー(M2)および光重合開始剤(S2)を配合した光硬化型樹脂組成物が好ましく用いられる。
【0058】
上記光硬化型プレポリマー(P2)としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、およびブタジエン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0059】
また、上記反応性希釈モノマー(M2)としては、例えば、単官能モノマーとして、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクトン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、スチレン等のビニルモノマー、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、ベンジルメタクリレ−ト、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。また、多官能モノマーとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレ−ト、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレ−ト等が挙げられる。
【0060】
また、上記光重合開始剤(S2)としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置および光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。本発明において光硬化型樹脂組成物に含まれる光重合開始剤(S2)の量は、光硬化型樹脂組成物の硬化性およびコストの観点から、光硬化型樹脂組成物全量を基準(100質量%)として、0.5質量%以上10.0質量%以下含まれていることが好ましい。
【0061】
これらの光硬化型プレポリマー(P2)、反応性希釈モノマー(M2)および光重合開始剤(S2)は、それぞれ、1種で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
具体的には、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートおよびメトキシトリエチレングリコールアクリレートからなる光重合性成分(詳しくは、光硬化型プレポリマー(P2)および反応性希釈モノマー(M2))の屈折率、粘度、あるいは光学機能シート10の性能への影響等を考慮して任意に配合して用いる。
【0063】
また必要に応じて、添加剤として、シリコーン、消泡剤、レベリング剤および溶剤等を光吸収部構成組成物に添加してもよい。
【0064】
光吸収粒子15、15、…は、光吸収部構成組成物中に含まれ、光吸収部13、13、…を構成したとき、迷光や外光を吸収するように作用する。
【0065】
光吸収粒子15、15、…としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではなく、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を使用してもよい。具体的には、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等で着色した有機微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。特に、着色した有機微粒子が、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から好ましく用いられる。より具体的には、カーボンブラックを含有したアクリル架橋微粒子や、カーボンブラックを含有したウレタン架橋微粒子等が好ましく用いられる。こうした着色粒子は、通常、上記の光吸収部構成組成物中に3質量%以上30質量%以下の範囲で含まれる。着色粒子の平均粒子径は1.0μm以上20μm以下であることが好ましい。光吸収部13、13、…を形成する際には、図8(光吸収部を製造する装置を概略的に示す図。)に示すように、着色粒子を含有する光吸収部構成組成物35を光透過部12、12、…間の溝に充填しつつ、ドクターブレード36を用いて余剰分の光吸収部構成組成物35を掻き落とす工程が含まれる。このとき、平均粒子径が1.0μm以上の着色粒子を用いることによって、着色粒子がドクターブレード36と光透過部12、12、…との間の隙間を抜け難くなり、光透過部12、12、…上に着色粒子が残留することを防止できる。
【0066】
また、光透過部を構成する材料によっては、光吸収部の表面は光透過部の表面に対して、同一平面上(平滑)に充填される場合もあれば、凹部状に充填される場合もある。
【0067】
なお、光を吸収させるための手段は本実施形態のように光吸収粒子による方法に限定されるものではない。他には例えば、顔料や染料により光吸収部全体を着色することを挙げることができる。
【0068】
上述したように、本発明の光学機能シートは、上記本発明の金型を用いて作製される。すなわち、本発明の光学機能シートは、切れ味が良いときのバイトで切削した溝と、切れ味が悪くなってきたバイトで切削した溝とが隣り合った部分や濃淡ムラが目立たなく、外観が良好な金型を用いて作製される。よって、本発明の光学機能シートは、全面において、透過率やヘイズなどの光学特性の均一性が向上しており、映像表示装置に用いた場合に、外観が良好となる。
【0069】
4.光学シート
次に、本発明の光学シートについて説明する。本発明の光学シートは、ここに入射した光を観察者にとって適切な光として透過させ、出射させるシート状の部材である。本発明の光学シートは、複数の層を有しており、該複数の層のうち少なくとも1層は、上記本発明の光学機能シートからなる層である。すなわち、本発明の光学シートは、全面において、透過率やヘイズなどの光学特性の均一性が向上しており、映像表示装置に用いた場合に、外観が良好となる。
【0070】
また、本発明の光学シートには、用途に応じてその他の様々な機能を有する機能層が備えられる。本発明の光学シートに備えられ得るその他の層としては、従来の光学シートに用いられていたものを特に限定することなく用いることができる。具体的には、波長フィルタ層、防眩層、反射防止層、電磁波遮蔽層、粘着剤層、ハードコート層等を挙げることができる。これらの層の積層順、及び積層数は、光学フィルタの用途に応じて適宜決定される。以下、これらの層の機能などについて説明する。
【0071】
波長フィルタ層は、所定の波長の光をフィルタリングする機能を有する層である。フィルタリングされるべき波長は必要に応じて適宜選択することができるが、映像光源から出射されるネオン線をカットしたり、赤外線、近赤外線や紫外線をカットしたりする層を挙げることができる。これは他の機能層、例えば粘着剤層などと複合化させることもできる。
【0072】
防眩層は、いわゆるぎらつきを抑制する機能を有する層であり、アンチグレア層、AG層と呼ばれることもある。このような防眩層としては市販のものを用いることができる。
【0073】
反射防止層は外光の反射を防止する機能を有する層である。これによれば、外光が光学シートの観察者側面で反射して観察者側へ戻って、いわゆる映り込みが生じて映像が見え難くなることを抑制することができる。このような反射防止層は、市販の反射防止フィルムを用いる等して構成することが可能である。
【0074】
電磁波遮蔽層は、その名称が示す通り、電磁波を遮断する機能を有する層である。当該機能を有する層であれば、電磁波を遮断する手段は特に限定されるものではない。これには、例えば銅メッシュを挙げることができる。当該銅メッシュを得る方法としてはエッチング、蒸着等により微細な銅のメッシュパターンを形成することが有効である。銅メッシュのピッチ等は遮断すべき電磁波や必要な透過率、モアレの発生状況により適宜設計されるが、例えばピッチ約300μm、線幅12μmであるものを挙げることができる。
【0075】
粘着剤層は、粘着剤が配置される層である。該粘着剤としてアクリル系粘着剤を挙げることができる。ただし、必要な光透過性、粘着性、耐候性を得ることができれば粘着剤はこれに限定されるものではない。また、層構成によっては、色素の劣化を防止するために、紫外線を吸収する効果のあるUV吸収剤(ベンゾトリアゾールなど)を粘着剤に含めることが望ましい。
【0076】
ハードコート層は、HC層とも呼ばれることもある。これは、画像表示面に傷がつくことを抑えるために耐擦傷性を付与することができる機能を有するフィルムが配置された層である。
【0077】
5.映像表示装置
次に、本発明の映像表示装置について説明する。本発明の映像表示装置は、上記本発明の光学シートと、映像光源とを備えてなる。映像光源としては、PDPなどを例示することができる。映像光源の映像光出射側に、粘着剤層などを介して本発明の光学シートを貼合することによって、本発明の映像表示装置を構成することができる。
【0078】
図11は一つの実施形態にかかる本発明の表示装置であるプラズマテレビ100を模式的に示した分解斜視図である。図11では紙面右上が観察者側、紙面左下が背面側を示している。図11からわかるように、プラズマテレビ100は、前面側筐体130と背面側筐体120とにより形成される筐体の内側に、映像源ユニットであるPDPユニット110を備えている。
【0079】
プラズマテレビ100にはその筐体内にPDPユニット110の他にもプラズマテレビに備えられる通常の各装置が具備される。これには例えば、各種電気回路や冷却手段等を挙げることができる。
【0080】
図12はPDPユニット110の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。図12では紙面左がプラズマテレビ100の背面側、紙面右が観察者側である。PDPユニット110は、プラズマテレビ100の背面側から観察者側に向かって、PDP111、及び光学シート112を備えており、光学シート112は粘着剤層113によってPDP111に貼合されている。
【0081】
光学シート112は、上記本発明の光学シートである。図12には、光学シート112が、PDP111側から順に、電磁波遮蔽層114、光学機能シート10からなる層、波長フィルタ層115、及び反射防止層116を備えている形態を例示している。なお、図12には、光学機能シート10について、光学機能層5が基材層11よりもPDP111側に配置される形態を例示しているが、光学機能シート10の向きは光学機能シート10の用途に応じて適宜変更可能である。すなわち、光学機能層5が基材層11よりも観察者側になる向きで光学機能シート10が備えられても良い。
【0082】
PDP111は、平板状の映像光源であるプラズマディスプレイパネルであり、通常のプラズマテレビに用いられるものをそのまま適用することができる。従って、通常のPDPと同様に、3原色のそれぞれの蛍光体を有する1画素を1単位とした画素が縦横に並列されるとともにガス放電をさせて発光させるための電極が備えられている。
【0083】
ここでは、本発明の映像表示装置としてプラズマテレビを例示したが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、映像光源として、通常に知られている電界発光ディスプレイパネル(FED)、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、有機EL等を用いることも可能である。
【0084】
上述したように、本発明の映像表示装置は、上記本発明の光学シートを備えている。すなわち、本発明の映像表示装置は、全面において、透過率やヘイズなどの光学特性の均一性が向上した光学シートを、映像光源より観察者側に備えている。よって、本発明の映像表示装置は、表示画面全面において、映像光の透過率やヘイズなどの光学特性の均一性が向上している。
【実施例】
【0085】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし本発明は実施例に限定されるものではない。
【0086】
(実施例1)
直径400mmの円柱状の金型シリンダーを用意し、該金型シリンダーの外周面に硬質銅メッキを片肉で0.5mm施した。次に、当該金型シリンダーの外周面に、旋盤(ナガセインテグレックス社製「L1600−NIC」)を用いて以下のようにして切削して溝を形成した。なお、旋盤はチャンバー内に設置し、±0.2℃で管理した。金型シリンダーの回転数を150rpmとし、バイアス(金型の円周方に対する溝の長手方向の角度)を4.5度とするために刃物台の送り速度は98.89948mm/rev.に設定した。溝の切削にはダイヤモンドバイトを使用し、該ダイヤモンドバイトの先端形状は、頂角が6度で先端カット幅が41μmであった。51μmのピッチで溝を1934条切削した。1条の溝について15回切削し、1条の溝を形成した後に次の溝を形成するようにした。溝の形成順は、溝の配列順と異なるようにランダムにした。実施例1にかかる金型は、切れ味が良いときのバイトで切削した溝と、切れ味が悪くなってきたバイトで切削した溝とが隣り合った部分や濃淡ムラが目立たなく、外観が良好であった。
【0087】
(実施例2)
1条の溝について15回ずつ切削して金型シリンダーの外周面に複数の溝を形成するに際して、溝を切削する順を、実施例1と同様に溝の配列順と異なるようにランダムにした。ただし、全ての溝について1回ずつ切削した後、さらに全ての溝について1回ずつ切削するということを15回繰り返すことによって、全ての溝について15回ずつ切削した。その他は実施例1と同様の条件で金型を製造した。実施例2にかかる金型は、切れ味が良いときのバイトで切削した溝と、切れ味が悪くなってきたバイトで切削した溝とが隣り合った部分や濃淡ムラが目立たなく、外観が良好であった。
【0088】
(比較例1)
溝の切削順を溝の配列順とした以外は実施例1と同様にして、金型を製造した。比較例1にかかる金型は、切れ味が良いときのバイトで切削した溝と、切れ味が悪くなってきたバイトで切削した溝とが隣り合った部分が顕著に現われ、外観が良くなかった。
【0089】
以上、現時点において実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う金型の製造方法、金型、光学機能シート、光学シート、及び映像表示装置も本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0090】
1 金型
2 溝
3 山部
5 光学機能層
10 光学機能シート
11 基材層
12 光透過部
13 光吸収部
14 バインダー
15 光吸収粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状体の外周面に平行に切削された複数の溝と、該溝間に形成された山部とを有する金型の製造方法であって、
前記溝を切削する順番が前記溝の配列順と異なる、金型の製造方法。
【請求項2】
前記溝の長手方向が前記金型の円周方向に対して傾斜するように、多条ねじ切りで前記溝を切削する、請求項1に記載の金型の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金型の製造方法によって製造される金型。
【請求項4】
基材層と、該基材層の一方の面側に形成された光学機能層とを備え、
前記光学機能層が、シート面に沿って所定の間隔で並列されるとともに光を透過可能に形成される光透過部と、該光透過部間に光を吸収可能に形成される光吸収部とを有し、
前記光透過部が請求項3に記載の金型を用いて成形される、光学機能シート。
【請求項5】
入射した光を制御して観察者側に透過する複数の層を有する光学シートであって、
前記複数の層のうち少なくとも1層が、請求項4に記載の光学機能シートからなる層である、光学シート。
【請求項6】
観察者側に映像を出射可能に形成された映像表示装置であって、
映像光源と、該映像光源の観察者側に備えられる光学シートとを備え、
前記光学シートは、基材層と、該基材層の一方の面側に形成された光学機能層とを備え、
前記光学機能層が、シート面に沿って所定の間隔で並列されるとともに光を透過可能に形成される光透過部と、該光透過部間に光を吸収可能に形成される光吸収部とを有し、
円柱状体の外周面に平行に切削された複数の溝と、該溝間に形成された山部とを有し、前記溝を切削する順番が前記溝の配列順と異なる製造方法で作製された金型を用いて前記光透過部が作製された、映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−56137(P2012−56137A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200015(P2010−200015)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】