説明

金属化フィルムコンデンサ

【課題】ケースレス構造であって小型化と軽量化が実現され、耐透湿性能に優れた金属化フィルムコンデンサを提供する。
【解決手段】金属化フィルムを巻き回し、もしくは積層させてなる金属化フィルム柱体1の2つの電極取り出し面に外部電極2,2が形成され、金属化フィルム柱体1の電極取り出し面以外の領域を外装フィルム4が被覆してなる金属化フィルムコンデンサ10において、外部電極2は、低透湿性の熱硬化性樹脂接着剤2a内に導電性フィラー2bが含有されてなる導電性接着剤で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻回し型もしくは積層型の金属化フィルム柱体がケース内に収容され、かつケース内のモールド樹脂体内に埋設されてなる金属化フィルムコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の金属化フィルムを巻き回してなる巻回し型、もしくは金属化フィルムを積層してなる積層型の金属化フィルムコンデンサは、図7で示すように、巻き回しもしくは積層してなる金属化フィルム柱体fの両端の2つの電極取り出し面に金属溶射部m,m(もしくはメタリコン、メタリコン電極)が形成され、これら2つの金属溶射部m,mに外部引き出し端子b,bがはんだ接合hされたものがケースc内に収容され、ケースc内に形成されたモールド樹脂体jにて封止された構造のものが一般的である。より詳細には、金属化フィルム柱体fの周面にポリエチレンテレフタレート(PET)などからなる防水性フィルムbfを数十回程度巻装して防水被膜を形成し、この外側にモールド樹脂体jが形成されている。なお、この一般構造の金属化フィルムコンデンサがたとえば特許文献1で開示されている。
【0003】
しかし、特許文献1や図7で示す構造の金属化フィルムコンデンサでは、ケースを具備するものであることからその体格が大きくならざるを得ない。特に車載用コンデンサの場合には、容量が数百μFと大容量かつ大型のものとなり易いことから使用されるモールド樹脂材量も多くなるのが一般的であり、モールド樹脂材量が多くなることでケース体格も大きくなり、コンデンサ体格が増大することに加えて重量も増加することとなってしまう。さらには、モールド樹脂材量が多くなることで樹脂材料が硬化した後の残留応力増を招いてここにクラックが生じ易くなり、本来の防水機能が十分に発揮できないという課題もある。したがって、環境フレンドリーで低燃費な車両実現に向けてその小型化が進んでいる昨今の車両への搭載に当たっては、ケースを廃したケースレス構造で小体格かつ軽量な金属化フィルムコンデンサの重要性が高まっている。
【0004】
ケースやケース内のモールド樹脂体を廃したケースレス構造の金属化フィルムコンデンサにおいては、その小型化や軽量化を図ることができるというメリットの反面、その耐透湿性能確保が重要な課題となってくる。金属化フィルムコンデンサは水分の浸入によってたとえばアルミ電極が劣化して静電容量の低下の原因となったり、フィルムが吸水することで絶縁抵抗や耐圧が低下する原因となる。たとえば特許文献2では、バスバーが接続されたコンデンサ素子の全周をノルボルネン系樹脂製の外装体で被覆してその耐透湿性能を確保するケースレス構造の金属化フィルムコンデンサが開示されている。
【0005】
特許文献2で開示される金属化フィルムコンデンサは、金属化フィルム柱体の全周を樹脂製の外装体で完全に包囲するものであることから、ケースレス構造としたにもかかわらず十分な体格低減効果が得られないものとなっており、さらには、外装体の重量も大きくなってコンデンサの全重量が嵩んでしまうことから、ケースレス構造を適用した際のメリットを十分に享受できていない。
【0006】
そこで本発明者等は、コンデンサ素子への透湿経路を詳細に分析し、この分析の結果特定された透湿度の最も高い部位である外部電極に改良を加えることによってその耐透湿性能を改善し、もって耐透湿性能に優れたケースレス構造の金属化フィルムコンデンサの発案に至っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−16161号公報
【特許文献2】特開2009−49149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、ケースレス構造であって小型化と軽量化が実現され、耐透湿性能に優れた金属化フィルムコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による金属化フィルムコンデンサは、金属化フィルムを巻き回し、もしくは積層させてなる金属化フィルム柱体の2つの電極取り出し面に外部電極が形成され、金属化フィルム柱体の電極取り出し面以外の領域を外装フィルムが被覆してなる金属化フィルムコンデンサにおいて、前記外部電極は、低透湿性の熱硬化性樹脂接着剤内に導電性フィラーが含有されてなる導電性接着剤で形成されているものである。
【0010】
本発明の金属化フィルムコンデンサは、当該コンデンサ内への透湿経路を詳細に分析した結果として特定された透湿度の最も高い外部電極を、従来の金属溶射から形成される形態に代えて、低透湿性の熱硬化性樹脂接着剤内に導電性フィラーが含有されてなる導電性接着剤から形成することにより、外部電極の耐透湿性を向上させ、従来の金属化フィルムコンデンサに比して透湿度が格段に低減され、もって耐透湿性に優れたものである。
【0011】
さらに、本発明の金属化フィルムコンデンサは、ケースレス構造であることから、体格が増大することもなく、重量が嵩むこともない。
【0012】
ここで、金属化フィルム柱体は、ポリプロピレン(PP)やポリフェニレンサルファイド(PPS)などからなる誘電体フィルムの表面にアルミニウムや亜鉛などからなる金属蒸着膜が形成されてなる金属化フィルムを2枚積層して一組とし、双方の金属化フィルムが異なる端部に絶縁マージンを有することでそれぞれが固有の外部電極に接触するようになっている。さらに、金属蒸着膜のうち、絶縁マージンと反対側の端部であって外部電極と接触する端部は電極接触を保証するために他の部位よりも厚めのいわゆるヘビーエッジとなっており、たとえば、金属蒸着膜の一般部が30nm程度である場合に、ヘビーエッジは倍の60nm程度に調整されている。
【0013】
金属化フィルム柱体の該電極取り出し面以外の周面にはポリエチレンテレフタレート(PET)などからなる外装フィルム(防水性フィルム)がたとえば数十回程度巻装されて当該周面を被覆している。
【0014】
巻回し型もしくは積層型の金属化フィルム柱体の両端の電極取り出し面を、たとえば容器内に収容された液性の導電性接着剤の内部に浸漬し、引き上げて乾燥させることによって導電性接着剤からなる外部電極が形成できる。そして、この外部電極が引き上げられて所望する接着強度を発現した段階でバスバーなどの外部引き出し端子を外部電極に接着することにより、金属化フィルムコンデンサが形成できる。
【0015】
ここで、本明細書において「低透湿性」とは、本発明者等による実験結果に基づいて、被膜の透湿度として、24時間あたりで10g/m程度かそれ以下の透湿度を示すものである。そして、この低透湿性のある熱硬化性樹脂接着剤として、エポキシ樹脂系接着剤もしくはポリイミド樹脂系接着剤のいずれか一種を適用するのが好ましい。
【0016】
また、熱溶融製樹脂接着剤中に含有される導電性フィラーとしては、亜鉛やニッケル、銅、銀、金、コバルト、アルミニウムなどのいずれか一種、もしくは2種以上を混合したものを挙げることができる。
【0017】
本発明者等によれば、低透湿性の熱硬化性樹脂接着剤内に導電性フィラーが含有されてなる導電性接着剤はその粘度が50〜100Pa・sec程度と高い粘度を呈することから、1回の浸漬のみである程度の厚み(1mm程度かそれ以上)の外部電極が形成できる。なお、所望厚みとなるように、浸漬と引き上げと乾燥を複数回繰り返して外部電極を形成してもよい。
【0018】
本発明の金属化フィルムコンデンサは、金属化フィルム柱体の電極取り出し面に対して導電性接着剤からなる外部電極が接着固定され、さらに、バスバー等がこの外部電極に接着固定される構成であることから、従来の金属化フィルムコンデンサのようにメタリコン電極とバスバー等がはんだ接合されていた構造に比して、部品点数を低減することができ、はんだ接合時に金属化フィルム柱体を構成する金属化フィルム等にはんだ熱が作用し、この熱負荷によって金属化フィルム等がダメージを受け易いといった課題を解消することができる。また、導電性接着剤の内部に金属化フィルム柱体の電極取り出し面を浸漬して取り出し、乾燥させるだけの極めて簡易な方法で外部電極を形成できることから製作効率を格段に向上でき、さらには、金属溶射のように粉体を吹き付けて外部電極を形成するのに対して、導電性接着剤が液性であることから電極取り出し面の全面、および、金属化フィルム柱体の周囲の外装フィルムとの界面に対して隙間無く外部電極を形成することができる。
【0019】
また、導電性フィラーは扁平な形状であるのが好ましく、たとえば扁平な楕円形の長辺:bと短辺:aの比(アスペクト比)b/aが少なくとも5以上であるのが好ましい。
【0020】
導電性接着剤からなる外部電極内において、アスペクト比の高い導電性フィラーが含有されていることで、外部から外部電極に侵入して金属化フィルム柱体に通じようとする透湿のパス長を可及的に長くすることができ、導電性接着剤固有の低透湿性能と相俟ってより一層耐湿性に優れた外部電極となる。
【0021】
さらに、本発明による金属化フィルムコンデンサの好ましい実施の形態として、前記外部電極において、導電性接着剤中の前記導電性フィラーが50体積%以上含有されているのがよい。
【0022】
本発明者等によれば、導電性フィラーの含有量が全体の50体積%未満の場合は、外部電極の抵抗が大きくなり過ぎてしまうという知見に基づくものである。
【発明の効果】
【0023】
以上の説明から理解できるように、本発明の金属化フィルムコンデンサによれば、低透湿性の熱硬化性樹脂接着剤内に導電性フィラーが含有されてなる導電性接着剤で形成された外部電極を金属化フィルム柱体の電極取り出し面に接着固定させた構成を適用したことにより、ケースレスであってケース内の封止樹脂体も存在しない構成であるにもかかわらず、メタリコン電極を有する従来構造では透湿度が最も高くなっている外部電極の透湿度を格段に低減することができ、もって耐透湿性能に優れた金属化フィルムコンデンサを提供することができる。また、この金属化フィルムコンデンサは、金属化フィルム柱体とその両端の比較的薄層の導電性接着剤からなる外部電極、およびこの外部電極に接着固定されたバスバー等のみから構成されることから、体格も小さく、軽量な金属化フィルムコンデンサとなる。さらに、導電性接着剤から外部電極が形成され、バスバー等がこの外部電極に接着固定されることから、従来の金属溶射によってメタリコン電極を形成し、これにバスバー等をはんだ接合するものに比して、部品点数た製作工数を低減でき、はんだ接合時に金属化フィルム柱体を構成する金属化フィルム等にはんだ熱が作用し、この熱負荷によって金属化フィルム等がダメージを受け易いといった課題を解消することができる。また、外部電極の形成方法として導電性接着剤の内部に金属化フィルム柱体の電極取り出し面を浸漬して取り出し、乾燥させるだけの極めて簡易な方法で外部電極を形成できることから、外部電極の製作効率を格段に向上させることができ、かつ、金属溶射のように粉体を吹き付けて外部電極を形成する方法に対して、導電性接着剤が液性であることから電極取り出し面の全面に隙間無く外部電極を形成でき、もって高品質な金属化フィルムコンデンサとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の金属化フィルムコンデンサの縦断面図である。
【図2】図1のII部の拡大図であって外部電極の内部構造を模擬した図である。
【図3】(a),(b)の順に、本発明の金属化フィルムコンデンサの外部電極の形成方法を説明した図である。
【図4】(a)は、従来構造の金属化フィルムコンデンサを構成する金属化フィルム柱体、外装フィルムおよび金属溶射部それぞれの透湿度を測定する実験で使用した金属化フィルムコンデンサモデルの斜視図であり、(b)は(a)のb−b矢視図である。
【図5】従来構造の金属化フィルムコンデンサを構成する金属化フィルム柱体、外装フィルムおよび金属溶射部それぞれの透湿度を測定した実験結果を示すグラフである。
【図6】図1で示す金属化フィルムコンデンサに関し、導電性接着剤からなる外部電極(実施例)、従来のメタリコン電極(比較例)それぞれの透湿度を測定した実験結果を示すグラフである。
【図7】従来のケースを具備する金属化フィルムコンデンサを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の金属化フィルムコンデンサの実施の形態を説明する。
【0026】
(金属化フィルムコンデンサの構成)
図1は、本発明の金属化フィルムコンデンサの一実施の形態を縦断面図で示したものである。図示する金属化フィルムコンデンサ10は、金属化フィルムが巻装されてなる金属化フィルム柱体1と、その周囲を被覆する外装フィルム4と、金属化フィルム柱体1の両端の2つの電極取り出し面に形成された導電性接着剤からなる外部電極2,2と、この外部電極2,2のそれぞれに接着固定された外部引き出し端子3,3(バスバー)とから大略構成されている。また、この金属化フィルムコンデンサ10はケースレス構造を呈しており、したがって、ケース内にモールドされるモールド樹脂体も当然に存在しない。
【0027】
金属化フィルム柱体1の具体的な構成は、不図示の金属蒸着膜が不図示の誘電体フィルムの一側面に形成されて金属化フィルムが形成され、この金属化フィルムを2枚積層して一組とし(2枚一対の金属化フィルム)、この2枚一対の金属化フィルムが巻き回されて構成されている。
【0028】
ここで、一組の金属化フィルムの一方の誘電体フィルムの一側面に形成された金属蒸着膜は、その長手方向に沿う一方端が一方の外部電極2に密着しており、その長手方向に沿う他方端には、他方の外部電極2から絶縁されるべく、たとえば2mm程度の隙間領域(絶縁マージン)が設けられている。また、金属蒸着膜のうちで上記外部電極2に密着している端部は、電極接触を保証するために他の部位よりも厚めのいわゆるヘビーエッジとなっており、たとえば、金属蒸着膜の一般部が30nm程度である場合に、ヘビーエッジは倍の60nm程度に調整される。
【0029】
ここで、誘電体フィルムは、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などから形成でき、金属蒸着膜は、アルミニウムや亜鉛、銅などを誘電体フィルム表面に蒸着することで形成される。
【0030】
金属化フィルム柱体1のうち、電極取り出し面以外の周囲を被覆する外装フィルム4は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などからなる防水性フィルムがたとえば数十回程度巻装されて形成される。
【0031】
また、外部電極2を形成する低透湿性の熱硬化性樹脂接着剤として、エポキシ樹脂系接着剤もしくはポリイミド樹脂系接着剤のいずれか一種を適用するのが好ましく、この熱溶融製樹脂接着剤中に含有される導電性フィラーとしては、亜鉛やニッケル、銅、銀、金、コバルト、アルミニウムなどのいずれか一種、もしくは2種以上を混合したものを挙げることができる。なお、ここで、「低透湿性」とは被膜の透湿度として、24時間あたりで10g/m程度かそれ以下の透湿量を示すものである。
【0032】
この外部電極2の内部構造を図2に示している。同図で示すように、導電性接着剤からなる外部電極2は、熱硬化性樹脂接着剤2a内に多数の導電性フィラー2bが含有したものであるが、この導電性フィラー2bの平面形状は扁平であるのが好ましく、扁平な楕円形の長辺:bと短辺:aの比(アスペクト比)b/aが少なくとも5以上であるのがよい。
【0033】
導電性フィラー2bが扁平形状であり、そのアスペクト比が高いことによって、外部から外部電極2に浸入して(図2のY1方向)金属化フィルム柱体1に通じようとする透湿のパス(pass1,pass2)の長さを可及的に長くすることができ、熱硬化性樹脂接着剤2a固有の低透湿性能と相俟ってより一層耐湿性に優れた外部電極2となる。
【0034】
図示する金属化フィルムコンデンサ10は、従来構造のメタリコン電極を有する金属化フィルムコンデンサを構成する構成要素の中で最も透湿度の高いメタリコン電極(金属溶射部)を廃し、その代わりに、低透湿性の熱硬化性樹脂接着剤2a内に導電性フィラー2bが含有されてなる導電性接着剤で形成された外部電極2を金属化フィルム柱体1の電極取り出し面に設けたことにより、ケースレスであってケース内のモールド樹脂体も存在しない構成であるにもかかわらず、耐透湿性能に優れた金属化フィルムコンデンサ10となる。なお、金属化フィルムコンデンサ10の耐湿性能に関しては、後述する実験結果で詳細に説明する。また、この金属化フィルムコンデンサ10は、金属化フィルム柱体1とその両端の比較的薄層の導電性接着剤からなる外部電極2,2、およびこの外部電極2,2に接着固定された外部引き出し端子3,3のみから構成されることから、体格も小さく、軽量な金属化フィルムコンデンサとなる。
【0035】
(外部電極の形成方法)
図3a,bはその順で、金属化フィルムコンデンサの外部電極の形成方法のフロー図となっている。
【0036】
まず、図3aで示すように、容器Y内に収容されたエポキシ樹脂系接着剤もしくはポリイミド樹脂系接着剤のいずれか一種からなる液性の導電性接着剤2’の中に、金属化フィルム柱体1の電極取り出し面を浸漬させ(X1方向)、取り出して乾燥させる。
【0037】
この浸漬と乾燥は1回でもよいし、所望する厚みが比較的厚い場合は複数回実施してもよい。
【0038】
液性の導電性接着剤2’に電極取り出し面が浸漬されることから、電極取り出し面の全面および外装フィルム4との界面に対して隙間無く外部電極2を形成することができる。
【0039】
金属化フィルム柱体1の2つの電極取り出し面の双方に上記する浸漬と乾燥をおこなって双方に導電性接着剤からなる外部電極2,2が形成されたら(より詳細には、所望の接着強度が発現したら)、図3bで示すように外部引き出し端子3,3を双方の外部電極2,2に接着固定して金属化フィルムコンデンサ10が形成される。
【0040】
このように、導電性接着剤2’の内部に金属化フィルム柱体1の電極取り出し面を浸漬して取り出し、乾燥させるだけの極めて簡易な方法で外部電極2が形成されることから、外部電極2の製作効率、ひいては金属化フィルムコンデンサ10の製作効率を格段に向上させることができる。
【0041】
[従来の金属化フィルムコンデンサを構成する金属化フィルム柱体、外装フィルムおよび金属溶射部それぞれの透湿度を測定した実験とその結果]
本発明者等は、図4aとそのb−b矢視図である図4bで示すように、金属化フィルム柱体とその周囲の外装フィルム、およびその両端部の金属溶射部からなる金属化フィルムコンデンサモデルM(長さ100mm、幅40mm、厚み20mm)を作成し、各部の透湿度を測定する実験をおこなった。より具体的には、金属化フィルム柱体はその構成要素であるポリプロピレン(PP)からなる誘電体フィルムを測定対象とし、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる外装フィルムと亜鉛素材の金属溶射部(メタリコン)の各透湿度を測定した。なお、本実験は、25℃で湿度90%RHの室内でおこなっている。その結果を図5に示す。
【0042】
同図より、誘電体フィルムの透湿度、外装フィルムの透湿度およびメタリコンの透湿度がそれぞれ11g/m(24時間)、2g/m(24時間)、130g/m(24時間)となっており、低透湿度である誘電体フィルムおよび外装フィルムに対して、メタリコンの透湿度は格段に高いものであることが特定されている。
【0043】
本発明の金属化フィルムコンデンサはこの実験結果に基づき、透湿度の高い透湿経路である金属溶射部に代えて、低透湿性の熱硬化性樹脂接着剤内に導電性フィラーが含有されてなる導電性接着剤から外部電極を形成したものであり、この外部電極によって耐透湿性に優れた金属化フィルムコンデンサとしたものである。
【0044】
次に、図4で示す金属化フィルムコンデンサモデルMを使用して、金属溶射部(メタリコン)からの透湿量の試算結果と、低減が可能な透湿量に関する試算結果を以下に示す。
【0045】
まず、2つのメタリコンの端面の総面積は700×2面=1400mmであり、外装フィルムの面積は10000mmである。
【0046】
金属化フィルムコンデンサ内部への透湿量としては、メタリコン面からの透湿量が、130(g/m/日)×0.0014m=0.182(g/日)であり、外装フィルムからの透湿量が、2(g/m/日)÷20(巻回数による厚み要素)×0.01m=0.001(g/日)である。
【0047】
この試算結果より、メタリコン面からの透湿量が99.5%を占めることが分かった。そこで、仮にこのメタリコン面の透湿度をPET外装フィルムを20回巻回した場合に相当する0.1(g/m/日)に低減できれば、透湿量は0.001(g/日)+0.1(g/m/日)×0.0014m=0.00114(g/日)となり、当初の透湿量の1/160まで低減することが可能となる。
【0048】
この試算結果からも、低透湿性の熱硬化性樹脂接着剤内に導電性フィラーが含有されてなる導電性接着剤から外部電極を形成することにより、耐透湿性に優れた金属化フィルムコンデンサが得られることが分かる。
【0049】
[図1で示す金属化フィルムコンデンサに関し、導電性接着剤からなる外部電極(実施例)、従来のメタリコン電極(比較例)それぞれの透湿度を測定した実験とその結果]
本発明者等は、JIS Z 0208で規定するカップ法を適用して以下表1で示す各種成分からなる厚みが1mmの外部電極の試験片を作成し、25℃で湿度90%RHの条件下における透湿度を測定する実験をおこなった。試験結果を図6に示す。
【0050】
[表1]

【0051】
図6より、実施例1〜5の透湿度はいずれも24時間あたりで5g/m程度かそれ以下の透湿度となっているのに対して、メタリコン電極を有する比較例は130g/mと高い透湿度となることが実証されている。
【0052】
本実験結果より、金属化フィルムコンデンサの外部電極として、低透湿性の熱硬化性樹脂接着剤内に導電性フィラーが含有されてなる導電性接着剤からなる外部電極を適用することにより、その耐湿性が格段に向上することが実証されている。
【0053】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
1…金属化フィルム柱体、2…導電性接着剤からなる外部電極、2a…熱硬化性樹脂接着剤、2b…導電性フィラー、2’…液性の導電性接着剤、3…外部引き出し端子(バスバー)、4…外装フィルム、10…金属化フィルムコンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属化フィルムを巻き回し、もしくは積層させてなる金属化フィルム柱体の2つの電極取り出し面に外部電極が形成され、金属化フィルム柱体の電極取り出し面以外の領域を外装フィルムが被覆してなる金属化フィルムコンデンサにおいて、
前記外部電極は、低透湿性の熱硬化性樹脂接着剤内に導電性フィラーが含有されてなる導電性接着剤で形成されている金属化フィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記低透湿性の熱硬化性樹脂接着剤がエポキシ樹脂系接着剤もしくはポリイミド樹脂系接着剤のいずれか一種である請求項1に記載の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記外部電極において、導電性接着剤中の前記導電性フィラーが50体積%以上含有されている請求項1または2に記載の金属化フィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−234919(P2012−234919A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101457(P2011−101457)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】