説明

金型搬入装置

【課題】一回の作動で金型を成型機の金型取付け位置まで搬入させることができ、金型を搬送する台車の外側への無駄な突出部を無くし、安全に作業することが可能となる金型搬入装置を提供する。
【解決手段】成型機において用いられる金型を、該成型機に搬入するための金型搬入装置であって、
搬送台車の基台上に移動自在に設けられた可動ベース8と、
前記可動ベースを、前記成型機への金型搬入方向に駆動する動力源1,2,3,4と、
前記可動ベースに設けられ、前記搬送台車の基台上に積載された金型に当接させて該金型を前記成型機に押し込む押込部材13と、
前記押込部材を、前記可動ベースよりも前記金型搬入方向に前進させて、前記金型を前記成型機の金型取付け位置まで移動可能とする押込部材移動手段9,10,11,12と、を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機や射出成型機等の成型機で用いられる金型を、これら成型機内に搬入するための金型搬入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金型を用いるプレス機や射出成型機等の製造機械に金型を搬入する方法には、大きく分けて二通りの方法が用いられている。
一つは、金型をクレーンで持ち上げ成型機近接まで移動させて下ろすクレーン方式によるものである。
他の一つは、金型を搬送台車等により搬送する台車方式である(例えば、特許文献1参照)。
このような台車方式では、例えば、成型機の横まで搬送台車等により金型を搬送し、金型を成型機内の金型取付け位置近傍まで搬入させる方法等が用いられる。従来におけるこのような台車方式による金型搬入装置の一般的な構成例を、図を用いて説明する。
図11は台車方式により成型機の横まで搬送された後、成型機の金型取付け位置近傍まで搬入させる金型搬入装置の構成例であり、金型を乗せるための待機位置を示したものである。
図11において、モータ101の回転駆動によりスプロケット102、チェーン104、スプロケット103により駆動軸119が回転する。駆動軸119の両端にはスプロケット105,106、チェーン118が接続されている。
これにより、モータ101の正逆転によりチェーン118は正逆転を行う。チェーン118上には、左右に各2個のスプロケット107を配した可動ベース108が載っている。
スプロケット107は回転しないように可動ベース108に固定されており、チェーン118の動きに同期して可動ベース108が動く。
可動ベース108には押し板フレーム113が取付けられているので、前方向に金型を移動させることができる。
搬送台車の基台114には金型の移動抵抗を最小限にするためコロコン116,117が取付けられている。
コロコン116,117が成形機122(図10参照)側のコロコンと接する位置に金型123(図10参照)を載せた搬送台車を移動した後、金型123の搬入を行う。
図12は、金型を搬入させるために最端部まで可動ベース108を前進させた状態を示す外観図である。
【0003】
つぎに、このような従来における搬入装置を用いて、成型機の金型取付け位置まで金型を搬入させる場合について、図7〜図10により説明する。
図7において、122は横型の成型機、123は成型用金型のそれぞれの概略を示すものである。
また、127は従来の金型搬入装置で金型が金型待機位置にある状態を示すものである。
図8において、128は従来の金型搬入装置で最端部まで押し板フレームを移動させた状態を示すものである。
ここで、金型123が金型取付け位置である成型機122の中央に到達していない場合、従来においては、つぎのようにして金型を搬入するようにされていた。例えば、金型123を成型機122の中央に位置させるに際し、作業者は手で押して成型機の方向へ金型を搬入するようにされていた。
あるいは、図9に示すように押し板フレームを戻して、金型搬送の不足分に相当するスペーサ124を図の様にセットし、図10に示すように再び最端部まで押し板フレームを移動させ、成型機の金型取付け位置まで金型を搬入するようにされていた。
一方、特許文献2には、金型を成型機に搬入させる手段として、金型移送台車に金型移送シリンダを載置した構成が開示されている。
【特許文献1】特開平6−126352号公報
【特許文献2】特開平6−190526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来における成型機への金型搬入装置は、つぎのような問題を有している。
例えば、上記した従来のクレーン方式では、大型のクレーンを導入する為設備投資が必要である。また頭上を重量物である金型を移動させるため、危険を伴うと同時に、安全上の配慮や、熟練者を必要とする。
また、上記した従来の台車方式では、金型を成型機の金型取付け位置まで搬入させるため、作業者が手で押して搬入させる作業や、スペーサのセット等に、二度、三度と複数の作業乃至は動作を要し、時間と手間を必要とする。
また、特許文献2に開示されたものでは、金型移送台車に金型移送シリンダを載置するに際し、この金型移送台車の外側に金型移送シリンダが大きく張り出すことから、これに作業者が接触して負傷する危険性や、移送機構を破損する恐れが生じる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、一回の作動で金型を成型機の金型取付け位置まで搬入させることができ、金型を搬送する台車の外側への無駄な突出部を無くし、安全に作業することが可能となる金型搬入装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を達成するために、つぎのように構成した金型搬入装置を提供するものである。
本発明の金型搬入装置は、成型機において用いられる金型を、該成型機に搬入するための金型搬入装置であって、
搬送台車の基台上に移動自在に設けられた可動ベースと、
前記可動ベースを、前記成型機への金型搬入方向に駆動する動力源と、
前記可動ベースに設けられ、前記搬送台車の基台上に積載された金型に当接させて該金型を前記成型機に押し込む押込部材と、
前記押込部材を、前記可動ベースよりも前記金型搬入方向に前進させて、前記金型を前記成型機の金型取付け位置まで移動可能とする押込部材移動手段と、
を有することを特徴とする。
また、本発明の金型搬入装置は、前記押込部材移動手段が、
前記可動ベースに中央部を軸支され、前記金型搬入方向の端部側に第一の係合部が設けられたアーム状部材と、
前記アーム状部材を、前記軸支された中央部を中心に回動させるアーム回動部材と、
前記押込部材に形成された前記第一の係合部と嵌合する第一の長穴と、を備え、
前記アーム回動部材により前記アーム状部材と前記可動ベースのなす角度を前記可動ベースの前記金型搬入方向への移動に応じて増加させ、前記第一の係合部が前記第一の長穴中を移動できるように構成し、
前記押込部材を前記可動ベースよりも前記金型搬入方向に前進させることを特徴とする。
また、本発明の金型搬入装置は、前記第一の長穴が、前記搬送台車の端面と平行状または曲線状であることを特徴とする。
また、本発明の金型搬入装置は、前記アーム状部材の前記金型搬入方向と反対方向の端部側に設けられた第二の係合部と、
前記アーム回動部材に形成された前記第二の係合部と嵌合する第二の長穴と、を備え、
前記可動ベースの前記金型搬入方向への移動による前記可動ベースとの間隔の増加によって、前記第二の係合部が前記第二の長穴中を移動し、
前記アーム状部材と前記可動ベースのなす角度を増加させるように構成されていることを特徴とする。
また、本発明の金型搬入装置は、前記第二の長穴が、前記搬送台車の端面と平行状または曲線状であることを特徴とする。
また、本発明の金型搬入装置は、前記アーム状部材の前記金型搬入方向と反対側に設けられた第三の長穴と、
前記アーム回動部材に設けられた前記第三の長穴と嵌合する第三の係合部と、を備え、
前記可動ベースの前記金型搬入方向への移動による前記可動ベースとの間隔の増加によって、前記第三の係合部が前記第三の長穴中を移動し、
前記アーム状部材と前記可動ベースのなす角度を増加させるように構成されていることを特徴とする。
また、本発明の金型搬入装置は、前記アーム回動部材に軸支された二本の補助アームを備え、
前記二本の補助アームの先端が、前記アーム状部材の前記金型搬入方向と反対側の部分と回転自在に連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、一回の作動で金型を成型機の金型取付け位置まで搬入させることができ、金型を搬送する台車の外側への無駄な突出部を無くし、安全に作業することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を実施するための最良の形態を、以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0009】
以下に、本発明の実施例における金型搬入装置について説明する。
図1に、本実施例の金型搬入装置の金型待機位置における外観図を示す。
また、図2に本実施例の金型搬入装置の金型押出し完了位置における外観図を、図3にこの金型押出し完了位置における上面図を、図4にこの金型押出し完了位置における側面図を示す。
【0010】
図1において、モータ1の回転駆動によりスプロケット2、チェーン4、スプロケット3により駆動軸19が回転する。
駆動源としては手動クランクなどを使用してもよい。
駆動軸19の両端にはスプロケット5があり、スプロケット6との間にチェーン18を接続させている。
これによりモータ1の正逆転でチェーン18は正逆転を行う。チェーン18上には、左右に各2個のスプロケット7を配した可動ベース8が載っている。
スプロケット7は回転しないように可動ベース8に固定されており、チェーン18の動きに同期して可動ベース8が前進・後退する。スプロケット7を用いず、チェーン18を可動ベース8に直接または間接的に固定してもよい。
【0011】
可動ベース8上の中央には中央ピン9が設けられている。また、このピンに軸支され回転自在に設けられたクロスフレーム10,11には両端にピンが設けられ、先端側のピンは押し板フレーム13に設けた第一の長穴の中を移動可能となっている。
そして、後端側のピンは止め板フレーム12に設けた第二の長穴の中を移動可能となるように、それぞれ可動自在に結合されている。
【0012】
モータ1が回転すると可動ベース8は前方へ移動する。基台14上に固定されたストッパ20の位置に止め板フレーム12がさしかかると図4で示す止め板フレームのストッパ当接部21とストッパ20が干渉することで止め板フレーム12は静止する。
さらに、可動ベース8が前方へ移動した状態が図2及び図3である。
可動ベース8と止め板フレーム12の間隔が増加するのに伴い、可動ベース8上の中央ピン9を中心にクロスフレーム10,11が前方向へ回転し、可動ベース8とクロスフレーム10,11のなす角度が増加して押し板フレーム13をより前方へ押出す。
【0013】
つぎに、以上のように構成された金型搬入装置を用いて、成型機の金型取付け位置まで金型を搬入させる場合について、図5、図6により説明する。
図5において、22は横型の成型機、23は成型用金型のそれぞれのの概略を示すものである。また、25は上記金型搬入装置において金型が金型待機位置にある状態を示す。
また、図6において、26は上記金型搬入装置において金型を最端部まで移動させた状態を示す。
本実施例の金型搬入装置によれば、図2に示す状態まで可動ベース8を前方へ移動させることで、可動ベース8とクロスフレーム10,11のなす角度を増加させて押し板フレーム13をより前方へ押出し、図6に示す最端部まで金型23を移動させることができる。
これにより、金型23を金型取付け位置である成型機22の中央に到達させることが可能となる。このように、本実施例の金型搬入装置によれば、一回の作動により、金型を成型機の金型取付け位置まで搬送することが可能となる。
したがって、段取り変えの時間を短縮することができ、不慣れな作業者でも安全に作業することが可能となり、高額な設備投資も必要とせず、コストダウンを図ることができる。
また、金型搬入装置において金型が金型待機位置にある状態で、無駄な突出部を無くすことができ、故障の少ない金型搬入装置を実現することができる。
【0014】
なお、本実施例では押し板フレーム13の第一の長穴を台車の端面と平行に形成したが、本発明はこのような構成に限られるものではなく、本実施例とは異なり第一の長穴を台車の端面と平行しないように形成してもよい。
また、第一の長穴は曲線状に形成されていてもよい。第一の長穴の形状を適切に形成すれば、クロスフレーム10,11の回転角度に略比例して可動ベース8と押し板フレーム13の間隔が増加するようにもできる。
【0015】
また、本実施例と異なり止め板フレーム12の第二の長穴を台車の端面と平行しないように形成してもよい。
また、第二の長穴は曲線状に形成されていてもよい。第二の長穴の形状を適切に形成すれば、可動ベース8と止め板フレーム12の間隔の増加に略比例してクロスフレーム10,11の回転角度が増加するようにもできる。
【0016】
また、止め板フレーム12に二つのピンを立て、クロスフレーム10,11の対応する位置にそのピンと嵌まり合う第三の長穴を形成しても良い。
このようにすれば、止め板フレーム12と可動ベース8の間隔の増加に伴いクロスフレーム10,11の回転角度が増加するようにできる。
また、止め板フレームの略中央部にピンを立て、このピンに一端を軸支された二本の補助アームを設け、補助アームの先端をクロスフレーム10,11の後端部と回転自在に連結し、パンタグラフ状に形成してもよい。
また、本実施例および上記変形例のいずれにおいても止め板フレーム12は金型搬送台車に固定されていてもよく、金型搬送台車のフレームの一部に止め板フレームと同様の機能を持たせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例の金型搬入装置の金型待機位置における外観図。
【図2】本発明の実施例の金型搬入装置の金型押出し完了位置における外観図。
【図3】本発明の実施例の金型搬入装置の金型押出し完了位置における上面図。
【図4】本発明の実施例の金型搬入装置の金型押出し完了位置における側面図。
【図5】本発明の実施例の金型搬入装置を用いて、成型機の金型取付け位置まで金型を搬入させる際の金型待機位置にある状態を示す図。
【図6】本発明の実施例の金型搬入装置を用いて、成型機の金型取付け位置まで金型を搬入させる際の金型を最端部まで移動させた状態を示す図。
【図7】従来の金型搬入装置を用いて、成型機の金型取付け位置まで金型を搬入させる際の金型待機位置にある状態を示す図。
【図8】従来の金型搬入装置を用いて、成型機に金型を搬入させる際の金型を押し位置まで移動させた状態を示す図。
【図9】従来の金型搬入装置を用いて金型を成型機に搬入した際、金型が金型取付け位置である成型機の中央に到達していない場合に、押し板フレームを戻して金型搬送の不足分に相当するスペーサをセットする状態を説明する図。
【図10】押し板フレームを戻して金型搬送の不足分に相当するスペーサをセットした図9の状態から、再び最端部まで押し板フレームを移動させ、成型機の金型取付け位置まで金型を搬入させる状態を説明する図。
【図11】従来の台車方式による金型搬入装置において金型待機位置にある状態を示す外観図。
【図12】従来の台車方式による金型搬入装置において金型を搬入させるために最端部まで可動ベースを前進させた状態を示す外観図。
【符号の説明】
【0018】
1:モータ
2:スプロケット
3:スプロケット
4:チェーン
5:スプロケット
6:スプロケット
7:スプロケット
8:可動ベース
9:中央ピン
10:クロスフレーム
11:クロスフレーム
12:止め板フレーム
13:押し板フレーム
14:基台
15:キャスター
16:コロコン
17:コロコン
18:チェーン
19:駆動軸
20:ストッパ
21:ストッパ当接部(止め板フレーム)
22:成型機
23:金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型機において用いられる金型を、該成型機に搬入するための金型搬入装置であって、
搬送台車の基台上に移動自在に設けられた可動ベースと、
前記可動ベースを、前記成型機への金型搬入方向に駆動する動力源と、
前記可動ベースに設けられ、前記搬送台車の基台上に積載された金型に当接させて該金型を前記成型機に押し込む押込部材と、
前記押込部材を、前記可動ベースよりも前記金型搬入方向に前進させて、前記金型を前記成型機の金型取付け位置まで移動可能とする押込部材移動手段と、
を有することを特徴とする金型搬入装置。
【請求項2】
前記押込部材移動手段は、
前記可動ベースに中央部を軸支され、前記金型搬入方向の端部側に第一の係合部が設けられたアーム状部材と、
前記アーム状部材を、前記軸支された中央部を中心に回動させるアーム回動部材と、
前記押込部材に形成された前記第一の係合部と嵌合する第一の長穴と、を備え、
前記アーム回動部材により前記アーム状部材と前記可動ベースのなす角度を前記可動ベースの前記金型搬入方向への移動に応じて増加させ、前記第一の係合部が前記第一の長穴中を移動できるように構成し、
前記押込部材を前記可動ベースよりも前記金型搬入方向に前進させることを特徴とする請求項1に記載の金型搬入装置。
【請求項3】
前記第一の長穴は、前記搬送台車の端面と平行状または曲線状であることを特徴とする請求項2に記載の金型搬入装置。
【請求項4】
前記アーム状部材の前記金型搬入方向と反対方向の端部側に設けられた第二の係合部と、
前記アーム回動部材に形成された前記第二の係合部と嵌合する第二の長穴と、を備え、
前記可動ベースの前記金型搬入方向への移動による前記可動ベースとの間隔の増加によって、前記第二の係合部が前記第二の長穴中を移動し、
前記アーム状部材と前記可動ベースのなす角度を増加させるように構成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の金型搬入装置。
【請求項5】
前記第二の長穴は、前記搬送台車の端面と平行状または曲線状であることを特徴とする請求項4に記載の金型搬入装置。
【請求項6】
前記アーム状部材の前記金型搬入方向と反対側に設けられた第三の長穴と、
前記アーム回動部材に設けられた前記第三の長穴と嵌合する第三の係合部と、を備え、
前記可動ベースの前記金型搬入方向への移動による前記可動ベースとの間隔の増加によって、前記第三の係合部が前記第三の長穴中を移動し、
前記アーム状部材と前記可動ベースのなす角度を増加させるように構成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の金型搬入装置。
【請求項7】
前記アーム回動部材に軸支された二本の補助アームを備え、
前記二本の補助アームの先端が、前記アーム状部材の前記金型搬入方向と反対側の部分と回転自在に連結されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の金型搬入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−23576(P2008−23576A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201506(P2006−201506)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】