説明

金属加工油組成物

【課題】過酷度の高い金属加工においても凝着防止性能および冷却性能に優れ、かつ作業環境への悪影響が少ない金属加工油組成物を提供すること。
【解決手段】鉱油、油脂および合成油からなる群から選ばれる1種以上を基油とし、(A1)数平均分子量が100以上1000以下である水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、(A2)前記(A1)のハイドロカルビルエーテルまたはエステル、(A3)数平均分子量が100以上1000以下のポリアルキレングリコール、(A4)前記(A3)のハイドロカルビルエーテルまたはエステル、(A5)炭素数2〜20の2価アルコール、(A6)前記(A5)のハイドロカルビルエーテルまたはエステル、(A7)炭素数3〜20の3価アルコール、および(A8)前記(A7)のハイドロカルビルエーテルまたはエステルからなる群から選ばれる1種以上の含酸素化合物を0.005〜10質量%、および水を10〜99質量%含有する金属加工油組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄、ニッケル、クロム、銅、亜鉛、チタン等の遷移金属やアルミニウムの金属加工に用いる潤滑油組成物に関するものである。本発明で言う「遷移金属」には、遷移金属を含有する合金(ステンレス、黄銅等)も含まれ、またアルミニウムにはアルミニウムを主成分とする合金も含まれるものとする。また適用しうる加工方法としては、圧延、絞り、しごき、引き抜き、プレス、切削および研削等の金属加工を挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
金属の塑性加工ではその過酷度が高くなるほど材料が凝着しやすくなり、工具表面に対して材料成分が堆積し、これが著しくなると加工性を損なう事態となる。プレス成型を例にとると、一回の加工ごとに工具の表面を磨くか新たな工具を使用するような場合と、同一の工具で連続的に加工を行う場合がある。後者の場合は前述したような材料の堆積が工具表面に起こり、その度合いが工具の寿命に影響する。
このような工具表面上への材料の堆積を防止するためには、材料の凝着を防止する必要があり、そのためには硫黄系、リン系等の極圧剤やエステル、脂肪酸等の油性剤の添加が考えられる(例えば、特許文献1〜3参照。)。しかし、上記極圧剤の添加は臭気の原因となり、特に過酷な加工条件下において潤滑部位の温度が高くなる場合は作業環境を悪化させることとなる。また、一般的に加工後には油剤の除去工程が存在するため、上記極圧剤や油性剤の使用量は可能な限り少ないことが望ましい。また、過酷な加工条件になると潤滑部位の発熱が著しいものとなり凝着を促進するばかりか、発火の危険性が増大し生産にとっては大きな問題となる。
【特許文献1】特開2003−165994号公報
【特許文献2】特開2005−272818号公報
【特許文献3】特開平8−253789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、以上のような事情に鑑み、過酷度の高い金属加工においても凝着防止性能および冷却性能に優れ、かつ作業環境への悪影響が少ない金属加工油組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、鉱油等の基油に特定の含酸素化合物および水を配合した油剤を用いることにより、過酷度の高い条件下での金属加工における凝着を防止することができ、また冷却性能に優れ、さらに作業環境への悪影響が少ないことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の金属加工油組成物は、鉱油、油脂および合成油からなる群から選ばれる1種以上を基油とし、(A1)数平均分子量が100以上1000以下である水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、(A2)前記(A1)のハイドロカルビルエーテルまたはエステル、(A3)数平均分子量が100以上1000以下のポリアルキレングリコール、(A4)前記(A3)のハイドロカルビルエーテルまたはエステル、(A5)炭素数2〜20の2価アルコール、(A6)前記(A5)のハイドロカルビルエーテルまたはエステル、(A7)炭素数3〜20の3価アルコール、および(A8)前記(A7)のハイドロカルビルエーテルまたはエステルからなる群から選ばれる1種以上の含酸素化合物を0.005〜10質量%、および水を10〜99質量%含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の金属加工油組成物は、過酷な加工条件における材料の凝着を防止し、優れた冷却性能を有するとともに、発火の危険性が低く、臭気等作業環境の悪化をもたらさないという優れた特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について詳述する。
本発明の金属加工油組成物に使用する基油としては、鉱油、油脂または合成油のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物であってもよい。
【0007】
本発明で使用可能な鉱油を例示すれば、例えば、パラフィン系またはナフテン系の原油の蒸留により得られる灯油留分;灯油留分からの抽出操作等により得られるノルマルパラフィン;およびパラフィン系またはナフテン系の原油の蒸留により得られる潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、および白土処理等の精製処理を一つ以上適宜組み合わせて精製したもの等が挙げられる。
【0008】
鉱油中の芳香族分は特に制限されないが、作業環境を重視するのであれば、好ましくは25容量%以下、より好ましくは15容量%以下、さらにより好ましくは10容量%以下、一層好ましくは8容量%以下、より一層好ましくは5容量%以下、さらにより一層好ましくは2容量%以下、最も好ましくは1容量%以下であることが望ましい。ここで、芳香族分とは、JIS K 2536「石油製品−炭化水素タイプ試験」の蛍光指示薬吸着法に準拠して測定された値を意味する。
【0009】
ナフテン分についても特に制限はないが、10容量%以上であることが好ましく、より好ましくは15容量%以上、更に好ましくは20容量%以上、更により好ましくは25容量%以上、最も好ましくは30容量%以上である。ナフテン分を10容量%以上とすることにより、加工性が良好となる。一方、ナフテン分は90容量%以下であることが好ましく、より好ましくは80容量%以下、更に好ましくは75容量%以下、最も好ましくは70容量%以下である。ナフテン分を90容量%以下とすることにより、油剤の揮発を防止することができる。
【0010】
また、鉱油中のパラフィン分は5容量%以上であることが好ましく、より好ましくは10容量%以上、更に好ましくは20容量%以上である。パラフィン分を5容量%以上とすることにより、油剤の臭気を防止することができる。一方、パラフィン分は90容量%以下であることが好ましく、より好ましくは80容量%以下、更に好ましくは70容量%以下である。パラフィン分を90容量%以下とすることにより、加工時における凝着発生防止効果を向上させることができる。
【0011】
本発明においてナフテン分、パラフィン分とは、FIイオン化(ガラスリザーバ使用)による質量分析法により得られた分子イオン強度をもって、これらの割合を決定するものである。以下にその測定法を具体的に示す。
【0012】
(1)径18mm、長さ980mmの溶出クロマト用吸着管に、約175℃、3時間の乾燥により活性化された呼び径74〜149μmシリカゲル(富士シリシア化学(株)製grade923)120gを充填する。
(2)n−ペンタン75mlを注入し、シリカゲルを予め湿す。
(3)試料約2gを精秤し、等容量のn−ペンタンで希釈し、得られた試料溶液を注入する。
(4)試料溶液の液面がシリカゲル上端に達したとき、飽和炭化水素成分を分離するためにn−ペンタン140mlを注入し、吸着管の下端より溶出液を回収する。
(5)溶出液をロータリーエバポレーターにかけて溶媒を留去し、飽和炭化水素成分を得る。
(6)飽和炭化水素成分を質量分析計でタイプ分析を行う。質量分析におけるイオン化方法としては、ガラスリザーバを使用したFIイオン化法が用いられ、質量分析計は日本電子(株)製JMS−AX505Hを使用する。
【0013】
測定条件を以下に示す。
加速電圧:3.0kV、カソード電圧:−5〜−6kV、分解能:約500、エミッター:カーボン、エミッター電流:5mA、測定範囲:質量数35〜700、補助オーブン温度:300℃、セパレータ温度:300℃、主要オーブン温度:350℃、試料注入量:1μl
【0014】
質量分析法によって得られた分子イオンは、同位体補正後、その質量数からパラフィン類(C2n+2)とナフテン類(C2n、C2n−2、C2n−4・・・)の2タイプに分類・整理し、それぞれのイオン強度の分率を求め、飽和炭化水素成分全体に対する各タイプの含有量を定める。次いで、飽和炭化水素成分の含有量をもとに、試料全体に対するパラフィン分、ナフテン分の各含有量を求める。
【0015】
なお、FI法質量分析のタイプ分析法によるデータ処理の詳細は、「日石レビュー」第33巻第4号135〜142頁の特に「2.2.3データ処理」の項に記載されている。
【0016】
また、鉱油の初留点は150℃以上であることが好ましく、より好ましくは155℃以上、更に好ましくは160℃以上である。鉱油の初留点を150℃以上とすることにより、室温での油剤の揮発を十分に防止することができる。一方、鉱油の終点は350℃以下であることが好ましく、より好ましくは340℃以下、更に好ましくは330℃以下である。また、鉱油の初留点と終点の温度差は100℃以下であることが好ましく、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である。かかる温度差を100℃以下とすることにより、油剤の揮発を防止することができる。ここで、初留点および終点とは、JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」に準拠して測定された値を意味する。
【0017】
本発明で使用可能な油脂としては、牛脂、豚脂、大豆油、菜種油、米ぬか油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、これらの水素添加物あるいはこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0018】
本発明で使用可能な合成油としては、例えば、ポリオレフィン(エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、およびこれらの水素化物等)、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、モノエステル(ブチルステアレート、オクチルラウレート等)、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセパケート等)、ポリエステル(トリメリット酸エステル等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、リン酸エステル(トリクレジルホスフェート等)、含フッ素化合物(ペルフルオロポリエーテル、フッ素化ポリオレフィン等)、シリコーン油等を挙げることができる。
【0019】
本発明の金属加工油組成物は、鉱油、油脂および合成油からなる群から選ばれる1種以上を基油とし、(A1)数平均分子量が100以上1000以下である水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、(A2)前記(A1)のハイドロカルビルエーテルまたはエステル、(A3)数平均分子量が100以上1000以下のポリアルキレングリコール、(A4)前記(A3)のハイドロカルビルエーテルまたはエステル、(A5)炭素数2〜20の2価アルコール、(A6)前記(A5)のハイドロカルビルエーテルまたはエステル、(A7)炭素数3〜20の3価アルコール、および(A8)前記(A7)のハイドロカルビルエーテルまたはエステルからなる群から選ばれる1種以上の含酸素化合物を0.005〜10質量%、および水を10〜99質量%含有するものである。
【0020】
上記(A1)成分を構成する多価アルコールは、水酸基を3〜6個有する。このような多価アルコールとしては、具体的には例えば、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜4量体、例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)およびこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトラオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール、イジリトール、タリトール、ズルシトール、アリトール等の多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース等の糖類を挙げることができるが、この中でも加工性に優れる点からグリセリン、トリメチロールアルカン、ソルビトール等が好ましい。
【0021】
また、(A1)成分を構成するアルキレンオキシドとしては、炭素数2〜6、好ましくは2〜4のものが用いられる。炭素数2〜6のアルキレンオキシドとしては、具体的には例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン(α−ブチレンオキシド)、2,3−エポキシブタン(β−ブチレンオキシド)、1,2−エポキシ−1−メチルプロパン、1,2−エポキシヘプタンおよび1,2−エポキシヘキサンが挙げられるが、この中でも加工性に優れる点からエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が好ましく、エチレンオキシド、プロピレンオキシドがより好ましい。
なお、2種以上のアルキレンオキシドを用いた場合、オキシアルキレン基の重合形式に特に制限はなく、ランダム共重合していても、ブロック共重合していても良い。また、水酸基を3〜6個有する多価アルコールにアルキレンオキシドを付加させる際は、全ての水酸基に付加させてもよいし、一部の水酸基のみに付加させてもよいが、加工性に優れる点から全ての水酸基に付加させた付加物が好ましい。
【0022】
さらに、本発明で用いる(A1)成分としては数平均分子量が100以上1000以下であることが必要であり、好ましくは100以上800以下である。数平均分子量が100未満の付加物は、基油に対する溶解性が低下し好ましくない。また、数平均分子量が1000を超える付加物は、加工後の焼鈍時に被加工材表面に残ってステインを生じる恐れがあり好ましくない。
なお、本発明で用いる(A1)成分としては、水酸基を3〜6個有する多価アルコールにアルキレンオキシドを付加させる際に数平均分子量が100以上1000以下となるように反応させたものを用いても良いし、任意の方法で得られる水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物の混合物や市販されている水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物の混合物を、蒸留やクロマトによって、数平均分子量が100以上1000以下となるように分離したものを用いても良い。
(A1)成分としては、これら化合物をそれぞれ単独で用いても、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0023】
本発明に係る(A2)成分は、数平均分子量が100以上1000以下、好ましくは100以上800以下である、水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物を、ハイドロカルビルエーテル化またはエステル化させたものである。
(A2)成分としては、(A1)成分のアルキレンオキシド付加物の末端水酸基の一部または全てを、ハイドロカルビルエーテル化またはエステル化させたものが使用できる。ここで言うハイドロカルビルとは、炭素数1〜24の炭化水素基を表す。
【0024】
炭素数1〜24の炭化水素基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖または分岐のペンチル基、直鎖または分岐のヘキシル基、直鎖または分岐のヘプチル基、直鎖または分岐のオクチル基、直鎖または分岐のノニル基、直鎖または分岐のデシル基、直鎖または分岐のウンデシル基、直鎖または分岐のドデシル基、直鎖または分岐のトリデシル基、直鎖または分岐のテトラデシル基、直鎖または分岐のペンタデシル基、直鎖または分岐のヘキサデシル基、直鎖または分岐のヘプタデシル基、直鎖または分岐のオクタデシル基、直鎖または分岐のノナデシル基、直鎖または分岐のイコシル基、直鎖または分岐のヘンイコシル基、直鎖または分岐のドコシル基、直鎖または分岐のトリコシル基、直鎖または分岐のテトラコシル基等の炭素数1〜24のアルキル基;ビニル基、直鎖または分岐のプロペニル基、直鎖または分岐のブテニル基、直鎖または分岐のペンテニル基、直鎖または分岐のヘキセニル基、直鎖または分岐のヘプテニル基、直鎖または分岐のオクテニル基、直鎖または分岐のノネニル基、直鎖または分岐のデセニル基、直鎖または分岐のウンデセニル基、直鎖または分岐のドデセニル基、直鎖または分岐のトリデセニル基、直鎖または分岐のテトラデセニル基、直鎖または分岐のペンタデセニル基、直鎖または分岐のヘキサデセニル基、直鎖または分岐のヘプタデセニル基、直鎖または分岐のオクタデセニル基、直鎖または分岐のノナデセニル基、直鎖または分岐のイコセニル基、直鎖または分岐のヘンイコセニル基、直鎖または分岐のドコセニル基、直鎖または分岐のトリコセニル基、直鎖または分岐のテトラコセニル基等の炭素数2〜24のアルケニル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基;メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む)、メチルエチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む)、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む)、メチルエチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む)、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む)、メチルエチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む)等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基;トリル基(全ての構造異性体を含む)、キシリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分岐のプロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分岐のブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分岐のペンチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分岐のヘキシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分岐のヘプチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分岐のオクチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分岐のノニルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分岐のデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分岐のウンデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分岐のドデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)等の炭素数7〜18のアルキルアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基(プロピル基の異性体を含む)、フェニルブチル基(ブチル基の異性体を含む)、フェニルペンチル基(ペンチル基の異性体を含む)、フェニルヘキシル基(ヘキシル基の異性体を含む)等の炭素数7〜12のアリールアルキル基が挙げられる。この中でも、加工性に優れる点から、炭素数2〜18の直鎖または分岐のアルキル基および炭素数2〜18の直鎖または分岐のアルケニル基が好ましく、炭素数3〜12の直鎖または分岐のアルキル基およびオレイル基(オレイルアルコールから水酸基を除いた残基)がより好ましい。
【0025】
エステル化に用いる酸としては、通常、カルボン酸が挙げられる。このカルボン酸としては、一塩基酸でも多塩基酸でも良いが、通常、一塩基酸が用いられる。
一塩基酸としては、炭素数6〜24の脂肪酸で、直鎖のものでも分岐のものでも良く、また飽和のものでも不飽和のものでも良い。具体的には例えば、直鎖状または分岐状のヘキサン酸、直鎖状または分岐状のオクタン酸、直鎖状または分岐状のノナン酸、直鎖状または分岐状のデカン酸、直鎖状または分岐状のウンデカン酸、直鎖状または分岐状のドデカン酸、直鎖状または分岐状のトリデカン酸、直鎖状または分岐状のテトラデカン酸、直鎖状または分岐状のペンタデカン酸、直鎖状または分岐状のヘキサデカン酸、直鎖状または分岐状のオクタデカン酸、直鎖状または分岐状のヒドロキシオクタデカン酸、直鎖状または分岐状のノナデカン酸、直鎖状または分岐状のエイコサン酸、直鎖状または分岐状のヘンエイコサン酸、直鎖状または分岐状のドコサン酸、直鎖状または分岐状のトリコサン酸、直鎖状または分岐状のテトラコサン酸等の飽和脂肪酸;直鎖状または分岐状のヘキセン酸、直鎖状または分岐状のヘプテン酸、直鎖状または分岐状のオクテン酸、直鎖状または分岐状のノネン酸、直鎖状または分岐状のデセン酸、直鎖状または分岐状のウンデセン酸、直鎖状または分岐状のドデセン酸、直鎖状または分岐状のトリデセン酸、直鎖状または分岐状のテトラデセン酸、直鎖状または分岐状のペンタデセン酸、直鎖状または分岐状のヘキサデセン酸、直鎖状または分岐状のオクタデセン酸、直鎖状または分岐状のヒドロキシオクタデセン酸、直鎖状または分岐状のノナデセン酸、直鎖状または分岐状のエイコセン酸、直鎖状または分岐状のヘンエイコセン酸、直鎖状または分岐状のドコセン酸、直鎖状または分岐状のトリコセン酸、直鎖状または分岐状のテトラコセン酸等の不飽和脂肪酸、およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、特に炭素数8〜20の飽和脂肪酸、または炭素数8〜20の不飽和脂肪酸、およびこれらの混合物が好ましい。
(A2)成分としては、これら化合物をそれぞれ単独で用いても、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0026】
(A3)成分は、数平均分子量が100以上1000以下のポリアルキレングリコールであり、炭素数2〜6、好ましくは2〜4のアルキレンオキシドを単独重合あるいは共重合したものが用いられる。炭素数2〜6のアルキレンオキシドとしては、具体的には例えば、(A1)成分を構成するアルキレンオキシドとして列挙したものが挙げられる。この中でも、加工性および光沢ムラ防止効果に優れる点から、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が好ましく、エチレンオキシド、プロピレンオキシドがより好ましい。
なお、ポリアルキレングリコールの調製に2種以上のアルキレンオキシドを用いた場合、オキシアルキレン基の重合形式に特に制限はなく、ランダム共重合していても、ブロック共重合していても良い。
【0027】
さらに、(A3)成分としては数平均分子量が100以上1000以下であることが必要であり、好ましくは120以上700以下である。数平均分子量が100未満のポリアルキレングリコールは、基油への溶解性が低下し好ましくない。また、数平均分子量が1000を超えるポリアルキレングリコールは、加工後の焼鈍時に被加工材表面に残ってステインを生じる恐れがあり好ましくない。
なお、(A3)成分としては、アルキレンオキシドを重合させる際に数平均分子量が100以上1000以下となるように反応させたものを用いても良いし、任意の方法で得られるポリアルキレングリコール混合物や市販されているポリアルキレングリコール混合物を、蒸留やクロマトによって、数平均分子量が100以上1000以下となるように分離したものを用いても良い。
(A3)成分としては、これら化合物をそれぞれ単独で用いても、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0028】
(A4)成分は、数平均分子量が100以上1000以下、好ましくは120以上700以下のポリアルキレングリコールを、ハイドロカルビルエーテル化またはエステル化させたものである。
(A4)成分としては、(A3)成分のポリアルキレングリコールの末端水酸基の一部または全てを、ハイドロカルビルエーテル化またはエステル化させたものが使用できる。ここでいうハイドロカルビルとは、炭素数1〜24の炭化水素基を表し、具体的には例えば(A2)の説明において列挙した各基が挙げられる。この中でも、加工性に優れる点から、炭素数2〜18の直鎖または分岐のアルキル基および炭素数2〜18の直鎖または分岐のアルケニル基が好ましく、炭素数3〜12の直鎖または分岐のアルキル基およびオレイル基(オレイルアルコールから水酸基を除いた残基)がより好ましい。
また、(A4)成分としては、(A3)成分のポリアルキレングリコールの末端水酸基をエステル化させたものも使用できる。エステル化に用いる酸としては、通常、カルボン酸が挙げられる。このカルボン酸としては、一塩基酸でも多塩基酸でも良いが、通常、一塩基酸が用いられ、具体的には例えば(A2)成分の説明において列挙したものが挙げられる。
(A4)成分としては、これら化合物をそれぞれ単独で用いても、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0029】
(A5)成分は、炭素数2〜20、好ましくは炭素数3〜18の2価アルコールであるが、ここでいう2価アルコールとは分子中にエーテル結合を有さないものをいう。このような炭素数2〜20の2価アルコールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,2−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,2−ノナンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,2−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,2−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,2−テトラデカンジオール、1,15−ヘプタデカンジオール、1,2−ヘプタデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,2−ヘキサデカンジオール、1,17−ヘプタデカンジオール、1,2−ヘプタデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,2−オクタデカンジオール、1,19−ノナデカンジオール、1,2−ノナデカンジオール、1,20−イコサデカンジオール、1,2−イコサデカンジオール等が好ましい。(A5)成分としては、これら化合物をそれぞれ単独で用いても、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0030】
(A6)成分は、炭素数2〜20、好ましくは炭素数3〜18の2価アルコール(ただし、分子中にエーテル結合を有するものを除く)を、ハイドロカルビルエーテル化させたものまたはエステル化させたものである。(A6)成分としては、(A5)成分の2価アルコールの末端水酸基の一部または全てを、ハイドロカルビルエーテル化させたものが使用できる。ここでいうハイドロカルビルとは、炭素数1〜24の炭化水素基を表し、具体的には例えば(A2)成分の説明において列挙した各基が挙げられる。この中でも、加工性に優れる点から、炭素数2〜18の直鎖または分岐のアルキル基および炭素数2〜18の直鎖または分岐のアルケニル基が好ましく、炭素数3〜12の直鎖または分岐のアルキル基およびオレイル基(オレイルアルコールから水酸基を除いた残基)がより好ましい。
また、(A6)成分としては、(A5)成分の2価アルコールの末端の水酸基の一方または両方を、エステル化させたものも使用できる。エステル化に用いる酸としては、通常、カルボン酸が挙げられる。このカルボン酸としては、一塩基酸でも多塩基酸でも良いが、通常、一塩基酸が用いられ、具体的には例えば(A2)成分の説明において列挙したものが挙げられる。なお、(A6)成分のエステルは、(A5)成分の2価アルコールの末端の水酸基の一方をエステル化したもの(部分エステル)であっても良く、両方をエステル化したもの(完全エステル)であっても良いが、加工性に優れることから、部分エステルであることが好ましい。
(A6)成分としては、これら化合物をそれぞれ単独で用いても、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0031】
(A7)成分は、炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜18の3価アルコールであるが、ここでいう3価アルコールとは分子中にエーテル結合を有さないものをいう。このような炭素数3〜20の3価アルコールとしては、具体的には例えば、グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ヘキサントリオール、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3,4−ヘキサントリオール、1,3,5−ヘキサントリオール、1,3,6−ヘキサントリオール、1,4,5−ヘキサントリオール、1,2,7―ヘプタントリオール、1,2,8−オクタントリオール、1,2,9−ノナントリオール、1,2,10−デカントリオール、1,2,11−ウンデカントリオール、1,2,12−ドデカントリオール、1,2,13−トリデカントリオール、1,2,14−テトラデカントリオール、1,2,15−ペンタデカントリオール、1,2,16−ヘキサデカントリオール、1,2,17−ヘプタデカントリオール、1,2,18−オクタデカントリオール、1,2,19−ノナデカントリオール、1,2,20−イコサントリオール等が挙げられる。この中でも、加工性に優れる点から、1,2,12−ドデカントリオール、1,2,13−トリデカントリオール、1,2,14−テトラデカントリオール、1,2,15−ペンタデカントリオール、1,2,16−ヘキサデカントリオール、1,2,17−ヘプタデカントリオール、1,2,18−オクタデカントリオールが好ましい。(A7)成分としては、これら化合物をそれぞれ単独で用いても、また2種以上の混合物として用いてもよい。
【0032】
(A8)成分は、炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜18の3価アルコール(ただし、分子中にエーテル結合を有するものを除く)を、ハイドロカルビルエーテル化させたものまたはエステル化させたものである。(A8)成分としては、(A7)成分の3価アルコールの末端水酸基の一部または全てを、ハイドロカルビルエーテル化させたものが使用できる。ここでいうハイドロカルビルとは、炭素数1〜24の炭化水素基を表し、具体的には例えば(A2)成分の説明において列挙した各基が挙げられる。この中でも、加工性に優れる点から、炭素数2〜18の直鎖または分岐のアルキル基および炭素数2〜18の直鎖または分岐のアルケニル基が好ましく、炭素数3〜12の直鎖または分岐のアルキル基およびオレイル基(オレイルアルコールから水酸基を除いた残基)がより好ましい。
【0033】
また、(A8)成分としては、(A7)成分の3価アルコールの末端の水酸基の一部又は全部を、エステル化させたものが使用できる。エステル化に用いる酸としては、通常、カルボン酸が挙げられる。カルボン酸としては、一塩基酸でも多塩基酸でも良いが、通常、一塩基酸が用いられ、具体的には例えば、(A2)成分の説明において列挙したものが挙げられる。なお、(A8)成分のエステルは、(A7)成分の3価アルコールの末端の水酸基の一つまたは二つをエステル化したもの(部分エステル)であっても良く、全てをエステル化したもの(完全エステル)であっても良いが、加工性に優れることから、部分エステルであることが好ましい。(A8)成分としては、(A7)成分のうち、グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ヘキサントリオール、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3,4−ヘキサントリオール、1,3,5−ヘキサントリオール、1,3,6−ヘキサントリオールまたは1,4,5−ヘキサントリオールのハイドロカルビルエーテルまたは部分エステルが好ましい。(A8)成分としては、これら化合物をそれぞれ単独で用いても、また2種以上の混合物として用いてもよい。
【0034】
本発明において、前記(A1)、(A2)、(A3)、(A4)、(A5)、(A6)、(A7)および(A8)成分の中から選ばれる1種の含酸素化合物を単独で用いても良いし、異なる構造を有する2種以上の含酸素化合物の混合物を用いても良い。上記した(A1)〜(A8)成分の中でも、より加工性に優れる点から、(A3)成分、(A4)成分、(A5)成分および(A8)成分が好ましく、(A3)成分、(A4)成分および(A8)成分がより好ましい。
【0035】
本発明において、含酸素化合物の含有量(合計量)は、水を含む金属加工油組成物全量基準で、上限値は10質量%以下であり、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。一方、下限値は0.005質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.03質量%以上である。10質量%を越える含酸素化合物は、基油への溶解性が低下したり、金属加工油としての性能に悪影響を及ぼす可能性があり好ましくない。また、0.005質量%に満たない含酸素化合物では加工性が悪化し好ましくない。
【0036】
本発明の金属加工油組成物は、水を組成物全量基準で10〜99質量%、好ましくは13〜97質量%、より好ましくは15〜95質量%、最も好ましくは40〜80質量%の範囲で含有する。水の使用量が少なすぎると冷却性が不足し、多すぎると凝着防止性が不足する。使用する水は、水道水、工業用水、イオン交換水、蒸留水等が使用可能であって、その水は硬水であるか軟水であるかを問わない。本発明の金属加工油組成物は、水を連続層とし、これに油成分が微細に分散しエマルションを形成した乳化状態、水が油成分に溶解している可溶化状態、もしくは強攪拌により水と油剤を混合した懸濁状態のいずれの形態をもとりうる。エマルション型の場合、水を連続相とし、これに油成分が微細に分散した状態のエマルションとなるが、水に分散する油滴の平均粒径は300nm以下、特に100nm以下であることが好ましい。分散油滴の平均粒径が大きいと、エマルションの安定性が低下しやすくなったり、オイルピットが生成し易くなって加工製品の表面光沢が損なわれるばかりでなく、金属加工油剤の清浄化に微細なフィルターを使用できなくなるからである。
【0037】
本発明の金属加工油組成物は油性剤を含有してもよい。本発明で使用される油性剤としては、通常潤滑油の油性剤として用いられているものが含まれる。しかしながら、より加工性を向上させるために下記の中から選ばれる少なくとも1種の油性剤を使用することが好ましい。
(1)エステル
(2)1価アルコール
(3)カルボン酸
【0038】
上記(1)エステルとしては、構成するアルコールが1価アルコールでも多価アルコールでも良く、またカルボン酸が一塩基酸でも多塩基酸であっても良い。
【0039】
1価アルコールとしては、通常炭素数1〜24のものが用いられ、このようなアルコールとしては直鎖のものでも分岐のものでもよい。炭素数1〜24のアルコールとしては、具体的には例えば、メタノール、エタノール、直鎖状または分岐状のプロパノール、直鎖状または分岐状のブタノール、直鎖状または分岐状のオクタノール、直鎖状または分岐状のノナノール、直鎖状または分岐状のデカノール、直鎖状または分岐状のウンデカノール、直鎖状または分岐状のドデカノール、直鎖状または分岐状のトリデカノール、直鎖状または分岐状のテトラデカノール、直鎖状または分岐状のペンタデカノール、直鎖状または分岐状のヘキサデカノール、直鎖状または分岐状のヘプタデカノール、直鎖状または分岐状のオクタデカノール、直鎖状または分岐状のノナデカノール、直鎖状または分岐状のエイコサノール、直鎖状または分岐状のヘンエイコサノール、直鎖状または分岐状のトリコサノール、直鎖状または分岐状のテトラコサノールおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0040】
多価アルコールとしては、通常2〜10価、好ましくは2〜6価のものが用いられる。多価アルコールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜15量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜15量体)、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜8量体、例えばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)およびこれらの2〜8量体、ペンタエリスリトールおよびこれらの2〜4量体、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、スクロース等の糖類、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0041】
これらの中でも特に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜10量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜10量体)、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)およびこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の2〜6価の多価アルコールおよびこれらの混合物等がより好ましい。さらに好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、およびこれらの混合物等である。
【0042】
本発明に係るエステル油性剤を構成する一塩基酸としては、通常炭素数6〜24の脂肪酸で、直鎖のものでも分岐のものでも良く、また飽和のものでも不飽和のものでも良い。具体的には例えば、直鎖状または分岐状のヘキサン酸、直鎖状または分岐状のオクタン酸、直鎖状または分岐状のノナン酸、直鎖状または分岐状のデカン酸、直鎖状または分岐状のウンデカン酸、直鎖状または分岐状のドデカン酸、直鎖状または分岐状のトリデカン酸、直鎖状または分岐状のテトラデカン酸、直鎖状または分岐状のペンタデカン酸、直鎖状または分岐状のヘキサデカン酸、直鎖状または分岐状のオクタデカン酸、直鎖状または分岐状のヒドロキシオクタデカン酸、直鎖状または分岐状のノナデカン酸、直鎖状または分岐状のエイコサン酸、直鎖状または分岐状のヘンエイコサン酸、直鎖状または分岐状のドコサン酸、直鎖状または分岐状のトリコサン酸、直鎖状または分岐状のテトラコサン酸等の飽和脂肪酸;直鎖状または分岐状のヘキセン酸、直鎖状または分岐状のヘプテン酸、直鎖状または分岐状のオクテン酸、直鎖状または分岐状のノネン酸、直鎖状または分岐状のデセン酸、直鎖状または分岐状のウンデセン酸、直鎖状または分岐状のドデセン酸、直鎖状または分岐状のトリデセン酸、直鎖状または分岐状のテトラデセン酸、直鎖状または分岐状のペンタデセン酸、直鎖状または分岐状のヘキサデセン酸、直鎖状または分岐状のオクタデセン酸、直鎖状または分岐状のヒドロキシオクタデセン酸、直鎖状または分岐状のノナデセン酸、直鎖状または分岐状のエイコセン酸、直鎖状または分岐状のヘンエイコセン酸、直鎖状または分岐状のドコセン酸、直鎖状または分岐状のトリコセン酸、直鎖状または分岐状のテトラコセン酸等の不飽和脂肪酸、およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、特に炭素数8〜20の飽和脂肪酸、炭素数8〜20の不飽和脂肪酸、およびこれらの混合物が好ましい。
【0043】
エステル油性剤を構成する多塩基酸としては、炭素数2〜16の二塩基酸およびトリメリト酸等が挙げられる。炭素数2〜16の二塩基酸としては、直鎖のものでも分岐のものでも良く、また飽和のものでも不飽和のものでも良い。具体的には例えば、エタン二酸、プロパン二酸、直鎖状または分岐状のブタン二酸、直鎖状または分岐状のペンタン二酸、直鎖状または分岐状のヘキサン二酸、直鎖状または分岐状のオクタン二酸、直鎖状または分岐状のノナン二酸、直鎖状または分岐状のデカン二酸、直鎖状または分岐状のウンデカン二酸、直鎖状または分岐状のドデカン二酸、直鎖状または分岐状のトリデカン二酸、直鎖状または分岐状のテトラデカン二酸、直鎖状または分岐状のヘプタデカン二酸、直鎖状または分岐状のヘキサデカン二酸;直鎖状または分岐状のヘキセン二酸、直鎖状または分岐状のオクテン二酸、直鎖状または分岐状のノネン二酸、直鎖状または分岐状のデセン二酸、直鎖状または分岐状のウンデセン二酸、直鎖状または分岐状のドデセン二酸、直鎖状または分岐状のトリデセン二酸、直鎖状または分岐状のテトラデセン二酸、直鎖状または分岐状のヘプタデセン二酸、直鎖状または分岐状のヘキサデセン二酸;およびこれらの混合物が挙げられる。
【0044】
また、エステル油性剤としては、
(1a)一価アルコールと一塩基酸のエステル
(1b)多価アルコールと一塩基酸のエステル
(1c)一価アルコールと多塩基酸のエステル
(1d)多価アルコールと多塩基酸のエステル
(1e)一価アルコール、多価アルコールの混合物と多塩基酸との混合エステル
(1f)多価アルコールと一塩基酸、多塩基酸の混合物との混合エステル
(1g)一価アルコール、多価アルコールの混合物と一塩基酸、多塩基酸の混合物との
混合エステル
等、任意のアルコールとカルボン酸の組み合わせによるエステルが使用可能であり、特に限定されるものではない。
【0045】
なお、アルコール成分として多価アルコールを用いた場合、多価アルコール中の水酸基全てがエステル化された完全エステルを示す。また、カルボン酸成分として多塩基酸を用いた場合、多塩基酸中のカルボキシル基全てがエステル化された完全エステルでも良く、カルボキシル基の一部がエステル化されずカルボキシル基のままで残っている部分エステルであっても良い。
【0046】
本発明で用いられるエステルとしては、上記した何れのものも使用可能であるが、この中でもより加工性に優れる点から、(1a)一価アルコールと一塩基酸のエステルまたは(1c)一価アルコールと多塩基酸のエステルが好ましく、(1a)一価アルコールと一塩基酸のエステルがより好ましく、(1a)一価アルコールと一塩基酸のエステルと(1c)一価アルコールと多塩基酸のエステルを併用することが最も好ましい。
【0047】
本発明において油性剤として用いられる(1a)一価アルコールと一塩基酸のエステルの合計炭素数には特に制限はないが、合計炭素数の下限値が7以上のエステルが好ましく、9以上のエステルがより好ましく、11以上のエステルが最も好ましい。また、合計炭素数の上限値が26以下のエステルが好ましく、24以下のエステルがより好ましく、22以下のエステルが最も好ましい。前記一価アルコールの炭素数には特に制限はないが、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜6がさらにより好ましく、炭素数1〜4が最も好ましい。前記一塩基酸の炭素数には特に制限はないが、炭素数8〜22が好ましく、炭素数10〜20がより好ましく、炭素数12〜18が最も好ましい。前記合計炭素数、前記アルコールの炭素数および前記一塩基酸の炭素数を前述のように設定することが好ましいのは、上限値に関してはステインや腐食の発生を増大させる恐れが大きくなる点、冬季において流動性を失い扱いが困難になる恐れが大きくなる点および基油への溶解性が低下して析出する恐れが大きくなる点を考慮してであり、下限値に関しては、潤滑性能の点および臭気による作業環境悪化の点を考慮してである。
【0048】
本発明において油性剤として用いられる(1c)一価アルコールと多塩基酸のエステルの形態は特に制限されないが、下記式(1)で表されるジエステル、またはトリメリット酸のエステルであることが好ましい。
−O−CO(CHCO−O−R (1)
[式中、RおよびRは互いに同一または異なる基であって炭素数3〜10の炭化水素基を示し、nは4〜8を示す。]
【0049】
潤滑性能の向上効果が期待できなくなる恐れがある、臭気により作業環境が悪化する等の点から、前記式(1)においてRおよびRは炭素数3以上の炭化水素基であることが好ましい。また、ステインや腐食の発生を増大させる恐れが大きくなる、冬季において流動性を失い扱いが困難になる恐れが大きくなる、基油への溶解性が低下して析出する恐れが大きくなる等の点から、前記式(1)においてRおよびRは炭素数10以下の炭化水素基であることが好ましい。前記式(1)においてnは4〜8を示す。ステインや腐食の発生を増大させる恐れが大きくなる、冬季において流動性を失い扱いが困難になる恐れが大きくなる、基油への溶解性が低下して析出する恐れが大きくなる等の点から、nは8以下であることが好ましい。また潤滑性能の向上効果が期待できなくなる恐れがある、臭気により作業環境が悪化する等の点から、nは4以上であることが好ましい。このうち、原料の入手のしやすさ、および価格の点からn=4、6が特に好ましい。
【0050】
前記ジエステルのRおよびRとしては、アルキル基、アルケニル基、アルキルシクロアルキル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキル基等が挙げられ、特にアルキル基が好ましい。このアルキル基には直鎖アルキル基または分岐アルキル基が含まれ、直鎖アルキル基と分岐アルキル基が混在していてもよいが、分岐アルキル基が好ましい。
前記RおよびRとしては、具体的には例えば、直鎖または分岐のプロピル基、直鎖または分岐のブチル基、直鎖または分岐のペンチル基、直鎖または分岐のヘキシル基、直鎖または分岐のヘプチル基、直鎖または分岐のオクチル基、直鎖または分岐のノニル基、直鎖または分岐のデシル基等を挙げることができる。前記式(1)で表されるジエステルは任意の方法で得られるが、例えば炭素数6〜10(炭素数6から順に、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸)の直鎖飽和ジカルボン酸またはその誘導体と炭素数3〜10のアルコールとをエステル化させる方法等が例示される。トリメリット酸をエステル化する1価アルコールの炭素数は特に制限はないが、ステインや腐食の発生を増大させる恐れが大きくなる、冬季において流動性を失い扱いが困難になる恐れが大きくなる、基油への溶解性が低下して析出する恐れが大きくなる等の点から、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜6がさらに好ましく、炭素数1〜4が最も好ましい。トリメリット酸のエステルは、部分エステル(モノエステルまたはジエステル)でも完全エステル(トリエステル)でもよい。
【0051】
油性剤として用いられる上記(2)1価アルコールとしては、上記(1)エステルを構成するアルコールとして列挙した1価アルコールの化合物等が挙げられる。潤滑性能の点および臭気による作業環境悪化の点から、炭素数6以上の1価アルコールが好ましく、炭素数8以上のアルコールがより好ましく、炭素数10以上のアルコールがさらにより好ましく、炭素数12以上のアルコールが最も好ましい。また、ステインや腐食の発生を増大させる恐れが大きくなる点、冬季において流動性を失い扱いが困難になる恐れが大きくなる点および基油への溶解性が低下して析出する恐れが大きくなる点から、炭素数20以下のアルコールが好ましく、炭素数18以下のアルコールがより好ましい。
【0052】
上記(3)カルボン酸としては、1塩基酸でも多塩基酸でも良い。具体的には例えば、上記(1)エステルを構成するカルボン酸として列挙した化合物が挙げられる。これらの中でも、より加工性に優れる点から1価のカルボン酸が好ましい。また、より加工性に優れる点から、炭素数6以上のカルボン酸が好ましく、炭素数8以上のカルボン酸がより好ましく、炭素数10以上のカルボン酸が最も好ましい。また、炭素数が大き過ぎるとステインや腐食の発生を増大させる可能性が大きくなることから、炭素数20以下のカルボン酸が好ましく、炭素数18以下のカルボン酸がより好ましく、炭素数16以下のカルボン酸が最も好ましい。
【0053】
本発明の金属加工油組成物に用いる油性剤としては、上述したように上記各種油性剤の中から選ばれる1種のみを用いても良く、また2種以上の混合物を用いても良いが、潤滑性能の点から、(1)エステルおよび(2)1価アルコールが好ましく、(1)エステルがより好ましい。
【0054】
上記油性剤の合計含有量は、水を含む組成物全量基準で0.1〜70質量%であることが好ましい。加工性の点から、含有量の下限値は0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。また、含有量が多過ぎるとステインや腐食の発生を増大させる可能性がある等の点から、含有量の上限値は70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、さらにより好ましくは15質量%以下、さらにより一層好ましくは12質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。
【0055】
また、本発明の金属加工油組成物は、極圧剤を更に含有することができ、好ましい極圧剤としては、後述する硫黄化合物及びリン化合物が挙げられる。
【0056】
本発明で用いられる硫黄化合物としては、金属加工油組成物の特性を損なわない限りにおいて特に制限されないが、ジハイドロカルビルポリサルファイド、硫化エステル、硫化鉱油、ジチオリン酸亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛化合物、ジチオリン酸モリブデン化合物及びジチオカルバミン酸モリブデン化合物が好ましく用いられる。
【0057】
ジハイドロカルビルポリサルファイドとは、一般的にポリサルファイド又は硫化オレフィンと呼ばれる硫黄系化合物であり、具体的には下記一般式(2)で表される化合物を意味する。
−S−R(2)
[式(2)中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数3〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアルキルアリール基あるいは炭素数6〜20のアリールアルキル基を表し、hは2〜6、好ましくは2〜5の整数を表す。]
【0058】
上記一般式(2)中のR及びRとしては、具体的には、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖又は分岐ペンチル基、直鎖又は分岐ヘキシル基、直鎖又は分岐ヘプチル基、直鎖又は分岐オクチル基、直鎖又は分岐ノニル基、直鎖又は分岐デシル基、直鎖又は分岐ウンデシル基、直鎖又は分岐ドデシル基、直鎖又は分岐トリデシル基、直鎖又は分岐テトラデシル基、直鎖又は分岐ペンタデシル基、直鎖又は分岐ヘキサデシル基、直鎖又は分岐ヘプタデシル基、直鎖又は分岐オクタデシル基、直鎖又は分岐ノナデシル基、直鎖又は分岐イコシル基等の直鎖状又は分岐状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;トリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分岐プロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分岐ブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分岐ペンチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分岐ヘキシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分岐ヘプチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分岐オクチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分岐ノニルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分岐デシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分岐ウンデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分岐ドデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、キシリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルメチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖又は分岐)プロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖又は分岐)ブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、メチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、エチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分岐プロピルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分岐ブチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジメチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、エチルメチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖又は分岐)プロピルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖又は分岐)ブチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)等のアルキルアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基(全ての異性体を含む)、フェニルプロピル基(全ての異性体を含む)等のアリールアルキル基;等を挙げることができる。これらの中でも、一般式(2)中のR及びRとしては、プロピレン、1−ブテン又はイソブチレンから誘導された炭素数3〜18のアルキル基、又は炭素数6〜8のアリール基、アルキルアリール基あるいはアリールアルキル基であることが好ましく、これらの基としては例えば、イソプロピル基、プロピレン2量体から誘導される分岐状ヘキシル基(全ての分岐状異性体を含む)、プロピレン3量体から誘導される分岐状ノニル基(全ての分岐状異性体を含む)、プロピレン4量体から誘導される分岐状ドデシル基(全ての分岐状異性体を含む)、プロピレン5量体から誘導される分岐状ペンタデシル基(全ての分岐状異性体を含む)、プロピレン6量体から誘導される分岐状オクタデシル基(全ての分岐状異性体を含む)、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−ブテン2量体から誘導される分岐状オクチル基(全ての分岐状異性体を含む)、イソブチレン2量体から誘導される分岐状オクチル基(全ての分岐状異性体を含む)、1−ブテン3量体から誘導される分岐状ドデシル基(全ての分岐状異性体を含む)、イソブチレン3量体から誘導される分岐状ドデシル基(全ての分岐状異性体を含む)、1−ブテン4量体から誘導される分岐状ヘキサデシル基(全ての分岐状異性体を含む)、イソブチレン4量体から誘導される分岐状ヘキサデシル基(全ての分岐状異性体を含む)等のアルキル基;フェニル基、トリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、キシリル基(全ての構造異性体を含む)等のアルキルアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基(全ての異性体を含む)等のアリールアルキル基が挙げられる。
さらに、上記一般式(2)中のR及びRとしては、凝着防止性能向上の点から、別個に、エチレン又はプロピレンから誘導された炭素数3〜18の分岐状アルキル基であることがより好ましく、エチレン又はプロピレンから誘導された炭素数6〜15の分岐状アルキル基であることが特に好ましい。
【0059】
硫化エステルとしては、具体的には例えば、牛脂、豚脂、魚脂、菜種油、大豆油等の動植物油脂;不飽和脂肪酸(オレイン酸、リノール酸又は上記の動植物油脂から抽出された脂肪酸類等を含む)と各種アルコールとを反応させて得られる不飽和脂肪酸エステル;及びこれらの混合物等を任意の方法で硫化することにより得られるものが挙げられる。
【0060】
硫化鉱油とは、鉱油に単体硫黄を溶解させたものをいう。ここで、本発明にかかる硫化鉱油に用いられる鉱油としては特に制限されないが、具体的には、原油に常圧蒸留及び減圧蒸留を施して得られる潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を適宜組み合わせて精製したパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油等が挙げられる。また、単体硫黄としては、塊状、粉末状、溶融液体状等いずれの形態のものを用いてもよいが、粉末状又は溶融液体状の単体硫黄を用いると基油への溶解を効率よく行うことができるので好ましい。なお、溶融液体状の単体硫黄は液体同士を混合するので溶解作業を非常に短時間で行うことができるという利点を有しているが、単体硫黄の融点以上で取り扱わねばならず、加熱設備等の特別な装置を必要としたり、高温雰囲気下での取り扱いとなるため危険を伴う等取り扱いが必ずしも容易ではない。これに対して、粉末状の単体硫黄は、安価で取り扱いが容易であり、しかも溶解に要する時間が十分に短いので特に好ましい。また、本発明にかかる硫化鉱油における硫黄含有量に特に制限はないが、通常、硫化鉱油全量を基準として好ましくは0.05〜1.0質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0061】
ジチオリン酸亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛化合物、ジチオリン酸モリブデン化合物及びジチオカルバミン酸モリブデン化合物とは、それぞれ下記一般式(3)〜(6)で表される化合物を意味する。
【化1】

【0062】
[式(3)〜(6)中、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1以上の炭化水素基を表し、X及びXはそれぞれ酸素原子又は硫黄原子を表す。]
【0063】
ここで、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20で表される炭化水素基の具体例を例示すれば、メチル基、エチル基、プロピル基(すべての分岐異性体を含む)、ブチル基(すべての分岐異性体を含む)、ペンチル基(すべての分岐異性体を含む)、ヘキシル基(すべての分岐異性体を含む)、ヘプチル基(すべての分岐異性体を含む)、オクチル基(すべての分岐異性体を含む)、ノニル基(すべての分岐異性体を含む)、デシル基(すべての分岐異性対を含む)、ウンデシル基(すべての分岐異性対を含む)、ドデシル基(すべての分岐異性対を含む)、トリデシル基(すべての分岐異性対を含む)、テトラデシル基(すべての分岐異性対を含む)、ペンタデシル基(すべての分岐異性対を含む)、ヘキサデシル基(すべての分岐異性対を含む)、ヘプタデシル基(すべての分岐異性対を含む)、オクタデシル基(すべての分岐異性対を含む)、ノナデシル基(すべての分岐異性対を含む)、イコシル基(すべての分岐異性対を含む)、ヘンイコシル基(すべての分岐異性対を含む)、ドコシル基(すべての分岐異性対を含む)、トリコシル基(すべての分岐異性対を含む)、テトラコシル基(すべての分岐異性対を含む)等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;メチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、エチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、プロピルシクロペンチル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、トリメチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、ブチルシクロペンチル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルシクロペンチル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、ジエチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルエチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、メチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、エチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、プロピルシクロヘキシル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、トリメチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、ブチルシクロヘキシル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルシクロヘキシル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、ジエチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルエチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、メチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、エチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、プロピルシクロヘプチル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、トリメチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、ブチルシクロヘプチル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルシクロヘプチル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、ジエチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルエチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)等のアルキルシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;トリル基(すべての置換異性体を含む)、キシリル基(すべての置換異性体を含む)、エチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、プロピルフェニル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、トリメチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、ブチルフェニル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルフェニル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、ジエチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルエチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、ペンチルフェニル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、ヘキシルフェニル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、ヘプチルフェニル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、オクチルフェニル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、ノニルフェニル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、デシルフェニル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、ウンデシルフェニル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、ドデシルフェニル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、トリデシルフェニル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、テトラデシルフェニル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、ペンタデシルフェニル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、ヘキサデシルフェニル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、ヘプタデシルフェニル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)、オクタデシルフェニル基(すべての分岐異性体、置換異性体を含む)等のアルキルアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基(すべての分岐異性体を含む)、フェニルブチル基(すべての分岐異性体を含む)等のアリールアルキル基等が挙げられる。
本発明においては、上記硫黄化合物の中でも、ジハイドロカルビルポリサルファイド及び硫化エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いると、凝着防止性能向上効果が一層高水準で得られるので好ましい。
【0064】
また、本発明にかかるリン化合物としては、具体的には例えば、リン酸トリエステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル、亜リン酸エステル及びホスホロチオネート、下記一般式(7)又は(8)で表されるリン化合物の金属塩等が挙げられる。これらのリン化合物は、リン酸、亜リン酸又はチオリン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体が挙げられる。
【0065】
【化2】

【0066】
[式(7)中、X、X及びXは同一でも異なっていてもよく、それぞれ酸素原子又は硫黄原子を表し、X、X又はXの少なくとも2つは酸素原子であり、R21、R22、及びR23は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。]
【0067】
【化3】

【0068】
[式(8)中、X、X、X及びXは同一でも異なっていてもよく、それぞれ酸素原子又は硫黄原子を表し、X、X、X又はXの少なくとも3つは酸素原子であり、R24、R25及びR26は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。]
【0069】
より具体的には、リン酸トリエステルとしては、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等;
【0070】
酸性リン酸エステルとしては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェート等;
【0071】
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、前記酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン等のアミンとの塩等;
【0072】
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェート等;
【0073】
亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト等;
【0074】
ホスホロチオネートとしては、トリブチルホスホロチオネート、トリペンチルホスホロチオネート、トリヘキシルホスホロチオネート、トリヘプチルホスホロチオネート、トリオクチルホスホロチオネート、トリノニルホスホロチオネート、トリデシルホスホロチオネート、トリウンデシルホスホロチオネート、トリドデシルホスホロチオネート、トリトリデシルホスホロチオネート、トリテトラデシルホスホロチオネート、トリペンタデシルホスホロチオネート、トリヘキサデシルホスホロチオネート、トリヘプタデシルホスホロチオネート、トリオクタデシルホスホロチオネート、トリオレイルホスホロチオネート、トリフェニルホスホロチオネート、トリクレジルホスホロチオネート、トリキシレニルホスホロチオネート、クレジルジフェニルホスホロチオネート、キシレニルジフェニルホスホロチオネート、トリス(n−プロピルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(n−ブチルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(イソブチルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(s−ブチルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスホロチオネート等
が挙げられる。
【0075】
また、上記一般式(7)又は(8)で表されるリン化合物の金属塩に関し、式中のR21〜R26で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。
【0076】
上記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい)が挙げられる。
上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基を挙げることができる。また上記アルキルシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置も任意である)が挙げられる。
【0077】
上記アルケニル基としては、例えば、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分岐状でもよく、また二重結合の位置も任意である)が挙げられる。
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を挙げることができる。また上記アルキルアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18のアルキルアリール基(アルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、またアリール基への置換位置も任意である)が挙げられる。
上記アリールアルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12のアリールアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい)が挙げられる。
【0078】
21〜R26で表される炭素数1〜30の炭化水素基は、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜24のアリール基であることが好ましく、更に好ましくは炭素数3〜18のアルキル基、更に好ましくは炭素数4〜12のアルキル基である。
21、R22及びR23は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は上記炭化水素基を表すが、R21、R22及びR23のうち、1〜3個が上記炭化水素基であることが好ましく、1〜2個が上記炭化水素基であることがより好ましく、2個が上記炭化水素基であることがさらに好ましい。
また、R24、R25及びR26は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は上記炭化水素基を表すが、R24、R25及びR26のうち、1〜3個が上記炭化水素基であることが好ましく、1〜2個が上記炭化水素基であることがより好ましく、2個が上記炭化水素基であることがさらに好ましい。
【0079】
一般式(7)で表されるリン化合物において、X〜Xのうちの少なくとも2つは酸素原子であることが必要であるが、X〜Xの全てが酸素原子であることが好ましい。
また、一般式(8)で表されるリン化合物において、X〜Xのうちの少なくとも3つは酸素原子であることが必要であるが、X〜Xの全てが酸素原子であることが好ましい。
【0080】
一般式(7)で表されるリン化合物としては、例えば、亜リン酸、モノチオ亜リン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有する亜リン酸モノエステル、モノチオ亜リン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有する亜リン酸ジエステル、モノチオ亜リン酸ジエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有する亜リン酸トリエステル、モノチオ亜リン酸トリエステル;及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、亜リン酸モノエステル、亜リン酸ジエステルが好ましく、亜リン酸ジエステルがより好ましい。
【0081】
また、一般式(8)で表されるリン化合物としては、例えば、リン酸、モノチオリン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有するリン酸モノエステル、モノチオリン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有するリン酸ジエステル、モノチオリン酸ジエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有するリン酸トリエステル、モノチオリン酸トリエステル;及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルが好ましく、リン酸ジエステルがより好ましい。
【0082】
一般式(7)又は(8)で表されるリン化合物の金属塩としては、当該リン化合物の酸性水素の一部又は全部を金属塩基で中和した塩が挙げられる。用いる金属塩基としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属塩化物等が挙げられ、その金属としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、マンガン等の重金属等が挙げられる。これらの中ではカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属及び亜鉛が好ましい。
【0083】
上記リン化合物の金属塩は、金属の価数やリン化合物のOH基あるいはSH基の数に応じその構造が異なり、従ってその構造については何ら限定されないが、例えば、酸化亜鉛1molとリン酸ジエステル(OH基が1つ)2molを反応させた場合、下記式(9)で表される構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
【0084】
【化4】

【0085】
また、例えば、酸化亜鉛1molとリン酸モノエステル(OH基が2つ)1molとを反応させた場合、下記式(10)で表される構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
【0086】
【化5】

【0087】
また、これらの2種以上の混合物も使用できる。
【0088】
本発明においては、上記リン化合物の中でも、より高い凝着防止性能向上効果が得られることから、リン酸トリエステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩及びホスホロチオネートが好ましい。
【0089】
本発明の金属加工油組成物は、硫黄化合物又はリン化合物の一方のみを含有するものであってもよく、硫黄化合物とリン化合物との双方を含有するものであってもよい。凝着防止性能向上効果がより高められる点からは、リン化合物、又は硫黄化合物及びリン化合物の双方を含有することが好ましく、硫黄化合物とリン化合物との双方を含有することがより好ましい。
【0090】
上記極圧剤の含有量は任意であるが、凝着防止性能向上の点から、水を含む組成物全量基準で、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることがさらに好ましい。また、異常摩耗の防止の点から、極圧剤の含有量は、水を含む組成物全量基準で、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることが特に好ましい。
【0091】
また、本発明の金属加工油組成物においては、より優れた凝着防止性能が得られる点から、有機酸塩を含有することができる。有機酸塩としては、スルホネート、フェネート、サリシレート、並びにこれらの混合物が好ましく用いられる。これらの有機酸塩の陽性成分としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属;アンモニア、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアミン(モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン等)、炭素数1〜3のアルカノール基を有するアルカノールアミン(モノメタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等)等のアミン、亜鉛等が挙げられるが、これらの中でもアルカリ金属又はアルカリ土類金属が好ましく、カルシウムが特に好ましい。有機酸塩の陽性成分がアルカリ金属又はアルカリ土類金属であると、より高い潤滑性が得られる傾向にある。
【0092】
有機酸塩の全塩基価は、好ましくは50〜500mgKOH/gであり、より好ましくは100〜450mgKOH/gである。有機酸塩の全塩基価が50mgKOH/g未満の場合は有機酸塩の添加による潤滑性向上効果が不十分となる傾向にあり、他方、全塩基価が500mgKOH/gを超える有機酸塩は、通常、製造が非常に難しく入手が困難であるため、それぞれ好ましくない。なお、ここでいう全塩基価とは、JIS K 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による全塩基価[mgKOH/g]をいう。
【0093】
スルホネートは、任意の方法によって製造されたものが使用可能である。例えば、分子量100〜1500、好ましくは200〜700のアルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキル芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩及びこれらの混合物等が使用できる。ここでいうアルキル芳香族スルホン酸としては、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン化したものや、ホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸等の石油スルホン酸や、洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生したり、ポリオレフィンをベンゼンにアルキル化することにより得られる直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するアルキルベンゼンをスルホン化したもの、あるいはジノニルナフタレン等のアルキルナフタレンをスルホン化したもの等の合成スルホン酸等が挙げられる。また、上記のアルキル芳香族スルホン酸と、アルカリ金属の塩基(アルカリ金属の酸化物や水酸化物等)、アルカリ土類金属の塩基(アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等)又は上述したアミン(アンモニア、アルキルアミンやアルカノールアミン等)とを反応させて得られるいわゆる中性(正塩)スルホネート;中性(正塩)スルホネートと、過剰のアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンを水の存在下で加熱することにより得られるいわゆる塩基性スルホネート;炭酸ガスの存在下で中性(正塩)スルホネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンと反応させることにより得られるいわゆる炭酸塩過塩基性(超塩基性)スルホネート;中性(正塩)スルホネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンならびにホウ酸又は無水ホウ酸等のホウ酸化合物と反応させたり、又は炭酸塩過塩基性(超塩基性)スルホネートとホウ酸又は無水ホウ酸等のホウ酸化合物を反応させることによって製造されるいわゆるホウ酸塩過塩基性(超塩基性)スルホネート;及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0094】
また、フェネートとしては、具体的には、元素硫黄の存在下又は不存在下で、炭素数4〜20のアルキル基を1〜2個有するアルキルフェノールと、アルカリ金属の塩基(アルカリ金属の酸化物や水酸化物等)、アルカリ土類金属の塩基(アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等)又は上述したアミン(アンモニア、アルキルアミンやアルカノールアミン等)とを反応させることにより得られる中性フェネート;中性フェネートと過剰のアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンを水の存在下で加熱することにより得られる、いわゆる塩基性フェネート;炭酸ガスの存在下で中性フェネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンと反応させることにより得られる、いわゆる炭酸塩過塩基性(超塩基性)フェネート;中性フェネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンならびにホウ酸又は無水ホウ酸等のホウ酸化合物と反応させたり、又は炭酸塩過塩基性(超塩基性)フェネートとホウ酸又は無水ホウ酸等のホウ酸化合物を反応させることによって製造される、いわゆるホウ酸塩過塩基性(超塩基性)フェネート;及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0095】
さらに、サリシレートとしては、具体的には、元素硫黄の存在下又は不存在下で、炭素数4〜20のアルキル基を1〜2個有するアルキルサリチル酸と、アルカリ金属の塩基(アルカリ金属の酸化物や水酸化物等)、アルカリ土類金属の塩基(アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等)又は上述したアミン(アンモニア、アルキルアミンやアルカノールアミン等)とを反応させることにより得られる中性サリシレート;中性サリシレートと、過剰のアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンを水の存在下で加熱することにより得られるいわゆる塩基性サリシレート;炭酸ガスの存在下で中性サリシレートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンと反応させることにより得られるいわゆる炭酸塩過塩基性(超塩基性)サリシレート;中性サリシレートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基又はアミンならびにホウ酸又は無水ホウ酸等のホウ酸化合物と反応させたり、又は炭酸塩過塩基性(超塩基性)金属サリシレートとホウ酸又は無水ホウ酸等のホウ酸化合物を反応させることによって製造されるいわゆるホウ酸塩過塩基性(超塩基性)サリシレート;及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0096】
本発明においては、有機酸塩を単独で用いてもよく、あるいは有機酸塩と他の添加剤とを組み合わせて用いてもよい。凝着防止性能がより高められる点からは、有機酸塩を上記の極圧剤と組み合わせて用いることが好ましく、硫黄化合物、リン化合物及び有機酸塩の3種を組み合わせて用いることが特に好ましい。
【0097】
有機酸塩の含有量は、水を含む組成物全量基準で、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは0.5〜25質量%であり、さらに好ましくは1〜20質量%である。有機酸塩の含有量が0.1質量%未満の場合、有機酸塩の添加による凝着防止性能向上効果が不十分となる傾向にあり、他方、30質量%を超えると金属加工油組成物の安定性が低下して析出物が生じやすくなる傾向にある。
【0098】
また、本発明の金属加工油組成物には、40℃における動粘度が1〜60mm/sのアルキルベンゼンを配合しても良い。アルキルベンゼンおよび油性剤を併用することによって、油性剤の添加効果をより増大させることができる。
本発明で用いられるアルキルベンゼンの40℃における動粘度は1〜60mm/sであることが好ましい。40℃における動粘度が1mm/s未満の場合には、添加効果が期待できない場合がある。また、40℃における動粘度が60mm/sを超える場合には、ステインや腐食の発生を増大させる可能性があり、好ましくは40mm/s以下、より好ましくは20mm/s以下である。
【0099】
また、アルキルベンゼンのベンゼン環に結合するアルキル基としては直鎖状であっても分岐状であっても良く、また、炭素数についても特に限定されるものではないが、炭素数1〜40のアルキル基が好ましい。
炭素数1〜40のアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、直鎖状または分岐状のプロピル基、直鎖状または分岐状のブチル基、直鎖状または分岐状のペンチル基、直鎖状または分岐状のヘキシル基、直鎖状または分岐状のヘプチル基、直鎖状または分岐状のオクチル基、直鎖状または分岐状のノニル基、直鎖状または分岐状のデシル基、直鎖状または分岐状のウンデシル基、直鎖状または分岐状のドデシル基、直鎖状または分岐状のトリデシル基、直鎖状または分岐状のテトラデシル基、直鎖状または分岐状のペンタデシル基、直鎖状または分岐状のヘキサデシル基、直鎖状または分岐状のヘプタデシル基、直鎖状または分岐状のオクタデシル基、直鎖状または分岐状のノナデシル基、直鎖状または分岐状のイコシル基、直鎖状または分岐状のヘンイコシル基、直鎖状または分岐状のドコシル基、直鎖状または分岐状のトリコシル基、直鎖状または分岐状のテトラコシル基、直鎖状または分岐状のペンタコシル基、直鎖状または分岐状のヘキサコシル基、直鎖状または分岐状のヘプタコシル基、直鎖状または分岐状のオクタコシル基、直鎖状または分岐状のノナコシル基、直鎖状または分岐状のトリアコンチル基、直鎖状または分岐状のヘントリアコンチル基、直鎖状または分岐状のドトリアコンチル基、直鎖状または分岐状のトリトリアコンチル基、直鎖状または分岐状のテトラトリアコンチル基、直鎖状または分岐状のペンタトリアコンチル基、直鎖状または分岐状のヘキサトリアコンチル基、直鎖状または分岐状のヘプタトリアコンチル基、直鎖状または分岐状のオクタトリアコンチル基、直鎖状または分岐状のノナトリアコンチル基、直鎖状または分岐状のテトラコンチル基が挙げられる。
【0100】
アルキルベンゼン中のアルキル基の個数は通常1〜4個であるが、安定性、入手可能性の点から1個または2個のアルキル基を有するアルキルベンゼン、すなわちモノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、またはこれらの混合物が最も好ましく用いられる。
また、用いるアルキルベンゼンとしては、もちろん、単一の構造のアルキルベンゼンだけでなく、異なる構造を有するアルキルベンゼンの混合物であっても良い。
本発明に係るアルキルベンゼンの数平均分子量については、なんら制限はないが、添加効果の点から、100以上が好ましく、130以上がより好ましい。また、分子量が大き過ぎるとステインや腐食の発生を増大させる可能性が大きくなることから、数平均分子量の上限は340以下が好ましく、320以下がより好ましい。
【0101】
本発明の金属加工油組成物は、上記したアルキルベンゼンを、水を含む組成物全量基準で、0.1〜50質量%含有することができる。含有量の下限値は、添加効果の点から、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。また、含有量が多過ぎるとステインや腐食の発生を増大させる可能性が大きくなることから、上限値は50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0102】
また、本発明の金属加工油組成物においては、より優れた凝着防止性能が得られる点から、アルカノールアミン又はアミンを含有することが好ましい。
アルカノールアミンとしては、炭素数1〜12、好ましくは炭素数2〜10のアルカノールアミンが用いられる。具体的としては例えば、モノメタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ(n−プロパノール)アミン、ジ(n−プロパノール)アミン、トリ(n−プロパノール)アミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モノブタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジブタノールアミン(全ての異性体を含む)、トリブタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、トリペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノヘキサノールアミン(全ての異性体を含む)、ジヘキサノールアミン(全ての異性体を含む)、モノヘプタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジヘプタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノオクタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノノナノールアミン(全ての異性体を含む)、モノデカノールアミン(全ての異性体を含む)、モノウンデカノールアミン(全ての異性体を含む)、モノドデカノールアミン(全ての異性体を含む)、ジエチルモノエタノールアミン、ジエチルモノプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、ジエチルモノブタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジエチルモノペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジプロピルモノエタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジプロピルモノプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、ジプロピルモノブタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジプロピルモノペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジブチルモノエタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジブチルモノプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、ジブチルモノブタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノエチルジエタノールアミン、モノエチルジプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、モノエチルジブタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノエチルジペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノプロピルジエタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノプロピルジプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、モノプロピルジブタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノブチルジエタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノブチルジプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、モノブチルジブタノールアミン(全ての異性体を含む)等が挙げられる。この中でも、好ましいものとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ(n−プロパノール)アミン、ジ(n−プロパノール)アミン、トリ(n−プロパノール)アミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モノブタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジブタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジエチルモノエタノールアミン、ジエチルモノプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、ジエチルモノブタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジエチルモノペンタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジプロピルモノエタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジプロピルモノプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、ジプロピルモノブタノールアミン(全ての異性体を含む)、ジブチルモノエタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノエチルジエタノールアミン、モノエチルジプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、モノエチルジブタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノプロピルジエタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノプロピルジプロパノールアミン(全ての異性体を含む)、モノブチルジエタノールアミン(全ての異性体を含む)、モノブチルジプロパノールアミン(全ての異性体を含む)等の炭素数2〜10のアルカノールアミンが挙げられる。上記の各アルカノールアミンは単独で使用することができ、また構造を異にする2種以上のアルカノールアミンの混合物を使用することもできる。
【0103】
アミンとしては、炭素数1〜16のアミンが用いられる。ここでいうアミンには、脂肪族アミン、芳香族置換脂肪族アミン、脂環族アミンおよび芳香族アミンが含まれるが、脂肪族アミン、芳香族置換脂肪族アミンまたは脂環族アミンが好ましい。なお、芳香族置換脂肪族アミンとは、窒素原子に結合したアルキル基の側鎖に、芳香族置換基が結合したものを指す。具体例としては例えば、脂肪族アミンとして、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン(全ての異性体を含む)、ジプロピルアミン(全ての異性体を含む)、トリプロピルアミン(全ての異性体を含む)、モノブチルアミン(全ての異性体を含む)、ジブチルアミン(全ての異性体を含む)、トリブチルアミン(全ての異性体を含む)、モノペンチルアミン(全ての異性体を含む)、ジペンチルアミン(全ての異性体を含む)、トリペンチルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘキシルアミン(全ての異性体を含む)、ジヘキシルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘプチルアミン(全ての異性体を含む)、ジヘプチルアミン(全ての異性体を含む)、モノオクチルアミン(全ての異性体を含む)、ジオクチルアミン(全ての異性体を含む)、モノノニルアミン(全ての異性体を含む)、モノデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノウンデシル(全ての異性体を含む)、モノドデシルアミン(全ての異性体を含む)、ドデシルジメチルアミン(全ての異性体を含む)、モノトリデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノテトラデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノペンタデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘキサデシルアミン(全ての異性体を含む)等の炭素数1〜16の脂肪族アミンが挙げられ、中でも炭素数2〜12の脂肪族アミンが好ましい。芳香族置換脂肪族アミンとしては、モノベンジルアミン、(1−フェニルエチル)アミン、(2−フェニルエチル)アミン(モノフェネチルアミン)、ジベンジルアミン、ビス(1−フェニルエチル)アミン、ビス(2−フェニルエチル)アミン(ジフェネチルアミン)等の炭素数7〜16のものが挙げられ、中でもモノベンジルアミン、ジベンジルアミンが好ましい。脂環族アミンとしては、モノシクロペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、モノシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノシクロヘプチルアミン、ジシクロヘプチルアミン等の炭素数5〜16のシクロアルキルアミン;(メチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(メチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジメチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(ジメチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(エチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(エチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(メチルエチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(メチルエチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジエチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(メチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(メチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジメチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(ジメチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(エチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(エチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(メチルエチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジエチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(メチルシクロヘプチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(メチルシクロヘプチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジメチルシクロヘプチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(エチルシクロヘプチルアミン(全ての置換異性体を含む)、(メチルエチルシクロヘプチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジエチルシクロヘプチル)アミン(全ての置換異性体を含む)等の炭素数6〜16のアルキルシクロアルキルアミン等が挙げられ、中でも炭素数5〜16のシクロアルキルアミンが好ましい。中でも好ましいアミンは、炭素数2〜12の脂肪族アミン、炭素数7〜16の芳香族置換脂肪族アミン、炭素数5〜16のシクロアルキルアミン等であって、最も好ましいものは、炭素数7〜16の芳香族置換脂肪族アミンおよび炭素数5〜16のシクロアルキルアミンである。上記の各アミンの単一種を使用できるほか、構造の異なる2種以上のアミンの混合物を用いることもできる。
アルカノールアミン又はアミンの含有量は、水を含む金属加工油組成物全量基準で1〜30質量%が好ましく、より好ましくは2〜25質量%の範囲であり、両者を併用することによりさらに好ましい結果が得られる。
【0104】
本発明の金属加工油組成物は、種々の金属の加工油として用いられ、適用される金属としては、鉄、ニッケル、クロム、銅、亜鉛、チタン等の遷移金属およびアルミニウム、並びに遷移金属を含有する合金(ステンレス、黄銅等)およびアルミニウムを主成分とする合金を挙げることができる。また適用しうる加工方法としては、冷間、温間および熱間圧延、絞り、しごき、引き抜き、プレス、切削ならびに研削等の金属加工を挙げることができるが、特に引き抜き加工および冷間、温間および熱間圧延への使用に適している。
【実施例】
【0105】
以下、本発明の好適な実施例について更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0106】
(実施例1〜12および比較例1〜15)
下記に示す各成分を用いて金属加工油組成物15種(実施例用8種、比較例用7種)を調製した。各実施例および比較例の金属加工油組成物の組成をそれぞれ表1および表2に示す。また、実施例および比較例の各組成物に関し、平板しゅう動試験により凝着防止性を評価した。
(1)基油 40℃における動粘度21.4mm/sの鉱油
(2)含酸素化合物
含酸素化合物1:テトラプロピレングリコール
含酸素化合物2:トリプロピレングリコール
含酸素化合物3:ジプロピレングリコールジメチルエーテル
含酸素化合物4:ポリエチレンオキシドジラウレート(エチレンオキシド平均分子量
200)
含酸素化合物5:グリセリンモノオレエート/ジオレエート(45:55混合物)
(3)油性剤 ステアリン酸ブチル、ラウリルアルコール
(4)極圧剤 硫化エステル、トリクレジルホスフェート(TCP)
(5)アミン類 トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン
【0107】
(平板しゅう動試験)
油剤が材料の凝着の程度に及ぼす影響を調べるため、平ビードを用いて、材料の引き抜き試験を実施した。使用した材料は下記の5種類で、テストピースの大きさはいずれも厚さ0.9mm、幅30mmである。
材料1:SUS304
材料2:黄銅(銅70%/亜鉛30%)
材料3:純チタン
材料4:アルミニウム(JIS A1050)
材料5:SPCC(JIS G3141)
【0108】
試験は荷重460N、引き抜き速度50m/minで実施し、連続して10枚の材料を引き抜き、冶具凝着した金属量を測定した。なお、材料10枚を引き抜く間は冶具であるビードの研磨等は行っていない。材料の温度は室温(24℃)および200℃で実施し、油剤は40℃にてホモジナイザーで攪拌しながら、材料の進入側からスプレーにより毎分20ml供給した。冶具凝着した金属量を測定するほか、引き抜き後の表面を観察し、凝着による表面損傷の有無、および損傷がある場合は発生しだした枚数を記録した。
【0109】
試験結果を表1および表2に示すが、含酸素化合物を添加しない場合(比較例5、7、9、11、13、15)、少なすぎる場合(比較例2)、水を加えない場合(比較例4、6、8、10、12、14)、少なすぎる場合(比較例3)には凝着量が多くまた表面損傷も大きい。また含酸素化合物が多すぎる場合(比較例1)、凝着防止性は問題ないが、経済性が損なわれるとともに臭気等が強くなり作業環境上好ましくない。
【0110】
【表1】

【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱油、油脂および合成油からなる群から選ばれる1種以上を基油とし、(A1)数平均分子量が100以上1000以下である水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、(A2)前記(A1)のハイドロカルビルエーテルまたはエステル、(A3)数平均分子量が100以上1000以下のポリアルキレングリコール、(A4)前記(A3)のハイドロカルビルエーテルまたはエステル、(A5)炭素数2〜20の2価アルコール、(A6)前記(A5)のハイドロカルビルエーテルまたはエステル、(A7)炭素数3〜20の3価アルコール、および(A8)前記(A7)のハイドロカルビルエーテルまたはエステルからなる群から選ばれる1種以上の含酸素化合物を0.005〜10質量%、および水を10〜99質量%含有することを特徴とする金属加工油組成物。

【公開番号】特開2007−238713(P2007−238713A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61184(P2006−61184)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】