金属コーティングを含む結合された非金属粒子を備えるセンサーチップ
本発明は、少なくとも1つの表面を備える基質と、及び非金属コア及び金属又は金属合金から作製されたコーティングを有する粒子の層とを含むチップであって、各非金属コアが、概して、少なくとも1つの他の非金属コア及び/又は基質表面を備える、金属で囲まれた接触点を形成することを特徴とするチップを提供する。本発明は、チップを調製する方法であって、基質の表面上に非金属粒子を吸着させる工程と、金属又は金属合金から製造されたシェルを提供するために非金属粒子上に金属コロイドを吸着させる工程とを含む方法、及びこの方法によって入手できるチップをさらに提供する。チップは、分析物を検出するための光学デバイスにおいて使用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属コーティングを備える非金属粒子の層を含むチップ、このチップを調製する方法、このチップを含む光学デバイス及びこのチップを使用する分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イムノアッセイ又はハイブリダイゼーションアッセイのような現代のバイオ分析法の大多数は、分析物を検出するために、蛍光標識などの標識の使用を必要とする。しかしこのような標識の使用は、多くの理由から望ましくない。測定前のサンプルを洗浄する必要があることで、多大な時間を浪費し、一過性の相互作用、低親和性の結合事象及び結合動態の観察を妨害する可能性もある。さらに、標識の導入には費用がかかり、望ましくない方法、および時には予測できない方法で試験中の生体系を変化させることがある。最後に、標識効率についての知識が不十分であれば、生物医学的分析において間違った結果が生じることがある。
【0003】
標識を使用せずに分析物の検出を可能にする技術の1つには、表面プラズモン共鳴法(SPR)が含まれる。表面プラズモンは、金属薄膜と誘電材料との界面で自由電子を集団で振動させる伝搬波である。波の伝搬は界面での誘電定数に影響されるため、界面での吸着プロセスを高感度で検出できる。SPRセンサーは、例えば商標名BIAcoreの下で米国ニュージャージー州ピスカタウェイのPharmacia Biosensorから市販されている。
【0004】
これらのSPRセンサーの主な制限は、表面プラズモンが金層内などにおいて、かなり長距離に渡って伝搬するため、タンパク質アレイ又はDNAアレイなどの同時に行なわれる小型生物学的アッセイにおいて必要とされる、極めて様々な分析物の検出のために使用が阻害されるという事実である。
【0005】
金ナノ粒子を使用して限局性又はコロイド状SPRの現象を利用するという提案がなされてきた。WO03/050291は、ガラスなどの光学的に透明な基質上に金又は銀ナノ粒子を沈着させることによって得られるセンサーについて記載している。US2003/0174384A1は、金表面上における、いわゆる金ナノシェルの使用について記載している。
【0006】
EP0965835A2及びSensors and Actuators B2000,63,pp.24−30は、その後に金コーティングが熱蒸着によってその上に形成され、その結果、キャップ形状の金ナノ粒子が形成される単層のポリスチレン粒子の形成について記載している。これらのセンサーチップは、良好な感受性を示すと報告されている。
【0007】
【特許文献1】国際公開第03/050291号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0174384号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0965835号明細書
【非特許文献1】"Sensors and Actuators" B2000,63,pp.24−30
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先行技術を考慮すると、本発明の基本的な目的は、分析物を検出において改善された適合性を示す光学デバイス及びセンサーチップを提供することである。
【0009】
本発明のまた別の目的は、標識を使用せずに様々な分析物の平行検出を可能にする分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的を達成するために、本発明は、少なくとも1つの、任意で誘電性の表面を備える基質、及び少なくとも1つの表面上に、非金属コア及び金属又は金属合金から製造されたコーティングを有する粒子の層を含むチップであって、各非金属コアが、概して、少なくとも1つの他の非金属コア及び/又は基質表面を備える、金属で囲まれた接触点、いわゆる開口部を形成することを特徴とするチップを提供する。
【0011】
本発明は、チップを調製する方法であって、
基質の表面上に非金属粒子を吸着させる工程と、及び、引き続いて、
非金属粒子上に金属又は金属合金のコロイドを吸着させる工程と、
又はその代わりに、非金属粒子上に金属クラスター又は金属合金クラスターをスパッタリングする工程とを含む方法及びこの方法によって入手可能なチップも提供する。
【0012】
本発明は、分析物を検出するための光学デバイスであって、本発明のチップ、このチップを照射するための光学系、及びこのチップ表面から反射、送信、散乱、又は回折された光線を検出するための検出システムを含む光学デバイスをさらに提供する。
【0013】
最後に、本発明は、分析物の濃度を決定するための方法であって、
本発明によるチップから反射、送信、散乱、又は回折された光線を検出する工程と、
1つ以上の分析物を潜在的に含有する溶液をチップと接触させる工程と、及び
この溶液への曝露中又は曝露後にチップから反射、送信、散乱、又は回折された光線を検出する工程とを含む方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明のチップはEP0965835A2から知られているキャップ形状の金ナノ粒子を含む表面と比較して、及び粒子が閉殻を含むUS2003/0174384Alに記載されたシステムと比較して、感受性において有意な向上を提供することを見いだした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
基質
本チップは、少なくとも1つの表面を備える基質を含む。基質の形状は限定されず、平坦であっても湾曲していてもよい。例えば、基質は、円形断面を有していてよい。しかし、好ましい実施形態では、基質は平坦である。基質は、当業者に既知の任意の好適な材料から構成されてよい。基質として使用するのに好適な材料の具体例には、以下:ガラス;石英;例えばポリカーボネート、ポリオレフィン(例えば、ポリスチレン)及びアクリル及びメタクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート、PMMA)などの有機基質;例えばゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ケイ素、ケイ素由来材料(例えば、溶融石英、シリコーンジェル及びポリシロキサン)及びスズ由来材料(例えば、酸化スズ及びインジウムドープ酸化スズ)などの無機材料などが含まれるがそれらに限定されない。特に好ましい材料は、ガラス、ケイ素及び、例えばポリスチレン又はPMMA基質などの有機基質である。
【0016】
また別の好ましい実施形態では、基質は導波路材料からなる、又は基質を通過する光線信号の伝導を可能にする導波路素子を含む。例えば、導波路材料は屈折率n1を備えるポリマー基質からなり、その中にまた別の材料、例えば屈折率n2>n1を備える第2ポリマーが光線を全内部反射によって第2材料内に誘導できるような方法で一体化される。又は、n2>n1を備える第2材料は、後者の物理化学的修飾によって、例えば選択された領域内で後者のUV処理によって統合材料から生成できる。本発明によると、非金属コアは、好ましくはより高い屈折率を備える材料の表面と接触する。導波路材料の形状は限定されず、平坦であっても湾曲していてもよい。好ましい実施形態では、それは平坦な基質又はファイバーである。
【0017】
基質の表面は、バルク基質材料と同一材料から構成されてよい、又は基質上にコーティングされた個別の金属又は非金属層から構成されてよい。この金属又は非金属層は、単一又は複数の材料及び/又は副層から構成されてよい。副層の各々は、均質であっても、パターン化されてもよい。金属及び非金属領域から構成されたパターン化された副層は、光学信号の共鳴強化及び/又は電気信号の移送を提供できる。パターン化された副層は、基質の選択された領域上への非金属粒子の指向性吸着のために使用することもできる。単一又は複数の材料及び/又は副層の層は、上述した導波路材料であってよい。さらに、単一又は複数の材料及び/又は副層の層は、蛍光色素及び/又は他の光学的に活性な材料を含有していてよい。
【0018】
好ましい実施形態では、基質上にコーティングされた層は、金属又は金属合金、好ましくは遷移金属又は遷移金属合金から構成される。そのような層に使用するために特に好適な金属は、アルミニウム、金、銀、銅、白金、パラジウム、鉛、鉄などが含まれるがそれらに限定されない。金、銀、パラジウム及び/又は白金が好ましい。そのような金属の合金又は不均質混合物もまた使用できる。金属又は金属合金(好ましくは遷移金属又は遷移金属合金)から構成される層の厚さは、好ましくは2〜500nm、より好ましくは5〜100nm、及び最も好ましくは10〜50nmである。
【0019】
金属層は、順に非金属、好ましくは誘電層でコーティングされてよい。非金属層は、好ましくは100nm未満、より好ましくは1〜50nmの厚さを有していてよく、例えば、多価電解質、スピンコートされたポリマー、スピンオンガラス、SiO2、例えばケイ素、ゲルマニウム、又はヒ化ガリウムなどの半導体、又はインジウムドープ酸化スズから構成されてよい。好ましい実施形態では、誘電層は、有機分子の、例えば修飾されてもされなくてもよい、及びSAMを形成しても形成しなくてもよいアルカンチオール又はシランの単層から構成される。
【0020】
好ましい実施形態では、一番上の副層は、様々な親水性基又は化学官能基を備える領域などの別個の物理化学的特性を有する領域を備えてパターン化されてよい。
【0021】
好ましい実施形態では、パターンは、20nm〜100μm,より好ましくは1μm〜30μmの間隙によって分離されている400nm2〜10,000μm2、より好ましくは1μm2〜1,000μm2の化学構造(例えば、正方形)を提供する。また別の好ましい実施形態では、パターンは、様々な化学官能基のマトリックス材料中に包埋された円から構成される。円の好ましい径は、100nm〜100μm、より好ましくは1μm〜30μmの範囲に及ぶ。
【0022】
例えば、パターン化は、マイクロコンタクト・プリンティング、フォトリソグラフィ、又は電子線リソグラフィによって提供できる。
【0023】
化学的にパターン化された金表面(例えば、ポリスチレンなどの有機基質上に直接蒸着させた10〜50nmの金層)は、様々な表面領域間の明確な化学的対照を提供するマイクロコンタクト・プリンティングを用いて調製できる(Kumar et al., Science 1994,263,pp.60−62)。例えば、ミクロ構造エラストマースタンプに第1チオールの溶液(例えば、1オクタデカンチオールの1ミリモル(mM)エタノール溶液)をインクとして補給すると比較的疎水性である表面を提供する。乾燥させた後、スタンプを基質上に柔らかく押し付ける(例えば、10秒間〜1分間)。スタンプを取り除いた後、中間の間隙は、基質を親水性官能化チオール(例えば、16−メルカプトヘキサンデカン酸)の溶液中に浸漬させると充填される。そこで、COOH−及びCH3−末端基を備えるチオレートのパターンを備える表面が得られる。パターンの幾何学的形状及びサイズは、エラストマースタンプのミクロ構造に依存する。好ましい側方寸法は、0.5〜50μmの範囲に及ぶ。好適なパターニングプロセスは、Kaltenpoth et al., Adv.Materials 2003,15,No.13,pp.1113−1118に記載されている。
【0024】
代替的に、表面特性のパターニングは、光化学反応によって達成できる。マスクを通して照射されると、ベンゾフェノン、ジアジリン又はアジド成分などの光不安定性基を備える分子は、明確に規定された構造内の有機マトリックスに結合する。非誘導体化表面領域は、連続工程において他のタイプの分子と反応することができる。表面誘導体化における問題は、望ましくない平行化学反応及び照明中に起こりうる微細化プロセスの結果として発生する。この難題は、固定化プロセス後に定量的に除去される非光不安定性保護基を用いて化学官能基を一時的にマスキングする工程によって克服できる。生成した化学構造の寸法の範囲は、500nm〜1mmの範囲に及ぶ(Ph.D.Thesis,Juergen Pipper,Universitaet Heidelberg,1999)。
【0025】
ナノメートルスケールでの化学的パターニングは、電子線リソグラフィによって達成できる。例えば、Si基質上に沈着したアミノ末端化シランSAMは、アミノ基の電子誘導性開裂によって約80nmの分解能でパターニングすることができる。化学表面構造は、電子線に曝露されていない領域上の非金属粒子の指向性吸着のためのテンプレートとして機能できる(Harnett et al., Appl.Phys.Lett. 2000,76,No.17,2466−2468)。又は、金の上の4’−ニトロ−1,1’−ビフェニル−4−チオレートSAMの末端NO2基は、電子線照射によってNH2基へ変換させることができるが、基礎にある芳香族塗膜は架橋している(“chemical nanolithography”;Goelzhaeuser et al., Adv.Mater. 2001,13,No.11,pp.806−809)。現在達成可能な最小構造は、幅20nmの線である。生成されたNH2−末端を有するナノ構造は、その後の結合反応におけるテンプレートとして、つまり様々な化学表面修飾のための基礎を形成することができる。
【0026】
粒子の非金属コア
好適な非金属コア材料には、二酸化ケイ素、硫化金、二酸化チタン、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ケイ素、ケイ素由来材料(例えば、溶融石英、シリコーンジェル及びポリシロキサン)及びスズ由来材料、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、例えばデンドリマー、ポリ電解質、ヒドロゲル、ミセル及びベシクルなどの高分子が含まれるがそれらに限定されない。粒子は、蛍光色素、光学活性材料(すなわち、第1波長範囲内の光線を吸収し、次に第1波長範囲とは相違する第2波長範囲内の光線を発光する材料)を含有していてよい、及び/又はアミン基又はカルボキシレート基などの粒子を架橋させるのに好適な化学基を用いて官能化することができる。好ましい非金属材料は、誘電材料である。好ましい誘電性コア材料は、二酸化ケイ素又はポリスチレン(好ましくは硫酸塩基を含有する)である。粒子の非金属コアの平均径は、好ましくは10〜1,000nm,より好ましくは50〜700nm、及び最も好ましくは80〜500nmの範囲内である。ある用途のためには、10〜150nmの平均径が特に有益である。導波路材料を含む基質の場合は、平均径は、好ましくは3〜30μmの範囲内である。粒子の形態は、球状又は針形状、キューブ形状、ピラミッド形状などの非球状であってよい。好ましいのは球状コアである。好ましい実施形態では、平均径の15%以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下の標準偏差を有する単分散性非金属コア材料が使用される。粒子の平均径は、レーザー光散乱測定法(レイリー(Rayleigh)散乱)によって決定される。
【0027】
基質上への非金属コアの吸着
金表面の上に金ナノシェルが吸着される、例えばUS2003/0174384A1などに記載されたチップとは対照的に、本発明のチップは、最初に基質上に非金属コアを吸着させる工程によって製造される。これを達成するためには、非金属コア粒子は好適な溶液中に懸濁し、次に基質表面上に吸着される。
【0028】
基質上への粒子の吸着を媒介するためには、一般に知られている任意の方法を利用できる(Himmelhaus and Takei, Phys.Chem.Chem.Phys. 2002,4,pp.496−506)。例えば、表面張力に基づく物理的方法(Lenzmann et al., Chem.Mater. 1994,6,pp.156;Deckman et al., J.Vac.Sci.Techno1. B1989,7,pp.1832)及び毛管力(Rakers et al., Langmuir 1997,13,pp.7121;Denkov et al., Langmuir 1992,8,pp.3183)を適用できる。追加の制御は、ブラウン運動を最小限に抑えるために拘束された幾何学的形状内で水力学的流動場を使用して、又は懸濁液を冷却することによって獲得できる(Burmeister et al., Chem.Eng.Technol. 1998,21,pp.761)。さらに、懸濁液に加えられた高分子によって、非金属粒子と基質との間で引力を誘導するエントロピー力を生成できる(Rudhardt et al., Phys.Rev.Lett. 1998,81,pp.1330)。物理的手段の他に、粒子の表面吸着を制御するためには、化学的方法も適用できる。例えば、界面活性剤などの表面特性を変化させる塩又は化学材料を懸濁液に添加することによって、非金属粒子の表面電荷を変化させる、したがって粒子間の、及び粒子と基質との間の相互作用を変化させることができる(Chen et al., Langmuir 2000,16,pp.7825;Himmelhaus and Takei, Phys.Chem.Chem.Phys. 2002,4,pp.496)。一般に、コロイド状懸濁液の安定化を変化させる、すなわち粒子間及び粒子と表面との間の有効反発力を減少させる任意の方法は、表面上の非金属粒子の吸着質層を形成するために利用できる。
【0029】
好ましい調製スキームでは、好ましくは10〜800nmの平均径を備える単分散の、好ましくは硫酸塩化されたポリスチレン球が以下のようなまた別の加工法を用いて使用される:球懸濁液(好ましくは1〜4容積%の球を含有する)が脱イオン水及び7.6のpHでリン酸緩衝液と(1〜3):(1〜3):(1〜3)の容積比で混合される。混合する前に、EDCがリン酸緩衝液へ加えられる。次に、活性化された懸濁液が5分間以内に基質へ置かれる。自然金上に粒子を吸着させる場合には、緩衝液1mL当たり1〜10mgのEDCの数値は、表面上の粒子吸着の一様性に関して最高の結果を産生する。懸濁液を表面上に置いておき(例えば、1時間)、次に多量の脱イオン水を用いて洗い流す。最後に、このようにして入手したスチレン粒子の層を風乾させる。
【0030】
非金属コアは、単層として、又は多重層として吸着させることができる。単層の形成は特に好ましい。単層を形成するために適用される方法に依存して、粒子は規則的又は無作為の充填を達成できる。無作為の充填は、回折に関連する問題が生じないこと、及び大きな面積の生成の容易さのために好ましい。本発明のコーティングプロセスを用いると、35%超、好ましくは45%超、及び最も好ましくは50%超の極めて高度な無作為充填密度を達成できる。無作為の最密充填のための最高充填密度は、球の無作為順次吸着モデルの妨害限界である完全被覆の54.7%である(Hinrichsen et al., J.Stat.Phys.1986,44,pp.793)。
【0031】
少なくとも2つの相違する平均径の粒子を使用することも好ましいことがある。特に好ましい実施形態では、200〜800nmの範囲内の平均径を備える非金属コアが、10〜100nmの範囲内の平均径を備える非金属コアと組み合わせて使用される。表面上には、小さな粒子が大きな粒子間の間隙を充填できるため、したがって表面上の全粒子密度を増加させることができる。
【0032】
基質に特別仕様のトポロジー、様々な親水性又は化学的官能基などの様々な物理的又は化学的特性の領域を提供するパターン化された層が提供される場合は、非金属コア粒子の吸着は、粒子がこれらの領域の1つのみに、例えば、荷電表面の場合は粒子の電荷と反対の電荷を備える領域に(Chen et al., Langmuir 2000, 16,pp.7825)、親水性/疎水性パターンの場合はより親水性の領域に(Aizenberg et al., Phys.Rev.Lett.2000,84,pp.2997)、及びカルボキシル及びメチル官能基の交互の領域の場合には化学活性カルボキシル基にのみ吸着させるような方法で実施できる。後者の場合には、吸着は、本発明による好ましい方法である、EDCの添加(Himmelhaus and Takei, Phys.Chem.Chem.Phys.2002,4,pp.496−506)によって媒介できる。図3は、金表面上の化学パターンのマイクロコンタクト・プリンティング及び化学パターンへの曝露に先行した粒子懸濁液へのEDCの添加によって作製されたパターン化された粒子単層を示している(詳細については、図1及び実施例1を参照されたい)。
【0033】
導波路素子を含む基質の場合には、非金属粒子と導波路素子との間の光結合を提供するためにパターン化層を使用できる。
【0034】
非金属コアの金属化
本発明の好ましい実施形態によると、金属又は金属合金のコロイド、好ましくは遷移金属又は遷移金属合金が、非金属粒子及び/又は基質を含む表面上に吸着される。
【0035】
コロイドは、球状、又は針様又は三角形などの非球状形を有していてよい。コロイドは、有機シェル内に包埋された場合はパターン状で吸着させることができる(Spatz et al., Macromol.1996,29,,pp.3220)。
【0036】
吸着法は、非金属コアの性質に依存する。例えば、二酸化ケイ素粒子については、表面は、(アミノプロピル)トリメトキシシランで活性化することができ、続いて、溶液中の粒子については、Halas and coworkers in Langmuir 1998,14,pp.5396に記載されたプロセスに類似して、その上にコロイドが引き続いて吸着される。ポリスチレン粒子については、実施例においてより詳細に記載したように、粒子懸濁液のためにLirtsman et al. in Adv. Mater. 2001,13,pp.1253によって記載された方法を採用することができる。
【0037】
コロイドの吸着に引き続いて、(遷移)金属又は(遷移)金属合金被覆を増加させるため、及び/又はコロイド間の電気接触を改良するために、材料に無電界めっき工程(例えば、遷移金属塩及び還元剤を使用する)を受けさせることができる。コロイド沈着及び/又は無電界めっき工程の方法は、Kaltenpoth et al.(Adv.Mater. 2003,15,pp.1113)に記載されたように高導電性コーティングを達成するために1回以上繰り返すことができる。
【0038】
又は、コーティングは、当業者に知られているように、金属又は金属合金、好ましくは遷移金属又は遷移金属合金をスパッタリングする工程によって入手できる。
【0039】
好ましい実施形態では、非金属コアのコーティングは、蛍光色素又は他の光学活性材料を含有していてよい非金属中間層によって相互から分離された、相違する金属副層からなる。そのような非金属中間層は、例えば非金属材料の蒸着又はスパッタリングによって調製できる。又は、詳細には色素又は他の光学活性材料を中間層内に組み込むために、積層集積(LBL:layer−by−layer)技術を使用できる(Campbell et al., Chem.Mater.2005,17,pp.186−190;Decher and Schlenoff (eds.), Multilayer Thin Films, Wiley−VCH2003)。
【0040】
本発明の好ましい実施形態によると、非金属コアのコーティングは、本質的に非金属コアの自由表面を一様な方法で被覆する。すなわち、コーティングは吸着のために利用できる全表面上に形成され、この表面は、それらが他の粒子、又は基質表面に接触するために接近できない表面を除いて粒子表面である。コーティングは、単離されたコロイド、連続コロイド層、又は(遷移)金属又は(遷移)金属合金の連続層から構成されてよい。コーティングの連続性は、例えば、上述したような連続的コロイド沈着及び無電界めっき工程によって対応することができる。
【0041】
チップ表面の特性解析
金がポリスチレン粒子でコーティングされた表面上に熱蒸着し、それによりキャップ形状の金ナノ粒子を備える表面を提供するHimmelhaus and Takei(Phys.Chem.Chem.Phys., 2002,4,496−506;Sensors and Actuators B63(2000)24−30)によって記載された方法とは対照的に、本発明のチップは非金属コアを備える金属コーティング粒子を含み、このとき各非金属コアは、概して、少なくとも1つの他の非金属コア及び/又は基質表面を備える、金属で囲まれた接触点、いわゆる開口部を形成する。
【0042】
粒子のコア間の接触点は、好ましくは、概してそれらがθ>220°の範囲まで金属又は金属合金コーティングによって囲まれるように特徴付けられる(例えば、図5g及びhを参照されたい)。好ましい実施形態では、金属又は金属合金コーティングは、粒子を共通する接触点で連続的に結合する(図8b及びc)。
【0043】
球状粒子の場合は、コーティングは、基質表面に方向付けられた粒子の半球中にも存在する。
【0044】
粒子単層の場合は、各非金属コアは、概して、好ましくは少なくとも1つの他の、好ましくは少なくとも1.5の他の非金属コア及び基質表面の両方に接触する。粒子多重層の場合には、各非金属コアは、概して、好ましくは少なくとも2つの他の非金属コアに接触する。
【0045】
粒子のコア間で概して1未満の接触点が形成される場合には、金属又は金属合金が粒子のコア及び基質を連続方法で被覆する(図5d)。
【0046】
金属コーティングは、好ましくは非金属コアの自由表面、すなわち他のコア又は基質表面と接触していない表面を一様に被覆する。
【0047】
走査型電子顕微鏡(SEM)を使用すると、接触点の存在を証明する、及び囲んでいる金属又は金属合金コーティング(例えば、遷移金属又は遷移金属合金コーティング)及び粒子及び/又は基質間の連続結合の形成を特徴付けることができる。このために、粒子層の一部は両面接着テープ(図6A、6B)によって基質から引き離すことができ、依然として吸着されている粒子と以前に吸着された粒子との境界が分析される。この方法にしたがったSEM分析の実施例は、図6A、6Bのa)〜k)に示されている。
【0048】
非球状粒子の場合は、接触点を検証するために球状粒子について上述した方法と同一の分析方法を適用できる。しかし、開口部の形状、すなわち金属コーティング内の穴は、接触領域の対称性に依存するであろう。
【0049】
分析物を検出するための光学デバイス
本発明のチップは、それらをセンサ及び生化学アレイにおいて使用するために特に有用にする独特の光学特性を示す。金属薄膜、誘電材料、及び金ナノ粒子から構成された積層状構造は、IRからUV領域において明確な吸光特性を示すことが証明されている。そこで本発明は、分析物を検出するための光学デバイスであって、本発明のチップ、このチップを照射するための光学システム、チップ表面から反射、送信、散乱、又は回折された、好ましくは反射された光線を検出するための検出システムを含む光学デバイスをさらに提供する。測定された吸光スペクトルはチップ表面上への有機分子の吸着によって敏感に影響を受けることもまた注目された。驚くべきことに、本発明者らによって見いだされたように、本発明によるチップは、先行技術のチップより有意に高感受性である。
【0050】
照射又は励起光は、非金属コア及び/又は基質の金属コーティング内の伝導電子の集合的振動(プラズモン共鳴)を励起する。これらの集合的振動の励起は、表面から、又は表面を通して反射、散乱、又は回折された光線の消失を誘導し、これは表面プラズモン励起(例えば、共鳴波長及びピーク吸光度)の特性を決定するためにスペクトルによって、例えば、光ファイバー分光計によって分析することができる。共鳴波長は、典型的にはスペクトルの紫外、可視、又は赤外領域内に位置する。方位分解情報は、例えば、CCD検出器の活性表面上へ表面から、又は表面を通して反射、散乱、又は回折された光線の光学イメージングによって入手できる。又は、反射、送信、散乱、又は回折された光線は、暗視野顕微鏡、反射顕微鏡、内部全反射顕微鏡、又は近視野走査型光学顕微鏡を使用することによって、照射光(励起光)から分離できる。反射、送信、散乱、又は回折された光線のスペクトル特徴は、次にCCDカメラ、1つ以上の光ダイオード、光増倍管及び/又は分光計、単色光分光器及び/又はダイクロイックミラーと組み合わせた光ダイオードアレイによって分析かつ記録することができる。
【0051】
チップと一緒に使用できる単純な光学デバイスは、サンプルを照明するための光ファイバーに接続された白色光源、チップから反射、散乱又は回折された、又はチップを通して送信された光線を検出するための第2ファイバー、及びデータ保存及び評価のために電子機器に接続された光ファイバー分光計からなる(図8a及びb)。方位分解情報が望ましい場合は、検出用ファイバー及びチップは相互に対して水平方向に走査することができる。又は、検出のために使用する光ファイバーは、CCDチップ又はダイオードアレイ又は関連する方位分解光学検出機器の活性領域上に全チップ表面を光学イメージングする光学システムと取り換えることができる(図8c)。白色光源は、1つ以上の単色光源、例えば相違する波長で作動する3〜5個のLED又はレーザーダイオードと取り換えることができる、又はスペクトル分解又は方位分解情報の獲得を促進するためにチップ表面を照明する前にスペクトルフィルタリングシステムに接続することができる。
【0052】
少数の単色又は狭帯域光源、例えばLED又はレーザーダイオードが利用される場合は、表面の極めて近位での光学特性の変化のために各波長での反射、送信、散乱、又は回折された光線強度の変化を使用すると、例えば内挿法によって、又はスペクトルをモデル関数に当てはめることによって、全スペクトルの変化を決定することができる。
【0053】
また別のアプローチでは、表面に吸着した誘電粒子内部でのwhispering galleryモードは、例えば非金属粒子と、例えば平面的な導波管又は光ファイバーなどの導波路材料又は導波路素子との間の光結合によって励起される。この場合には、径>5μmを備える非金属粒子の使用は、電磁スペクトルの可視及び/又はNIR領域内での光励起のために有益である(Oraevsky, Quantum Electronics 2002,32,pp.377)。さらに、この場合には、粒子は好ましくは、それらが隣接粒子との制御された数の接触点を有する、例えば全く接触しないような方法で導波管表面上に沈着される。これは、例えば、粒径より小さなサイズを備える正方形のパターンをプリントすることによる、マイクロコンタクト・プリンティングの適用(実施例1を参照されたい)によって達成できる。粒子間の接触点を制御するまた別の例は、制御された数の粒子の整列した配列である。さらに、これはマイクロコンタクト・プリンティングによって達成できる(Kaltenpoth et al., Adv.Mater. 2003,13,pp.1113)。
【0054】
結合剤の固定化
チップを特定の分析物にとって選択的にするために、タンパク質、ペプチド、及び核酸などの分析物に(好ましくは可逆的に)結合できる結合剤でチップ表面をコーティングすることが好ましい。金属表面へ結合剤をコンジュゲート化させるための方法は知られており、本発明のチップ表面を誘導体化するために同等に好適である。例えば、本発明のチップは、遷移金属(例えば、金)−チオール化学を用いることによって化学修飾できる。例えば、金属コーティングした非金属コアを備える表面は、アミノ基でチップ表面を修飾できるようにアミノエタンチオールなどのアミノ基を有するチオール分子の溶液中に浸漬することができる。次に、pH7〜9の緩衝液中に懸濁させたN−ヒドロキシスクシンイミドを用いて修飾したビオチンは、EDCによって活性化し、アミノ基によって以前に修飾されたチップ表面に添加することができる。結果として、金属コーティングされた非金属コアをビオチンで修飾できるようにアミド結合が形成される。次に、4つの結合部位を含むアビジン又はストレプトアビジンをビオチンに結合させることができる。次に、タンパク質、ペプチド、DNA又は任意の他のリガンドなどの任意のビオチン誘導体化生体分子は、アビジン修飾された金属コーティングされた非金属コアの表面に結合させることができる。
【0055】
代替的には、アミノ末端化表面は、グルタルアルデヒド水溶液と反応させることができる。基質を水で洗い流した後、基質は、それらのアミノ基を介して生体分子への共有結合を促進するように、タンパク質又はペプチドの水溶液へ曝露される(R.Dahint et al., Anal.Chem., 1994,66,2888−2892)。チップが、例えばメルカプトウンデカン酸のエタノール溶液に曝露させることによって最初にカルボキシ末端化される場合は、末端官能基は、EDC及びN−ヒドロキシスクシンイミドの水溶液で活性化できる。最後に、タンパク質又はペプチドは、活性化された表面に水溶液からのそれらのアミノ基を介して共有結合する(Herrwerth et al., Langmuir 2003,19,1880−1887)。
【0056】
表面での生体特異的相互作用を制御及び同定する際の一般的な問題は、非特異的吸着であ る。この障害を克服するための一般的技術は、非特異的吸着部位を遮断するために官能化された基質を他の強力に接着している生体分子へ曝露させることに基づいている。しかし、このアプローチの効率は試験中の生体系に左右され、溶解した種と表面結合種との間で交換プロセスが発生することがある。さらに、非特異的に吸着した生体分子の除去には、豊富な洗浄工程を必要とするため、低親和性を備える特異的結合事象の同定を妨害する可能性がある。
【0057】
この問題の解決策は、ポリ−(PEG)及びオリゴ(エチレングリコール)(OEG)のフィルムなどの不活性材料中に結合剤を組み込むことである。生体特異的認識素子をOEG−末端化SAM内に組み込むために最も一般的技術は、タンパク質耐性EG分子及び結合剤結合するのに好適な(又は結合剤自体を含有する)第2の官能化分子種から構成される二成分溶液からの共吸着に基づいている。又は、表面グラフト化末端化官能化PEG分子への結合剤の直接結合もまた報告されている。
【0058】
近年、金表面上に高密度SAMを形成するCOOH−官能化ポリ(エチレングリコール)アルカンチオールが合成されている。生体特異的受容体が共有結合した後、フィルムは、高特異的認識を示しながら非特異的相互作用を効果的に抑制する(Herrwerth et al., Langmuir 2003,19,pp.1880−1887)。
【0059】
表面に固定化された結合実体は、抗体、ペプチド、オリゴヌクレオチド又はDNA(特異的標的オリゴヌクレオチド又はDNA、例えば単一ヌクレオチド多形(SNP)、又は炭水化物を含有していてよい特異的配列範囲の遺伝子にハイブリダイズする)などのタンパク質であってよい。非特異的相互作用を減少させるために、結合実体は、好ましくは不活性マトリックス材料内に組み込まれるであろう。
【0060】
本発明は、そこで分析物の濃度を決定するための方法であって、1つ以上の分析物を潜在的に含有している溶液を本発明のチップと接触させ、その間にこのチップ表面を照射する工程と、及びチップ表面から反射、散乱、又は回折された、又はチップ表面を通して送信された光線を検出する工程とを含む方法をさらに提供する。又は、反射、送信、散乱、又は回折された光線は、溶液の除去後に検出することもできる。分析物の吸着前後の光学表面特性を比較することによって、定性的及び定量的測定の両方が可能になる。より好ましくは、信号強度が連続的に記録される。これは吸着動態についての詳細な洞察を可能にし、本明細書で請求された器具の有用性を増強する。
【0061】
マイクロアレイ
好ましい実施形態では、複数の結合剤が、チップ表面上の様々な場所を様々な結合剤に指定できるような方法で表面上に固定化される。これを言い換えると、本発明は、核酸アレイ又はペプチドアレイなどの結合剤のマイクロアレイもまた提供する。マイクロアレイは、複数の固定化された試薬の空間的に規定して順序化されたミクロ配列である。例えば、結合剤は、アレイヤー又はマイクロアレイプリンターなどのスポッティング器具によって様々な場所に指定することができる(例えば、Angew.Chem.Int.Ed.2002,41,pp.1276−1289を参照されたい)。
【0062】
完全結合剤分子を固定化するよりむしろ、ペプチド又は核酸などの結合剤をインサイチューで表面上に形成することもできる。コンビナトリアル・ペプチド合成は、支持体上への「単量体トナー粒子」の移動を可能にする修飾カラーレザープリンター(A.Poustka et al., WOPatent00/35940,2000)を用いて実施できる。粒子は、保護されたアミノ酸又はヌクレオチド及び「固体溶媒」からなる。表面上に様々なアミノ酸を含有するトナー粒子の二次元パターンを形成した後に、温度が粒子の融点を超えて上昇される。次に、固体溶媒は液化し、これまでに捕捉された単量体が支持体へ結合する。コンビナトリアル方法でこれらの工程を繰り返すことによって、多数の様々な結合剤を表面上で生成することができる。又は、EP−A−619321に記載された技術もまた使用できる。コンビナトリアル合成が粒子の構造化又は非構造化層上で実施される場合は、結合事象の標識を使用しない高スループットスクリーニングは、チップの光学特性における変化について局所的に試験することによって促進される。
【0063】
結合剤アレイを固定化するためのチップとしては、上述したように粒子がパターン状で存在するチップを使用するのが特に好ましい。粒子がコーティングされた領域上に結合剤を選択的に適用するのが特に好ましい。例えば、表面が正方形パターンで粒子がコーティングされた領域を含む場合は、結合剤をこれらの領域上にスポッティングするのが好ましい。これはほぼこれらの領域のサイズ又はわずかに小さい領域を被覆する結合剤容量又は結合剤粒子(例えば、トナー粒子)を使用することによって達成できる。このアプローチは、個別領域間のクロストークを減少させる。
【0064】
その他の用途
チップ及び本発明に記載したチップを使用する光学デバイスは、基本的に、チップ表面の直近における誘電特性における変化を測定する。このため、本発明は誘電特性、物理的又は(生体)化学的信号を光学及び/又は電気信号に変換させるための尺度、すなわちトランスデューサーメカニズムとしてのチップ表面の近位における誘電特性、すなわち屈折率における変化を利用できる任意の用途に適用できる。例えば、本チップ及び器具は、チップ表面と接触している流体における温度変化を追跡するために使用できる。同一方法では、混合溶液中の溶質の濃度、例えば乱流に起因する流動プロファイルにおける不均質性、2種の相違する流体を混合した場合の濃度、チップ表面と接触している粘弾性又は弾性材料の密度における変化を測定できる。液体中の乱流の投影は、マイクロアレイの読み出しについて記載された方位分解検出機序の使用によってチップ表面上で監視することができよう。
【0065】
チップ表面が物理的又は化学的作用(例えば、力又は化学反応)に起因してその密度、したがってその屈折率を変化させることのできる材料でコーティングされる場合は、チップ及び光学デバイスを使用してこれらの変化を監視することができる。例えば、ヒドロゲルをチップ表面上に固定化することができ、したがってpH又は塩濃度、気体の湿度などにおける変化を追跡できる。
【実施例1】
【0066】
EDC媒介性吸着によるチップ表面の調製
ポリスチレン(PS)ナノビーズの高密度層でコーティングされたチップ表面を入手するために、本発明者らは以下のように進めた:約9mmの径及び約1mmの縁高さの96ウエルに分割されているポリスチレン製細胞培養プレート(FALCON、BD製の製品番号3002)の上面の内側を蒸着によって膜厚20nmの金フィルム(99.99%)でコーティングした。蒸着装置にはタングステン・フィラメントを装備し、5・10−7mbarの基準圧で作動させた。蒸着後、基質のウエル内に沈着した金塗膜は、表面を親水性にするために60分間にわたりカルボキシル末端化アルカンチオールの水溶液(TG、97%;脱イオン水中で10mM溶液)に曝露させた。60分後、この溶液を脱イオン水で洗い流した。次に、表面を以下の方法で調製した、350nmの平均径を備える単分散ポリスチレンビーズの水性懸濁液に曝露させた:水中に懸濁させた350nm PSビーズ(標準偏差<5%;Polysciences(米国ペンシルベニア州ウォリントン)を脱イオン水及びリン酸緩衝液(pH7.6)と2:1:3の容積比で混合した。懸濁液を混合する前に、少量のEDC(99%;Sigma−Aldrich)をリン酸緩衝液に加えると約3mMのEDC緩衝液が産生したため、次にこれを使用して懸濁液を調製した。懸濁液を基質の円形ウエル内に充填し、1時間放置した。引き続いて、これを多量の脱イオン水で洗い流し、風乾した。この手順に続いて、図2に示したような粒子の層が得られた。
【0067】
パターン化されたPSビーズ層を入手するために、上述した手順を以下の方法で修飾した(図1):TG水溶液に金表面を曝露させる前に、マイクロコンタクト・プリンティングによってオクタデカンチオール(ODT)のパターンを金表面上に形成した(Kumar et al. Science 1994, 263, pp.60−62)。それにより、エラストマー製レリーフスタンプ(ポリ(ジメチルシロキサン))をODTの1mMエタノール溶液と結合した。溶媒を蒸発させた後、スタンプを金表面上に柔らかく押し付け、それによりレリーフの突出している領域からのみ金表面上にODTを移動させた。次に、パターン化されていない表面の場合と同一の手順を適用した。すなわちチオグリコール酸塩の水溶液へ表面を曝露させ、引き続いてEDC活性化PSビーズ懸濁液に曝露させた。しかし、上述した手順とは対照的に、上記で使用した濃度の約2.5%の懸濁液中のEDC全濃度を産生するためにはEDCの量を減少させなければならなかった。洗い流して乾燥させた後に、図3に示したパターン化されたPSビーズ表面が形成されていた。
【実施例2】
【0068】
積層集積吸着(LBL)による非金属コアの金属化
先行実施例に記載したように調製したチップ表面を以下の方法で金属コーティングにより被覆した:2〜3nmの平均径を備えるコロイド状金粒子は、1mLの1% HAuCl4・3H2O(水性)を100mLのH2Oと強力に攪拌しながら1分間混合し、その後に1mLの1%クエン酸Na3溶液を加えることによって調製した。1分後、1%クエン酸Na3水溶液中の1mLの0.075% NaBH4をこの溶液に加え、これをさらに5分間攪拌した。この手順は、2〜3nmの平均径を備える、クエン酸安定化された、すなわち負荷電のコロイド状金粒子の形成をもたらす。PSビーズで被覆された表面上にコロイド状金粒子を吸着させる目的で、正の表面電荷を提供するために表面を最初に多価電解質でコーティングした。最初に、表面を90μL(ここでは、及び以下では1ウエル当たり90μL)のポリ(スチレン)スルホン酸(PSS)(1mLの0.5モルのNaCl(水性)当たり1mgのPSS)へ20分間にわたり曝露させた。次に、表面を脱イオン水で洗い流した。第2工程では、表面を90μLのポリ(エチレンイミン)(PEI)(1mLの0.5モルのNaCl(水性)当たり2mgのPEI))へさらに20分間にわたり曝露させ、次に脱イオン水で洗い流した。この手順は、負荷電の金コロイドの固定化を可能にする正荷電した表面を生じさせた。したがって、表面は引き続いて事前に調製した90μLの金コロイドへ5時間にわたり曝露させた。脱イオン水で洗い流した後、表面は金コロイドの吸着に起因する紫色の痕跡を示した。表面上のコロイド状金粒子の最適密度を保証するために、最後の工程をもう1回繰り返した。次に、吸着した金粒子を無電界めっき工程によって増加させた。そこで、表面を3.5mLの0.1% HauCl4・3H2O(水性)及び1.5mLの0.04M NH2OH(水性)の混合物(1ウエル当たり90μL)へ3分間曝露させた。次に、表面を脱イオン水で洗い流し、窒素気流中で乾燥させた。この調製段階で、表面は白色光で照射すると反射光で濃い紫色を示した。図4aは、結果として生じた表面の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【実施例3】
【0069】
スパッタリングによる非金属コアの金属化
又は、表面吸着PSビーズは、スパッタリングによって金薄膜で金属化した。5・10−7mbarの基準圧及び5.1・10−2mbarのアルゴン圧で作動させたスパッタコーティングシステム(BAL−TEC、Med020)によって、20nmの金をサンプル表面上にスパッタリングした。サンプルを金標的から50mmの距離に装着し、30mAで67秒間にわたりスパッタリングした。図4cは、結果として生じた表面のSEM顕微鏡写真を示している。
【0070】
[比較例1]
蒸着による非金属コアの金属化
以前の研究(Himmelhaus and Takei, Sens.Actuators B2000,63,pp. 24−30;Takei et al., Opt.Lett. 2002,27,pp.342)と直接比較するために、表面固定化PSビーズは、基質の金コーティングについて上述した同一方法で20nmの金の蒸着によってコーティングした。それにより、図4bにおいてSEM顕微鏡写真によって視認されるように、PSビーズの上半分上にキャップ形状の金シェルが形成される。
【0071】
[比較例2]
コア−シェル粒子を用いたチップ作製
また別の比較は、以前に多数の研究者らによって公表されたように(Oldenburg et al., Chem.Phys.Lett. 1998,288,pp.243;Lirtsman et al., Adv.Mater. 2001,13,pp.1253, Cassagneau and Caruso, Adv.Mater. 2002,14,pp.732;Kaltenpoth et al., Adv.Mater.2003,15,pp.1113)、誘電コア及び金属シェルからなるコア−シェル粒子を用いて実施した。
【0072】
本発明者らの試験において使用する350nmPSビーズのための金属コーティングを入手するために、懸濁液中の誘電粒子についてCarusoら(“Nano−engineering of inorganic and hydrate hollow spheres by colloidal templating”, Science 282:1111−114,1998)によって記載された積層集積吸着プロセスを適用した。手短には、120mLの350nmPSビーズ水性懸濁液を1mLのPEI溶液(1mLの0.5モルのNaCl(水性)当たり2mgのPEI))及び500μLのリン酸緩衝液(pH7.4)と20〜30分間にわたり混合した。そこで、この混合液を流体相から粒子を分離するために数回、8,000rpmで10分間にわたり遠心分離した。各遠心分離工程後、流体の透明部分をピペッティングによって除去し、次に減損を補填するために適正な量の脱イオン水を加えた。第1遠心分離サイクル中に懸濁液に加えた脱イオン水は、0.5Mの濃度でNaClを含有していた。その後の3回の遠心分離サイクルは、純粋脱イオン水を用いて実施した。それにより、PEIコーティングした正荷電のPSビーズを含有する水性懸濁液が入手された。
【0073】
PEIコーティングPSビーズ上にコロイド状金粒子(実施例2を参照)を吸着させるために、200μLのPSビーズ懸濁液を300μLの脱イオン水で希釈した。次に、1.5mLの金コロイド懸濁液を加えた。混合液の紫色が12時間後に消失した場合は、金コロイド懸濁液の添加を繰り返した。さらに12時間後、3回の遠心分離サイクルで過剰な金コロイドを除去した。
【0074】
PSビーズの周囲で金属閉殻を形成するために、350μLの0.1% HAuCl4・3H2O(水性)及び150μLの0.04M NH2OH(aq)は、PSビーズをコロイド状金粒子で装飾した後に入手した懸濁液に加えた。この混合物を2〜3分間振とうし、遠心分離及びピペッティングによって直ちに分離した。生じたコア−シェル粒子は、図7aに表示されている。
【0075】
実施例2の結果と直接比較するために金コーティングFALCON PSプレートのウエル(実施例1を参照)中にコア−シェル粒子の高密度層を形成するために、金表面を1時間にわたりシステアミンの水溶液に曝露させ、引き続いて脱イオン水で洗い流した。上述したように調製したコア−シェル粒子は、30分間にわたり200μLのコア−シェル粒子懸濁液を1mLのPSS溶液(実施例2を参照)と混合することによってPSSの追加の層でコーティングした。30分後に、上述したように、混合液を超遠心分離してピペッティングによって分離した。容量の減損を補填するために脱イオン水を加えた。この手順を3回繰り返した。次に、コア−シェル粒子懸濁液を2時間にわたりシステアミン官能化金表面上に配置した。最後に、懸濁液を洗い流し、表面を風乾した。結果として生じた粒子の層は、図7bに示されている。
【実施例4】
【0076】
様々な金属化法によって金でコーティングした粒子の層のSEM顕微鏡写真
図4a及び4bは、EP0965835A2によって調製したチップ表面を示している。図4c及び4dは、本発明によってスパッタリングにより調製したチップ表面を示している。図4e及び4fは、本発明によってコロイドの吸着及びその後の無電界めっき工程によって調製したチップ表面を示している。図4b、d及びfは、粒子間で形成されていた開口部が視認できるように(図6を参照)、接着テープを用いた隣接粒子の一部を除去した後の粒子の層を示している。図4dにおける基質表面上の暗色スポットは、除去された粒子の1つが位置している場所を指示している。同様に、除去された粒子の前方位置は図4a及びbに見ることができるが、これは金が以前に吸着された粒子によって影ができた領域には沈着していないからである。図4bでは、2つの粒子が約θ=180°の範囲まで蒸着によって沈着した金属コーティングによって囲まれている接触点を示している。金属コーティングは、蒸着によって表面の蒸着源から直接視域内にあるそれらの領域しかコーティングできないため、基質表面に向けて方向付けられた球の半分には存在しない。
【実施例5】
【0077】
様々に調製した表面の光学特性解析
上述した様々な方法によって金属化したPSビーズ表面の光学特性を決定するために、表面から反射した光線の波長依存性励起を図8aに描出した光ファイバーセットアップを用いて測定した。照明及び反射光線のサンプリングのために使用した反射ファイバープローブを表面の上方で約10mmの間隔で配置し、表面に対して垂直に方向付けた。最初に金コーティングPS基質の未処理表面領域、すなわち20nmの蒸着させた金でのみコーティングしたウエルの内側領域から参照スペクトルを記録した。次に、PSビーズでコーティングし、上述した様々な方法によって金属化したウエルを様々な場所(ウエルの中心及び中心から外れた2〜3スポット)で分析した。引き続いて、これらの層の吸光度を金参照と比較して計算した。
【0078】
有機分子の吸着に関して様々な表面の感受性についての尺度として、表面を引き続き8時間にわたりアルカンチオールのエタノール溶液(1mMオクタデカンチオール(ODT)、95%;Sigma−Aldrich)へ曝露させ、純粋エタノール(p.a.等級;Sigma−Aldrich)を用いて洗い流し、窒素気流中で乾燥させた。続いて、吸光度スペクトルを参照スペクトルと比較して記録した。機械的に制御した2Dトランスレータステージによって、第1回測定において調査したスポットと同一スポットを>3mmの検出領域の全径について<0.1mmの精度で分析できた。
【0079】
獲得したスペクトルは、全可視範囲内で著明なピークを観察できず、チオール吸着に起因する吸光スペクトルにおける変化が些細であった比較例2によって調製したコア−シェル粒子の層を除いて、図9に示されている。明らかに、(a)及び(b)の場合には約560nm及び(c)の場合には630nmの吸光度ピークは、チオールの吸着に応答して明確な変化を示す。ピークの位置及び対応する吸光度の大きさは表1に列挙されている。さらに、チオール吸着に起因するピーク位置における変化平均は、5サンプルにおける平均として表示されている。吸光度における変化は比較的小さいが、ピーク位置における明確な変化は特に、実施例2に記載したコロイド状金属粒子のLbL吸着によって調製した金属化を用いたチップ表面について観察できる。
【0080】
【表1】
表1:オクタデカンチオールの吸着前後の、チップ表面のUV−可視スペクトルのピーク位置及びピーク吸光度。これらの表面は、比較例1、実施例3、及び実施例2各々によって、コロイド状金属粒子の蒸着、スパッタリング、及びLbL沈着によって調製した。最後の2つの列に挙げたコア−シェル粒子は、比較例2による表面吸着前に溶液中で金属化した。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明のチップを調製するための好ましい方法を示す図である。(a)疎水性チオール(オクタデカンチオール、ODT)のマイクロコンタクト・プリンティングによる金コーティングポリスチレン(PS)基質の表面官能化;(b)チオグリコール酸塩(TG)による、プリントされたODT領域間の間隙の充填;(c)TGコーティング領域上への1−エチル3−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)塩酸カルボジイミド(EDC)化学による水溶液からのPSビーズの吸着;(d)PS粒子の周囲に金コーティングを形成するためにコロイド状金粒子及び引き続いての無電解めっきを用いたPSビーズの装飾(詳細については、例えば、実施例1及び2を参照)。
【図2】金属化前の、実施例1に提示したルーチンによって調製したチップ表面のSEM顕微鏡写真である。
【図3】金属化前の、実施例1によって調製したパターン化されたチップ表面のSEM顕微鏡写真である。
【図4】図4a−4fは、金属化の様々な方法によって調製した金属コーティングした非金属粒子層のSEM顕微鏡写真である。
【図5】図5a−5gは、金属コーティングによって囲まれている、隣接粒子及び/又は表面間の非金属接触点の形成を示す図である。図5a〜cは、接触している2つの粒子の接触点の中心を通る断面を示した図である。図5aは、EP0965835A2及びSensors and Actuators B2000,63,pp.24−30(例えば、比較例1を参照)による蒸着による粒子の金属化を示している。図5b及びcは、例えばスパッタリング(例えば、実施例3)又はコロイド状金属粒子の積層集積(例えば、実施例2)による、本発明による金属化を示している。図5dは、他の粒子と接触していない粒子の金属化を示している。金属コーティングは、粒子及び基質の両方を被覆しており、それによって粒子/基質界面で開口部を形成する。図5eは、蒸着による金属化によって達成されるように(図5aを参照)、θ=180°の範囲まで金属コーティングによって囲まれている接触点を示している。図5fは、本発明による金属化によって達成できるように(図5b及びcを参照)、θ=360°の範囲まで金属コーティングによって囲まれている接触点を示している。図5g及びhは、θ>220°の範囲まで金属コーティングによって囲まれている、非金属粒子の接触点の実施例を示している。
【図6A】SEMを使用することによって粒子及び/又は基質間の開口部を検証する方法を示した図である。a及びbは、以前に吸着された粒子の一部が接着テープの使用によって除去されているチップ表面を示している。c及びdは、表面上にまだ存在する粒子と取り除かれた、以前は隣接していた粒子との接触点を示している。取り除かれた粒子の以前の存在は、基質の金属コーティング内の開口部から判定できる。e及びfは、c及びdに示した類似領域の上面図を示している。取り除かれた粒子の以前の位置を指示している粒子上の金属残留物は、金属コーティングが隣接する粒子を結合することを示している;結合は、粒子接触の検査によっても観察することができる。
【図6B】gは、以前に存在していた粒子が基質の金属コーティングに結合していることを示している基質表面上の残留物を示している。hは、両面接着テープによって基質から取り除かれた粒子を示している。このテープは、次に以前に基質と接触していた粒子表面を検査するために上下逆にSEMサンプルホルダー上に載荷された。明確に、基質との開口部の形成を同定できる。i〜kは、第1及び第2粒子の層の粒子間の開口部の形成を示している。以前には3つの隣接粒子と下方で接触していた1つの粒子のみが取り除かれている。非金属接触点を囲む金属縁を明確に認識できる。
【図7】図7a〜7bは、コア−シェル粒子(a)及び比較例2によって調製されたコア−シェル粒子によって形成されたチップ表面を示した図である。
【図8】図8a〜8bは、表面から反射、散乱、及び/又は回折された、又は表面を通して送信された光線を検出するために、光ファイバープローブを用いて吸光スペクトルを獲得するための光学デバイスのセットアップを例示している図である。散乱を検出するために、追加して積分球を使用できる。図8cは、測定のためのまた別のイメージングセットアップの例を示す図である。代替的に、基質を通過する送信においては同時方位分解測定もまた実施できる。
【図9】図9aは、EP0965835A2によって調製されたチップ表面、及びこのチップ上のチオール吸着実験前後の吸光スペクトルのグラフ表示である(例えば、実施例5)。図9bは、本発明によって調製されたチップ表面、及びこのチップ上のチオール吸着前後の吸光スペクトルのグラフ表示である。図9cは、本発明によってコロイド吸着及びその後の無電解めっきによって調製されたチップ表面、及びこのチオール吸着実験前後の吸光スペクトルのグラフ表示である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属コーティングを備える非金属粒子の層を含むチップ、このチップを調製する方法、このチップを含む光学デバイス及びこのチップを使用する分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イムノアッセイ又はハイブリダイゼーションアッセイのような現代のバイオ分析法の大多数は、分析物を検出するために、蛍光標識などの標識の使用を必要とする。しかしこのような標識の使用は、多くの理由から望ましくない。測定前のサンプルを洗浄する必要があることで、多大な時間を浪費し、一過性の相互作用、低親和性の結合事象及び結合動態の観察を妨害する可能性もある。さらに、標識の導入には費用がかかり、望ましくない方法、および時には予測できない方法で試験中の生体系を変化させることがある。最後に、標識効率についての知識が不十分であれば、生物医学的分析において間違った結果が生じることがある。
【0003】
標識を使用せずに分析物の検出を可能にする技術の1つには、表面プラズモン共鳴法(SPR)が含まれる。表面プラズモンは、金属薄膜と誘電材料との界面で自由電子を集団で振動させる伝搬波である。波の伝搬は界面での誘電定数に影響されるため、界面での吸着プロセスを高感度で検出できる。SPRセンサーは、例えば商標名BIAcoreの下で米国ニュージャージー州ピスカタウェイのPharmacia Biosensorから市販されている。
【0004】
これらのSPRセンサーの主な制限は、表面プラズモンが金層内などにおいて、かなり長距離に渡って伝搬するため、タンパク質アレイ又はDNAアレイなどの同時に行なわれる小型生物学的アッセイにおいて必要とされる、極めて様々な分析物の検出のために使用が阻害されるという事実である。
【0005】
金ナノ粒子を使用して限局性又はコロイド状SPRの現象を利用するという提案がなされてきた。WO03/050291は、ガラスなどの光学的に透明な基質上に金又は銀ナノ粒子を沈着させることによって得られるセンサーについて記載している。US2003/0174384A1は、金表面上における、いわゆる金ナノシェルの使用について記載している。
【0006】
EP0965835A2及びSensors and Actuators B2000,63,pp.24−30は、その後に金コーティングが熱蒸着によってその上に形成され、その結果、キャップ形状の金ナノ粒子が形成される単層のポリスチレン粒子の形成について記載している。これらのセンサーチップは、良好な感受性を示すと報告されている。
【0007】
【特許文献1】国際公開第03/050291号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0174384号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0965835号明細書
【非特許文献1】"Sensors and Actuators" B2000,63,pp.24−30
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先行技術を考慮すると、本発明の基本的な目的は、分析物を検出において改善された適合性を示す光学デバイス及びセンサーチップを提供することである。
【0009】
本発明のまた別の目的は、標識を使用せずに様々な分析物の平行検出を可能にする分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的を達成するために、本発明は、少なくとも1つの、任意で誘電性の表面を備える基質、及び少なくとも1つの表面上に、非金属コア及び金属又は金属合金から製造されたコーティングを有する粒子の層を含むチップであって、各非金属コアが、概して、少なくとも1つの他の非金属コア及び/又は基質表面を備える、金属で囲まれた接触点、いわゆる開口部を形成することを特徴とするチップを提供する。
【0011】
本発明は、チップを調製する方法であって、
基質の表面上に非金属粒子を吸着させる工程と、及び、引き続いて、
非金属粒子上に金属又は金属合金のコロイドを吸着させる工程と、
又はその代わりに、非金属粒子上に金属クラスター又は金属合金クラスターをスパッタリングする工程とを含む方法及びこの方法によって入手可能なチップも提供する。
【0012】
本発明は、分析物を検出するための光学デバイスであって、本発明のチップ、このチップを照射するための光学系、及びこのチップ表面から反射、送信、散乱、又は回折された光線を検出するための検出システムを含む光学デバイスをさらに提供する。
【0013】
最後に、本発明は、分析物の濃度を決定するための方法であって、
本発明によるチップから反射、送信、散乱、又は回折された光線を検出する工程と、
1つ以上の分析物を潜在的に含有する溶液をチップと接触させる工程と、及び
この溶液への曝露中又は曝露後にチップから反射、送信、散乱、又は回折された光線を検出する工程とを含む方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明のチップはEP0965835A2から知られているキャップ形状の金ナノ粒子を含む表面と比較して、及び粒子が閉殻を含むUS2003/0174384Alに記載されたシステムと比較して、感受性において有意な向上を提供することを見いだした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
基質
本チップは、少なくとも1つの表面を備える基質を含む。基質の形状は限定されず、平坦であっても湾曲していてもよい。例えば、基質は、円形断面を有していてよい。しかし、好ましい実施形態では、基質は平坦である。基質は、当業者に既知の任意の好適な材料から構成されてよい。基質として使用するのに好適な材料の具体例には、以下:ガラス;石英;例えばポリカーボネート、ポリオレフィン(例えば、ポリスチレン)及びアクリル及びメタクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート、PMMA)などの有機基質;例えばゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ケイ素、ケイ素由来材料(例えば、溶融石英、シリコーンジェル及びポリシロキサン)及びスズ由来材料(例えば、酸化スズ及びインジウムドープ酸化スズ)などの無機材料などが含まれるがそれらに限定されない。特に好ましい材料は、ガラス、ケイ素及び、例えばポリスチレン又はPMMA基質などの有機基質である。
【0016】
また別の好ましい実施形態では、基質は導波路材料からなる、又は基質を通過する光線信号の伝導を可能にする導波路素子を含む。例えば、導波路材料は屈折率n1を備えるポリマー基質からなり、その中にまた別の材料、例えば屈折率n2>n1を備える第2ポリマーが光線を全内部反射によって第2材料内に誘導できるような方法で一体化される。又は、n2>n1を備える第2材料は、後者の物理化学的修飾によって、例えば選択された領域内で後者のUV処理によって統合材料から生成できる。本発明によると、非金属コアは、好ましくはより高い屈折率を備える材料の表面と接触する。導波路材料の形状は限定されず、平坦であっても湾曲していてもよい。好ましい実施形態では、それは平坦な基質又はファイバーである。
【0017】
基質の表面は、バルク基質材料と同一材料から構成されてよい、又は基質上にコーティングされた個別の金属又は非金属層から構成されてよい。この金属又は非金属層は、単一又は複数の材料及び/又は副層から構成されてよい。副層の各々は、均質であっても、パターン化されてもよい。金属及び非金属領域から構成されたパターン化された副層は、光学信号の共鳴強化及び/又は電気信号の移送を提供できる。パターン化された副層は、基質の選択された領域上への非金属粒子の指向性吸着のために使用することもできる。単一又は複数の材料及び/又は副層の層は、上述した導波路材料であってよい。さらに、単一又は複数の材料及び/又は副層の層は、蛍光色素及び/又は他の光学的に活性な材料を含有していてよい。
【0018】
好ましい実施形態では、基質上にコーティングされた層は、金属又は金属合金、好ましくは遷移金属又は遷移金属合金から構成される。そのような層に使用するために特に好適な金属は、アルミニウム、金、銀、銅、白金、パラジウム、鉛、鉄などが含まれるがそれらに限定されない。金、銀、パラジウム及び/又は白金が好ましい。そのような金属の合金又は不均質混合物もまた使用できる。金属又は金属合金(好ましくは遷移金属又は遷移金属合金)から構成される層の厚さは、好ましくは2〜500nm、より好ましくは5〜100nm、及び最も好ましくは10〜50nmである。
【0019】
金属層は、順に非金属、好ましくは誘電層でコーティングされてよい。非金属層は、好ましくは100nm未満、より好ましくは1〜50nmの厚さを有していてよく、例えば、多価電解質、スピンコートされたポリマー、スピンオンガラス、SiO2、例えばケイ素、ゲルマニウム、又はヒ化ガリウムなどの半導体、又はインジウムドープ酸化スズから構成されてよい。好ましい実施形態では、誘電層は、有機分子の、例えば修飾されてもされなくてもよい、及びSAMを形成しても形成しなくてもよいアルカンチオール又はシランの単層から構成される。
【0020】
好ましい実施形態では、一番上の副層は、様々な親水性基又は化学官能基を備える領域などの別個の物理化学的特性を有する領域を備えてパターン化されてよい。
【0021】
好ましい実施形態では、パターンは、20nm〜100μm,より好ましくは1μm〜30μmの間隙によって分離されている400nm2〜10,000μm2、より好ましくは1μm2〜1,000μm2の化学構造(例えば、正方形)を提供する。また別の好ましい実施形態では、パターンは、様々な化学官能基のマトリックス材料中に包埋された円から構成される。円の好ましい径は、100nm〜100μm、より好ましくは1μm〜30μmの範囲に及ぶ。
【0022】
例えば、パターン化は、マイクロコンタクト・プリンティング、フォトリソグラフィ、又は電子線リソグラフィによって提供できる。
【0023】
化学的にパターン化された金表面(例えば、ポリスチレンなどの有機基質上に直接蒸着させた10〜50nmの金層)は、様々な表面領域間の明確な化学的対照を提供するマイクロコンタクト・プリンティングを用いて調製できる(Kumar et al., Science 1994,263,pp.60−62)。例えば、ミクロ構造エラストマースタンプに第1チオールの溶液(例えば、1オクタデカンチオールの1ミリモル(mM)エタノール溶液)をインクとして補給すると比較的疎水性である表面を提供する。乾燥させた後、スタンプを基質上に柔らかく押し付ける(例えば、10秒間〜1分間)。スタンプを取り除いた後、中間の間隙は、基質を親水性官能化チオール(例えば、16−メルカプトヘキサンデカン酸)の溶液中に浸漬させると充填される。そこで、COOH−及びCH3−末端基を備えるチオレートのパターンを備える表面が得られる。パターンの幾何学的形状及びサイズは、エラストマースタンプのミクロ構造に依存する。好ましい側方寸法は、0.5〜50μmの範囲に及ぶ。好適なパターニングプロセスは、Kaltenpoth et al., Adv.Materials 2003,15,No.13,pp.1113−1118に記載されている。
【0024】
代替的に、表面特性のパターニングは、光化学反応によって達成できる。マスクを通して照射されると、ベンゾフェノン、ジアジリン又はアジド成分などの光不安定性基を備える分子は、明確に規定された構造内の有機マトリックスに結合する。非誘導体化表面領域は、連続工程において他のタイプの分子と反応することができる。表面誘導体化における問題は、望ましくない平行化学反応及び照明中に起こりうる微細化プロセスの結果として発生する。この難題は、固定化プロセス後に定量的に除去される非光不安定性保護基を用いて化学官能基を一時的にマスキングする工程によって克服できる。生成した化学構造の寸法の範囲は、500nm〜1mmの範囲に及ぶ(Ph.D.Thesis,Juergen Pipper,Universitaet Heidelberg,1999)。
【0025】
ナノメートルスケールでの化学的パターニングは、電子線リソグラフィによって達成できる。例えば、Si基質上に沈着したアミノ末端化シランSAMは、アミノ基の電子誘導性開裂によって約80nmの分解能でパターニングすることができる。化学表面構造は、電子線に曝露されていない領域上の非金属粒子の指向性吸着のためのテンプレートとして機能できる(Harnett et al., Appl.Phys.Lett. 2000,76,No.17,2466−2468)。又は、金の上の4’−ニトロ−1,1’−ビフェニル−4−チオレートSAMの末端NO2基は、電子線照射によってNH2基へ変換させることができるが、基礎にある芳香族塗膜は架橋している(“chemical nanolithography”;Goelzhaeuser et al., Adv.Mater. 2001,13,No.11,pp.806−809)。現在達成可能な最小構造は、幅20nmの線である。生成されたNH2−末端を有するナノ構造は、その後の結合反応におけるテンプレートとして、つまり様々な化学表面修飾のための基礎を形成することができる。
【0026】
粒子の非金属コア
好適な非金属コア材料には、二酸化ケイ素、硫化金、二酸化チタン、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ケイ素、ケイ素由来材料(例えば、溶融石英、シリコーンジェル及びポリシロキサン)及びスズ由来材料、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、例えばデンドリマー、ポリ電解質、ヒドロゲル、ミセル及びベシクルなどの高分子が含まれるがそれらに限定されない。粒子は、蛍光色素、光学活性材料(すなわち、第1波長範囲内の光線を吸収し、次に第1波長範囲とは相違する第2波長範囲内の光線を発光する材料)を含有していてよい、及び/又はアミン基又はカルボキシレート基などの粒子を架橋させるのに好適な化学基を用いて官能化することができる。好ましい非金属材料は、誘電材料である。好ましい誘電性コア材料は、二酸化ケイ素又はポリスチレン(好ましくは硫酸塩基を含有する)である。粒子の非金属コアの平均径は、好ましくは10〜1,000nm,より好ましくは50〜700nm、及び最も好ましくは80〜500nmの範囲内である。ある用途のためには、10〜150nmの平均径が特に有益である。導波路材料を含む基質の場合は、平均径は、好ましくは3〜30μmの範囲内である。粒子の形態は、球状又は針形状、キューブ形状、ピラミッド形状などの非球状であってよい。好ましいのは球状コアである。好ましい実施形態では、平均径の15%以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下の標準偏差を有する単分散性非金属コア材料が使用される。粒子の平均径は、レーザー光散乱測定法(レイリー(Rayleigh)散乱)によって決定される。
【0027】
基質上への非金属コアの吸着
金表面の上に金ナノシェルが吸着される、例えばUS2003/0174384A1などに記載されたチップとは対照的に、本発明のチップは、最初に基質上に非金属コアを吸着させる工程によって製造される。これを達成するためには、非金属コア粒子は好適な溶液中に懸濁し、次に基質表面上に吸着される。
【0028】
基質上への粒子の吸着を媒介するためには、一般に知られている任意の方法を利用できる(Himmelhaus and Takei, Phys.Chem.Chem.Phys. 2002,4,pp.496−506)。例えば、表面張力に基づく物理的方法(Lenzmann et al., Chem.Mater. 1994,6,pp.156;Deckman et al., J.Vac.Sci.Techno1. B1989,7,pp.1832)及び毛管力(Rakers et al., Langmuir 1997,13,pp.7121;Denkov et al., Langmuir 1992,8,pp.3183)を適用できる。追加の制御は、ブラウン運動を最小限に抑えるために拘束された幾何学的形状内で水力学的流動場を使用して、又は懸濁液を冷却することによって獲得できる(Burmeister et al., Chem.Eng.Technol. 1998,21,pp.761)。さらに、懸濁液に加えられた高分子によって、非金属粒子と基質との間で引力を誘導するエントロピー力を生成できる(Rudhardt et al., Phys.Rev.Lett. 1998,81,pp.1330)。物理的手段の他に、粒子の表面吸着を制御するためには、化学的方法も適用できる。例えば、界面活性剤などの表面特性を変化させる塩又は化学材料を懸濁液に添加することによって、非金属粒子の表面電荷を変化させる、したがって粒子間の、及び粒子と基質との間の相互作用を変化させることができる(Chen et al., Langmuir 2000,16,pp.7825;Himmelhaus and Takei, Phys.Chem.Chem.Phys. 2002,4,pp.496)。一般に、コロイド状懸濁液の安定化を変化させる、すなわち粒子間及び粒子と表面との間の有効反発力を減少させる任意の方法は、表面上の非金属粒子の吸着質層を形成するために利用できる。
【0029】
好ましい調製スキームでは、好ましくは10〜800nmの平均径を備える単分散の、好ましくは硫酸塩化されたポリスチレン球が以下のようなまた別の加工法を用いて使用される:球懸濁液(好ましくは1〜4容積%の球を含有する)が脱イオン水及び7.6のpHでリン酸緩衝液と(1〜3):(1〜3):(1〜3)の容積比で混合される。混合する前に、EDCがリン酸緩衝液へ加えられる。次に、活性化された懸濁液が5分間以内に基質へ置かれる。自然金上に粒子を吸着させる場合には、緩衝液1mL当たり1〜10mgのEDCの数値は、表面上の粒子吸着の一様性に関して最高の結果を産生する。懸濁液を表面上に置いておき(例えば、1時間)、次に多量の脱イオン水を用いて洗い流す。最後に、このようにして入手したスチレン粒子の層を風乾させる。
【0030】
非金属コアは、単層として、又は多重層として吸着させることができる。単層の形成は特に好ましい。単層を形成するために適用される方法に依存して、粒子は規則的又は無作為の充填を達成できる。無作為の充填は、回折に関連する問題が生じないこと、及び大きな面積の生成の容易さのために好ましい。本発明のコーティングプロセスを用いると、35%超、好ましくは45%超、及び最も好ましくは50%超の極めて高度な無作為充填密度を達成できる。無作為の最密充填のための最高充填密度は、球の無作為順次吸着モデルの妨害限界である完全被覆の54.7%である(Hinrichsen et al., J.Stat.Phys.1986,44,pp.793)。
【0031】
少なくとも2つの相違する平均径の粒子を使用することも好ましいことがある。特に好ましい実施形態では、200〜800nmの範囲内の平均径を備える非金属コアが、10〜100nmの範囲内の平均径を備える非金属コアと組み合わせて使用される。表面上には、小さな粒子が大きな粒子間の間隙を充填できるため、したがって表面上の全粒子密度を増加させることができる。
【0032】
基質に特別仕様のトポロジー、様々な親水性又は化学的官能基などの様々な物理的又は化学的特性の領域を提供するパターン化された層が提供される場合は、非金属コア粒子の吸着は、粒子がこれらの領域の1つのみに、例えば、荷電表面の場合は粒子の電荷と反対の電荷を備える領域に(Chen et al., Langmuir 2000, 16,pp.7825)、親水性/疎水性パターンの場合はより親水性の領域に(Aizenberg et al., Phys.Rev.Lett.2000,84,pp.2997)、及びカルボキシル及びメチル官能基の交互の領域の場合には化学活性カルボキシル基にのみ吸着させるような方法で実施できる。後者の場合には、吸着は、本発明による好ましい方法である、EDCの添加(Himmelhaus and Takei, Phys.Chem.Chem.Phys.2002,4,pp.496−506)によって媒介できる。図3は、金表面上の化学パターンのマイクロコンタクト・プリンティング及び化学パターンへの曝露に先行した粒子懸濁液へのEDCの添加によって作製されたパターン化された粒子単層を示している(詳細については、図1及び実施例1を参照されたい)。
【0033】
導波路素子を含む基質の場合には、非金属粒子と導波路素子との間の光結合を提供するためにパターン化層を使用できる。
【0034】
非金属コアの金属化
本発明の好ましい実施形態によると、金属又は金属合金のコロイド、好ましくは遷移金属又は遷移金属合金が、非金属粒子及び/又は基質を含む表面上に吸着される。
【0035】
コロイドは、球状、又は針様又は三角形などの非球状形を有していてよい。コロイドは、有機シェル内に包埋された場合はパターン状で吸着させることができる(Spatz et al., Macromol.1996,29,,pp.3220)。
【0036】
吸着法は、非金属コアの性質に依存する。例えば、二酸化ケイ素粒子については、表面は、(アミノプロピル)トリメトキシシランで活性化することができ、続いて、溶液中の粒子については、Halas and coworkers in Langmuir 1998,14,pp.5396に記載されたプロセスに類似して、その上にコロイドが引き続いて吸着される。ポリスチレン粒子については、実施例においてより詳細に記載したように、粒子懸濁液のためにLirtsman et al. in Adv. Mater. 2001,13,pp.1253によって記載された方法を採用することができる。
【0037】
コロイドの吸着に引き続いて、(遷移)金属又は(遷移)金属合金被覆を増加させるため、及び/又はコロイド間の電気接触を改良するために、材料に無電界めっき工程(例えば、遷移金属塩及び還元剤を使用する)を受けさせることができる。コロイド沈着及び/又は無電界めっき工程の方法は、Kaltenpoth et al.(Adv.Mater. 2003,15,pp.1113)に記載されたように高導電性コーティングを達成するために1回以上繰り返すことができる。
【0038】
又は、コーティングは、当業者に知られているように、金属又は金属合金、好ましくは遷移金属又は遷移金属合金をスパッタリングする工程によって入手できる。
【0039】
好ましい実施形態では、非金属コアのコーティングは、蛍光色素又は他の光学活性材料を含有していてよい非金属中間層によって相互から分離された、相違する金属副層からなる。そのような非金属中間層は、例えば非金属材料の蒸着又はスパッタリングによって調製できる。又は、詳細には色素又は他の光学活性材料を中間層内に組み込むために、積層集積(LBL:layer−by−layer)技術を使用できる(Campbell et al., Chem.Mater.2005,17,pp.186−190;Decher and Schlenoff (eds.), Multilayer Thin Films, Wiley−VCH2003)。
【0040】
本発明の好ましい実施形態によると、非金属コアのコーティングは、本質的に非金属コアの自由表面を一様な方法で被覆する。すなわち、コーティングは吸着のために利用できる全表面上に形成され、この表面は、それらが他の粒子、又は基質表面に接触するために接近できない表面を除いて粒子表面である。コーティングは、単離されたコロイド、連続コロイド層、又は(遷移)金属又は(遷移)金属合金の連続層から構成されてよい。コーティングの連続性は、例えば、上述したような連続的コロイド沈着及び無電界めっき工程によって対応することができる。
【0041】
チップ表面の特性解析
金がポリスチレン粒子でコーティングされた表面上に熱蒸着し、それによりキャップ形状の金ナノ粒子を備える表面を提供するHimmelhaus and Takei(Phys.Chem.Chem.Phys., 2002,4,496−506;Sensors and Actuators B63(2000)24−30)によって記載された方法とは対照的に、本発明のチップは非金属コアを備える金属コーティング粒子を含み、このとき各非金属コアは、概して、少なくとも1つの他の非金属コア及び/又は基質表面を備える、金属で囲まれた接触点、いわゆる開口部を形成する。
【0042】
粒子のコア間の接触点は、好ましくは、概してそれらがθ>220°の範囲まで金属又は金属合金コーティングによって囲まれるように特徴付けられる(例えば、図5g及びhを参照されたい)。好ましい実施形態では、金属又は金属合金コーティングは、粒子を共通する接触点で連続的に結合する(図8b及びc)。
【0043】
球状粒子の場合は、コーティングは、基質表面に方向付けられた粒子の半球中にも存在する。
【0044】
粒子単層の場合は、各非金属コアは、概して、好ましくは少なくとも1つの他の、好ましくは少なくとも1.5の他の非金属コア及び基質表面の両方に接触する。粒子多重層の場合には、各非金属コアは、概して、好ましくは少なくとも2つの他の非金属コアに接触する。
【0045】
粒子のコア間で概して1未満の接触点が形成される場合には、金属又は金属合金が粒子のコア及び基質を連続方法で被覆する(図5d)。
【0046】
金属コーティングは、好ましくは非金属コアの自由表面、すなわち他のコア又は基質表面と接触していない表面を一様に被覆する。
【0047】
走査型電子顕微鏡(SEM)を使用すると、接触点の存在を証明する、及び囲んでいる金属又は金属合金コーティング(例えば、遷移金属又は遷移金属合金コーティング)及び粒子及び/又は基質間の連続結合の形成を特徴付けることができる。このために、粒子層の一部は両面接着テープ(図6A、6B)によって基質から引き離すことができ、依然として吸着されている粒子と以前に吸着された粒子との境界が分析される。この方法にしたがったSEM分析の実施例は、図6A、6Bのa)〜k)に示されている。
【0048】
非球状粒子の場合は、接触点を検証するために球状粒子について上述した方法と同一の分析方法を適用できる。しかし、開口部の形状、すなわち金属コーティング内の穴は、接触領域の対称性に依存するであろう。
【0049】
分析物を検出するための光学デバイス
本発明のチップは、それらをセンサ及び生化学アレイにおいて使用するために特に有用にする独特の光学特性を示す。金属薄膜、誘電材料、及び金ナノ粒子から構成された積層状構造は、IRからUV領域において明確な吸光特性を示すことが証明されている。そこで本発明は、分析物を検出するための光学デバイスであって、本発明のチップ、このチップを照射するための光学システム、チップ表面から反射、送信、散乱、又は回折された、好ましくは反射された光線を検出するための検出システムを含む光学デバイスをさらに提供する。測定された吸光スペクトルはチップ表面上への有機分子の吸着によって敏感に影響を受けることもまた注目された。驚くべきことに、本発明者らによって見いだされたように、本発明によるチップは、先行技術のチップより有意に高感受性である。
【0050】
照射又は励起光は、非金属コア及び/又は基質の金属コーティング内の伝導電子の集合的振動(プラズモン共鳴)を励起する。これらの集合的振動の励起は、表面から、又は表面を通して反射、散乱、又は回折された光線の消失を誘導し、これは表面プラズモン励起(例えば、共鳴波長及びピーク吸光度)の特性を決定するためにスペクトルによって、例えば、光ファイバー分光計によって分析することができる。共鳴波長は、典型的にはスペクトルの紫外、可視、又は赤外領域内に位置する。方位分解情報は、例えば、CCD検出器の活性表面上へ表面から、又は表面を通して反射、散乱、又は回折された光線の光学イメージングによって入手できる。又は、反射、送信、散乱、又は回折された光線は、暗視野顕微鏡、反射顕微鏡、内部全反射顕微鏡、又は近視野走査型光学顕微鏡を使用することによって、照射光(励起光)から分離できる。反射、送信、散乱、又は回折された光線のスペクトル特徴は、次にCCDカメラ、1つ以上の光ダイオード、光増倍管及び/又は分光計、単色光分光器及び/又はダイクロイックミラーと組み合わせた光ダイオードアレイによって分析かつ記録することができる。
【0051】
チップと一緒に使用できる単純な光学デバイスは、サンプルを照明するための光ファイバーに接続された白色光源、チップから反射、散乱又は回折された、又はチップを通して送信された光線を検出するための第2ファイバー、及びデータ保存及び評価のために電子機器に接続された光ファイバー分光計からなる(図8a及びb)。方位分解情報が望ましい場合は、検出用ファイバー及びチップは相互に対して水平方向に走査することができる。又は、検出のために使用する光ファイバーは、CCDチップ又はダイオードアレイ又は関連する方位分解光学検出機器の活性領域上に全チップ表面を光学イメージングする光学システムと取り換えることができる(図8c)。白色光源は、1つ以上の単色光源、例えば相違する波長で作動する3〜5個のLED又はレーザーダイオードと取り換えることができる、又はスペクトル分解又は方位分解情報の獲得を促進するためにチップ表面を照明する前にスペクトルフィルタリングシステムに接続することができる。
【0052】
少数の単色又は狭帯域光源、例えばLED又はレーザーダイオードが利用される場合は、表面の極めて近位での光学特性の変化のために各波長での反射、送信、散乱、又は回折された光線強度の変化を使用すると、例えば内挿法によって、又はスペクトルをモデル関数に当てはめることによって、全スペクトルの変化を決定することができる。
【0053】
また別のアプローチでは、表面に吸着した誘電粒子内部でのwhispering galleryモードは、例えば非金属粒子と、例えば平面的な導波管又は光ファイバーなどの導波路材料又は導波路素子との間の光結合によって励起される。この場合には、径>5μmを備える非金属粒子の使用は、電磁スペクトルの可視及び/又はNIR領域内での光励起のために有益である(Oraevsky, Quantum Electronics 2002,32,pp.377)。さらに、この場合には、粒子は好ましくは、それらが隣接粒子との制御された数の接触点を有する、例えば全く接触しないような方法で導波管表面上に沈着される。これは、例えば、粒径より小さなサイズを備える正方形のパターンをプリントすることによる、マイクロコンタクト・プリンティングの適用(実施例1を参照されたい)によって達成できる。粒子間の接触点を制御するまた別の例は、制御された数の粒子の整列した配列である。さらに、これはマイクロコンタクト・プリンティングによって達成できる(Kaltenpoth et al., Adv.Mater. 2003,13,pp.1113)。
【0054】
結合剤の固定化
チップを特定の分析物にとって選択的にするために、タンパク質、ペプチド、及び核酸などの分析物に(好ましくは可逆的に)結合できる結合剤でチップ表面をコーティングすることが好ましい。金属表面へ結合剤をコンジュゲート化させるための方法は知られており、本発明のチップ表面を誘導体化するために同等に好適である。例えば、本発明のチップは、遷移金属(例えば、金)−チオール化学を用いることによって化学修飾できる。例えば、金属コーティングした非金属コアを備える表面は、アミノ基でチップ表面を修飾できるようにアミノエタンチオールなどのアミノ基を有するチオール分子の溶液中に浸漬することができる。次に、pH7〜9の緩衝液中に懸濁させたN−ヒドロキシスクシンイミドを用いて修飾したビオチンは、EDCによって活性化し、アミノ基によって以前に修飾されたチップ表面に添加することができる。結果として、金属コーティングされた非金属コアをビオチンで修飾できるようにアミド結合が形成される。次に、4つの結合部位を含むアビジン又はストレプトアビジンをビオチンに結合させることができる。次に、タンパク質、ペプチド、DNA又は任意の他のリガンドなどの任意のビオチン誘導体化生体分子は、アビジン修飾された金属コーティングされた非金属コアの表面に結合させることができる。
【0055】
代替的には、アミノ末端化表面は、グルタルアルデヒド水溶液と反応させることができる。基質を水で洗い流した後、基質は、それらのアミノ基を介して生体分子への共有結合を促進するように、タンパク質又はペプチドの水溶液へ曝露される(R.Dahint et al., Anal.Chem., 1994,66,2888−2892)。チップが、例えばメルカプトウンデカン酸のエタノール溶液に曝露させることによって最初にカルボキシ末端化される場合は、末端官能基は、EDC及びN−ヒドロキシスクシンイミドの水溶液で活性化できる。最後に、タンパク質又はペプチドは、活性化された表面に水溶液からのそれらのアミノ基を介して共有結合する(Herrwerth et al., Langmuir 2003,19,1880−1887)。
【0056】
表面での生体特異的相互作用を制御及び同定する際の一般的な問題は、非特異的吸着であ る。この障害を克服するための一般的技術は、非特異的吸着部位を遮断するために官能化された基質を他の強力に接着している生体分子へ曝露させることに基づいている。しかし、このアプローチの効率は試験中の生体系に左右され、溶解した種と表面結合種との間で交換プロセスが発生することがある。さらに、非特異的に吸着した生体分子の除去には、豊富な洗浄工程を必要とするため、低親和性を備える特異的結合事象の同定を妨害する可能性がある。
【0057】
この問題の解決策は、ポリ−(PEG)及びオリゴ(エチレングリコール)(OEG)のフィルムなどの不活性材料中に結合剤を組み込むことである。生体特異的認識素子をOEG−末端化SAM内に組み込むために最も一般的技術は、タンパク質耐性EG分子及び結合剤結合するのに好適な(又は結合剤自体を含有する)第2の官能化分子種から構成される二成分溶液からの共吸着に基づいている。又は、表面グラフト化末端化官能化PEG分子への結合剤の直接結合もまた報告されている。
【0058】
近年、金表面上に高密度SAMを形成するCOOH−官能化ポリ(エチレングリコール)アルカンチオールが合成されている。生体特異的受容体が共有結合した後、フィルムは、高特異的認識を示しながら非特異的相互作用を効果的に抑制する(Herrwerth et al., Langmuir 2003,19,pp.1880−1887)。
【0059】
表面に固定化された結合実体は、抗体、ペプチド、オリゴヌクレオチド又はDNA(特異的標的オリゴヌクレオチド又はDNA、例えば単一ヌクレオチド多形(SNP)、又は炭水化物を含有していてよい特異的配列範囲の遺伝子にハイブリダイズする)などのタンパク質であってよい。非特異的相互作用を減少させるために、結合実体は、好ましくは不活性マトリックス材料内に組み込まれるであろう。
【0060】
本発明は、そこで分析物の濃度を決定するための方法であって、1つ以上の分析物を潜在的に含有している溶液を本発明のチップと接触させ、その間にこのチップ表面を照射する工程と、及びチップ表面から反射、散乱、又は回折された、又はチップ表面を通して送信された光線を検出する工程とを含む方法をさらに提供する。又は、反射、送信、散乱、又は回折された光線は、溶液の除去後に検出することもできる。分析物の吸着前後の光学表面特性を比較することによって、定性的及び定量的測定の両方が可能になる。より好ましくは、信号強度が連続的に記録される。これは吸着動態についての詳細な洞察を可能にし、本明細書で請求された器具の有用性を増強する。
【0061】
マイクロアレイ
好ましい実施形態では、複数の結合剤が、チップ表面上の様々な場所を様々な結合剤に指定できるような方法で表面上に固定化される。これを言い換えると、本発明は、核酸アレイ又はペプチドアレイなどの結合剤のマイクロアレイもまた提供する。マイクロアレイは、複数の固定化された試薬の空間的に規定して順序化されたミクロ配列である。例えば、結合剤は、アレイヤー又はマイクロアレイプリンターなどのスポッティング器具によって様々な場所に指定することができる(例えば、Angew.Chem.Int.Ed.2002,41,pp.1276−1289を参照されたい)。
【0062】
完全結合剤分子を固定化するよりむしろ、ペプチド又は核酸などの結合剤をインサイチューで表面上に形成することもできる。コンビナトリアル・ペプチド合成は、支持体上への「単量体トナー粒子」の移動を可能にする修飾カラーレザープリンター(A.Poustka et al., WOPatent00/35940,2000)を用いて実施できる。粒子は、保護されたアミノ酸又はヌクレオチド及び「固体溶媒」からなる。表面上に様々なアミノ酸を含有するトナー粒子の二次元パターンを形成した後に、温度が粒子の融点を超えて上昇される。次に、固体溶媒は液化し、これまでに捕捉された単量体が支持体へ結合する。コンビナトリアル方法でこれらの工程を繰り返すことによって、多数の様々な結合剤を表面上で生成することができる。又は、EP−A−619321に記載された技術もまた使用できる。コンビナトリアル合成が粒子の構造化又は非構造化層上で実施される場合は、結合事象の標識を使用しない高スループットスクリーニングは、チップの光学特性における変化について局所的に試験することによって促進される。
【0063】
結合剤アレイを固定化するためのチップとしては、上述したように粒子がパターン状で存在するチップを使用するのが特に好ましい。粒子がコーティングされた領域上に結合剤を選択的に適用するのが特に好ましい。例えば、表面が正方形パターンで粒子がコーティングされた領域を含む場合は、結合剤をこれらの領域上にスポッティングするのが好ましい。これはほぼこれらの領域のサイズ又はわずかに小さい領域を被覆する結合剤容量又は結合剤粒子(例えば、トナー粒子)を使用することによって達成できる。このアプローチは、個別領域間のクロストークを減少させる。
【0064】
その他の用途
チップ及び本発明に記載したチップを使用する光学デバイスは、基本的に、チップ表面の直近における誘電特性における変化を測定する。このため、本発明は誘電特性、物理的又は(生体)化学的信号を光学及び/又は電気信号に変換させるための尺度、すなわちトランスデューサーメカニズムとしてのチップ表面の近位における誘電特性、すなわち屈折率における変化を利用できる任意の用途に適用できる。例えば、本チップ及び器具は、チップ表面と接触している流体における温度変化を追跡するために使用できる。同一方法では、混合溶液中の溶質の濃度、例えば乱流に起因する流動プロファイルにおける不均質性、2種の相違する流体を混合した場合の濃度、チップ表面と接触している粘弾性又は弾性材料の密度における変化を測定できる。液体中の乱流の投影は、マイクロアレイの読み出しについて記載された方位分解検出機序の使用によってチップ表面上で監視することができよう。
【0065】
チップ表面が物理的又は化学的作用(例えば、力又は化学反応)に起因してその密度、したがってその屈折率を変化させることのできる材料でコーティングされる場合は、チップ及び光学デバイスを使用してこれらの変化を監視することができる。例えば、ヒドロゲルをチップ表面上に固定化することができ、したがってpH又は塩濃度、気体の湿度などにおける変化を追跡できる。
【実施例1】
【0066】
EDC媒介性吸着によるチップ表面の調製
ポリスチレン(PS)ナノビーズの高密度層でコーティングされたチップ表面を入手するために、本発明者らは以下のように進めた:約9mmの径及び約1mmの縁高さの96ウエルに分割されているポリスチレン製細胞培養プレート(FALCON、BD製の製品番号3002)の上面の内側を蒸着によって膜厚20nmの金フィルム(99.99%)でコーティングした。蒸着装置にはタングステン・フィラメントを装備し、5・10−7mbarの基準圧で作動させた。蒸着後、基質のウエル内に沈着した金塗膜は、表面を親水性にするために60分間にわたりカルボキシル末端化アルカンチオールの水溶液(TG、97%;脱イオン水中で10mM溶液)に曝露させた。60分後、この溶液を脱イオン水で洗い流した。次に、表面を以下の方法で調製した、350nmの平均径を備える単分散ポリスチレンビーズの水性懸濁液に曝露させた:水中に懸濁させた350nm PSビーズ(標準偏差<5%;Polysciences(米国ペンシルベニア州ウォリントン)を脱イオン水及びリン酸緩衝液(pH7.6)と2:1:3の容積比で混合した。懸濁液を混合する前に、少量のEDC(99%;Sigma−Aldrich)をリン酸緩衝液に加えると約3mMのEDC緩衝液が産生したため、次にこれを使用して懸濁液を調製した。懸濁液を基質の円形ウエル内に充填し、1時間放置した。引き続いて、これを多量の脱イオン水で洗い流し、風乾した。この手順に続いて、図2に示したような粒子の層が得られた。
【0067】
パターン化されたPSビーズ層を入手するために、上述した手順を以下の方法で修飾した(図1):TG水溶液に金表面を曝露させる前に、マイクロコンタクト・プリンティングによってオクタデカンチオール(ODT)のパターンを金表面上に形成した(Kumar et al. Science 1994, 263, pp.60−62)。それにより、エラストマー製レリーフスタンプ(ポリ(ジメチルシロキサン))をODTの1mMエタノール溶液と結合した。溶媒を蒸発させた後、スタンプを金表面上に柔らかく押し付け、それによりレリーフの突出している領域からのみ金表面上にODTを移動させた。次に、パターン化されていない表面の場合と同一の手順を適用した。すなわちチオグリコール酸塩の水溶液へ表面を曝露させ、引き続いてEDC活性化PSビーズ懸濁液に曝露させた。しかし、上述した手順とは対照的に、上記で使用した濃度の約2.5%の懸濁液中のEDC全濃度を産生するためにはEDCの量を減少させなければならなかった。洗い流して乾燥させた後に、図3に示したパターン化されたPSビーズ表面が形成されていた。
【実施例2】
【0068】
積層集積吸着(LBL)による非金属コアの金属化
先行実施例に記載したように調製したチップ表面を以下の方法で金属コーティングにより被覆した:2〜3nmの平均径を備えるコロイド状金粒子は、1mLの1% HAuCl4・3H2O(水性)を100mLのH2Oと強力に攪拌しながら1分間混合し、その後に1mLの1%クエン酸Na3溶液を加えることによって調製した。1分後、1%クエン酸Na3水溶液中の1mLの0.075% NaBH4をこの溶液に加え、これをさらに5分間攪拌した。この手順は、2〜3nmの平均径を備える、クエン酸安定化された、すなわち負荷電のコロイド状金粒子の形成をもたらす。PSビーズで被覆された表面上にコロイド状金粒子を吸着させる目的で、正の表面電荷を提供するために表面を最初に多価電解質でコーティングした。最初に、表面を90μL(ここでは、及び以下では1ウエル当たり90μL)のポリ(スチレン)スルホン酸(PSS)(1mLの0.5モルのNaCl(水性)当たり1mgのPSS)へ20分間にわたり曝露させた。次に、表面を脱イオン水で洗い流した。第2工程では、表面を90μLのポリ(エチレンイミン)(PEI)(1mLの0.5モルのNaCl(水性)当たり2mgのPEI))へさらに20分間にわたり曝露させ、次に脱イオン水で洗い流した。この手順は、負荷電の金コロイドの固定化を可能にする正荷電した表面を生じさせた。したがって、表面は引き続いて事前に調製した90μLの金コロイドへ5時間にわたり曝露させた。脱イオン水で洗い流した後、表面は金コロイドの吸着に起因する紫色の痕跡を示した。表面上のコロイド状金粒子の最適密度を保証するために、最後の工程をもう1回繰り返した。次に、吸着した金粒子を無電界めっき工程によって増加させた。そこで、表面を3.5mLの0.1% HauCl4・3H2O(水性)及び1.5mLの0.04M NH2OH(水性)の混合物(1ウエル当たり90μL)へ3分間曝露させた。次に、表面を脱イオン水で洗い流し、窒素気流中で乾燥させた。この調製段階で、表面は白色光で照射すると反射光で濃い紫色を示した。図4aは、結果として生じた表面の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【実施例3】
【0069】
スパッタリングによる非金属コアの金属化
又は、表面吸着PSビーズは、スパッタリングによって金薄膜で金属化した。5・10−7mbarの基準圧及び5.1・10−2mbarのアルゴン圧で作動させたスパッタコーティングシステム(BAL−TEC、Med020)によって、20nmの金をサンプル表面上にスパッタリングした。サンプルを金標的から50mmの距離に装着し、30mAで67秒間にわたりスパッタリングした。図4cは、結果として生じた表面のSEM顕微鏡写真を示している。
【0070】
[比較例1]
蒸着による非金属コアの金属化
以前の研究(Himmelhaus and Takei, Sens.Actuators B2000,63,pp. 24−30;Takei et al., Opt.Lett. 2002,27,pp.342)と直接比較するために、表面固定化PSビーズは、基質の金コーティングについて上述した同一方法で20nmの金の蒸着によってコーティングした。それにより、図4bにおいてSEM顕微鏡写真によって視認されるように、PSビーズの上半分上にキャップ形状の金シェルが形成される。
【0071】
[比較例2]
コア−シェル粒子を用いたチップ作製
また別の比較は、以前に多数の研究者らによって公表されたように(Oldenburg et al., Chem.Phys.Lett. 1998,288,pp.243;Lirtsman et al., Adv.Mater. 2001,13,pp.1253, Cassagneau and Caruso, Adv.Mater. 2002,14,pp.732;Kaltenpoth et al., Adv.Mater.2003,15,pp.1113)、誘電コア及び金属シェルからなるコア−シェル粒子を用いて実施した。
【0072】
本発明者らの試験において使用する350nmPSビーズのための金属コーティングを入手するために、懸濁液中の誘電粒子についてCarusoら(“Nano−engineering of inorganic and hydrate hollow spheres by colloidal templating”, Science 282:1111−114,1998)によって記載された積層集積吸着プロセスを適用した。手短には、120mLの350nmPSビーズ水性懸濁液を1mLのPEI溶液(1mLの0.5モルのNaCl(水性)当たり2mgのPEI))及び500μLのリン酸緩衝液(pH7.4)と20〜30分間にわたり混合した。そこで、この混合液を流体相から粒子を分離するために数回、8,000rpmで10分間にわたり遠心分離した。各遠心分離工程後、流体の透明部分をピペッティングによって除去し、次に減損を補填するために適正な量の脱イオン水を加えた。第1遠心分離サイクル中に懸濁液に加えた脱イオン水は、0.5Mの濃度でNaClを含有していた。その後の3回の遠心分離サイクルは、純粋脱イオン水を用いて実施した。それにより、PEIコーティングした正荷電のPSビーズを含有する水性懸濁液が入手された。
【0073】
PEIコーティングPSビーズ上にコロイド状金粒子(実施例2を参照)を吸着させるために、200μLのPSビーズ懸濁液を300μLの脱イオン水で希釈した。次に、1.5mLの金コロイド懸濁液を加えた。混合液の紫色が12時間後に消失した場合は、金コロイド懸濁液の添加を繰り返した。さらに12時間後、3回の遠心分離サイクルで過剰な金コロイドを除去した。
【0074】
PSビーズの周囲で金属閉殻を形成するために、350μLの0.1% HAuCl4・3H2O(水性)及び150μLの0.04M NH2OH(aq)は、PSビーズをコロイド状金粒子で装飾した後に入手した懸濁液に加えた。この混合物を2〜3分間振とうし、遠心分離及びピペッティングによって直ちに分離した。生じたコア−シェル粒子は、図7aに表示されている。
【0075】
実施例2の結果と直接比較するために金コーティングFALCON PSプレートのウエル(実施例1を参照)中にコア−シェル粒子の高密度層を形成するために、金表面を1時間にわたりシステアミンの水溶液に曝露させ、引き続いて脱イオン水で洗い流した。上述したように調製したコア−シェル粒子は、30分間にわたり200μLのコア−シェル粒子懸濁液を1mLのPSS溶液(実施例2を参照)と混合することによってPSSの追加の層でコーティングした。30分後に、上述したように、混合液を超遠心分離してピペッティングによって分離した。容量の減損を補填するために脱イオン水を加えた。この手順を3回繰り返した。次に、コア−シェル粒子懸濁液を2時間にわたりシステアミン官能化金表面上に配置した。最後に、懸濁液を洗い流し、表面を風乾した。結果として生じた粒子の層は、図7bに示されている。
【実施例4】
【0076】
様々な金属化法によって金でコーティングした粒子の層のSEM顕微鏡写真
図4a及び4bは、EP0965835A2によって調製したチップ表面を示している。図4c及び4dは、本発明によってスパッタリングにより調製したチップ表面を示している。図4e及び4fは、本発明によってコロイドの吸着及びその後の無電界めっき工程によって調製したチップ表面を示している。図4b、d及びfは、粒子間で形成されていた開口部が視認できるように(図6を参照)、接着テープを用いた隣接粒子の一部を除去した後の粒子の層を示している。図4dにおける基質表面上の暗色スポットは、除去された粒子の1つが位置している場所を指示している。同様に、除去された粒子の前方位置は図4a及びbに見ることができるが、これは金が以前に吸着された粒子によって影ができた領域には沈着していないからである。図4bでは、2つの粒子が約θ=180°の範囲まで蒸着によって沈着した金属コーティングによって囲まれている接触点を示している。金属コーティングは、蒸着によって表面の蒸着源から直接視域内にあるそれらの領域しかコーティングできないため、基質表面に向けて方向付けられた球の半分には存在しない。
【実施例5】
【0077】
様々に調製した表面の光学特性解析
上述した様々な方法によって金属化したPSビーズ表面の光学特性を決定するために、表面から反射した光線の波長依存性励起を図8aに描出した光ファイバーセットアップを用いて測定した。照明及び反射光線のサンプリングのために使用した反射ファイバープローブを表面の上方で約10mmの間隔で配置し、表面に対して垂直に方向付けた。最初に金コーティングPS基質の未処理表面領域、すなわち20nmの蒸着させた金でのみコーティングしたウエルの内側領域から参照スペクトルを記録した。次に、PSビーズでコーティングし、上述した様々な方法によって金属化したウエルを様々な場所(ウエルの中心及び中心から外れた2〜3スポット)で分析した。引き続いて、これらの層の吸光度を金参照と比較して計算した。
【0078】
有機分子の吸着に関して様々な表面の感受性についての尺度として、表面を引き続き8時間にわたりアルカンチオールのエタノール溶液(1mMオクタデカンチオール(ODT)、95%;Sigma−Aldrich)へ曝露させ、純粋エタノール(p.a.等級;Sigma−Aldrich)を用いて洗い流し、窒素気流中で乾燥させた。続いて、吸光度スペクトルを参照スペクトルと比較して記録した。機械的に制御した2Dトランスレータステージによって、第1回測定において調査したスポットと同一スポットを>3mmの検出領域の全径について<0.1mmの精度で分析できた。
【0079】
獲得したスペクトルは、全可視範囲内で著明なピークを観察できず、チオール吸着に起因する吸光スペクトルにおける変化が些細であった比較例2によって調製したコア−シェル粒子の層を除いて、図9に示されている。明らかに、(a)及び(b)の場合には約560nm及び(c)の場合には630nmの吸光度ピークは、チオールの吸着に応答して明確な変化を示す。ピークの位置及び対応する吸光度の大きさは表1に列挙されている。さらに、チオール吸着に起因するピーク位置における変化平均は、5サンプルにおける平均として表示されている。吸光度における変化は比較的小さいが、ピーク位置における明確な変化は特に、実施例2に記載したコロイド状金属粒子のLbL吸着によって調製した金属化を用いたチップ表面について観察できる。
【0080】
【表1】
表1:オクタデカンチオールの吸着前後の、チップ表面のUV−可視スペクトルのピーク位置及びピーク吸光度。これらの表面は、比較例1、実施例3、及び実施例2各々によって、コロイド状金属粒子の蒸着、スパッタリング、及びLbL沈着によって調製した。最後の2つの列に挙げたコア−シェル粒子は、比較例2による表面吸着前に溶液中で金属化した。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明のチップを調製するための好ましい方法を示す図である。(a)疎水性チオール(オクタデカンチオール、ODT)のマイクロコンタクト・プリンティングによる金コーティングポリスチレン(PS)基質の表面官能化;(b)チオグリコール酸塩(TG)による、プリントされたODT領域間の間隙の充填;(c)TGコーティング領域上への1−エチル3−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)塩酸カルボジイミド(EDC)化学による水溶液からのPSビーズの吸着;(d)PS粒子の周囲に金コーティングを形成するためにコロイド状金粒子及び引き続いての無電解めっきを用いたPSビーズの装飾(詳細については、例えば、実施例1及び2を参照)。
【図2】金属化前の、実施例1に提示したルーチンによって調製したチップ表面のSEM顕微鏡写真である。
【図3】金属化前の、実施例1によって調製したパターン化されたチップ表面のSEM顕微鏡写真である。
【図4】図4a−4fは、金属化の様々な方法によって調製した金属コーティングした非金属粒子層のSEM顕微鏡写真である。
【図5】図5a−5gは、金属コーティングによって囲まれている、隣接粒子及び/又は表面間の非金属接触点の形成を示す図である。図5a〜cは、接触している2つの粒子の接触点の中心を通る断面を示した図である。図5aは、EP0965835A2及びSensors and Actuators B2000,63,pp.24−30(例えば、比較例1を参照)による蒸着による粒子の金属化を示している。図5b及びcは、例えばスパッタリング(例えば、実施例3)又はコロイド状金属粒子の積層集積(例えば、実施例2)による、本発明による金属化を示している。図5dは、他の粒子と接触していない粒子の金属化を示している。金属コーティングは、粒子及び基質の両方を被覆しており、それによって粒子/基質界面で開口部を形成する。図5eは、蒸着による金属化によって達成されるように(図5aを参照)、θ=180°の範囲まで金属コーティングによって囲まれている接触点を示している。図5fは、本発明による金属化によって達成できるように(図5b及びcを参照)、θ=360°の範囲まで金属コーティングによって囲まれている接触点を示している。図5g及びhは、θ>220°の範囲まで金属コーティングによって囲まれている、非金属粒子の接触点の実施例を示している。
【図6A】SEMを使用することによって粒子及び/又は基質間の開口部を検証する方法を示した図である。a及びbは、以前に吸着された粒子の一部が接着テープの使用によって除去されているチップ表面を示している。c及びdは、表面上にまだ存在する粒子と取り除かれた、以前は隣接していた粒子との接触点を示している。取り除かれた粒子の以前の存在は、基質の金属コーティング内の開口部から判定できる。e及びfは、c及びdに示した類似領域の上面図を示している。取り除かれた粒子の以前の位置を指示している粒子上の金属残留物は、金属コーティングが隣接する粒子を結合することを示している;結合は、粒子接触の検査によっても観察することができる。
【図6B】gは、以前に存在していた粒子が基質の金属コーティングに結合していることを示している基質表面上の残留物を示している。hは、両面接着テープによって基質から取り除かれた粒子を示している。このテープは、次に以前に基質と接触していた粒子表面を検査するために上下逆にSEMサンプルホルダー上に載荷された。明確に、基質との開口部の形成を同定できる。i〜kは、第1及び第2粒子の層の粒子間の開口部の形成を示している。以前には3つの隣接粒子と下方で接触していた1つの粒子のみが取り除かれている。非金属接触点を囲む金属縁を明確に認識できる。
【図7】図7a〜7bは、コア−シェル粒子(a)及び比較例2によって調製されたコア−シェル粒子によって形成されたチップ表面を示した図である。
【図8】図8a〜8bは、表面から反射、散乱、及び/又は回折された、又は表面を通して送信された光線を検出するために、光ファイバープローブを用いて吸光スペクトルを獲得するための光学デバイスのセットアップを例示している図である。散乱を検出するために、追加して積分球を使用できる。図8cは、測定のためのまた別のイメージングセットアップの例を示す図である。代替的に、基質を通過する送信においては同時方位分解測定もまた実施できる。
【図9】図9aは、EP0965835A2によって調製されたチップ表面、及びこのチップ上のチオール吸着実験前後の吸光スペクトルのグラフ表示である(例えば、実施例5)。図9bは、本発明によって調製されたチップ表面、及びこのチップ上のチオール吸着前後の吸光スペクトルのグラフ表示である。図9cは、本発明によってコロイド吸着及びその後の無電解めっきによって調製されたチップ表面、及びこのチオール吸着実験前後の吸光スペクトルのグラフ表示である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの任意で誘電性の表面を備える基質と、前記少なくとも1つの表面の上に、非金属コア及び金属又は金属合金から製造されたコーティングを有する粒子の層とを含むチップであって、各非金属コアが、概して少なくとも1つの他の非金属コア及び/又は基質表面を備える、金属で囲まれた接触点を形成すること、
を特徴とするチップ。
【請求項2】
少なくとも1つの表面を備える基質と、及び前記少なくとも1つの表面の上に非金属コア及び金属又は金属合金から製造されたコーティングを有する粒子の層とを含むチップであって、
金属又は金属合金から製造されたコーティングを提供するために、
前記基質の表面上に非金属粒子を吸着させる工程と、及び、引き続いて、
前記非金属粒子上に金属又は金属合金のコロイドを吸着させる工程と、
又はその代わりに、前記非金属粒子上に金属クラスター又は金属合金クラスターをスパッタリングする工程とによって得られること、
を特徴とするチップ。
【請求項3】
前記金属シェルが、非金属コアの自由表面、すなわち他のコアとも前記基質表面とも接触していない表面を一様に被覆すること、を特徴とする請求項1又は2に記載のチップ。
【請求項4】
前記非金属コアが球状形であり、前記金属コーティングは前記基質表面に方向付けられた粒子の半球中にも存在すること、を特徴とする先行請求項のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項5】
前記コーティングが、遷移金属又は遷移金属合金から製造されること、を特徴とする先行請求項のいずれか一項記載のチップ。
【請求項6】
金属又は金属合金から構成される層が、前記基質と非金属コア及び遷移金属又は遷移金属合金から製造されたシェルを有する前記粒子の層との間に提供され、各非金属コアは、概して、少なくとも1つの他の非金属コアとの金属で囲まれた接触点を形成すること、を特徴とする先行請求項のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項7】
金属又は金属合金から構成される前記層が、遷移金属、遷移金属合金、又はアルミニウムから構成されること、を特徴とする請求項6に記載のチップ。
【請求項8】
非金属層が、遷移金属又は遷移金属合金から構成される前記層と前記粒子の層との間に提供されること、を特徴とする請求項6又は7に記載のチップ。
【請求項9】
前記基質が、導波路材料からなる、又は導波路素子を含むこと、を特徴とする先行請求項の1項又は複数項に記載のチップ。
【請求項10】
前記粒子の層が、少なくとも35%の充填密度を備える単層であること、を特徴とする先行請求項の一項以上に記載のチップ。
【請求項11】
前記粒子が、表面上に1つのパターンで存在すること、を特徴とする先行請求項の一項又は複数項に記載のチップ。
【請求項12】
分析物に結合できる結合剤が、前記チップの表面上に固定化されること、を特徴とする先行請求項の一項以上に記載のチップ。
【請求項13】
複数の結合剤が、前記チップ表面上の様々な場所を様々な結合剤に指定できるような方法で前記表面上に固定化されること、を特徴とする請求項12に記載のチップ。
【請求項14】
金属又は金属合金から製造されたコーティングを提供するために、
前記基質の表面上に非金属粒子を吸着させる工程と、及び、引き続いて、
前記非金属粒子上に金属又は金属合金のコロイドを吸着させる工程と、
又はその代わりに、前記非金属粒子上に金属クラスター又は金属合金クラスターをスパッタリングする工程とを含むこと、
を特徴とする先行請求項のいずれか一項記載の前記チップを調製する方法。
【請求項15】
分析物を検出するための光学デバイスであって、請求項1〜13のいずれか一項に記載のチップ、前記チップを照射するための光学システム、前記チップ表面から反射、送信、散乱、又は回折された光線を検出するための検出システムを含むこと、
を特徴とする光学デバイス。
【請求項16】
分析物の濃度を決定するための方法であって、
請求項1〜13の任意の一項に記載の前記チップから反射、送信、散乱、又は回折された光線を検出する工程と、
1つ以上の分析物を潜在的に含有する溶液を前記チップと接触させる工程と、及び
前記溶液への曝露中又は曝露後に前記チップから反射、送信、散乱、又は回折された光線を検出する工程とを含むこと、
を特徴とする方法。
【請求項1】
少なくとも1つの任意で誘電性の表面を備える基質と、前記少なくとも1つの表面の上に、非金属コア及び金属又は金属合金から製造されたコーティングを有する粒子の層とを含むチップであって、各非金属コアが、概して少なくとも1つの他の非金属コア及び/又は基質表面を備える、金属で囲まれた接触点を形成すること、
を特徴とするチップ。
【請求項2】
少なくとも1つの表面を備える基質と、及び前記少なくとも1つの表面の上に非金属コア及び金属又は金属合金から製造されたコーティングを有する粒子の層とを含むチップであって、
金属又は金属合金から製造されたコーティングを提供するために、
前記基質の表面上に非金属粒子を吸着させる工程と、及び、引き続いて、
前記非金属粒子上に金属又は金属合金のコロイドを吸着させる工程と、
又はその代わりに、前記非金属粒子上に金属クラスター又は金属合金クラスターをスパッタリングする工程とによって得られること、
を特徴とするチップ。
【請求項3】
前記金属シェルが、非金属コアの自由表面、すなわち他のコアとも前記基質表面とも接触していない表面を一様に被覆すること、を特徴とする請求項1又は2に記載のチップ。
【請求項4】
前記非金属コアが球状形であり、前記金属コーティングは前記基質表面に方向付けられた粒子の半球中にも存在すること、を特徴とする先行請求項のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項5】
前記コーティングが、遷移金属又は遷移金属合金から製造されること、を特徴とする先行請求項のいずれか一項記載のチップ。
【請求項6】
金属又は金属合金から構成される層が、前記基質と非金属コア及び遷移金属又は遷移金属合金から製造されたシェルを有する前記粒子の層との間に提供され、各非金属コアは、概して、少なくとも1つの他の非金属コアとの金属で囲まれた接触点を形成すること、を特徴とする先行請求項のいずれか一項に記載のチップ。
【請求項7】
金属又は金属合金から構成される前記層が、遷移金属、遷移金属合金、又はアルミニウムから構成されること、を特徴とする請求項6に記載のチップ。
【請求項8】
非金属層が、遷移金属又は遷移金属合金から構成される前記層と前記粒子の層との間に提供されること、を特徴とする請求項6又は7に記載のチップ。
【請求項9】
前記基質が、導波路材料からなる、又は導波路素子を含むこと、を特徴とする先行請求項の1項又は複数項に記載のチップ。
【請求項10】
前記粒子の層が、少なくとも35%の充填密度を備える単層であること、を特徴とする先行請求項の一項以上に記載のチップ。
【請求項11】
前記粒子が、表面上に1つのパターンで存在すること、を特徴とする先行請求項の一項又は複数項に記載のチップ。
【請求項12】
分析物に結合できる結合剤が、前記チップの表面上に固定化されること、を特徴とする先行請求項の一項以上に記載のチップ。
【請求項13】
複数の結合剤が、前記チップ表面上の様々な場所を様々な結合剤に指定できるような方法で前記表面上に固定化されること、を特徴とする請求項12に記載のチップ。
【請求項14】
金属又は金属合金から製造されたコーティングを提供するために、
前記基質の表面上に非金属粒子を吸着させる工程と、及び、引き続いて、
前記非金属粒子上に金属又は金属合金のコロイドを吸着させる工程と、
又はその代わりに、前記非金属粒子上に金属クラスター又は金属合金クラスターをスパッタリングする工程とを含むこと、
を特徴とする先行請求項のいずれか一項記載の前記チップを調製する方法。
【請求項15】
分析物を検出するための光学デバイスであって、請求項1〜13のいずれか一項に記載のチップ、前記チップを照射するための光学システム、前記チップ表面から反射、送信、散乱、又は回折された光線を検出するための検出システムを含むこと、
を特徴とする光学デバイス。
【請求項16】
分析物の濃度を決定するための方法であって、
請求項1〜13の任意の一項に記載の前記チップから反射、送信、散乱、又は回折された光線を検出する工程と、
1つ以上の分析物を潜在的に含有する溶液を前記チップと接触させる工程と、及び
前記溶液への曝露中又は曝露後に前記チップから反射、送信、散乱、又は回折された光線を検出する工程とを含むこと、
を特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2008−538414(P2008−538414A)
【公表日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507017(P2008−507017)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003714
【国際公開番号】WO2006/111414
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(306008724)富士レビオ株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003714
【国際公開番号】WO2006/111414
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(306008724)富士レビオ株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]