説明

金属ナノ粒子の製造方法および銀/銅ナノ粒子ならびに導電性ペースト

【課題】比較的容易にコア−シェル構造を有する金属ナノ粒子を得ることが可能な製造方法を提供すること。
【解決手段】第1金属前駆体と有機溶媒とを含む溶液を加熱することにより、第1金属前駆体を還元させ、第1金属前駆体に由来する第1金属成分から構成される第1金属コアを生成させる工程と、第1金属コアを含む溶液に第2金属前駆体を加え、この溶液を加熱することにより、第2金属前駆体を還元させ、第2金属前駆体に由来する第2金属成分から構成される第2金属シェルを第1金属コアの周囲に生成させる工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノ粒子の製造方法および銀/銅ナノ粒子ならびに導電性ペーストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノサイズ粒子は、バルクサイズ粒子にはない特性を有している。そのため、近年、ナノサイズ粒子の合成法やその応用に関する研究が数多くなされている。
【0003】
これまで、金属ナノ粒子としては、Au、Ag、Pt、Pd、Cu、Niなどのナノ粒子が合成されており、導電材料、触媒材料、磁性材料、非線形光学材料、着色材料などとしての利用が期待されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、カプリン酸銀をヘキサノールに溶解または分散させ、その状態でマイクロ波を照射し、銀ナノ粒子を生成させる方法が開示されている。
【0005】
例えば、特許文献2には、ミリスチン酸銅をヘキサノールに溶解または分散させ、その状態でマイクロ波を照射し、銅ナノ粒子を生成させる方法が開示されている。
【0006】
これまで主に合成されたきた金属ナノ粒子は、単一金属からなる一元系の金属ナノ粒子である。近年、合金、コア−シェル構造などの二元系の金属ナノ粒子を用いることにより、触媒能や磁性機能などの機能が向上することが報告されている。二元系の金属ナノ粒子の中では、とりわけ、コア−シェル構造を有する金属ナノ粒子に関する研究が注目を集めている。
【0007】
例えば、非特許文献1には、アルコールまたはアセトン中に金属を入れ、レーザーアブレーションにより金属(銀、銅)を分解させることにより、銀−銅合金ナノ粒子を合成する方法が開示されている。
【0008】
例えば、非特許文献2には、真空蒸着法により銅コア−銀シェル構造の銅/銀ナノ粒子を物理的に合成する方法が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開2004−353038号公報
【特許文献2】特開2007−56321号公報
【非特許文献1】P.V.Kazakevich, A.V.Simakin, V.V.Voronov, G.A.Shafeev, Appl. Surf. Sci., 252, 4373, (2006)
【非特許文献2】M.Cazayous, C.Langlois, T.Okikawa, C.Ricolleau, A.Sacuto, Phys. Rev. B73, 113402 (2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来知られる製造方法では、比較的容易にコア−シェル構造を有する金属ナノ粒子を得ることができないといった問題があった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、比較的容易にコア−シェル構造を有する金属ナノ粒子を得ることが可能な金属ナノ粒子の製造方法を提供することにある。また、この製造方法によって得ることのできる銀/銅ナノ粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る金属ナノ粒子の製造方法は、第1金属前駆体と有機溶媒とを含む溶液を加熱することにより、第1金属前駆体を還元させ、第1金属前駆体に由来する第1金属成分から構成される第1金属コアを生成させる工程と、第1金属コアを含む溶液に第2金属前駆体を加え、この溶液を加熱することにより、第2金属前駆体を還元させ、第2金属前駆体に由来する第2金属成分から構成される第2金属シェルを第1金属コアの周囲に生成させる工程とを有することを要旨とする。
【0013】
ここで、上記加熱は、外部熱源またはマイクロ波照射によると良い。
【0014】
また、上記有機溶媒は、上記第1金属前駆体および第2金属前駆体に対して還元性を示すものであると良い。具体的には、炭素数3以上の一価アルコールなどを好適なものとして例示することができる。
【0015】
また、上記第1金属前駆体は、下記の化1で表され、上記第2金属前駆体は、下記の化2で表される金属塩であると良い。
(化1)
(R−A)−M
(但し、Rは炭化水素基、AはCOO、OSOまたはOPO、Mは第1金属、nはMの価数である。)
(化2)
(R−A)−M
(但し、Rは炭化水素基、AはCOO、OSOまたはOPO、Mは第1金属Mとは異なる第2金属、nはMの価数である。)
【0016】
銀(コア)/銅(シェル)ナノ粒子を得る場合には、具体的には、上記第1金属前駆体として、下記の化3で表される銀前駆体、上記第2金属前駆体として、下記の化4で表される銅前駆体を好適に用いることができる。
(化3)
(R−A)−Ag
(但し、Rは炭化水素基、AはCOO、OSOまたはOPOである。)
(化4)
(R−A)−Cu
(但し、Rは炭化水素基、AはCOO、OSOまたはOPOである。)
【0017】
また、上記化1および化2、化3および化4における(R−A)は同一種であることが好ましい。
【0018】
本発明に係る銀/銅ナノ粒子は、銀コアと、上記銀コアの周囲を覆う銅シェルと、上記銅シェルの周囲を覆う被覆有機成分とを有することを要旨とする。
【0019】
ここで、上記銀コアは、下記の化5で表される銀前駆体に由来する銀成分から構成されており、上記銅シェルは、下記の化6で表される銅前駆体に由来する銅成分から構成されており、上記被覆有機成分は、上記銀前駆体および/または銅前駆体に由来する有機成分から構成されていると良い。
(化5)
(R−A)−Ag
(但し、Rは炭化水素基、AはCOO、OSOまたはOPOである。)
(化6)
(R−A)−Cu
(但し、Rは炭化水素基、AはCOO、OSOまたはOPOである。)
【0020】
また、化5および化6における(R−A)は同一種であることが好ましい。
【0021】
本発明に係る導電性ペーストは、上記金属ナノ粒子の製造方法により製造された金属ナノ粒子を含むことを要旨とする。
【0022】
本発明に係る他の導電性ペーストは、上記銀/銅ナノ粒子を含むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る金属ナノ粒子の製造方法によれば、溶液中にて第1金属前駆体を還元反応させて第1金属コアを生成させ、それに続いて、第2金属前駆体を加えた同じ溶液内にて第2金属前駆体を還元反応させることで、第1金属コアの周囲に第2金属シェルを生成させる。
【0024】
そのため、上記製造方法によれば、溶液還元法を用いて、第1金属コア−第2金属シェル構造を有する金属ナノ粒子を、従来よりも容易に製造することができる。また、物理的方法で合成する場合に比べ、粒径制御が比較的容易であり、粒子合成時間も短時間にすることができる。また、第1金属前駆体、第2金属前駆体が有機金属化合物である場合には、これらに由来する有機成分が、第2金属シェルの周囲に被覆されたコア−シェル構造を有する金属ナノ粒子を得ることができる。
【0025】
上記製造方法において、上記加熱は、外部熱源またはマイクロ波照射の何れの加熱方法によって行っても良いが、とりわけ、マイクロ波照射によるのが好ましい。急速かつ均一な加熱により、比較的迅速にコア−シェル構造を有する金属ナノ粒子を得ることが可能になるためである。また、急速に昇温させ、高温の状態を短時間保持しやすいので、コア−シェル構造を有する金属ナノ粒子を生成させやすい利点もある。
【0026】
また、上記有機溶媒が、上記第1金属前駆体および第2金属前駆体に対して還元性を示すものである場合には、これら金属前駆体の還元を比較的効率良く行うことができる。
【0027】
とりわけ、上記有機溶媒が炭素数3以上の一価アルコールであれば、比較的弱い還元力で上記金属前駆体中の金属イオンを還元させることができる。
【0028】
また、上記第1金属前駆体、第2金属前駆体が上記化1、化2で表される金属塩である場合には、原料が比較的安価であるので、製造コストを抑制しやすくなる。また、有機成分であるR−A基が第2金属シェルの周囲を被覆するため、凝集し難く、分散性が良好なコア−シェル構造を持つ金属ナノ粒子を得やすくなる。
【0029】
この際、上記化式中における(R−A)が同一種である場合には、コア−シェル構造を持つ金属ナノ粒子を確実に得やすくなる。
【0030】
本発明に係る銀/銅ナノ粒子は、銀コアと、上記銀コアの周囲を覆う銅シェルと、上記銅シェルの周囲を覆う被覆有機成分とを有している。
【0031】
本発明に係る銀/銅ナノ粒子によれば、上記コア−シェル構造を有することにより、同じ大きさの銅ナノ粒子を得る場合に比較して、より短時間で製造することができるなどの利点がある。また、同じ大きさの銅ナノ粒子と比較して、耐酸化性も向上させることができる。
【0032】
本発明に係る導電性ペーストは、例えば、微細回路形成、層間接続、接合部材(鉛はんだの代替)などに好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本実施形態に係る金属ナノ粒子の製造方法(以下、「本製法」ということがある。)について詳細に説明する。
【0034】
本製法は、溶液還元法により、コア−シェル構造を有する金属ナノ粒子を製造する方法であり、コア生成工程と、シェル生成工程とを有している。本製法では、同じ溶液中にて異なる金属前駆体が段階的に還元されることにより、コアが生成され、引き続き、シェルが生成される。
【0035】
(コア生成工程)
コア生成工程は、第1金属前駆体と有機溶媒とを含む溶液を加熱することにより、第1金属前駆体を還元させ、第1金属前駆体に由来する第1金属成分から構成される第1金属コアを生成させる工程である。
【0036】
第1金属前駆体としては、コアとしたい金属の前駆体を用いることになる。例えば、銀コアを生成させたい場合には、銀前駆体を用いることになる。
【0037】
なお、コア生成工程で生成される第1金属コアは、大きさがナノサイズであり、形態が粒子状である。そのため、第1金属コアは、第1金属前駆体に由来する第1金属成分から構成される第1金属ナノ粒子であるとも言える。
【0038】
第1金属前駆体としては、具体的には、例えば、一般式(R−A)−M(但し、Rは炭化水素基、AはCOO、OSOまたはOPO、Mは第1金属、nはMがとりうる価数と同一であり、1以上の整数である。)で表されるもの、第1金属の金属アルコキシド(金属イソプロポキシド、金属エトキシドなど)、第1金属の金属アセチルアセトン錯塩(金属アセチルアセトネートなど)などの有機金属化合物を例示することができる。
【0039】
上記第1金属前駆体のうち、とりわけ、一般式(R−A)−Mで表されるものを好適に用いることができる。この第1金属前駆体は比較的安価であるので、製造コストを抑制しやすくなるなどの利点があるからである。また、有機成分であるR−A基が後述する第2金属シェルの周囲を被覆するため、凝集し難く、分散性が良好なコア−シェル構造を持つ金属ナノ粒子を得やすくなる利点があるからである。
【0040】
上記一般式(R−A)−Mにおいて、炭化水素基Rは、アルキル基などの飽和炭化水素基であっても良いし、アルケニル基などの不飽和炭化水素基であっても良い。また、その分子構造は、直鎖状であっても良いし、分岐状であっても良い。また、炭化水素基R中の一部の水素は、第1金属コア、金属ナノ粒子の合成などに悪影響を与えない範囲内であれば、ハロゲン元素などの他の置換基に置換されていても良い。
【0041】
上記炭化水素基Rの炭素数は、特に限定されるものではない。炭化水素基Rの炭素数、すなわち、炭化水素鎖長は、得られる金属ナノ粒子の粒径、粒度分布と密接に関係があり、これを可変させることで、金属ナノ粒子の粒径、粒度分布を制御することができる。
【0042】
また、炭化水素基Rの炭素数が過度に大きくなると、得られる金属ナノ粒子の低温焼結性が低下するなどの傾向が見られる。一方、炭化水素基Rの炭素数が過度に小さくなると、銅などの酸化しやすい金属を用いている場合に酸化抑制効果が小さくなるなどの傾向が見られる。したがって、上記炭化水素基Rの炭素数は、これらに留意して選択すると良い。
【0043】
本製法では、上記炭化水素基Rの炭素数の上限値は、好ましくは、40以下、より好ましくは、20以下であると良い。一方、上記炭化水素基Rの炭素数の下限値は、好ましくは、3以上であると良い。
【0044】
上記一般式(R−A)−Mにおいて、Aには、とりわけ、COOを好適に用いることができる。金属Mとの結合力が比較的弱く、第1金属コアの合成時間を比較的短くすることができるので、生産性の向上に寄与するなどの利点があるからである。
【0045】
上記一般式(R−A)−Mにおいて、Mには何れの種類の金属を用いても良い。
【0046】
上記金属Mとしては、具体的には、例えば、銀、銅、金、白金属(白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム)、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、インジウム、コバルト、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ガリウム、鉄、クロム、マンガン、イットリウムなどを例示することができる。
【0047】
このような第1金属前駆体としては、具体的には、例えば、脂肪酸金属塩、アルキルスルホン酸金属塩、アルキルホスホン酸金属塩などを好適なものとして例示することができる。
【0048】
上記第1金属前駆体を溶解または分散可能な溶媒としては、具体的には、例えば、ジオール類、グリコール類、ポリオール類などのアルコール類、アミン類、炭化水素類、ケトン類、エーテル類、エステル類などの有機溶媒などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0049】
これら有機溶媒のうち、好ましくは、上記第1金属前駆体、後述する第2金属前駆体に対して還元性を示す還元性有機溶媒を好適に用いることができる。また、還元性有機溶媒は、水に対する溶解性が比較的低いものが良い。
【0050】
このような還元性有機溶媒としては、具体的には、例えば、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールなどの炭素数3以上の一価アルコールなどを例示することができる。とりわけ、炭素数3〜30、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数3〜10の一価アルコールなどを好適なものとして例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
【0051】
炭素数が上記範囲内にある場合には、上記溶液中の金属イオンが急激に還元され難く、適度の還元力で金属イオンを還元させやすいからである。
【0052】
なお、上記第1金属前駆体が有機溶媒中に溶解するか分散するかについては、選択した第1金属前駆体と有機溶媒との組み合わせ、有機溶媒に対する第1金属前駆体の量などによる。また、第1金属前駆体の量は、後述する第2金属前駆体の量、金属ナノ粒子の生産性などを考慮して調整することができる。
【0053】
本製法では、上記溶液を加熱する。この際、加熱手法は、基本的には、溶液中の第1金属前駆体を還元させられる熱を与えられれば、特に限定されるものではない。加熱手法としては、具体的には、例えば、ヒーターなどによる電熱、熱せられたオイル、水などの熱媒体、バーナ火炎、熱風などの外部熱源により溶液を熱伝導などで加熱する方法、マイクロ波などの電磁波、高周波、レーザー光、電子線などを照射することにより溶液を加熱する方法などを例示することができる。なお、これら加熱手法は、単独で用いても良いし、2以上の手法を組み合わせて用いても良い。
【0054】
溶液の加熱温度は、用いた第1金属前駆体の種類などにより異なる。また、上記加熱は、生成した第1金属コアを酸化させないため、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気に溶液を存在させた状態で行うと良い。
【0055】
上記加熱手法のうち、好ましくは、外部熱源により溶液を加熱する方法、マイクロ波を照射することにより溶液を加熱する方法を用いると良い。より好ましくは、後者を用いると良い。急速かつ均一な加熱により、比較的迅速にコア−シェル構造を有する金属ナノ粒子を得ることが可能になるからである。また、急速に昇温させ、高温の状態を短時間保持しやすいので、コア−シェル構造を有する金属ナノ粒子を生成させやすい利点もあるからである。また、粒径ばらつきを小さくできる利点もある。
【0056】
これらにより溶液の加熱を行うには、より具体的には、例えば、以下のようにすれば良い。
【0057】
前者の場合、溶液中の第1金属前駆体を還元させることが可能な温度に加熱された液体(例えば、オイル、水など)などの熱媒体に、溶液を入れた反応容器を接触させるもしくは近接させる、ヒーターやバーナ火炎などにより反応容器を加熱するなどすれば良い。
【0058】
一方、後者の場合、用いるマイクロ波は、特に限定されるものでない。具体的には、例えば、通常、日本国内で多用されている、周波数2.45GHzのマイクロ波を利用すれば良い。以下、マイクロ波の照射条件については、この周波数2.45GHzのマイクロ波を選択した場合を前提としたものであるが、他のマイクロ波を選択した場合には、これに準じて適宜照射条件を変更すれば良い。
【0059】
マイクロ波の照射強度は、第1金属前駆体、有機溶媒の種類などにより異なるが、粒径分布を制御しやすい、加熱時間が適度であるなどの観点から、下記の範囲を選択すると良い。
【0060】
上記マイクロ波の照射強度の上限値としては、好ましくは、24W/cm以下、より好ましくは、18W/cm以下であると良い。
【0061】
一方、上記マイクロ波の照射強度の下限値としては、好ましくは、1W/cm以上、より好ましくは、2W/cm以上、さらにより好ましくは、3W/cm以上であると良い。なお、これらマイクロ波の照射強度は、マイクロ波出力(W)/反応溶液の体積(cm)で表される値である。
【0062】
また、上述した何れの加熱手法とも、加熱時間は、第1金属前駆体、有機溶媒の種類、加熱温度などにより異なるが、十分に金属コアを生成させる、生産性などの観点から、下記の範囲を選択すると良い。
【0063】
上記加熱時間の上限値としては、好ましくは、20分以下、より好ましくは、15分以下、さらにより好ましくは、10分以下であると良い。
【0064】
一方、上記加熱時間の下限値としては、好ましくは、30秒以上、より好ましくは、1分以上、さらにより好ましくは、2分以上であると良い。もっとも、マイクロ波加熱の場合には、反応温度までの昇温時間を、外部加熱に比較して短時間で行うことが可能である。
【0065】
また、上述した何れの加熱手法とも、加熱温度は、ほぼ一定となるように制御されていると良い。
【0066】
上記加熱温度の上限値は、生産性、合成反応の制御のしやすさなどの観点から、好ましくは、300℃以下、より好ましくは、275℃以下、さらにより好ましくは、250℃以下であると良い。一方、上記加熱温度の下限値は、第1金属前駆体の分散性などの観点から、好ましくは、80℃以上、より好ましくは、100℃以上、さらにより好ましくは、120℃以上であると良い。
【0067】
なお、マイクロ波加熱を行う場合、加熱温度の制御は、例えば、上記溶液中に温度センサーを漬け、溶液の温度が一定になるように、マイクロ波の照射のオン/オフを繰り返すことなどにより行うことができる。また、マイクロ波の照射は、公知のマイクロ波照射装置を用いて行えば良い。
【0068】
(シェル生成工程)
シェル生成工程は、上記コア生成工程を経た後、生成した第1金属コアを含む溶液に第2金属前駆体を加え、この溶液を加熱することにより、第2金属前駆体を還元させ、第2金属前駆体に由来する第2金属成分から構成される第2金属シェルを第1金属コアの周囲に生成させる工程である。
【0069】
上記第2金属前駆体は、上記第1金属前駆体とは異なる種類の金属の前駆体を用いることになる。例えば、第1金属前駆体として銀前駆体を用いた場合に、第2金属前駆体として銅前駆体を用いるなどである。
【0070】
第2金属前駆体としては、具体的には、例えば、一般式(R−A)−M(但し、Rは炭化水素基、AはCOO、OSOまたはOPO、Mは第1金属Mとは異なる第2金属、nはMがとりうる価数と同一であり、1以上の整数である。)で表されるもの、第2金属の金属アルコキシド(金属イソプロポキシド、金属エトキシドなど)、第2金属の金属アセチルアセトン錯塩(金属アセチルアセトネートなど)などの有機金属化合物を例示することができる。
【0071】
上記第2金属前駆体のうち、とりわけ、一般式(R−A)−Mで表されるものを好適に用いることができる。この第2金属前駆体は比較的安価であるので、製造コストを抑制しやすくなるなどの利点があるからである。また、有機成分であるR−A基が第2金属シェルの周囲を被覆するため、凝集し難く、分散性が良好なコア−シェル構造を持つ金属ナノ粒子を得やすくなるがあるからである。
【0072】
上記第2金属前駆体の内容については、上記第1金属前駆体と異なる金属成分を含んでいる点以外は、上記第1金属前駆体の内容に準ずるので、詳細な説明は省略する。
【0073】
もっとも、相溶性などの観点から、上記第2金属前駆体と上記第1金属前駆体とは、同種のものを用いることが好ましい。例えば、第1金属前駆体として、一般式(R−A)−Mで表されるものを選択した場合には、第2金属前駆体として、一般式(R−A)−Mで表されるものを選択すると良い。
【0074】
より好ましくは、この場合には、(R−A)についても同一種であると良い。
【0075】
ここで、このシェル生成工程において、第1金属コアを含む溶液に第2金属前駆体を加える方法としては、種々の方法を選択することができる。
【0076】
例えば、第1金属コアを含む溶液に第2金属前駆体を直接加えても良いし、上述した有機溶媒に予め第2金属前駆体を分散または溶解させた溶液と、第1金属コアを含む溶液とを混合するなどしても良い。十分に両者を混合させやすいなどの観点からは、後者を好適に選択することができる。
【0077】
なお、第2金属前駆体の混合量は、第1金属前駆体中の第1金属成分と、第2金属前駆体中の第2金属成分との比率などを考慮して選択することできる。
【0078】
第1金属成分1に対して、第2金属成分の比率の上限値は、好ましくは、4以下、より好ましくは、2.5以下であると良い。一方、第1金属成分1に対して、第2金属成分の比率の下限値は、好ましくは、0.8以上、より好ましくは、1.0以上であると良い。
【0079】
第2金属前駆体を加えた後の混合溶液の加熱は、上述した加熱方法と同じ方法を用いることができ、好ましくは、やはり、マイクロ波照射によるのが良い。短時間加熱に適しており、コア−シェル構造を有する金属ナノ粒子を生成させやすいからである。
【0080】
この場合、マイクロ波照射強度、加熱温度は、例えば、上述した範囲内で選択することができる。もっとも、過度に加熱温度を高くすると、粒成長が生じやすくなる傾向が見られるため、この点には留意すると良い。
【0081】
また、加熱時間は、金属コア、シェルを構成する金属の種類などを考慮して異ならせることができる。例えば、銀コア/銅シェル構造の銀/銅ナノ粒子を製造する場合、加熱時間の上限値は、粒子が凝集、粗大になりにくいなどの観点から、好ましくは、10分未満、より好ましくは、9分以下、さらにより好ましくは、8分以下、最も好ましくは、6分以下であると良い。
【0082】
一方、加熱時間の下限値は、銀/銅ナノ粒子を生成させやすいなどの観点から、好ましくは、1分以上、より好ましくは、2分以上、さらにより好ましくは、3分以上、最も好ましくは、4分以上であると良い。
【0083】
(金属ナノ粒子)
本製法により得られる金属ナノ粒子は、第1金属前駆体に由来する第1金属成分から構成される第1金属コアと、第2金属前駆体に由来する第2金属成分から構成された、第1金属コアの周囲を覆う第2金属シェルとを少なくとも有している。また、用いた第1金属前駆体、第2金属前駆体の種類などによっては、第2金属シェルの周囲が、さらに、これら金属前駆体に由来する有機成分により構成される被覆有機成分によって覆われている場合もある。
【0084】
具体的には、例えば、第1金属前駆体、第2金属前駆体として脂肪酸金属塩などを用いた場合には、脂肪酸基などの有機成分で金属シェル表面が表面修飾されたコア−シェル構造の金属ナノ粒子などを得ることができる。
【0085】
なお、上記金属ナノ粒子のうち、第1金属コア、第2金属シェルの種類については、例えば、X線回折法などにより確認することができる。また、被覆有機成分の種類については、例えば、NMR(核磁気共鳴法)、GC/MS(ガスクロマトグラフィ/質量分析法)などにより確認することができる。
【0086】
以上、本製法について説明したが、本製法により得られるコア−シェル構造を持つ金属ナノ粒子は、導電材料、触媒材料、磁性材料、非線形光学材料、着色材料などの種々の用途に適用することができる。
【0087】
より具体的な用途としては、例えば、微細配線、層間接合、接合部材(鉛はんだの代替)などに用いる導電性ペースト材料などを例示することができる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0089】
1.銀前駆体、銅前駆体の準備
初めに、原料に用いる銀前駆体、銅前駆体を以下の手順により合成した。
【0090】
(ミリスチン酸銀)
脱イオン水200mlにミリスチン酸ナトリウム(C1327COONa)40mmolを60℃にて溶解した。その後、この液に、脱イオン水20mlに硝酸銀40mmolを溶解した液を加えることにより、沈殿物を得た。
【0091】
次いで、この沈澱物に対して、濾過ならびに脱イオン水およびエタノールによる洗浄を繰り返し、さらに、濾過およびメタノールによる洗浄を行った後、70℃で12時間減圧乾燥することにより、ミリスチン酸銀(C1327COOAg)を得た。
【0092】
(ミリスチン酸銅)
脱イオン水200mlにミリスチン酸ナトリウム(C1327COONa)51mmolを80℃にて溶解した。その後、この液に、脱イオン水100mlに硝酸銅(II)25mmolを溶解した液を加えることにより、沈殿物を得た。
【0093】
次いで、この沈澱物に対して、濾過および脱イオン水による洗浄を繰り返し、さらに、濾過およびメタノールによる洗浄を行った後、70℃で12時間減圧乾燥することにより、ミリスチン酸銅((C1327COO)Cu)を得た。
【0094】
2.銀前駆体含有溶液、銅前駆体含有溶液の準備
次に、上記にて準備した各金属前駆体を含む溶液を以下の手順により調製した。
【0095】
(ミリスチン酸銀含有溶液)
上記合成したミリスチン酸銀0.1mmolを、1−ヘプタノール30mL中に混合し、超音波を用いてミリスチン酸銀を1−ヘプタノールに分散させ、ミリスチン酸銀含有溶液を調製した。
【0096】
(ミリスチン酸銅含有溶液A)
上記合成したミリスチン酸銅0.2mmolを用いた以外は、上記ミリスチン酸銀含有溶液Aの調製と同様にして、ミリスチン酸銅含有溶液Aを調製した。
【0097】
(ミリスチン酸銅含有溶液B)
上記合成したミリスチン酸銅0.05mmolを、1−ヘプタノール30mL中に混合し、超音波を用いてミリスチン酸銅を1−ヘプタノールに分散させ、ミリスチン酸銅含有溶液Bを調製した。
【0098】
3.金属ナノ粒子の製造
マイクロ波加熱装置(マイクロ電子(株)製、「MMG−213VP」)を用い、窒素雰囲気下、17W/cmの照射強度でマイクロ波(周波数2.45GHz)をミリスチン酸銀含有溶液に照射し、加熱温度を413Kに制御しながら、当該溶液を5分間加熱した。なお、加熱温度の制御は、光ファイバー温度計(安立計器(株)製、「AMOTH TM−5886」)を用いて温度を測定しながら、マイクロ波照射のオン/オフを繰り返すことにより行った。
【0099】
次いで、上記5分間加熱した溶液に、室温の上記ミリスチン酸銅含有溶液Aを混合した。その後、この混合溶液(Ag:Cu=1:2)に、さらに上記と同様に、8.3W/cmの照射強度でマイクロ波(周波数2.45GHz)を照射し、加熱温度を433Kに制御しながら、当該混合溶液を5分間加熱した。これにより、合成液G15mを得た。
【0100】
また、当該混合溶液(Ag:Cu=1:2)を10分間加熱した点以外は、上記合成液G15mの作製と同様にして、合成液G110mを得た。
【0101】
また、上記5分間加熱した溶液に、室温の上記ミリスチン酸銅含有溶液Bを混合し、この混合溶液(Ag:Cu=1:0.5)を用いた点以外は、上記合成液G15mの作製と同様にして、合成液G25mを得た。
【0102】
また、上記5分間加熱した溶液に、室温の上記ミリスチン酸銅含有溶液Bを混合し、この混合溶液(Ag:Cu=1:0.5)を用いた点、当該混合溶液(Ag:Cu=1:0.5)を10分間加熱した点以外は、上記合成液G15mの作製と同様にして、合成液G210mを得た。
【0103】
4.反応溶液の紫外−可視吸収スペクトルの測定およびTEM観察
以下の反応溶液から試料を分取し、紫外可視分光光度計(日本分光(株)製、「V−570」)を用いて、各反応溶液の紫外−可視吸収スペクトルを測定した。
・ミリスチン酸銀含有溶液を5分間マイクロ波加熱した後の反応溶液(合成液G0)
・ミリスチン酸銅含有溶液Aを加えた混合溶液(Ag:Cu=1:2)を5分間加熱した後の反応溶液(合成液G15m
・ミリスチン酸銅含有溶液Aを加えた混合溶液(Ag:Cu=1:2)を10分間加熱した後の反応溶液(合成液G110m
・ミリスチン酸銅含有溶液Aを加えた混合溶液(Ag:Cu=1:0.5)を5分間加熱した後の反応溶液(合成液G25m
・ミリスチン酸銅含有溶液Aを加えた混合溶液(Ag:Cu=1:0.5)を10分間加熱した後の反応溶液(合成液G210m
【0104】
なお、測定には、分取した試料をヘキサンで10分の1に希釈したものを用いた。また、測定波長は、200−1500nmの範囲とした。
【0105】
また、上記各反応溶液について、溶液中に含まれる粒子の状態を、透過型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製、「日立透過電子顕微鏡H−9000」)にて観察した。
【0106】
なお、各観察試料は、エラスティックカーボン支持膜をはった銅グリッドにヘキサンにて希釈した反応溶液を滴下し、減圧乾燥したものを用いた。
【0107】
5.結果および考察
先ず、紫外−可視吸収スペクトルの測定結果について考察する。
図1に、各反応溶液(合成液G0、G15m、G110m)の紫外−可視吸収スペクトルを示す。図2に、各反応溶液(合成液G0、G25m、G210m)の紫外−可視吸収スペクトルを示す。
【0108】
図1によれば、次のことが分かる。すなわち、ミリスチン酸銀含有溶液を5分間マイクロ波加熱した後の反応溶液(合成液G0)の吸収スペクトルには、400nmに銀ナノ粒子の表面プラズモン吸収由来の吸収が確認された。このことから、銀ナノ粒子が生成していることが分かる。
【0109】
また、ミリスチン酸銀含有溶液を5分間マイクロ波加熱した後の反応溶液、つまり、上記銀ナノ粒子を含む溶液に、ミリスチン酸銅含有溶液Aを加えた混合溶液(Ag:Cu=1:2)を5分間加熱した後の反応溶液(合成液G15m)の吸収スペクトルによれば、銀のプラズモン吸収由来の大幅な消失、ブロードニングおよびレッドシフトが確認された。
【0110】
金属ナノ粒子の表面プラズモン吸収は、金属ナノ粒子が置かれている周囲環境、特に、誘電率および誘電損失に影響されると言われている。主に、プラズモン吸収の半値幅は誘電率に、吸収波長は誘電損失に影響されると言われている。
【0111】
したがって、今回得られた表面プラズモン吸収の変化は、銀ナノ粒子周辺の誘電率および誘電損失が変化した結果であり、この誘電率の変化は、銀ナノ粒子の周りに銅ナノ粒子が析出することにより起こっていると考えられる。つまり、コアとなる銀ナノ粒子に接触した状態でシェルとなる銅ナノ粒子が生成したと考えられる。
【0112】
また、上記銀コアを含む溶液に、ミリスチン酸銅含有溶液Aを加えた混合溶液(Ag:Cu=1:2)を10分間加熱した後の反応溶液(合成液G110m)の吸収スペクトルによれば、400nmの吸収がさらに減少し、スペクトル全領域においてバックグラウンドの上昇が確認された。バックグラウンドの上昇は、ナノ粒子が成長することにより、測定光が粒子に散乱されているためである。
【0113】
一方、図2に示すように、(Ag:Cu=1:0.5)で調製した混合溶液を用いた場合についても、上記と同様に、銀ナノ粒子の表面プラズモン吸収の消失から、銀ナノ粒子周囲の環境が銅原子の析出により影響を受けていることが分かる。
【0114】
次に、TEM観察結果について考察する。
【0115】
図3に、ミリスチン酸銀含有溶液を5分間マイクロ波加熱した後の反応溶液(合成液G0)から作製した観察試料のTEM像を示す。図3に示されるように、銀ナノ粒子の平均粒径は、約5nmであった。
【0116】
図4に、ミリスチン酸銀含有溶液を5分間マイクロ波加熱した後の反応溶液に、ミリスチン酸銅含有溶液Aを加えた混合溶液(Ag:Cu=1:2)を5分間加熱した後の反応溶液(合成液G15m)から作製した観察試料のTEM像を示す。図4によれば、10〜40nm程度の粒子が数多く存在していることが分かる。
【0117】
図5に、図4中の一つの粒子を拡大したTEM像を示す。図5に示すように、このTEM像の中心に見える粒子は、粒径約15nmからなり、内部に約5nmの粒径を持つコントラストの強い粒子が確認できる。
【0118】
また、そのコントラストの強い粒子の周りには、コントラストの薄い層が広がっている。この粒子の内部粒子の粒径は約5nmであり、銀ナノ粒子のみが生成しているTEM像(図3)に存在する粒子群の粒径が約5nmからなっていることから考えると、図5の粒子の内部に銀ナノ粒子(銀コア)が存在していることが考えられる。
【0119】
また、銀ナノ粒子の周囲に存在する約15nmの粒子は、像のコントラストが薄いことを考えると、銅ナノ粒子であると判断できる。なぜなら、銅原子は、銀原子よりも軽い原子(原子番号Ag=47、Cu=29)であるため、コントラストが薄くなるからである。
【0120】
これらのことを考慮すると、図5の粒子は、粒径15nmからなる銀コア−銅シェル構造を有する銀/銅ナノ粒子であることが分かる。このようなコア−シェル構造を有する粒子は、系内に数多く存在していた。
【0121】
図4に示す粒子群からカウントすると、約107子中18個存在していた。つまり、この場合、銀コア−銅シェル構造を有する銀/銅ナノ粒子が17%の割合で生成したことになる。
【0122】
なお、図4の電子回折パターンからは、銀と銅のfcc由来の電子回折リングが確認された。
【0123】
また、この溶液をさらに5分間マイクロ波加熱すると、粒子は急激に成長し、その粒径は100nm以上となり、コア−シェル構造を有する銀/銅ナノ粒子はほとんど見られなくなった。このことから、コア−シェル構造を有する銀/銅ナノ粒子を得る場合には、マイクロ波加熱により急速に昇温し、高温の状態(433K)を短時間保持することが有効であると言える。
【0124】
また、得られた銀/銅ナノ粒子をヘキサン中に分散した溶液を、大気中に一定期間放置した試料について、その色を確認した、その結果、1ヶ月放置した試料の色は、放置前と同様の赤褐色のままであり、変色は認められなかった。
【0125】
これに対し、マイクロ波加熱−アルコール還元法を用いて別途作製した同程度の大きさの銅ナノ粒子は、1〜2週間程度で変色が認められた。よって、本発明に係る銀/銅ナノ粒子は、耐酸化性に優れていると言える。
【0126】
以上、本発明に係る金属ナノ粒子の製造方法によれば、マイクロ波加熱−アルコール還元法などの溶液還元法を用いて、第1金属前駆体、第2金属前駆体を段階的に還元させることにより、第1金属前駆体に由来する第1金属成分から構成される第1金属コアの周囲に、第2金属前駆体に由来する第2金属成分から構成される第2金属シェルが被覆された、コア−シェル構造を有する金属ナノ粒子を比較的容易に得ることができることが確認できた。
【0127】
以上、実施形態、実施例について説明したが、本発明は上記実施形態、実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0128】
例えば、上記実施例では、第1金属前駆体として銀前駆体、第2金属前駆体として銅前駆体を用いたが、この組み合わせ以外にも、例えば、第1金属前駆体として金前駆体、第2金属前駆体として銀前駆体など、他の金属前駆体の組み合わせにも適用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】各反応溶液(合成液G0、G15m、G110m)の紫外−可視吸収スペクトルを示した図である。
【図2】各反応溶液(合成液G0、G25m、G210m)のの紫外−可視吸収スペクトルを示した図である。
【図3】ミリスチン酸銀含有溶液を5分間マイクロ波加熱した後の反応溶液(合成液G0)から作製した観察試料のTEM像である。
【図4】ミリスチン酸銀含有溶液を5分間マイクロ波加熱した後の反応溶液に、ミリスチン酸銅含有溶液Aを加えた混合溶液(Ag:Cu=1:2)を5分間加熱した後の反応溶液(合成液G15m)から作製した観察試料のTEM像である。
【図5】図4中の一つの粒子を拡大したTEM像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属前駆体と有機溶媒とを含む溶液を加熱することにより、第1金属前駆体を還元させ、第1金属前駆体に由来する第1金属成分から構成される第1金属コアを生成させる工程と、
第1金属コアを含む溶液に第2金属前駆体を加え、この溶液を加熱することにより、第2金属前駆体を還元させ、第2金属前駆体に由来する第2金属成分から構成される第2金属シェルを第1金属コアの周囲に生成させる工程と、
を有することを特徴とする金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記加熱は、外部熱源またはマイクロ波照射によることを特徴とする請求項1に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記有機溶媒は、前記第1金属前駆体および前記第2金属前駆体に対して還元性を示すことを特徴とする請求項1または2に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記有機溶媒は、炭素数3以上の一価アルコールであることを特徴とする請求項3に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記第1金属前駆体は、下記の化1で表され、前記第2金属前駆体は、下記の化2で表されることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の金属ナノ粒子の製造方法。
(化1)
(R−A)−M
(但し、Rは炭化水素基、AはCOO、OSOまたはOPO、Mは第1金属、nはMの価数である。)
(化2)
(R−A)−M
(但し、Rは炭化水素基、AはCOO、OSOまたはOPO、Mは第1金属Mとは異なる第2金属、nはMの価数である。)
【請求項6】
前記第1金属前駆体は、下記の化3で表される銀前駆体であり、前記第2金属前駆体は、下記の化4で表される銅前駆体であることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の金属ナノ粒子の製造方法。
(化3)
(R−A)−Ag
(但し、Rは炭化水素基、AはCOO、OSOまたはOPOである。)
(化4)
(R−A)−Cu
(但し、Rは炭化水素基、AはCOO、OSOまたはOPOである。)
【請求項7】
前記(R−A)は同一種であることを特徴とする請求項5または6に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
銀コアと、前記銀コアの周囲を覆う銅シェルと、前記銅シェルの周囲を覆う被覆有機成分とを有することを特徴とする銀/銅ナノ粒子。
【請求項9】
前記銀コアは、下記の化5で表される銀前駆体に由来する銀成分から構成されており、
前記銅シェルは、下記の化6で表される銅前駆体に由来する銅成分から構成されており、
前記被覆有機成分は、前記銀前駆体および/または前記銅前駆体に由来する有機成分から構成されていることを特徴とする請求項8に記載の銀/銅ナノ粒子。
(化5)
(R−A)−Ag
(但し、Rは炭化水素基、AはCOO、OSOまたはOPOである。)
(化6)
(R−A)−Cu
(但し、Rは炭化水素基、AはCOO、OSOまたはOPOである。)
【請求項10】
前記化5および化6における(R−A)は同一種であることを特徴とする請求項9に記載の銀/銅ナノ粒子。
【請求項11】
請求項1から7の何れかに記載の金属ナノ粒子の製造方法により製造された金属ナノ粒子を含む導電性ペースト。
【請求項12】
請求項8から10の何れかに記載の銀/銅ナノ粒子を含む導電性ペースト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−248298(P2008−248298A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90012(P2007−90012)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年12月16日「http:www.chemistry.or.jp/journals/chem−lett/cl−cont/newissue.html」を通じて発表、平成19年1月16日 大阪大学発行の「第9回21世紀COE自然共生化学国際シンポジウム(COEIEC9)会報」に発表、平成19年1月16日 大阪大学 21世紀COEプログラム「自然共生化学の創成」主催の「第9回21世紀COE自然共生化学国際シンポジウム(COEIEC9)」において文書をもって発表。
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】