説明

金属化フィルムコンデンサ

【課題】耐電圧性能および寿命特性に優れた金属化フィルムコンデンサを提供する。
【解決手段】少なくとも片面に蒸着電極を設けた金属化フィルム1Aを用いた金属化フィルムコンデンサであって、絶縁スリット5、6により分割形成された複数の分割電極2a、2bを有する第1および第2分割電極部2A、2Bと、分割電極2a、2bよりも電極面積が大きな大電極部3A、3Bとを備え、分割電極2aは、絶縁スリット間5に形成された第1ヒューズ部7aを介して大電極部3Aに接続され、かつ第2ヒューズ部7bを介して大電極部3Bに接続され、分割電極2bは、絶縁スリット6間に形成された第3ヒューズ部8を介して大電極部3Bに接続されており、第3ヒューズ部8の幅WBは、第1ヒューズ部7aおよび第2ヒューズ部7bの幅WA1、WA2よりも大きいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機器および自動車用等のインバータ回路の平滑用、フィルタ用に使用する金属化フィルムコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、インバータ回路の平滑用等に使用する金属化フィルムコンデンサは、高温・高電圧で使用することから、安全性が強く要求されている。このため、かかる用途に使用する金属化フィルムコンデンサには、図4に示すように、分割電極部2A、2Bおよび非分割電極部3A、3Bを備えた金属化フィルム10が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4に示す金属化フィルム10は、該金属化フィルム10の幅方向の一方端に電極引き出し用のメタリコン部が接続されるメタリコン接続部4aが形成され、他方端に絶縁マージン4bが形成されている。
【0004】
金属化フィルム10の絶縁マージン4b側には、複数のY字形絶縁スリット6が長手方向に一定ピッチで配列されており、Y字形絶縁スリット6の基端部は絶縁マージン4bに接続されている。
また、金属化フィルム10の幅方向の略中央には、Y字形絶縁スリット6とほぼ同じピッチで、該Y字形絶縁スリット6の配列方向と平行に、1列のミュラー・リヤー形(金属化フィルム10の幅方向に伸びる線分の両端に内向きの矢羽根を有する形状)絶縁スリット5が配列されている。
【0005】
分割電極部2A、2Bは、ミュラー・リヤー形絶縁スリット5により蒸着電極が分割形成された、複数の分割電極2aを有する第1分割電極部2Aと、Y字形絶縁スリット6により蒸着電極が分割形成された複数の分割電極2bを有する第2分割電極部2Bとを含んでいる。
また、第1分割電極部2Aのメタリコン接続部4a側には、蒸着電極が長手方向に連続した非分割電極部3Aが隣接配置されており、第1分割電極部2Aの絶縁マージン4b側(第1分割電極部2Aと第2分割電極部2Bの間)には、非分割電極部3Bが隣接配置されている。
【0006】
分割電極2aは、ミュラー・リヤー形絶縁スリット5のメタリコン接続部4a側の端部間に形成された第1ヒューズ部7aを介して非分割電極部3Aに接続され、かつミュラー・リヤー形絶縁スリット5の絶縁マージン4b側の端部間に形成された第2ヒューズ部7bを介して非分割電極部3Bに接続されている。
また、分割電極2bは、Y字形絶縁スリット6の先端部間に形成された第3ヒューズ部8を介して非分割電極部3Bに接続されている。なお、第1ヒューズ部7aの幅WA1、第2ヒューズ部7bの幅WA2および第3ヒューズ部8の幅WBは同一とされている。
【0007】
かかる金属化フィルム10を用いた金属化フィルムコンデンサでは、例えば、分割電極2aに絶縁破壊(クリア)が生じた場合、非分割電極部3A、3Bから絶縁破壊を起こした分割電極2aに大電流が流れ込む。
これにより、第1および第2ヒューズ部7a、7bが動作(第1および第2ヒューズ部7a、7bの蒸着電極が飛散)して、絶縁破壊を起こした分割電極2aが非分割電極部3A、3Bから絶縁分離される。したがって、金属化フィルム10を用いた金属化フィルムコンデンサによれば、高い安全性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−182848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、金属化フィルム10を用いた従来の金属化フィルムコンデンサでは、図5に示すように、分割電極2a、2bに同規模の絶縁破壊C1、C2が生じた場合、絶縁破壊C1を起こした分割電極2aに流れ込む総電流量(総エネルギー量)と絶縁破壊C2を起こした分割電極2bに流れ込む総電流量は等しくなるので、第3ヒューズ部8を流れる電流EBは、第1ヒューズ部7aを流れる電流EA1と第2ヒューズ部7bを流れる電流EA2の和と等しくなる。
すなわち、第3ヒューズ部8には、第1ヒューズ部7aや第2ヒューズ部7bに流れる電流EA1、EA2よりも大きな電流EBが流れることになる。
【0010】
ここで、従来の金属化フィルムコンデンサでは、第1ヒューズ部7aの幅WA1、第2ヒューズ部7bの幅WA2および第3ヒューズ部8の幅WBが同一であるため、従来の金属化フィルムコンデンサでは、第1ヒューズ部7a、第2ヒューズ部7bおよび第3ヒューズ部8が適切に動作しない場合があった。具体的には、第1ヒューズ部7aや第2ヒューズ部7bの動作が遅れてしまうことがあったり、第3ヒューズ部8が、本来動作する必要がないくらいの小さな絶縁破壊に対しても動作してしまうことがあった。
したがって、絶縁破壊C1、C2が生じるような場合、従来の金属化フィルムコンデンサでは、耐電圧性能の低下や寿命特性の低下を招くおそれがあった。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、耐電圧性能および寿命特性に優れた金属化フィルムコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る金属化フィルムコンデンサは、誘電体フィルムの少なくとも片面に蒸着電極を設けた金属化フィルムを、巻回または積層してコンデンサ素子を形成し、該コンデンサ素子の両端面に電極引き出し用のメタリコン部を接続した金属化フィルムコンデンサであって、
蒸着電極は、金属化フィルムの長手方向に所定の間隔で配列された絶縁スリットにより分割形成された複数の分割電極を有する分割電極部と、分割電極よりも電極面積が大きな、少なくとも1つの大電極を有する大電極部とを備え、
分割電極部および大電極部は、金属化フィルムの幅方向に交互に配置され、かつ分割電極部が、両側に大電極部が配置された第1分割電極部と、片側にのみ大電極部が配置された第2分割電極部とを含み、
第1分割電極部における分割電極は、該分割電極の幅方向一方側の絶縁スリット間に形成された第1ヒューズ部を介して一方側に隣接配置された大電極に接続され、かつ該分割電極の幅方向他方側の絶縁スリット間に形成された第2ヒューズ部を介して他方側に隣接配置された大電極に接続され、
第2分割電極部における分割電極は、該分割電極の片側にのみ存在する絶縁スリット間に形成された第3ヒューズ部を介して大電極に接続されており、
第3ヒューズ部の幅は、第1ヒューズ部および第2ヒューズ部の幅よりも大きいことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、第3ヒューズ部の幅が第1ヒューズ部や第2ヒューズ部の幅よりも大きいので、第3ヒューズ部に流すことができる許容電流(第3ヒューズ部を動作させるのに必要な電流)を、第1ヒューズ部や第2ヒューズ部に流すことができる許容電流(第1ヒューズ部および第2ヒューズ部を動作させるのに必要な電流)よりも大きくすることができる。
したがって、この構成によれば、第1ヒューズ部および第2ヒューズ部を確実に動作させることができるとともに、第3ヒューズ部を動作させる必要がないくらいの小さな絶縁破壊が生じた場合に、第3ヒューズ部が動作してしまうのを防ぐことができる。
【0014】
また、本発明に係る金属化フィルムコンデンサにおいて、第3ヒューズ部の幅は、第1ヒューズ部の幅と第2ヒューズ部の幅の和以下であることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、第3ヒューズ部を動作させるべき絶縁破壊が生じた場合に、より確実に第3ヒューズ部を動作させることができるので、第3ヒューズ部の保安性能を高めることができ、高い安全性を確保することができる。
【0016】
また、本発明に係る金属化フィルムコンデンサにおいて、第3ヒューズ部の各々は、複数のヒューズにより構成されていてもよく、第3ヒューズ部の幅は、該複数のヒューズの幅の和であってもよい。
【0017】
そして、上記大電極は、蒸着電極が長手方向に連続した非分割電極であるか、または、蒸着電極が所定の間隔よりも大きな間隔で配列された絶縁スリットにより分割形成された大分割電極であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐電圧性能および寿命特性に優れた金属化フィルムコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る金属化フィルムコンデンサを構成する金属化フィルムの平面図である。
【図2】本発明における金属化フィルムの第1変形例を示す平面図である。
【図3】本発明における金属化フィルムの第2変形例を示す平面図である。
【図4】従来の金属化フィルムコンデンサを構成する金属化フィルムの平面図である。
【図5】絶縁破壊時における各ヒューズ部の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0021】
図1に、本発明の一実施形態に係る金属化フィルムコンデンサを構成する金属化フィルム1Aの平面図を示す。
同図に示す金属化フィルム1Aは、誘電体フィルムの少なくとも片面に蒸着電極が設けられたものであり、該金属化フィルム1Aの幅方向(以下、単に「幅方向」)の一方端に電極引き出し用のメタリコン部が接続されるメタリコン接続部4aが形成され、他方端に絶縁マージン4bが形成されている。
【0022】
金属化フィルム1Aの絶縁マージン4b側には、複数のY字形絶縁スリット6が金属化フィルム1Aの長手方向(以下、単に「長手方向」)に一定ピッチで配列されており、Y字形絶縁スリット6の基端部は絶縁マージン4bに接続されている。
また、金属化フィルム1Aの幅方向の略中央には、Y字形絶縁スリット6とほぼ同じピッチで、該Y字形絶縁スリット6の配列方向と平行に1列のミュラー・リヤー形絶縁スリット5が配列されている。
【0023】
蒸着電極は、分割電極部2A、2Bおよび本発明の「大電極部(大電極)」に相当する非分割電極部3A、3Bから構成されており、絶縁マージン4b、ミュラー・リヤー形絶縁スリット5およびY字形絶縁スリット6を除いた領域に設けられている。
【0024】
分割電極部2A、2Bは、ミュラー・リヤー形絶縁スリット5により分割形成された複数の分割電極2aを有する第1分割電極部2Aと、Y字形絶縁スリット6により分割形成された複数の分割電極2bを有する第2分割電極部2Bとを含んでいる。
【0025】
第1分割電極部2Aのメタリコン接続部4a側には、蒸着電極が長手方向に連続した非分割電極部3Aが隣接配置されており、第1分割電極部2Aの絶縁マージン4b側(第1分割電極部2Aと第2分割電極部2Bの間)には、非分割電極部3Bが隣接配置されている。
つまり、本実施形態に係る金属化フィルムコンデンサにおいては、分割電極部2A、2Bと非分割電極部3A、3Bが幅方向に交互に配置されており、2つの分割電極部2A、2Bのうち、分割電極部2Aは両側に非分割電極部3A(3B)が配置されているが、分割電極部2Bは片側にのみ非分割電極部3Bが配置されている。
【0026】
分割電極2aは、ミュラー・リヤー形絶縁スリット5のメタリコン接続部4a側の端部間に形成された第1ヒューズ部7aを介して非分割電極部3Aに接続され、かつミュラー・リヤー形絶縁スリット5の絶縁マージン4b側の端部間に形成された第2ヒューズ部7bを介して非分割電極部3Bに接続されている。
【0027】
第1ヒューズ部7aの各々および第2ヒューズ部7bの各々は、1つのヒューズから構成されている。第1ヒューズ部7aの幅(第1ヒューズ部7aを構成するヒューズの幅)WA1は、第2ヒューズ部7bの幅(第2ヒューズ部7bを構成するヒューズの幅)WA2と同じである。
【0028】
分割電極2bは、Y字形絶縁スリット6の先端部間に形成された第3ヒューズ部8を介して非分割電極部3Bに接続されている。第3ヒューズ部8の各々は、1つのヒューズから構成されており、第3ヒューズ部8の幅(第3ヒューズ部8を構成するヒューズの幅)WBは、第1ヒューズ部7aの幅WA1や第2ヒューズ部7bの幅WA2よりも大きくなっている。
【0029】
[実施例1]
実施例1に係る金属化フィルムコンデンサは、上記の金属化フィルム1Aをメタリコン接続部4aと絶縁マージン4bとが対向するように2枚重ねて巻回し、両端に電極引き出し用のメタリコン部を接続してコンデンサ素子を形成し、該コンデンサ素子5個を電極板で結線して引き出し端子を接続し、ケースに収納してエポキシ樹脂を充填、硬化させたものである。
【0030】
実施例1に係る金属化フィルムコンデンサでは、第1ヒューズ部7aの幅WA1を0.3mm、第2ヒューズ部7bの幅WA2を0.3mm、第3ヒューズ部8の幅WBを0.5mmとしている。
【0031】
[実施例2]
実施例2に係る金属化フィルムコンデンサは、第3ヒューズ部8の幅WBを0.6mmとしたこと以外の点において、実施例1に係る金属化フィルムコンデンサと共通している。
【0032】
[実施例3]
実施例3に係る金属化フィルムコンデンサは、第2ヒューズ部7bの幅WA2を0.2mmとしたこと以外の点において、実施例1に係る金属化フィルムコンデンサと共通している。
【0033】
[実施例4]
実施例4に係る金属化フィルムコンデンサは、第3ヒューズ部8の幅WBを0.8mmとしたこと以外の点において、実施例1に係る金属化フィルムコンデンサと共通している。
【0034】
[従来例]
従来例の金属化フィルムコンデンサは、第1〜第3ヒューズ部7a、7b、8の幅WA1、WA2、WBをすべて0.3mmとしたこと以外の点において、実施例1に係る金属化フィルムコンデンサと共通している。
【0035】
上記の実施例1〜4および従来例の金属化フィルムコンデンサを用いて、高温バイアス試験(温度105℃、280V/μm、1000時間印加)を実施し、試験終了後、これらの金属化フィルムコンデンサの容量変化率および保安性能(第3ヒューズ部8の動作性能)を測定した。その測定結果を表1に示す。
【0036】
なお、表1において、保安性能の欄の○は、第3ヒューズ部8が適切に動作した状態、言い換えれば、ある一つの金属化フィルムにおいて絶縁破壊が生じた際に、該破壊による影響が積層方向の上下1枚の金属化フィルムにしか及んでいなかったことを意味する。
また、保安性能の欄の△は、容量変化率において問題がない場合であっても、ショート破壊を起こす可能性があることを意味する。
【0037】
【表1】

【0038】
[容量変化率の比較]
表1に示すように、実施例1〜4に係る金属化フィルムコンデンサは、従来例の金属化フィルムコンデンサよりも容量変化率が小さく、静電容量の減少が小さくなっている。
これは、従来例の金属化フィルムコンデンサは、第3ヒューズ部8を動作させる必要がないくらいの小さな絶縁破壊でも第3ヒューズ部8が動作してしまったのに対して、実施例1〜4に係る金属化フィルムコンデンサは、第3ヒューズ部8の幅WBが第1および第2ヒューズ部7a、7bの幅WA1、WA2よりも大きく、第1および第2ヒューズ部7a、7bに流れる電流よりも大きな電流を第3ヒューズ部8に流すことができるので、上記のような小さな絶縁破壊では、第3ヒューズ部8が動作しなかったためである。
【0039】
[保安性能の比較]
また、表1に示すように、実施例1〜3に係る金属化フィルムコンデンサは、第3ヒューズ部8の幅WBが第1および第2ヒューズ部7a、7bの幅WA1、WA2よりも大きく、かつ、第3ヒューズ部8の幅WBが第1ヒューズ部7aの幅WA1と第2ヒューズ部7bの幅WA2の和以下である。このような条件の実施例1〜3に係る金属化フィルムコンデンサによれば、表1に示すように、良好な保安性能を示す。
一方、実施例4に係る金属化フィルムコンデンサは、第3ヒューズ部8の幅WBが第1ヒューズ部7aの幅WA1と第2ヒューズ部7bの幅WA2の和よりも大きい。このような条件では、表1に示すように、保安性能が△(ショート破壊を起こす可能性あり)になっており、第3ヒューズ部8が本来動作すべき電流で動作しない場合がある。
したがって、この測定結果から、良好な保安性能を確保するためには、実施例1〜3に係る金属化フィルムコンデンサのように、第3ヒューズ部8の幅WBを第1ヒューズ部7aの幅WA1と第2ヒューズ部7bの幅WA2の和以下にするのが好ましいことが分かる。
【0040】
以上より、第3ヒューズ部8の幅WBを第1および第2ヒューズ部7a、7bの幅WA1、WA2よりも大きくすることにより、静電容量の減少を抑えることができる。
さらに、第3ヒューズ部8の幅WBを第1ヒューズ部7aの幅WA1と第2ヒューズ部7bの幅WA2の和以下にすることにより、静電容量の減少を抑えるだけではなく、良好な保安性能を得ることができる。
【0041】
[第1変形例]
次に、図2に、本発明に係る金属化フィルムコンデンサを構成する金属化フィルムの第1変形例を示す。
【0042】
図2に示す金属化フィルム1Bには、絶縁マージン4b側に、複数のT字形絶縁スリット16aが長手方向に一定ピッチで配列されており、T字形絶縁スリット16aの基端部は絶縁マージン4bに接続されている。T字形絶縁スリット16aの先端部間には矩形絶縁スリット16bが配列されている。
また、金属化フィルム1Bには、T字形絶縁スリット16aとほぼ同じピッチで、該T字形絶縁スリット16aの配列方向と平行に1列のI字形絶縁スリット15が配列されている。
【0043】
絶縁マージン4b、T字形絶縁スリット16a、矩形絶縁スリット16bおよびI字形絶縁スリット15を除いた領域には、複数の分割電極2aを有する第1分割電極部2Aと、複数の分割電極2bを有する第2分割電極部2Bと、蒸着電極が長手方向に連続した非分割電極部3A、3Bとを構成する蒸着電極が設けられている。
【0044】
分割電極2aは、I字形絶縁スリット15のメタリコン接続部4a側の端部間に形成された第1ヒューズ部7aを介して非分割電極部3Aに接続され、かつI字形絶縁スリット15の絶縁マージン4b側の端部間に形成された第2ヒューズ部7bを介して非分割電極部3Bに接続されている。
【0045】
分割電極2bは、T字形絶縁スリット16aの先端部間に形成された第3ヒューズ部8を介して非分割電極部3Bに接続されている。
【0046】
第3ヒューズ部8は、T字形絶縁スリット16aの先端部と矩形絶縁スリット16bの間に形成された2つのヒューズ8a、8bから構成されており、第3ヒューズ部8の幅WBは、ヒューズ8aの幅WB1とヒューズ8bの幅WB2の和になる。
【0047】
第3ヒューズ部8の幅WB(ヒューズ8aの幅WB1とヒューズ8bの幅WB2の和)は、図1に示す金属化フィルム1Aと同様に、第1ヒューズ部7aの幅WA1や第2ヒューズ部7bの幅WA2よりも大きくなっている。さらに、第3ヒューズ部8の幅WBは、第1ヒューズ部7aの幅WA1と第2ヒューズ部7bの幅WA2の和以下になっている。
【0048】
このため、本変形例に係る金属化フィルム1Bを用いた金属化フィルムコンデンサでは、第1および第2ヒューズ部7a、7bを確実に動作させることができるとともに、第3ヒューズ部8を動作させる必要がないくらいの小さな絶縁破壊に対して第3ヒューズ部8が動作してしまうのを防ぐことができる。
したがって、本変形例に係る金属化フィルムコンデンサによれば、静電容量の減少を防ぐことができ、耐電圧性能および寿命特性の低下を防ぐことができる。
【0049】
さらに、本変形例に係る金属化フィルムコンデンサでは、第3ヒューズ部8の幅WBが第1ヒューズ部7aの幅WA1と第2ヒューズ部7bの幅WA2の和以下になっているため、良好な保安性能を確保することもできる。
【0050】
[第2変形例]
図3に、本発明に係る金属化フィルムコンデンサを構成する金属化フィルムの第2変形例を示す。
【0051】
図3に示す金属化フィルム1Cは、非分割電極部3A、3Bの替わりに、絶縁スリット9により分割形成された大分割電極3a’、3b’を有する大分割電極部3A’、3B’(本発明の「大電極部」に相当)が形成されていること以外の点において、図1に示す金属化フィルム1Aと共通している。
【0052】
大分割電極3a’、3b’は、ミュラー・リヤー形絶縁スリット5やY字形絶縁スリット6の間隔よりも大きな間隔で配列された絶縁スリット9により分割形成されたものであるため、分割電極2a、2bよりも大きな電極面積を有している。
【0053】
本変形例に係る金属化フィルム1Cを用いた金属化フィルムコンデンサによれば、上記実施形態および第1変形例に係る金属化フィルムコンデンサと同様に、第1および第2ヒューズ部7a、7bを確実に動作させることができるとともに、第3ヒューズ部8を動作させる必要がないくらいの小さな絶縁破壊に対して第3ヒューズ部8が動作してしまうのを防ぐことができるので、耐電圧性能および寿命特性の低下を防ぐことができる。
【0054】
以上、本発明に係る金属化フィルムコンデンサの好ましい実施形態および変形例について説明したが、本発明は上記の構成に限定されるものではない。
【0055】
例えば、第1〜第3ヒューズ部7a、7b、8を構成するヒューズの数は、第3ヒューズ部8の幅WBが第1ヒューズ部7aの幅(第1ヒューズ部7aを構成するヒューズの幅の和)WA1や第2ヒューズ部7bの幅(第2ヒューズ部7bを構成するヒューズの幅の和)WA2よりも大きくなっていれば、任意に変更することができる。
【0056】
また、ミュラー・リヤー形絶縁スリット5やY字形絶縁スリット6等の絶縁スリットの形状や、これらの絶縁スリット間の間隔も、任意に変更することができる。
【符号の説明】
【0057】
1A、1B、1C 金属化フィルム
2A 第1分割電極部
2B 第2分割電極部
2a、2b 分割電極
3A、3B 非分割電極部
3A’、3B’ 大分割電極部
3a’、3b’ 大分割電極
4a メタリコン接続部
4b 絶縁マージン
5 ミュラー・リヤー形絶縁スリット
6 Y字形絶縁スリット
7a 第1ヒューズ部
7b 第2ヒューズ部
8 第3ヒューズ部
8a、8b ヒューズ
9 絶縁スリット
15 I字形絶縁スリット
16a T字形絶縁スリット
16b 矩形絶縁スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体フィルムの少なくとも片面に蒸着電極を設けた金属化フィルムを、巻回または積層してコンデンサ素子を形成し、該コンデンサ素子の両端面に電極引き出し用のメタリコン部を接続した金属化フィルムコンデンサであって、
前記蒸着電極は、前記金属化フィルムの長手方向に所定の間隔で配列された絶縁スリットにより分割形成された複数の分割電極を有する分割電極部と、前記分割電極よりも電極面積が大きな、少なくとも1つの大電極を有する大電極部とを備え、
前記分割電極部および前記大電極部は、前記金属化フィルムの幅方向に交互に配置され、かつ前記分割電極部が、両側に前記大電極部が配置された第1分割電極部と、片側にのみ前記大電極部が配置された第2分割電極部とを含み、
前記第1分割電極部における前記分割電極は、該分割電極の幅方向一方側の前記絶縁スリット間に形成された第1ヒューズ部を介して前記一方側に隣接配置された前記大電極に接続され、かつ該分割電極の幅方向他方側の前記絶縁スリット間に形成された第2ヒューズ部を介して前記他方側に隣接配置された前記大電極に接続され、
前記第2分割電極部における前記分割電極は、該分割電極の片側にのみ存在する前記絶縁スリット間に形成された第3ヒューズ部を介して前記大電極に接続されており、
前記第3ヒューズ部の幅は、前記第1ヒューズ部および前記第2ヒューズ部の幅よりも大きいことを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記第3ヒューズ部の幅は、前記第1ヒューズ部の幅と前記第2ヒューズ部の幅の和以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記第3ヒューズ部の各々は、複数のヒューズにより構成されており、
前記第3ヒューズ部の幅は、前記複数のヒューズの幅の和であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項4】
前記大電極は、前記蒸着電極が長手方向に連続した非分割電極であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項5】
前記大電極は、前記蒸着電極が前記所定の間隔よりも大きな間隔で配列された絶縁スリットにより分割形成された大分割電極であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属化フィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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