説明

金属キャップ巻締容器及び容器の金属キャップ巻締方法

【課題】先端カール部の外周面側のシール性を損なうことなく、落下強度を改善し得るキャップ巻締タイプの金属キャップ巻締容器および容器の金属キャップ巻締方法を提供する。
【解決手段】 金属製の口頸部11を有する容器本体10と、口頸部11に被着される金属製のキャップ20とを備え、キャップ20の天板部21裏面には口頸部11の上端縁に設けられた先端カール部12に密接するシール材30が設けられ、天板部21とスカート部22の角部には天板部21を小径に絞ってシール材30を先端カール部12の外周側の側面に密接させる絞り部23が設けられ、スカート部22には容器口頸部11に設けられた雄ねじ部13の形状に倣って成形される雌ねじ部24が設けられた金属キャップ巻締容器において、絞り部23と先端カール部12とによって圧縮されるシール材30の圧縮部分31に落下時の衝撃を吸収する衝撃吸収機能を持たせたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器、特にPETボトルやボトル缶などの金属キャップを容器口頸部に巻き締めてねじを成形するプラスチック製または金属製の容器及び容器の金属キャップ巻締方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のキャップ巻締タイプの金属容器は、特許文献1に記載のように、金属製の口頸部を有する容器本体と、口頸部に被着される金属製のキャップとを備え、キャップの天板部裏面には口頸部の上端縁に密接するシール材が設けられ、天板部とスカート部の角部には天板部を小径に絞ってシール材を口頸部上端縁の外周側の側面に密接させる絞り部が設けられ、スカート部には容器口頸部に設けられた雄ねじ部の形状に倣って成形される雌ねじ部が設けられていた。
【0003】
しかし、絞り部をシール材を介して容器口頸部上端部に密接させているので、落下してキャップの角部に衝撃が加わった場合に口頸部上端縁に直接衝撃が作用し、衝撃によって口頸部上端縁が変形しやすい。口頸部上端縁が変形すると、キャップと口頸部上端縁の間隔が局部的に大きくなってシール漏れが発生しやすくなり、容器としての落下強度が二重巻締による飲料・食缶と比較して低く、高所からの落下等の手荒な扱いを受けた場合の漏洩などによる密封不良発生が多いという問題があった。
鋭意研究した結果、絞り部を設けない方が落下時の漏洩不良が発生しないことがわかった。これは落下時の衝撃でキャップの角が変形しても、キャップの角と口頸部上端縁の間の空間で変形が吸収され、先端シール部が変形しないものと考えられる。しかし、絞り部を設けないと、内圧,外圧作用時の静的密封性が低下してしまう。
【特許文献1】特開2003−261159
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記した従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、静的密封性を損なうことなく、落下強度を改善し得るキャップ巻締タイプの金属キャップ巻締タイプの容器および容器の金属キャップ巻締方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、口頸部を有する容器本体と、前記口頸部に被着される金属製のキャップとを備え、キャップの天板部裏面には口頸部上端縁に密接するシール材が設けられ、天板部とスカート部の角部には天板部を小径に絞ってシール材を口頸部上端縁の外周側の側面に密接させる絞り部が設けられ、スカート部には容器口頸部に設けられた雄ねじ部の形状に倣って成形される雌ねじ部が設けられた金属キャップ巻締容器において、絞り部と口頸部上端縁とによって圧縮されるシール材の圧縮部分に、落下時の衝撃を吸収可能とする衝撃吸収手段を設けたことを特徴とする。
請求項2に係る発明は、衝撃吸収手段はシール材自体によって構成されることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、絞り部の絞り径を口頸部上端縁の外径より1.4〜2.2mm程度大径とし、かつ天板部の天面位置からの絞り深さを0.8〜2.4mmの範囲に設定したことを特徴とする。
【0006】
請求項4に係る発明は、前記絞り深さをd[mm]とし、絞り径をH[mm]、口頸部上端縁外径をD[mm]としたとき、口頸部上端縁外径Dに対して、絞り深さdと絞り径Hが、式d≦2・(H−D−1)の関係となることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、容器が金属製であり、口頸部上端縁にはカール部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項6に係る発明は、天板部と該天板部の外径端から垂下するスカート部とを備えた金属製キャップの中間成形体を容器口頸部に被着し、プレッシャブロックの下面に開口するボア内に出没自在に挿入される天板押さえ部によって前記中間成形体の天板部を押圧して天板部裏面に設けられたシール材を容器口頸部の上端縁に押し付け、プレッシャブロックのボア開口縁によって天板部とスカート部の角部を天板部の天面より所定量押し込んで絞り部を形成し、絞り部によってシール材を口頸部上端縁の外側面に押し付け、前記スカート部に口頸部に設けられた雄ねじ部に倣った雌ねじ部を成形して固定する容器の金属キャップ巻締方法において、プレッシャブロックの円筒状工具のボア径を口頸部上端縁の外径より1.4〜2.2mm程度大径とし、かつ天板部の天面位置からボア開口縁の押し込み深さを0.8〜2.4mmの範囲に設定したことを特徴とする。
請求項7に係る発明は、押し込み深さをdr[mm]とし、ボア径をB[mm]、容器の口頸部上端縁外径をD[mm]としたとき、口頸部上端縁外径Dに対して押し込み深さdrとボア径Bが、式dr≦2・(B−D−1)の関係となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、絞り部と口頸部上端縁間のシール材の圧縮部分に衝撃吸収機能を持たせたので、倒立状態での落下時の衝撃がシール材の圧縮部分の衝撃吸収手段によって吸収され、耐落下衝撃性が向上し、流通時に不当な取扱を受けても不良品の発生を押さえられる。
請求項2に係る発明によれば、シール材自体に衝撃吸収機能を持たせることによって耐落下衝撃性を向上させることができ、特別な構成が不要である。
【0009】
請求項3に記載の数値の範囲に設定すれば、落下衝撃を効果的に吸収することができる。衝撃吸収機能は、絞り部の絞り深さを浅くする、絞り径を広くすることで高くなる。一方で、絞り深さが浅すぎたり、絞り径が広すぎる場合は、シール材がほとんど圧縮されないため静的密封性(内・外圧負荷)が劣ってくる。そこで、絞り深さと絞り径を適度な範囲で選択する必要がある。
実験によると、絞り径と口頸部上端縁の外径との差が1.4mm以下になると耐落下衝撃性が悪くなり、2.2mmを越えると静的密封性が悪くなる。1.4mm〜2.2mmの範囲であれば耐落下衝撃性の改善が認められ静的密封性も良好であった。
また、絞り深さが2.4mmを越えると耐落下衝撃性が悪くなり、0.8mm以下になると静的密封性が悪くなり、0.8mm〜2.4mmの範囲であれば、耐落下衝撃性の改善が認められ静的密封性も良好であった。
【0010】
請求項4記載の数式を満足するように設定すれば、より効果的に落下衝撃を吸収することができる。
請求項5のように金属製容器で口頸部上端縁にカール部を有する容器に対しては、変形や傷を負いやすいカール部を保護する上で特に有効である。
【0011】
請求項6によれば、プレッシャブロックのボア径が請求項2の絞り部の絞り径に対応し、天板押さえ部からボア開口縁までの寸法が請求項2の絞り深さに対応しており、プレッシャブロックの形状寸法を設定するだけで、適正な範囲のキャップの絞り部を成形して耐落下衝撃性に優れた金属キャップ巻締容器を実現できる。
請求項7に記載の数式を満たすよう設定すれば、より効果的に耐落下衝撃性に優れた金属キャップ巻締容器を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る容器を示している。
この容器1は金属製容器いわゆるボトル缶で、金属製の容器口頸部11を有する容器本体10と、天板部21と天板部21の外径端から垂下するスカート部22とを有し容器口頸部11に被着される金属製のキャップ20と、を備えている。
キャップ20の天板部21裏面には容器口頸部11の上端縁に設けられた先端カール部12に密接するシール材30が設けられ、天板部21とスカート部22の角部には天板部21を小径に絞った絞り部23が設けられ、絞り部23によってシール材30を先端カール部12の外周側の側面に押し付けて、シール面圧を高めている。また、スカート部22には、容器口頸部11に設けられた雄ねじ部13の形状に倣って成形される雌ねじ部24が設けられている。先端カール部12は、図示例では断面円形状に丸めた構成であるが、丸形状に限定されない。
また、容器口頸部11外周には、雄ねじ部13の下方に環状に突出する所定幅の段部14が設けられ、スカート部22の下端には段部14下縁に係合する係合部26が設けられている。この係合部26と雌ねじ部13の間に、キャップ開封時にねじ切られる脆弱部15が設けられ、開封された否かを確認する開栓確認部を構成している。
【0013】
そして、絞り部23と先端カール部12とによって圧縮されるシール材30の圧縮部分31に落下時の衝撃を吸収する衝撃吸収手段が設けられている。衝撃吸収手段は別途衝撃吸収材を介在させてもよいが、この実施の形態ではシール材30自体によって構成している。シール材30としては、シール機能と共に衝撃吸収性を備えた材料、たとえば、スチレン系熱可塑性エラストマー等が用いられる。この例の他にも、ポリエチレン,ポリプロピレンでもよい。
【0014】
絞り部23は、天板部21の上面から半径方向外方に向けて徐々に下方への傾斜が大きくなる湾曲形状で、下端部に絞り成形時に工具が当接する工具当接痕部231が形成されている。絞り部23の傾斜角度は、下端部において最も大きくなる。工具当接痕部231は肩部25を介してスカート部22につながっている。
肩部25は、工具当接痕部231から半径方向外方に向かって徐々に下方への傾斜が大きくなるように傾斜する湾曲形状で、工具当接痕部231は、絞り部23の湾曲形状と肩部25の湾曲形状との境界部に位置し凹状に窪んだ形状となっている。条件によっては、絞り部から肩部25にかけて連続する湾曲面に構成され、工具当接痕部231が窪んでいない場合もある。
【0015】
シール材30の衝撃吸収機能は、絞り部の絞り深さdを浅くする、絞り径Hを広くすることで高くなる。一方で、絞り深さdが浅すぎたり、絞り径Hが広すぎる場合は、シール材30がほとんど圧縮されないため静的密封性(内・外圧負荷)が劣ってくる。そこで、絞り深さdと絞り径Hを適度な範囲で選択する必要がある。ここで、絞り径Hは工具当接痕部231の径、絞り深さは天板部21の天面位置から工具当接痕部231までの寸法である。
【0016】
図2(A),(B)は、上記した金属容器のキャップ巻締工程の説明図である。
すなわち、天板部201と天板部201の外径端から垂下するスカート部202とを備えた金属製キャップの中間成形体200を金属製の容器口頸部11に被着し、プレッシャブロック100の下面に開口するボア101内に出没自在に挿入される天板押さえ部102によって中間成形体200の天板部201を押圧して天板部201裏面に設けられたシール材30を容器口頸部11の上端縁に設けられた先端カール部12に押し付け、プレッシャブロック100のボア101の開口縁101aによって天板部201とスカート部202の角部203を天板部の天面より所定量押し込んで絞り部23を形成し、絞り部23によってシール材30を先端カール部12の外側面に押し付け、スカート部202に口頸部11に設けられた雄ねじ部13に倣った雌ねじ部24を成形して固定するようになっている。
【0017】
天板押さえ部102は円柱形状で、プレッシャブロック100のボア101内に摺動自在に挿入され、ボア101の上底には天板押さえ部102の上方への移動を規制するストッパ部103が設けられ、天板押さえ部102のボア101内への没入量が規定される。天板押さえ部102とボア101の上底間には天板押さえ部102をボア101から下方に押し出す方向に付勢するスプリング104が介装され、自由状態では天板押さえ部102の下面はボア101の開口縁101aとほぼ同一位置に位置している。
【0018】
絞り部成形時にはプレッシャブロック100がキャップの中間成形体200を圧縮する方向に相対移動し、天板押さえ部102が天板部201に当接し、天板部201を押さえながらスプリング104が収縮して天板押さえ部102がボア101内に没入していき、ボア101の開口縁101aによってキャップの中間成形体200の角部203を絞っていく。天板押さえ部102がストッパ部103に当接した時点で角部203の絞り成形は終了すると共にシール材30が所定の圧縮荷重によって圧縮される。成形された絞り部23の工具当接痕部231はボア開口縁101aの当接痕である。
【0019】
一方、スカート部202の雌ねじ部24の成形は、プレッシャブロック100によってシール材30を先端カール部12に押し付けた状態で、ネジローラ110をスカート部22に押し付けて、容器口頸部11に設けられた雄ねじ部13の形状に倣って雌ねじ部24を成形する。同時に、スカートローラ120をスカート部22の下端に押し付け、スカート部22の下端を容器口頸部11の段部14下縁に折り込んで固定するようになっている。
【0020】
プレッシャブロック100の形状は、主にボア101の内径であるボア径Bと押し込み深さであるリフォームデプスdrにより規定される。ボア径Bは成形されたキャップ20の工具当接痕部231の絞り径Hに対応する。また、リフォームデプスdrは、ボア101の開口縁101aからストッパ部103に当接した上限位置の天板押さえ部102の下面までの深さであり、キャップ20の絞り部23の絞り深さdに対応する。
耐落下衝撃性の向上は、
(i) リフォームデプスdr(絞り部23の絞り深さd)を浅くする、
(ii)ボア径B(絞り径H)を広くする、
ことで達成される。
【0021】
リフォームデプスdr(絞り部23の絞り深さd)が深いと、絞り部23の湾曲面が先端カール部12に近づくと共に下端部付近が垂直になるまで絞られ、シール材30の圧縮量が絞り部23の上端から下端まで全域に亘って大きくなる(圧縮部分の残厚は薄くなる)。一方、リフォームデプスdr(絞り深さd)が浅いと絞り部23の湾曲面が、先端カール部12に近づかず、また、絞り部23の下端部の傾斜角度も垂直になるまで絞られないので、先端カール部12に近寄らず、圧縮量は小さくなる(圧縮部分の残厚は厚くなる)。
【0022】
また、ボア径B(絞り径H)が狭いと、絞り部23の湾曲面が先端カール部12に近づき、シール材30の圧縮部分31の残厚は薄くなる。一方、ボア径B(絞り径H)が広いと絞り部23の湾曲面が、先端カール部12から遠ざかり、圧縮部分31の残厚は厚くなる。
シール材30の圧縮部分31の残厚が薄いとキャップ20に加わった衝撃が直接先端カール部12に伝達されてしまい損傷を受けやすいが、圧縮部分31の残厚が厚いと、シール材30は柔軟性を有し、弾性変形および変形に対する粘性抵抗によって衝撃を効果的に吸収することができる。
【0023】
耐落下衝撃性は、上記(i),(ii)より向上するが、一方でリフォームデプスdr(絞り深さd)が浅すぎたり、ボア径B(絞り径H)が広すぎる場合は、シール材30がほとんど圧縮されないため静的密封性(内・外圧負荷)が劣ってくるので、適度な範囲に選択する必要がある。
圧縮部分31の衝撃吸収機能を効果的に発揮する範囲としては、プレッシャブロック100のボア径B(絞り部23の絞り径H)を先端カール部12の外径Dより1.4〜2.2mm程度大径とし、リフォームデプスdr(絞り深さd)を0.8〜2.4mmの範囲に設定することが効果的であった。圧縮前のシール材30の元厚t1は1.0mm程度の場合、圧縮後の圧縮部分の残厚t2は0.8mm程度とすることが好適である。圧縮部分31の残厚t2の測定位置は、図2(B)に示すように、絞り部23と先端カール部12との間の最小厚みt2であるが、圧縮前の元厚t1の測定位置は、図2(A)に示すように、先端カール部12の頂点位置よりもやや内側に位置する部分である。この元厚t1の測定部分が、絞込みによって外方に引っ張られ、圧縮部分31の残厚t2の測定位置まで移動する。この元厚t1の測定位置は実際のシール材30の変形状態に応じて決められる。
【0024】
表1は、このように形成された金属容器について、10度傾斜面への単体倒立落下強度に与える影響を調べた結果である。なお、このときの金属容器のカール部12の外径Dはφ34mm、口頸部11のノズル径(呼び径)はφ38mmである。
実験は、リフォームデプスdrが0.8mm,1.6mm,2.4mmの3種類について、それぞれボア径Bがφ35.4mm(D+1.4),35.8mm(D+1.8),36.2mm(D+2.2)の組み合わせの合計9種類の形状のプレッシャブロックを用い、それぞれヘッド荷重を50,75,100,125,150kgfで巻き締めた多数のサンプルを用意し、40cm,50cmの高さから10度傾斜面に5回づつ落下させた場合の漏洩回数をカウントした。
充填・レトルト条件は、内容物がコーヒー飲料、充填条件が87〜90℃/190g、レトルト条件が125℃−30min、レトルト後の内圧が25〜30cmHgの条件である。
【0025】
リフォームデプスdrが0.8mmの場合、漏洩はほぼゼロであった。
リフォームデプスdrが1.6mmの場合、ボア径Bがφ35.4mm(D+1.4)では、50cmの高さで5回すべてで漏洩が認められたが、40cmからでは漏洩本数が減少し改善傾向が見られた。また、ボア径Bがφ35.8mm(D+1.8)では、40cmでほとんど漏洩がなく、50cmでも漏洩が減少し、36.2mm(D+2.2)では全く漏洩が無かった。
【0026】
リフォームデプスdrが2.4mmの場合、ボア径Bがφ35.4mm,φ35.8mmと大きくなるに従って改善が認められ、φ36.2mmになると大幅に漏洩の改善が得られた。
上記実験結果から、ばらつきはあるものの、リフォームデプスdrが0.8〜2.4mmで、ボア径Bがφ35.4〜36.2mmの範囲であれば、落下衝撃を吸収する効果はあるものと思量される。
好ましい範囲としては、リフォームデプスdrが0.8mmではボア径がφ35.4〜36.2mmの範囲、リフォームデプスdrが1.6mmではボア径Bがφ35.8〜36.2mmの範囲、リフォームデプスdrが2.4mmでボア径Bがφ36.2mmの範囲である。
【0027】
図3は上記試験結果をグラフにしたものである。
漏洩がほぼゼロの場合を◎、漏洩が若干あるものの改善効果が高い場合を○、改善効果が小さいものを△とし、◎と○の部分の範囲は、直線L,M,Nで囲まれる三角形の領域A1であり、この領域A1であれば改善効果が高い。
この領域A1は、
dr≦2・B−70
B ≦36.2
dr≧0.8
の範囲である。
ボア径Bはキャップの絞り径Hに対応し、リフォームデプスdrはキャップ20の絞り深さdに対応するので、絞り深さdと絞り径Hの関係で表すと、
d≦2・H−70
H≦36.2
d≧0.8
となる。
さらに、直線O,M,Nで囲まれる領域A2を選択すれば、漏洩をほぼゼロにできる。
この領域A2は、
dr≦B−34.6
B≦36.2
dr≧0.8
の範囲である。
この関係も、キャップ20の絞り深さdと絞り径Hの関係で表すと、
d≦H−34.6
H≦36.2
d≧0.8
となる。
また、リフォームデプスが最低0.8mm程度でボア径が最大36.2mm程度であれば、静止時のシール性も損なわれない。
【0028】
また、図3の結果をカール部外径をD[mm]とした場合に拡張すると、
領域A1は、
dr≦2・(B−D−1)
B≦D+2.2
dr≧0.8
キャップ20の絞り深さdと絞り径Hの関係で表すと、
d≦2・(H−D−1)
H≦D+2.2
d≧0.8
領域A2は、
dr≦B−D−0.6
B≦D+2.2
dr≧0.8
キャップ20の絞り深さdと絞り径Hの関係で表すと、
d≦H−D−0.6
H≦D+2.2
d≧0.8
となる。また、リフォームデプスが最低0.8mm程度でボア径が(D+2.2)mm程度あれば、静止時のシール性も損なわれることはない。
【0029】
なお、本発明の金属キャップ巻締容器は、絞り部のシール面圧が低いので、加温して常圧になるような状態の容器、すなわち常温では陰圧の内容物の金属キャップ巻締容器として好適である。
また、本発明は、金属キャップを巻き締めることができる口頸部を有する容器であれば材質は問わないが、口頸部上端縁が落下による割れが起こりにくい、プラスチック,金属製の容器に特に有効である。
【0030】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る金属キャップ巻締容器を示すもので、同図(A)は同図(B)の要部拡大断面図、同図(B)はキャップ嵌合部の半縦断面図である。
【図2】図2(A),(B)は図1の金属容器のキャップ巻締工程を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は表1の漏洩試験結果をリフォームデプスとボア径の関係で示したグラフである。
【符号の説明】
【0032】
1 金属容器
10 容器本体、
11 容器口頸部、12 先端カール部(口頸部上端縁)、13 雄ねじ部、14 段部
15 脆弱部
20 キャップ
21 天板部、22 スカート部
23 絞り部
231 工具当接痕部
24 雌ねじ部
25 肩部
30 シール材
31 圧縮部分
d 絞り深さ、H 絞り径、D カール部外径(口径部上端縁外径)
100 プレッシャブロック
101 ボア,101a 開口縁
102 天板押さえ部、103 ストッパ部
104 スプリング
110 ネジローラ,120 スカートローラ
dr リフォームデプス(押し込み深さ)、B ボア径


【特許請求の範囲】
【請求項1】
口頸部を有する容器本体と、前記口頸部に被着される金属製のキャップとを備え、
該キャップの天板部裏面には口頸部の上端縁に密接するシール材が設けられ、前記天板部とスカート部の角部には天板部を小径に絞ってシール材を口頸部上端縁の外周側の側面に密接させる絞り部が設けられ、前記スカート部には容器口頸部に設けられた雄ねじ部の形状に倣って成形される雌ねじ部が設けられた金属キャップ巻締容器において、
絞り部と口頸部上端縁とによって圧縮されるシール材の圧縮部分に、落下時の衝撃を吸収可能とする衝撃吸収手段を設けたことを特徴とする金属キャップ巻締容器。
【請求項2】
衝撃吸収手段はシール材自体によって構成される請求項1に記載の金属キャップ巻締容器。
【請求項3】
絞り部の絞り径を口頸部上端縁の外径より1.4〜2.2mm程度大径とし、かつ天板部の天面位置からの絞り深さを0.8〜2.4mmの範囲に設定したことを特徴とする請求項2に記載の金属キャップ巻締容器。
【請求項4】
前記絞り深さをd[mm]とし、絞り径をH[mm]、口頸部上端縁外径をD[mm]としたとき、口頸部上端縁外径Dに対して、絞り深さdと絞り径Hが、式d≦2・(H−D−1)の関係となることを特徴とする請求項3に記載の金属キャップ巻締容器。
【請求項5】
容器が金属製であり、口頸部上端縁にはカール部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの項に記載の金属キャップ巻締容器。
【請求項6】
天板部と該天板部の外径端から垂下するスカート部とを備えた金属製キャップの中間成形体を容器口頸部に被着し、
プレッシャブロックの下面に開口するボア内に出没自在に挿入される天板押さえ部によって前記中間成形体の天板部を押圧して天板部裏面に設けられたシール材を容器口頸部の上端縁に押し付け、
プレッシャブロックのボア開口縁によって天板部とスカート部の角部を天板部の天面より所定量押し込んで絞り部を形成し、該絞り部によってシール材を口頸部上端縁の外側面に押し付け、
前記スカート部に口頸部に設けられた雄ねじ部に倣った雌ねじ部を成形して固定する容器の金属キャップ巻締方法において、
前記記プレッシャブロックのボア径を口頸部上端縁の外径より1.4〜2.2mm程度大径とし、かつ天板部の天面位置からボア開口縁の押し込み深さを0.8〜2.4mmの範囲に設定したことを特徴とする容器の金属キャップ巻締方法。
【請求項7】
前記押し込み深さをdr[mm]とし、ボア径をB[mm]、容器の口径部上端縁外径をD[mm]としたとき、口径部上端縁外径Dに対して押し込み深さdrとボア径Bが、式dr≦2・(B−D−1)の関係となることを特徴とする請求項6に記載の容器の金属キャップ巻締方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−56564(P2006−56564A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240657(P2004−240657)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】