説明

金属光沢調の基材への白地印刷物

【課題】金属光沢調の基材の上に、オーバープリントニス層で印刷図柄を隠蔽することが少ない白地を印刷機の一工程で得る。
【解決手段】20°光沢度が25%以上で、かつハンターLab表色系におけるa*値が−5〜5、b*値が−5〜5である無彩色の金属光沢調の基材Bの上に、印刷層Pを設け、更に白色顔料を含有した撥液性の下塗り層を設けた後にオーバーコートするOP二スを塗布または印刷することにより、オーバーコートするOPニスが撥液性の下刷り印刷層にはじかれて、十点平均粗さRzが5〜35μmとなり高白な白地を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属光沢調の基材の上に、図柄印刷層を設け、更にオーバープリントニス層を設けてなる印刷物とその印刷物を用いた包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から金属光沢調の基材に図柄印刷した印刷物が多用な包装材料として使用されているが、図柄や文字を鮮明にするために図柄印刷の前に白インキを印刷し乾燥させた上に図柄印刷している。このように金属光沢調の基材の上に、白地を表現する場合には、予め白印刷を行うことがなされているが、ただし白印刷を2・3回重ねないと金属光沢を完全に隠蔽できないので、従来の印刷機では色数に制限がでてしまい、デザインとの相反がおきていた。更に、オフセット印刷で白印刷を重ねた白地上にカラー印刷をする場合には白地を一度乾燥させる必要があり、更に網点再現性が劣ることが問題となっていた。
【0003】
また、金属光沢感を有する領域とマット調を備えた包装材料として、金属蒸着層を裏面に設けたフィルムの表面にマットニスを設ける方法およびマットニスに白色合成樹脂インキを添加混合する方法が提案されている(特許文献1)が、複雑な工程を経る必要があると同時にマット調が強調されるものの白地は得られていない。
【0004】
また、マット感を印刷表現で出すにあたり、撥液性を有するニス層の上にグロスニスを設けることで、撥液性を有するニス層上のグロスニスが凝集して斑点状になって光沢が下がり、マット感を与える事が提案されている(特許文献2)が、白地は得られていない。
【0005】
【特許文献1】特開平05−305962号公報
【特許文献2】特開2004−114654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の金属光沢調の基材の上に、白地を表現する場合に、図柄印刷の前に予め白印刷を行うといった印刷機を2度通しする手間を省くこと、更に複雑な工程を経ることなく、印刷機の一工程で白地印刷物を得ること、更にはオーバープリントニス層で印刷図柄を隠蔽することが少ない白地を得ることを課題とした。
【0007】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたもので、金属光沢調の基材の印刷において、フルに色数を使用できるため表現域を向上させることができる。また、金属光沢調の下地を隠蔽するのではなくて、金属光沢調の基材からの反射光を透過させて照明として機能させて、オーバープリントニス層が半透明のフィルターとして機能することで、ディスプレイ上から視覚できるような高白色の白地の表現を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために以下の(1)〜(5)の構成を採る。
(1)金属光沢調の基材の上に、図柄印刷層を設け、更にオーバープリントニス層を設けてなる印刷物において、
該金属光沢調の基材の金属層表面の20°光沢度が25%以上であり、かつ金属層表面のハンターLab表色系におけるa*値が−5〜5、b*値が−5〜5であり、
該オーバープリントニス層に白色顔料を含有し、かつオーバープリントニス層の十点平均粗さRzが5〜35μmであることを特徴とする印刷物。
【0009】
(2)該オーバープリントニス層が、オフセット印刷による撥液性の下刷り層とオーバーコートするOPニスからなり、更に前記撥液性の下刷り層および/またはオーバーコートするOPニスに白色顔料を含有し、撥液性の下刷り層を設けた後にオーバーコートするOPニスを塗布または印刷することにより、該オーバーコートするOPニスが撥液性の下刷り印刷層にはじかれて白地を形成することを特徴とする(1)項に記載の印刷物。
【0010】
(3)該オーバープリントニス層に含有される白色顔料の平均粒子径が0.1以上、2.0μm未満で、且つ2μm以下の含有量が90〜100質量%あり、且つ含有される白色顔料の含有量が対オーバープリントニス2〜30質量%であることを特徴とする(1)項または(2)項に記載の印刷物。
【0011】
(4)前記図柄印刷層及び下刷り印刷層とオーバープリントニス層が紫外線硬化型インキであることを特徴とする(1)〜(3)項のいずれかに記載の印刷物。
【0012】
(5)金属光沢調の基材の上にオフセット印刷によりベタまたは図柄印刷層を設ける工程、該印刷層または無印刷の基材の表面上に部分的または全面にオフセット印刷により撥液性の下刷り印刷層を設ける工程、前記下刷り印刷層の上に紫外線硬化型オーバープリントニス層を設ける工程、該紫外線硬化型オーバープリントニス層を設けた直後に紫外線照射により硬化させる工程を、オフセット印刷機による一工程で設けることを特徴とする印刷物とその製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、金属光沢調の基材の上に白色顔料を含有したオーバープリントニス層を設けることにより、オーバープリントニス層のフィルター効果で金属光沢の基材が目視上高白色な白地に変化するという効果がある。
また、図柄印刷後にオーバープリントニス層を設けるので、図柄印刷時の網点再現性は維持されていると共に、得られた白地は図柄を隠蔽することが少ないので、優れた視覚的効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の印刷物とその製造方法を説明する。
本発明が対象とする印刷物とは、金属光沢調を利用した視覚効果を有したパッケージやカタログ、ポスターなどの印刷物全般に利用できる。
【0015】
一般に、印刷物の光沢を向上させ、また印刷物の皮膜を保護するために、印刷物をオーバープリントニス(以下、OPニスということもある)層で被覆することが行われている。即ち、基材に印刷インキ各色を印刷した後に、その印刷物上に透明なOPニスをオフセット印刷機の最終胴にて印刷している。この場合、OPニスは均一に印刷しているので、見た目には均一な光沢を有している。
【0016】
本発明は、通常のオフセット印刷機に於いて、金属光沢調の基材に所定の図柄を印刷した後、最終胴にて、OPニスをはじく撥液性のインキを下刷り印刷する。続いて、オフセット印刷機に付設されているコーターにて、紫外線硬化型インキ(OPニス)をオーバーコートする。このように、本発明のオーバープリントニス層は撥液性の下刷り層とオーバーコートするOPニスから構成される。
このオーバーコートするOPニスは、撥液性の下刷り層のインキがある部分ははじかれてマット調となる。続いて、オフセット印刷機に付設された紫外線照射により、下刷り層およびOPニスが硬化される。
ここで、撥液性のインキとは、オーバーコートするOPニスをはじくものであれば良い。
例えば、OPニスが親水性の場合、下刷りの撥液性インキを撥水性にすればよいし、OPニスが親油性の場合、下刷り撥液性インキは撥油性のものにすれば良い。
【0017】
得られた印刷物はマット調となっているが、使用する撥液性の下刷りインキまたはOPニスおよび撥液性の下刷りインキとOPニスに所定量の白色顔料を添加・含有することにより、印刷物は従来のマット調から高白色の白地を表現することが可能となった。即ち、図柄印刷がない金属光沢調の基材の部分は白く視認されると同時に図柄印刷がある部分は白くは見えず、図柄が透けて見える。このように金属光沢調の基材に印刷した図柄を隠蔽することが少なく、図柄がむしろ、鮮やかにみえるという効果も得られる。
【0018】
本発明では、オーバープリントニス層の十点平均粗さRzが5〜35μmが好ましい。より好ましくは10〜25μmであれば、より白地が視認できる。ここで、十点平均粗さRzはJIS B 0601に準じて測定した値である。
オーバープリントニス層の十点平均粗さRzが5μmを下回ると、白地が視認しづらくなる。十点平均粗さRzは35μmより大きいほど、白く見えるが、現状のオフセット印刷機でマット調となる凹凸を形成しようとしても35μmを超える十点平均粗さRzは得られていない。図1に本発明の印刷物の一実施形態の模式図を示す。
【0019】
本発明の撥液性の下刷りインキまたはオーバーコートするOPニスに含有される白色顔料としては、例えば、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン等に代表される塗工紙のコーティングまたは印刷インキに使用される微粒顔料であり、マット化に使用される平均粒子径5μm以上のシリカ等の顔料とは区別される。
具体的には、平均粒子径が0.1以上、2.0μm未満で、かつ2μm以下の含有量が90〜100質量%であり、かつ含有される白色顔料の含有量が撥液性の下刷りインキまたはOPニスに対して2〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは、4〜20質量%である。なお、粒度分布はレーザー回折式粒度分布測定装置の島津製作所製SALD−2000にて測定できる。
【0020】
白色顔料の含有量が2質量%を下回ると白地が白くならず、30質量%を超えると印刷層が隠蔽されるので好ましくない。また、白色顔料の粒径がマット化顔料並みの大きさになるとマット調となるのみで、白地が白くならず、かつオーバープリントニスの目的である印刷物の皮膜の保護の要を為さなくなる。
【0021】
本実施形態における金属光沢調の基材とは、無彩色の金属光沢の金属層表面を有する積層体である。
無彩色の金属光沢とは、20°の光沢度が25%以上で、かつハンターLab表色系におけるa*値が−5〜5、b*値が−5〜5のことである。ここで、20°光沢度はJIS Z 8729に準じて測定した値であり、a*、b*はJIS Z 8729に準じて求めた値である。
なお、20°の光沢度が25%未満である場合には、金属光沢調ではなく、a*値が−5〜5、b*値が−5〜5の範囲にない場合には無彩色ではない。金属光沢調でない場合、あるいは、無彩色でない場合にはオーバープリントニス層が白く見えない。
20°の光沢度は100%以上であることがより好ましい。20°の光沢度が100%以上であれば、オーバープリントニス層がより白く見える。
【0022】
本発明に使用する金属光沢調を有する基材としては、金属板そのもののほか、金属光沢を有する材料を積層した構造体、例えばアルミニウムを蒸着したプラスチックフィルム、アルミニウム箔を貼合した板紙(例えば、王子パッケージング製商品名:キラットシルバー)、アルミニウムペーストを塗工した板紙(例えば、王子パッケージング製商品名:プロシードシルバー)、アルミニウム蒸着フィルムを貼合した紙・板紙(例えば、王子パッケージング製商品名:スーパーメタル)、アルミニウム蒸着層を転写した加工紙(例えば、王子パッケージング製商品名:ブリランテシルバー)等が挙げられる。
【0023】
上記印刷物は、金属光沢調の基材の上に、図柄印刷層を設け、更に白色顔料を含有するオーバープリントニス層を設けることにより、従来のマット調でなく、図柄印刷がない金属光沢調の基材の部分は白地を表現できると共に、図柄印刷部分は印刷図柄が透けて見え、むしろ図柄が鮮やかに見える。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例に従って説明する。
【0025】
<実施例1>
金属光沢調の基材として基材A(スーパーメタル、表1参照)を準備し、その基材Aの金属層表面に、紫外線硬化型オフセットインキ4色(大日本インキ化学工業製ダイキュアアビリオプロセス墨、藍、紅、透明黄)にてベタおよび図柄印刷を行った。続いて、印刷機の最終胴にて、撥液性の下刷り印刷(撥液性インキとして、下刷りインキ2:大日本インキ化学工業製ダイキュアハイブライトメジュームEMにチタン工業製二酸化チタンクロノスKA−10を10%添加、表2参照)を施し、更にオーバーコートとしてOP二ス(オーバーコートニス1:UVクリアとして大日本インキ化学工業製ダイキュアクリアーUV1412EM単独、表2参照)をオフセット印刷機に付設されたコーターにて塗工後、直ちに紫外線照射を行い、印刷物を得た。
得られた印刷物はベタまたは図柄が印刷されていない部分は白地として視認された。この白地部分の白色度を、JIS P 8148に準じ、スガ試験機製分光白色度測色計SC−10WPにて測定した。
また、同じ白地部分の十点平均粗さRzをJIS B 0601に準じ、小坂研究所製サーフコーダSE−3Cで測定し、AY−41にて解析した。
また、ベタまたは印刷図柄部分の鮮やかさを目視評価にて行った。白地のオーバープリントが印刷塗工されていない印刷部分に対して、白地のオーバープリントが印刷塗工されている印刷部分が鮮やかになったものを○、やや鮮やかになったものを△、変わらないものを×とした。
これらの評価結果を表3に示す。
【0026】
<実施例2、3、4>
実施例1において、金属光沢調の基材として基材B、基材C、基材Dにそれぞれ変更した以外は、すべて実施例1と同様に行った。
【0027】
<比較例1>
実施例1において、金属光沢調の基材として基材Eに変更した以外は、すべて実施例1と同様に行った。
【0028】
<実施例5、6、7、8>
実施例1において、金属光沢調の基材として基材A、基材B、基材C、基材Dにそれぞれ変更し、さらに撥液性の下刷り印刷に下刷りインキ1(ダイキュアハイブライトメジームEM単独)に変更、オーバーコートとしてのOP二スにオーバーコートニス2(オーバーコートニス1に白石工業製沈降性炭酸カルシウムブリリアント−15を20%添加)に変更した以外は、すべて実施例1と同様に行った。
【0029】
<実施例9>
実施例1において、撥液性の下刷り印刷に下刷りインキ3(下刷りインキ1に二酸化チタンを1%添加)に変更、オーバーコートとしてのOP二スにオーバーコートニス3(オーバーコートニス1に炭酸カルシウムを10%添加)に変更した以外は、すべて実施例1と同様に行った。
【0030】
<比較例2、3、4>
実施例1において、撥液性の下刷り印刷に下刷りインキ3、下刷りインキ4(下刷りインキ1に二酸化チタンを35%添加)、下刷りインキ1にそれぞれ変更した以外は、すべて実施例1と同様に行った。
【0031】
<比較例5、6>
実施例1において、撥液性の下刷り印刷を施さず、オーバーコートとしてのOP二スにオーバーコートニス1、オーバーコートニス2にそれぞれ変更した以外は、すべて実施例1と同様に行った。
以上の評価結果を表3に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
表3に示した結果から明らかなように、実施例においては、形成されて白地は図柄印刷部分では図柄を隠蔽することが少なく、むしろ鮮やかに見える。図柄印刷がない部分では、特に、金属光沢調の基材の金属層表面の20°光沢度が高いほど、より白色度の向上効果が大きく、図柄印刷部分とのコントラストに優れる。
比較例においては、図柄印刷部分の鮮やかさに劣ったり、白色度の向上が劣る。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の金属光沢調の基材への白地印刷物は、金属光沢調の視覚効果を有しながら、白地をオフセット印刷機の一工程で表現できる印刷物として利用できる。更に、パッケージング等の包装材料のほか、カタログ、ポスター等の金属光沢調の視覚効果が望まれる印刷物全般に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の印刷物の実施例1の形態の模式図を示す。
【符号の説明】
【0038】
1:オーバーコートOPニス
2:白色顔料含有撥液性下刷り層
3:印刷層
4:アルミニウム蒸着層
5:フィルム
6:接着剤
7:原紙
N:オーバープリントニス層
P:図柄印刷層
B:金属光沢調基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属光沢調の基材の上に、図柄印刷層を設け、更にオーバープリントニス層を設けてなる印刷物において、
該金属光沢調の基材の金属層表面の20°光沢度が25%以上であり、かつ金属層表面のハンターLab表色系におけるa*値が−5〜5、b*値が−5〜5であり、
該オーバープリントニス層に白色顔料を含有し、かつオーバープリントニス層の十点平均粗さRzが5〜35μmであることを特徴とする印刷物。
【請求項2】
該オーバープリントニス層が、オフセット印刷による撥液性の下刷り層とオーバーコートするOPニスからなり、更に前記撥液性の下刷り層および/またはオーバーコートするOPニスに白色顔料を含有し、撥液性の下刷り層を設けた後にオーバーコートするOPニスを塗布または印刷することにより、該オーバーコートするOPニスが撥液性の下刷り印刷層にはじかれて白地を形成することを特徴とする請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
該オーバープリントニス層に含有される白色顔料の平均粒子径が0.1以上、2.0μm未満で、且つ2μm以下の含有量が90〜100質量%あり、且つ含有される白色顔料の含有量が対オーバープリントニス2〜30質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷物。
【請求項4】
前記図柄印刷層及び下刷り印刷層とオーバープリントニス層が紫外線硬化型インキであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印刷物。
【請求項5】
金属光沢調の基材の上にオフセット印刷によりベタまたは図柄印刷層を設ける工程、該印刷層または無印刷の基材の表面上に部分的または全面にオフセット印刷により撥液性の下刷り印刷層を設ける工程、前記下刷り印刷層の上に紫外線硬化型オーバープリントニス層を設ける工程、該紫外線硬化型オーバープリントニス層を設けた直後に紫外線照射により硬化させる工程を、オフセット印刷機による一工程で設けることを特徴とする印刷物とその製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−188847(P2008−188847A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24952(P2007−24952)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【出願人】(500104059)王子パッケージング株式会社 (21)
【Fターム(参考)】