説明

金属加工用潤滑油組成物

【課題】短い圧延距離で圧延板に高い光沢を付与でき、耐焼き付き性にも優れる金属加工用潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】金属加工用潤滑油組成物は、基油に下記式(1)で示されるジエステル化合物を配合してなる。
OCO−Z−COOR (1)
(式中、R、Rは各々独立に炭素数1以上18以下のアルキル基であり、Zは炭素数が10以上12以下のアルキレン基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延等に用いられる金属加工用潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料の圧延を行うと、圧延板が通過した部分のワークロールには、ロールコーティングと呼ばれる一定の色調で着色する現象が生じる。このロールコーティングは、ワークロールが圧延板に常に直接接触していることから、圧延性や圧延製品の表面性状に大きな影響を及ぼす。例えば、ステンレスの冷間圧延では、圧延前工程における焼鈍や酸洗浄で生成した粒界状の網目模様が光を乱反射するために、板光沢度が低下してしまう。その場合、冷間圧延時に前記した網目模様を除去して板光沢度を向上させる必要がある。このような作用はロールコーティングの生成により成されるものであるため、幅方向で均一なロールコーティングを生成させることは表面品質上、非常に重要である(非特許文献1参照)。また、仕上圧延工程では、表面粗度の大きなロールから、仕上圧延用の表面粗度の小さなロールに交換される。それ故、仕上圧延は、ロールコーティングの無い状態から開始され、ロールコーティングが生成するまでは板光沢度が低い。従って、ロールコーティングの生成が遅いと、圧延板の歩留まりが低下して結果的に生産性も低下する。よって、ワークロール表面にロールコーティングが生成することは、圧延板に高い光沢を付与できるだけでなく、生産性の観点からも好ましい現象である。
【0003】
それ故、金属材料の圧延においては、ワークロール表面にロールコーティングがすみやかに生成することが求められており、圧延油の選定が重要となる。また、圧延油としては、圧延性に優れること、すなわち低圧延荷重で高圧下率が得られ、苛酷な条件下で焼き付き(ヒートスクラッチ)を生じないことも要求される。特にステンレスの冷間圧延においては、材料が硬質であることから圧延油に対して耐焼き付き性も求められ、さらにその用途から材料表面の意匠性も重要であり板光沢度が高いことも強く求められている。
そこで、炭素数6〜10の脂肪族直鎖ジカルボン酸と、炭素数3〜5のアルコールとから構成されるジエステルを含むステンレス用冷間圧延油が提案されている(特許文献1参照)。また、主骨格が炭素数12〜28の脂肪族ジカルボン酸と、炭素数1〜9の脂肪族アルコールとから得られたジエステル0.5〜30質量%およびリン系化合物0.01〜5.0質量%を含む冷間圧延油組成物が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−240884号公報
【特許文献2】WO2003/097774号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】志渡 他「ロールコーティングの生成と表面光沢におよぼす圧延材料表面の影響」、第47回塑性加工連合講演会、p281-282、1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のステンレス用冷間圧延油では、ロールコーティングの生成に長い圧延距離を有するだけでなく、耐焼き付き性も必ずしも十分とはいえない。また、特許文献2に記載の冷間圧延油組成物では、耐焼き付き性は認められるが、ロールコーティングの生成にはやや圧延距離を要する。
【0007】
本発明は、短い圧延距離で圧延板に高い光沢を付与でき、耐焼き付き性にも優れる金属加工用潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のような金属加工用潤滑油組成物を提供するものである。
〔1〕基油に、下記式(1)で示されるジエステル化合物を配合してなることを特徴とする金属加工用潤滑油組成物。
OCO−Z−COOR (1)
(式中、R、Rは各々独立に炭素数1以上18以下のアルキル基であり、Zは炭素数が10以上12以下のアルキレン基である。)
〔2〕上述の〔1〕に記載の金属加工用潤滑油組成物において、前記式(1)におけるZが直鎖構造であることを特徴とする金属加工用潤滑油組成物。
〔3〕上述の〔1〕または〔2〕に記載の金属加工用潤滑油組成物において、前記式(1)のジエステル化合物の配合量が組成物全量基準で、0.1質量%以上、30質量%以下であることを特徴とする金属加工用潤滑油組成物。
〔4〕上述の〔1〕から〔3〕までのいずれか1つに記載の金属加工用潤滑油組成物において、さらに油性剤を配合してなることを特徴とする金属加工用潤滑油組成物。
〔5〕上述の〔1〕から〔4〕までのいずれか1つに記載の金属加工用潤滑油組成物において、該組成物が冷間圧延用であることを特徴とする金属加工用潤滑油組成物。
〔6〕上述の〔5〕に記載の金属加工用潤滑油組成物において、該組成物がステンレス用であることを特徴とする金属加工用潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の金属加工用潤滑油組成物は、基油に所定のジエステル化合物を配合してなるので、耐焼き付き性に優れるとともに、短い圧延距離で圧延板に高い光沢を付与できる。それ故、ステンレス等の硬い金属材料の冷間圧延用として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の金属加工用潤滑油組成物(以下、単に「本組成物」ともいう。)では、基油として鉱油あるいは合成油のいずれを使用することもできる。
鉱油としては、種々のものを挙げることができる。例えば、パラフィン基系原油、中間基系原油あるいはナフテン基系原油を常圧蒸留するか、あるいは常圧蒸留の残渣油を減圧蒸留して得られる留出油、またはこれを常法により精製して得られる精製油、例えば、溶剤精製油、水素化精製油、脱ロウ処理油、および白土処理油等を挙げることができる。
【0011】
また、合成油としては、炭素数8から14までのポリα−オレフィン(PAO)、オレフィンコポリマー(OCP、例えば、エチレン−プロピレンコポリマーなど)、あるいはポリブテン、ポリプロピレン等の分岐オレフィンやこれらの水素化物、さらにはポリオールエステル(トリメチロールプロパンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステルなど)等のエステル系化合物、アルキルベンゼン等を用いることができる。
本発明においては、基油として、前記した鉱油や合成油を1種用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。鉱油と合成油を混合して使用してもよい。
【0012】
このような基油としては、40℃における動粘度が、1mm/sから30mm/sまでの範囲にあるものが好ましく、4mm/sから20mm/sまでの範囲がより好ましい。この動粘度が1mm/s未満では引火点が低く、引火による火災などの危険性が増すおそれがあり、一方、30mm/sを超えると、圧延板表面にオイルピットが発生して光沢度が低下したり、巻きズレが発生するなどの不具合が生じるおそれもある。
【0013】
本組成物は、上述の基油に対して、下記式(1)で示されるジエステル化合物を配合してなるものである。
OCO−Z−COOR (1)
ここで、式中、R、Rは各々独立に炭素数1以上18以下のアルキル基である。RあるいはRの炭素数が19以上であると、圧延板の光沢が低下するおそれがある。また、耐焼付性の観点より、RあるいはRの炭素数は4以下であることが好ましく、特にRおよびRの炭素数がともに4以下であることが好ましい。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基があげられるが、プロピル基やブチル基は直鎖状であっても分枝状であってもよい。これらの中で、耐焼き付き性の点で最も好ましいのは、RおよびRがともにメチル基の場合である。
【0014】
上述の式(1)において、Zは炭素数が10以上12以下であるアルキレン基である。Zの炭素数がこの範囲のアルキレン基であると、耐焼き付き性が良好で、圧延時にロールコーティングが生成しやすく圧延板の光沢も良好となる。Zは直鎖であっても分岐を有していてもよいが直鎖であることが光沢付与の点でより好ましい。また、耐焼き付き性とロールコーティング生成の観点より、Zの炭素数が10であり、RおよびRがともにメチル基の場合が最も好ましい。
【0015】
本組成物において、式(1)で示されるジエステルの配合量は、耐焼き付き性およびロールコーティングの生成しやすさの観点より、組成物全量基準で0.1質量%以上、40質量%以下あることが好ましい。該ジエステルのより好ましい配合量は、組成物全量基準で1質量%以上、30質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上、20質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%、20質量%以下である。
【0016】
本組成物には、さらに油性剤を配合することが好ましい。本組成物に配合される油性剤としてはモノエステルや高級アルコールが好ましく用いられる。
モノエステルとしては、炭素数13以上48以下のモノエステルが好ましい。このモノエステルを、上述の式(1)のジエステルと組み合わせて用いることにより、耐焼き付き性と圧延板の光沢をさらに向上させることできる。また、このモノエステルを配合することにより、上述のジエステルの使用量を低減させることもできる。
このようなモノエステルとしては、例えば下記式(2)で示される脂肪族モノカルボン酸エステルを挙げることができる。
COOR (2)
【0017】
ここで、式中、Rは炭素数11以上22以下のアルキル基、Rは炭素数1以上25以下のアルキル基を示し、RとRの合計炭素数は12以上47以下である。
式(2)で示されるモノエステルのより好ましい炭素数は13以上36以下の範囲である。該モノエステルの具体例としては、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、パルミチン酸オクチルなどが好ましく挙げられるが、これらの中で、耐焼き付き性への寄与の点と入手性の観点から、ステアリン酸ブチルが最も好ましい。
本組成物においては、上述のモノエステルを1種用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、圧延油組成物における該モノエステルの配合量は、組成物全量基準で0.5質量%以上、40質量%以下の範囲が好ましく、3質量%以上、30質量%以下の範囲がより好ましく、特に5質量%以上、20質量%以下の範囲が最も好ましい。該モノエステルの配合量が40質量%を超えると、ロールスリップが発生するおそれがあり、また、低温流動性が悪化するおそれもある。
【0018】
高級アルコールとしては、耐焼き付き性の点から炭素数が12以上18以下のアルコールが好ましい。具体的には各種の飽和アルコールまたは不飽和アルコールを挙げることができ、飽和アルコール、不飽和アルコールともに良好に使用することができる。このような飽和アルコールとしては、直鎖または分岐状のドデカノール(例えば、ラウリルアルコール)、直鎖または分岐状のトリデカノール、直鎖または分岐状のテトラデカノール、直鎖または分岐状のペンタデカノール、直鎖または分岐状のヘキサデカノール、およびこれらの混合物等を挙げることができる。
【0019】
また、不飽和アルコールとしては、直鎖状または分岐状のデセノール、直鎖状または分岐状のウンデセノール、直鎖状または分岐状のドデセノール、直鎖状または分岐状のトリデセノール、直鎖状または分岐状のテトラデセノール、直鎖状または分岐状のペンタデセノール、直鎖状または分岐状のヘキサデセノール、直鎖状または分岐状のヘプタデセノール、 直鎖状または分岐状のオクタデセノール等が挙げられる。
【0020】
本組成物に上述の高級アルコールを配合する場合の割合は特に限定されないが、耐焼き付き性の点から組成物全量基準で1質量%以上20質量%以下、好ましくは2質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上12質量%以下である。
【0021】
本組成物に対しては、発明の効果を阻害しない範囲で、以下に示す各種の添加剤を配合してもよい。具体的には、界面活性剤、極圧剤、摩耗防止剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、および消泡剤などを適宜配合して使用することができる。
【0022】
界面活性剤は、本組成物を水中に分散してエマルジョンとして使用する場合に用いられる。界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、および両性界面活性剤などが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩等がある。カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩などの四級アンモニウム塩等がある。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルなどのエーテルが挙げられる。配合量は、組成物全量基準で0.01質量%以上、10質量%以下の範囲で選定することが好ましい。
【0023】
極圧剤としては、例えば硫化オレフィン、ジアルキルポリスルフィド、ジアリールアルキルポリスルフィド、ジアリールポリスルフィドなどの硫黄系化合物、リン酸エステル、チオリン酸エステル、亜リン酸エステル、アルキルハイドロゲンホスファイト、リン酸エステルアミン塩、亜リン酸エステルアミン塩などのリン系化合物等が挙げられる。また、その配合量は、組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、10質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上、5質量%以下の範囲で選定すればよい。
摩耗防止剤としては、例えばジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、ジチオカルバミン酸亜鉛(ZnDTC)、硫化オキシジチオリン酸モリブデン(MoDTP)、硫化オキシジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)などが挙げられる。また、その配合量は、組成物全量基準で、0.1質量%以上、5質量%以下の範囲で選定することが好ましい。
【0024】
酸化防止剤としては、例えばアルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化−α−ナフチルアミンなどのアミン系、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなどのフェノール系、および2,6−ジ−t−ブチル−4−[4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ]フェノール、ジラウリルチオジプロピオネートなどの硫黄系などが挙げられる。また、その配合量は、組成物全量基準で、好ましくは0.05質量%以上、3質量%以下、より好ましくは0.2質量%以上、2質量%以下の範囲で選定すればよい。
防錆剤としては、例えば、トリエタノールアミンのようなアルカノールアミン、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、および多価アルコールエステル等が挙げられる。これら防錆剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上、0.5質量%以下の範囲で選定すればよい。
【0025】
金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、およびイミダゾール系化合物等が挙げられる。また、その配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上、0.5質量%以下の範囲で選定すればよい。
消泡剤としては、例えば、シリコーン、フルオロシリコール、およびフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。消泡剤は、消泡効果および経済性のバランスなどの点から、組成物全量基準で、0.005質量%以上、0.1質量%以下の範囲で選定することが好ましい。
【0026】
本発明の金属加工用潤滑油組成物は短い圧延距離で圧延板に高い光沢を付与でき、耐焼き付き性にも優れるので、特にステンレスのように硬く、圧延板表面の意匠性が高い金属材料の冷間圧延油として好適に使用できる。
【実施例】
【0027】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
〔実施例1から7まで、比較例1から5まで〕
(1)試料油の調製
表1、表2に示す配合組成を有する圧延油(試料油)を調製して、圧延機による圧延実験を行った。
【0028】
ここで、試料油の調製に用いた各成分は以下の通りである。
(1.1)基油:40℃動粘度が7mm/sと30mm/sのパラフィン系鉱油2種類を用い、40℃動粘度が8mm/sになるようにこれらの鉱油の混合比率を調整した。
(1.2)ジエステル1:式(1)のジエステルにおいて、R、Rがともにメチル基であり、Zは、炭素数10の直鎖アルキレン基である(ドデカン二酸ジメチル)。
(1.3)ジエステル2:式(1)のジエステルにおいて、R、Rがともにメチル基であり、Zは、炭素数12の直鎖アルキレン基である(テトラデカン二酸ジメチル)。
(1.4)ジエステル3:以下の化学式で示される脂肪族ジカルボン酸のジメチルエステル
【0029】
【化1】

(1.5)ジエステル4:ジイソノニルアジペート
(1.6)ジエステル5:ジイソデシルアジペート
(1.7)トリエステル:トリメリット酸とオクタノールとのトリエステル
(1.8)油性剤:ラウリルアルコール、ブチルステアレート(ステアリン酸ブチル)
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
(2)圧延実験
(2.1)耐焼き付き性(耐ヒートスクラッチ性)の評価
表3に示す圧延条件で、圧延実験を行った。具体的には、厚さ1.5mmのSUS304(2B)材を4パスで0.67mmに圧延し,5パス目で圧下率を14.9%から徐々に上げて圧延板表面にヒートスクラッチが発生し始める圧下率を求めた。
【0033】
(2.2)光沢性の評価
表4に示すパススケジュールで圧延実験を行った。具体的には、3パス目の圧延後に板サンプルを5m毎に採取した。そしてサンプル板の光沢が20度グロス(ASTM D523準拠)で850を超えたときの圧延距離を求めた。この圧延距離が短いほど、ロールコーティングの生成が速いと見なせる。
なお、本実験では、実験で使用した圧延板の厚みが1mmであり、ワークロールの表面粗さRaが0.03μmである点が(2.1)の実験と異なる。
【0034】
【表3】

【0035】
【表4】

【0036】
(3)評価結果
表1からわかるように、実施例1から7までの試料油は、所定のジエステルを配合してなるので、短い圧延距離で優れた光沢を発揮でき、しかも耐焼き付き性(耐ヒートスクラッチ性)にも優れる。これに対して比較例1から4までの試料油は、配合されているジエステルの構造が本発明のジエステルとは異なるため、良光沢を得るためにはかなり長い圧延距離が必要となる。また、比較例5では配合されているエステルがトリエステルであるため、同様に、良光沢を得るためにはかなり長い圧延距離が必要となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油に、下記式(1)で示されるジエステル化合物を配合してなる
ことを特徴とする金属加工用潤滑油組成物。
OCO−Z−COOR (1)
(式中、R、Rは各々独立に炭素数1以上18以下のアルキル基であり、Zは炭素数が10以上12以下であるアルキレン基である。)
【請求項2】
請求項1に記載の金属加工用潤滑油組成物において、
前記式(1)におけるZが直鎖構造である
ことを特徴とする金属加工用潤滑油組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の金属加工用潤滑油組成物において、
前記式(1)のジエステル化合物の配合量が組成物全量基準で、0.1質量%以上、30質量%以下である
ことを特徴とする金属加工用潤滑油組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の金属加工用潤滑油組成物において、
さらに油性剤を配合してなる
ことを特徴とする金属加工用潤滑油組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の金属加工用潤滑油組成物において、
該組成物が冷間圧延用である
ことを特徴とする金属加工用潤滑油組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の金属加工用潤滑油組成物において、
該組成物がステンレス用である
ことを特徴とする金属加工用潤滑油組成物。

【公開番号】特開2011−208044(P2011−208044A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77854(P2010−77854)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】