説明

金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法及び製造方法

【課題】金属パターン間の樹脂表面を、容易かつ精度よく観察でき、不良品の判別を精度よく行うことが可能な金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法及び、金属パターン形成樹脂基板の製造方法を提供する。
【解決手段】金属パターン形成樹脂基板1に前記樹脂材料表層で吸収される波長を有する励起光を照射し、金属パターン形成樹脂基板1の表面から発せられる光を、励起光に対する感度を有さず、蛍光又は燐光に対する感度を有する検出系で検出する。樹脂基板2が、芳香族ポリイミド、イミド基を含むポリウレタン、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミドなどから、励起光が、波長430nm以下の光であることが好ましい。そして、このようにして金属パターン形成樹脂基板の樹脂表面を検査し、不良品を除いて金属パターン形成樹脂基板を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂基板上に金属層をパターン形成してなる金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法、及び、金属パターン形成樹脂基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂基板上に金属層を積層した金属層積層基板から、金属層の一部をエッチングなどの方法により除去し、パターン形成することで、回路基板などの金属パターン形成樹脂基板が製造される。しかしながら、金属層を除去して樹脂基板を露出させた金属パターン間の樹脂表面部分に、エッチング不良等による要因により、金属パターンのボトム部近傍が薄く残るいわゆる裾残りや、樹脂に埋め込まれた金属粗化層の一部が残るいわゆる根残りなどが生じたり、樹脂基板と金属層との界面に存在していた樹脂や金属などの異物が残留する場合がある。さらに、パターン形成後に外部から異物が付着する事もある。また、エッチング直後には確認出来ないようなエッチング残渣や薬品の残存により、あるいは後のめっき工程において、前記異物を核として異常析出などの新たな異物が発生することもある。これらの異物は、絶縁信頼性低下やショートといった不良を引き起こす原因となるため、表面状態を検査し、上記部分に異物が存在しているものを不良品として判定し選別する必要がある。
【0003】
金属パターン形成樹脂基板の表面状態を検査する方法としては、金属パターン形成樹脂基板に可視光を照射して、その反射光を検出することによって表面状態を検査する方法がある。
【0004】
しかしながら、異物の表面状態は平滑でないものが多く、金属層の表面と平行でない、表面が荒れて光沢が少ない、不定形である、などの影響で明瞭な反射光が検出できない場合がある。
【0005】
また、樹脂基板と金属層との密着力を高めるため、金属箔を樹脂基板に積層して金属層を形成する場合においては、樹脂基板との接合面が粗化処理された金属箔などが用いられている場合が多い。このような粗化処理された金属箔を用いて金属層を形成した場合、樹脂基板の表面に金属箔の粗化面が転写されて凹凸が生じる。このため、樹脂基板の表面反射も散乱などが生じ、反射光による検出では明瞭でなくなるため、異物と樹脂基板との識別がより困難になる傾向にあった。
【0006】
また、近年は、超高精細パターンの形成や高周波信号の伝送特性を向上するために、粗化層を形成しないあるいは極めて弱い粗化層を形成した所謂ロープロファイル金属箔を積層した金属パターン形成樹脂基板や、樹脂基板上にスパッタリングなどで極めて薄い金属層を形成したのち必要に応じて電解金属めっきで導電金属層を形成する所謂メタライズタイプの金属パターン形成樹脂基板も製造されている。このような金属パターン形成樹脂基板では、樹脂基板の表面が非常に平滑であるため、残留物と樹脂基板とは明確に区別できるものの、裏面側に金属層などの光沢を有する構成物が存在する場合には、裏面側の構成物が明瞭に見えるため、表面側の残留物との識別が困難であった。
【0007】
また、金属パターン形成樹脂基板の裏面側から光を照射し、透過光を検出することによって金属パターンやパターン間の異物を観察する方法がある。
【0008】
しかしながら、透過光を検出する方法では、樹脂基板の両面に金属パターンを有する両面基板や、金属パターン形成樹脂基板を多層積層してなる多層基板や、裏面側にシールド材などの様な遮蔽層が形成された金属パターン形成樹脂基板の場合には、透過光による検出ができず、使用範囲が限られており、汎用性に欠けるものであった。
【0009】
また、金属パターン形成樹脂基板に励起光を照射して樹脂基板に蛍光性を発現させ、樹脂基板の発光量や発光状態を検出して金属パターンを検査する方法が、下記特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平3−2258号公報
【特許文献2】特開平5−9309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1,2のように、金属パターン形成樹脂基板に励起光を照射して樹脂基板に蛍光性を発現させ、樹脂基板の発光量や発光状態を検出する方法であっても、樹脂基板内部の発光も検出するので、基板内部や下層の構成物までも検出して、本来判別したい表面異物との区別が困難な場合があった。また、樹脂基板による発光が、励起光の反射光や散乱光などとの干渉などによる影響により、観察される像が不鮮明になり易かった。このため、例えば、金属パターンをよりファインピッチ化した場合などにおいては、異物の有無を精度よく行えないこと、異物が存在しない不良品の発生しない製造条件の検討が行えないことがあった。
【0012】
したがって、本発明の目的は、金属パターン間の樹脂表面を、容易かつ精度よく観察でき、不良品の判別を精度よく行うことが可能な金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法及び、金属パターン形成樹脂基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法は、励起光を照射されることにより蛍光又は燐光を発光する樹脂材料からなる樹脂基板に、金属層をパターン形成してなる金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法であって、前記金属パターン形成樹脂基板に前記励起光を照射し、前記金属パターン形成樹脂基板の表面から発せられる光を、前記励起光に対する感度を有さず、蛍光又は燐光に対する感度を有する検出系で検出することを特徴とする。
【0014】
金属パターン形成樹脂基板に励起光を照射することで、樹脂基板が励起光を吸収し発光するが、樹脂基板の発光は方向性を有しないため、樹脂基板の表面に凹凸や被測定物の傾きがあってもその影響を受けにくい。このため、樹脂基板が露出した部分は、ほぼ均質な明るい像となる。そして、本発明では、金属パターン形成樹脂基板の表面から発せられる光を、励起光に対する感度を有さず、蛍光又は燐光に対する感度を有する検出系で検出するので、励起光の反射光や散乱光による影響のない、極めて鮮明な像を観察することができる。また、樹脂基板表面から発せられる光を検出するので、基板の内部や下層の構成物の影響をほとんど受けずに鮮明に樹脂表面を観察する事ができる。
一方、金属パターンが形成された部分や異物などが存在する部分は、樹脂基板からの発光が遮られて暗い像となる。また、異物が透明で励起光を透過する場合であっても、異物下部の樹脂基材からの発光は異物により屈折を受けて方向性を生じるため、樹脂基材の像とは明確に異なる像が観察される。
このため、本発明の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法によれば、金属パターン形成樹脂基板に励起光を照射し、金属パターン形成樹脂基板の表面から発せられる光を、励起光に対する感度を有さず、蛍光又は燐光に対する感度を有する検出系で検出することで、正常な金属パターンが形成されているか否かや、金属パターン間の樹脂表面に残留する異物の有無を、容易かつ精度よく検査でき、不良品の判別を精度よく行うことができる。
【0015】
本発明の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法は、さらに
1)基板の光の透過性に影響を受けることなく、透明な基板でも、不透明な基板でも、測定する基板表面の裏側に金属層や金属配線、光不透過な部材などを有する基板でも適用することができ、
2)観察する基板表面の凹凸にあまり影響を受けることなく検査することができ、
3)観察する基板表面の反対側表面の凹凸にあまり影響を受けることなく検査することができる。
【0016】
さらに本発明の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法は、エッチングや洗浄などの製造条件の検討に利用することができ、不良品を発生させない製法の検討を行うことができる。
【0017】
本発明の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法は、前記検出系として、前記励起光に対する透過率が低く、前記蛍光又は燐光に対する透過率が高いフィルタを備えているものを用いることが好ましい。
【0018】
本発明の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法は、前記金属パターン形成樹脂基板の金属パターン間の樹脂表面に残留する異物を検出することが好ましく、異物として金属を検出することがより好ましい。樹脂表面に異物が残留していると、製品の外観不良の原因となり、金属などの導電性の異物では絶縁信頼性低下やショートといった不良を引き起こす原因となるため、異物の有無を検出し、異物が存在しているものを不良品として判定し選別することで、最終製品における製品不良の発生を低減できる。
【0019】
本発明の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法は、前記金属パターン形成樹脂基板が、前記樹脂基板の両面に前記金属パターンを有するものからなり、前記励起光を検査すべき表面側から照射することが好ましい。
【0020】
本発明の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法は、前記金属パターン形成樹脂基板が、金属層をパターン形成してなる金属配線を有する回路基板であることが好ましい。
【0021】
本発明の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法は、前記金属パターン形成樹脂基板が、金属と樹脂基材との積層体から金属を除去して得られる基板であることが好ましく、金属と樹脂基材との積層体から金属をエッチングで除去して得られる基板であることがより好ましい。
【0022】
本発明の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法において、前記樹脂基板が、芳香族ポリイミド、イミド基を含むポリウレタン、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミドから選ばれた1種からなり、前記励起光が、波長430nm以下の光であることが好ましい。
【0023】
本発明の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法は、前記樹脂基板が露出した表面部分の算術平均高さRaが0.1μmを超える、あるいは、0.1μm以下であることが好ましい。
【0024】
算術平均高さRaの大きい、即ち樹脂表面が粗い状態では、粗化処理された金属箔などを樹脂基板に積層して金属層を形成する場合において、金属箔の粗化面が樹脂表面に転写されて凹凸が生じるが、樹脂基板と金属層との密着力を高めるために一般に多く用いられる。しかし、樹脂基板が露出した部分の算術平均高さRaが0.1μmを超えると、樹脂基板の表面反射に散乱などが顕著に生じ、反射光による検出では異物が存在しなくても反射光に濃淡が生じ明瞭でなくなるため、異物と樹脂基板との識別がより困難になる傾向にあり、また、反射光自体の光量も暗くなるために、異物や変色した金属残渣との識別が困難であったが、本発明の方法によれば、金属パターン形成樹脂基板に励起光を照射することで、樹脂基板の表面近傍で発光し、樹脂基板の発光は方向性を有しないため、樹脂基板が露出した部分は、ほぼ均質な明るい像となり、樹脂基板の表面凹凸の影響を受けにくい。
【0025】
一方で、算術平均高さRaの小さい、即ち樹脂表面が平坦な積層板は、無粗化あるいは粗化を極端に弱く製造された所謂ロープロファイル金属箔を樹脂基板に積層して金属層を形成する、あるいは樹脂表面に金属をスパッタリングや電解金属めっきによって金属層を形成する所謂メタライズタイプの積層板が代表的であり、最近は極めて精細度の高い配線板や高速伝送配線板などの製造に多く用いられる。しかし、樹脂基板が露出した部分の算術平均高さRaが0.1μm以下であると、反射光による表面検査では樹脂基板の内部や裏側も明瞭に観察できるため、基板の内部や下層の構成物、特に裏面側に存在する金属層や異物などの反射像と重なって、樹脂表面の異物による像との区別ができなかったが、本発明の方法によれば、金属パターン形成樹脂基板に励起光を照射することで、樹脂基板の表面近傍で発光するので、樹脂基板の内部や裏面側の構成物や異物、特に金属層などの影響を受けることが無い。
【0026】
また、本発明の金属パターン形成樹脂基板の製造方法は、上記方法により、前記金属パターン形成樹脂基板の樹脂表面を検査し、不良品を除くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、金属パターン形成樹脂基板に励起光を照射して、金属パターン形成樹脂基板から蛍光又は燐光を発光させ、金属パターン形成樹脂基板の表面から発せられる光を、励起光に対する感度を有さず、蛍光又は燐光に対する感度を有する検出系で検出することで、樹脂基板の表面に凹凸や被測定物の傾き影響、基板内部や下層の構成物の影響、励起光の反射光や散乱光による影響のない、極めて鮮明な像を観察できる。このため、正常な金属パターンが形成されているか否かや、金属パターン間の樹脂表面に残留する異物の有無を、容易かつ精度よく観察できるので、不良品の判別を精度よく行うことができ、不良品の混在の極めて少ない金属パターン形成樹脂基板及びこれらの製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法の概略構成図である。
【図2】実施例1の方法によって得られた回路基板のカメラ画像である。
【図3】比較例1の方法によって得られた回路基板のカメラ画像である。
【図4】実施例2の方法によって得られた回路基板のカメラ画像である。
【図5】比較例2の方法によって得られた回路基板のカメラ画像である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
まず、本発明の検査対象となる金属パターン形成樹脂基板について説明する。
【0030】
金属パターン形成樹脂基板としては、樹脂基板に金属層がパターン形成されたものであれば特に限定はなく、樹脂基板の片面に金属パターンを有する片面基板、樹脂基板の両面に金属パターンを有する両面基板、これらを複数枚積層してなる多層基板のいずれも好ましく用いることができる。
【0031】
本発明の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法では、樹脂基板の両面に金属パターンを有するものの表面検査において特に効果的である。すなわち、本発明では、金属パターン形成樹脂基板に励起光を照射し、樹脂基板の表面近傍から発せられる蛍光又は燐光を検出する。このとき、励起光は、樹脂基板に対する透過率が低く、樹脂材料表層で吸収される波長である事が好ましく、この場合、表層で励起光の大半が吸収され、樹脂基板内部からの発光が抑制されて、樹脂基板表面から発光する。このため、樹脂基板の裏面側に存在する異物や金属パターンによる影響を受けることなく、検査すべき金属パターン間の樹脂表面上に異物が存在しているか否かを精度よく観察できるからである。
【0032】
このような、金属パターン形成樹脂基板の好ましい一例としては、樹脂基板表面に、金属層をパターン形成してなる金属配線を有する回路基板などが挙げられる。
【0033】
金属パターン形成樹脂基板に用いられる樹脂基板の樹脂材料としては、励起光(好ましくは波長430nm以下の光、さらに好ましくは400nm以下の紫外光)を照射されることにより表面から蛍光又は燐光を発光するものであれば特に限定はない。このような樹脂材料のうち、絶縁性、耐熱性、強度など物性に優れたものは、回路基板に好ましく用いることができる。例えば、ポリイミド、イミド基を含むポリウレタン、全芳香族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリメチルペンテン、ポリアリレート、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化エチレンプロピレンコポリマー、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニルなどが挙げられる。これらのうち、励起光の吸収が大きく、励起光が照射されると、蛍光又は燐光を発光し、更には、絶縁性、強度、耐熱性などの諸物性に優れるという理由から、ポリイミド、イミド基を含むポリウレタン、全芳香族ポリエステル、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、フェノール樹脂が樹脂材料としては好ましく用いられる。更には、芳香環を有する樹脂、代表的には芳香族ポリイミド、イミド基を含むポリウレタン、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミドは、430nm以下の短波長の光、特に400nm以下の紫外光に対して強い吸収を有し、これらの光を表面に照射することで、基板の構成樹脂自体が表層から強い蛍光又は燐光を発光し、発光や吸収の為の添加物混合による特性劣化を配慮する必要がないのでより好ましく用いられる。なかでも芳香族ポリイミドは薄くても十分な強度を有する上に曲げにも強く、かつ励起光を照射されることにより樹脂材料表層で吸収され、表面から特に強い蛍光を発光するため特に好ましい。
【0034】
芳香族ポリイミドとしては、例えば、テトラカルボン酸二無水物の例として、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビス(ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2−ビス(ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス〔(ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物から選ばれる一種あるいは二種以上のテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンの例として、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジアミノ安息香酸などのベンゼン核1つのジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルメタン、ジメチルジアミノビフェニル、ビス(トリフルオロメチル)ジアミノビフェニル、ジメチルジアミノジフェニルメタン、ジカルボキシジアミノジフェニルメタン、テトラメチルジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフィド、ジアミノベンズアニリド、ジクロロベンジジン、ジメチルベンジジン、ジメトキシベンジジン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノジメトキシベンゾフェノン、2,2−ビス(アミノフェニル)プロパン、ビス(アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ジアミノジフェニルスルホキシドなどのベンゼン核2つのジアミン、ビス(アミノフェニル)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)トリフルオロメチルベンゼン、ジアミノフェニルフェノキシベンゾフェノン、ジアミノジフェニルフェノキシベンゾフェノン、ビス(アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、ビス(アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、ビス(アミノフェニルスルホン)ベンゼン、ビス(2−アミノフェニルイソプロピル)ベンゼン、などのベンゼン核3つのジアミン、ビス(アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(アミノフェノキシ)フェニルエーテル、ビス(アミノフェノキシ)フェニルケトン、ビス(アミノフェノキシ)フェニルスルフィド、ビス(アミノフェノキシ)フェニルスルホン、2,2−ビス(アミノフェノキシ)フェニルプロパン、2,2−ビス(アミノフェノキシ)フェニル−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのベンゼン核4つのジアミンから選ばれる一種あるいは二種以上のジアミンの組み合わせからなる樹脂を含み、特にテトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ジアミンとしてp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼンを含む組成のものが好ましく挙げられる。なかでも、ピロメリット酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ジアミンとしてp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼンの組み合わせよりなる芳香族ポリイミドは、特に強く発光し金属パターン形成樹脂基板の表面状態を精度よく検査できるため本発明に特に好ましく用いることができる。
【0035】
金属パターン形成樹脂基板において、樹脂基板に積層させる金属材料としては、特に限定はなく、銅、ニッケル、クロム、マンガン、アルミニウム、鉄、モリブデン、コバルト、タングステン、バナジウム、チタン、タンタル、シリコン等の金属、またはこれらの合金、あるいはこれらの金属の酸化物や金属の炭化物などの金属化合物などが挙げられ、電気抵抗が低く入手が容易な銅が好ましく用いられる。
【0036】
樹脂基板に金属層を形成するには、例えば、金属箔を樹脂基板の表面に圧着して金属層を形成する方法や、樹脂基板の表面に、スパッタリングなどで極めて薄い金属層を形成した後、必要に応じて電解金属めっきを行って金属層を形成する方法などが挙げられる。なお、算術平均高さRaが0.1μmを超えるような粗化層が形成された金属箔を用いて樹脂基板上に金属層を形成すると、樹脂基板と金属層の安定した密着性を得る事が出来るため好ましいが、一方で樹脂基板の表面は、粗化層が転写されて凹凸形状となる。このため、金属層を除去して金属パターンを形成する際において、樹脂基板表面の凹部に金属が根残りし易く、金属パターンを高精細化した場合、特にパターンピッチが100μm以下の場合にはパターン間の残存異物の慎重な検査が重要である。さらに、金属パターンを超高精細化した場合、特にパターンピッチが40μm以下の場合は、金属配線と樹脂基板との接合面の算術平均高さRaは、0.1μm以下であることが好ましい。算術平均高さRaが0.1μm以下の平坦な接合面であれば最大凹凸も低く抑えられ配線間の根残りを防止できる。前述したように、励起光は樹脂基板における透過率が低く、励起光照射による樹脂基板の発光は、樹脂基板の表面近傍においてほぼ均質に生じる。本発明の方法によれば、上記の粗化層が形成された金属層を除去した樹脂基板が露出した部分の算術平均高さRaが0.1μmを超える場合であっても表面の凹凸による散乱の影響を受ける事ない。また、上記の金属層と樹脂基板が平坦な接合面を有し、金属層を除去して樹脂基板が露出した部分の算術平均高さRaが0.1μm以下の場合であっても、裏面や基板内構成物からの反射の影響を受ける事なく、検査すべき金属パターン間の樹脂表面上に異物が存在しているか否かを精度よく観察できる。
【0037】
樹脂基板に金属パターンを形成する方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を用いて形成できる。例えば、サブトラクティブ法、セミアディティブ法などが挙げられる。
【0038】
サブトラクティブ法では、樹脂基板上に所定厚みの金属層を形成し、金属層表面を洗浄した後、フォトレジスト層を形成し、露光現像してエッチングマスクを形成し、塩化鉄などのエッチング液への浸漬やスプレーによりパターン間の金属を除去し、不要となったフォトレジストを除去することで金属パターン形成樹脂基板を製造できる。
【0039】
セミアディティブ法では、樹脂基板の表面に、薄い金属箔を積層したり、スパッタリングなどを行って、0.2〜3μm程度の極めて薄い金属層(金属薄層)を形成する。そして、金属薄層の表面を洗浄した後、厚手のフォトレジスト層を形成し、露光現像してパターンの型を形成する。そして、金属薄層を給電層としてフォトレジストが形成されていない部位に電解めっきで金属配線パターンとなる金属を積上げた後、フォトレジストを除去し、エッチング液への浸漬やスプレーにより金属配線パターン間の金属薄層を除去することで金属パターン形成樹脂基板を製造できる。
【0040】
また、このようにして作製された金属パターン形成樹脂基板を、例えば、回路基板として用いる場合、必要に応じて金属パターン部を、酸化防止や、搭載する部品との接合の為に、金や錫による電極めっきを施してもよい。
【0041】
また、金属パターン形成樹脂基板は、それ自体で独立していても良いし、別の土台となる構成物上に形成されていても良い。また、金属及び樹脂表面は露出している事が画像の鮮明さから好ましいが、検査に影響が無い範囲で保護層などが形成されていても良く、具体的には、保護層が検査時の励起光照射に対して蛍光や燐光を発せず、かつ画像を乱す吸収や散乱がなければ良い。
【0042】
次に、本発明の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法について、図1を用い、金属パターン形成樹脂基板1として、樹脂基板2の両面に金属パターン3,4が形成された両面基板を用いた場合を例に挙げて説明する。図1において、11は励起光源、12はライトガイド、14は検出手段、15は励起光除去フィルタ、21は支持台である。
【0043】
まず、支持台21上に、金属パターン形成樹脂基板1を、検査面が上面となるように配置する。
【0044】
次に、励起光源11からの光をライトガイド12を伝送させてライトガイド12の先端から発射させ、励起光a1を金属パターン形成樹脂基板1の測定部位(図1では、楕円枠A内)に照射する。
【0045】
励起光源11としては特に限定はない。樹脂材料表層で吸収される波長を有するものであれば、単一波長光源、複数の波長光源、連続的波長スペクトル光源の何れも用いる事が可能であるが、樹脂材料表層で吸収されやすい430nm以下の光、特に400nm以下の紫外光を出射可能な光源が好ましく、高圧水銀ランプ、紫外線発光ダイオード、ブラックライト、Xe−Hgランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。ここで、複数波長を有する光源や連続的波長スペクトル光源を用い、樹脂材料表層で吸収される波長に加えて樹脂材料表層で吸収されない波長を含んでいる場合、これは蛍光又は燐光の発光に対する寄与が小さく樹脂材料表層で吸収される波長による発光が支配的になるものの、このような場合、光源からの出射光に対して、樹脂材料表層で吸収される波長を透し、樹脂材料表層で吸収されない波長を遮断するフィルタを通すなどして樹脂材料表層で吸収される波長だけを励起光とすると、より鮮明な発光画像を得られより好ましい。ここでフィルタは吸収型や反射型、あるいは必要な波長を例えば45度曲げて通すなど多種多様なタイプが使用可能であるが、結果的に必要な位置に必要な波長の光を導ければ良い。この実施形態では、ライトガイド12の先端に、励起光a1の透過率を選択的に高めたフィルタ13が装着されている。
【0046】
金属パターン形成樹脂基板に照射する励起光としては、金属パターン形成樹脂基板の樹脂基板を構成する樹脂材料の吸収が大きい短波長の光を用い、樹脂材料表層で吸収される波長の光が好ましい。樹脂材料の表層で励起光の大半が吸収されることにより、樹脂基板内部からの発光が抑制されて、樹脂基板表面近傍からしか発光しないため、基板の内部や下層の構成物の影響を排除して、樹脂基板が露出した部分をより鮮明な像として観察でき、金属パターン形成樹脂基板の表面状態をより精度よく検出できる。励起光が吸収されて発光する樹脂表層とは、基板の厚さや構成により異なるため裏面や内部構成物に届かずに実質表層と扱えれば特に制限はないが、好ましくは樹脂表面から10μm以内、より好ましくは5μm以内、特に好ましくは3μm以内で、励起光の大半が吸収されると基板内部の構成物や下層の構成物の影響を受けにくい。表層で吸収される励起光量は実質的に内部や裏面の影響を受けなければ良いが、好ましくは励起光の50%が、より好ましくは80%以上が表層で吸収されれば表面での発光がより明確であり特に好ましい。具体的には、励起光は、波長430nm以下の光が好ましく、波長400nm以下の紫外光が特に好ましい。
【0047】
励起光の照射方法は、金属パターン形成樹脂基板の検査すべき表面側から照射する。検査すべき表面側からの照射であれば、いずれの照射方法も好ましく用いることができる。例えば、金属パターン形成樹脂基板に対し斜め上方から照射しても良いし、対物レンズを通して真上から照射しても良い。この実施形態では、金属パターン形成樹脂基板1の斜め上方から、測定部位に励起光a1を照射している。なお、励起光は、透過性が低く、樹脂基板に吸収され易いので、側面側や裏面側から励起光を照射した場合、金属パターン形成樹脂基板の厚みによっては、検査すべき表面側から蛍光又は燐光を発生させることができなかったり、内部の発光が強く内部構成物が観察されたり、発光量が弱く、精度のよい表面検査が行えない場合がある。
【0048】
金属パターン形成樹脂基板1に励起光を照射すると、樹脂基板表層に吸収されて、樹脂基板2の表面から蛍光又は燐光が発光される。また、樹脂基板2の表面や、金属パターン3の表面で、励起光の反射ないし散乱も生じる。すなわち、金属パターン形成樹脂基板1に励起光を照射することにより金属パターン形成樹脂基板1から発せられる光b1には、樹脂基板2が励起光を吸収した際に発せられる蛍光又は燐光と、樹脂基板2及び金属パターン3の表面で反射ないし散乱した励起光とが混在している。このため、このような光b1を検出して観察される像は、それぞれの像が重なったり光の成分が作用し合ったりすることにより、樹脂基板と金属層との界面の像などが不鮮明になり易かった。
【0049】
そこで、本発明では、上記金属パターン形成樹脂基板1から発せられる光b1を、励起光に対する感度を有さず、蛍光又は燐光に対する感度を有する検出系で検出する。
【0050】
なお、本発明において、「励起光に対する感度を有さず」とは、蛍光又は燐光に対する感度に対して十分感度が低ければ良く、好ましくは励起光を検出せずに実質的に励起光の影響を除外して蛍光や燐光などの発光だけを検出できれば良い。検出系の最終検出手段が肉眼である場合は、発光が可視光である必要があるため、励起光に可視光成分を含む場合は、発光による観察を阻害しない事が必要で、肉眼に入る時点で励起光の可視光成分の強度が発光の可視光成分の強度の10%以下になるように必要に応じて波長フィルタなどの光学系で検出系全体の感度が調整されている事が好ましい。検出系の最終検出手段が、電気信号に変換するものである場合は、好ましくは発光に対する感度に対して励起光に対する感度は1%以下、更に好ましくは0.5%以下であると励起光のかぶりの影響を抑えて明確な発光像が得られる。
【0051】
また、検出系としては、肉眼や画像センサーを有するカメラなどが利用可能であり、励起光の波長に感度が低く蛍光又は燐光の波長に感度が高い系が構成されていれば特に制限は無いが、肉眼や画像センサーとして用いられるCCDやCMOSセンサーなどは広い波長域で感度を有するのが一般的であるので、この場合は励起光の波長域に対する透過率が低く、蛍光又は燐光の透過率の高いフィルタを通して検出すれば良い。ここでも、前記同様にフィルタは多種多様なタイプを用いる事が可能であり、ここでいう透過率とは必要な光路に対して波長選択を行なう意味で用いており、単に光の直進に対する透過率に限定したものではない。なお、ここで検出系の感度は、センサー、フィルタ並びにレンズなどの光学系を含めた系全体での感度であり、測定対象から出た光をセンサーで検出して判定する際に、実質的に蛍光又は燐光のみで判定出来る事が重要である。
【0052】
この実施形態では、励起光の透過率が低く、蛍光又は燐光の透過率の高いフィルタ15を通すことで、励起光が除去ないし低減された光b2を受光部14で検出し、金属パターン形成樹脂基板1の表面検査を行う。
【0053】
励起光除去フィルタ15は、照射した励起光の透過率が0.5%以下で、蛍光又は燐光からなる発光光の透過率が50%以上であるものを用いることが好ましく、上記励起光の透過率が0.35%以下で、上記発光光の透過率が70%以上のものを用いることが発光像を明確に観察できるためより好ましい。
【0054】
このようにして、励起光除去フィルタ15を通し、励起光が低減ないし除去された光b2を検出して得られる像は、励起光の反射光や散乱光による影響が無く、樹脂基板が露出した部分は、高コントラストで、極めて鮮明で、ほぼ均質な明るい像として観察される。また、金属パターン3が存在する部分や、異物などが存在する部分は、発光しないあるいは樹脂基板2からの発光が遮られて暗い像となったり、異物が透明で励起光を透過する場合であっても、異物下部の樹脂基板2からの発光は異物により屈折を受けて方向性を生じるため、樹脂基板2が露出した部分とは明確に異なる像が観察される。
【0055】
したがって、均質な明部を、樹脂基板が露出した部分、すなわち、金属パターン間の像と認識でき、均質な暗部を金属パターンの像と認識できる。これにより、金属パターンの間隔や、パターン不良を判定できる。また、局所的または特異形状な暗部や明暗の異なる部位を異物と判定することが出来る。
【0056】
励起光除去フィルタ15を通して得られる上記光b2を受光部14で受けて、得られる像の検査を行う。検査方法としては、従来公知の方法で行うことができる。例えば、マイクロスコープや顕微鏡で拡大し、肉眼で検出して画像パターンを認識してもよいし、CCDなどのカメラで検出して、必要に応じて画像処理を行ってディスプレイ上で観察しても良いし、公知の画像認識システムで認識してもよい。勿論拡大レンズが一体となった検査用カメラを用いることが可能であり、画像信号をAOIシステムなどに取り込んで自動で判別することが出来る。また、検査員の目視による場合には、経験的に容易に判定することが可能であるし、画像処理による自動検査の場合は正常パターンの画像を登録して比較判定したり、あるいはCAD図面のデータから作成したパターンを基に判定してもよい。
【0057】
本発明の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法では、金属パターン形成樹脂基板1の一定の領域を、映像により測定するものであるので、検査効率の観点から視野は広いほうが良い。例えば、0.1mm角以上の領域であれば40μmピッチ配線の複数組のライン/スペースが入るために好ましく、0.4mm角以上であれば10組のライン/スペースが入り検査としてより好ましい。このように、拡大倍率を制限して視野を広くした場合、反射測定では樹脂表面の散乱や裏面の反射光と異物の区別が著しく困難であり、本発明の効果が顕著である。
【0058】
そして、金属パターン形成樹脂基板の製造工程において、このようにして金属パターン形成樹脂基板の表面を検査し、金属パターンの間隔が狭かったり、パターン不良であったり、金属パターン間の樹脂表面に異物を有すると判定された金属パターン形成樹脂基板は、不良品として選別し、これを取り除くことで、不良品の混在の極めて少ない金属パターン形成樹脂基板が最終製品として得られる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
(測定方法)
算術平均高さRaの測定方法:JIS・B0601(2001)に基づいて、共焦点式レーザー顕微鏡VK−8500(キーエンス社製)を用いて、30μmの長さを測定した。
【0061】
(実施例1)
片面に粗化層が形成された厚さ9μmの電解銅箔(商品名「USLP」、日本電解社製)が、熱融着層を有するポリイミドフィルム(商品名「ユーピレックスVT」、宇部興産社製)の両面に粗化層側がポリイミドフィルムと接するように積層された金属積層ポリイミドフィルム(商品名「ユピセルN」、宇部日東化成社製)を用い、エッチングプロセスで両面の不要な銅を除去して、一方の表面に40μmピッチの配線パターンを形成し、他方の表面からは一部の銅を残して回路基板を得た。ポリイミドフィルムが露出した部位の算術平均高さRaは0.28μmであった。
このようにして製造した回路基板の検査すべき表面に対して、Xe−Hgランプハウスからライトガイドを通し、先端に備えた紫外光(360nm)を60%以上透過して可視光を遮断するフィルタ(UTVAF−36U、シグマ光機製)を透して、波長400nm以下の紫外光を照射して、ポリイミドフィルム表層から蛍光を発光させた。そして、回路基板の表面を、実態顕微鏡の対物レンズに備えたフィルタ(波長400nm以下の紫外光の透過率が0.1%以下、波長450〜700nmの発光光の透過率が85%以上、SCF−42L,シグマ光機製)を通して発光像を観察して、回路基板の0.8mm角以上の範囲の表面状態を観察した。
図2は、本実施例のカメラ画像である。金属を除去して現れるポリイミド表面が露出した部位301は、紫外光に反応して蛍光発光が観察され明るく示され、金属配線部302は蛍光発光が無い為暗く示された。この回路基板300は、金属配線部302近傍に根残り部があって、画像上の金属配線部302の線幅が著しく太く示され(図中楕円枠303内)、異物不良と判定できた。なお、このカメラ画像の回路基板の裏面側には銅箔が全面に存在していた。
【0062】
(比較例1)
実施例1で用いた回路基板の実施例1と同一箇所に対し可視光を照射し、反射光をマイクロスコープで検出して表面状態を観察した。図3は、このようにして観察した回路基板400のカメラ画像である。図3に示すように、このカメラ画像では、金属配線部402が明るく示されており、根残りの部位は反射光の戻り量が少なく(図中楕円枠403内)、ポリイミド表面が露出した部位401と区別が困難で、金属配線部402どうしの間隔を正確に明確に捉えられなかった。
【0063】
(実施例2)
粗化層のない厚さ2μmの電解銅箔(商品名「NADFF」、三井金属社製)が、熱融着層を有するポリイミドフィルム(商品名「ユーピレックスVT」、宇部興産社製)の両面に積層された金属積層ポリイミドフィルム(商品名「ユピセルN」、宇部日東化成社製)から、セミアディティブプロセスで両面の銅パターンを形成し、不要な下地銅箔をエッチングで除去して、一方の表面に40μmピッチの配線パターンを形成し、反対の表面は大半の銅を残して回路基板を得た。ポリイミドフィルムが露出した部位の算術平均高さRaは0.06μmであった。
このようにして製造した回路基板の検査すべき表面に、実施例1と同様にして波長400nm以下の紫外光を照射し、実態顕微鏡に換えて金属顕微鏡を用い、対物レンズの後に備えたフィルタ(SCF−42L,シグマ光機製)を通して発光像を観察して、回路基板の0.4mm角以上の範囲の表面状態を観察した。
図4は、本実施例のカメラ画像である。金属を除去して現れるポリイミド表面が露出した部位501は、紫外光に反応して蛍光発光が観察され明るく示され、金属配線部502は蛍光発光が無い為暗く示された。そして、ポリイミド表面が露出した部位501の一部に、配線間のエッチング残り不良だけが明確に暗点(図中の楕円枠504内)として捉えられ、異物不良と判定できた。図4(b)は(a)の全体画像から異物を有する部分を切り出した拡大画像であり、小さな異物も捉えている事が確認出来る。なお、このカメラ画像の回路基板の裏面側には銅箔がほぼ全面に存在していた。
【0064】
(比較例2)
実施例2で用いた回路基板の実施例2と同一箇所に対し可視光を照射し、反射光をマイクロスコープで検出して表面状態を観察した。図5は、このようにして観察した回路基板のカメラ画像である。図5に示すように、このカメラ画像では、金属配線部602が明るく示されており、ポリイミド表面が露出した部位601は暗く示されていた。また、ポリイミド表面が露出した部位601に、配線間のエッチング残りの金属反射による輝点(図中の楕円枠604内)とともに、反対側の表面にある銅の凹凸の反射による鮮明な輝点(図中の四角枠605内)が混在しており、エッチング残り不良との判別が困難であった。
【符号の説明】
【0065】
1:金属パターン形成樹脂基板
2:樹脂基板
3,4:金属パターン
11:励起光源
12:ライトガイド
13:フィルタ
14:検出手段
15:励起光除去フィルタ
21:支持台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を照射されることにより蛍光又は燐光を発光する樹脂材料からなる樹脂基板に、金属層をパターン形成してなる金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法であって、
前記金属パターン形成樹脂基板に前記励起光を照射し、前記金属パターン形成樹脂基板の表面から発せられる光を、前記励起光に対する感度を有さず、蛍光又は燐光に対する感度を有する検出系で検出することを特徴とする金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法。
【請求項2】
前記検出系は、前記励起光に対する透過率が低く、前記蛍光又は燐光に対する透過率が高いフィルタを備えている、請求項1に記載の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法。
【請求項3】
前記金属パターン形成樹脂基板の金属パターン間の樹脂表面に残留する異物を検出する、請求項1又は2記載の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法。
【請求項4】
前記異物は、金属である請求項3に記載の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法。
【請求項5】
前記金属パターン形成樹脂基板が、前記樹脂基板の両面に前記金属パターンを有するものからなり、前記励起光を検査すべき表面側から照射する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法。
【請求項6】
前記金属パターン形成樹脂基板が、金属層をパターン形成してなる金属配線を有する回路基板である請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法。
【請求項7】
前記金属パターン形成樹脂基板が、金属と樹脂基材との積層体から金属を除去して得られる基板である請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法。
【請求項8】
前記金属パターン形成樹脂基板が、金属と樹脂基材との積層体から金属をエッチングで除去して得られる基板である請求項7に記載の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法。
【請求項9】
前記樹脂基板が、芳香族ポリイミド、イミド基を含むポリウレタン、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミドから選ばれた1種からなり、前記励起光が、波長430nm以下の光である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法。
【請求項10】
前記樹脂基板が露出した表面部分の算術平均高さRaが0.1μmを超える、請求項1〜9のいずれか1つに記載の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法。
【請求項11】
前記樹脂基板が露出した表面部分の算術平均高さRaが0.1μm以下である、請求項1〜9のいずれか1つに記載の金属パターン形成樹脂基板の表面検査方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法により、前記金属パターン形成樹脂基板の樹脂表面を検査し、不良品を除くことを特徴とする金属パターン形成樹脂基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−69687(P2011−69687A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220159(P2009−220159)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】