説明

金型エジェクタ装置及びそれを用いる射出成形装置

【課題】生産効率及び成形品精度を向上できる金型のエジェクタ装置及びそれを用いる射出成形装置の提供。
【解決手段】対向する第一表面及び第二表面を有する本体251と、前記第一表面の第一収容凹部2521と、前記第一収容凹部を密封して第一密封キャビティ2522を形成する第一シール部材と、前記第一密封キャビティ内にスライド可能に設置された第一ピストンと、前記第一ピストンに接続し且つ前記第一シール部材を貫く第一突出しピンと、前記本体に設置され且つ前記第一密封キャビティに連通される第一通路2526、2527とを備える第一エジェクタ機構252と、前記第二表面の第二収容凹部と、第二シール部材と、第二ピストンと、第二突出しピンと、前記本体に設置された第二通路2536、2537とを備える第二エジェクタ機構253と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型エジェクタ装置及びそれを用いる射出成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術において、射出成形装置は、雄型と、前記雄型に組み合わせる雌型と、を備える。前記雄型と前記雌型とが組み合わせて型閉じすると、キャビティ(Cavity)が形成される。溶融された高分子材料を射出スクリューによって前記キャビティ内に射出して、前記キャビティ形状に対応される射出成形品を成形し、前記雄型と前記雌型とを開けた後、前記射出成形品を取り出す。
【0003】
射出成形装置において、一般的に雄型にエジェクタ(Ejector)装置が設置され、型開きが行われる際、前記エジェクタ装置で射出成形品を突き出して、離型を完了する。しかし、従来の射出成形装置は、一回に一つのワークだけを成形するので、効率が低く、且つ外部に設置された管路を介して油が輸送されるので、長期間も使用すると管路が老朽化して、油の輸送速度や圧力を精確にコントロールできなくなり、成形ワークの精度も低くなって生産要求を満足することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の問題点に鑑みて、本発明は、生産効率及び成形品の精度を向上することができる金型エジェクタ装置及びそれを用いる射出成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明に係る金型のエジェクタ装置は、本体、第一エジェクタ機構及び第二エジェクタ機構を備える。前記本体は、対向する第一表面及び第二表面を有する。前記第一エジェクタ機構は、前記本体の第一表面から凹んで形成される第一収容凹部と、前記第一収容凹部を密封して第一密封キャビティを形成する第一シール部材と、前記第一密封キャビティ内にスライド可能に設置されている第一ピストンと、前記第一ピストンに接続し且つ前記第一シール部材を貫く第一突出しピンと、前記本体に設置され且つ前記第一密封キャビティに連通される第一通路と、を備える。前記第二エジェクタ機構は、前記本体の第二表面から凹んで形成される第二収容凹部と、前記第二収容凹部を密封して第二密封キャビティを形成する第二シール部材と、前記第二密封キャビティ内にスライド可能に設置されている第二ピストンと、前記第二ピストンに接続し且つ前記第二シール部材を貫く第二突出しピンと、前記本体に設置され且つ前記第二密封キャビティと連通される第二通路と、を備える。
【0006】
また、本発明に係る射出成形装置は、第一金型、第二金型及び金型のエジェクタ装置を備える。前記第一金型は、可動金型と、前記可動金型に組み合わされる固定金型と、を備え、前記第二金型は、可動金型と、前記可動金型に組み合わされる固定金型と、を備える。前記金型のエジェクタ装置は、本体、第一エジェクタ機構及び第二エジェクタ機構を備える。前記本体は、第一表面及び前記第一表面の反対側の第二表面を備え、前記第一表面には、前記第一金型の固定金型が装着され、前記第二表面には、前記第二金型の固定金型が装着される。前記第一エジェクタ機構は、前記第一表面に設置されている第一収容凹部と、前記第一収容凹部を密封して第一密封キャビティを形成する第一シール部材と、前記第一密封キャビティにスライド可能に設置される第一ピストンと、前記第一ピストンに接続し且つ前記第一シール部材を貫く第一突出しピンと、前記本体に設置され且つ前記第一密封キャビティと連通されている第一通路と、を備える。前記第二エジェクタ機構は、前記第二表面に設置されている第二収容凹部と、前記第二収容凹部を密封して第二密封キャビティを形成する第二シール部材と、前記第二密封キャビティにスライド可能に設置される第二ピストンと、前記第二ピストンに接続し且つ前記第二シール部材を貫く第二突出しピンと、前記本体に設置され且つ前記第二密封キャビティと連通されている第二通路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る射出成形装置に用いられる金型エジェクタ装置において、その両側にはそれぞれ第一エジェクタ機構及び第二エジェクタ機構が設置されて、同時に2つの射出成形品を成形するか又は回転機構によって二色成形が可能であるので、生産効率が向上される。また、前記金型エジェクタ装置の本体の内部に油を輸送する第一通路及び第二通路が設置されて、油輸送用管路を外部に設置することを必要とせず、長期間の使用による管路の老朽化を抑えて、油圧を精確に制御することができ、さらに成形品の精度を確保する。さらに、金型エジェクタ装置が作業する時、本体の両側に均等に力が作用するので、前記本体は容易に変形されない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る射出成形装置の断面図である。
【図2】図1に示した射出成形装置に用いられる金型エジェクタ装置の斜視図である。
【図3】図2に示した金型エジェクタ装置の分解図である。
【図4】図2に示した金型エジェクタ装置の別の角度からの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、本発明に係る金型エジェクタ装置及びそれを用いる射出成形装置について詳細に説明する。
【0010】
図1に示したように、本発明に係る射出成形装置200は、第一金型21、第二金型23及び金型エジェクタ装置25を備える。
【0011】
本発明に係る射出成形装置200は、二頭式射出成形機又は二色射出成形機に採用され、前記第一金型21及び前記第二金型23は、それぞれ所定の形状を有する成形品を成形することができる。
【0012】
前記第一金型21は、可動金型211と、前記可動金型221に組み合わされる固定金型213と、を備える。型閉じした後、前記可動金型211と前記固定金型213とは、協働して1つのキャビティ(図示せず)を形成する。前記キャビティに溶融プラスチックを注入して冷却することで、前記キャビティの形状に対応される射出成形品が得られる。前記第二金型23の構造は、前記第一金型21の構造と同様である。前記第二金型23は、可動金型231及び固定金型233を備える。本発明において、前記第一金型21の可動金型211及び前記第二金型23の可動金型231を動かす型閉じ機構及び射出装置などは、周知技術であるので省略する。
【0013】
図2〜4を参照すると、前記金型エジェクタ装置25は、本体251、第一エジェクタ機構252及び第二エジェクタ機構253を備える。前記本体251は、第一表面2511及び第二表面2513を備える。前記第一表面2511には、前記第一金型21の固定金型213が装着され、前記第二表面2513には、前記第二金型23の固定金型233が装着される。前記本体251には、前記第一金型21の固定金型213及び前記第二金型23の固定金型233を装着するための複数の装着穴(図示せず)が形成されている。本実施形態において、前記第一エジェクタ機構252及び前記第二ジェクタ機構253の数量は、それぞれ2つである。
【0014】
前記第一エジェクタ機構252は、前記本体251の第一表面2511から凹んで形成される第一収容凹部2521と、前記第一収容凹部2521を密封して第一密封キャビティ2522を形成する第一シール部材2523と、前記第一密封キャビティ2522の内部にスライド可能に設置される第一ピストン2524と、前記第一ピストン2524に接続され且つ前記第一シール部材2523を貫く第一突出しピン2525と、を備える。前記本体251には、その1つの側面から前記第一密封キャビティ2522に連通される第一通路2526,2527が形成されている。前記第一通路2526,2527は、油圧を提供する油圧源101に連通され、前記油圧の駆動力で前記第一ピストン2524及び前記第一突出しピン2525を動かして、前記固定金型213側で成形品が突出される。前記第二エジェクタ機構253の構造は、前記第一エジェクタ機構252の構造と同様である。前記第二エジェクタ機構253は、前記本体251の第二表面2513から凹んで形成される第二収容凹部2531と、第二シール部材2533と、第二ピストン2534と、第二突出しピン2535と、を備える。前記第二エジェクタ機構253及び前記第一エジェクタ機構252は、前記油圧源101を共用し、前記第二エジェクタ機構253は、前記本体251の他の側面に形成される第二管路通路2536,2537によって前記油圧源101に連通される。
【0015】
前記金型エジェクタ装置25が作動する時、前記第一エジェクタ機構252の第一突出しピン2525は、第一位置と第二位置との間で位置が切り替えられる。前記第一突出しピン2525が第一位置に位置する際、前記第一突出しピン2525は前記本体251の第一表面2511から突き出して、成形品が前記固定金型213から突出される。前記第一突出しピン2525が第二位置に位置する際、前記第一突出しピン2525は前記本体251の内部に入り込む。即ち、前記第一突出しピン2525が前記第二位置に位置する際、前記第一エジェクタ機構252は前記本体251の内部に完全に収納される。従って、前記第一金型21の固定金型213側で成形品を突出す必要がない時には、前記第一突出しピン2525は前記本体251の内部に収納されて動作しないので、使用の自由性が向上される。好ましくは、前記第一突出しピン2525が前記第二位置に位置する際、前記第一突出しピン2525の押圧端面と前記本体251の第一表面2511とが同一の平面に位置して、前記本体251と前記固定金型213との組み合わせに影響を及ぼさないことにする。なお、前記第一密封キャビティ2522及び前記第一通路2526が全て前記本体251の内部に形成されているので、前記金型エジェクタ装置25の全体構造がコンパクト(compact)になった。前記第二エジェクタ機構253の作動原理は、前記第一エジェクタ機構252の作動原理と同じであるので、それに対する説明は省略する。
【0016】
本実施形態において、前記射出成形装置200は、1つの油圧源101で前記第一エジェクタ機構252及び前記第二エジェクタ機構253を駆動して作動させる。前記油圧源101及び前記第一通路2526,2527によって、前記第一エジェクタ機構252の第一ピストン2524を前進させるか又は後退させる。前記油圧源101及び前記第二通路2526,2527によって、前記第二エジェクタ機構253の第二ピストン2534を前進させるか又は後退させる。前記第一通路2526,2527及び前記第二通路2526,2527は、前記本体251の内部に形成され且つ前記本体251は一般的に金属材料から構成されるので、前記第一通路2526,2527及び前記第二通路2526,2527の耐圧性が優れ、油圧によって前記第一ピストン2524及び前記第二ピストン2534の移動を精確に制御することができる。他の実施形態において、前記第一エジェクタ機構252及び前記第二エジェクタ機構253にそれぞれに1つの油圧源101を配置して、前記第一エジェクタ機構252及び前記第二エジェクタ機構253は、それぞれ独立に作業することもできる。
【0017】
本実施形態において、前記第一エジェクタ機構252の第一収容凹部2521は、前記第一金型21の固定金型213に対向され、且つ開口側に形成されている第一装着部2528及び前記第一装着部2528に連通する第一主体部2529を備える。前記第一ピストン2524は、前記第一主体部2529内に装着され、第一ピストン2524の外径は、前記第一主体部2529の内径とほぼ同じである。前記第一主体部2529は、円筒状であり、前記第一ピストン2524は、前記第一主体部2529内でその軸方向に沿って移動する。前記第一シール部材2523は、前記第一装着部2528を密封するように、前記第一装着部2528に固定設置される。前記第一装着部2528は、矩形の凹部であり、前記第一シール部材2523は、前記矩形凹部に対応される矩形塊である。前記第一シール部材2523の頂面と前記本体251の第一表面2511とが同一の平面に位置することによって、前記第一シール部材2523は前記本体251内に完全に収納される。従って、前記固定金型213が前記本体251に装着されることが容易になる。また、前記第一シール部材2523が前記第一収容凹部2521を密封して前記第一密封キャビティ2522を形成することができれば、前記第一シール部材2523及び前記第一装着部2528の形状は、他の形状でもよい。前記第二エジェクタ機構253の構造は、前記第一エジェクタ機構252と同じ構造を有する。
【0018】
前記射出成形装置200が二頭式射出成形機に用いられる時、前記第一金型21の構造と前記第二金型23の構造は同じである。前記射出成形装置200が二色射出成形機に用いられる時、前記金型エジェクタ装置25は回転機構(図示せず)に固定され、前記第一金型21を利用して第一層を射出してから、前記第一金型21の可動金型211を離型し、前記回転機構を介して前記金型エジェクタ装置25を一定の角度で回転させてから、前記第一金型21の固定金型213と前記第二金型23の可動金型231を型閉じした後、第二層を射出する。前記第二金型23の可動金型231のサイズと前記第一金型21の可動金型213のサイズは異なり、従って前記第二層の射出成形に十分な空間を提供する。
【0019】
本発明に係る射出成形装置200は、第一金型21及び第二金型23を備える。前記射出成形装置200を二頭式射出成形機に用いる場合、同時に2つの射出成形品を射出成形することができるので、生産効率を向上させる。前記射出成形装置200を二色射出成形機に用いる場合、一次射出作業が完了してから、半製品を金型から取り出す必要がなく、続いて二次射出作業を行うことができるので、半製品を1つの金型から取り出してから他の金型に装着する時間を節約することができ、且つ取出及び装着過程における半製品の破損を防止することができる。
【0020】
前記金型エジェクタ装置25の本体251の内部に油を輸送する第一通路2526,2527及び第二通路2536,2537を直接形成して、油輸送用管路を外部に設置する必要がないので、長期間使用による管路の老朽化を抑えることができ、油圧を精確に制御することができ、さらに成形品の精度を確保する。また、前記本体251の両面に均等に力が作用するので、前記本体251の変形を抑えることができる。
【0021】
前記射出成形装置200において、前記第一エジェクタ機構252及び前記第二エジェクタ機構253によって射出成形品が突出されて、金型から射出成形品を容易に取り出すことができる。また、前記第一エジェクタ機構252と前記第二エジェクタ機構253が前記本体251の内部に収納されることにより、使用の自由性が向上され、且つ前記射出成形装置200の静構造がコンパクトになる。
【0022】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形又は修正が可能であり、該変形又は修正も又、本発明の特許請求の範囲内に含まれるものであることは、いうまでもない。
【符号の説明】
【0023】
200 射出成形装置
21 第一金型
211,231 可動金型
213,233 固定金型
23 第二金型
25 金型のエジェクタ装置
251 本体
2511 第一表面
2513 第二表面
252 第一エジェクタ機構
2521 第一収容凹部
2522 第一密封キャビティ
2523 第一シール部材
2524 第一ピストン
2525 第一突出しピン
2526,2527 第一通路
2528 第一装着部
2529 第一主体部
253 第二エジェクタ機構
2531 第二収容凹部
2533 第二シール部材
2534 第二ピストン
2535 第二突出しピン
2536,2537 第二通路
101 油圧源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第一表面及び第二表面を有する本体と、
前記本体の第一表面から凹んで形成される第一収容凹部と、前記第一収容凹部を密封して第一密封キャビティを形成する第一シール部材と、前記第一密封キャビティ内にスライド可能に設置されている第一ピストンと、前記第一ピストンに接続し且つ前記第一シール部材を貫く第一突出しピンと、前記本体に設置され且つ前記第一密封キャビティに連通される第一通路と、を備える第一エジェクタ機構と、
前記本体の第二表面から凹んで形成される第二収容凹部と、前記第二収容凹部を密封して第二密封キャビティを形成する第二シール部材と、前記第二密封キャビティ内にスライド可能に設置されている第二ピストンと、前記第二ピストンに接続し且つ前記第二シール部材を貫く第二突出しピンと、前記本体に設置され且つ前記第二密封キャビティと連通される第二通路と、を備える第二エジェクタ機構と、
を備えることを特徴とする金型エジェクタ装置。
【請求項2】
前記第一収容凹部は、その開口側に形成されている第一装着部及び前記第一装着部と連通される第一主体部を備え、前記第一シール部材は、前記第一装着部に固定設置され、前記第一ピストンは、前記第一主体部内に設置され、
前記第二収容凹部は、その開口側に形成されている第二装着部及び前記第二装着部と連通される第二主体部を備え、前記第二シール部材は、前記第二装着部に固定設置され、前記第二ピストンは、前記第二主体部内に設置されることを特徴とする請求項1に記載の金型のエジェクタ装置。
【請求項3】
前記第一突出しピンは、第一位置と第二位置との間で位置が切り替えられ、前記第一突出しピンが前記第一位置に位置する際、前記第一突出しピンは前記第一表面から突き出し、前記第一突出しピンが前記第二位置に位置する際、前記第一突出しピンは前記本体内に収納されることを特徴とする請求項1または2に記載の金型のエジェクタ装置。
【請求項4】
可動金型及び前記可動金型に組み合わされる固定金型を備える第一金型と、
可動金型及び前記可動金型に組み合わされる固定金型を備える第二金型と、
請求項1に記載の金型エジェクタ装置と、
を備えてなる射出成形装置において、
前記第一金型の固定金型は、前記金型エジェクタ装置の本体の第一表面に装着され、前記第二金型の固定金型は、前記金型エジェクタ装置の本体の第二表面に装着されることを特徴とする射出成形装置。
【請求項5】
前記射出成形装置は、油圧源をさらに備え、前記油圧源は、前記第一通路及び前記第二通路を介して前記第一密封キャビティ及び前記第二密封キャビティにそれぞれ油を供給して、前記第一ピストン及び前記第二ピストンをそれぞれに駆動することを特徴とする請求項4に記載の射出成形装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−91488(P2012−91488A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111544(P2011−111544)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(503023069)鴻富錦精密工業(深▲セン▼)有限公司 (399)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】