説明

金属及び非金属に適用可能な表面処理法

【課題】金属及び非金属に適用可能であり、環境汚染を有効に回避でき且つ製造コストが低減でき、耐腐食効果を有効に向上する。
【解決手段】ワークを定位するステップと、真空メッキステップと、電着ステップとを含む金属及び非金属に適用可能な表面処理法において、ワークを定位するステップは、表面処理しようとするワークを導電性の固定支持枠に掛けて、ワークの表面に底膜をスプレー塗布し、真空メッキステップは、底膜をスプレー塗布したワークと固定支持枠とを真空メッキ炉の定位盤に設置し、メッキ炉を真空にして電流を流すことにより、表面にメッキ金属層を付着させ、電着ステップは、表面にメッキ金属層を付着させたワークと固定支持枠とを電着液の入った電着槽内に設置することで、イオンを含む電着液をワークの表面に付着させ、耐腐食効果を持つ薄膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属及び非金属に適用可能な表面処理法に関する。特に、真空メッキによってワーク表面に金属層をメッキして、電着処理を施すことにより、表面にアクリル層をコーティングする表面処理法に関する。
【背景技術】
【0002】
引出やドアの取手または錠などのよく見られる品物や道具の表面には特殊な表面処理の施されることが一般的であり、品物の耐用性と外観を向上するために、メッキ処理を施すことが多い。一般のメッキは、まず、強酸溶液によってワークを洗浄し、表面のゴミを除去して、メッキ槽内に原料金属を設置して電流を流し、メッキ槽内にワークを設置し、電流によりイオン化した原料金属をワークに付着させることでメッキ層を形成し、最後に、メッキ層の表面に焼き塗料を塗布して、保護層を形成する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これには次のような欠点があった。
(イ)従来のメッキは大量の化学溶液を使用する必要があり、廃液処理設備を使用しないと、その高腐食性の化学溶液は環境に悪影響を与え且つ廃液処理設備を使用しても、環境に対する悪影響を無くすことはできなかった。
【0004】
(ロ)メッキは、電流によって原料金属を吸引してワーク表面に付着するので、導電性のワークでないとメッキの実施はできない。
【0005】
(ハ)メッキされたワークは、メッキ層の剥離防止および耐腐食効果を向上させるため、その表面にスプレー塗布などを施すことが一般的である。しかしながら、ペンキの耐腐食効果が良くなく且つペンキはワーク表面に均一に塗布することができないので、全体の耐腐食効果が良くない。
【0006】
(二)ワークのメッキ層は極めて薄いため、ワーク表面にある模様がより鋭い形態になって、柔らかい感じがなく且つ焼き塗料で処理されたワークは、耐磨耗性および光沢が良くない。
【0007】
(ホ)従来のメッキは、腐食性を持つ化学溶液を大量に使用する必要があり且つ廃液が大量に発生するので、廃液処理設備の設置が必要であるが、設備の購入価格が極めて高いので、製品の製造コストが増し且つ錆び止め効果を良くするために、まず、ワーク表面に銅をメッキし、次いで、ニッケルをメッキした後、銀をメッキするが、このようなメッキプロセスが極めて複雑であるため、製造コストが大幅に増加する。
【0008】
本発明の主な目的は、金属及び非金属に適用可能な表面処理法を提供することである。
【0009】
本発明の次の目的は、環境汚染を有効に回避でき、且つ製造コストが低減できる表面処理法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、耐腐食効果を有効に向上する表面処理法を提供することである。
【0011】
本発明のもう一つの目的は、ワーク表面の外観および光沢度を向上する表面処理法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するためになされた本発明は、ワークを固定するステップと、真空メッキステップと、電着ステップとを含む金属及び非金属に適用可能な表面処理法において、ワークを定位するステップは、表面処理しようとするワークを導電性の固定支持枠に掛からせて、ワーク表面に底膜をスプレー塗布し、真空メッキステップは、底膜をスプレー塗布したワークと固定支持枠とを真空メッキ炉の定位盤に嵌めて設置して、メッキ炉を真空にして電流を流すことにより、表面にメッキ金属層を付着させ、電着ステップは、表面にメッキ金属層を付着させたワークと固定支持枠とを電着液の入った電着槽内に設置することにより、イオンを含む電着液をワーク表面に付着させ、耐腐食効果を持つ薄膜を形成することを特徴とする金属及び非金属に適用可能な表面処理法であることを特徴としている。
【0013】
本発明では、前記電着槽内の電着液はイオンを含むアクリル溶液であることを特徴とする請求項1に記載の金属及び非金属に適用可能な表面処理法であることを特徴としている。
【0014】
本発明では、ワーク表面に底膜をスプレー塗布した後、乾燥設備によって乾燥して真空メッキを施すことを特徴とする請求項1に記載の金属及び非金属に適用可能な表面処理法であることを特徴としている。
【0015】
本発明では、上記各ステップにおいて、電着作業が完了するまでにワークが固定支持枠に固定されることを特徴とする請求項1に記載の金属及び非金属に適用可能な表面処理法であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る表面処理法によれば、金属及び非金属に適用可能になり、環境汚染を有効に回避でき且つ製造コストが低減でき、耐腐食効果およびワーク表面の外観と光沢が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
まず、図1乃至図6を参照する。本発明はワーク表面処理法であって、ワーク20の定位ステップと、底膜50の塗布ステップと、乾燥ステップと、真空メッキステップと、電着ステップと、焼きステップと、ワーク降ろしステップなどのステップを有する。
【0019】
ワーク20の定位ステップは、複数の固定支持枠10が設けてあり、前記固定支持枠10の両端には定位部11がそれぞれ設けてあり、固定支持枠10の中段には爪状の支持ロッド12が複数設けてあり、図2と図3に示すように、支持ロッド12にワーク20を一つずつ掛けて固定する。
【0020】
底膜50の塗布ステップは、ワーク20が掛かっている複数の固定支持枠10を特定位置に固定して、ワーク20の表面に金属粒子が容易に付着できる底膜50をスプレー塗布する。
【0021】
乾燥ステップは、底膜を塗布したワーク20を固定支持枠10と一緒に乾燥設備内に入れて焼くことにより、底膜を乾燥し硬化する。
【0022】
真空メッキステップは、図4に示すように、底膜50を塗布して乾燥されたワーク20を固定支持枠10と一緒に真空メッキ炉30に入れ、前記真空メッキ炉30は、密封された炉体であり、内部の一方には固定支持枠10を固定するための定位盤31が設けてあり、他方には電源組300が設けてあり、前記電源組300は主に二つの電極ロッド32を有し、前記電極ロッド32の間にはタングステンワイヤ33が連接してあり、前記タングステンワイヤ33の外周に原料金属34が巻いてあり、メッキするときに、炉内を真空状態にして、二つの電極ロッド32に電流を流してタングステンワイヤ33を高温にし、ひいてはタングステンワイヤ33上の原料金属34が微細な粒子になってワーク20の表面の底膜50に付着し、金属メッキ層51を形成する。
【0023】
電着ステップは、図5に示すように、真空メッキされたワーク20を固定支持枠10と一緒に電着箇所に運搬し、アクリル電着液41の入った電着槽40内に固定支持枠10とワーク20とを設置し、ワーク20と固定支持枠10とは導電性であるため、イオンを持つアクリル電着液41がワーク20の表面に付着し、これにより、耐腐食効果が極めて良いアクリル膜52が形成される。
【0024】
焼きステップは、電着処理を実施されたワーク20を固定支持枠10と一緒にオーブンに入れて加熱し、アクリル膜52を硬化する。
【0025】
ワーク降ろしステップは、各ワーク20を固定支持枠10の支持ロッド12から降ろす。そうすることで、表面処理が完了する。
【0026】
上記ステップにより、ワーク10の表面に底膜50が塗布され、底膜50によってワーク20の表面の微細な穴が埋められることでワーク20の表面がスムーズになり、また、真空メッキによってワーク20の表面に金属メッキ層51を形成する。本発明は真空メッキを使用し、化学溶液は一切使用しないので、環境汚染の恐れが全くない。
【0027】
また、本発明は、金属または非金属のワーク20の表面に底膜50を塗布することで、メッキ作業を実施することができるので、各種類の金属または非金属のワーク20に適用することができ、且つ導電性材料でないと電着作業を施すことができないので、非金属のワーク20に真空メッキを実施した後、その表面にメッキ金属層51が形成され、ワーク20のメッキ金属層51が固定支持枠10と接触するので、真空メッキされたワーク20を固定支持枠10と一緒に電着槽40内に設置すると、電着液41内のアクリルイオンがメッキ層の金属に付着し、アクリル層52が形成される。乾燥されたアクリル層52は極めて硬いので、その耐磨耗性および耐腐食性は焼きペンキを施した表面よりも遥かに優れている。そのため本発明に係るワーク20の表面に、図6に示すように、底膜50と、メッキ金属層51と、アクリル層52とを順に形成することで、ワーク20の耐磨耗性、耐腐食性および光沢が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る金属及び非金属の表面処理を実施することで、表面の耐腐食性、外観、光沢を良く出来るだけではなく、従来の表面処理技術に比べて、環境汚染および製造コストを大幅に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施のプロセスチャートである。
【図2】本発明に係る固定支持枠とワークとの斜視概略図である。
【図3】本発明に係るワークが固定支持枠の支持ロッドに係れた状態を示す概略図である。
【図4】本発明に係るワークに真空メッキを実施することを示す概略図である。
【図5】本発明に係るワークに電着を実施することを示す概略図である。
【図6】ワークは本発明によって表面処理を実施した状態の断面概略図である。
【符号の説明】
【0030】
10 固定支持枠
11 定位部
12 支持ロッド
20 ワーク
30 真空メッキ炉
31 定位盤
32 電極ロッド
33 タングステンワイヤ
34 原料金属
40 電着槽
41 電着液
50 底膜
51 金属メッキ層
52 アクリル層
300 電源組





【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを固定するステップと、真空メッキステップと、電着ステップとを含む金属及び非金属に適用可能な表面処理法において、ワークを固定するステップは、表面処理しようとするワークを導電性の固定支持枠に掛けられ、ワークの表面に底膜をスプレー塗布し、真空メッキステップは、底膜をスプレー塗布したワークと固定支持枠とを真空メッキ炉の固定盤に設置し、メッキ炉を真空にして電流を流すことにより、表面にメッキ金属層を付着させ、電着ステップは、表面にメッキ金属層を付着させたワークと固定支持枠とを電着液の入った電着槽内に設置することにより、イオンを含む電着液をワークの表面に付着させ、耐腐食効果を持つ薄膜を形成することを特徴とする、金属及び非金属に適用可能な表面処理法。
【請求項2】
前記電着槽内の電着液はイオンを含むアクリル溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の金属及び非金属に適用可能な表面処理法。
【請求項3】
ワークの表面に底膜をスプレー塗布した後、乾燥設備によって乾燥して真空メッキを実施することを特徴とする、請求項1に記載の金属及び非金属に適用可能な表面処理法。
【請求項4】
上記各ステップにおいて、電着作業が完了するまでにワークが固定支持枠に固定されることを特徴とする、請求項1に記載の金属及び非金属に適用可能な表面処理法。



【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−31728(P2007−31728A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212058(P2005−212058)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(505277598)
【Fターム(参考)】