説明

金属タンパク質の活性を阻害するために有用な抗体および該抗体を含有する医薬組成物

本発明は、一般式(I)を有する化合物(式中、mおよびnはそれぞれが独立して、1〜6の整数である;X〜XおよびY〜Yはそれぞれが独立して、OまたはSである;R〜Rはそれぞれが独立して、水素、アルキルおよびシクロアルキルからなる群から選択される;およびRは(CH)x−C(=O)NR’−(CH)y−NR’R”であり、ただし:xおよびyはそれぞれが独立して、1〜6の整数である;およびR’およびR”はそれぞれが独立して、水素、アルキルおよびシクロアルキルからなる群から選択される)および上記化合物に特異的に結合することができる抗原認識領域を含む抗体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属タンパク質(例えば、メタロプロテアーゼ)の活性を阻害するために使用することができるハプテン分子および該ハプテン分子に対する抗体、ならびに、金属タンパク質の異常な活性に関連する疾患(例えば、転移性ガン)を処置するために該抗体を利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリックス金属タンパク質(MMP)は、細胞外マトリックス(ECM)のリモデリングに関与する重要な酵素である。これらの酵素は関節軟骨または基底膜の様々な結合組織成分を破壊することができる。
【0003】
ヒトMMP遺伝子ファミリーは、少なくとも28の構造的に関連したタンパク質(図1参照)からなり、これらのタンパク質は、類似した全体的な球状トポロジーを共有する(図2およびBorkakoti(1998))。それぞれのMMPが不活性な潜在型プロ酵素として分泌される。触媒作用の亜鉛ドメインが約180個のアミノ酸から構成され、これらのアミノ酸において、その高度に保存された配列(HE−GH−LGL−H)により、金属Zn(2+)イオンに結合する3つのヒスチジン(すなわち、H)残基が提供される。プロ酵素における触媒作用亜鉛イオンの第4の結合部位がシステイン残基に結合しており(Morgunova他、1999)、このシステイン残基は、酵素が活性化されたとき、活性部位から解離する(Van WartおよびBirkedal−Hansen、1990)。その結果、活性化されたMMPにおける第4の結合部位が、保存されたグルタミン酸残基に対しても水素結合する水分子によって占められる。このプロセスにより、活性化された水分子による標的基質のペプチド結合の加水分解が促進される。
【0004】
メタロプロテアーゼによる結合組織の制御されない分解は、過度なMMP活性から生じるか、または、生来的なMMP組織阻害剤(TIMP)とMMPとの間におけるバランスの崩れた比率から生じるとおそらくは考えられる多くの病理学的状態の特徴の1つである。TIMPは、MMPの活性な結合部位との化学量論的な複合体を形成することによってMMPを阻害する(Gomez他、1997;Henriet他、1999;Bode他、1999;Will他、1996)。TIMPのレベルが不十分であるとき、ECMの進行性のゆっくりした分解により、軟骨マトリックスの喪失がリウマチ様関節炎(Walakovits他、Arthritis Rheum、35:35〜42、1992)および変形性関節炎(Dean他、J.Clin.Invest.、84:678〜685、1989)において引き起こされ得るか、または、骨マトリックスの分解が骨粗鬆症(Hill他、Biochem.J.、308:167〜175、1995)において引き起こされ得る。他の状況において、例えば、うっ血性心不全では、心臓のECMの急速な分解が生じ得る(Armstrong他、Canadian J.Cardiol.10:214〜220、1994)。
【0005】
加えて、MMPが、下記のようなサイトカインおよびケモカインの成熟化において役割を果たすことが知られている:例えば、ガレクチン−3(Ochieng J.、Biochemistry、1994、33(47):14109〜14)、プラスミノーゲン(Patterson,BC.、JBC、1997、272(46):28823〜5)、インターロイキン−8、結合組織活性化ペプチドIII、血小板因子−4(Van den Steen、2000、Blood、2000(Oct 15)、96(8):2673〜81)、プロ−インターロイキン−1β(Schonbeck、1998)、インターロイキン−2受容体α鎖[Sheu,B.C、Hsu,S.M.、Ho,H.、Lien,H.C.、Huang,S.C.、Lin,R.H.、A novel role of metalloproteinase in cancer−mediated immunosuppression Cancer Research(2001)、61、237〜242]、およびプロ−トランスフォーミング増殖因子−β[TGF−β、Yu,Q.、Stamenkovic,I.Cell surface−localized matrix metalloproteinase−9 proteolytically activates TGF−beta and promotes tumor invasion and angiogenesis Genes Dev(2000)、14、163〜176]など。
【0006】
MMPの調節されない活性にも関係づけられる他の病理学的状態には、転移性腫瘍細胞によるECMの急速なリモデリングが含まれる。そのような状態では、活性化された様々なMMPが、ガン細胞によって、または、その周りの組織によってそのどちらかで発現される。様々なMMPが腫瘍の成長および拡大に関与しているという注目すべき証拠がある(例えば、Davidson他、Chemistry&Industry、258〜261、1997、および、それにおける参考文献を参照のこと)。腫瘍転移のプロセスにおいて、様々なMMPが、ECMを分解するために使用され、このことが、原発性腫瘍のガン細胞が付近の血管に侵入することを許し、血管を介して、ガン細胞は異なる器官に運ばれ、二次的腫瘍を確立する。これらの二次的部位での侵襲的成長が、組織を分解するMMPによって媒介される。加えて、MMP活性は、腫瘍が特定のサイズを超えて成長するために要求される新しい血管の侵襲的な、内部に向かう成長(これは腫瘍起因性血管形成とも呼ばれる)に寄与している。MMPファミリーのメンバーの中で、分泌型のヒトMMP−9(ゼラチナーゼBとしても知られている)は、細胞外マトリックス(ECM)の異化においてだけでなく、神経学的疾患(例えば、多発性硬化症(MS))での関連があるタンパク質基質のプロセシングにおいてもまた重要な役割を有することが示されている(Opdenakker、2003)。近年の研究では、MMP−9が、プレプロセシングされたII型コラーゲンを切断することによって自己免疫疾患を促進させることにおいて非常に重要な役割を有することが示された(Van den Steen、2004)。その生成物が、様々な自己免疫疾患を生じさせると考えられるレムナントエピトープであるII型コラーゲンフラグメントである。
【0007】
ヒトの生理学および病理学における様々なMMPの幅広い役割を考えた場合、数多くの努力がこれまで、MMPの過度な活性を阻害する薬物を設計するために行われていることは驚くことではない。
【0008】
薬物発見の様々な努力が、亜鉛イオンに配位し、それにより、標的MMPを不活性化する官能基を含有する阻害剤クラスに集中している。1つのそのような阻害剤クラスが、繊維状コラーゲンの小ペプチドアナログであるヒドロキサム酸系阻害剤であり、ヒドロキサム酸系阻害剤は触媒作用部位内の亜鉛イオンとヒドロキサム酸基のヒドロキシル酸素およびカルボニル酸素を介して二座様式で特異的に相互作用する[Grams他(1995)、Biochem.34:14012〜14020;Bode他(1994)、EMBO J.、13:1263〜1269]。
【0009】
ヒドロキサム酸に基づくMMP阻害剤は通常、炭素骨格(WO95/29892、WO97/24117、WO97/49679およびEP0780386)、ペプチジル骨格(WO90/05719、WO93/20047、WO95/09841およびWO96/06074)またはペプチドミメティック骨格[Schwartz他、Progr.Med.Chem.、29:271〜334(1992);Rasmussen他、Pharmacol.Ther.、75:69〜75(1997);Denis他、Invest.New Drugs、15:175〜185(1997)]のいずれかから構成される。代替として、ヒドロキサム酸に基づくMMP阻害剤は、一方の側でフェニル環に結合するスルホンアミドスルホニル基と、1個〜4個の炭素原子の鎖を介してヒドロキサム酸基に結合するスルホンアミド窒素とを含有する(EP0757984A1)。
【0010】
ペプチドに基づく他のMMP阻害剤として、コラゲナーゼ阻害活性を示すチオールアミド(米国特許第4595700号)、MMP−3、MMP−2およびコラゲナーゼを阻害する、ビフェニルエチルグリシン部分を含有するN−カルボキシアルキル誘導体(Durette他、WO−9529689)、各種MMP、TNF−αおよびアグリカーゼを阻害するラクタム誘導体(米国特許第6495699号を参照のこと)、ならびに、三環スルホンアミド化合物(米国特許第6492422号を参照のこと)がある。
【0011】
ペプチドに基づくMMP阻害剤は明らかな治療的可能性を有するが、臨床治療におけるそれらの使用は制限される。ペプチドに基づくヒドロキサム酸系薬剤は、製造に費用がかかり、また、低い代謝安定性および経口での低い生物学的利用能を有する[例えば、バチマスタット(BB−94)]。これらの化合物は迅速なグルクロン酸抱合を受け、カルボン酸に酸化され、胆汁に排出される[Singh他、Bioorg.Med.Chem.Lett.5:337〜342、1995;Hodgson、「Remodelling MMPIs」、Biotechnology、13:554〜557、1995]。加えて、ペプチドに基づくMMP阻害剤は、多くの場合、MMP酵素のそれぞれに対して同じまたは類似する阻害作用を示す。例えば、バチマスタットは、約1nM〜約20nMのIC50値を、MMP−1、MMP−2、MMP−3、MMP−7およびMMP−9のそれぞれに対して示すことが報告される[Rasmussen他、Pharmacol.Ther.、75(1):69〜75(1997)]。さらに、いくつかのヒドロキサム酸系阻害剤の使用には、重篤な副作用が伴った:例えば、マリマスタット(BB−2516)による筋骨格問題;CGS27023A(Novartis)による広範囲に及ぶ斑丘疹性発疹[Levitt他、2001、Clin.Cancer Res.7:1912〜1922];BAY12−9566(Bayer)による肝臓異常、貧血、肩部痛および背痛、血小板減少症、吐き気、疲労、下痢、ならびに、深部静脈血栓症[Heath他、2001、Cancer Chemother.Pharmacol.48:269〜274]。そのうえ、マリマスタット、プリノマスタット(AG3340、Agouron)およびBay12−9566を用いた進行ガン患者に対する第III相臨床試験では、転移を阻害することにおける臨床的効力がないことが明らかにされた(Zucker他、2000、Oncogene、19:6642〜50)。
【0012】
他のMMP阻害剤として、いくつかのMMPの発現をインビトロで阻止することが示された化学的に修飾された非微生物性テトラサイクリン系化合物(CMT)がある。しかしながら、これらの化合物のインビボ効力は、限定されることが見出された。例えば、CMT阻害剤のドキシサイクリンは、ヒト患者において、アテローム硬化性頸動脈プラークにおけるMMP−1の組織レベルを低下させたが、MMP−2、MMP−3またはMMP−9の組織レベルは低下させなかった(Axisa他、2002、Stroke、33:2858〜2864)。
【0013】
近年、機構に基づいたMMP阻害剤のSB−3CTがMMPの活性部位のX線結晶学情報に従って設計された(Brown他、2000)。X線吸収研究では、この分子が触媒作用の亜鉛に結合することにより、活性部位の金属イオンの周りの立体配座環境が再構築されて、プロ酵素の立体配座環境に戻ることが解明された[Kleifeld他、2001、J Biol.Chem.276:17125〜31]。しかしながら、この薬剤を用いて得られる治療効力は今後、明らかにされなければならない。
【0014】
別のクラスの天然の阻害剤がモノクローナル抗体である。いくつかの抗体が、MMP−1の触媒作用ドメインに含まれる特定のペプチド配列に対して惹起されている(Galvez他、2001、J.Biol.Chem.、276:37491〜37500)。しかしながら、これらの抗体はMMPのインビトロ活性を阻害することができたが、そのような抗体のインビボ有効性を明らかにする結果はこれまで明らかにされていない。
【0015】
本明細書において上記されるように、MMPの触媒作用部位は、酵素活性化の後で基質結合のために利用可能になる配位した金属イオンを含む(図2a〜cを参照のこと)。従って、酵素の一次アミノ酸配列に向けられた従来の抗体は、酵素の活性型形態と不活性型形態とを区別せず、従って、そのような酵素の強力な阻害剤として役立たないことが考えられる。
【0016】
本発明者らは、MMPの触媒作用部位の電子的決定基および構造的決定基の両方を認識する抗体がその強力な阻害剤であり、また、そのようなものとして、バランスの崩れたMMP活性に関連する疾患を処置するために使用できることを以前に示している(PCT公開WO2004/087042を参照のこと)。
【0017】
従って、金属タンパク質の触媒作用部位の電子的決定基および構造的決定基を模倣する特異的なハプテン化合物、ならびに、そのようなハプテン化合物に対して向けられる特異的な抗体が必要であることが広く認識されており、また、そのようなハプテン化合物、ならびに、そのような特異的な抗体を有することは非常に望ましいと考えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の1つの態様によれば、一般式(I)を有する化合物が提供される:

式中、
mおよびnはそれぞれが独立して、1〜6の整数である;
〜XおよびY〜Yはそれぞれが独立して、OまたはSである;
〜Rはそれぞれが独立して、水素、アルキルおよびシクロアルキルからなる群から選択される;および
Rは(CH)x−C(=O)NR’−(CH)y−NR’R”であり、
ただし:
xおよびyはそれぞれが独立して、1〜6の整数である;および
R’およびR”はそれぞれが独立して、水素、アルキルおよびシクロアルキルからなる群から選択される。
【0019】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、化合物は式(II)を有する:

式中、R=−CH−C(=O)NH−CH−CH−NH
【0020】
本発明の別の態様によれば、式(II)を有する化合物が提供される:

式中、R=−CH−C(=O)NH−CH−CH−NH
【0021】
本発明のさらに別の態様によれば、上記化合物と特異的に結合することができる抗原認識領域を含む抗体が提供される。
【0022】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、抗原認識領域は、配列番号7、8、9、10、11および12からなる群から選択されるCDRアミノ酸配列を含む。
【0023】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、CDRアミノ酸配列は、配列番号13、14、15、16、17および18からなる群から選択される核酸配列によってコードされる。
【0024】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、抗体は金属タンパク質の活性を阻害することができる。
【0025】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、金属タンパク質はマトリックスメタロプロテアーゼである。
【0026】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、マトリックスメタロプロテアーゼはゼラチナーゼである。
【0027】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、ゼラチナーゼは、MMP−2およびMMP−9からなる群から選択される。
【0028】
本発明のさらに別の態様によれば、金属タンパク質阻害剤を製造する方法が提供され、該方法は、上記化合物に向けられた抗体を作製し、それにより、金属タンパク質阻害剤を製造することを含む。
【0029】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、抗体はポリクローナル抗体である。
【0030】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、抗体はモノクローナル抗体である。
【0031】
本発明のさらなる態様によれば、本発明の抗体と医薬的に許容され得る担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0032】
本発明のさらなる態様によれば、金属タンパク質のバランスの崩れた活性または異常な活性に関連する疾患をその処置の必要性のある対象において処置する方法が提供され、該方法は、請求項4〜10に記載される抗体のいずれか1つの治療有効量を対象に投与し、それにより、金属タンパク質のバランスの崩れた活性または異常な活性に関連する疾患を対象において処置することを含む。
【0033】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、疾患は炎症性腸疾患である。
【0034】
本発明のさらなる態様によれば、マトリックスメタロプロテアーゼ活性を細胞において阻害する方法が提供され、該方法は、細胞を請求項4〜10に記載される抗体のいずれか1つと接触させ、それにより、マトリックスメタロプロテアーゼ活性を細胞において阻害することを含む。
【0035】
本発明は、金属タンパク質の触媒作用部位の電子的決定基および構造的決定基の両方を認識する抗体を作製するために使用されることができる新規なハプテン組成物を提供することによって、現在知られている形態の欠点に対処することに成功している。
【0036】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0037】
本明細書では本発明を単に例示し添付図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施態様を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1A〜図1Dは、Co/ZnTCPP、すなわち、[メソ−テトラキス(4−カルボキシフェニル)ポルフィリナト]コバルト/亜鉛(II)(図1A〜B)、Imisdp、すなわち、[2−(2−アミノエチルカルボモイル)エトキシメチル]−トリス−[2−(N−(3−イミダゾール−1−イル−プロピル))エトキシメチル]メタン)、および、MMPにおける触媒作用亜鉛部位での保存された亜鉛−タンパク質結合の分子構造の概略表示である。図1E〜図1Hは、図1A〜dに示される構造の三次元スキームである。ZnTCPPは平面の立体配座を保持し、一方、CoTCPPは、ひずみのあるミクロサイクル立体配座を示すことに留意すること。注目すべきことに、misdpの構造は、図1Gにおいて明らかにされるようにMMP−9における触媒作用亜鉛イオンの最隣接環境と非常に類似している。
【図2】図2Aは、Imisdpの三次元での計算された構造(緑色の炭素原子)と、MMP−9の活性部位での3つの保存されたヒスチジン(PDBコード:1GKC、灰色の炭素原子)との間における構造的重なりである。触媒作用亜鉛イオンがオレンジ色の球として示され、水分子が青色の球として示され、窒素が青色で着色され、酸素が赤色で着色される。図2Bは、ZnTCPPのポルフィリン環(CSDコード:AKICOM)(緑色の炭素原子)と、MMP−9の活性部位での3つの保存されたヒスチジン(灰色の炭素原子、PDBコード:1GKC)との間における構造的重なりである。触媒作用亜鉛イオンがオレンジ色の球として示され、窒素が青色で着色される。
【図3】図3A〜図3Cは、マウスIgG−アガロースに固定化されたmAbが溶液から組換えMMP−2触媒作用ドメイン(MMP−2cat)またはPro−MMP−2およびPro−MMP−9を捕らえることができることを示すウエスタンブロット画像である。それぞれの実験のために使用された抗体は、6C6、13E11および13E15である。図3A:MMP−2cat(2μg)を、抗マウスIgG−アガロース(コントロール、レーン1)、または、抗CoTCPP mAb(10μg)−抗マウスIgG−アガロース、抗ZnTCPP mAb(10μg)−抗マウスIgG−アガロースおよび抗Imisdp mAb(10μg)−抗マウスIgG−アガロースと20℃で2時間インキュベーションし、免疫沈殿物(レーン2、3、5)を遠心分離し、3回洗浄し、SDS/PAGEゲルで分離し、クーマシー染色によって可視化した。図3B:Pro−MMP−2、Pro−MMP−9を、Aの場合と同じ様式でmAb−抗マウスIgG−アガロースとインキュベーションした。免疫沈殿物(レーン2、レーン4、レーン6の左側、および、レーン1、レーン3、レーン5の右側)および非結合画分(レーン1、レーン3、レーン5の左側、および、レーン2、レーン4、レーン6の右側)をSDS/PAGEゲルで分離し、クーマシー染色によって可視化した。図3C:APMAによる活性化を受けたHT1080細胞(左)、または、活性化を受けなかったHT1080細胞(右)の馴化培地を、抗CoTCPP mAbにより免疫沈殿し、MMP−2に対する特異的抗体によるウエスタンブロットによって分析した。
【図4】図4A〜図4Bは、MMP−2(A)およびMMP−9(B)の抗CoTCPP mAb阻害のLineweaver−Burkプロットである。速度の単位はμmol/sec−1であり、基質の単位はμM−1である。図4A:mAbの濃度が、6μM(黒三角)、18μM(黒四角)、24μM(白丸)および0μM(白四角)であった。MMP−2catの濃度が200nMであった。図4B:全長のAPMA活性化MMP−9の阻害、mAbの濃度が、6μM(白四角)、12μM(黒三角)、24μM(白四角)および0μM(黒四角)であった。MMP−9の濃度が20nMであった。阻害パターンは、抗CoTCPP mAbがMMP−2およびMMP−9の競合的阻害剤として挙動することを示している。
【図5】抗Imisdp mAbによるMMP−2阻害およびMMP−9阻害を示すプロットである。MMP−9の触媒作用ドメイン(20nM)(黒丸)または全長のAPMA活性化MMP−2(黒三角、5nM)を、増大する濃度のmAbを含有する緩衝液Rにおける蛍光発生基質OCAcPLGLA2pr(Dnp)−AR−NH2(10μM)の混合物に加えた。曲線は、プログラムOriginを使用する、式:vi/vo=(Km+[S])/(Km(1+[I]/Ki)+[S])への非線形最小二乗適合を表す。
【図6A−B】図6Aは、MMP−2catの活性型形態および抗CoTCPP mAbによる阻害型形態の亜鉛k端スペクトルを示す。活性型(点線)およびMMP−2cat−mAb複合体(実線)の亜鉛K端領域の正規化された生XASデータが示される。図6Bは、MMP−2cat−mAb複合体(実線)の端位置が、活性型MMP−2cat(点線)と比較して高エネルギー側にシフトすることを示す。
【図6C】図6Cは、EXAFSの結果をMMP−2catの活性型形態(黒色)および阻害型形態(緑色)について示す。結果がR空間で示され、k空間に逆変換される。
【図7】図7A〜図7Bは、抗CoTCPP mAbが細胞表面ゼラチナーゼ活性を阻害することができることを示す写真である。1uMの13E11 mAbの存在下または不在下における、QD−ゼラチンで被覆されたカバースリップに置かれたHT1080細胞の代表的な蛍光顕微鏡写真。細胞表面ゼラチン分解活性が、分解されたゼラチンによって放出される蛍光の大きさとしてアッセイされた。非処理の細胞は著しい細胞表面ゼラチナーゼ活性を示し、この細胞表面ゼラチナーゼ活性は1uMの抗CoTCPP mAbの存在下で著しく阻害された。4’−6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)染色(青色)は細胞の核の所在位置を示している。
【図8】図8は、様々なMMP活性部位(S1ポケット)の立体配置を示すスキームである。
【図9】図9は、Imisdpの合成スキームである。
【図10】図10は、CDR領域が強調して示される本発明の抗体のアミノ酸配列を示す。
【図11】図11A〜図11Dは、6C6がMMP9およびMMP2の活性型立体配座とだけ結合することを示す写真およびモデルである。図11A:マウスの腹水から6C6と同時精製された活性型MMP9の検出。MMP9を含有するマウス腹水から精製されたmAb(10μg)を、市販の抗MMP9抗体を使用するウエスタンブロット(WB)分析に供した。同じ様式で精製されている非関連のIgG mAbが陰性コントロール(MAbコントロール)として役立った。Hillaトランスフェクション細胞から精製されたヒトProMMP9が、活性な化学種を識別するための分子量マーカーとして役立った。精製を、その定常ドメインを介してmAbと結合し、それにより、抗原結合部位を、抗原と相互作用するために自由にしたままにするプロテインGビーズを使用してアフィニティクロマトグラフィによって行った。図11B、C:プロテインAビーズに固定化された6C6 mAbを、ProMMP2、ProMMP9、または、(ヘモペキシンドメインおよびプロドメインを欠く)MMP2触媒作用フラグメントを溶液から捕らえるその能力について分析した。プロテインAセファロースビーズに固定化されたmAb 6C6(10μg)を、MMP2触媒作用フラグメント(1μg)(図11B)、ProMMP9(図11C、上段)、または、ProMMP2(2μg)(図11C、下段)と20℃で2時間インキュベーションした。ビーズに結合したmAb複合体を遠心分離によって分離し、3回洗浄し、SDS/PAGEゲルで分離し、クーマシー染色によって可視化した。免疫沈殿物(6C6)および非結合画分をSDS/PAGEゲルで分離し、クーマシー染色によって可視化した。非特異的吸着のための陰性コントロールとして、酵素だけをプロテインAセファロースビーズとインキュベーションした。図11D:ヘモペキシンドメインを欠き、プロドメインを有するMMP2の三次元構造(下段)、および、ヘモペキシンドメインを欠き、プロドメインを有しないMMP2の三次元構造(上段)が表面表示で示される(PDB ID:1CK7)。触媒作用ドメインおよびフィブロネクチンドメインがシアン色で示され、プロペプチドが赤色で示される。触媒作用亜鉛イオンがオレンジ色の球体として示され、黄色の棒状体として示される3つの保存されたヒスチジンに結合する。示されるように、プロペプチドドメインにより、活性部位が立体的に阻止される。
【図12】図12A〜図12B6C6 mAbによるMMP−9の阻害機構に関連するグラフおよびデータである。図12A:MMP−9組換え体の触媒作用フラグメント(ヘモペキシンドメインおよびプロドメインを有しない)を様々な量のmAbとプレインキュベーションした。残存酵素活性を、蛍光発生ペプチド基質(10μM)を加えた後で測定した。Kiを、競合的阻害の式に適合化することによって評価した(vi/vo=Km+[S]/(Km(1+I/Ki)+[S])Km=9.14±0.8)(挿入図)。活性型MMP−9(2nMの固定された濃度で)を、100mM NaCl、10mM CaCl、100mM Tris(pH7.5)において、mAbの不在下(黒丸)、あるいは、0.7μMのmAbの存在下(黒四角)または2μMのmAbの存在下(白丸)、37℃で60分間プレインキュベーションした。その後、蛍光発生ペプチド基質(Mca−Pro−Leu−Gly−Leu−Dpa−Ala−Arg−NH2)を、0μM〜30μMの範囲で示される最終濃度(S)を達成するために加え、基質加水分解の初速度を、増大した蛍光の測定によって求めた。見かけのKmおよびVmaxの値を、実験データをMichaelis−Mentenの式に対して適合化することによって得た。得られた値を、両軸逆数のLinweaver−Burkプロットを再構築するために使用した(交点が6C6によるMMP−9の競合的阻害を示す)。図12B:種々のMMPを様々な量のmAbとプレインキュベーションした。残存酵素活性を、蛍光発生ペプチド基質(10μM)を加えた後で測定した。Kiを、競合的阻害の式に適合化することによって評価した(vi/vo=Km+[S]/(Km(1+I/Ki)+[S])、Hila細胞から精製された全長のMMP2についてはKm=2.46±0.34、MT1−MMPの触媒作用ドメインについてはKm=16±1)。6C6の効果的な阻害がまた、全長のMMP−2およびMMP−9を使用して検出された(データは示されず)。
【図13】図13は、変化がほとんどの場合に周辺ループに存在する活性部位の保存された全体的トポロジーを示す種々のMMPの構造的重なりである。MMP9(PDB:1GKC)−シアン色、MMP2(PDB:1Q1B)−マゼンタ色、MT1−MMP(PDB:1BUV)−オレンジ色、MMP7(PDB:1MNQ)−赤色、TACE(PDB:2I47)−黄色。保存されたヒスチジンが棒状体として示され、触媒作用亜鉛イオンがオレンジ色の球として示される。注目すべきことに、MMP−2およびMMP−9の周辺ループの全体的トポロジーは類似している。このことから、試験された酵素群において、MMP−2およびMMP−9に対する6C6の選択性を説明することができる。
【図14】図14A〜図14Cは、6C6が細胞表面ゼラチナーゼ活性を阻害することを示す蛍光顕微鏡写真である。阻害剤の不在下(図14A)、5μMのmAbの存在下(図14B)、または、15μMのSB−3CT(機構に基づいたナノモル濃度のゼラチナーゼ阻害剤)の存在下(図14C)における、DQ−ゼラチンで被覆されたカバースリップに置かれたHT1080細胞の(インサイチュザイモグラフィアッセイによって得られる)代表的な蛍光顕微鏡写真。細胞表面ゼラチン分解活性が、ゼラチンを分解することによって放出される蛍光の大きさとしてアッセイされた。非処理の細胞は著しい細胞表面ゼラチナーゼ活性を示し(緑色)、この活性はmAbの存在下で著しく阻害された。
【図15】図15A〜図15Cは、C57BL/6マウスにおける急性DSS大腸炎の様々な症状発現に対する6C6処置の影響を例示するグラフである。疾患を5日間の2%DSSによって誘導した。6C6による処置(5または1.5mg/kgマウス)を、0日目から開始して毎日のi.p.注射によって施した。図15A:臨床スコアを、DAI(これは、0〜4のスケールでの、体重、直腸出血および便の硬さの総合スコアである)を毎日モニターすることによって評価した。データが、6日目から10日目までのそれぞれの動物について平均のドット分布として表される。図15B:結腸の長さ。図15C:死亡率。示されるデータは2つの実験の総合結果である(合計で群あたり15匹のマウス)。、大腸炎非処置マウスを上回る有意な効果(p<0.05)。
【図16】図16は、活性型MMP9(黒色)および阻害されたMMP9−6C6複合体(赤色)の亜鉛K端におけるX線吸収分光法から得られる結果のグラフである。結果が亜鉛イオンからの動径分布の形態で表される。MMP−9触媒作用ドメイン−mAb複合体(赤色)の端位置が、活性型MMP−9に対して高エネルギー側にシフトする(挿入図)。このことは、触媒作用亜鉛イオンへの結合を示している。X線分光法データの構造的分析は、6C6が亜鉛イオンと直接に結合し、五配位の亜鉛−タンパク質複合体を形成することを示している。注目すべきことに、この結合モードは、MMPの活性部位におけるTIMPの結合と類似している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、金属タンパク質の活性を阻害するために使用されることができる抗体およびそのフラグメントの発明である。特に、本発明の抗体は、バランスの崩れたマトリックスメタロプロテアーゼ活性に関連する疾患(例えば、多発性硬化症、自己免疫疾患、および転移性ガン)を処置するために使用されることができる。
【0040】
本発明の原理および作用が、図面および付随する説明を参照してより十分に理解されることができる。
【0041】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明において示される細部、または、実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または、様々な方法で実施または実行される。また、本明細書中で用いられる表現法および用語法は記述のためであって、限定であると見なしてはならないことを理解しなければならない。
【0042】
様々なマトリックスメタロプロテアーゼが、細胞増殖、分化、および、細胞外マトリックス(ECM)のリモデリングから、脈管形成および細胞遊走にまで及ぶ多くの生物学的プロセスに関与する。これらのプロセスでは、これらのマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の様々な機能と、それらの生来的組織阻害剤(TIMP)との間における精巧なバランスが要求される。このバランスの喪失が、転移性腫瘍、神経変性疾患および変形性関節炎をはじめとする数多くの病理学的状態の顕著な特徴である。
【0043】
数多くのMMP阻害剤がこの技術分野では知られており、これらには、小ペプチド阻害剤(例えば、ヒドロキサマート)、非微生物性テトラサイクリン類およびモノクローナル抗体が含まれる。前者は、製造費用が高いこと、分解性が高いこと、経口での生物学的利用能が低いこと、および、特異性がないことによって制限される一方で、後者はどれも、インビボでの治療効力が明らかにされていない。
【0044】
本発明者らは、金属酵素の触媒作用部位の電子的決定基および構造的決定基の両方を認識する抗体がその強力な阻害剤として使用できることを以前に発見している。金属酵素の金属結合した触媒作用部位を模倣するハプテンを免疫原として使用することにより、高まった金属タンパク質の活性によって特徴づけられる臨床状態を処置するために使用することができる非常に効率的な治療用抗体を作製することができた(本発明者らのWO2004/087042を参照のこと)。
【0045】
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、MMPにおける反応性亜鉛部位の局所的構造および立体配座をよく模倣する新規なハプテン化合物を設計した。この化合物は、Imisdpと名づけられた[2−(2−アミノエチルカルボモイル)エトキシメチル]−トリス−[2−(N−(3−イミダゾール−1−イル−プロピル))エトキシメチル]メタン(図1を参照のこと)であり、配位した3つのヒスチジンのアレイおよび水での亜鉛イオンによって誘導される四配位の幾何構造および類似する力場を模倣することができる。四面体に近い立体配座が、3つのイミダゾール塩基と、第4の配位子としての水分子とによって形成される。図2Aは、亜鉛配位子の四面体型幾何構造を表すために改変されている、MMP−9(PDB:1GKC)の触媒作用部位とのImisdp化合物の構築された3Dモデルの重なりを示す。改変には、X線構造において存在する配位子(ヒドロキサム酸系阻害剤)を水分子で置換すること、および、酵素全体を多層QM/MN法によって局所的極小にまで最適化することが含まれる(材料および方法を参照のこと)。高い類似性が、MMP−9およびImisdpにおける計算されたヒスチジン亜鉛モチーフの間において、亜鉛イオンからのヒスチジンのε−窒素の距離(それぞれ、2.04±0.06および2.02)に関して、また、金属に向かう3つのヒスチジンの相対的配向に関して存在する。
【0046】
本明細書中以下において、および、下記の実施例の節において例示されるように、本発明者らは、マウスをImisdpで免疫化し、MMP−2およびMMP−9との交差反応性を有するMMP抗体についてスクリーニングしている。その抗体は6C6と名づけられた(図10、および、下記の実施例の節の実施例1〜実施例2を参照のこと)。6C6は、MMP−2/9と結合し、MMP−9、MMP−2の活性を競合的に阻害すること(Kiの範囲、1μM〜5μM)、および、MT1−MMPの活性を競合的に阻害すること(15μMのKi)が見出された(下記の表4を参照のこと)。MMP−9およびMMP−2の結合および阻害が様々な生化学的および生物物理学的ツールによってインビトロおよびインサイチュにおいて明らかにされた(実施例4〜7および9を参照のこと)。重要なことに、6C6はMMP−9およびMMP−2の活性化形態とだけ結合する(実施例3および実施例8を参照のこと)。この酵素形態は、その酵素部分内に存在する触媒作用の亜鉛錯体を遮蔽するプロドメインを欠いている。本発明者らは、本発明の方法に従って作製された抗体がMMP−9にインビボにおいて結合できることを示した(図11A)。さらに、本発明者らは、本発明の抗体が、炎症性腸疾患を処置するための治療的可能性を含んだことを示した(実施例10)。
【0047】
まとめると、本発明の知見は、Imisdpが、金属タンパク質の阻害剤を製造するための重要な試薬(プラットフォーム)として使用されること、また、6C6、ならびに、誘導されたペプチドおよびペプチド模倣体が有益な治療用ツールとして使用されることを裏付けている。
【0048】
これらの結果により、これらの抗体を、個々のMMPについての選択的なペプチド阻害剤をmAbまたはそのフラグメントのファージディスプレイおよび点変異によって設計するためのプラットフォームとして使用することにおける可能性が明らかにされる。
【0049】
従って、本発明の1つの態様によれば、一般式(I)を有する化合物が提供される:

式中、
mおよびnはそれぞれが独立して、1〜6の整数である;
〜XおよびY〜Yはそれぞれが独立して、OまたはSである;
〜Rはそれぞれが独立して、水素、アルキルおよびシクロアルキルからなる群から選択される;および
Rは(CH)x−C(=O)NR’−(CH)y−NR’R”であり、
ただし:
xおよびyはそれぞれが独立して、1〜6の整数である;および
R’およびR”はそれぞれが独立して、水素、アルキルおよびシクロアルキルからなる群から選択される。
【0050】
本発明のこの態様の好ましい実施形態によれば、化合物は、Imisdpと名づけられた[2−(2−アミノエチルカルボモイル)−エトキシメチル]−トリス−[2−(N−(3−イミダゾール−1−イル−プロピル))エトキシメチル]メタンであり、一般式(II)を有する:

式中、R=−CH−C(=O)NH−CH−CH−NH
【0051】
Imisdpの合成が下記の実施例の節の実施例7に記載される。
【0052】
Imisdpは、MMP−9およびMMP−2における反応性亜鉛部位の局所的構造および過渡的立体配座を模倣するので、金属タンパク質阻害剤を製造するために使用することができる。
【0053】
従って、本発明の1つの態様によれば、金属タンパク質阻害剤を製造する方法が提供される。
【0054】
本発明の方法は、上記化合物(すなわち、Imisdp)に向けられた抗体または抗体フラグメントを作製することによって行われる。下記の実施例の節の実施例1〜2ならびに「材料および方法」の節を参照のこと。
【0055】
本発明の「金属タンパク質」は、金属結合部位が酵素の触媒作用ドメインの一部を形成し、ただし、この金属結合部位がImisdpの金属結合部位と電子的および構造的の両方で類似する、金属が結合したタンパク質を示す。
【0056】
本発明のこの態様の金属タンパク質は好ましくは、メタロプロテアーゼ、すなわち、MMP(例えば、ゼラチナーゼ、例えば、MMP−2およびMMP−9)である。
【0057】
MMPファミリーのすべてのメンバーは、活性化されたとき、活性部位における金属イオンが基質結合のために利用可能である活性型酵素に変換される潜在型酵素として翻訳されることが理解される。例えば、「システインスイッチモデル」が、MMPのインビトロ活性化を説明するために以前に提案されている。このシステインスイッチモデルでは、活性化されたとき、隠れている亜鉛結合部位が、チオール(Cys)保有プロペプチドの亜鉛原子からの解離によって触媒作用の亜鉛結合部位に変換されることが提案される。プロペプチドの切断は酵素のプロドメイン構造の分解をもたらし、触媒作用亜鉛イオンの遮蔽がなくなる。結果として、金属イオンおよび活性部位ポケットが基質の結合および加水分解のために利用可能となる[Van WartおよびBirkedal−Hansen(1990)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87、5578〜5582]。
【0058】
本発明の教示に従って作製される抗体および抗体フラグメントは、触媒作用亜鉛部位内の金属イオンおよび配位しているアミノ酸の両方と結合することができ、それにより、上記のような病理学的プロセスに直接に関与するこれらの酵素の活性型立体配座を特異的に阻害することができるために、MMPの強力な阻害剤として役立つ。
【0059】
本明細書で使用される用語「抗体」は、完全な抗体分子を意味し、表現「抗体フラグメント」はその機能的なフラグメント、例えば、マクロファージに結合することができるFab、F(ab’)およびFvなどを意味する。これらの機能的な抗体フラグメントは次のように定義される:(i)Fabは、抗体分子の一価の抗原結合性フラグメントを含有するフラグメントであり、完全な抗体を酵素パパインで消化して、無傷の軽鎖と、一方の重鎖の一部とを生じさせることによって作製することができる;(ii)Fab’は、完全な抗体をペプシンで処理し、その後、還元して、無傷の軽鎖と、重鎖の一部とを生じさせることによって得ることができる抗体分子のフラグメントである;2つのFab’フラグメントが1つの抗体分子あたり得られる;(iii)(Fab’)は、その後の還元を行うことなく、完全な抗体を酵素ペプシンで処理することによって得ることができる抗体のフラグメントである;F(ab’)は、2つのジスルフィド結合によって一緒にされた2つのFab’フラグメントのダイマーである;(iv)Fvは、2つの鎖として発現された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作されたフラグメントとして定義される;(v)単鎖抗体(「SCA」)は、遺伝子的に融合された単一鎖分子として好適なポリペプチドリンカーによって連結されて、軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作された分子である;そして(vi)ペプチドは単一の相補性決定領域(CDR)をコードする。
【0060】
抗体(即ちモノクローナルおよびポリクローナル抗体)を作製する方法は当該技術分野では周知である。抗体は当該技術分野で知られたいくつかの方法のいずれか一つを介して作製されることができ、これらの方法(Orlandi D.R.et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.86:3833−3837,Winter G.et al.(1991)Nature 349:293−299)に開示されるように抗体分子のインビボ生成の誘導、免疫グロブリンライブラリーまたは極めて特異的に結合する試薬のパネルのスクリーニングを用いることができるかまたは培養中の連続細胞系によるモノクローナル抗体分子の生成を用いることができる。これらはハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術およびEpstein−Bar−Virus(EBV)ハイブリドーマ技術(Kohler G.,et al.(1975)Nature 256:495−497,Kozbor D.,et al.(1985)J.Immunol.Methods 81:31−42,Cote R.J.et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.80:2026−2030,Cole S.P.et al.(1984)Mol.Cell.Biol.62:109−120)を含むがこれらに限定されない。
【0061】
本発明の化合物が小さすぎて、強い免疫原応答を誘発することができない場合、そのような抗原(ハプテン)は、抗原的に中性な担体(キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)または血清アルブミン[例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)]などの担体)にカップリングすることができる(米国特許第5189178号および同第5239078号、ならびに、実施例の節の実施例2を参照のこと)。担体へのカップリングを、この技術分野では広く知られている様々な方法を使用して行うことができる。例えば、アミノ基への直接的なカップリングを行うことができ、必要に応じて、その後、形成されたイミノ連結の還元を行うことができる。代替では、担体を、縮合剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは他のカルボジイミド脱水剤)を使用してカップリングすることができる。リンカー化合物もまた、そのようなカップリングを行うために使用することができる;ホモ二官能性リンカーおよびヘテロ二官能性リンカーの両方が、Pierce Chemical Company(Rockford、Ill.)から入手可能である。得られる免疫原性複合体を、その後、好適な哺乳動物被験体(例えば、マウス、ウサギなど)に注射することができる。好適なプロトコルでは、血清における抗体の産生を増強させるスケジュールに従ったアジュバントの存在下における免疫原の繰り返される注射が伴う。免疫血清の力価を、この技術分野では広く知られている様々な免疫アッセイ手法を使用して容易に測定することができる。
【0062】
得られた抗血清はそのまま使用することができ、または、モノクローナル抗体を、本明細書において上記されるように得ることができる。
【0063】
抗体フラグメントを、この技術分野では広く知られている様々な方法を使用して得ることができる(例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York、1988を参照のこと。これは参照により本明細書に組み込まれる)。例えば、本発明による抗体フラグメントを抗体のタンパク質分解的加水分解によって調製することができ、あるいは、フラグメントをコードするDNAの大腸菌または哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養または他のタンパク質発現システム)における発現によって調製することができる。
【0064】
あるいは、抗体フラグメントは、従来の方法による完全な抗体のペプシン消化またはパパイン消化によって得ることができる。例えば、抗体フラグメントを、抗体をペプシンで酵素切断して、F(ab’)として示される5Sフラグメントを得ることによって製造することができる。このフラグメントは、3.5SのFab’一価フラグメントを製造するために、チオール還元剤、および場合により、ジスルフィド連結の切断から生じるスルフヒドリル基に対する保護基を使用してさらに切断することができる。あるいは、ペプシンを使用する酵素切断により、2つの一価Fab’フラグメントおよびFcフラグメントが直接的に得られる。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4036945号および同第4331647号、ならびにそれらに含まれる参考文献に記載されている(それらの特許は本明細書によりその全体が参照により組み込まれる)。また、Porter,R.R.、Biochem.J.、73:119〜126、1956も参照のこと。抗体を切断する他の方法、例えば、一価の軽鎖−重鎖フラグメントを形成させるための重鎖の分離、フラグメントのさらなる切断、または他の酵素的、化学的もしくは遺伝学的な技術などもまた、フラグメントが、無傷の抗体によって認識される抗原に結合する限り、使用することができる。
【0065】
FvフラグメントはV鎖およびV鎖の会合を含む。この会合は、Inbar他、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA、69:2659〜62、1972に記載されているように非共有結合性であり得る。あるいは、可変鎖を、分子間ジスルフィド結合によって連結することができ、または、グルタルアルデヒドなどの化学剤によって架橋することができる。好ましくは、Fvフラグメントは、ペプチドリンカーによってつながれたV鎖およびV鎖を含む。これらの単鎖抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによりつながれたVドメインおよびVドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。この構造遺伝子は発現ベクターに導入され、続いて、発現ベクターは大腸菌などの宿主細胞に導入される。組換え宿主細胞により、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドを有する単一ポリペプチド鎖が合成される。sFvを製造するための様々な方法が、例えば、WhitlowおよびFilpula、Methods、2:97〜105、1991;Bird他、Science、242:423〜426、1988;Pack他、Bio/Technology、11:1271〜77、1993;Ladner他、米国特許第4946778号(これは本明細書によりその全体が参照により組み込まれる)によって記載されている。
【0066】
CDRペプチド(「最小認識ユニット」)は、目的とする抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。そのような遺伝子は、例えば、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成するためにポリメラーゼ連鎖反応を使用することによって調製される。例えば、LarrickおよびFry、Methods、2:106〜10、1991を参照のこと。
【0067】
ヒトの治療または診断のためにはヒト化された抗体を用いることが好ましいことは理解されるであろう。非ヒト(例えば、ネズミ)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、または抗体の他の抗原結合性の部分配列など)のキメラ分子である。ヒト化抗体には、レシピエントの相補性決定領域(CDR)に由来する残基が、所望する特異性、親和性および能力を有する、マウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRに由来する残基によって置換されているヒト免疫グロブリンレシピエント抗体が含まれる。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体においても、あるいは取り込まれたCDR配列またはフレームワーク配列においても、そのいずれにも見出されない残基を含むことができる。一般に、ヒト化抗体は、実質的にはすべての可変ドメインまたは1つ以上の(典型的には2つ)可変ドメインを含み、この場合、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部を、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域の一部を少なくとも含む[Jones他、Nature、321:522〜525(1986);Riechmann他、Nature、332:323〜329(1988);Presta、Curr.Op.Struct.Biol.、2:593〜596(1992)]。
【0068】
非ヒト抗体をヒト化するための様々な方法がこの技術においては広く知られている。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、輸入残基と呼ばれており、この輸入残基は、典型的には、輸入可変ドメインに由来する。ヒト化は、齧歯類のCDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列の代わりに使用することによって、Winterおよび共同研究者の方法に従って本質的には行うことができる[Jones他、Nature、321:522〜525(1986);Riechmann他、Nature、332:323〜327(1988);Verhoeyen他、Science、239:1534〜1536(1988)]。従って、そのようなヒト化抗体は、実質的に完全でないヒト可変ドメインが非ヒト種由来の対応する配列によって置換されているキメラ抗体である(米国特許第4816567号)。実際、ヒト化抗体は典型的にはヒト抗体であり、この場合、一部のCDR残基およびおそらくは一部のFR残基が、齧歯類抗体における類似部位に由来する残基によって置換される。
【0069】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレーライブラリー[HoogenboomおよびWinter、J.Mol.Biol.、227:381(1991);Marks他、J.Mol.Biol.、222:581(1991)]を含む、この分野で知られている様々な技術を使用して製造することができる。Cole他およびBoerner他の技術もまた、ヒトモノクローナル抗体を調製するために利用することができる[Cole他、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、77頁(1985);Boerner他、J.Immunol.、147(1):86〜95(1991)]。同様に、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されている遺伝子組換え動物(例えば、マウス)に導入することによって作製することができる。抗原投与したとき、ヒト抗体の産生が認められ、この場合、その産生は、遺伝子再配置、組み立ておよび抗体レパートリーを含むすべての点に関してヒトにおいて見られる産生と非常に似ている。この方法は、例えば、米国特許第5545807号、同第5545806号、同第5569825号、同第5625126号、同第5633425号、同第5661016号、および下記の科学的刊行物:Marks他、Bio/Technology、10、779〜783(1992);Lonberg他、Nature、368:856〜859(1994);Morrison、Nature、368:812〜13(1994);Fishwild他、Nature Biotechnology、14:845〜51(1996);Neuberger、Nature Biotechnology、14:826(1996);LonbergおよびHuszar、Intern.Rev.Immunol.、13:65〜93(1995)に記載されている。
【0070】
いったん抗体が得られると、それらは、金属タンパク質阻害活性について試験されることができる。金属タンパク質阻害活性についての適切なアッセイ条件は、Knightら、FEBS Letters 296(3):263−266(1992)、Cawstonら、Anal.Biochem,99:340−345(1979)、Cawstonら、Methods in Enzymology 80:771(以下参照)(1981);Cawstonら、Biochem.J.,195:159−165(1981)、Weingartenら、Biochem.Biophys.Res.Comm.,139:1184−1187(1984)、ならびに米国特許第4743587号および同第5240958号に記載される。
【0071】
述べられたように、上記の方法論を使用して、本発明者らは、6C6と名づけられた、MMP−2およびMMP−9についてのマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害性抗体を作製することができた。その配列が配列番号1において提供される。CDR配列が、配列番号7、8、9、10、11および12において提供される。
【0072】
従って、本発明は、その金属タンパク質阻害活性(金属タンパク質の触媒活性の特異的な阻害)が保持される限り、上記CDR配列の少なくとも1つを含む任意の(ポリ)ペプチド配列、ならびに、そのホモログおよびフラグメントを提供する。そのようなポリペプチドの一例が抗体である(上記参照)。
【0073】
本明細書において使用される用語「ポリペプチド」には、天然のペプチド(分解産物または合成的に合成されたペプチドまたは組換えペプチドのいずれか)、ペプチド模倣体(典型的には合成的に合成されたペプチド)そしてペプチドアナログであるペプトイドおよびセミペプトイドが含まれ、これらは、例えば、ペプチドを体内でより安定化させる修飾、またはペプチドの細胞浸透能力を高める修飾を有し得る。そのような修飾には、N末端修飾、C末端修飾、ペプチド結合の修飾(CH−NH、CH−S、CH−S=O、O=C−NH、CH−O、CH−CH、S=C−NH、CH=CHまたはCF=CHを含むが、これらに限定されない)、骨格の修飾、および残基の修飾が含まれるが、これらに限定されない。ペプチド模倣体化合物を調製するための方法はこの分野では十分に知られており、例えば、Quantitative Drug Design,C.A.Ramsden Gd.,Chapter 17.2,F.Choplin Pergamon Press(1992)に具体的に記載される(これは、全体が本明細書中に示されるように参考として組み込まれる)。これに関するさらなる詳細が本明細書中下記に示される。
【0074】
ペプチド内のペプチド結合(−CO−NH−)は、例えば、N−メチル化結合(−N(CH)−CO−)、エステル結合(−C(R)H−C−O−O−C(R)−N−)、ケトメチレン結合(−CO−CH−)、o−アザ結合(−NH−N(R)−CO−)(式中、Rは任意のアルキル(例えば、メチル)である)、カルバ結合(−CH−NH−)、ヒドロキシエチレン結合(−CH(OH)−CH−)、チオアミド結合(−CS−NH−)、オレフィン二重結合(−CH=CH−)、レトロアミド結合(−NH−CO−)、ペプチド誘導体(−N(R)−CH−CO−)(式中、Rは、炭素原子において自然界で示される「通常」の側鎖である)によって置換することができる。
【0075】
これらの修飾は、ペプチド鎖に沿った結合の任意のところに存在させることができ、そして同時に数カ所(2カ所〜3カ所)においてさえ存在させることができる。
【0076】
天然の芳香族アミノ酸(Trp、TyrおよびPhe)は、フェニルグリシン、Tic、ナフチルアラニン(Nal)、フェニルイソセリン、トレオニノール、Pheの環メチル化誘導体、Pheのハロゲン化誘導体、またはo−メチル−Tyrなどの合成された非天然型の酸に置換することができる。
【0077】
上述のことに加えて、本発明のペプチドは一以上の修飾されたアミノ酸または一以上の非アミノ酸モノマー(例えば脂肪酸、複合体炭水化物など)も含むことができる。
【0078】
従って、本明細書において使用される用語「アミノ酸」には、20個の天然に存在するアミノ酸;インビボで多くの場合には翻訳後修飾されたそのようなアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、ホスホセリンおよびホスホトレオニンを含む);および他の非通常型アミノ酸(2−アミノアジピン酸、ヒドロキシリシン、イソデスモシン、ノルバリン、ノルロイシンおよびオルニチンを含むが、これらに限定されない)が含まれることが理解される。さらに、用語「アミノ酸」には、この用語が本明細書中で定義されるように少なくとも1つの付加アミノ酸にペプチド結合またはペプチド結合アナログを介して連結されるD−アミノ酸およびL−アミノ酸の両方が含まれる。
【0079】
下記の表1〜表2には、天然に存在するアミノ酸のすべて(表1)および非通常型アミノ酸または修飾型アミノ酸(例えば、合成アミノ酸、表2)が示される。
【0080】




【0081】
目的のメタロプロテアーゼに対する改良された親和性または高められた生物学的活性を有するペプチドは、ファージディスプレイおよびコンピュータを利用した生命工学を含む当該分野において周知の方法によって作製されることができる。
【0082】
本発明のペプチドは、ペプチド合成の分野における当業者に既知の任意の技術によって合成されることができる。固相ペプチド合成については、多くの技術の要約が、Stewart,J.M.およびYoung,J.D.(1963)「Solid Phase Peptide Synthesis」W.H.Freeman Co.(San Francisco)に、および、Meienhofer,J.(1973)「Hormonal Proteins and Peptides」第2巻、46頁、Academic Press(New York)に見出されうる。古典的な溶液合成の概括については、Schroder,G.およびLupke,K.(1965)The Peptides、第1巻、Academic Press(New York)を参照のこと。
【0083】
上記ポリペプチド配列をコードする核酸配列もまた意図される(配列番号13、14、15、16、17および18を参照のこと)。
【0084】
本明細書において上記のように、本発明の抗体のための1つの具体的な使用は、金属タンパク質(例えば、メタロプロテアーゼ)のバランスの崩れた活性または異常な活性に関連する疾患の防止または処置である。
【0085】
そのような疾患の例には、関節炎疾患、例えば、変形性関節炎(OA)、リウマチ様関節炎(RA)、化膿性関節炎、軟部組織リウマチ、多発性軟骨炎および腱炎;転移性腫瘍、歯周疾患;角膜潰瘍、例えば、アルカリ熱傷または他の熱傷によって誘導される角膜潰瘍、放射線によって誘導される角膜潰瘍、ビタミンE欠乏症またはレチノイド欠乏症によって誘導される角膜潰瘍;腎糸球体疾患、例えば、タンパク尿、栄養障害性表皮水疱症;骨再吸収疾患、例えば、骨粗鬆症、パジェット病、副甲状腺機能亢進症およびコレステリン腫;排卵または着床を防止することによる産児制限;腫瘍成長に関連するか、または、糖尿病網膜症もしくは黄斑変性に伴う血管新生に関連する血管形成;アテローム性動脈硬化プラークの破裂に伴う冠状動脈血栓症;肺気腫、創傷治癒およびHIV感染が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
実施例10において例示されるように、本発明者らは、本発明の抗体が、過敏性腸疾患を処置するために使用され得ることを示している。
【0087】
過敏性腸疾患(IBD)は、頻度が増大し、患者を無能力化することがある腸の炎症および組織リモデリングによって特徴づけられる重篤な胃腸障害である。IBDの主要の形態、すなわち、潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病は、腹部の痛み、下痢、直腸出血および発熱によって臨床的に特徴づけられる慢性の再発する状態である。
【0088】
従って、本発明の別の態様によれば、マトリックスメタロプロテアーゼ活性をその必要性のある対象において阻害する方法が提供される。
【0089】
本発明による好ましい個体対象は、動物、例えば、哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシ、霊長類)であり、好ましくはヒトである。
【0090】
本発明の方法は、対象に本発明のMMP阻害剤(すなわち、本明細書において上記される抗体または抗体フラグメント)の治療有効量を与えることを含む。
【0091】
本明細書において以下でさらに詳述されるように、MMP阻害剤を直接的な投与(例えば、経口投与または注射)によって与えることができ、または、MMP阻害剤を、個体の標的細胞に投与されるポリヌクレオチド構築物から発現させることができる。
【0092】
本発明のMMP阻害剤は、それ自体で、または、医薬的に許容され得る担体と混合される医薬組成物の一部として個体に与えることができる。
【0093】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される有効成分の1つまたは複数と、他の化学的成分(例えば、生理学的に好適な担体および賦形剤など)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、生物に対する化合物の投与を容易にすることである。
【0094】
本明細書中において、用語「有効成分」は、生物学的効果を説明することができる抗体調製物を示す。
【0095】
本明細書中以降、表現「生理学的に許容され得る担体」および表現「医薬的に許容され得る担体」は、交換可能に使用され得るが、生物に対する著しい刺激を生じさせず、かつ、投与された化合物の生物学的な活性および性質を妨げない担体または希釈剤を示す。アジュバントはこれらの表現に包含される。医薬的に許容され得る担体に含まれる成分の1つは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)であることができ、これは有機媒体および水性媒体の両方における広範囲の溶解性を有する生体適合性ポリマーである(Mutter他(1979))。
【0096】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0097】
薬物の配合および投与のための技術が「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出されることができ、これは参考として本明細書中に組み込まれる。
【0098】
好適な投与経路には、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、特に経鼻送達、腸管送達、または非経口送達(これには、筋肉内注射、皮下注射および髄内注射、ならびに、クモ膜下注射、直接的な脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻内注射または眼内注射が含まれる)が含まれることができる。
【0099】
あるいは、例えば、患者の身体の組織領域に直接的に調製物の注射をすることによって、全身的な方法よりも局所的に調製物を投与することができる。
【0100】
本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られているプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥のプロセスによって製造されることができる。
【0101】
本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬品として使用されることができる調製物への有効成分の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容され得る担体を使用して従来の様式で配合されることできる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0102】
注射の場合、本発明の医薬組成物の有効成分は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合しうる緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的な食塩緩衝液など)において配合されることができる。経粘膜投与の場合、浸透されるバリヤーに対して適切な浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0103】
経口投与の場合、化合物は、活性化合物をこの分野でよく知られている医薬的に許容され得る担体と組み合わせることによって容易に配合されることができる。そのような担体は、本発明の化合物が、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤および懸濁物などとして配合されることを可能にする。経口使用される薬理学的調製物は、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、錠剤または糖衣錠コアを得るために、望ましい好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製されることができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容され得るポリマーである。もし望むなら、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤が加えられることができる。
【0104】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有しうる。色素または顔料は、活性化合物の量を明らかにするために、または活性化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えられることができる。
【0105】
経口使用されうる医薬組成物としては、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびに、ゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟いシールされたカプセルが挙げられる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(例えば、ラクトースなど)、結合剤(例えば、デンプンなど)、滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)、および場合により安定化剤との混合で有効成分を含有することができる。軟カプセルでは、有効成分は、好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁されることができる。さらに、安定化剤が加えられることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路について好適な投薬形態でなければならない。
【0106】
口内投与の場合、組成物は、従来の方法で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0107】
鼻吸入による投与の場合、本発明による使用のための有効成分は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投与量は、計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定されることができる。ディスペンサーにおいて使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジは、化合物および好適な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプンなど)の粉末混合物を含有して配合されることができる。
【0108】
本明細書中に記載される調製物は、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために配合されることができる。注射用配合物は、場合により保存剤が添加された、例えば、アンプルまたは多回用量容器における単位投薬形態で提供されることができる。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクルにおける懸濁物または溶液剤またはエマルションにすることができ、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの配合剤を含有することができる。
【0109】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態の活性調製物の水溶液が含まれる。さらに、有効成分の懸濁物は、適切な油性または水性の注射用懸濁物として調製されることができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが挙げられる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁物はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために、有効成分の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有することができる。
【0110】
あるいは、有効成分は、好適なビヒクル(例えば、無菌の、パイロジェン不含水溶液)を使用前に用いて構成される粉末形態であることができる。
【0111】
本発明の調製物はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合されることができる。
【0112】
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物として、有効成分が、その意図された目的を達成するために有効な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、「治療有効量」は、処置されている対象の疾患の症状を予防、緩和あるいは改善するために効果的であるか、または、処置されている対象の生存を延ばすために効果的である、有効成分の量を意味する。
【0113】
治療有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0114】
本発明の方法において使用されるいかなる調製物についても、投与量または治療有効量は、生体外アッセイから最初に推定されることができる。例えば、投与量は、動物モデルにおいて決定されることができ、そのような情報は、ヒトにおける有用な投与量をより正確に決定するために使用されることができる。
【0115】
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、生体外、細胞培養物、または実験動物における標準的な薬学的手法によって決定されることができる。これらの生体外、細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量範囲を定めるために使用されることができる。投与量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化しうる。正確な配合、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択されることができる(例えば、Finglら、(1975)「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1 p.1を参照のこと)。
【0116】
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬は、単回または複数回投与で行われることができ、この場合、処置期間は、数日から数週間まで、または治療が達成されるまで、または疾患状態の軽減が達成されるまで続く。
【0117】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている対象、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存するだろう。
【0118】
適合可能な医薬的担体中に配合された本発明の調製物を含む組成物もまた、調製され、適切な容器に入れられ、示される状態の処置についてラベル書きされることができる。
【0119】
本発明の組成物は、もし望むなら、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態を含有しうるパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA承認キットなど)で提供されることができる。パックは、例えば、金属ホイルまたはプラスチックホイルを含むことができる(例えば、ブリスターパックなど)。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が付随しうる。パックまたはディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式で、容器に関連した通知によって適応させることがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態、あるいはヒトまたは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局によって承認されたラベル書きでありうるか、または、承認された製品添付文書でありうる。
【0120】
本明細書において上記のように、本発明の抗体阻害剤を核酸構築物から発現させることができる。
【0121】
本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドは好ましくは、目的とする細胞内局在化または細胞外局在化への抗体の分泌または輸送を可能にするシグナルペプチドをさらにコードすることが理解される。例えば、標的の金属タンパク質がMMPであるとき、分泌シグナルペプチドが好ましくは、抗体セグメントをコードするポリヌクレオチドに対して読み枠を合わせてコンジュゲートされる。
【0122】
完全な抗体分子と比較した場合、そのそれほど複雑でない構造のために、組換え単鎖Fv(ScFv)フラグメントが好ましくは発現され得ることがさらに理解される。本明細書において上記のように、ScFvは、Vのカルボキシル末端がVのアミノ末端にペプチド架橋によって連結される1つの鎖として合成されるVおよびVの抗体ポリペプチド鎖からなるタンパク質である。これらのペプチドを組換え製造するための様々な方法がこの技術分野では広く知られている[Bird他、Science、242:423〜426(1988);Huston他、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 85:5879〜5883(1988);およびde Kruif他、J.Mol.Biol.248:97〜105(1995)を参照のこと]。本発明のこの態様の実施形態によれば、本発明の化合物による免疫化の後、脾臓のmRNAが免疫化動物から集められ、ScFvフラグメントを呈示するバクテリオファージにおけるcDNAライブラリーを作製するために使用される。その後、ファージ粒子が、目的の金属タンパク質の活性化形態と特異的かつ好ましくは相互作用するファージ粒子を明らかにするためにスクリーニングされる。ScFvセグメントがこれらのファージ粒子から回収され、発現構築物にクローン化される(米国特許第5800814号を参照のこと)。
【0123】
本発明のこの態様の核酸構築物は個体対象の標的細胞に投与することができる(すなわち、インビボ遺伝子治療)。
【0124】
代替として、核酸構築物は、必要に応じて適切な遺伝子送達ビヒクル/遺伝子送達方法(トランスフェクション、形質導入、相同的組換えなど)および発現システムによって好適な細胞に導入され、その後、改変された細胞が培養で拡大され、個体に戻される(すなわち、エキソビボ遺伝子治療)。
【0125】
本発明の抗体または抗体フラグメントの細胞発現を可能にするために、本発明の核酸構築物はさらに、少なくとも1つのシス作用する調節エレメントを含む。本明細書で使用される表現「シス作用する調節エレメント」は、トランス作用する調節因子と結合し、その下流側に位置するコード配列の転写を調節するポリヌクレオチド配列(好ましくは、プロモータ)を示す。
【0126】
利用可能なプロモータはどれも、本発明の方法論によって使用することができる。本発明の1つの好ましい実施形態において、本発明の核酸構築物によって利用されるプロモータは、形質転換された特定の細胞集団において活性である。細胞タイプ特異的および/または組織特異的なプロモータの例には、肝臓特異的であるアルブミン[Pinkert他(1987)、Genes Dev.1:268〜277]、リンパ系特異的プロモータ[Calame他(1988)、Adv.Immunol.43:235〜275]、具体的には、T細胞受容体のプロモータ[Winoto他(1989)、EMBO J.8:729〜733]および免疫グロブリンのプロモータ[Banerji他(1983)、Cell、33729〜740]、ニューロン特異的プロモータ(例えば、神経フィラメントプロモータ[Byrne他(1989)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5473〜5477])、膵臓特異的プロモータ[Edlunch他(1985)Science 230:912〜916]または乳腺特異的プロモータ(例えば、乳清プロモータ(米国特許第4873316号および欧州特許出願公開第264166号))などのプロモータが含まれる。本発明の核酸構築物はさらにエンハンサを含むことができ、エンハンサは、プロモータ配列に隣接して、または、プロモータ配列から遠位に存在することができ、プロモータからの転写をアップレギュレーションすることにおいて機能することができる。
【0127】
本発明の方法論の構築物は好ましくは、適切な選択マーカーおよび/または複製起点をさらに含む。好ましくは、利用される構築物はシャトルベクターであり、シャトルベクターは、大腸菌においてともに増殖することができ(この場合、構築物は適切な選択マーカーおよび複製起点を含む)、また、細胞における増殖、または、選ばれた遺伝子および組織における組み込みのための適合性を有する。本発明による構築物は、例えば、プラスミド、バクミド、ファージミド、コスミド、ファージ、ウイルスまたは人工染色体が可能である。
【0128】
現時点で好ましいインビボ核酸移入技術には、ウイルス構築物または非ウイルス構築物によるトランスフェクション、例えば、アデノウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスI型ウイルスまたはアデノ関連ウイルス(AAV)によるトランスフェクション、および、脂質に基づくシステムによるトランスフェクションが含まれる。遺伝子の脂質媒介移入のための有用な脂質が、例えば、DOTMA、DOPEおよびDC−Cholである[Tonkinson他、Cancer Investigation、14(1):54〜65(1996)]。遺伝子治療において使用される最も好まれる構築物がウイルスであり、最も好ましくは、アデノウイルス、AAV、レンチウイルスまたはレトロウイルスである。ウイルス構築物(例えば、レトロウイルス構築物)は、少なくとも1つの転写プロモータ/エンハンサまたは位置規定エレメント、あるいは、他の手段(例えば、メッセンジャーの選択的スプライシング、核RNA輸出または翻訳後修飾)によって遺伝子発現を制御する他のエレメントを含む。そのようなベクター構築物はまた、ウイルス構築物に既に存在する場合を除いて、パッケージングシグナル、長末端反復(LTR)またはその一部、ならびに、使用されるウイルスに対して適切である正鎖プライマー結合部位および負鎖プライマー結合部位を含む。加えて、そのような構築物は典型的には、ペプチドまたは抗体を、構築物が置かれている宿主細胞から分泌させるためのシグナル配列を含む。好ましくは、この目的のためのシグナル配列は哺乳動物のシグナル配列である。必要な場合には、構築物はまた、ポリアデニル化を行わせるシグナル、同様にまた、1つまたは複数の制限部位および翻訳終結配列を含むことができる。例として、そのような構築物は典型的には、5’LTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、第2鎖DNA合成の起点、および、3’LTRまたはその一部を含む。非ウイルス性である他のベクターを使用することができる(例えば、カチオン性脂質、ポリリシンおよびデンドリマー)。
【0129】
遺伝子治療プロトコルを実行するための好ましい方法が、SomiaおよびVerma[(2000)、Nature Reviews、1:91〜99]、Isner(2002)、Myocardial gene therapy.Nature、415:234〜239;High(2001)Gene therapy:2001年展望、Haemophilia 7:23〜27;HammondおよびMcKirnan(2001)Angiogenic gene therapy for heart disease:a review of animal studies and clinical trials.49:561〜567において提供される。
【0130】
本発明の抗体は金属タンパク質の活性化形態を示差的に認識することができるので(実施例の節の実施例3を参照のこと)、本発明の抗体は、例えば、MMP活性を生物学的サンプル[すなわち、任意の身体サンプル、例えば、血液(血清または血漿)、喀痰、腹水、胸膜滲出液、尿、生検試料、単離された細胞および/または細胞膜調製物]においてモニターすることなどによって強力な診断ツールおよび予後ツールとして使用することができる。このことは、MMPのバランスの崩れた活性化が腫瘍の侵入を促進させるガン細胞の転移特徴を評価するとき、特に重要である。同様に、本発明の抗体は、MMP阻害剤の治療的投薬をモニターする際に使用することができる。そのような適用のために、本発明の抗体は好ましくは、この技術分野における標準的使用である何らかの、放射性、蛍光性、生物学的または酵素的なタグまたは標識のそれぞれにより標識される。そのような標識の使用に関する米国特許には、米国特許第3817837号、同第3850752号、同第3939350号、同第3996345号、同第4277437号、同第4275149号および同第4366241号が含まれる。
【0131】
そのような検出方法はまた、新規なMMPのハイスループットスクリーニングのために使用できることが理解される。簡単に記載すると、多数の生物学的サンプルを本発明の抗体と接触させることができ、この場合、活性化されたMMPが本発明の抗体に結合することができる。様々な対策が、活性化されたMMP(例えば、腫瘍細胞株に由来する活性化されたMMP)を含む生物学的サンプルを使用するために取られる。典型的には、放射性標識が、アッセイ体積を少なくするために使用される。
【0132】
代替では、本発明の抗体は、活性な金属酵素を生物学的サンプルから精製するために使用することができる。
【0133】
数多くのタンパク質精製方法がこの技術分野では知られている。例えば、本発明の抗体または抗体フラグメントは、金属酵素を単離するためにアフィニティクロマトグラフィにおいて使用することができる。様々なカラムを調製することができる。この場合、抗体が固体の基体(例えば、粒子、例えば、アガロースおよびSephadex)に連結され、生物学的サンプル(例えば、細胞溶解物)をカラムに通すことができ、カラムを洗浄した後、穏和な変性剤の濃度を増大させ、それにより、精製された金属酵素が放出される。
【0134】
本発明の教示に従って作製された抗体またはそのフラグメントは診断キットまたは治療キットに含めることができる。抗体または抗体フラグメントは、適切な緩衝液および保存剤とともに1つまたは複数の容器に詰めることができ、診断のために、または、治療的処置を導くために使用することができる。
【0135】
従って、抗体またはそのフラグメントは、それぞれを1つの容器において混合することができ、または、個々の容器に入れることができる。好ましくは、容器はラベルを含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジおよび試験管が含まれる。容器は様々な材料(例えば、ガラスまたはプラスチック)から形成され得る。
【0136】
加えて、他の添加剤(例えば、安定剤、緩衝剤およびブロッキング剤など)を加えることもできる。そのようなキットの抗体はまた、固体の支持体(例えば、ビーズおよびアレイ基体(例えば、チップ)など)に結合させることができ、診断目的のために使用することができる。キットはまた、試験された対象が、目的とするMMPの発現に関連する状態、障害または疾患に罹患しているか、あるいは、目的とするMMPの発現に関連する状態、障害または疾患を発症する危険性があるかを明らかにするための説明書を含むこともできる。
【0137】
本発明の追加の目的、利点および新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なおこれら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
【実施例】
【0138】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なお、これら実施例によって本発明は限定されない。
【0139】
本願で使用される用語と、本発明で利用される実験方法には、分子生化学、微生物学および組換えDNAの技術が広く含まれている。これらの技術は、文献に詳細に説明されている。例えば、以下の諸文献を参照されたい。「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻 Ausubel,R.M.編(1994);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons,バルチモア,メリーランド(1989);Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons,ニューヨーク(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」、Scientific American Books、ニューヨーク;Birrenら編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」、1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク(1998);米国特許第4666828号、同第4683202号、同第4801531号、同第5192659号および同第5272057号に記載される方法;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」、I〜III巻 Cellis,J.E.編(1994);「Current Protocols in Immunology」I〜III巻 Coligan,J.E.編(1994);Stitesら編、「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、ノーウォーク,CT(1994);MishellおよびShiigi編、「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H.Freeman and Co.、ニューヨーク(1980);利用可能な免疫検定法は、例えば以下の特許と科学文献に広範囲にわたって記載されている:米国特許第3791932号、同第3839153号、同第3850752号、同第3850578号、同第3853987号、同第3867517号、同第3879262号、同第3901654号、同第3935074号、同第3984533号、同第3996345号、同第4034074号、同第4098876号、同第4879219号、同第5011771号および同第5281521号;「Oligonucleotide Synthesis」Gait,M.J.(1984);「Nucleic Acid Hybridization」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1985);「Transcription and Translation」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」Freshney,R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.(1984)および「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、サンディエゴ,CA(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」、CSHL Press(1996);なお、これらの文献類は、あたかも本願に完全に記載されているように援用されるものである。その他の一般的な文献は、本明細書を通じて提供される。本明細書に記載の方法は当業技術界で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。本明細書に含まれるすべての情報は本願に援用するものである。
【0140】
材料および方法
組換え酵素。MMP−2の触媒作用ドメイン(GenBankアクセション番号NP_032636.1のアミノ酸110〜467)をBL−21細胞においてT7プロモータのもとで発現させた。細胞を1mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドにより5時間誘導した。細胞ペレットを、緩衝液対初発培養体積の1:25の比率で、50mMのTris(pH8.0)、0.5mMのEDTA、50mMのNaCl、5%のグリセロールおよび1%のTritonX−100に再懸濁した。懸濁物を15000rpmで10分間遠心分離し、ペレットを、50mMのTris(pH8.0)、0.5mMのEDTA、50mMのNaCl、5%のグリセロールおよび0.2%のSarkosylに溶解し、その後、氷上で30分間インキュベーションした。上清画分を、事前に平衡化された5mlのゼラチン−セファロースカラム(事前に充填されたもの、Amersham Biosciences)に負荷し、透析緩衝液(50mM Tris(pH8.0)、50mM NaCl、5mM CaCl、10μM ZnCl、0.02% Brij)により洗浄した。タンパク質を、50mMのTris(pH8.0)、1MのNaCl、5mMのCaCl、10μMのZnCl、0.02%のBrijおよび15%のMe2SOにより溶出し[Rosen,O.、Inhibition of NMPs by Monoclonal Antibodies.2001]、SDS−PAGEを使用してアッセイし、その触媒活性を蛍光発生ペプチドの分解によって測定した[Knight,C.G.、F.WillenbrockおよびG.Murphy、A novel coumarin−labelled peptide for sensitive continuous assays of the matrix metalloproteinases.FEBS Lett、1992、296(3):p.263〜6]。
【0141】
Pro−MMP−9[これはヒンジ領域およびヘモペキシンドメインを欠く。Ala1〜Gly424|P14780|MMP9_HUMANマトリックスメタロプロテイナーゼ−9前駆体(MMP−9)(EC3.4.24.35)]を、以前に記載されたようにpTWIN発現ベクターで大腸菌ER2566において発現させ、封入体から均一に精製した[Bjorklund,M.、P.HeikkilaおよびE.Kovivunen、Peptide inhibition of catalytic and noncatalytic activities of matrix metalloproteinase−9 blocks tumor cell migration and invasion.J Biol Chem、2004、279(28):p.29589〜97]。Pro−MMP−9を、200mMのTrisに溶解された1mMの酢酸p−アミノフェニル水銀(APMA、ICN Biomedicals Inc.、Ohio、米国)により30分間、37℃で活性化した。
【0142】
ヒトの組換えpro−MMP−2および組換えpro−MMP−9を、以前に記載されたように、対応する組換えワクシニアウイルスを感染させたHeLa S3細胞において発現させ、均一に精製した[Olson,M.W.、Gervasi,D.C.、Mobashery,S.およびFridman,R.(1997)J.Biol.Chem.272、29975〜29983;Fridman,R.、Fuerst,T.R.、Bird,R.E.、Hoyhtya,M.、Oelkuct,T.M.、Kraus,S.、Komarek,D.、Liotta,L.A.、Berman,M.L.およびStetler−Stevenson,W.G.(1992)J.Biol.Chem.267、15398〜15405]。
【0143】
テトラ−カルボキシフェニルポルフィリンCo(II)/Zn(II)(CoTCPP/ZnTCPP)。ZnTCPPを、記載のように、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中、ZnClとTCPPとの反応によって合成した[Harada,A.他、Control of photoinduced electron transfer from zinc−porphyrin to methyl viologen by supramolecular formation between monoclonal antibody and zinc−porphyrin.Photochem Photobiol、1999、70(3):p.298〜302]。CoTCPPを、記載のように、DMF中、Co(OAc)・4HOとTCPPとの反応によって合成し[Harada,A.他、Control of photoinduced electron transfer from zinc−porphyrin to methyl viologen by supramolecular formation between monoclonal antibody and zinc−porphyrin.Photochem Photobiol、1999、70(3):p.298〜302]、精製した。
【0144】
Imisdpの合成。以下の実施例7に記載される。
【0145】
タンパク質へのハプテンのコンジュゲート化。ハプテン(4mg)を、DMF中1,1’−カルボニルジイミダゾールを(1:1のモル比で)加え、1時間インキュベーションすることによってコンジュゲート化のために活性化した。1〜50μモルの活性化ハプテンを0.1M炭酸塩緩衝液(pH8)中20mg/mLのBSAまたはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に加えた。溶液を室温で3時間撹拌し、その後、PBSに対して徹底的に透析した。
【0146】
免疫化および融合。アジュバント(KLH)コンジュゲート化CoTCPP、アジュバント(KLH)コンジュゲート化ZnTCPPまたはアジュバント(KLH)コンジュゲート化Imisdpのそれぞれを使用して、BALB/cマウスを免疫化した。免疫化およびNSOミエローマ細胞株へのその後の融合を標準的なプロトコルに従って行った[Harlow,E.およびLane,D.、Using Antibodies:A Laboratory Manual Portable Protocol No.1、1998]。
【0147】
抗体スクリーニング
ELISA。成長中のハイブリドーマの上清を、それぞれのハプテン−BSA(PBSにおいて3μg/ml)がNunc maxisorpプレートに被覆された直接的ELISAを使用して、ZnTCPP、CoTCPPまたはImisdpとの反応性を有する抗体についてスクリーニングした。被覆を4℃で一晩行い、抗体とのインキュベーションを20℃で1時間行った。HRPコンジュゲート化抗マウスmAb(Sigma)を二次抗体として使用し、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸、ABTS、Sigma)を基質として使用した。0.005%(v/v)のTween20を含有するPBS(PBST)を洗浄試薬として使用した。希釈緩衝液はPBSであった。A602を、SPECTRAFluor Plus分光計(Tecan、オーストリア)におけるマイクロプレートリーダーによって記録した。コントロールとして、上清を同じ様式でBSA被覆プレートとインキュベーションした。0.5ミリ光学濃度を超える吸光度値を陽性と見なした。
【0148】
競合的ELISA。異なる希釈度のハイブリドーマ上清を、以前に記載された工程に従ってハプテン−BSA被覆プレートとインキュベーションした。力価測定曲線をプロットし、力価希釈度を50%の結合において求めた。力価濃度に希釈された上清を、以前に記載された工程に従って、可溶性のZnTCPP化合物、CoTCPP化合物またはImisdp化合物と30分間プレインキュベーションし、その後、ハプテン被覆マイクロタイタープレートに移した。推定された解離定数は、50%の結合を達成するために要求される可溶性ハプテンの濃度であった。
【0149】
産生および精製。選択されたハイブリドーマを限界希釈によって2回サブクローン化し、その後、プリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン)により抗原刺激された腹水腫瘍が注入されたBALB/cマウスによる大規模産生を行った。mAbを、プロテインGセファロース4 Fast Flow(Amersham Biosciences)でのアフィニティクロマトグラフィによって精製した。腹水を12000gで15分間遠心分離して、不溶物粒子および脂質を除いた。1mLの腹水をPBSにより5倍の体積に希釈し、その後、5mLのカラム体積のプロテインGセファロースに負荷した。溶出ピークをSDS−PAGEによって分析した。
【0150】
アイソタイプ決定。培養フラスコにおいて成長させたクローン化ハイブリドーマから得られた培養上清をmAbの供給源として使用した。それぞれの抗体を、Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Kit(HyCult biotechnology b.v.、オランダ)によってアイソタイプ決定した。
【0151】
精製された抗体の免疫ブロット分析。精製された抗体を8%SDS−ポリアクリルアミドゲルで分離し、NC膜(Bio−Rad)に転写し、続いて、抗MMP9抗体(Sigma)を使用する免疫ブロット分析に供した。西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲート化されたヤギ抗マウスIgG(Sigma)を二次抗体として使用した。シグナルを、ECL(Pierce)を使用して検出した。
【0152】
精製されたタンパク質を使用する結合アッセイ。mAb(10μg)を抗マウスIgG−アガロースビーズ(Sigma)とPBSにおいて4℃で一晩インキュベーションした。非結合抗体を洗浄した後、精製されたPro−MMP−2、Pro−MMP−9、MMP−2触媒作用ドメイン、MT1触媒作用ドメインまたはTACE(2μg)を加え、その後、RTでの2時間のインキュベーションを行った。ビーズを遠心分離によって集め、PBSにより3回洗浄した。ビーズに結合したままであるタンパク質をSDSサンプル緩衝液により溶出し、SDS−PAGEによって分画し、クーマシーブルーによる染色によって検出した。
【0153】
免疫沈殿およびウエスタンブロット。HT1080細胞をペトリディッシュに播種した。80%のコンフルエンスに達した後、培地(10%FCS、非必須アミノ酸、ペニシリン、ストレプトマイシン、ピルビン酸ナトリウムおよびL−グルタミンが補充されたDMEM)を(FCSを含まない)無血清培地に変えた。さらに24時間のインキュベーションの後、馴化培地(CM)を接着性細胞から集め、Millipore Centricon−10(Bedford、MA)を使用して濃縮した。濃縮された上清を免疫沈殿のために使用した。CMを抗−1(CoTCPP)mAb(15μg/ml)と4℃で一晩インキュベーションした。プロテインAセファロース(CL−4B、Amersham Biosceinces)をサンプルに加え、RTで2時間混合した。ビーズをPBSにより3回洗浄し、SDSサンプル緩衝液に懸濁し、95℃に3分間加熱した。免疫沈殿物を遠心分離によって回収し、SDS/PAGEに供した。分離後、タンパク質をニトロセルロース(NC)膜に転写し、抗MMP−2抗体によりプローブ探査した。
【0154】
HT1080細胞によって産生されたProMMP−2を活性化するために、1mMの酢酸4−アミノフェニル水銀(APMA)を濃縮CMに加え、その後、37℃での6時間のインキュベーションを行った。活性化の後、CMを4℃でPBSに対して(3回)透析して、APMAを除いた。活性化された培地による免疫沈殿を上記のように行った。
【0155】
直接的ELISAを使用する活性型MMP−9への結合。MMP−9の触媒作用ドメイン(2μg/ml)をマイクロタイターのウエルにおいて固定化した。mAb(1mg/ml)を、ELISAスクリーニングについて記載されたのと同じ手順に従ってウエルに加えた。抗MMP−9抗体(Sigma)が陽性コントロールとして役立ち、腹水からアフィニティ精製された関係のないマウスIgGが陰性コントロールとして役立った。
【0156】
速度論的アッセイ。MMPの酵素活性を以前に記載されるように測定した[Solomon,A.他、Pronounced diversity in electronic and chemical properties between the catalytic zinc sites of tumor necrosis factor−alpha−converting enzyme and matrix metalloproteinases despite their high structural similarity.J Biol Chem、2004、279(30):p.31646〜54]。MMP−9、MMP−2およびMT1−MMPの活性を、Knight他[FEBS Lett、1992、296(3):p.263〜6]によって記載されるように、蛍光発生ペプチド(Mca−Pro−Leu−Gly−Leu−Dpa−Ala−Arg−NH)(Calbiochem−Novabiochem AGから購入)の分解をλex=340nmおよびλem=390nmでモニターすることによって測定した。標準的なアッセイ混合物は、50mM Tris緩衝液(pH7.5)、200mM NaCl、5mM CaCl、20μM ZnClおよび0.05%Brijを含有した。TACEの酵素活性を、蛍光発生ペプチドQF−45(Mca−Ser−Pro−Leu−Ala−Gln−Ala−Val−Arg−Ser−Ser−Ser−Arg−Lys(ジニトロフェニル)−NH2)(Calbiochem−Novabiochem AGから購入)の分解をモニターすることによって測定した。
【0157】
インサイチュザイモグラフィ。MMPの正味のゼラチン分解活性の所在をインサイチュザイモグラフィによって突き止めるために、分子内で消光されるフルオレセインイソチオシアネート標識のDQゼラチン(Molecular Probe)をゼラチナーゼによる分解のための基質として使用した。ゼラチナーゼによるタンパク質分解により、切断されたフルオレセインイソチオシアネート−ゼラチンペプチドが生じ、この蛍光の所在を突き止めることにより、正味のゼラチン分解活性の部位が示される。簡単に記載すると、ヒト線維肉腫HT1080細胞(これは、MMP−2、MMP−9およびMT1−MMPを産生する)を12mmのカバースリップに置床した。24時間のインキュベーションの後、細胞を1uMの13E11 mAbにより37℃で30分間処理した。非処理の細胞がこの実験のための陰性コントロールとして役立った。細胞をPBSにより洗浄し、その後、60ug/mのDQゼラチンを含有するザイモグラフィ用反応緩衝液(0.05M Tris−HCl、0.15M NaCl、5mM CaCl2および0.2mM NaN3、pH7.6;高濃度のアジ化物は、ゼラチンが食作用されることを防止し、従って、細胞表面ゼラチン分解活性が生じることを可能にした)と37℃で一晩インキュベーションした。ザイモグラフィ用反応緩衝液は、処理された細胞については1uMのCoTCPP mAbを含有した。インキュベーション期間が終了したとき、固定処理またはさらなる洗浄を行うことなく、MMPのゼラチン分解活性の所在を突き止め、蛍光顕微鏡観察によって写真撮影し、画像をSpotデジタルカメラによって取得した。
【0158】
実施例1
小さい有機金属化合物による亜鉛活性部位の立体配座模倣
MMPの活性部位における亜鉛イオンには、3つの保存されたヒスチジン残基が均一に配位する。チモーゲンの活性化および基質のタンパク質分解の間、亜鉛の配位が、触媒作用を有しない段階における四配位の四面体幾何構造から、触媒作用を有する段階における五配位の三角両錘型[Auld,D.S.、Zinc coordination sphere in biochemical zinc sites.Biometals、2001.14(3−4);p.271〜313]に変化する。従って、保存されたヒスチジンは亜鉛イオンに関して様々な異なる幾何構造を取ることができる。これらの立体配座の見本を作製するために、2つの化合物を、亜鉛の環境を模倣するためのモデルとして選択した(ImisdpおよびCo/ZnTCPP、図1)。Imisdp化合物(合成が以下の実施例7に示される)は四配位の幾何構造を模倣することができる。この場合、四面体に近い立体配座が、3つのイミダゾール塩基と、第4の配位子としての水分子とによって形成される。
【0159】
図2Aは、亜鉛配位子の四面体型幾何構造を表すために改変されている、MMP−9(PDB:1GKC)の触媒作用部位[Rowsell,S.他、Crystal structure of human MMP9 in complex with a reverse hydroxamate inhibitor.J Mol Biol、2002.319(1):p.173〜81]とのImisdp分子の構築された3Dモデルの重なりを示す。改変には、X線構造において存在する配位子(ヒドロキサム酸系阻害剤)を水分子で置換すること、および、酵素全体を多層QM/MN法によって局所的極小にまで最適化することが含まれる(材料および方法を参照のこと)。高い類似性が、MMP−9およびImisdpにおける計算されたヒスチジン亜鉛モチーフの間において、亜鉛イオンからのヒスチジンのε−窒素の距離(それぞれ、2.04±0.06および2.02)に関して、また、金属に向かう3つのヒスチジンの相対的配向に関して存在する。第2の分子、すなわち、Zn/CoTCPPは、亜鉛またはその類似金属のコバルトと配位している4つのイミダゾール塩基が金属イオンに関して同一平面の立体配座にある[Stevens,E.D.、Electronic Structure of Metalloporphyrins.1.Experimental Electron Density Distribution of(meso−Tetraphenylporphinato)cobalt (II).、J.Am.Chem.SOC、1981、103(17):p.5087〜5095]。この立体配置は、金属が、錐体の底面を形成する2つのヒスチジンとほとんど同一平面である五配位の三角両錘型幾何構造における3つのヒスチジンのうちの2つの立体配座を模倣する。図2Bは、亜鉛に5つの配位子(2つのさらなる配位子がヒドロキサム酸系阻害剤によって与えられる)が配位するMMP−9の結晶構造(PDB:1GKC)を示す。錐体の底面における2つのヒスチジンの配向、および、亜鉛イオンからのそれらの距離(MMP−9、ZnTCPPおよびCoTCPについてそれぞれ、2.2±0.02、2.03±0.04および1.95)が、Co/ZnTCPP分子と匹敵する。
【0160】
実施例2
モノクローナル抗体の作製および選抜
CoTCPP、ZnTCPPおよびImisdp(図1)に対するモノクローナル抗体を、マウスの免疫化、および、それぞれの化合物を被覆抗原とするELISAスクリーニングによる特異的な抗体の選抜によって作製した。3つの抗体を広範囲にわたる研究のために選択した。注目すべきことに、これらのクローンは、競合的ELISAスクリーニングに基づいて、最も良い親和性をそれらの免疫化用ハプテンに対してそれぞれ示したために選ばれた。それらの結合定数は0.01μM〜0.09μMの範囲にあり(表3、下記)、高親和性mAbに特徴的である。mAbをマウスにおける腹水として増殖させ、プロテインGビーズにより精製した。
【0161】

【0162】
実施例3
モノクローナル抗体はMMP−2およびMMP−9と交差反応する
MMPの触媒作用部位における亜鉛ヒスチジンの立体配座を模倣する合成化合物に対して惹起されたmAbがMMP−2およびMMP−9の活性部位内の露出した亜鉛ヒスチジンモチーフと交差反応するかどうかを明らかにするために、モノクローナル抗体を最初に、直接的ELISAを使用してMMP−9と結合することについてスクリーニングした。
【0163】
3つのmAbが、マイクロタイタープレートのウエルに直接に吸着させたMMP−9の触媒作用ドメインと結合した(市販の抗MMP−9抗体が陽性コントロールとして役立ち、関連性のないIgGが陰性コントロールとして役立った)。興味深いことに、腹水としてマウスにおいて増殖させられているmAbが、マウスの腹水に存在する活性型MMP−9と同時に精製された。抗MMP−9抗体を一次抗体として用いた精製抗体だけのウエスタンブロット分析は、活性型MMP−9についての約82KDaの予想される分子量に対応する明瞭なバンドを示した。従って、mAbは天然型酵素とインビボで複合体を形成した。
【0164】
次に、モノクローナル抗体を、免疫親和性に基づくアッセイを使用してMMP−2と結合することについてスクリーニングした。抗体をMMP−2の触媒作用ドメイン(MMP−2cat)とインビトロでインキュベーションし、その後、抗マウスIgG−アガロースビーズにより捕らえた。図3Aが示すように、すべてのmAbがMMP−2catと結合した。
【0165】
結合が活性部位との直接的な相互作用を介して生じることを明らかにするために、mAbを、Pro−MMP−2およびPro−MMP−9と結合するその能力について分析した。潜在型酵素では、プロドメイン構造により、触媒作用裂溝が隠される。従って、mAbが活性部位内のヒスチジン亜鉛モチーフを認識するならば、活性部位をプロドメイン構造によって阻止することは、mAbが結合することを妨げるにちがいない。同じ条件下で、プロ酵素への結合が検出されなかった(図3B)。活性型MMP−2に結合し、しかし、Pro−MMP−2には結合しないこの様式を、全長の天然型MMP−2がヒト線維肉腫(HT1080)の細胞培養物によって分泌されるインビボの同様な環境でさらに検討した。抗CoTCPP抗体とのHT1080馴化培地の免疫沈殿、それに続く、ウエスタンブロット分析では、Pro−MMP−2に対してではなく、活性型MMP−2に対する結合が示された(図3C)。これらの結果は、3つの抗体のすべてがMMP−2およびMMP−9と交差反応することを明らかにする。活性部位裂溝の露出が抗体結合のために不可欠であり、このことから、mAbがMMP−2およびMMP−9の活性部位と直接に相互作用することが確認される。
【0166】
実施例4
抗CoTCPP mAbおよび抗Imisdp mAbはMMP−2およびMMP−9をインビトロにおいて阻害する
抗Imisdp mabおよび抗CoTCPP mabが、マイクロモル濃度の範囲でMMP−2およびMMP−9のタンパク質分解活性を阻害した(図5)。mAbによるMMPの阻害の速度論的分析を、消光された蛍光性ペプチド基質を用いた連続蛍光測定アッセイで行った。驚くべきことに、抗ZnTCPP mAbは阻害作用を示さなかった。
【0167】
抗CoTCPP mAbによる阻害の本質を明らかにするために、実験を、酵素を異なる濃度の蛍光性ペプチド基質とともにmAbの存在下または不在下で使用して行った。図4A〜Bに示されるLineweaver−Burkプロットにおいて示されるデータは競合的阻害プロフィルに特徴的であり、Ki値が、MMP−9およびMMP−2についてそれぞれ、13μMおよび24μMである。この競合的阻害プロフィルは、mAbがペプチド基質と同じ部位に結合したことを示していた。この阻害様式は、活性部位との直接的な相互作用のさらなる証明である。注目すべきことに、抗Imisdp mAbは、MMP−2およびMMP−9に対する濃度依存的な阻害作用を示し、競合的阻害を仮定すると、計算されたKiは、MMP−2およびMMP−9に対してそれぞれ、5.8μMおよび3μMである(図5)。mAbがMMP−2およびMMP−9の結合部位を認識するので、mAbとMMPとの間における境界相補性のさらなる最適化が、構造的および静電的の両方で、親和性成熟法(Paul J.Carter、Nature Reviews Immun.Vol.6、2006、343〜357)によって達成可能である。この方法を使用することにより、活性部位の内側または外側のどちらかに存在する特異性特徴を利用する非常に特異的な阻害剤がもたらされ得る。
【0168】
実施例5
インサイチュザイモグラフィ
抗CoTCPP mAbの阻害活性を細胞レベルで確認するために、この抗体の影響を、MMP−2およびMMP−9を構成的に分泌するヒト線維肉腫HT1080細胞のゼラチン分解活性についてインサイチュザイモグラフィによって調べた。MMPのゼラチン分解活性の所在をインサイチュザイモグラフィによって突き止めるために、分子内で消光されるフルオレセインイソチオシアネート標識ゼラチン(DQ−ゼラチン)を基質として使用した。ゼラチナーゼによるタンパク質分解により、切断されたフルオレセインイソチオシアネート−ゼラチンペプチドが生じ、この蛍光の所在を突き止めることにより、正味のゼラチン分解活性の部位が示される。
【0169】
非処理のヒト線維肉腫HT1080細胞(図7A)は著しい細胞表面ゼラチン分解活性を示した。1μMのmAbの存在下において(図7B)、ゼラチナーゼ活性が、コントロール細胞において観測されるゼラチナーゼ活性と比較して低下した。これらの結果は、抗CoTCPP mAbがMMP−2およびMMP−9を細胞レベルで阻害したことを明らかにする。
【0170】
実施例6
本発明のmAbの選択性
抗体の選択性を、MMP−14(MT1−MMP)およびTNF−α変換酵素(TACE)(関連したADAM(ジスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ)ファミリーに属する亜鉛依存性メタロプロテイナーゼ(ADAM−17))に対する抗CoTCPP mAbおよび抗Imisdp mAbの結合作用および阻害作用を調べることによって試験した。MT1−MMPおよびTACEに対する阻害作用を適切なペプチド基質によるインビトロ蛍光酵素活性アッセイによって試験した。抗CoTCPP mAbは、MT1−MMPまたはTACEに対する阻害作用を全く示さなかった。抗CoTCPP mAbが、結果としての阻害を伴うことなく、TACEおよびMT1−MMPと結合するかどうかを明らかにするために、免疫親和性に基づく実験を、精製された酵素を用いて行った。しかしながら、結合が検出されなかった。抗CoTCPP mAbとは対照的に、抗Imisdp mAbはMT1−MMPを阻害し、Ki値が10μMであり、しかし、TACEに対する阻害作用を示さなかった。結果が下記の表4に示される。
【0171】

【0172】
活性部位における高い構造的類似性がMMPファミリーのメンバーおよびTACEの間に存在する。具体的には、亜鉛結合部位を取り囲む三次元での構造的要素が、基質のペプチド骨格を受け入れる必要があるために、また、保存された亜鉛結合モチーフ(EXXHXXGXXH)が存在することのためにほぼ同一である[Solomon,A.他、Pronounced diversity in electronic and chemical properties between the catalytic zinc sites of tumor necrosis factor−alpha−converting enzyme and matrix metalloproteinases despite their high structural similarity.J Biol Chem、2004、279(30):p.31646〜54;Likacova,V.他、A comparison of the binding sites of matrix metalloproteinases and tumor necrosis factor−alpha converting enzyme:implications for selectivity:、J Med Chem、2005、48(7):p.2361〜79]。従って、MMPの間におけるmAb選択性は、保存されたヒスチジン亜鉛モチーフの認識にだけ基づいて予想されない。しかしながら、小さい分子量の合成阻害剤とは異なり、大きいタンパク質分子である抗体は、タンパク質の骨組中に埋もれる活性部位裂溝への進入が制限されているにちがいない。特に、mAbは、触媒作用亜鉛イオンと特異的に相互作用することが示されたので、亜鉛イオンが溶液に露出する程度が、抗体結合のために非常に重要であるにちがいない。MT1−MMP、および、より大きな程度ではあるがTACEは、それらの結晶構造によって示されるように、比較的埋もれた触媒作用の亜鉛イオンと相関づけられる深いS1ポケットによって区別される。活性部位の深さにおけるこの差により、抗体がTACEに対する阻害作用を有しないことが説明されるかもしれない。これらの結果は、選択性が、触媒作用亜鉛イオンの露出の程度に基づいて達成され得ることを示唆する。MMPおよびTACEを比較するときに考慮しなければならない別の重要な要因は、化学的性質(例えば、疎水性および極性)に関しての活性部位ポケットにおける違いである(図8を参照のこと)。例えば、TACEの活性部位は、極性がほとんどのMMPの活性部位よりも著しく大きい。Solomon他は、活性部位の極性におけるそのような変化が、触媒作用亜鉛イオンに対する活性部位のヒスチジンイミダゾール環の配向に直接に影響することを明らかにした[Solomon,A.他、Pronounced diversity in electronic and chemical properties between the catalytic zinc sites of tumor necrosis factor−alpha−converting enzyme and matrix metalloproteinases despite their high structural similarity.J Biol Chem、2004、279(30):p.31646〜54]。
【0173】
抗CoTCPPおよび抗Imisdpの選択性を、関連性のない亜鉛依存性酵素、すなわち、カルボニックアンヒドラーゼ(CA)およびブロッキイ(brockii)アルコールデヒドロゲナーゼ(TbADH)とのそれらの交差反応性を試験することによってさらに検討した。活性型MMPと同様に、CAは、3つのヒスチジン残基および1つの水分子に四面体型で配位する亜鉛イオンを含有し、TbADHは、4つの異なるアミノ酸残基(ヒスチジン、システイン、アスパラギン酸およびグルタミン酸)に四面体型で配位する触媒作用亜鉛イオンを含有する。適切なインビトロ機能的阻害実験、ならびに、免疫親和性に基づく類似する実験を、これらの酵素との交差反応性を調べるために行った。しかしながら、結合または阻害が検出されなかった。抗CoTCPP mAbもまた、関連した様々な生理学的ポルフィリン(例えば、ミオグロビンおよびヘモグロビンおよびビタミンに含まれるヘム基)とのその交差反応性について試験した。交差が、競合的ELISAアッセイにおいて、同様にまた、免疫親和性アッセイにおいて検出されなかった。
【0174】
カルボニックアンヒドラーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼはすべてが、かなり埋もれた活性部位を有しており、同様に、ミオグロビンおよびヘモグロビンにおけるポルフィリン部分は露出していない。ビタミンB12は金属を平面状イミダゾール構造の中心に含有しており、それにもかかわらず、軸方向の配位子がmAbの結合を妨害しているかもしれない。まとめると、これらの結果は、抗CoTCPP mAbが、軸方向の金属配位残基を妨害することなく、比較的露出した金属−イミダゾール立体配置を認識することを裏付けている。
【0175】
実施例7
[2−(2−アミノエチルカルボモイル)エトキシメチル]−トリス−[2−(N−(3−イミダゾール−1−イル−プロピル))エトキシメチル]メタン亜鉛(II)(3)の合成、図9
(i)テトラ(2−ペンタクロロ−フェノキシカルボニル−エトキシメチル)メタンの合成:ペンタクロロフェノール置換テトラ−活性エステルの合成を、Haim Weizmann他(JACS、1996、118、12368〜12375)の手法の場合と同様に行った。
【0176】
(a)モノ置換されたトリ活性エステルの調製:テトラ活性エステル(1)(1g、0.69mmol)およびBocNHCHCHNH(100mg、0.62mmol)を20mlの乾燥ジクロロメタンに溶解した。溶液を、トリエチルアミンにより約8のpHを維持しながら一晩撹拌した。溶液を濃縮し、CHCl:酢酸エチル(90:10)によるフラッシュクロマトグラフィによって精製して、以下のものを得た(152mg、15%の収率)。

【0177】
(b)トリス(イミダゾール)の調製:モノ置換されたトリ活性エステル(150mg、0.11mmol)および1−(3−アミノプロピル)イミダゾール(33μl、0.39mmol)を(20mlの)乾燥THFに溶解し、室温で一晩撹拌した。白色の溶液を濃縮し、(0.063〜0.200mm)のシリカをCHCl:メタノール(50%〜90%)とともに使用するカラムクロマトグラフィによって精製して、以下のものを得た(45mg、44%の収率)。

【0178】
(c)遊離アミンを有するトリス(イミダゾール)(2)の調製:トリス(イミダゾール)(40mg、0.045mmol)をジクロロメタンおよびトリフルオロ酢酸の(2:1)混合物6mlに溶解し、1時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、四塩化炭素とともに数回蒸発させ、高真空下で乾燥して、TFAを混合物から除いて、以下のものを得た(30mg、85%の収率、b)。

【0179】
3.トリス(イミダゾール)−Zn(II)錯体(3)の調製:化合物2(30mg、0.038mmol)を1mlのメタノールに溶解した。これに、2滴〜3滴の1N NaOH溶液およびZnCl(5mg、0.04mmol)を加え、半時間撹拌した。白色の沈殿物をろ過して、以下のものを得た(12mg、37%の収率)。

【0180】

[2−(2−アミノエチルカルボモイル)エトキシメチル]−トリス−[2−(N−(3−イミダゾール−1−イル−プロピル))エトキシメチル)メタン
【0181】
実施例8
6C6はゼラチナーゼの触媒作用部位と交差反応した
ある量の6C6が腹水から活性型MMP9と同時に精製されていたことが発見された。検出可能な量のMMP9が、mAbを殖やすためにマウスにおいて誘導された腹水腫瘍に存在することが、ウエスタンブロットおよびゼラチンザイモグラフィによって明らかにされた(データは示されず)。MMP9−抗体複合体を、プロテインGアフィニティクロマトグラフィを使用してマウスの腹水から精製した(プロテインGは抗体の定常ドメインに結合し、これにより、可変ドメインを、抗原と相互作用するために自由な状態にする)。図11Aに示されるように、同時精製されたMMP9が、精製6C6−MMP9複合体を、市販されている抗MMP9抗体を使用してウエスタンブロッティングすることによって検出された。プロドメインを欠く活性型MMP9に対応する、約82kDaの分子量を有するバンドが特定された。このバンドは、同じ様式で精製および分析された関連性のないマウスmAbコントロールでは検出されなかった。これらの結果は、6C6が内因性の活性なマウスMMP9との特異的なインビボ複合体を形成したことを示した。
【0182】
非常に相同的なMMP2酵素の活性型形態に対する結合についてさらに調べるために、類似した免疫沈殿実験をインビトロで行った。6C6を、精製されたMMP2触媒作用フラグメントと3:1のモル比でインキュベーションした。プロテインAセファロースの免疫沈殿物のSDS−PAGE分析により、活性なMMP2触媒作用フラグメントとの6C6の特異的な複合体の形成が明らかにされた(図11B)。プロテインAビーズは単独ではMMP2を免疫沈殿しなかった。次に、MMP2およびMMP9の不活性なチモーゲン型(潜在型)形態に対する結合を試験した。すべてのMMPが不活性型チモーゲンとして産生されるので、MMPは、活性部位を阻止するおよそ80〜90のアミノ酸のN末端プロペプチドを有する[Bode,W.およびK.Maskos、Biol Chem、2003.384(6):p.863〜72](図11D)。pro−MMP2およびpro−MMP9との免疫沈殿実験を類似した様式で行った。重要なことに、この抗体は潜在型酵素に結合しなかった(図11C)。際立ったことに、6C6は、活性部位の亜鉛タンパク質複合体が溶液に露出する活性型酵素立体配座にだけ結合した。
【0183】
これらの結果から、6C6抗体(活性部位を模倣する生物無機化学ハプテンに対して惹起およびスクリーニングされた抗体)がMMP2およびMMP9のタンパク質活性部位と交差反応することが確認された。明らかに、この亜鉛トリポッドハプテンは、天然型タンパク質におけるそれぞれの亜鉛−ヒスチジンエピトープの三次元構造を模倣することができた。注目すべきことに、この最小の金属−タンパク質構造的エピトープの認識は、天然型酵素との交差反応性を誘発するために十分であった。活性化された酵素にだけ結合し、プロドメインが触媒作用の亜鉛タンパク質エピトープへの進入を阻止したその潜在型形態には結合しないこと(図11D)は、6C6と亜鉛触媒作用部位との直接的な相互作用を示していた。注目すべきことに、6C6は天然型MMP9とインビボで結合した。このことは、この抗体が複雑なタンパク質環境において酵素との特異的な複合体を形成できることを明らかにする。
【0184】
活性化された酵素種を潜在型形態から識別することは、6C6の特有かつ有益な機能的性質である。この活性は、MMP9に対して惹起された他の抗体とは対照的に、6C6に特有である。これは、タンパク質による免疫化は典型的には、表面ループに向けられたエピトープをもたらし、一方、触媒作用アミノ酸はほとんどが酵素の表面において裂溝の内部に埋もれるからである。分子のこの部分は、免疫原性が低いと見なされる。従って、従来の方法によって(天然型タンパク質またはタンパク質フラグメントに対して)惹起された中和モノクローナル抗体は一般に、活性部位の触媒作用残基とではなく、活性部位に連続または隣接する領域と相互作用し、立体的障害の機構によって阻害する。そのような抗体は典型的には、活性型形態と同様に、不活性な前駆体に結合する。本発明の特有の活性部位模倣ハプテン免疫化法は、従来のタンパク質免疫化法によって達成することができない、MMPにおける触媒作用の金属タンパク質残基を認識する抗体の産生を可能にし得る。
【0185】
実施例9
6C6はインビトロおよびインサイチュにおいてゼラチナーゼを選択的に阻害する
MMP9およびMMP2に対する6C6の酵素阻害能力を明らかにするために、阻害アッセイを、ゼラチナーゼの活性部位裂溝に広がる小さい蛍光発生ペプチド基質(7アミノ酸)を使用して行った。初反応速度をいくつかの濃度のmAbについて測定した。6C6は両方の酵素の触媒活性を阻害した(図12A〜B)。阻害の競合的機構が、MMP9の活性を基質濃度の関数として様々な濃度の阻害性抗体の存在下で分析することによって決定された。両軸逆数のLinweaver−Burkプロットの形態で図12Aに示されるデータにより、競合的阻害プロフィルが明らかにされる。阻害データを競合的阻害系の式に適合化することにより、KiがMMP9およびMMP2についてそれぞれ1±0.1μMおよび1.4±0.16μMであることが得られた。6C6が高濃度(30μM)のMMP9との一晩のインキュベーションの後でMMP−9によって切断されなかったこともまた明らかにされた。このことは、6C6によるMMP9の観測された阻害が競合剤基質の切断のためではなかったことを明らかにする。6C6は、異なるMMPにおいて同じエピトープを認識するように設計されたので、MMP9の速度論的解析を、6C6による阻害機構の代表例とした。阻害作用は、ゼラチナーゼの全長型酵素形態と同様に、MMP2およびMMP9の触媒作用フラグメント種について一貫していた。具体的には、触媒作用ドメインならびにフィブロネクチンドメインを含有し、しかし、ヘモペキシンドメインを含有しない組換えのMMP9触媒作用フラグメントおよびMMP2触媒作用フラグメント;また、触媒作用ドメインのみを含有し、フィブロネクチンドメインおよびヘモペキシンドメインの両方を欠くMMP9組換え最小触媒作用ユニットはすべてが、以前に記載されたようにヒトのpro−MMP2およびpro−MMP9の全長cDNAをコードする組換えワクシニアウイルスを感染させたHeLa S3細胞の培地から精製された全長の(酢酸p−アミノフェニル水銀(APMA)活性化)ゼラチナーゼと同様に阻害された[Olsen,W.M.他、J Biol Chem、2000.275(4):p.2661〜8]。これらの結果により、阻害が触媒作用ドメインとの直接的な相互作用によって媒介され、ヘモペキシンドメインまたはフィブロネクチンドメインのどちらかとの相互作用に依存していないことが確認された。この競合的阻害プロフィルでは、触媒作用亜鉛部位との直接的な相互作用がさらに示された。類似した様式で調製された関連性のないmAbは酵素の光分解活性を妨害しなかった。従って、観測された阻害は、微量の同時精製された混入物のためではなかった。これらの実験のための抗体は組織培養から精製され、検出可能な量の活性型MMP9を精製抗体画分に含有しなかった。
【0186】
6C6の選択性を詳しく検討するために、その反応性を、マトリライシン(MMP7)、膜型MMP(MT1−MMP)および関連したジスインテグリン(ADAMs)腫瘍壊死因子−α変換酵素(TACE)を含む種々のマトリックスメタロプロテイナーゼサブグループに対して試験した。これらの酵素のコア構造は非常に類似しており、ほとんどが周辺ループの内部で変化している。具体的には、亜鉛−ヒスチジンの足場がよく保存されており、この足場は、触媒作用亜鉛イオンに配位する3つのヒスチジン残基のための足場として役立つループが続くコンセンサスヘリックスを示す(図13)。
【0187】
類似する阻害アッセイを、適切な蛍光発生ペプチド基質を用いて行った。興味深いことに、MMP−7またはTACEはどちらも、6C6と30μMまでの濃度でインキュベーションされたとき、何ら測定可能な程度に阻害されなかった。このことは、ゼラチナーゼに対する相当なレベルの選択性を示している。MT1−MMPが6C6によって阻害されたが、それほど強力でなく、Kiが14.4±0.75μMであった。興味深いことに、この選択性の起原は、特に活性部位におけるコア構造が非常に類似しているので、保存された亜鉛−ヒスチジン足場を認識させる抗体の設計にもっぱら基づいて解明することはできない。配列の変化(ほとんどが周辺ループの内部に存在する)により、亜鉛−ヒスチジンモチーフの露出度合いにおける差、活性部位の形状における差が決定され、その表面静電により、この選択的阻害パターンを説明することができる。
【0188】
6C6を、異なる亜鉛依存性メタロプロテアーゼ(カルボニックアンヒドラーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼ)との交差反応性についても試験した。MMPと類似して、カルボニックアンヒドラーゼ(CA)は、3つのヒスチジン配位子および1つの水分子に四面体型で配位する触媒作用亜鉛イオンを有する。その結果、(スルホニル化アミノ酸ヒドロキサマートタイプの)いくつかの強力な小分子MMP阻害剤は、効率的なCA阻害剤としても作用し、逆も然りである。CA阻害剤として以前に研究された一部のN−ヒドロキシスルホンアミド類もまた、MMPに対する阻害特性を示す[Scozzafava,A.およびC.T.Supuran、J Med Chem、2000.43(20):p.3677〜87]。好熱性細菌から得られたアルコールデヒドロゲナーゼ(TbADH)の活性部位は、亜鉛が、裂け目の内部に位置するヒスチジン、システイン、アスパラギン酸およびグルタミン酸に結合する異なる亜鉛−タンパク質部分を含む。30μMまでのmAb濃度の存在下における適切な機能的阻害実験は阻害作用を両方の酵素に対して何ら示さなかった。注目すべきことに、10本鎖のねじれたβ−シートの中心領域に位置するCAの活性部位は、四面体型Zn2+イオンが裂溝の底に存在する深さ15Åの錐体形状の裂溝から構成される。小分子阻害剤とは異なり、亜鉛イオンは、抗体との相互作用のためにはあまりにも深く埋もれているにちがいない。重要なことに、これらの実験では、6C6の選択的阻害プロフィルがさらに明らかにされる。
【0189】
細胞環境において、ゼラチナーゼに対する6C6の阻害作用を、インサイチュザイモグラフィによって、ゼラチナーゼの天然基質(すなわち、ゼラチン)を使用してさらに試験した。膜結合型MT1−MMPを発現し、MMP−2およびMMP−9を分泌する培養で成長させたヒト線維肉腫(HT1080細胞)[Giambernardi,T.A.他、Matrix Biol、1998.16(8):p.483〜96]に、フルオレセインコンジュゲート化ゼラチン(DQゼラチン)を重ねた。図14A〜Cに示されるように、非処理のHT1080細胞は著しい細胞表面ゼラチン分解活性を示した。5μMのmAbによる処理は、機構に基づいたゼラチナーゼ阻害剤(SB−3CT)を用いて観測される阻害と同様に、表面ゼラチン分解活性を著しく低下させた。SB−3CTは、ゼラチナーゼおよびMT1−MMPの両方を阻害するとき、類似する阻害プロフィルを有する(Ki値が、MMP2、MMP9およびMT1−MMPについてそれぞれ、28nM、400nmおよび110nMである)。
【0190】
まとめると、6C6はインビトロでの合成ペプチドの切断およびインサイチュでの天然高分子基質の両方を阻害した。6C6は、TIMPの阻害機構と類似する、MMP9に対する競合的様式の阻害を示した。競合的阻害プロフィルは、触媒作用亜鉛部分との直接的な相互作用をさらに示す。重要なことに、6C6は、ゼラチナーゼに対する選択的阻害プロフィルを示した。この選択性の起原は、保存された亜鉛−ヒスチジンモチーフの抗体標的化によって説明することができない。これらの結果は、抗体が、観測された特異性を説明する酵素表面上のさらなる決定基と相互作用することを示唆する。
【0191】
実施例10
マウスにおけるDSS誘導大腸炎に対する6C6 mAb処置の影響
MMPが、炎症性腸疾患(IBD)を含めて、いくつかの炎症性状態に関連する組織のリモデリングおよび破壊に関わるという証拠が増大している[Baugh,M.D.他、Gastroenterology、1999.117(4);p.814〜22;Heuschkel,R.B.他、Gut、2000.47(1):p.57〜62;von Lampe,B.他、Gut、2000.47(1):p.63〜73;Kirkegaard,T.他、Gut、2004.53(5):p.701〜9]。
【0192】
従って、本発明者らは、炎症性腸疾患のマウス実験モデルにおいてインビボでの6C6の抗ゼラチナーゼ阻害作用を調べた。
【0193】
6C6の阻害活性を検討するために、mAb処置がDSS誘導の急性大腸炎を改善する能力を調べた。具体的には、2%DSSを高感受性マウス系統C57BL/6に5日間与えた。6C6処置を、誘導日から開始して1.5または5mg/kgマウスの腹腔内注射によって毎日施した。2%DSSにさらされたマウスは、下痢、直腸出血および重度の体重減少とともに、急性大腸炎の症状を発症した。
【0194】
毎日モニターされた疾患活性指数(DAI)(体重、出血および便の硬さの総合スコア)に対するmAb処置の影響が図15Aに示される。mAb処置マウスは、コントロールと比較して、疾患活性を低下させていた(6日目から顕著であった)。DSS誘導大腸炎のさらなる巨視的発現は結腸の長さの減少である(図15B)。例えば、結腸の長さの30%の低下が、DSS誘導後11日で、実験未使用マウスとの比較で非処置マウスにおいて見出された。対照的に、平均してほんの22%または16%の低下が、1.5および5mg/kgマウスが投薬される6C6処置マウスにおいてそれぞれ得られた。6C6の保護作用がまた、疾患からの死亡率によって確認された。60%の死亡率が誘導後11日で非処置マウスにおいて見出され、一方、ほんの33%の死亡率が6C6処置マウスにおいて観測された(図15C)。従って、6C6によるC57BL/6マウスの処置は、DSS誘導大腸炎の低下した発現に加えて、改善された生存率をもたらした。
【0195】
全体として、これらの結果により、ゼラチナーゼ阻害剤としての6C6の治療的可能性が明らかにされた。
【0196】
実施例11
X線吸収分光法によるMMP9−6C6 mAb複合体の特徴づけ
活性型MMP9と阻害型MMP9−6C6複合体との違いをさらに研究するために、X線吸収分光法を行った。図16は、集められた蛍光XASデータを示す。データは、MMP9における触媒作用亜鉛イオンの第1および第2配位殻内の様々な原子の動径分布を提供するためにフーリエ変換(FT)スペクトルの形態で示される。遊離酵素および阻害型酵素の動径分布スペクトルにおける明瞭な変化を、ノイズレベルを超えて観測することができる。これらのスペクトル変化は、6C6に結合したとき、触媒作用亜鉛イオンの局所的環境が構造的変化を受けることを示している。活性型酵素と阻害型酵素との間におけるFTスペクトル特徴の空間分布およびピーク強度の両方における観測されたずれは、触媒作用亜鉛の局所的構造がmAbとの複合体形成のときに変化することを明白に示している。
【0197】
明確にするため別個の実施形態で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0198】
本発明はその特定の実施形態によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。本明細書中で言及した刊行物、特許および特許願はすべて、個々の刊行物、特許または特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【0199】




【配列表フリーテキスト】
【0200】
配列番号1は、6C6 mAb軽鎖の配列である。
配列番号2は、15E12 mAb軽鎖の配列である。
配列番号3は、13E11 mAb軽鎖の配列である。
配列番号4は、13E11 mAb重鎖の配列である。
配列番号5は、15E12 mAb重鎖の配列である。
配列番号6は、6C6 mAb重鎖の配列である。
配列番号7は、6C6 CDR L1の配列である。
配列番号8は、6C6 CDR L2の配列である。
配列番号9は、6C6 CDR L3の配列である。
配列番号10は、6C6 CDR H1の配列である。
配列番号11は、6C6 CDR H2の配列である。
配列番号12は、6C6 CDR H3の配列である。
配列番号13は、6C6 CDR L1のコード配列である。
配列番号14は、6C6 CDR L2のコード配列である。
配列番号15は、6C6 CDR L3のコード配列である。
配列番号16は、6C6 CDR H1のコード配列である。
配列番号17は、6C6 CDR H2のコード配列である。
配列番号18は、6C6 CDR H3のコード配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)を有する化合物:

式中、
mおよびnはそれぞれが独立して、1〜6の整数である;
〜XおよびY〜Yはそれぞれが独立して、OまたはSである;
〜Rはそれぞれが独立して、水素、アルキルおよびシクロアルキルからなる群から選択される;および
Rは(CH)x−C(=O)NR’−(CH)y−NR’R”であり、
ただし:
xおよびyはそれぞれが独立して、1〜6の整数である;および
R’およびR”はそれぞれが独立して、水素、アルキルおよびシクロアルキルからなる群から選択される。
【請求項2】
式(II)を有する請求項1に記載の化合物:

式中、R=−CH−C(=O)NH−CH−CH−NH
【請求項3】
式(II)を有する化合物:

式中、R=−CH−C(=O)NH−CH−CH−NH
【請求項4】
請求項1、2、または3に記載の化合物と特異的に結合することができる抗原認識領域を含む抗体。
【請求項5】
配列番号7、8、9、10、11および12に規定されるCDRアミノ酸配列を含む抗原認識領域を含む抗体。
【請求項6】
前記CDRアミノ酸配列は、配列番号13、14、15、16、17および18からなる群から選択される核酸配列によってコードされる、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
金属タンパク質の活性を阻害することができる、請求項4に記載の抗体。
【請求項8】
前記金属タンパク質はマトリックスメタロプロテアーゼである、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
前記マトリックスメタロプロテアーゼはゼラチナーゼである、請求項7に記載の抗体。
【請求項10】
前記ゼラチナーゼは、MMP−2およびMMP−9からなる群から選択される、請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
金属タンパク質阻害剤を製造する方法であって、請求項1、2、または3に記載の化合物に向けられた抗体を作製し、それにより、金属タンパク質阻害剤を製造することを含む方法。
【請求項12】
前記抗体はポリクローナル抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体はモノクローナル抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
請求項4に記載の抗体と医薬的に許容され得る担体とを含む医薬組成物。
【請求項15】
金属タンパク質のバランスの崩れた活性または異常な活性に関連する疾患をその処置の必要性のある対象において処置する方法であって、請求項4〜10に記載される抗体のいずれか1つの治療有効量を対象に投与し、それにより、金属タンパク質のバランスの崩れた活性または異常な活性に関連する疾患を対象において処置することを含む方法。
【請求項16】
疾患は炎症性腸疾患である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
マトリックスメタロプロテアーゼ活性を細胞において阻害する方法であって、細胞を請求項4〜10に記載される抗体のいずれか1つと接触させ、それにより、マトリックスメタロプロテアーゼ活性を細胞において阻害することを含む方法。

【図5】
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【図6A−B】
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【図9】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2010−519289(P2010−519289A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550773(P2009−550773)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000230
【国際公開番号】WO2008/102359
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(502379147)イェダ リサーチ アンド デベロップメント カンパニー リミテッド (14)
【Fターム(参考)】