説明

金型用離型剤の噴霧方法及び噴霧装置

【課題】ノズルからの噴霧開始時期や停止時期に遅れが生ずることを防止し、常に離型剤を適宜の時期に適宜の量だけノズルから噴霧させることができる金型用離型剤の噴霧方法及び噴霧装置を提供する。
【解決手段】シリンダ3,4内を負圧にすることにより離型剤を吸入する吸入工程と、上記シリンダ内を加圧することによりノズル11,12から上記離型剤を噴霧する噴霧工程とを備え、上記吸入工程と噴霧工程との間には、シリンダ内に吸入された空気を外部に排出する空気排出工程を備えてなる金型用離型剤の噴霧方法であり、貯蔵容器2内から離型剤を吸入するシリンダと、上記シリンダ内を減圧及び加圧するピストン5,6と、離型剤を金型の成形面に噴霧するノズルとを備え、上記シリンダには、吸入された空気を流通させるとともに、空気を排出する際に開放する排気用開閉弁17,18が配置された排気用管体21,22が接続されてなる金型用離型剤の噴霧装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型用離型剤の噴霧方法及び噴霧装置に関し、特に、ダイカスト成形や射出成形等の金型の成形面に離型剤を噴霧する金型用離型剤の噴霧方法及び噴霧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト成形や射出成形等においては、成形品の型離れを良好なものとし、または、金型の成形面を冷却する等の目的から、型を開いて成形品を脱型した後に、金型の成形面に離型剤を噴霧している。この金型の成形面に離型剤を噴霧する金型用離型剤の噴霧装置としては、離型剤を貯蔵する貯蔵容器(貯留タンク)と、この貯蔵容器から離型剤を吸入するとともに吐出するポンプと、このポンプから供給された離型剤を金型の成形面に噴霧するノズルと、前記貯蔵容器とポンプとを接続する吸入側配管部材と、前記ポンプとノズルとを接続する吐出側配管部材とを備えてなるものが開示されている(特許文献1参照)。そして、この金型用離型剤の噴霧装置では、上記ポンプにより上記貯蔵容器内の離型剤をポンプ内に吸入する吸入工程と、この吸入工程により吸入された離型剤を吐出して前記ノズルから金型の成形面に噴霧する噴霧工程とにより離型剤を噴霧していた。
【0003】
【特許文献1】特開平8−294745号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ポンプにより貯蔵容器内の離型剤を吸入する際には、吸入側配管部材の途中に形成された継手等から空気が流入したり、該吸入側配管部材の先端に形成された上記ポンプの吸入口から空気が吸入されたりすることにより、上記ポンプ内に空気が流入するとともに、この空気が上記吐出側配管部材内に流入する場合があり、こうした状態において、上記ポンプにより吐出側配管部材内を加圧すると、該吐出側配管部材内の上記空気が圧縮されることとなり、ポンプを駆動させて吐出側配管部材内を加圧した時期に対して、ノズルから離型剤が噴霧される時期が遅れ、また、ポンプを停止しても、即時にノズルからの噴霧が停止されないこととなる。すなわち、上記特許文献1に開示された従来の金型用離型剤の噴霧方法ないし噴霧装置では、ポンプ内や上記吐出側配管部材内に空気が流入することにより、該ポンプの駆動を開始し又は停止する各動作よりも遅れてノズルからの離型剤の噴霧やその停止がされてしまう。
【0005】
特に、ポンプを停止した場合には、上記吐出側配管部材内において圧縮された空気の膨張圧力によりノズルから離型剤が吐出され、本来のポンプによる吐出圧力によるものではないことから、離型剤が霧状に吐出されず水滴となって吐出・落下し、所定量の離型剤が所定の成形面に噴霧されない事態も招くことがある。また、ノズルの先端近傍には、吐出側配管部材を介して流通した離型剤を霧状にするために、噴霧用圧力空気の吐出口が形成され、この吐出口から吐出される噴霧用圧力空気と相まって上記離型剤が霧状となって吐出され、ポンプが停止された場合には、これと同期して上記噴霧用圧力空気を供給するエアコンプレッサからの圧力空気の供給も停止されるところ、ポンプが停止された後に上記ポンプ内に流入した空気の膨張圧力により離型剤がノズルから吐出される時期では既に上記エアコンプレッサからの圧力空気の供給も停止されていることから、やはり離型剤が霧状に吐出されず水滴となって吐出・落下してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来の技術による金型用離型剤の噴霧方法及び噴霧装置が有する課題を解決するために提案されたものであって、ポンプの上流側において内部に空気が流入し、この流入した空気の圧縮によりノズルからの噴霧開始時期や停止時期に遅れが生ずることを防止し、常に離型剤を適宜の時期に適宜の量だけノズルから噴霧させることができる金型用離型剤の噴霧方法及び噴霧装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、第1の発明(請求項1記載の発明)は、金型用離型剤の噴霧方法に係るものであって、シリンダ内を負圧にすることにより、該シリンダに吸入側流通経路を介して接続された貯蔵容器内から離型剤を該シリンダ内に吸入する吸入工程と、上記シリンダ内を加圧することにより、該シリンダに吐出側流通経路を介して接続されたノズルから上記離型剤を金型の成形面に噴霧する噴霧工程と、を備えるとともに、上記吸入工程と噴霧工程との間には、上記シリンダ内を加圧することにより、該吸入工程において離型剤とともに該シリンダ内に吸入された空気を外部に排出する空気排出工程を備えてなることを特徴とするものである。
【0008】
この第1の発明では、上記吸入工程と噴霧工程との間には、上記シリンダ内を加圧することにより、該吸入工程において離型剤とともに該シリンダ内に吸入された空気を外部に排出する空気排出工程を備えてなることから、シリンダ内は勿論、該シリンダからノズルまでの吐出側流通経路内にも空気は介在しない。したがって、上記噴霧工程において、上記シリンダ内を加圧しても、該シリンダ内の空気や吐出側流通経路内の空気が圧縮されることはなく、このため、シリンダ内の加圧が開始されれば即座にノズルから離型剤が噴霧するとともに、該シリンダ内の加圧動作が終了されれば即座にノズルからの噴霧は停止する。すなわち、この発明に係る金型用離型剤の噴霧方法によれば、シリンダ内の加圧及び加圧の停止による噴霧動作の応答性は極めて良好なものとなるとともに、常に離型剤を適宜の時期に適宜の量だけノズルから噴霧させることができ、ひいては、金型による成形工程のリードタイムの短縮にも大きく寄与することができる。
【0009】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記金型は、固定側金型と可動側金型とからなり、前記シリンダは、上記固定側金型に対応した固定側シリンダと、上記可動側金型に対応した可動側シリンダとからなり、前記ノズルは、上記固定側金型に対応した固定側ノズルと、上記可動側金型に対応した可動側ノズルとからなり、前記吐出側流通経路は、上記固定側シリンダから上記固定側ノズルまでの固定側流通経路と、上記可動側シリンダから上記可動側ノズルまでの可動側流通経路とからなり、前記吸入工程は、上記固定側シリンダ内に離型剤を吸入する固定側吸入工程と、上記可動側シリンダ内に離型剤を吸入する可動側吸入工程とを備え、前記噴霧工程は、上記固定側金型の成形面に離型剤を噴霧する固定側噴霧工程と、上記可動側金型の成形面に離型剤を噴霧する可動側噴霧工程とを備えてなり、前記空気排出工程において、上記固定側吸入工程により上記固定側シリンダ内に吸入された空気は、該固定側シリンダ内から外部に排出するとともに、上記可動側吸入工程により上記可動側シリンダ内に吸入された空気は、該可動側シリンダ内から外部に排出するようにしてなることを特徴とするものである。
【0010】
この第2の発明では、固定側金型と可動側金型とに対して、離型剤を噴霧する吐出側流通経路及び噴霧工程がそれぞれ別個であることから、それぞれのシリンダ内の加圧及び加圧の停止による噴霧動作の応答性はさらに良好なものとなり、ひいては、金型による成形工程のリードタイムの短縮にもさらに大きく寄与することができる。また、この発明では、固定側金型と可動側金型に対して離型剤を噴霧するそれぞれの吐出側流通経路及び噴霧工程が固定側と可動側とで別個であることから、固定側金型と可動側金型とに対する離型剤の噴霧の時期と量とを、該固定側金型と可動側金型とに形成された成形面に対応して、それぞれ別個に調整することが可能となる。さらに、空気排出工程において、固定側吸入工程により固定側シリンダ内に吸入された空気は、固定側シリンダ内から外部に排出するとともに、可動側吸入工程において可動側シリンダ内に吸入された空気は、可動側シリンダ内から外部に排出するようにしてなることから、固定側シリンダ内及び可動側シリンダ内は勿論、固定側流通経路内及び可動側流通経路内にも空気は存在しないので、さらに固定側金型と可動側金型とに対する離型剤の噴霧の時期と量とを、該固定側金型と可動側金型とに形成された成形面に対応して、それぞれ別個に調整することが可能となる。
【0011】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、金型用離型剤の噴霧装置に係るものであって、貯蔵容器内から離型剤を吸入するシリンダと、このシリンダ内に配置され駆動手段の駆動により往復動して上記シリンダ内を減圧及び加圧するピストンと、上記シリンダ内に吸入された離型剤を金型の成形面に噴霧するノズルと、上記貯蔵容器とシリンダとに接続され離型剤が流通する吸入側配管部材と、上記シリンダとノズルとに接続され離型剤が流通する吐出側配管部材と、を備え、上記シリンダには、このシリンダ内を加圧することにより該シリンダ内に吸入された空気を流通させるとともに、該空気を外部に排出する際に開放する排気用開閉弁が配置された排気用管体が接続されてなることを特徴とするものである。
【0012】
この第3の発明では、上記シリンダには、このシリンダ内を加圧することにより該シリンダ内に吸入された空気を流通させるとともに、該空気を外部に排出する際に開放する排気用開閉弁が配置された排気用管体が接続されてなり、上記シリンダ内を加圧して該シリンダ内の空気を上記排気用管体に配置された排気用開閉弁を開放して排出することにより、シリンダ内は勿論、該シリンダから上記ノズルまでの吐出側流通経路内にも空気は介在しない。したがって、上記ノズルから離型剤を噴霧すべく上記シリンダ内を加圧しても、該シリンダ内の空気や吐出側流通経路内の空気が圧縮されることはなく、このため、シリンダ内の加圧が開始されれば即座にノズルから離型剤が噴霧するとともに、該シリンダ内の加圧動作が終了されれば即座にノズルからの噴霧は停止する。すなわち、この発明に係る金型用離型剤の噴霧装置によれば、シリンダ内の加圧及び加圧の停止による噴霧動作の応答性は極めて良好なものとなるとともに、常に離型剤を適宜の時期に適宜の量だけノズルから噴霧させることができ、ひいては、金型による成形工程のリードタイムの短縮にも大きく寄与することができる。
【0013】
なお、上記シリンダ内に配置されたピストンを駆動する駆動手段は、油圧シリンダや空圧シリンダであっても良く、また、請求項4記載の発明のように、サーボモータによるものであっても良い。また、上記ノズルは、1個に限定されるのもではなく、例えば、上記金型の成形面の大きさや形状に応じて複数個により構成しても良いとともに、請求項5記載の発明のように、上記金型が固定側金型と可動側金型とにより構成される場合には、該固定側金型の成形面に離型剤を噴霧する固定側ノズルと、可動側金型の成形面に離型剤を噴霧する可動側ノズルとが別々に備えられていても良い。このような構成により、上記成形面の全域に亘り離型剤をむらなく噴霧することができるとともに、各ノズルに接続されるそれぞれの吐出側配管部材に独立した流量調節弁を配置することにより上記成形面の区域別に離型剤の噴霧量を調節することができる。また、上記ノズルは、固定式でも着脱式でも良く、着脱式にすることにより、異種の金型に対応したノズルと容易に交換することができる。さらに、上記ノズル近傍の吐出側配管部材をフレキシブルに構成することにより、ノズルから噴霧される離型剤の噴霧角度を容易に調節することができる。
【0014】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、上記第3の発明において、前記ピストンの駆動手段は、サーボモータであることを特徴とするものである。
【0015】
この第4の発明では、前記ピストンの駆動手段は、サーボモータであり、該サーボモータは、前記ピストンの作動量や作動速度を各設定値に対して正確に作動することができるとともに、前記金型の成形面に離型剤を噴霧する必要時期に迅速に応答して作動することができることから、離型剤は常時安定した流量と流速とにより流通されるとともに、離型剤を設定の時期に設定の量だけ前記ノズルから噴霧させることができる。また、前記サーボモータは、電気制御系のアクチュエータとして使用することにより、前記ノズルからの噴霧時期や噴霧量を容易に制御することができる。
【0016】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)は、上記第3又は4の発明において、前記金型は、固定側金型と可動側金型とからなり、前記シリンダは、上記固定側金型に対応した固定側シリンダと、上記可動側金型に対応した可動側シリンダとを備え、前記ノズルは、上記固定側金型に対応した固定側ノズルと、上記可動側金型に対応した可動側ノズルとを備え、前記吐出側配管部材は、上記固定側金型に対応した固定側の吐出側配管部材と、上記可動側金型に対応した可動側の吐出側配管部材とからなり、前記排気用管体は、上記固定側シリンダに接続された固定側排気用管体と、上記可動側シリンダに接続された可動側排気用管体とからなることを特徴とするものである。
【0017】
この第5の発明では、固定側金型と可動側金型とに対して離型剤を噴霧するシリンダ、吐出側配管部材及びノズルが固定側と可動側とでそれぞれ別個であることから、それぞれのシリンダ内の加圧及び加圧の停止による噴霧動作の応答性はさらに良好なものとなり、ひいては、金型による成形工程のリードタイムの短縮にもさらに大きく寄与することができる。また、この発明では、固定側金型と可動側金型に対して離型剤を噴霧するシリンダ、吐出側配管部材及びノズルが固定側と可動側とでそれぞれ別個であることから、固定側金型と可動側金型とに対する離型剤の噴霧の時期と量とを、該固定側金型と可動側金型とに形成された成形面に対応して、それぞれ別個に調整することが可能となる。さらに、固定側シリンダ内に吸入された空気は、固定側排気用管体を経て外部に排出され、可動側シリンダ内に吸入された空気は、可動側排気用管体を経て外部に排出されることから、固定側シリンダ内及び可動側シリンダ内は勿論、固定側流通経路内及び可動側流通経路内にも空気は存在しないので、さらに固定側金型と可動側金型とに対する離型剤の噴霧の時期と量とを、該固定側金型と可動側金型とに形成された成形面に対応して、それぞれ別個に調整することが可能となる。
【0018】
なお、上記固定側ノズルと可動側ノズルとは、それぞれ1個に限定されるのもではなく、例えば、前記固定側金型の成形面と可動側金型の成形面とのそれぞれの大きさや形状に応じて複数個により構成しても良い。このような構成により、前記各成形面の全域に亘り離型剤をむらなく噴霧することができるとともに、前記固定側ノズルに接続される前記固定側の吐出側配管部材と、前記可動側ノズルに接続される前記可動側の吐出側配管部材とに、それぞれ独立した流量調節弁を配置することにより前記成形面の区域別に離型剤の噴霧量を調節することができる。
【発明の効果】
【0019】
上記第1の発明(請求項1記載の発明)に係る金型用離型剤の噴霧方法では、吸入工程と噴霧工程との間には、シリンダ内に吸入された空気を外部に排出する空気排出工程を備えてなることから、シリンダ内は勿論、該シリンダからノズルまでの吐出側流通経路内にも空気は介在しない。したがって、噴霧工程において、上記シリンダ内を加圧しても、該シリンダ内の空気や吐出側流通経路内の空気が圧縮されることはなく、シリンダ内の加圧及び加圧の停止による噴霧動作の応答性は極めて良好なものとなるとともに、常に離型剤を適宜の時期に適宜の量だけノズルから噴霧させることができ、ひいては、金型による成形工程のリードタイムの短縮にも大きく寄与することができる。その結果、金型の成形面に所定の噴霧量の離型剤をバラツキなく安定的に噴霧できるので離型性を向上させることができるとともに、リードタイムが短縮できるので金型による成形品の生産性の向上及び原価低減を図ることができる。
【0020】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)では、固定側金型と可動側金型とに対して離型剤を噴霧する吐出側流通経路及び噴霧工程が固定側と可動側とでそれぞれ別個であることから、噴霧動作の応答性はさらに良好なものとなり、ひいては、金型による成形工程のリードタイムの短縮にもさらに大きく寄与することができる。また、この発明では、固定側金型と可動側金型に対して離型剤を噴霧する吐出側流通経路及び噴霧工程が固定側と可動側とでそれぞれ別個であることから、固定側金型と可動側金型とに対する離型剤の噴霧の時期と量とを、それぞれ別個に調整することが可能となる。さらに、空気排出工程において、固定側シリンダ内に吸入された空気は固定側シリンダ内から外部に排出するとともに、可動側シリンダ内に吸入された空気は可動側シリンダ内から外部に排出するようにしてなることから、固定側金型と可動側金型とに対する離型剤の噴霧の時期と量とを、該固定側金型と可動側金型とに形成された成形面に対応して、それぞれ別個に調整することが可能となる。その結果、金型の成形面に所定の噴霧量の離型剤をバラツキなく安定的に噴霧できるので離型性をさらに向上させることができるとともに、リードタイムが短縮できるのでさらに金型による成形品の生産性の向上及び原価低減を図ることができる。
【0021】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)に係る金型用離型剤の噴霧装置では、シリンダには、空気を外部に排出する排気用管体が接続されてなり、上記シリンダ内の空気を上記排気用管体に配置された排気用開閉弁を介して排出することにより、シリンダ内は勿論、該シリンダから上記ノズルまでの吐出側流通経路内にも空気は存在しない。したがって、上記シリンダ内を加圧しても、該シリンダ内の空気や吐出側流通経路内の空気が圧縮されることはなく、シリンダ内の加圧及び加圧の停止による噴霧動作の応答性は極めて良好なものとなるとともに、常に離型剤を適宜の時期に適宜の量だけノズルから噴霧させることができ、ひいては、金型による成形工程のリードタイムの短縮にも大きく寄与することができる。その結果、金型の成形面に所定の噴霧量の離型剤をバラツキなく安定的に噴霧できるので離型性を向上させることができるとともに、リードタイムが短縮できるので金型による成形品の生産性の向上及び原価低減を図ることができる。
【0022】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)では、ピストンの駆動手段は、サーボモータであり、該サーボモータは、ピストンの作動量や作動速度を各設定値に対して正確に作動することができるとともに、金型の成形面に離型剤を噴霧する必要時期に迅速に応答して作動することができることから、離型剤は常時安定した流量と流速とにより流通されるとともに、離型剤を設定の時期に設定の量だけノズルから噴霧させることができる。また、前記サーボモータは、電気制御系のアクチュエータとして使用することにより、前記ノズルからの噴霧時期や噴霧量を容易に制御することができる。その結果、金型の成形面に所定の噴霧量の離型剤をバラツキなくさらに安定的に噴霧できるので離型性を向上させることができる。
【0023】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)では、固定側金型と可動側金型とに対して離型剤を噴霧するそれぞれのシリンダ、吐出側配管部材及びノズルが固定側と可動側とで別個であることから、噴霧動作の応答性はさらに良好なものとなり、ひいては、金型による成形工程のリードタイムの短縮にもさらに大きく寄与することができる。また、この発明では、固定側金型と可動側金型に対して離型剤を噴霧するそれぞれのシリンダ、吐出側配管部材及びノズルが固定側と可動側とで別個であることから、固定側金型と可動側金型とに対する離型剤の噴霧の時期と量とを、それぞれ別個に調整することが可能となる。さらに、固定側シリンダ内に吸入された空気は、固定側排気用管体を経て外部に排出され、可動側シリンダ内に吸入された空気は、可動側排気用管体を経て外部に排出されることから、固定側金型と可動側金型とに対する離型剤の噴霧の時期と量とを、該固定側金型と可動側金型とに形成された成形面に対応して、それぞれ別個に調整することが可能となる。その結果、金型の成形面に所定の噴霧量の離型剤をバラツキなく安定的に噴霧できるので離型性をさらに向上させることができるとともに、リードタイムが短縮できるのでさらに金型による成形品の生産性の向上及び原価低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための金型用離型剤の噴霧装置に係る最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明し、該噴霧装置の動作を述べながら金型用離型剤の噴霧方法を詳細に説明する。
【0025】
この実施の形態に係る金型用離型剤の噴霧装置1は、図2に示すダイカストマシンMの金型を構成する固定側及び可動側の金型Da,Dbに、成形品を脱型する際の離型性を高める離型剤をそれぞれ噴霧するものである。そして、この金型用離型剤の噴霧装置1は、図1に示すように、貯蔵容器2内から離型剤を吸入する固定側のシリンダ3と可動側のシリンダ4とを備えてなり、一方の固定側のシリンダ3内には、固定側のサーボモータ7の駆動により往復動して該シリンダ3内を加圧及び減圧する固定側のピストン5が挿入されるとともに、他方の可動側のシリンダ4内には、可動側のサーボモータ8の駆動により往復動して該シリンダ3内を加圧及び減圧する可動側のピストン6が挿入されている(図3参照)。また、上記固定側のシリンダ3の上流には、該シリンダ3内に吸入された離型剤を図2に示す固定側の金型Daの成形面Faに噴霧する6個の固定側のノズル11が配置されるとともに、上記可動側のシリンダ4の上流には、該シリンダ4内に吸入された離型剤を可動側の金型Dbの成形面Fbに噴霧する6個の固定側のノズル12が配置されている。
【0026】
また、上記固定側のシリンダ3の吸入側であって、該シリンダ3と貯蔵容器2との間には、離型剤を流通させる固定側の吸入側配管部材13が接続されるとともに、上記可動側のシリンダ4の吐出側であって、該シリンダ4と貯蔵容器2との間には、離型剤を流通させる可動側の吸入側配管部材14が接続されている。また、上記固定側のシリンダ3の吐出側であって、該シリンダ3と固定側のノズル11との間には、離型剤を流通させる固定側の吐出側配管部材15が接続されるとともに、上記可動側のシリンダ4の吐出側であって、該シリンダ4と可動側のノズル12との間には、離型剤を流通させる可動側の吐出側配管部材16が接続されている。また、上記固定側のシリンダ3には、該シリンダ3内を加圧することにより該シリンダ3内に吸入された空気を流通させ、該空気を外部に排出する際に開放する固定側の排気用開閉弁17が配置された固定側の排気用管体21が接続されているとともに、上記可動側のシリンダ4には、該シリンダ4内を加圧することにより該シリンダ4内に吸入された空気を流通させ、該空気を外部に排出する際に開放する可動側の排気用開閉弁18が配置された可動側の排気用管体22が接続されている。
【0027】
この金型用離型剤の噴霧装置1が配置されるダイカストマシンMは、図2に示すように、床面に設置された本体部Maの前方側に固定側のプラテンPcが固定され、この固定側のプラテンPcの前方に向かって突設された4本の案内軸Gには、可動側のプラテンPdが、固定側のプラテンPcに対面するとともに、図示しない駆動手段により固定側のプラテンPcに接近又は離間すべく往復移動可能に支承されている。これらのうち、固定側のプラテンPcには固定側の金型Daが固定されるとともに、可動側のプラテンPdには可動側の金型Dbが固定されている。そして、可動側の金型Dbが固定側の金型Daに最も接近し、対面するそれぞれの図示しない密着面が密着した状態において該金型Da,Dbのそれぞれの成形面Fa,Fbにより図示しないキャビティ(成形空間)が形成される。また、固定側のプラテンPcの上部には、ロボット10が配置され、このロボット10の5ないし6軸制御可能なマニピュレータ19の先端部には、後述する金型用離型剤の噴霧装置1を構成する固定側及び可動側のノズル11,12を有してなる噴霧配管体9が固定されている。
【0028】
そして、このダイカストマシンMでは、離型剤の噴霧工程において、図2に示す可動側の金型Dbが離間して該金型Dbと固定側の金型Daとの間が開いた後、ロボット10の操作により、後述する固定側及び可動側のノズル11,12を固定側及び可動側の金型Da,Dbのそれぞれの成形面Fa,Fbの前面に位置決めする。そして、これらのノズル11,12から金型Da,Dbのそれぞれの成形面Fa,Fbに離型剤を噴霧し、予め設定されたプログラムによるロボット10の駆動により、金型型Da,Dbの前面からノズル11,12を退避させる。次の成形品加工工程において、可動側の金型Dbを固定側の金型Daに接近させるとともに、対面する密着面を閉じて密着させ、該金型Da,Dbのそれぞれの成形面Fa,Fbにより形成されたキャビティ内にアルミニウム系等の溶融金属を圧入することにより、図示しない鋳物の成形品を成形(鋳造)する。次の成形品脱型工程において、可動側の金型Dbを固定側の金型Daから離間させるとともに、前記キャビティ内から成形品を脱型する。
【0029】
次に、金型用離型剤の噴霧装置1は、図1に示すように、固定側の金型Daに離型剤を噴霧する固定側の流通経路(符号は省略する)と、可動側の金型Dbに離型剤を噴霧する可動側の流通経路(符号は省略する)とからなる各々の流通経路が同一の構成として備わっており、各々の流通経路にはそれぞれ独立して離型剤が流通するように構成されている。そこで、固定側の流通経路と可動側の流通経路とが同一の構成でなることから、以下の説明においては、特に固定側と可動側との区別をする場合を除き、固定側の流通経路の各構成要素について説明し、対応する可動側の流通経路の符号を括弧内に表示する。
【0030】
この金型用離型剤の噴霧装置1を構成する固定側及び可動側のシリンダ3(4)は、図3(b)に示すように、往復動するピストン5(6)との協動によりピストン型のポンプ機構をなすものであって、取付け部材41(42),43(44),43(44),45(46),45(46)を介して基板47(48)に固定されている。このシリンダ3(4)は、両端開口の円筒状に形成され、その内周3a(4a)には、ピストン5(6)が往復動可能に挿入されている。このシリンダ3(4)の内周3a(4a)の前端側にはポート部材25(26)が圧入され、このポート部材25(26)とピストン5(6)との間には吸入室3b(4b)が形成されている。この吸入室3b(4b)は、ピストン5(6)の外周に嵌入されたOリング31(32)及び2個のオイルシール33(34)と、ポート部材25(26)の小径部外周に嵌入されたOリング35(36)とにより気密が保持ざれている。
【0031】
前記ポート部材25(26)には、シリンダ3(4)の吸入室3b(4b)内と離型剤又は空気が流通する経路であって、後述する吸入側配管部材13(14)と接続され貯蔵容器2から吸入室3b(4b)内に離型剤を吸入する吸入ポート25a(26a)と、吐出側配管部材15(16)と接続され吸入室3b(4b)内に吸入された離型剤を吐出する吐出ポート25b(26b)と、排気用管体21(22)と接続され吸入室3b(4b)内の空気を排出する排気ポート25c(26c)とが形成されている。なお、シリンダ3(4)の設置方向は、吸入室3b(4b)内に空気が吸入された場合に、この空気が吸入室3b(4b)内の上記ポート部材25(26)側に滞留すべく、該ポート部材25(26)側を上方にして設置されている。
【0032】
また、シリンダ3(4)の内周3a(4a)の後端側には案内部材27(28)が挿入され、この案内部材27(28)の前方側近傍のシリンダ3(4)には、ピストン5(6)が前進した際に、該ピストン5(6)の後端部と案内部材27(28)の前端部とにより形成される図示しない空気室内に空気を流通させる空気口3c(4c)が形成されている。すなわち、この空気口3c(4c)は、ピストン5(6)が前進する際に前記空気室内が負圧にならないよう該空気口3c(4c)から空気を吸入して前進可能となし、同様に、ピストン5(6)が後退する際に前記空気室内が大気圧以上にならないよう該空気口3c(4c)から空気を排気して後退可能となすものである。
【0033】
また、上記案内部材27(28)には、ピストン5(6)を往復駆動するための駆動ロッド51(52)が挿通され、この駆動ロッド51(52)は、先端部が、該先端部に螺刻された雄ねじ部51a(52a)によりピストン5(6)に螺着されるとともに、後端部がボルト53(54)により取付け部材55(56)に螺着されている。この取付け部材55(56)は、移動板57(58)に固定され、この移動板57(58)は、後述するリニアガイド機構を構成するボールナット63(64),63(64)に固定された移動ブロック61(62),61(62)に固定されている。この移動ブロック61(62),61(62)は、基板47(48)上に立設された枠体65(66)と起立板67(68)とに架設されてなる案内板71(72)により、進退自在に案内されている(図3(b)に示す右方が前進側)。そして、上記枠体65(66)と起立板67(68)とには、ボールねじ73(74)が回動自在に支承され、このボールねじ73(74)に螺刻された図示しないボール雄ねじには、図示しない鋼球を介してボールナット63(64)のボール雌ねじが螺合され、該ボールナット63(64)は、ボールねじ73(74)の回動により進退移動する。
【0034】
また、上記基板47(48)と枠体65(66)との後端面には、ブラケット75(76)が固定され、このブラケット75(76)には、サーボモータ7(8)が固定されている。このサーボモータ7(8)は、その出力軸7a(8a)が継手77(78)によりボールねじ73(74)と連結されている。したがって、このサーボモータ7(8)の正回転方向又は逆回転方向への回動により、ボールナット63(64)が回動されるとともに、ボールナット63(64)が進退移動され、このボールナット63(64)から移動ブロック61(62),61(62)、移動板57(58)、取付け部材55(56)及び駆動ロッド51(52)を介してピストン5(6)がシリンダ3(4)内において進退移動される。なお、上記ピストン5(6)の1ストロークごとにシリンダ3(4)内から吐出できる離型剤の吐出量は、該ピストン5(6)のストローク長(すなわち、1ストローク中におけるサーボモータ7(8)の総回転数の設定)により加減することができる。また、上記シリンダ3(4)内から吐出される離型剤の単位時間当たりの吐出量又は流速は、ピストン5(6)が進退する速度(すなわち、サーボモータ7(8)の単位時間当たりの回転数の設定)により加減することができる。
【0035】
そして、上記吸入室3b(4b)内に離型剤を吸入する際には、ポート部材25(26)の吐出ポート25b(26b)と排気ポート25c(26c)とに接続されたそれぞれの流通経路を閉止し、吸入ポート25a(26a)に接続された流通経路を開放した状態において、ピストン5(6)を後退させると、シリンダ3(4)の吸入室3b(4b)内は負圧になり、この吸入室3b(4b)内に上記吸入ポート25a(26a)から離型剤が吸入される。また、上記吸入室3b(4b)内の空気を排出する際には、吸入ポート25a(26a)と吐出ポート25b(26b)とに接続されたそれぞれの流通経路を閉止し、排気ポート25c(26c)に接続された流通経路を開放した状態において、ピストン5(6)を設定量だけ前進させると、吸入室3b(4b)内は加圧され、この吸入室3b(4b)内の上部に滞留した空気が、上記排気ポート25c(26c)を経由して排出される。また、上記吸入室3b(4b)内の離型剤を吐出する際には、吸入ポート25a(26a)と排気ポート25c(26c)とに接続されたそれぞれの流通経路を閉止し、吐出ポート25b(26b)に接続された流通経路を開放した状態において、ピストン5(6)を前進させると、吸入室3b(4b)内は加圧され、この吸入室3b(4b)内の離型剤が、上記吐出ポート25b(26b)を経由して吐出される。なお、上記各流通経路の開放及び閉止は、各弁の開閉によりなされるものであり、それぞれの弁の詳細は後述する。
【0036】
したがって、シリンダ3(4)の吸入室3b(4b)内に滞留した空気は排出することができるので、空気を排出した後に離型剤を吐出することにより、吸入室3b(4b)内及び吐出側流通経路内が加圧されても圧縮されないことから、吸入室3b(4b)内の加圧及び加圧の停止による噴霧動作の応答性は極めて良好なものとなる。また、吸入室3b(4b)内に吸入された離型剤を吐出する際には、ピストン5(6)により離型剤を直接押し出すものであることから、吸入室3b(4b)内の加圧及び加圧の停止による噴霧動作の応答性はさらに良好なものとなる。
【0037】
次に、離型剤を噴霧する固定側及び可動側のノズル11(12)は、図4又は図5に示す噴霧配管体9の下端部に後述する吐出側流通経路を介してそれぞれ6個ずつ配置されており、噴霧配管体9は、図2に示すロボット10のマニピュレータ19にライナ87を介して固定された上部部材81と、この上部部材81の下方に固定された上部ブロック82と、この上部ブロック82の下方に固定された中間ブロック83と、この中間ブロック83の下方に固定された下部ブロック84と、後述する離型剤用独立開閉弁125,126)を収納する弁体収納ブロック85,86とから構成されている。
【0038】
このノズル11(12)は、図7に示すように、圧力空気を流通させる空気流通管187(188)と、この空気流通管187(188)内に配管され、離型剤を流通させる離型剤流通管137(138)との先端部に配置されている。そして、一方の空気流通管187(188)の先端部には、外套筒91(92)の小径側内周91a(92a)が固定されるとともに、他方の離型剤流通管137(138)の先端部には、この離型剤流通管137(138)内からの離型剤を噴出する離型剤ノズル93(94)が圧入され、この離型剤ノズル93(94)は、上記外套筒91(92)の大径側内周91b(92b)に圧入されている。この離型剤ノズル93(94)は、前記外套筒91(92)に圧入される大外径側円筒部93a(94a)と、この大外径側円筒部93a(94a)に連設された小外径側円筒部93b(94b)とからなり、大外径側円筒部93a(94a)の端部(図示左側)には、前記空気流通管187(188)の外径よりも大きな内径の座ぐり穴93c(94c)が形成されている。この座ぐり穴93c(94c)内の略等分な3箇所には、圧力空気を流通させる空気穴93d(94d)が小外径側円筒部93b(94b)に向かって貫通されているとともに、中心部には、前記離型剤流通管137(138)を圧入するための中心穴93f(94f)が形成されている。また、この離型剤ノズル93(94)の小外径側円筒部93b(94b)の外径は、前記離型剤流通管137(138)の外径と略同一に形成され、その中心部には、前記離型剤流通管137(138)内の離型剤を噴出させる噴出穴93g(94g)が、前記中心穴93f(94f)と連なり貫通されている。
【0039】
また、上記外套筒91(92)の大径側内周91b(92b)の開口側には、前記空気流通管187(188)内からの圧力空気を噴出するとともに、前記空気流通管187(188)からの圧力空気を噴出して霧状の離型剤を噴霧する噴霧ノズル95(96)が圧入されている。この噴霧ノズル95(96)は、外套筒91(92)に圧入される小外径側円筒部95a(96a)と、この小外径側円筒部95a(96a)に連設された大外径側円筒部95b(96b)とからなり、小外径側円筒部95a(96a)の端部(図示左側)には、円周上の略等分な3箇所に開口を有して傾斜し、中心に向かって集合する空気穴95c(96c)が形成されている。この噴霧ノズル95(96)の中心部には、空気穴95d(96d)が、前記離型剤ノズル93(94)の小外径側円筒部93b(94b)との間に空気を流通可能な内径で、前記空気穴95c(96c)の集合部と連なり大外径側円筒部95b(96b)の端部側(図7中右側)に向かって形成されるとともに、噴霧穴95e(96e)が、空気穴95d(96d)よりも大きな内径で連なり、大外径側円筒部95b(96b)の端部に貫通して形成されている。なお、上記外套筒91(92)の内側であって、離型剤ノズル93(94)の大外径側円筒部93a(94a)の図示右端と、噴霧ノズル95(96)の小外径側円筒部95a(96a)の図示左端との間には、空気を流通させる流通空間97(98)が形成されている。
【0040】
そして、噴霧ノズル95(96)から霧状の離型剤を噴霧する際には、図7に示す離型剤流通管137(138)内に上記シリンダ3(4)から吐出された離型剤を流通させるとともに、この離型剤の流通と同期して、空気流通管187(188)内に後述する噴霧用流通経路(符号は省略する)からの圧力空気を流通させるようになっており、一方の離型剤流通管137(138)内からの離型剤は、離型剤ノズル93(94)の噴出穴93g(94g)から噴出される。また、他方の空気流通管187(188)内からの圧力空気は、座ぐり穴93c(94c)、3個の空気穴93d(94d)、流通空間97(98)及び3個の空気穴95c(96c)を経て噴霧ノズル95(96)の空気穴95d(96d)から噴出される。したがって、離型剤ノズル93(94)の噴出穴93g(94g)から噴出される離型剤と、噴霧ノズル95(96)の空気穴95d(96d)から噴出される圧力空気との合流により霧状化された離型剤が、噴霧穴95e(96e)から噴霧される。
【0041】
次に、固定側と可動側とに6個ずつ配置された上記ノズル11(12)に離型剤と圧力空気とを流通させるためのそれぞれの流通経路と、シリンダ3(4)内の空気を排出するための流通経路と、これらの流通経路に配置された作動用部材とについて説明する。
【0042】
これらのうち、離型剤を流通させる離型剤用流通経路であって、図1に示すように、貯蔵容器2とシリンダ3(4)との間の吸入側流通経路には、吸入側配管部材13(14)が接続され、シリンダ3(4)とノズル11(12)との間の吐出側流通経路には、吐出側配管部材15(16)及び分配配管部材121(122)が接続されている。また、シリンダ3(4)内の空気を排出するための流通経路であって、貯蔵容器2とシリンダ3(4)との間には、排気用管体21(22)が接続されている。なお、上記シリンダ3(4)に接続される吸入側配管部材13(14)、吐出側配管部材15(16)及び排気用管体21(22)のそれぞれは、上述したように、図3に示すポート部材25(26)に形成された各ポートを介して接続されているものであって、吸入側配管部材13(14)は吸入ポート25a(26a)に接続され、吐出側配管部材15(16)は吐出ポート25b(26b)に接続され、排気用管体21(22)は排気ポート25c(26c)に接続され、これらの各ポートを介して、シリンダ3(4)の吸入室3b(4b)と連通している。
【0043】
そして、上記離型剤を流通させる離型剤用流通経路であって、一方の吸入側流通経路の吸入側配管部材13(14)には、図1に示すように、該吸入側配管部材13(14)内を流通する異物を濾過するフィルタ101(102)が配置され、このフィルタ101(102)とシリンダ3(4)との間には、離型剤を上流側(シリンダ3(4)側)のみに流通させ、下流側(貯蔵容器2側)へは、逆流抑止作用により流通を抑止する逆止弁103(104)が配置されている。したがって、貯蔵容器2内に貯蔵された離型剤は、ポンプを構成するピストン5(6)を後退させシリンダ3(4)内を負圧にすることにより、上記逆止弁103(104)を流通してシリンダ3(4)内に吸入されるとともに、ピストン5(6)を前進させシリンダ3(4)内を加圧にすることにより、該シリンダ3(4)内の離型剤を後述する吐出側配管部材15(16)へ吐出する際には、上記逆止弁103(104)の逆流抑止作用により下流側への流通(流入)が抑止される。
【0044】
また、上記他方の吐出側流通経路の吐出側配管部材15(16)には、離型剤を上流側(ノズル11(12)側)のみに流通させるための逆止弁105(106)が配置され、この逆止弁105(106)の上流側には、吐出側配管部材15(16)内の圧力が設定圧力に達した際に信号を出力して後述する排気用流通経路の排気用開閉弁17,18を開放させる圧力センサ107(108)が配置されている。この圧力センサ107(108)の上流側には、電磁力の作動により、離型剤の上流側への流通を開放又は閉止させる離型剤用開閉弁111(112)が配置され、この離型剤用開閉弁111(112)の上流側には、固定側の離型剤の単位時間当たり流量を調節する流量調節弁113と、可動側の離型剤の単位時間当たり流量を調節する流量調節弁114とがそれぞれ配置されている。
一方の固定側の流量調節弁113より上流側は、固定側の金型Daに噴霧するための6個のノズル11にそれぞれ対応すべく分配された6つの分配配管部材121がそれぞれ接続されているとともに、他方の可動側の流量調節弁114より上流側は、可動側の金型Dbに噴霧するための6個のノズル11にそれぞれ対応すべく分配された6つの分配配管部材122が接続されている。
【0045】
そして、上記流量調節弁113(114)の上流側であって各分配配管部材121(122)には、図1に示すように、固定側及び可動側の上記各6個のノズル11(12)の単位時間当たり流量を独立して調節可能な独立流量調節弁117(118)が、固定側と可動側とに各6個ずつ配置されている。これらの独立流量調節弁117(118)の上流側には、圧力空気の作動により、離型剤の上流側への流通を開放又は閉止させる離型剤用独立開閉弁125(126)が配置されている。これらの離型剤用独立開閉弁125(126)の吸入側ポート(符号は省略する)と独立流量調節弁117(118)との間には、上流側のみに離型剤を流通させるための個別逆止弁123(124)が配置されるとともに、該離型剤用独立開閉弁125(126)の吐出側ポート(符号は省略する)は上記各6個のノズル11(12)に接続されている。この離型剤用独立開閉弁125(126)の吸入側及び吐出側ポートは、図4又は図6に示すように、噴霧配管体9の上部ブロック82内に上記離型剤用独立開閉弁125(126)の空気圧アクチュエータ127(128)が配置され、この空気圧アクチュエータ127(128)の下方には、該空気圧アクチュエータ127(128)により上下動される開閉弁131(132)が連結されている。この開閉弁131(132)の下端部には、図6に示すように、円錐台状のテーパでなる弁体(符号は省略する)が形成され、この弁体の至近位置には上記テーパと密着可能なテーパ穴でなる弁座133(134)が配置されている。
【0046】
したがって、上記開閉弁131(132)が下降端位置に達した場合には、該開閉弁131(132)の弁体のテーパと弁座133(134)のテーパ穴とが密着し、上記分配配管部材121(122)及び上部ブロック82に固定された継手135(136)内を経て上部ブロック82の流通穴82a(82b)内に達した離型剤を離型剤流通管137(138)へ流通しないように閉止する。また、上記開閉弁131(132)が下降端位置から上昇端した場合には、該開閉弁131(132)の弁体のテーパと弁座133(134)のテーパ穴とが離間し、上記分配配管部材121(122)及び継手135(136)内を経て上部ブロック82の流通穴82a(82b)内に達した離型剤を離型剤流通管137(138)内に流入させ、該離型剤は、図7に示す離型剤ノズル93(94)の噴出穴93g(94g)から噴出される。
【0047】
なお、上記離型剤用独立開閉弁125(126)を作動させる圧力空気の流通経路は、図1に示すように、図示しないコンプレッサ等により圧力空気が常時供給されているエア源に、該エア源からの圧力空気を流通させるエア源側配管部材151が接続されている。このエア源側配管部材151には、圧力空気中の異物を濾過するとともに、水分を排出する排出器付のフィルタ152が配置され、このフィルタ152の上流側には、上流側への圧力空気の圧力を調整して所定圧力に保持するためのレギュレータ153が配置されている。このレギュレータ153の上流側のエア源側配管部材151には、上記離型剤用独立開閉弁125(126)を作動させる作動用流通経路(符号は省略する)用として接続された作動用配管部材154と、後述する噴霧用流通経路用として接続された噴霧用配管部材171と、後述する吹付け用流通経路(符号は省略する)用として接続された吹付け用配管部材191とが、圧力空気を分配可能に接続されている。
【0048】
これらのうち、上記作動用配管部材154の上流側には、上流側への圧力空気の圧力を調整して所定圧力に保持するための作動用レギュレータ155が配置され、この作動用レギュレータ155の上流側には、固定側及び可動側の離型剤用独立開閉弁125(126)に圧力空気を供給すべく分配された作動用分配管部材157(158)が接続されている。この作動用分配管部材157(158)には、電磁力の作動により、圧力空気の上流側への流通を開放又は閉止させるサイレンサ付きの作動空気用開閉弁161(162)が配置されるとともに、この作動空気用開閉弁161(162)よりも上流側は、離型剤用独立開閉弁125(126)を開閉作動させる作動ポート(符号は省略する)に接続されている。こうした構成により、上記作動ポートに圧力空気を供給することにより図6に示す開閉弁131(132)は上昇され、圧力空気の供給を閉止することにより図示しないばねにより開閉弁131(132)は下降される。この開閉弁131(132)が下降端位置に達したときに、該開閉弁131(132)の弁体のテーパと弁座133(134)のテーパ穴とが密着し、分配配管部材121(122)及び継手135(136)内を経て上部ブロック82の流通穴82a(82b)内に達した離型剤を離型剤流通管137(138)へ流通しないように閉止する。
【0049】
そして、上記シリンダ3(4)内の離型剤を吐出側配管部材15(16)へ吐出するには、図1に示す排気用開閉弁17(18)を閉止するとともに、離型剤用開閉弁111(112)及び固定側と可動側とに各6つずつ配置された離型剤用独立開閉弁125(126)をそれぞれ開放し、サーボモータ7(8)の駆動によりピストン5(6)を前進させてシリンダ3(4)内を加圧すると、上記離型剤が吐出側配管部材15(16)内に流入する。この吐出側配管部材15(16)内に流入した離型剤は、逆止弁105(106)、圧力センサ107(108)及び離型剤用開閉弁111(112)を経て、流量調節弁113(114)内を予め設定された単位時間当たり流量により通過する。
【0050】
この流量調節弁113(114)内を通過した離型剤は、固定側と可動側とで各6つに分配された分配配管部材121(122)にそれぞれ配置された独立流量調節弁117(118)内を予め設定された単位時間当たり流量により通過する。この独立流量調節弁117(118)内を通過した離型剤は、個別逆止弁123(124)を通過するとともに、図6に示す分配配管部材121(122)、継手135(136)内及び上部ブロック82の流通穴82a(82b)内を経て、離型剤用独立開閉弁125(126)を構成する開閉弁131(132)の弁体のテーパと、弁座133(134)のテーパ穴との間を通過して、離型剤流通管137(138)内に流入する。この離型剤流通管137(138)内に流入した離型剤は、図7に示す離型剤ノズル93(94)の噴出穴93g(94g)から噴出される。
【0051】
次に、シリンダ3(4)内の空気を排出するための排気用流通経路であって、図1に示すように、貯蔵容器2とシリンダ3(4)のとの間には、排気用管体21(22)が接続されている。この排気用管体21(22)には、電磁力の作動により、シリンダ3(4)内の空気の下流側(貯蔵容器2側)への流通を開放又は閉止させる排気用開閉弁17(18)が配置されているとともに、この排気用開閉弁17(18)とシリンダ3(4)のとの間には、シリンダ3(4)内の空気を下流側のみに流通させ、上流側(シリンダ3(4)側)へは、逆流抑止作用により流通を抑止する逆止弁141(142)が配置されている。なお、上記シリンダ3(4)に接続された排気用管体21(22)は、上述したように、図3に示すポート部材25(26)に形成された排気ポート25c(26c)に接続され、この排気ポート25c(26c)を介してシリンダ3(4)の吸入室3b(4b)と排気用管体21(22)とが連通している。また、上記シリンダ3(4)内の空気が排気用管体21(22)を経て貯蔵容器2内に流入する構成となっている理由は、シリンダ3(4)内から排出される空気中には離型剤が混入している場合があり、この離型剤を回収するためである。
【0052】
そして、上記シリンダ3(4)内の空気を外部へ排出するには、該シリンダ3(4)内に離型剤を吸入した後、図1に示す排気用開閉弁17(18)及び離型剤用開閉弁111(112)を閉止し、サーボモータ7(8)の駆動によりピストン5(6)を前進させてシリンダ3(4)内を加圧する。こうしたシリンダ3(4)内の加圧により、シリンダ3(4)内と離型剤用開閉弁111(112)との間の吐出側配管部材15(16)内の圧力が上昇される。この吐出側配管部材15(16)内の圧力は、圧力センサ107(108)により検出され、その圧力が設定圧力(0.3MPa)まで上昇したとき圧力センサ107(108)から制御信号が出力され、この制御信号に基づき排気用開閉弁17(18)が開放される(図8参照)。この排気用開閉弁17(18)の開放により、シリンダ3(4)内のポート部材25(26)の排気ポート25c(26c)側(図3参照)に滞留していた空気は排気用管体21(22)から排出されるとともに、この空気に混入し又は該空気とともに排出された離型剤は、上記貯蔵容器2内に回収される。この圧力センサ107(108)から制御信号が出力されてから、設定時間後にプログラム制御の指令により排気用開閉弁17(18)を閉止することで、空気の排出動作は終了する(図8参照)。
【0053】
次に、上記離型剤を霧状化させるための圧力空気を供給する噴霧用流通経路について説明する。この噴霧用流通経路は、図7に示す離型剤ノズル93(94)の噴出穴93g(94g)から噴出される離型剤を噴霧化すべく、噴霧ノズル95(96)の空気穴95c(96c)から圧力空気を噴出させるためのものであって、上述したエア源側配管部材151には、このエア源側配管部材151から分配された噴霧用配管部材171が接続されている。この噴霧用配管部材171には、上流側への圧力空気の圧力を調整して所定圧力に保持するための噴霧用レギュレータ172が配置され、この噴霧用レギュレータ172の上流側には、固定側及び可動側の噴霧ノズル95(96)に圧力空気を供給すべく分配された噴霧用分配管部材173(174)が接続されている。この噴霧用分配管部材173(174)には、電磁力の作動により、圧力空気の上流側への流通を開放又は閉止させる噴霧空気用開閉弁175(176)が配置されるとともに、この噴霧空気用開閉弁175(176)よりも上流側の噴霧用分配管部材173(174)は、図5に示す中間ブロック83に固定された継手177(178)に接続されている。
【0054】
この継手177(178)内の図示しない空気の流通穴は、中間ブロック83に形成された流通穴83a(83b)及び流通穴83c(83d)と流通しており、上記噴霧用分配管部材173(174)から供給される圧力空気は、この流通穴83a(83b)及び流通穴83c(83d)から、図6に示す継手部材181(182)に形成された空気穴181a(182a)、継手部材183(184)に形成された空気穴183a(184a)をそれぞれ経て、継手185(186)に止着された空気流通管187(188)内に供給される。この空気流通管187(188)内に供給された圧力空気は、図7に示すように、座ぐり穴93c(94c)、3個の空気穴93d(94d)、流通空間97(98)及び3個の空気穴95c(96c)を経て噴霧ノズル95(96)の空気穴95d(96d)から噴出される。
【0055】
そして、図1に示す排気用開閉弁17(18)を閉止し、離型剤用開閉弁111(112)、作動空気用開閉弁161(162)及び噴霧空気用開閉弁175(176)をそれぞれ開放するとともに、上記シリンダ3(4)を内の離型剤を吐出することにより(図8参照)、図7に示す離型剤ノズル93(94)の噴出穴93g(94g)から噴出される離型剤と、噴霧ノズル95(96)の空気穴95d(96d)から噴出される圧力空気との合流により霧状化された離型剤が、噴霧穴95e(96e)から噴霧される。
【0056】
次に、金型Da(Db)の成形面Fa(Fb)に圧力空気を吹付ける吹付け用流通経路と、水を吹付ける水用流通経路とについて説明する。一方の吹付け用流通経路は、圧力空気の噴出力により上記成形面Fa(Fb)を清掃、乾燥又は冷却するものであって、図1に示すように、上記エア源側配管部材151に、該エア源側配管部材151から分配された吹付け用配管部材191が接続されている。この吹付け用配管部材191には、電磁力の作動により、圧力空気の上流側への流通を開放又は閉止させるサイレンサ付きの吹付け用開閉弁192が配置されるとともに、この吹付け用開閉弁192の上流側には、上流側のみに圧力空気を流通させるための逆止弁193が配置されている。この逆止弁193の上流側の共用配管部材199は、後述する水用流通経路により供給される水の流通経路と共用されるものであって、図5に示す中間ブロック83に固定された継手194に接続され、この継手194内の図示しない空気の流通穴は、図4に示す中間ブロック83に形成された流通穴83fと流通するとともに、この流通穴83fから流通穴83g(83h)に流通している。そして、この流通穴83g(83h)に流通された圧力空気は、継手195(196)に止着された吹付け管197(198)を経て、該吹付け管197(198)のノズル部197a(198a)から噴出される。
【0057】
また、他方の水用流通経路は、水の噴出力により上記成形面Fa(Fb)を清掃又は冷却するものであって、図1に示すように、図示しないポンプ等により所定圧力により水が常時供給されている水源に、該水源からの水を流通させる水用配管部材201が接続されている。この水用配管部材201には、電磁力の作動により、水の上流側への流通を開放又は閉止させる水用開閉弁202が配置されるとともに、この水用開閉弁202の上流側には、上流側のみに水を流通させるための逆止弁203が配置されている。この逆止弁203の上流側の共用配管部材199は、後述する吹付け用流通経路により供給される圧力空気の流通経路と共用されるものであって、上述したように、図5に示す共用配管部材199、継手194内の図示しない空気の流通穴、図4に示す中間ブロック83の流通穴83f及び流通穴83g(83h)に流通している。そして、この流通穴83g(83h)に流通された圧力空気は、継手195(196)に止着された吹付け管197(198)を経て、該吹付け管197(198)のノズル部197a(198a)から噴出される。なお、上述した貯蔵容器2に貯蔵される離型剤は、油性又は水溶性の何れでも良いとともに、原液のまま又は希釈された希釈液の何れでも良い。
【0058】
次に、上述した構成からなる金型用離型剤の噴霧装置1の動作を述べながら、金型用離型剤の噴霧方法について説明する。なお、固定側の流通経路と可動側の流通経路との構成はそれぞれ同一であるとともに、同一の時期に同一の動作をすることから、以下の説明においては、必要な場合を除き、固定側と可動側とを区別せずに説明し、固定側と可動側との符号を並列に表示する。
【0059】
上記金型用離型剤の噴霧装置1は、前述したように、図2に示すダイカストマシンMの金型を構成する固定側の金型Da及び可動側の金型Dbに、成形品を脱型する際の離型性を高める離型剤をそれぞれ噴霧するものであって、ダイカストマシンMにより成形品を成形加工する工程サイクル中において噴霧するものである。このダイカストマシンMによる工程は、図8に示すように、シリンダ3,4に離型剤を吸入する離型剤吸入工程、シリンダ3,4内の空気を排出する空気排出工程(図8の表示は排気)、金型Da,Dbの成形面Fa,Fbに離型剤を噴霧する離型剤噴霧工程、成形加工の準備をするための成形準備工程、成形品を加工する成形品加工工程、脱型の準備をするための脱型準備工程、成形加工された成形品を脱型する成形品脱型工程、次の加工サイクルに入る前の待機工程とから構成されている。
【0060】
これらのうち、図8に示す離型剤吸入工程においては、予め、図2に示すように、可動側の金型Dbが固定側の金型Daから離間された際には、図1に示す排気用開閉弁17,18、離型剤用開閉弁111,112、作動空気用開閉弁161,162及び噴霧空気用開閉弁175,176がそれぞれ閉止された状態にしておく。これらが閉止された状態において、サーボモータ7,8の逆回転方向への駆動により、ポンプを構成するピストン5,6を後退させてシリンダ3,4内を負圧にすることにより、貯蔵容器2に貯蔵された離型剤を吸引し、該離型剤は、吸入側配管部材13,14に配置されたフィルタ101,102及び逆止弁103,104を経てシリンダ3,4内に吸入される(図3参照)。そして、ピストン5,6が後退端に達した時点で、サーボモータ7,8を停止させて離型剤吸入工程の動作を終える。
【0061】
次の空気排出工程においては、前の離型剤吸入工程においてサーボモータ7,8が停止された後、(図1に示す排気用開閉弁17,18、離型剤用開閉弁111,112、作動空気用開閉弁161,162及び噴霧空気用開閉弁175,176は閉止されたまま)サーボモータ7,8の正回転方向への駆動によりピストン5,6を前進させてシリンダ3,4内を加圧すると、シリンダ3,4内と離型剤用開閉弁111,112との間の吐出側配管部材15,16内の圧力が上昇される。その圧力が設定圧力である0.3MPaまで上昇したとき圧力センサ107,108から制御信号が出力され、この制御信号に基づく指令により排気用開閉弁17,18が開放される(図8参照)。なお、シリンダ3,4内が設定圧力(0.3MPa)まで上昇されることにより、このシリンダ3,4内に混入した空気は、該シリンダ3,4の上方に配置された排気ポート25c(26c)側(図3参照)に集中し易くなるとともに、上記圧力により付勢されて短時間に排出される。
【0062】
この排気用開閉弁17(18)の開放により、シリンダ3,4内のポート部材25,26の排気ポート25c,26c側(図3参照)に滞留していた空気は排気用管体21,22から排出されるとともに、混入し又は空気とともに排出された離型剤は、貯蔵容器2内に回収される。この圧力センサ107(108)から制御信号が出力されてから、設定時間後にプログラム制御の指令により排気用開閉弁17(18)を閉止することで、空気の排出動作を終える(図8参照)。そして、この空気排出工程の動作によりシリンダ3,4内及び吐出側流通経路内には空気が介在しないので、後述する離型剤噴霧工程において、シリンダ3,4内を加圧しても、該シリンダ3,4内の空気や吐出側流通経路内の空気が圧縮されることはなく、このため、ピストン5,6の動作により噴霧又は噴霧停止がなされる際に噴霧動作の良好な応答性が確保できる。
【0063】
次の離型剤噴霧工程では、ポンプを構成するピストン5,6を継続的に前進させてシリンダ3,4内を加圧するとともに、前の空気排出工程の終了時期に排気用開閉弁17,18が閉止された直後において、離型剤用開閉弁111,112、離型剤用独立開閉弁125,126、作動空気用開閉弁161,162及び噴霧空気用開閉弁175,176をそれぞれ開放することにより、同一の時期に、離型剤の吐出側流通経路では、シリンダ3,4内の離型剤が離型剤用開閉弁111,112の上流側に流通し、作動用流通経路では、圧力空気が作動空気用開閉弁161,162の上流側に流通し、噴霧用流通経路では、圧力空気が噴霧空気用開閉弁175,176の上流側に流通される。これらのうち、吐出側流通経路の離型剤は、上述したように、吐出側配管部材15,16、固定側と可動側とに各6つずつ配置された分配配管部材121,122、図6に示す継手135,136、上部ブロック82の流通穴82a,82b、(作動用流通経路の圧力空気により開放された状態の)離型剤用独立開閉弁125,126、離型剤流通管137,138等を経て、図7に示すノズル11,12を構成する離型剤ノズル93,94の噴出穴93g,94gから噴出される。
【0064】
また、噴霧用流通経路の圧力空気は、噴霧用分配管部材173,174、図5,図6に示す継手177,178、中間ブロック83の流通穴83a,83b及び流通穴83c,83d、継手部材181,182の空気穴181a,182a、継手部材183,184 、空気穴183a,184a、空気流通管187,188等を経て、図7に示すノズル11,12を構成する噴霧ノズル95,96の空気穴95c,96cから噴出される。したがって、離型剤ノズル93,94の噴出穴93g,94gから噴出される離型剤と、噴霧ノズル95,96の空気穴95d,96dから噴出される圧力空気とが合流されるとともに、上記空気穴95d,96dから噴出される圧力空気の噴出圧力により、上記噴出穴93g,94gから噴出される離型剤は霧状化され、この霧状化された離型剤が噴霧ノズル95,96の噴霧穴95e,96eから噴霧される。すなわち、ノズル11の噴霧ノズル95から噴霧される離型剤は、固定側の金型Daの成形面Faに噴霧されるとともに、ノズル12の噴霧ノズル96から噴霧される離型剤は、固定側の金型Dbの成形面Fbに噴霧される(図2参照)。そして、ピストン5,6が後退端に達した時点で、サーボモータ7,8を停止させるとともに、離型剤用開閉弁111,112、離型剤用独立開閉弁125,126、作動空気用開閉弁161,162及び噴霧空気用開閉弁175,176をそれぞれ閉止して離型剤噴霧工程の動作を終える。
【0065】
次の成形準備工程では、ダイカストマシンMにより成形品を加工するための準備工程であって、図2に示す可動側の金型Dbを固定側の金型Daに接近させて、対面する密着面を密着させ、それぞれの成形面Fa,Fbによりキャビティを形成した後、成形準備工程の動作を終える。
【0066】
次の成形品加工工程では、前の成形準備工程により金型Da,Dbのそれぞれの成形面Fa,Fbによりキャビティを形成した後、該キャビティ内に、図示しない手段によりアルミニウム系等の溶融金属を圧入することにより、図示しない鋳物の成形品を成形(鋳造)して成形品加工工程の動作を終える。
【0067】
次の脱型準備工程では、前の成形品加工工程により加工された成形品を金型Da,Dbから脱型するための準備工程であって、可動側の金型Dbを固定側の金型Daから離間させて該固定側の金型Daと可動側の金型Dbとの間を開けた後、脱型準備工程の動作を終える。
【0068】
次の成形品脱型工程では、前の脱型準備工程により固定側の金型Daと可動側の金型Dbとの間が開けられた後、先の成形品加工工程により加工された成形品を金型Da,Dbのキャビティから、図示しない手段により脱型する。この成形品の脱型がなされた後に成形品脱型工程の動作を終える。
【0069】
次の待機工程では、前の成形品脱型工程により成形品が脱型された後の金型Da,Dbのそれぞれの成形面Fa,Fbに、図4に示す吹付け管197,198のノズル部197a,198aから、圧力空気を噴出して上記成形面Fa,Fbを清掃、乾燥又は冷却をすることができる。これらの吹付け管197,198のノズル部197a,198aから圧力空気を噴出する吹付け用流通経路は、上述したように、エア源側配管部材151、フィルタ152及びレギュレータ153、吹付け用配管部材191、吹付け用開閉弁192及び逆止弁193、共用配管部材199、図5に示す継手194、図4に示す中間ブロック83の流通穴83f及び流通穴83g,83h、吹付け管197,198等を経て、該吹付け管197,198のノズル部197a,198aから噴出される。また、上記吹付け管197,198のノズル部197a,198aから、水を噴出して上記成形面Fa,Fbを清掃又は冷却をすることもできる。これらの吹付け管197,198のノズル部197a,198aから水を噴出する水用流通経路は、上述したように、水用配管部材201、水用開閉弁202及び逆止弁203を経た後、上記吹付け用流通経路と共用する共用配管部材199等を経て吹付け管197,198のノズル部197a,198aから噴出される。そして、これらの動作がなされた後に待機工程の動作を終え、ダイカストマシンMにより成形品を成形加工する1サイクルが終了する。
【0070】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、上記固定側及び可動側の金型Da,Dbに離型剤を噴霧するための流通経路は、一方の固定側の金型Daに離型剤を噴霧する固定側の流通経路と、他方の可動側の金型Dbに離型剤を噴霧する可動側の流通経路とが、それぞれ独立した流通経路に限定されるものではなく、共通の流通経路により離型剤を流通させて、固定側のノズル11及び可動側のノズル12からそれぞれ噴出する構成にしても良い。また、上記固定側及び可動側の金型Da,Dbに離型剤を噴霧するための固定側のノズル11及び可動側の12の配置個数は、それぞれ6個に限定されるものではなく、それぞれ1個ないし10個以上により構成することもできる。また、上記固定側のノズル11及び可動側の12からそれぞれ噴霧される離型剤は、霧状化され離型剤ばかりではなく、圧力空気は噴出せずに離型剤のみを金型に噴出することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る金型用離型剤の噴霧装置の実施の形態を示し、各流通経路の模式図である。
【図2】本発明に係る金型用離型剤の噴霧装置の実施の形態を示し、ダイカストマシンに組み込まれた概要図である。
【図3】本発明に係る金型用離型剤の噴霧装置の実施の形態のポンプを示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図4】本発明に係る金型用離型剤の噴霧装置の実施の形態の噴霧配管体を示し、部分的に断面した正面図である。
【図5】本発明に係る金型用離型剤の噴霧装置の実施の形態の噴霧配管体を示し、部分的に断面した側面図である。
【図6】本発明に係る金型用離型剤の噴霧装置の実施の形態の噴霧配管体を示し、図4の部分拡大図である。
【図7】本発明に係る金型用離型剤の噴霧装置の実施の形態のノズルを示す断面図である。
【図8】本発明に係る金型用離型剤の噴霧装置の実施の形態の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0072】
1 金型用離型剤の噴霧装置
2 貯蔵容器
3,4 シリンダ
5,6 ピストン
7,8 サーボモータ
11,12 ノズル
13,14 吸入側配管部材
15,16 吐出側配管部材
17,18 排気用開閉弁
21,22 排気用管体
93,94 離型剤ノズル
95,96 噴霧ノズル
137,138 離型剤流通管
187,188 空気流通管
Da,Db 金型


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内を負圧にすることにより、該シリンダに吸入側流通経路を介して接続された貯蔵容器内から離型剤を該シリンダ内に吸入する吸入工程と、
上記シリンダ内を加圧することにより、該シリンダに吐出側流通経路を介して接続されたノズルから上記離型剤を金型の成形面に噴霧する噴霧工程と、を備えるとともに、
上記吸入工程と噴霧工程との間には、上記シリンダ内を加圧することにより、該吸入工程において離型剤とともに該シリンダ内に吸入された空気を外部に排出する空気排出工程を備えてなることを特徴とする金型用離型剤の噴霧方法。
【請求項2】
前記金型は、固定側金型と可動側金型とからなり、
前記シリンダは、上記固定側金型に対応した固定側シリンダと、上記可動側金型に対応した可動側シリンダとからなり、
前記ノズルは、上記固定側金型に対応した固定側ノズルと、上記可動側金型に対応した可動側ノズルとからなり、
前記吐出側流通経路は、上記固定側シリンダから上記固定側ノズルまでの固定側流通経路と、上記可動側シリンダから上記可動側ノズルまでの可動側流通経路とからなり、
前記吸入工程は、上記固定側シリンダ内に離型剤を吸入する固定側吸入工程と、上記可動側シリンダ内に離型剤を吸入する可動側吸入工程とを備え、
前記噴霧工程は、上記固定側金型の成形面に離型剤を噴霧する固定側噴霧工程と、上記可動側金型の成形面に離型剤を噴霧する可動側噴霧工程とを備えてなり、
前記空気排出工程において、上記固定側吸入工程により上記固定側シリンダ内に吸入された空気は、該固定側シリンダ内から外部に排出するとともに、上記可動側吸入工程により上記可動側シリンダ内に吸入された空気は、該可動側シリンダ内から外部に排出するようにしてなることを特徴とする請求項1記載の金型用離型剤の噴霧方法。
【請求項3】
貯蔵容器内から離型剤を吸入するシリンダと、
このシリンダ内に配置され駆動手段の駆動により往復動して上記シリンダ内を減圧及び加圧するピストンと、
上記シリンダ内に吸入された離型剤を金型の成形面に噴霧するノズルと、
上記貯蔵容器とシリンダとに接続され離型剤が流通する吸入側配管部材と、
上記シリンダとノズルとに接続され離型剤が流通する吐出側配管部材と、を備え、
上記シリンダには、このシリンダ内を加圧することにより該シリンダ内に吸入された空気を流通させるとともに、該空気を外部に排出する際に開放する排気用開閉弁が配置された排気用管体が接続されてなることを特徴とする金型用離型剤の噴霧装置。
【請求項4】
前記ピストンの駆動手段は、サーボモータであることを特徴とする請求項3記載の金型用離型剤の噴霧装置。
【請求項5】
前記金型は、固定側金型と可動側金型とからなり、
前記シリンダは、上記固定側金型に対応した固定側シリンダと、上記可動側金型に対応した可動側シリンダとを備え、
前記ノズルは、上記固定側金型に対応した固定側ノズルと、上記可動側金型に対応した可動側ノズルとを備え、
前記吐出側配管部材は、上記固定側金型に対応した固定側の吐出側配管部材と、上記可動側金型に対応した可動側の吐出側配管部材とからなり、
前記排気用管体は、上記固定側シリンダに接続された固定側排気用管体と、上記可動側シリンダに接続された可動側排気用管体とからなることを特徴とする請求項3又は4記載の何れかの金型用離型剤の噴霧装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−110769(P2010−110769A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283537(P2008−283537)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(599177282)株式会社サンメカニック (1)
【Fターム(参考)】